説明

発光装置

【課題】点灯直後とその後の色度変化を低減することができ、長期使用で演色性が悪くなるのを防ぐことができ、さらに、発光効率の低下を避けることができる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、青色光を出射する青色LEDチップと、近紫外光を出射する近紫外LEDチップ203と、近紫外LEDチップ203の下面から出射される近紫外光で励起され、青色LEDチップの青色光に混合させる赤色光を出射する赤色蛍光体209と、近紫外LEDチップ203の上面から出射される近紫外光で励起され、青色LEDチップの青色光に混合させる緑色光を出射する緑色蛍光体210とを備えている。この青色LEDチップおよび近紫外LEDチップ203は共にGaNチップある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、特開2010−182724号公報の発光装置を上方から見た図である。また、図16は、図15のXVI−XVI線から見た断面を示す図である。
【0003】
上記発光装置は、パッケージ基板1001と、青色光、近紫外光または紫外光(以下、「短波長光」と言う)を発する2つの短波長LED(発光ダイオード)チップ1002,1002と、赤色光を発する1つの赤色LEDチップ1003と、青色光を発する1つの青色LEDチップ1004とを備えている。
【0004】
上記パッケージ基板1001の表面には4つの凹部1007,1007,…を設けている。この4つの凹部1007,1007,…のそれぞれに、短波長LEDチップ1002,1002、赤色LEDチップ1003および青色LEDチップ1004のうちの一つを入れている。
【0005】
上記短波長LEDチップ1002,1002は黄〜緑系蛍光体樹脂1005で封止されている。この黄〜緑系蛍光体樹脂1005は短波長LEDチップ1002の短波長光で励起されて白色光を出射する。
【0006】
上記赤色LEDチップ1003および青色LEDチップ1004は透光性樹脂1006で封止されている。この透光性樹脂1006は、赤色LEDチップ1003の赤色光や、青色LEDチップ1004の青色光を透過する。
【0007】
図17は、上記発光装置の波長特性を示すグラフである。
【0008】
上記青色LEDチップ1004のピーク波長W1と、黄〜緑系蛍光体樹脂1005が含む黄〜緑系蛍光体のピーク波長W2とだけでは、赤色光が不足してしまうので、ピーク波長W3の赤色LEDチップ1003で赤色光を補っている。これにより、上記発光装置は、演色性が高く、Raが90以上の白色光源となることができる。
【0009】
図18は、参考例の発光装置の断面を模式的に示す図である。
【0010】
上記発光装置は、リードフレーム2001と、このリードフレーム2001にワイヤ2008を介して電気的に接続された近紫外LEDチップ2002と、この近紫外LEDチップ2002の周囲に設けられたリフレクタ2003と、近紫外LEDチップ2002を封止する蛍光体含有樹脂2004とを備えている。
【0011】
上記近紫外LEDチップ2002から出射された近紫外光は、蛍光体含有樹脂2004が含む赤色蛍光体2005、緑色蛍光体2006および青色蛍光体2007を励起する。これにより、上記赤色蛍光体2005に赤色光を出射させ、緑色蛍光体2006に緑色光を出射させ、青色蛍光体2007に青色光を出射させ、これらの光の混色で白色光が得られる。
【0012】
図19は、上記発光装置の波長特性を示すグラフである。
【0013】
上記発光装置では、青色蛍光体2007はピーク波長がW11、緑色蛍光体2006のピーク波長がW12、赤色蛍光体2005のピーク波長がW13となっている。
【0014】
したがって、上記発光装置は、赤色蛍光体2005、緑色蛍光体2006および青色蛍光体2007の混合比率を精度良く行なえば、色度座標のブレの無い安定した色調の白色光が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−182724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図15の発光装置では、赤色LEDチップ1003の発光効率は低温で高いが、高温になる程、低くなる傾向がある。このため、上記発光装置による白色光は、5分以上経過すると赤の強度が落ちて安定した演色性を示すが、点灯直後は赤色が強い光となってしまうという問題がある。
【0017】
また、上記赤色LEDチップ1003は、青色LEDチップ1004よりも寿命が短く劣化速度が速いことから、1万時間以上の長期使用で演色性が悪くなってしまうという問題がある。
【0018】
また、図18の発光装置では、赤色蛍光体2005は励起波長が青色光の領域だけでなく緑色光の領域にもある。このため、図20に示すように、緑色蛍光体2006から出た緑色光が赤色蛍光体2005を励起する場合がある。この場合、全体として蛍光体の波長変換効率を落としてしまうという問題が生じてしまう。
