説明

発光装置

【課題】ヒータ等の別途の融雪手段を用いることなく、発光素子で発生した熱を利用して融雪効果を発揮させる発光装置において、当該発光装置で発生する熱が比較的小さい場合においても、光源装置の発光面への着雪を防止すること。
【解決手段】発光装置において、複数の発光素子を搭載した基板と、前記基板の発光素子搭載面側に設けられた伝熱部材と、前記複数の発光素子および前記伝熱部材を覆って前記伝熱部材上に設けられた保護部材と、を有し、前記複数の発光素子は、前記基板に対して略垂直方向に光を出射して前記保護部材上に発光面を形成し、前記伝熱部材は、前記複数の発光素子が発生した熱を前記保護部材に誘導し、前記発光面上に、高温領域と低温領域とからなる温度分布を生じさせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、特に、屋外で用いられる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置として、その低消費電力性、保守・管理の容易性という特徴を生かし、発光ダイオードを光源として用いたものが普及しつつある。
【0003】
ところが、発光ダイオードを用いた発光装置、例えば信号灯器を豪雪地帯において使用した場合、電球を用いた装置に比べてその低消費電力性のために、着雪した雪を融雪できず、視認性の劣化を招くという問題があった。
【0004】
また、発光ダイオードを用いた発光装置を街路灯に用いた場合には、着雪により照明効率が低下するという問題があった。
【0005】
かかる問題に対処した従来技術として、特許文献1の発光装置がある。
【0006】
特許文献1に記載された発光装置としての信号機では、LEDを複数配置した発光体を覆う透明カバーに、通電により発熱する発熱体を設け、透明カバーの温度を上げて、透明カバーに付着した雪を融かすようにしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術においては、別途融雪用の電力供給を必要とするので消費電力が増大するという問題があった。また発熱体内蔵という特殊なカバーを制作する必要があり、その分のコストアップが避けられないという問題があった。
【0008】
特許文献1の発光装置に対し、別途の融雪手段を排した構成を有するものとして、本発明者らは、図19に図示する発光装置1100を考えた。
【0009】
図19において、1110は発光素子、1120は実装基板、1130は伝熱部材、1140は保護部材、1150は椀状のケース、1160は開口を示す。
【0010】
発光装置1100では、図19の熱伝導経路で図示するように、発光素子1110で発生した熱を、実装基板1120および伝熱部材1130を介して、発光装置1100の発光面を構成する保護部材1140に熱伝導させるようにしている。
【0011】
発光装置1100によれば、発光ダイオードの発熱を積極的に利用することにより、ヒータ等の別途の融雪手段を用いることなく速やかに融雪作用を奏し、効果的に着雪を防止することが可能となる。
【0012】
しかしながら、発光素子としてLEDを採用することを考えた場合、その低消費電力性ゆえ、発光面全体に熱を分布させると、発光面の温度を融雪するのに十分な温度まで高められないことが懸念される。この問題は、特に寒冷地において顕著になるものと想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−145952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような背景技術に鑑み、ヒータ等の別途の融雪手段を用いることなく、発光素子で発生した熱を利用して融雪効果を発揮させる発光装置において、当該発光装置で発生する熱が比較的小さい場合においても、光源装置の発光面への着雪を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、発光素子を搭載した基板と、前記基板の発光素子搭載面側に設けられた伝熱部材と、前記発光素子および前記伝熱部材を覆って前記伝熱部材上に設けられた保護部材と、を有し、前記発光素子は、前記保護部材上に発光面を形成し、前記伝熱部材は、前記発光素子が発生した熱を前記保護部材に誘導し、前記発光面上に、高温領域と低温領域とからなる温度分布を生じさせることを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記伝熱部材と前記保護部材とが前記保護部材の周囲に沿う部分において接触し、前記発光面の周辺部に高温領域、中央部分に低温領域を形成したことを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記伝熱部材と前記保護部材とが前記保護部材の中央部分において接触し、前記発光面の中央部分に高温領域、前記中央部分をとりまく周辺部に低温領域を形成したことを特徴とする。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記伝熱部材と前記保護部材とが平面視複数の島状領域において接触し、前記発光面上に島状の高温領域および前記島状の高温領域を取り囲む低温領域を形成したことを特徴とする。
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記伝熱部材が金属であることを特徴とする。
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記基板は金属であり、前記発光素子から発生した熱が、前記基板及び前記伝熱部材を経由して前記保護部材に伝わることを特徴とする。
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記発光素子を覆う透光性部材をさらに有し、前記伝熱部材が、前記発光素子の直上部に位置する前記透光性部材を前記保護部材に接触させて形成されたことを特徴とする。
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記透光性部材の、前記発光素子の直上部以外の部分に非熱伝導性部材を配したことを特徴とする。
【0023】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記基板の発光素子搭載面とは反対側の面に接して、断熱部材を配したことを特徴とする。
