説明

発光装置

【課題】複数の発光色を混色させて用いる場合においては良好な混色性を実現し、蛍光体等の波長変換部材を用いる場合においては色ムラの問題を解消するとともに発光効率を改善し、更に素子搭載基板とその表面に形成される構造物(リフレクタ等)との熱膨張率差に起因する素子搭載基板の反りを低減または解消することができる発光装置を提供する。
【解決手段】導体配線12を有する基板11と、基板の一方の面に搭載され、導体配線に電気的に接続された複数の発光素子13と、基板の一方の面に設けられ、発光素子の各々の周囲を囲む光反射枠14を形成する複数の開口部14aを有する第1のガラス膜と、開口部の各々に充填され、発光素子の各々を埋設する封止樹脂15と、基板の他方の面に設けられた第2のガラス膜16と、を含む。第2のガラス膜の基板に対する熱膨張率の大小関係は、第1のガラス膜の基板に対する熱膨張率の大小関係と一致している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関し、特に基板上に複数のLED(発光ダイオード)素子を搭載したハイフラックス(高出力)型の発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護に対する意識の高まりを背景に白熱電球や蛍光灯に代えてLED素子を搭載したハイフラックス(高出力)型の発光装置が各種照明装置に利用されている。
【0003】
ハイフラックスタイプの発光装置としては、比較的サイズの大きい大電力型のLED素子を搭載したものや、比較的サイズの小さい小電力型のLED素子を複数搭載することにより高出力を得るものがある。後者の方が熱源および電流の拡散、発光効率、素子面積当たりのコストの点で有利となる場合が多い。
【0004】
特許文献1には、単一のLED素子を有するLEDパッケージの各々を、実装基板上に配列することにより構成される面状光源装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、素子搭載基板上に搭載された複数のLED素子と、素子搭載基板上の全てのLED素子を包囲するように設けられた枠状のリフレクタと、リフレクタ内部を充填しLED素子を封止する蛍光体含有樹脂層と、を含む照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−324134号公報
【特許文献2】特開2010−129923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるような単一のLED素子を搭載したLEDパッケージの各々を、実装基板上に配列する構成においては、隣接するLED素子間の距離が必然的に大きくなる。従って、互いに異なる発光色を発する複数種のLED素子または波長変換特性の異なる複数種の蛍光体を用いて発光色を混色させる場合には、混色性が悪くなるといった問題がある。
【0008】
また特許文献2に示されるような、複数のLED素子を素子搭載基板上に搭載し、LED素子全体を蛍光体樹脂で一体的に覆う構成においては、各LED素子の間に存在する蛍光体含有樹脂が光出力に悪影響を及ぼす。すなわち、各LED素子から放射され、光放射面に対して垂直方向に進行する光と光放射面に対して斜め方向に進行する光とは、蛍光体含有樹脂層内における光路長差が大きく、発光色に色ムラが生じやすい。たとえば、青色LEDと、青色の光を受光すると黄色の光を発する蛍光体とを使用して白色光を得ようとする場合、蛍光体含有樹脂層内部を光放射面に対して斜め方向に進行して外部に出射される光は、黄色味を帯びた白色となる。さらに、各LED素子の間に存在する蛍光体含有樹脂により光吸収が起り発光効率の低下を招く。このように、複数のLED素子全体を蛍光体含有樹脂層で一体的に覆う構成においては、所望の光出力を得ることが困難となる。
【0009】
また、リフレクタ等の構造物を素子搭載基板上に搭載する場合、素子搭載基板と素子搭載基板上の構造物との熱膨張率差に起因して生じる素子搭載基板の反りが問題となる。素子搭載基板を例えばシリコーングリス等の密着材を介して実装基板(放熱板)に搭載して使用する場合、素子搭載基板に反りが生じると素子搭載基板と実装基板(放熱板)との密着性が低下する。その結果、放熱性が低下し、LED素子のジャンクション温度が上昇するため発光効率が低下する。また、LED素子の寿命も短くなる。更に、素子搭載基板に反りが生じると放熱性が不均一となり、LED素子間において輝度ムラが生じるおそれがある。かかる素子搭載基板の反りの問題は、素子搭載基板の面積が大きくなる程、より顕著となる。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、素子搭載基板上に複数の発光素子を搭載した発光装置において、複数の発光色を混色させて用いる場合において良好な混色性を実現することを目的とする。また、蛍光体等の波長変換部材を用いる場合において色ムラの問題を解消するとともに発光効率を改善することを目的とする。