【0019】
そこで、本発明の課題は、点灯直後とその後の色度変化を低減することができ、長期使用で演色性が悪くなるのを防ぐことができ、さらに、発光効率の低下を避けることができる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明の発光装置は、
青色光を出射する第1GaN発光ダイオードチップと、
近紫外光または紫外光を出射する第2GaN発光ダイオードチップと、
上記第2GaN発光ダイオードチップの下面から出射される近紫外光または紫外光で励起され、上記青色光に混合させる赤色光を出射する赤色蛍光体と、
上記第2GaN発光ダイオードチップの上面および側面のうちの少なくとも一方から出射される近紫外光または紫外光で励起され、上記青色光に混合させる緑色光を出射する緑色蛍光体と
を備えたことを特徴としている。
【0021】
上記構成によれば、上記第1,第2GaN発光ダイオードチップは共にGaNチップあるので、第1,第2GaN発光ダイオードチップの温度特性を同一にすることができる。したがって、上記発光装置において、点灯直後とその後の色度変化を低減することができる。
【0022】
また、上記第1,第2GaN発光ダイオードチップは共にGaNチップあるので、長期寿命試験においてもGaN独特の長寿命が得られる。したがって、長期使用で演色性が悪くなるのを防ぐことができる。
【0023】
また、上記第1,第2GaN発光ダイオードチップは電流や温度の変化で順方向降下電圧が変わり難い。したがって、安定した電流バランスにより安定した色度が得られる。
【0024】
また、上記第2GaN発光ダイオードチップの下面から出射される近紫外光または紫外光が赤色蛍光体を励起し、第2GaN発光ダイオードチップの上面および側面のうちの少なくとも一方から出射される近紫外光または紫外光が緑色蛍光体を励起する。これにより、上記赤色蛍光体が赤色光を出射すると共に、緑色蛍光体が緑色光を出射するので、この赤色光および緑色光に、第1GaN発光ダイオードチップが出射する青色光を混合させて、白色光が得られる。
【0025】
このように、上記第2GaN発光ダイオードチップの下面から出射される近紫外光または紫外光で赤色蛍光体を励起し、第2GaN発光ダイオードチップの上面および側面のうちの少なくとも一方から出射される近紫外光または紫外光で緑色蛍光体を励起するので、緑色蛍光体の緑色光が赤色蛍光体を励起するのを防ぐことができる。したがって、発光効率の低下を避けることができる。
【0026】
一実施形態の発光装置では、
上記第1GaN発光ダイオードチップが出射する青色光のピーク波長は460nmよりも長い。
【0027】
上記実施形態によれば、上記青色光のピーク波長を460nmよりも長くすることにより、青色光の視感度を高め、青色光において無駄な光を少なくすることができる。したがって、発光効率を高めることができる。
【0028】
一実施形態の発光装置では、
上記第1GaN発光ダイオードチップと上記第2GaN発光ダイオードチップとは互いに電気的に直列接続されている。
【0029】
上記実施形態によれば、上記第1GaN発光ダイオードチップに第2GaN発光ダイオードチップを電気的に直列接続することにより、第1,第2GaN発光ダイオードチップに一定電流を流して、赤色蛍光体の赤色光と、緑色蛍光体の緑色光と、第1GaN発光ダイオードチップの青色光との混色のバランスが崩れるのを防ぐことができる。
【0030】
また、上記第1GaN発光ダイオードチップに第2GaN発光ダイオードチップを電気的に直列接続することにより、第1,第2GaN発光ダイオードチップの温度特性の良さを最大限に利用できる。
【0031】
一実施形態の発光装置では、
上記第1GaN発光ダイオードチップと上記第2GaN発光ダイオードチップとは互いに電気的に並列接続されている。
【0032】
一実施形態の発光装置では、
上記第1GaN発光ダイオードチップは、エピタキシャル構造を有し、パルス駆動される。
【0033】
上記実施形態によれば、上記第1GaN発光ダイオードチップはエピタキシャル構造を有するので、高電流で短波長シフトし易い。したがって、上記第1GaN発光ダイオードチップをパルス駆動することにより、第1GaN発光ダイオードチップの青色光の波長を短波長から長波長までコントロールできる。
【0034】
また、上記パルス駆動時、パルスのデューティー比(パルスの周期に対するパルスの幅の比)とピーク電流とを調整すれば、明るさを保ったまま色度座標のy座標を任意に上下移動させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の発光装置は、青色光を出射する第1GaN発光ダイオードチップと、近紫外光または紫外光を出射する第2GaN発光ダイオードチップとを備えることによって、第1,第2GaN発光ダイオードチップは共にGaNチップあるので、第1,第2GaN発光ダイオードチップの温度特性を同一にすることができる。したがって、点灯直後とその後の色度変化を低減することができる。
【0036】