【0024】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、口金として、GX53口金を備えたことを特徴とする。
【0025】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の発光装置は、前記発光面が1つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
上記の発光装置によれば、発光素子点灯時に生ずる発熱を、効率よく保護部材すなわち発光装置前面の発光面に伝導するとともに、保護部材の特定箇所に集中するようにしている。したがって、当該特定箇所の温度は、伝導された熱を保護部材の全面に渡って分布させた場合よりも高くなり、当該特定箇所に着雪した雪を融かすことができる。この融雪作用により生じた水分が特定箇所以外の着雪も融かすことにより、結果的に発光面全体の着雪を防止することが可能となる。
【0027】
しかも、本発明では、発光ダイオードの発熱を積極的に利用しているから、ヒータ等の別途の融雪手段を用いることがないので、融雪時および待機時に付加電力を要しない。したがって、発光装置全体としての消費電力を増加させることがなく、より低コスト化に有利であるという優れた効果を奏することもできる。
【0028】
また、上記の発光装置によれば、発光素子点灯時に生ずる発熱を発光面すなわち保護部材に伝導し、保護部材の特定箇所に集中するようにする場合において、伝熱部の材質、形状、配置をさまざまに変えることにより、温度分布をさまざまに変えることができる。
【0029】
したがって、発光装置に融雪効果を発揮させる場合において、視認性等を考慮して最適な温度分布を選択できるという効果がある。
【0030】
また、上記の発光装置によれば、伝熱部材が透光性部材で形成されているので、透光性部材の形状、配置をさまざまに変えることにより、温度分布をさまざまに変えることができる。
【0031】
したがって、別途伝熱部材を設ける必要がなく、製造が簡略化され、低コスト化が一層有利になるという効果を奏することができる。
【0032】
また、上記の発光装置によれば、伝熱部以外の部分に非熱伝導性部材を配したので、より集熱効果を高めることができるという効果を奏する。
【0033】
また、上記の発光装置によれば、基板の裏面側に断熱部材を配したので、発光素子から実装基板へと伝達された熱が、実装基板の裏面側、すなわち発光面とは反対側に熱伝導、対流、熱放射により熱伝達するのを防止する。したがって、効率よく保護部材すなわち発光装置の発光面に熱を熱伝導させることができるので、一層融雪作用を効果的に行わせることができるという効果を奏することができる。
【0034】
また、上記の発光装置によれば、口金として、GX53口金を備えたので、発光装置を薄型化できるという効果を奏する。
【0035】
また、上記の発光装置によれば、発光面が1つであってもよく、これにより、発光面が常時発熱をすることとなり、消灯する期間がなくなるので、保護部材の温度をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1にかかる発光装置の平面図である。
【図2】本発明の実施例1にかかる発光装置の断面図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる伝熱部材の斜視図である。
【図4】本発明の実施例1にかかる発光装置の熱伝導経路を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1にかかる発光装置の発光面の温度分布を示す概念図である。
【図6】本発明の実施例2にかかる発光装置の平面図である。
【図7】本発明の実施例2にかかる発光装置の断面図である。
【図8】本発明の実施例2にかかる発光装置の発光面の温度分布を示す概念図である。
【図9】本発明の実施例3にかかる発光装置の平面図である。
【図10】本発明の実施例3にかかる発光装置の断面図である。
【図11】本発明の実施例3にかかる発光装置の発光面の温度分布を示す概念図である。
【0037】

【図12】本発明の実施例4にかかる発光装置の平面図である。
【図13】本発明の実施例4にかかる発光装置の断面図である。
【図14】本発明の実施例4にかかる発光装置の発光面の温度分布を示す概念図である。
【図15】本発明の実施例5にかかる発光装置の断面図である。
【図16】本発明の実施例6にかかる発光装置の断面図である。
【図17】本発明の実施例7にかかる発光装置の斜視図である。
【図18】本発明の実施例7にかかる発光装置の背面斜視図である。
【図19】背景技術にかかる発光装置の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、発光素子から発生した熱を効率的に発光装置の保護部材すなわち発光面に熱伝達するともに、保護部材の特定箇所に集中するようにして、発光装置の発光面に着雪した雪などを融かすことを趣旨としており、以下、本発明の趣旨を実現する各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。したがって、それらの名称および機能も同じであるので、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0040】
また、以下の図面においては、各部構成の寸法比率は説明に応じて適宜誇張して描かれており、必ずしも実際の寸法比率を示すものではない。
【実施例1】
【0041】
図1は本実施例にかかる発光装置100の平面図、図2は本実施例にかかる発光装置100の、図1におけるA−A断面図、図3は本実施例にかかる伝熱部材の斜視図である。
【0042】
図1、図2を参照して、符号110は内部に発光素子210を配置した開口、120bは熱伝導シート、130は保護部材、140はケース、150は伝熱部材のない領域、230は伝熱部材、260はドーナツ状の領域を示す。なお、保護部材130は、発光装置100の前面の全面にあるが、図1ではその一部を切欠いた状態を示し、内部構成が分かるようにしてある。
【0043】