更に、素子搭載基板とその表面に形成される構造物(リフレクタ等)との熱膨張率差に起因する、素子搭載基板の反りを低減または解消することができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発光装置は、導体配線を有する基板と、前記基板の一方の面に搭載され前記導体配線に電気的に接続された複数の発光素子と、前記基板の前記一方の面に設けられ前記発光素子の各々の周囲を囲む光反射枠を形成する複数の開口部を有する第1のガラス膜と、前記開口部の各々に充填され前記発光素子の各々を埋入する封止樹脂と、前記基板の他方の面に設けられた第2のガラス膜と、を含み、前記第2のガラス膜の前記基板に対する熱膨張率の大小関係は、前記第1のガラス膜の前記基板に対する熱膨張率の大小関係と一致していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光装置によれば、複数の発光色を混色させて用いる場合においては良好な混色性を実現することができる。また、蛍光体等の波長変換部材を用いる場合においては色ムラの問題を解消するとともに発光効率を改善することができる。更に、素子搭載基板とその表面に形成される構造物(リフレクタ等)との熱膨張率差に起因する、素子搭載基板の反りを低減または解消することができる。これにより、素子搭載基板と実装基板との密着性が向上し、放熱性を良好に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の実施例に係る発光装置の構成を示す平面図であり、図1(b)は底面図である。
【図2】図1(a)における2−2線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る発光装置における素子搭載基板上の導体配線の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の実施例に係る発光装置の等価回路図である。
【図5】本発明の実施例に係る発光装置の製造方法を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る発光装置の実装形態を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る発光装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す図において、実質的に同一または等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【実施例1】
【0015】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る発光装置10の光放射面側から見た平面図であり、図1(b)は、裏面側から見た底面図である。
【0016】
素子搭載基板11は、矩形形状を有するアルミナセラミック基板を用いることができる。素子搭載基板11の素子搭載面には、導体配線12と、導体配線12に接続された二つの給電端子12aおよび12bが形成されている。給電端子12aおよび12bは、それぞれアノード端子およびカソード端子に対応し、素子搭載基板11の素子搭載面の両端部に配置されている。素子搭載基板11は、素子搭載面に複数のLED素子13を搭載するための素子搭載領域を有している。
【0017】
複数のLED素子13は、素子搭載基板11上に行および列をなして搭載される。LED素子13の各々は、素子搭載基板11上に、例えば熱硬化性の樹脂系接着剤等を用いて固着することができ、ボンディングワイヤ17によって導体配線12に電気的に接続することができる。図3は、素子搭載基板11上の導体配線12の配線パターンを示す平面図である。図4は、かかる配線パターンにより実現される発光装置10の回路構成を示す等価回路図である。導体配線12により、48個のLED素子13は、3×8のマトリックス接続を2系統並置した形態で接続することができる。LED素子13の各々は、例えば1辺が1.0mm以下の小、中電力タイプ発光素子であり、GaN系半導体層を含む青色LED素子を用いることができる。
【0018】
リフレクタ14(第1のガラス膜)は、例えば、ホウケイ酸ガラス等のガラス材に、光散乱粒子として酸化チタン(TiO)または硫酸バリウム(BaSO)等を含有させた物から形成できる。リフレクタ14は、LED素子13の各々の周囲を囲む光反射枠を形成する複数の開口部14aを有している。すなわち、開口部14aは、各LED素子13に対応して設けられている。リフレクタ14は、例えばスクリーン印刷と焼成により形成され、素子搭載基板11の素子搭載面に直接接合される。リフレクタ14を形成するガラス膜の投光方向に対する厚さは、例えば約420μmとすることができ、LED素子13の投光方向に対する厚さよりも厚くすることができる。すなわち、リフレクタ14の上面の高さ位置は、LED素子13の上面の高さ位置よりも高くなっている。給電端子12a、12b上は、リフレクタ14を構成するガラス膜で覆われておらず、露出している。