また、上記第1,第2GaN発光ダイオードチップは共にGaNチップあるので、長期寿命試験においてもGaN独特の長寿命が得られる。したがって、長期使用で演色性が悪くなるのを防ぐことができる。
【0037】
また、上記第1,第2GaN発光ダイオードチップは電流や温度の変化で順方向降下電圧が変わり難いので、安定した電流バランスにより安定した色度が得られる。
【0038】
また、上記発光装置は、第2GaN発光ダイオードチップの下面から出射される近紫外光または紫外光で励起され、上記青色光に混合させる赤色光を出射する赤色蛍光体と、第2GaN発光ダイオードチップの上面および側面のうちの少なくとも一方から出射される近紫外光または紫外光で励起され、上記青色光に混合させる緑色光を出射する緑色蛍光体とを備えるので、この赤色光および緑色光に、第1GaN発光ダイオードチップが出射する青色光を混合させて、白色光が得られる。
【0039】
また、上記第2GaN発光ダイオードチップの下面から出射される近紫外光または紫外光で赤色蛍光体を励起し、第2GaN発光ダイオードチップの上面および側面のうちの少なくとも一方から出射される近紫外光または紫外光で緑色蛍光体を励起するので、緑色蛍光体の緑色光が赤色蛍光体を励起するのを防ぐことができる。したがって、発光効率の低下を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明の第1実施形態の発光装置の第1発光部の模式断面図である。
【図2】図2は上記第1発光部の青色LEDチップの模式断面図である。
【図3】図3は上記第1発光部の波長特性のグラフである。
【図4】図4は上記第1実施形態の発光装置の第2発光部の模式断面図である。
【図5】図5は上記第2発光部の近紫外LEDチップの模式断面図である。
【図6】図6は上記第2発光部の波長特性のグラフである。
【図7】図7は上記第2発光部の要部の模式図である。
【図8】図8は上記第1実施形態の発光装置の波長特性のグラフである。
【図9】図9は上記第1,第2発光部の一配置例を説明するための図である。
【図10】図10は上記第1,第2発光部の一実装例を説明するための図である。
【図11】図11は上記第1,第2発光部の一接続例を説明するための図である。
【図12】図12は上記青色LEDチップの駆動パルス電流の一例の波形図である。
【図13】図13は上記青色LEDチップの駆動パルス電流の他の一例の波形図である。
【図14】図14は上記第1実施形態の発光装置の出射光の色度を示すための図である。
【図15】図15は従来の発光装置の平面図である。
【図16】図16は図15のXVI−XVI線矢視断面図である。
【図17】図17は上記従来の発光装置の波長特性のグラフである。
【図18】図18は参考例の発光装置の模式断面図である。
【図19】図19は上記参考例の発光装置の波長特性のグラフである。
【図20】図20は上記参考例の発光装置の要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の発光装置についてより詳細に説明する。
【0042】
図1は、本発明の第1実施形態の発光装置が備える第1発光部101の断面を模式的に示す図である。また、図2は、上記第1発光部101が備える青色LEDチップ103の断面を模式的に示す図である。
【0043】
上記第1発光部101は、図1に示すように、例えばAlからなるリードフレーム102と、このリードフレーム102にワイヤ106,106を介して電気的に接続された青色LEDチップ103と、この青色LEDチップ103の周囲に設けられたリフレクタ104と、青色LEDチップ103を封止する透光性樹脂105とを備えている。なお、青色LEDチップ103は第1GaN発光ダイオードチップの一例である。
【0044】
上記青色LEDチップ103は、図2に示すように、絶縁性基板131上に順次形成されたN型GaN系半導体層132、P型GaN系半導体層133、金属薄膜または透明導電膜からなるP型層用電極134を備えている。また、上記N型GaN系半導体層232の露出部上にはN型用パッド電極135を形成すると共に、P型層用電極134上にはP型用パッド電極136を形成している。また、上記N型GaN系半導体層132の一部とP型GaN系半導体層133の一部とが発光領域137を構成し、この発光領域137から青色光が出射される。この青色光は、青色LEDチップ103の上面および側面のうち少なくとも上面から出るようになっている。また、上記絶縁性基板131は、上記青色光に対して非透明な材料でなってもよいし、上記青色光に対して透明な材料からなってもよい。上記絶縁性基板131を上記青色光に対して透明な材料で形成した場合は、青色LEDチップ103の下面からも上記青色光が出るようにできる。
【0045】
また、上記青色LEDチップ103の下面は、図1に示すように、例えばシリコーン樹脂などのボンディングペースト108でリードフレーム102に接着されている。
【0046】