以下の説明において明らかとなるが、図1における、熱伝導シート120b、または、伝熱部材230が配されたドーナツ状の領域260が、保護部材130すなわち発光面の高温領域となり、伝熱部材のない領域150が発光面の自然の温度状態である低温領域となる。
【0044】
図2を参照して、120a、120bは熱伝導シート、210は発光素子、212ははんだ、214a、bはアルミベース基板の配線層、220はアルミベース基板、222は
ねじ、230は伝熱部材、240は断熱部材、250は発光装置駆動回路を示す。また、白抜き上向きの矢印は、発光素子から発せられた光の出射方向を示す。
【0045】
アルミベース基板220上には複数の発光素子210が搭載されており、各発光素子210は、図中白抜き矢印で示す紙面上方へ光を出射する。本実施例においては、アルミベース基板が実装基板を構成する。
【0046】
アルミベース基板とは、アルミニウム製メタルベースと銅箔配線層を、絶縁層を介して一体化した基板であり、熱伝導性に優れた基板である。アルミベース基板の厚さは、例えば1〜2mm程度とする。
【0047】
発光素子210としては、例えばパッケージに封入したSMD(Surface Mount Device)、すなわち表面実装タイプの発光ダイオード(LED)を好適に用いることができる。
【0048】
LEDのパッケージは、直接アルミベース基板220のアルミベース部分にはんだ付け、あるいは熱伝導性接着剤を用いた接着などの方法で固定する。熱伝導性接着剤としては、エポキシ系、シリコーン系接着剤、AuSnペーストなどを挙げることができる。
【0049】
本実装形態の場合には、放熱性を重視したパッケージを使用しているが、通常の樹脂パッケージを用いてもよい。放熱性に優れたパッケージを用いるのはLED素子のジャンクション温度を上昇させないためである。
【0050】
発光素子210の端子(図示せず)は、はんだ212により配線層214aにはんだ付け接続する。
【0051】
ふたたび図2を参照して、アルミベース基板220の上には、伝熱部材230が設けられている。図3で図示されるように、伝熱部材230は発光素子210を取り囲む開口110を有したドーナツ状の板よりなり、本実施例では保護部材130の外径と略同径に形成されて、保護部材130の周辺部に配置されている。そのため、発光装置100の中心から所定の範囲は、伝熱部材のない領域150となる。
【0052】
伝熱部材230の材料としては、熱伝導性に優れた金属、例えばアルミニウム板などを用いる。
【0053】
伝熱部材230は、後述するように、発光素子210で発生しアルミベース基板220を介して伝導された熱を、保護部材130に誘導するための部材である。
【0054】
伝熱部材230の厚さは、LEDの配光角等を考慮し、例えば2〜4mm程度とする。
【0055】
伝熱部材230は、アルミベース基板220のアルミニウム製メタルベースの上に、熱伝導シート120aを挟み込んだ構造として説明したが、これに限られるものではない。例えば、アルミベース基板220のアルミニウム製メタルベース、絶縁層、銅箔配線層の上に、熱伝導シート120aを挟み込んだ構造としてもよい。
【0056】
アルミベース基板220と伝熱部材230とは、適宜な位置に配されたねじ222によって一体的に固定される。
【0057】
アルミベース基板220と伝熱部材230との固定は、ねじに限られるものではなく、適宜はんだ付け、熱伝導性接着剤による接着などにより相互を固定してもよい。
【0058】
図2を参照して、アルミベース基板220と伝熱部材230との間には、熱伝導シート120aを設けたり、熱伝導グリースを塗布してもよい。熱伝導シートは、アルミベース基板220と伝熱部材230との接触面積を大きくすることにより熱抵抗を下げ、発光素子210で発生した熱をアルミベース基板220を介して、伝熱部材230へ効率よく誘導するためのシートである。
【0059】
熱伝導シートとしては、シリコーンゴム製シート、シリコーンにセラミックフィラーを充填したシートなどを好適に用いることができる。
【0060】
熱伝導シート120aには、発光素子210に対応して穴を設け、発光素子210から出射した光の進行を妨げないようにする。
【0061】
なお、当該熱伝導シートは熱伝導設計に応じ、熱伝導グリースなどにより代替することが可能であり、またこれらシートあるいはグリースを省略してもさしつかえない。
【0062】
伝熱部材230の上には保護部材130が設けられている。保護部材130としては、熱伝導性の良好な材料を選択することが好ましく、熱伝導率が高いガラスが適している。他には、光透過性が必要とされるので、ポリカーボネートやアクリル等の透光性樹脂などを用いることができる。
【0063】
保護部材130は、アルミベース基板220と伝熱部材230とにより、発光素子210を取り囲んで形成された開口110および伝熱部材のない領域150を覆うように設けられ、発光素子210を外気から保護する役割を果たしているのである。
【0064】
保護部材130は、水などの侵入を防止するパッキンにより伝熱部材230と一体的に固定してもよいし、また伝熱部材に(あるいは、熱伝導シート120bに)熱伝導性接着剤で接着固定してもよい。
【0065】
この保護部材130が発光装置100の発光面として外気と直接接することになる。
【0066】
伝熱部材230と保護部材130との間には、熱伝導シート120bが設けられている。熱伝導シート120bは、伝熱部材230と保護部材130との間の熱伝導を良好にするもので、熱抵抗を下げる。発光素子210で発生した熱をアルミベース基板220および伝熱部材230を介して、保護部材130へ効率よく熱伝導するためのシートである。
【0067】
熱伝導シート120bとしては、上述の熱伝導シート120aと同様の材料を好適に用いることができる。
【0068】
また、発光素子210に対応して熱伝導シート120bに穴を設け、発光素子210から出射した光の進行を妨げないようにすることも、熱伝導シート120aと同様である。
【0069】
なお、当該熱伝導シート120bは熱伝導設計に応じ、熱伝導グリースなどにより代替することが可能であり、またこれらシートあるいはグリースを省略してもさしつかえない。
【0070】
アルミベース基板220の裏面、つまり、発光素子210搭載面とは反対側の面には、発光装置駆動回路250が搭載されている。発光装置駆動回路250を構成する各部品は配線層214b上に配されており、例えばアルミベース基板220に貫通孔(図示せず)を設けて、配線層214aと接続し、各発光素子210に駆動電力を供給する。