【0019】
リフレクタ14の開口部14aの側壁は、素子搭載面とのなす角が約45°となる傾斜を有しており、光反射枠は「すり鉢形状」を有している。つまり、開口部14aの開口径は投光方向に進むにつれて大きくなっている。リフレクタ14は、光反射枠を形成すると共に発光領域を区画する。すなわち、LED素子13から放射され側方に拡がる光は、光反射枠で反射され、投光方向前方に向かうこととなる。互いに隣接する開口部14a間の距離(換言すれば互いに隣接するLED素子13間の距離)W1は、例えば2.8mmとすることができる。
【0020】
封止樹脂15は、リフレクタ14の開口部14aの各々に充填され、開口部14a内においてLED素子13およびボンディングワイヤ17を埋入するように形成される。封止樹脂15は、光透過性を有するシリコーン樹脂、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂等を用いることができる。封止樹脂15には、例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAl12)に付活剤としてCe(セリウム)を導入したYAG:Ce蛍光体を分散することができる。蛍光体は、LED素子13から放射される、例えば、ピーク波長が約460nmの青色光を吸収して、これを波長560nm前後に発光ピークを持つ黄色光に変換することができる。この場合、発光装置10の光放射面からは、蛍光体により波長変換された黄色光と、波長変換されずに封止樹脂15を透過した青色光が混ざることにより白色光が放射される。
【0021】
素子搭載基板11の素子搭載面とは反対側の面(以下裏面と称する)は、発光装置10を実装基板(放熱板)に実装する際の実装面とすることができる。この場合、素子搭載基板11の裏面には、導体配線や給電端子は設けられていない。素子搭載基板11の裏面には、ほぼ全域に亘って延在する裏面ガラス(第2のガラス膜)16が設けられている。裏面ガラス16は、素子搭載面側のリフレクタ14と同一熱膨張率を有するガラス材を用いることが好ましく、リフレクタ14と同一組成のガラス材を用いることがより好ましい。裏面ガラス16の厚さは、リフレクタ14を形成するガラス膜の投光方向に対する厚さよりも薄くすることができ、例えば、150μmとすることができる。
【0022】
裏面ガラス16は、素子搭載基板11の反りを抑制する効果を有する。すなわち、素子搭載基板11は、アルミナセラッミクスからなり、素子搭載面に設けられたリフレクタ14を形成するガラス膜と熱膨張率が異なる。熱膨張率が互いに異なる材料が密着している状況において熱が加わると、熱膨張率の小さい材料が熱膨張率の大きい材料の熱膨張に追従できなくなるため反りが生じる。リフレクタ14の熱膨張率は、素子搭載基板11の熱膨張率よりも大きいため、裏面ガラス16を形成しない場合には、素子搭載面側が凸となる反りが生じる。素子搭載基板11を実装基板(放熱板)に接合して使用する場合において、素子搭載基板11に反りが生じると実装基板との密着性が低下するため放熱性が低下する。放熱性の低下は、発光効率の低下やLED素子間における輝度ムラの原因となり、またLED素子13の寿命が短くなる原因ともなる。本実施例のように素子搭載基板11の裏面にも、リフレクタ14を形成するガラス膜と同程度の熱膨張率を有する裏面ガラス16を形成することにより、反りを誘発する応力が素子搭載基板11の両面で生じる結果、相殺され、素子搭載基板11の反りを低減または防止することができる。かかる応力の相殺を生じさせるべく、裏面ガラス16を形成する第2のガラス膜の素子搭載基板11に対する熱膨張率の大小関係と、リフレクタ14を構成する第1のガラス膜の素子搭載基板11に対する熱膨張率の大小関係とが一致するように、第2のガラス膜の組成、厚さ、設置面積を調整する。
【0023】
裏面ガラス16は実装面側に設けられており、放熱性を確保する必要があることから裏面ガラス16の厚さは素子搭載基板の反りを解消し得る限りにおいて薄い方が好ましい。具体的には40μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上190μm以下であることがより好ましい。本実施例においては、第2のガラス膜が素子搭載基板11に被着する面積を、第1のガラス膜が素子搭載基板11に被着する面積よりも大きくすることにより、裏面ガラス16の厚さを薄くすることができる。本実施例においては、リフレクタ14は複数の開口部14aを有しており、且つ給電端子12a、12b上はリフレクタ14を構成する第1のガラス膜で覆われていない。一方、裏面ガラス16を形成する第2のガラス膜は、素子搭載基板11の裏面のほぼ全域に亘って被着しており、第1のガラス膜が素子搭載基板11に被着する面積よりも第2のガラス膜が素子搭載基板11に被着する面積の方が大きくなっている。
【0024】