上記リフレクタ104は、リードフレーム102の青色LEDチップ103側の表面に対して傾斜する反射面107を有している。この反射面107は青色LEDチップ103からの青色光を反射して上方へ向かわせる役割を果たす。
【0047】
上記透光性樹脂105は、例えばエポキシやシリコーンなどの樹脂であって、青色LEDチップ103から出射された青色光を透過する。
【0048】
図3は、上記第1発光部101の波長特性を示すグラフである。
【0049】
上記第1発光部101の出射光は青色LEDチップ103から出射される青色光であり、この青色光のピーク波長は470nmとなっている。なお、上記青色光のピーク波長を例えば440〜480nmの範囲内となるようにしてもよい。
【0050】
図4は、上記発光装置が備える第2発光部201の断面を模式的に示す図である。また、図5は、上記第2発光部201が備える近紫外LEDチップ203の断面を模式的に示す図である。なお、図4では、緑色蛍光体210は誇張して大きく図示して見易くしている。
【0051】
上記第2発光部201は、図4に示すように、例えばAlからなるリードフレーム202と、このリードフレーム202にワイヤ206,206を介して電気的に接続された近紫外LEDチップ203と、この近紫外LEDチップ203の周囲に設けられたリフレクタ204と、近紫外LEDチップ203を封止する蛍光体樹脂205とを備えている。なお、近紫外LEDチップ203は第2GaN発光ダイオードチップの一例である。
【0052】
上記近紫外LEDチップ203は、図5に示すように、例えばサファイアなどから成る絶縁性基板231上に順次形成されたN型AlGaN系半導体層232、P型AlGaN系半導体層233、金属薄膜または透明導電膜からなるP型層用電極234を備えている。また、上記N型AlGaN系半導体層232の露出部上にはN型用パッド電極235を形成すると共に、P型層用電極234上にはP型用パッド電極236を形成している。また、上記N型AlGaN系半導体層232の一部とP型AlGaN系半導体層233の一部とが発光領域237を構成し、この発光領域237から近紫外光が出射される。この近紫外光は、近紫外LEDチップ203の上面から出るようになっている。また、上記絶縁性基板231は上記近紫外光に対して透明な材料からなっていて、近紫外LEDチップ203の下面からも上記近紫外光が出るようになっている。
【0053】
また、上記絶縁性基板231においてN型AlGaN系半導体層232側とは反対側の表面、つまり、近紫外LEDチップ203の下面は、図1に示すように、蛍光体含有ボンディングペースト208でリードフレーム202に接着されている。この蛍光体含有ボンディングペースト208は、シリコーン樹脂と、近紫外LEDチップ203の下面から出射される近紫外光で励起されて赤色光を出射する赤色蛍光体209とから成っている。また、上記蛍光体含有ボンディングペースト208の幅は近紫外LEDチップ203の幅よりも広く、赤色蛍光体209はシリコーン樹脂内に略均一に含有されている。
【0054】
上記赤色蛍光体209は、M22S:Eu(但し、MはLa,Gd,Yから選ばれるいずれか一つまたは2以上の元素)、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、Y23:Eu、Y(P,V)O4:Eu、YVO4:Euで表される蛍光体の群のうち、いずれか一つまたは2以上からなる。
【0055】
上記リフレクタ204は、リードフレーム202の近紫外LEDチップ203側の表面に対して傾斜する反射面207を有している。この反射面207は、近紫外LEDチップ203からの近紫外光などを反射して上方へ向かわせる役割を果たす。
【0056】
上記蛍光体樹脂205は、例えばエポキシやシリコーンなどの透光性樹脂105に緑色蛍光体210を含ませたものである。この緑色蛍光体210は、近紫外LEDチップ203の上面から出射される近紫外光で励起されて緑色光を出射する。
【0057】
上記緑色蛍光体210は、RMg2Al1627:Eu,Mn(但し、RはSr,Baから選ばれるいずれか一つまたは両方の元素)、RMgAl1017:Eu,Mn(但し、RはSr,Baから選ばれるいずれか一つまたは両方の元素)、ZnS:Cu、SrAl24:Eu、SrAl24:Eu,Dy、ZnO:Zn、Zn2Ge24:Mn、Zn2SiO4:Mn、Q3MgSi28:Eu,Mn(但し、QはSr,Ba,Caから選ばれるいずれか一つまたは2以上の元素)で表される蛍光体の群のうち、いずれか一つまたは2以上からなる。
【0058】
図6は、上記第2発光部201の波長特性を示すグラフである。
【0059】
上記第2発光部201の出射光には、近紫外LEDチップ203から出射される近紫外光のピーク波長に対応する第1ピーク波長(410nm)と、緑色蛍光体210から出射される緑色光のピーク波長に対応する第2ピーク波長(530nm)と、赤色蛍光体209から出射される赤色光のピーク波長に対応する第3ピーク波長(650nm)とが存在している。
【0060】