【0071】
なお、本発明の発光装置においては、発光装置駆動回路は必須のものではなく、用途によっては内蔵しなくともよい。
【0072】
アルミベース基板220の、発光素子210搭載面とは反対側の面には、断熱部材240が設けられている。
【0073】
発光素子210から発生した熱は、後述するように、アルミベース基板220により横方向に拡散されて伝熱部材230へと導かれるが、本断熱部材240は、アルミベース基板220に伝導した熱がケース140内で発光面とは反対側に熱伝導、対流、熱放射により熱伝達するのを防止し、発光装置100の発光面側への熱伝導を強化するための部材である。
【0074】
断熱部材240の材料としては、発泡プラスチック系断熱材、いわゆる発泡スチロールや、CR(クロロプレンゴム)スポンジ、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)スポンジ、シリコンゴムスポンジなどを好適に用いることができる。
【0075】
なお、本断熱部材240は付加的なものであり、省略してもさしつかえない。
【0076】
図2を参照して、椀状のケース140が発光装置100の本体を取り囲んで設けられている。
ケース140は、発光素子210から発生した熱をケース140を介して外側に熱伝達させないように、例えば熱伝導率が低いプラスチックで形成する。
【0077】
開口110および伝熱部材のない領域150には特に何も充填せず内部が空気層のままであってもよいし、光透過率の高い封止樹脂で封止してもよい。光透過性封止樹脂としては、エポキシ系の熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、熱硬化性のシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0078】
次に、図4を参照して、本発明の要点である、発光素子で発生した熱伝導経路を説明する。図4は本実施例にかかる発光装置の熱伝導経路を示す説明図、図5は本実施例にかかる発光装置の発光面の温度分布を示す概念図である。
【0079】
発光素子210から発生した熱は、上述のように発光素子210、アルミベース基板220間の熱抵抗が小さくなるように設計されているから、図4に図示するように、まず下方へ熱伝導する。なぜなら、上方へは対流と熱放射で熱伝達されるが、その熱抵抗は大きく、上方への熱流量が極めて少ないからである。
【0080】
下方へ伝導された熱は、一様に熱伝導率の高いアルミベース基板220によって横方向へ拡散される。そして、横方向へ拡散された熱は、アルミベース基板220、伝熱部材230間の熱抵抗が小さいため、伝熱部材230へと誘導され、伝熱部材230の下面から上面に熱伝導される。
【0081】
伝熱部材230は、図4に図示するように発光装置210の発光面の周囲に沿って配置されているため、発光素子210で発生した熱は発光面の周辺部へと誘導される。
【0082】
伝熱部材230により上方へと誘導された熱は保護部材130の周辺部へと熱伝導し、保護部材130の周辺部の温度を上昇させる。
【0083】
保護部材130は熱伝導率の高い材料が選ばれているので、図4の白抜き矢印で図示す
るように、保護部材130の中心に向かう熱の移動もあるが、周辺部との関係においては温度分布を生ずる。
【0084】
図5に本実施例の発光装置の発光面すなわち保護部材130表面における温度分布を概念的に示す。同図に図示するように、発光面すなわち保護部材130の表面には、ドーナツ状の比較的温度の高い高温領域310と、その内側に円形の比較的温度の低い低温領域320が形成される。
【0085】
ここで、保護部材130上での温度分布を細かく制御するために、保護部材130の材料を、伝熱部材230に対応するドーナツ状の領域260と伝熱部材のない領域150に対応する部分で異ならせてもよい。すなわち、伝熱部材230に対応するドーナツ状の領域260には比較的熱伝導率の高い材料を、伝熱部材のない領域150に対応する部分には比較的熱伝導率の低い材料を用い、これらを一体に形成して保護部材を構成してもよい。
【0086】
このような保護部材を用いることにより、例えば発光面の周辺部分の温度を相対的により高めるなど、保護部材上での温度分布を細かく制御することが可能である。
【0087】
さらに、ドーナツ状の伝熱部材は、発光面の周辺部だけでなく任意の位置に配することができ、また、円形の伝熱部材を中心部に配してもよい。さらに、伝熱部材を複数配してもよい。
【0088】
このように伝熱部材を適宜な位置に適宜な数だけ配することにより、発光面の温度分布をさまざまに形成することが可能となる。これらの伝熱部材の配置の具体例については、実施形態2以下で明らかにする。
【0089】
以上の説明で明らかなように、本実施例による発光装置は、発光素子点灯時に生ずる発熱を、効率よく保護部材すなわち発光装置前面の発光面に伝導するとともに、保護部材の特定箇所に集中するようにしている。したがって、当該特定箇所の温度は、伝導された熱を保護部材の全面に渡って分布させた場合よりも高くなり、当該特定箇所に着雪した雪を融かすことができる。この融雪作用により生じた水分が特定箇所以外の着雪も融かすことや滑り落とすことによりにより、結果的に発光面全体の着雪を防止することが可能となる。
【0090】
しかも本実施例による発光装置は、発光ダイオードの発熱を積極的に利用しているから、ヒータ等の別途の融雪手段を用いることがないので、融雪時に付加電力を要しない。したがって、発光装置全体としての消費電力を増加させることがなく、低コスト化に有利であるという優れた効果を奏することもできる。
【0091】
さらに、実装基板の裏面に断熱部材を配した場合には、発光素子から実装基板へと伝達された熱が、実装基板の裏面側、すなわち発光面とは反対側に熱伝導、対流、熱放射されるのを防止する。したがって、発光素子から発生した熱が保護部材以外に熱伝達される伝達ロスを減少させ、さらに効率よく保護部材すなわち発光装置の発光面に熱を熱伝導させることができるので、一層着雪の融解除去作用を効果的に行わせることができるという効果を奏することができる。
【実施例2】
【0092】