また、裏面ガラス16の表面は、平坦であることが好ましく、表面の凹凸高さが10μm以下であることが好ましい。裏面ガラス16と実装基板(放熱板)との間にシリコーングリスや放熱シート等の密着材32を介在させて素子搭載基板11を実装基板(放熱板)に接合する場合において、裏面ガラス16の平坦性を確保することにより、密着材32と裏面ガラス16との間に空隙が生じにくくなり密着性が向上し、高い放熱性が得られる。裏面ガラス16は、例えば複数回に亘って焼成を行うことにより平坦な表面とすることができる。
【0025】
次に、図5(a)−(e)を参照して、本発明の実施例に係る発光装置10の製造方法について説明する。
【0026】
はじめに、素子搭載基板11の基材となる焼成済みのアルミナセラミック基板を用意する。アルミナセラミック基板には、焼成前に必要に応じて穴あけ加工等が施されていてもよい。次に、導体配線12および給電端子12a、12bの材料となる導体ペーストを用意する。導体ペーストは、導体を形成する主成分たる金属粉末と、必要に応じて添加される種々の添加剤(無機結合剤、ガラスフリット、フィラー等)とを有機媒質(ビヒクル)に分散させることにより調製される。導体ペーストは、スクリーン印刷等の一般的な手法によりアルミナセラミック基板の表面に印刷される。その後、適当な温度で焼成することにより、アルミナセラミック基板上に、所定の配線パターンを有する導体配線12および給電端子12a、12bが形成され、素子搭載基板11が得られる(図5(a))。
【0027】
次に、素子搭載基板11の素子搭載面にリフレクタ14を形成する。リフレクタ14の材料であるガラスペーストを用意する。ガラスペーストは、SiO2、B2O3、Al2O3等を主成分とするガラス粉末と、酸化チタン(TiO)または硫酸バリウム(BaSO)等の光散乱粒子とを有機媒質(ビヒクル)に分散させることにより調製される。ガラスペーストは、スクリーン印刷法により素子搭載基板11の素子搭載面に印刷・塗布される。スクリーン印刷においては、リフレクタ14の開口部14aの各々に対応する複数の円形遮蔽部を有するメッシュマスクを用いることができる。その後、適当な温度でガラスペーストを焼成する。リフレクタ14を形成するガラス膜が、所望の厚さになるまで印刷と焼成を繰り返し実施することができる。このとき、開口部14aに対応する遮蔽部の径が互いに異なる複数のメッシュマスクを用意しておき、印刷回数が進むにつれて適宜遮蔽部の径がより大きいメッシュマスクを選択して印刷を行うことができる。つまり、投光方向に向かうにつれて開口部14aの開口径が大きくなるように、ガラス膜を積層していくことができる。これにより、開口部14aの側壁がすり鉢形状の、傾斜を有する厚さ約420μmのガラス膜からなるリフレクタ14が形成することができる(図5(b))。
【0028】
次に、素子搭載基板11の裏面に裏面ガラス16を形成する。裏面ガラス16は、リフレクタ14と同一成分のガラスペーストをスクリーン印刷・焼成することにより形成してもよい。印刷および焼成は、裏面ガラス16が所望の厚さ(例えば150μm)になるまで複数回に亘って実施してもよい。また、焼成を複数回実施することにより、裏面ガラス16の表面は滑らかな平坦面とすることができる。裏面ガラス16は、素子搭載基板11の裏面のほぼ全域に延在するように形成することができる(図5(c))。
【0029】
次に、リフレクタ14の各開口部14a内部において、露出した素子搭載基板11の素子搭載領域に熱硬化性の樹脂系接着剤をディスペンス法により塗布する。続いて、チップマウンタを用いてLED素子13を接着剤の上にマウントする。各開口部14a内部にはそれぞれ1つのLED素子13が収容される。その後、熱処理を行って接着剤を硬化させる。次に、LED素子13の電極と、導体配線12とをボンディングワイヤ17で接続する(図5(d))。
【0030】
次に、LED素子13およびボンディングワイヤ17を埋入するように、蛍光体が分散されたシリコーン樹脂からなる封止樹脂15をリフレクタ14の開口部14aの各々に充填する。その後、熱処理を行って封止樹脂15を硬化させる。蛍光体は、例えばYAGに付活剤としてCeを導入したYAG:Ce蛍光体を使用することができる。封止樹脂15は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂であってもよい(図5(e))。
【0031】
以上の各工程を経ることにより発光装置10が完成する。
【0032】
図6は、発光装置10の実装形態を示す断面図である。発光装置10は、例えば照明装置を構成する実装基板(放熱板)30上に実装される。ここで、実装基板(放熱板)とは、回路パターンの有無を問わず、専ら放熱のために用いられる基板も含む。実装基板30は、例えば熱伝導性が良好なAlを用いることができ、LED素子13から発せられた熱は、実装基板30に向けて拡散するようになっている。裏面ガラス16と実装基板30との間には、放熱シートまたはシリコーングリス等の熱伝導性が良好な密着材32を設けることができる。これにより、素子搭載基板11と実装基板30の密着性が確保され、放熱性が向上する。