図6は本実施例にかかる発光装置400の平面図であり、図7は本実施例にかかる発光装置400の、図6におけるB−B断面図であり、図8は本実施例にかかる発光装置400の発光面の温度分布を示す概念図である。
【0093】
図6および図7において、符号410は実装基板、412は伝熱部、430はプリント基板、460は高温領域を示す。
【0094】
本実施例では、発光素子210で発生した熱を保護部材130まで導く経路を、伝熱部412として実装基板410と一体に形成している。実装基板410および伝熱部412の材料は、熱伝導性の良好な金属、例えばアルミニウムを用いることができ、一体に形成する方法は、切削あるいは押出成型等を用いることができる。
【0095】
図6を参照して、本実施例の伝熱部412は、4つの平面視L字状の凸部一組として発光素子210を取り囲むように島状領域を形成し、実装基板410に突出して形成される。
【0096】
そして、本実施例では、保護部材130の表面上において温度分布を形成する方法として、上記伝熱部412を5×5=25個の発光素子210について一つ置きに形成している。
【0097】
図7を参照して、プリント基板430は、伝熱部412に対応させて開口を設け実装基板410上に配されている。プリント基板430と伝熱部412の一体化は、例えばエポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤などの、熱伝導性接着剤を用いて接着固定する。
【0098】
プリント基板430としては、ガラスエポキシ基板FR4、フレキシブル基板等の一般的な基板の他、熱伝導性に優れたアルミベース基板等を好適に用いることができる。
【0099】
プリント基板430上には搭載された発光素子210より下方に伝導した熱は、実装基板410において横方向に拡散され、伝熱部412へと誘導される。伝熱部412に達した熱は上方に伝導し、伝熱部材130へと誘導される。
【0100】
かかる構成により、伝熱部412が配された部位には、当該伝熱部412で囲まれた部分に存在する発光素子210と、その周囲に配された伝熱部412で囲まれていない発光素子210の熱が集中する。保護部材130において、伝熱部412で囲まれた領域から外に伝導する熱も存在するものの、伝熱部が局所的に配されているため、保護部材130の表面で温度分布を生ずることになり、図7の符号460で示される、伝熱部412で囲まれた領域の直上部分が比較的高温な高温領域となる。
【0101】
図8に、本実施例の発光装置400の発光面すなわち保護部材130の表面上の温度分布を概念的に示す。図8において、符号460は高温領域、470は低温領域を示す。
【0102】
本実施例では伝熱部を一つ置きに配したので、同図に図示されたように、高温領域460、低温領域470が市松模様状に交互に配されることになる。
【0103】
上記説明では、発光素子をプリント基板上に実装した例を示したが、実施例1と同様本実施例でも発光素子を直接実装基板上に実装することも可能である。
【0104】
また、高温領域、低温領域に対応させて、保護部材130の材質を変えてもよいことも実施例1と同様である。
【0105】
以上の説明で明らかなように、本実施例による発光装置は、発光素子点灯時に生ずる発熱を発光面すなわち保護部材に伝導し、保護部材の特定箇所に集中させる場合において、伝熱部の形状、配置をさまざまに変えることにより、温度分布をさまざまに変えることが
できる。
【0106】
したがって、発光装置に融雪効果を発揮させる場合において、視認性等を考慮して最適な温度分布を選択できるという効果がある。
【0107】
また、本実施例では、実装基板と伝熱部を一体的に形成しているので、部品点数が少なく、製造が簡略化され、低コスト化が一層有利になるという効果も奏することができる。
【実施例3】
【0108】
図9は本実施例にかかる発光装置800の平面図であり、図10は本実施例にかかる発光装置800の、図9におけるC−C断面図であり、図11は本実施例にかかる発光装置800の発光面の温度分布を示す概念図である。
【0109】
本実施例の基本的な構造は実施例2と同様であるが、本実施例では伝熱部の配置により、発光面すなわち保護部材の中央付近の温度を相対的に高めている点に特徴がある。
【0110】
図9および図10において、符号810は実装基板、812は伝熱部、830はプリント基板、860は高温領域を示す。
【0111】
実装基板810への伝熱部812への形成方法、実装基板810へのプリント基板830の搭載方法等は実施例2と同様である。
【0112】
本実施例では、実装基板210の中央付近に伝熱部812を凸状に形成しているため、保護部材130のうち当該凸部と接している部分が比較的温度が高くなり、高温領域860を形成する。
【0113】
図11に、保護部材130の温度分布の様子を概念的に示す。同図に図示するように、本実施例では、保護部材130の中央付近に比較的温度の高い高温領域860が形成され、その高温領域860を取り囲むように比較的低温である低温領域870が形成される。
【0114】
以上の説明のように、本実施例による発光装置は、発光素子点灯時に生ずる発熱を発光面すなわち保護部材に伝導し、保護部材の特定箇所に集中させる場合において、伝熱部の形状、配置をさまざまに変えることにより、温度分布をさまざまに変えることができるという効果を奏する。
【実施例4】
【0115】
図12は本実施例にかかる発光装置500の平面図であり、図13は本実施例にかかる発光装置500の、図12におけるD−D断面図であり、図14は本実施例にかかる発光装置の発光面の温度分布を示す概念図である。
【0116】
図12および図13において、符号510は透光性部材、512は凸部、514は空洞、520は実装基板、530はプリント基板、560は高温領域、570は低温領域を示す。
【0117】
本実施例は、発光素子を封止する透光性部材により伝熱部を構成するところに特徴がある。
【0118】
図12および図13を参照して、本実施例では、プリント基板530上には搭載された発光素子210を覆うように透光性部材510が設けられている。透光性部材510の材料としては、透明シリコーン樹脂、透明ウレタン樹脂、透明アクリル樹脂、透明エポキシ
樹脂等を用いることができる。透光性部材510は、熱伝導性の良好なものを選択するのが好ましい。