【0033】
実装基板30上には、発光装置10に隣接するようにガラスエポキシ樹脂等からなる配線基板34が設けられている。配線基板34は、実装基板30上における発光装置10の搭載領域を露出させる開口部を有していてもよい。配線基板34の表面には、発光装置10に対して給電を行うための導体配線36が形成されている。導体配線36には、発光装置10に向けて延出する一対のコネクタ38が接続されている。コネクタ38は、先端部が給電端子12a、12bに当接され、発光装置10を実装基板30側に押し付ける付勢力を付与するバネ接点を形成している。これにより、発光装置10に対する給電が可能となると共に、発光装置10と実装基板30との密着性が確保される。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本実施例に係る発光装置10は、素子搭載基板11上に複数のLED素子13を搭載するため、単一のLED素子を有するLEDパッケージの各々を、基板上に配列するものと比較して、互いに隣接するLED素子間の距離を小さくすることが可能となる。これにより、複数の発光色を混色させる場合において、混色性を向上させることが可能となる。
【0035】
また、本実施例に係る発光装置10は、LED素子13の各々に対応して設けられたリフレクタ14の開口部14aによって、光反射枠が形成されると共に発光領域が区画される。これにより、LED素子13と光反射枠との距離を小さくすることができる。従って、各LED素子13から放射され光放射面に対して垂直方向に進行する光と、光放射面に対し斜め方向に進行し光反射枠で反射して光放射面に進行する光との間で、封止樹脂15内における光路長差が小さくなり、発光色の色ムラおよび光吸収を抑制することが可能となる。
【0036】
また、本実施例に係る発光装置10によれば、素子搭載基板11の裏面には、リフレクタ14を形成するガラス材と同一組成のガラス材からなる裏面ガラス16が設けられているので、リフレクタ14と素子搭載基板11との間の熱膨張率差に起因する素子搭載基板11の反りを低減または解消することが可能となる。かかる効果は、素子搭載基板の面積が比較的大きい複数のLED素子を搭載したハイフラックス型の発光装置において、より顕著となる。素子搭載基板11の反りが低減または解消されることにより、素子搭載基板11と実装基板30との密着性が向上し、放熱性を向上させることが可能となる。これにより、LED素子の発光効率が改善されるのみならず、LED素子の寿命低下の問題も解消される。更に、素子搭載基板11のほぼ全面に亘って均一な放熱性が確保されるのでLED素子間の輝度ムラを防止できる。また、放熱性が改善されたことにより、LED素子間の距離をより小さくすることが可能となり、混色性の更なる改善に寄与することができる。さらに、裏面ガラス16を形成するガラス膜は、素子搭載基板11を形成するアルミナセラミックスよりもシリコーングリス等の密着材32との親和性が良好である。すなわち、発光装置10の実装面側に裏面ガラス16を設けることにより、上記した素子搭載基板11の反りの解消に加え、裏面ガラス16と密着材32との親和性が向上するという異なる二つの理由により、素子搭載基板11と実装基板30との密着性を向上させることができる。
【実施例2】
【0037】
以下に、本発明の実施例2に係る発光装置について図面を参照しつつ説明する。図7は、本発明の実施例2に係る発光装置20を光放射面側から見た平面図である。
【0038】
発光装置20は、上記した実施例1に係る発光装置10と基本構成は同一であり、導体配線12を有する素子搭載基板11と、素子搭載基板11の素子搭載面に搭載された複数のLED素子13と、LED素子13の各々の周囲を囲む光反射枠を形成する複数の開口部14aを有するリフレクタ14と、開口部14aの各々を充填する蛍光体を含有する封止樹脂15aおよび15bと、素子搭載基板11のほぼ全面に亘って延在する裏面ガラス16とを含んでいる。
【0039】
発光装置20は、波長変換特性が互いに異なる2種類の蛍光体を含有する封止樹脂15aおよび15bを用い、互いに発光色が異なる2種類の光を生成し、これらを混色させて放射する構成となっている。
【0040】
リフレクタ14は、LED素子13の配列形態に対応した5行×6列で配列された複数の開口部14aを有している。かかる開口部14aによってLED素子13の周囲を囲む光反射枠が形成されると共に発光領域が区画される。波長変換特性が互いに異なる蛍光体を含有する2種類の封止樹脂15a、15bが、所定の配列となるように開口部14a内に充填される。蛍光体は、YAl12母体のYの一部をGb、Tb等で置換し、Alの一部をGa等で置換して母体構造を変更することにより発光ピークを長波長側または短波長側にずらすことができる。例えば昼光色を得るべく調製された第1の封止樹脂15a(図7においてハッチングで示す)は、開口部14a内に行方向および列方向において1つ飛びで充填される。また、電球色を得るべく調製された第2の封止樹脂15bは、残りの開口部14a内に充填される。すなわち、第1および第2の封止樹脂15a、15bは、互い違いに千鳥模様を形成する様に配列される。かかる配列とすることにより、混色性を向上させることができる。
【0041】
また、導体配線12は、発光色毎に光量を調整できるように2系統の回路を形成している。すなわち、第1の封止樹脂15a内に埋設されるLED素子と、第2の封止樹脂15b内に埋設されるLED素子には、導体配線12を介して別個に電力を供給できるようになっている。給電端子12a、12bは第1系統におけるアノード端子およびカソード端子に対応し、給電端子12c、12dは第2系統におけるアノード端子およびカソード端子に対応する。かかる回路構成とすることにより、発光色を昼光色から電球色の間で調光することが可能となる。尚、導体配線12は、素子搭載基板11の裏面側に形成されていてもよい。この場合、裏面側の導体配線は、スルーホール等を介して素子搭載面側の導体配線に接続される。
【0042】
上記した実施例においては、LED素子と導体配線は、ボンディングワイヤを用いて接続することとしたが、フリップチップ接続であってもよい。また、LED素子は青色LEDに限らずあらゆる発光色のものを使用することができる。さらに、リフレクタの開口部の形状、大きさ、配列形態は適宜変更することができる。また、リフレクタの1つの開口部内に複数のLED素子を収容することとしてもよい。この場合、1つの開口部内に収容されるLED素子の発光色は互いに異なっていてもよい。また、蛍光体の波長変換特性は、所望の発光色が得られるように適宜選択することが可能であり、封止樹脂内に蛍光体が含まれていなくてもよい。さらに、リフレクタおよび裏面ガラスを構成するガラス膜は、ホウケイ酸ガラス以外の他のガラス材であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 発光装置
11 素子搭載基板
12 導体配線
13 LED素子
14 リフレクタ
14a 開口部
15 封止樹脂
16 裏面ガラス
17 ボンディングワイヤ
30 実装基板
32 密着材
34 配線基板
36 導体配線
38 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に搭載された複数の発光素子と、
前記発光素子の各々の周囲を囲む光反射枠を形成する複数の開口部を有する第1のガラス膜と、
前記基板の他方の面に設けられた第2のガラス膜と、を含み、
前記第2のガラス膜の前記基板に対する熱膨張率の大小関係は、前記第1のガラス膜の前記基板に対する熱膨張率の大小関係と一致していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1のガラス膜と、前記第2のガラス膜とは、同一熱膨張率を有するガラス材からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1のガラス膜と、前記第2のガラス膜とは、同一のガラス材からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2のガラス膜が前記基板に被着する面積は、前記第1のガラス膜が前記基板に被着する面積よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第2のガラス膜は、前記基板の他方の面の全面に被着していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記基板の前記発光素子を搭載している側の面に給電端子を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2のガラス膜の厚さは、前記第1のガラス膜の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1のガラス膜は、光散乱粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記開口部に、蛍光体を含む封止樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記基板は、アルミナセラミックスからなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第2のガラス膜に密着材を介して接合された実装基板を更に含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の発光装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−89553(P2012−89553A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232429(P2010−232429)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】