【0119】
本実施例では、この透光性部材510を、発光素子210の直上において円筒状に突出させて加工し凸部512を形成する。そして、この凸部512を保護部材130に密着するように配置している。本形態のように透光性部材510を形成する方法としては、型加工した透光性部材をプリント基板上に接着剤により接着する方法、ケース140内に型枠を配し、透光性部材を充填して形成する方法等を挙げることができる。
【0120】
図13には、以上のようにして構成した発光装置500の熱伝導経路を示す。
【0121】
図13において、透光性部材510の凸部512以外の部分には熱伝導率の低い、例えば空気が充填された空洞514が存在するため熱の伝導が阻害される。そのため、発光素子210で発生した熱は、発光素子210の直上部分に集中し、直接発光面を構成する保護部材へと誘導される。
【0122】
凸部512は図12に図示するように分散して配置されているため、保護部材130の表面上において、温度分布が生ずることになる。
【0123】
なお、空洞514に相当する部分には、断熱性樹脂など非熱伝導性部材を配してもよい。このようにすれば、より集熱効果を高めることができる。
【0124】
発光面すなわち保護部材130の表面上における温度分布の様子を図14に図示する。
【0125】
図14において、符号560は高温領域、570は低温領域を示す。
【0126】
本実施例では、伝熱部を構成する凸部512が離散的に配置されているため、保護部材の表面上には、高温領域560が島状に分布することになる。
【0127】
なお、本実施例では、プリント基板530および実装基板520で熱を拡散する必要がないから、それらについての熱伝導率を考慮する必要はなく、実装基板520はむしろ断熱性の部材で構成することが好ましい。
【0128】
以上の説明で明らかなように、本実施例による発光装置は、発光素子点灯時に生ずる発熱を発光面すなわち保護部材に伝導し、保護部材の特定箇所に集中させる場合において、発光素子を覆う透光性樹脂の形状、配置をさまざまに変えることにより、温度分布をさまざまに変えることができる。
【0129】
したがって、別途伝熱部材を設ける必要がなく、製造が簡略化され、低コスト化が一層有利になるという効果を奏することができる。
【実施例5】
【0130】
本実施例にかかる発光装置600の断面図を図15に図示する。同図において、符号610は透光性部材、612は伝熱部、614は空洞、620は実装基板、630はプリント基板、660は高温領域、670は低温領域を示す。
【0131】
本実施例は、実施例4における空洞514(図13参照)を空洞614として透光性部材610の内部に設けたものである。その他の構成は実施例5と同様である。空洞614に相当する部分に、断熱性樹脂など非熱伝導性部材を配してもよいことも実施例4と同様である。
【0132】
本実施例では、非伝熱領域である空洞614を発光素子210の近くに配することができるので、より集熱効果を高めることができる。
【実施例6】
【0133】
本実施例にかかる発光装置700の断面図を図16に図示する。同図において、符号710は樹脂成型タイプ発光素子、712はLEDチップ、730はプリント基板、732ははんだ、760は高温領域、770は低温領域を示す。
【0134】
本実施例では、伝熱部として、樹脂成型タイプ発光素子自体を使用することに特徴がある。
【0135】
図16を参照して、プリント基板730に、樹脂成型タイプ発光素子710が搭載されている。樹脂成型タイプ発光素子710はLEDチップ712を内蔵したリードタイプのものであり、プリント基板にリード用の穴を設け裏面ではんだ732により該リードが固定されている。
【0136】
むろん樹脂成型タイプ発光素子710はリードタイプのものに限らず、SMDタイプのものであってもよい。また、SMDタイプの発光素子210と混在させて実装することも可能である。
【0137】
樹脂成型タイプ発光素子710は、伝熱部を効果的に形成することができるように、その頂部が底面より幅広に構成されている。樹脂成型タイプ発光素子710の外形は、円筒状であっても、角柱状であってもよいが、幅広部分は熱の誘導を効果的に行わせるために、図16に図示するようにテーパ状に形成することが好ましい。
【0138】
そして、樹脂成型タイプ発光素子710の頂部は、保護部材130と密着するように配置されている。樹脂成型タイプ発光素子710の上面と保護部材130とは、熱伝導性グリースなどを介して接するようにすると熱伝導の上から好ましい。
【0139】
以上のように構成された発光装置700は、樹脂成型タイプ発光素子710から発生した熱が、保護部材130の温度を局所的に上昇させることになる。その結果、保護部材130上には、高温領域760、低温領域770が形成され温度分布を生ずる。
【0140】
本実施例によれば、発光素子自体で伝熱部を構成するため、伝熱部として特に付加的な構成を必要としない。したがって、製造がさらに簡略化され、低コスト化が一層有利になるという効果を奏することができる。
【実施例7】
【0141】
本実施例では、本発明による融雪効果を発揮させた発光装置の例として、本発明を交通信号灯器に適用した例を説明する。
【0142】
図17は、本発明の実施例にかかる交通信号灯器900の斜視図である。
【0143】
図17において、910B、910Y、910Rは発光部、920は庇、930は蓋、940はねじ、950は筐体を示す。
【0144】
図17を参照して、発光部910B、910Y、910Rには、上述の各実施形態の発光装置の任意の形態のものを組み込むことが可能であるが、ここでは、実施例1の周辺部高温型のものにGX53口金を採用した場合を例示して説明する。
【0145】
また、ここでは、横型の交通信号灯器を例示しているが、豪雪地帯において一般的である縦型にも同様に適用可能であることはいうまでもない。
【0146】
ふたたび図17を参照して、発光部910B、910Y、910Rはそれぞれ青緑色、橙色、赤色に発光するものであり、当該各色に対応する公知のLEDを採用して構成することができる。
【0147】
筐体950はアルミダイカストなどにより形成し、3個の発光部を一体的に固定する。
【0148】
庇920は、発光部910B、910Y、910Rに直接上方から太陽光が照射された場合に、発光部910B、910Y、910Rの点灯する色の識別が困難になることを防止するとともに、雨や雪よけの用にも供するためのものである。
【0149】
蓋930は発光部910B、910Y、910Rを固定し、ねじ940は蓋を開放するためのねじである。すなわち、ねじ940を緩め外すことによって、蓋930が蓋の上方に配された蝶番1020(図18)を中心として、図17の黒矢印で示す方向に開放される。
【0150】
蓋930を開放した状態を図18に示す。図18は、本実施例にかかる交通信号灯器900の背面斜視図である。
【0151】
図18を参照して、蓋930に固定された発光部910Bの背面が図示されており、符号1030はGX53口金を、1040はGX53口金に嵌合するソケットを示す。
【0152】
GX53とは、薄型化を目的とし、IEC(国際電気標準会議)において、7004−142−1として規定された照明装置の規格であり、日本では、JIS(日本工業規格)C7709−1として規定されている。
【0153】
GX53口金1030には凸部1034が設けられており、該突部は上面、下面を円形にして構成され、その厚さは20mm程度と比較的薄く、その内部に発光装置の駆動回路を配する構成となっている。
【0154】
このため、従来のように照明装置本体側に電源回路を設ける必要がなくなり(つまり、本規格では、照明装置本体側には、商用電源が直接接続されているだけであり、LED駆動回路は発光装置に内蔵される)、また全体が平面的であるため薄型化を実現しやすい。
【0155】
電源ターミナル1032は、交通信号灯器900に電源を供給するための電源端子であり、適宜な配線系により発光装置本体に接続されている。
【0156】
GX53口金1030に嵌合するソケット1040は、電源ターミナル挿入孔1044、嵌込凹部1042を有するとともに、商用電源を供給するための電源線1010が接続されている。
【0157】
この嵌込み凹部1042にGX53口金1030の凸部1034を嵌合させ、電源ターミナル1032を電源ターミナル挿入孔1044に挿入してソケットを回転させ、発光部910Bをソケット1040に、着脱可能に係合させる。
【0158】
ソケット1040内部には商用電源に接続された接触金具(図示せず)が配されており、この接触金具が電源ターミナルと接触することによって、発光部910Bに電源が供給
される。
【0159】
本交通信号灯器900では、発光部910B、910Y、910Rのいずれかを交換する場合に、ソケット1040を外し、蓋に固定された発光部を取り外して交換すればよいので、メンテナンスが容易である。
【0160】
また、本実施例ではGX53口金を採用しているので、交通信号灯器900全体の厚みを約60mm程度と薄型に構成することが可能である。
【0161】
以下、本実施例の融雪効果について説明する。
【0162】
本発明によれば、前述のように、発光素子から発生した熱エネルギーを効率的に発光面を構成する保護部材(図2においては保護部材130)に誘導し、かつ、その熱エネルギーを保護部材の特定箇所に集中させ、当該特定箇所が相対的に高温領域になるようにしている。
【0163】
本実施例では、図17に図示するように、その高温領域960は発光部910B、910Y、910Rの発光面の周辺部に存在している。
【0164】
一方、交通信号灯器の発光部の表示面のサイズは例えば約300mmφと規格で定められているので、当該サイズと発光部の発光輝度等を考慮して、適宜な個数のLEDを発光部に配することになるが、例えば0.05WのLEDパッケージを200個程度とすることができる。LEDの種別はとくに限定されない。
【0165】
発明者らの知見によれば、前記条件で図19に図示したような背景技術の発光部を構成すると、駆動回路を含めたLEDに供給される電力は、1色当たり10〜20W程度となり、保護部材の温度は、気温に対してプラス10℃〜15℃程度に上昇するものと見込まれる。例えば、気温が−10℃なら保護部材の温度は0℃〜+5℃程度となる。
【0166】
本実施例では、この熱エネルギーを発光部910B、910Y、910Rの発光面の周辺部に集中させているので、保護部材の周辺部の温度がさらに上昇する。
【0167】
したがって、発光面を構成する保護部材の温度を均一に温度上昇させた場合よりも、局所的に着雪した雪を融かす能力を向上させることができるので、この融雪作用により生じた水分が特定箇所以外の着雪も融かすことにより、結果的に発光面全体の着雪を防止する能力を高めることが可能となる。
【実施例8】
【0168】
本実施例では、本発明による融雪効果を発揮させた発光装置の例として、本発明を一灯型交通信号灯器に適用した例を説明する。
【0169】
青色、黄色、赤色の三色のLEDを一組の発光単位とし、この発光単位を発光表示部に複数配した一灯型交通信号灯器が知られている(例えば、特開2009−301519号公報)。この一灯型交通信号灯器では、三色のLEDのうち必要な色の発光時間を制御し、一灯で青色、黄色、赤色の交通信号を表示可能なようにしている。
【0170】
本発明は、上記のような一灯型交通信号灯器にも適用が可能である。
【0171】
具体的には、例えば、実施例1の図1において、開口110内に配した単一の発光素子210の代わりに、青色、黄色、赤色の三色のLEDを発光単位として配すればよい。あ
るいは、開口110内に青色、黄色、赤色のいずれかのLEDを配し、3個の開口110を一組として発光単位を構成してもよい。
【0172】
上記の発光装置について、青色、黄色、赤色のLEDの各群を必要な時間だけ巡回点灯させることにより、一灯型交通信号灯器を構成することができる。点灯時間の制御は、例えば、図2に図示された発光装置駆動回路250により行うことができる。
【0173】
通常の三灯型交通信号灯器では、1個の発光装置で見た場合に消灯している時間が存在するが、本実施例では、その構成上、1個の発光装置がほぼ常時点灯しているので、常時発熱している。つまり、保護部材130は、常時発光素子から発生した熱の供給を受けることになり、結果として、保護部材130の温度は、三灯型交通信号灯器に比べてより上昇する。
【0174】
したがって、本実施例では、保護部材130の温度をより高めることにより、より融雪効果を効果的に行わせることが可能となる。
【0175】
なお、本発明の発光装置は、上記の構成に限定されるものではなく、種々の変形例や応用例が可能である。
【0176】
例えば、上記各実施形態では、発光装置の本体形状として円形、矩形を例示して説明したが、他に楕円等任意の形状を採用することが可能である。
【0177】
また、口金としてGX53を例示して説明したが、E26等の従来から一般的である口金を適用することもできる。
【0178】
上記各実施形態の説明では、駆動回路の形式については触れなかったが、ダイオードブリッジによる整流回路、スイッチング型のAC/DCコンバータ等、一般的な回路形式の適用が可能である。
【0179】
上記各実施形態では、発光素子として、発光ダイオード(LED)を例示して説明したが、半導体レーザ、有機LED等他の半導体発光素子の適用も可能である。
【0180】
また、上記各実施形態では、発光素子の実装として、パッケージ封入タイプのLEDによる実装を例示して説明したが、ベアチップの発光ダイオード素子を直接基板に実装する、いわゆるCOB(Chip on Board)実装の適用も可能である。
【0181】
さらに、本実施形態では、融雪効果を発揮させた発光装置の例として交通信号灯器を例示して説明したが、その他、道路照明、街路灯、表示灯、道路標識、電光掲示板、道路情報板、玄関外灯、屋外防犯灯、ヘッドライトなど、屋外で用いられるあらゆる形態の発光装置に適用が可能である。
【符号の説明】
【0182】
100 発光装置
110 開口
120a、120b 熱伝導シート
130 保護部材
140 ケース
150 伝熱部材のない領域
210 発光素子
212 はんだ
214a,b 配線層
220 アルミベース基板
222 ねじ
230 伝熱部材
240 断熱部材
250 発光装置駆動回路
260 ドーナツ状の領域
310 高温領域
320 低温領域
400 発光装置
410 実装基板
412 伝熱部
430 プリント基板
460 高温領域
470 低温領域
500 発光装置
510 透光性部材
512 凸部
514 空洞
520 実装基板
530 プリント基板
560 高温領域
570 低温領域
600 発光装置
610 透光性部材
612 伝熱部
614 空洞
620 実装基板
630 プリント基板
660 高温領域
670 低温領域
700 発光装置
710 樹脂成型タイプ発光素子
712 LEDチップ
730 プリント基板
732 はんだ
760 高温領域
770 低温領域
800 発光装置
810 実装基板
812 伝熱部
830 プリント基板
860 高温領域
870 低温領域
900 交通信号灯器
910B、910Y、910R 発光部
920 庇
930 蓋
940 ねじ
950 筐体
960 高温領域
1010 電源線
1020 蝶番
1030 GX53口金
1032 電源ターミナル
1034 凸部
1040 ソケット
1042 嵌込凹部
1044 電源ターミナル挿入孔
1100 発光装置
1110 発光素子
1120 実装基板
1130 伝熱部材
1140 保護部材
1150 ケース
1160 開口





【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を搭載した基板と、
前記基板の発光素子搭載面側に設けられた伝熱部材と、
前記発光素子および前記伝熱部材を覆って前記伝熱部材上に設けられた保護部材と、を有し、
前記発光素子は、前記保護部材上に発光面を形成し、
前記伝熱部材は、前記発光素子が発生した熱を前記保護部材に誘導し、前記発光面上に、高温領域と低温領域とからなる温度分布を生じさせることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記伝熱部材と前記保護部材とは前記保護部材の周囲に沿う部分において接触し、前記発光面の周辺部に高温領域、中央部分に低温領域を形成したことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記伝熱部材と前記保護部材とは前記保護部材の中央部分において接触し、前記発光面の中央部分に高温領域、前記中央部分をとりまく周辺部に低温領域を形成したことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記伝熱部材と前記保護部材とは平面視複数の島状領域において接触し、前記発光面上に島状の高温領域および前記島状の高温領域を取り囲む低温領域を形成したことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記伝熱部材が金属であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記基板は金属であり、前記発光素子から発生した熱が、前記基板及び前記伝熱部材を経由して前記保護部材に伝わることを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子を覆う透光性部材をさらに有し、
前記伝熱部材が、前記発光素子の直上部に位置する前記透光性部材を前記保護部材に接触させて形成されたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記透光性部材の、前記発光素子の直上部以外の部分に非熱伝導性部材を配したことを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記基板の発光素子搭載面とは反対側の面に接して、断熱部材を配したことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
口金として、GX53口金を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記発光面が1つであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発光装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−256676(P2012−256676A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128229(P2011−128229)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】