上記構成の発光装置によれば、青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203に電流を供給すると、青色LEDチップ103が青色光を出射する一方、近紫外LEDチップ203が近紫外光を出射する。このとき、図7に示すように、上記近紫外LEDチップ203の上面から出射された近紫外光が緑色蛍光体210を励起して、緑色蛍光体210が緑色光を出射すると共に、近紫外LEDチップ203の下面から出射された近紫外光が赤色蛍光体209を励起して、赤色蛍光体209が赤色光を出射する。この緑色蛍光体210の緑色光と赤色蛍光体209の赤色光とが青色LEDチップ103の青色光と混色する。その結果、図8に示すように、415nm、460nm、530nm、650nmにピーク波長を有する高演色性の白色光が得られる。
【0061】
また、上記青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203は共に窒化ガリウム系化合物半導体で主要部を形成しているので、青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203の温度特性を同一にすることができる。したがって、上記発光装置において、点灯直後とその後の色度変化を低減することができる。
【0062】
また、上記青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203は共に窒化ガリウム系化合物半導体で主要部を形成しているので、長期寿命試験においても窒化ガリウム系化合物半導体独特の長寿命が得られる。したがって、長期使用で演色性が悪くなるのを防ぐことができる。
【0063】
また、上記青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203は電流や温度の変化で順方向降下電圧が変わり難いので、安定した電流バランスにより安定した色度が得られる。
【0064】
また、上記近紫外LEDチップ203の上面から出射された近紫外光が緑色蛍光体210を励起して、近紫外LEDチップ203の下面から出射された近紫外光が赤色蛍光体209を励起するようにしているので、緑色蛍光体210の緑色光が赤色蛍光体209を励起しないようにして、発光装置の発光効率の低下を防ぐことができる。
【0065】
また、上記青色LEDチップ103の青色光は蛍光体を励起しないので、青色光のピーク波長を470nmとして、青色光の視感度を上げることができる。
【0066】
また、上記青色光のピーク波長が470nmであるので、青色光において視感度への影響が低い成分を少なくして、青色LEDチップ103の発光効率を高めることができる。
【0067】
また、上記蛍光体含有ボンディングペースト208の幅は近紫外LEDチップ203の幅よりも広いので、近紫外LEDチップ203の下面から出射された近紫外光を赤色蛍光体209の励起に確実に使用することできる。したがって、上記赤色蛍光体209の励起効率を高めることができる。
【0068】
また、上記赤色蛍光体209の赤色光のうち、一部は近紫外LEDチップ203に通って近紫外LEDチップ203の上面や側面から出射して上方に向かい、他の一部は近紫外LEDチップ203を通らずに上方に向かうことができる。
【0069】
上記第1実施形態では、近紫外LEDチップ203の上面および下面のみから近紫外光が出射されるようにしていたが、近紫外LEDチップ203の上面、側面および下面から近紫外光が出射されるようにしてもよい。
【0070】
上記第1実施形態では、第1発光部101は、ピーク波長が470nmの青色光を出射する青色LEDチップ103を備えていたが、ピーク波長が470nm以外で460nmよりも長い青色光を出射する青色LEDチップ103を備えてもよい。
【0071】
上記第1実施形態では、第2発光部201が、近紫外光を出射する近紫外LEDチップ203を備えていたが、紫外光を出射する紫外光LEDチップを備えてもよい。
【0072】
上記第1実施形態では、近紫外LEDチップ203は、絶縁性基板231を備えていたが、例えばSiCまたはGaNなどから成る導電性基板を備えてもよい。
【0073】
上記第1実施形態において、緑色蛍光体210の大部分または全部を近紫外LEDチップ203の上面よりも上側に位置させてもよい。
【0074】
上記第1実施形態において、発光装置は、第1発光部101および第2発光部201のそれぞれを少なくとも1つ備えていればよい。
【0075】
上記発光装置が、第1発光部101および第2発光部201のそれぞれを複数備える場合、図9に示すように、第1発光部101同士が隣り合わないように、第1発光部101および第2発光部201を配置してもよい。
【0076】
上記発光装置が、第1発光部101および第2発光部201のそれぞれを複数備える場合、図10に示すように、円板形状の実装基板301上に、複数の第1発光部101と複数の第2発光部201とを実装してもよい。この図10では、第1発光部101同士が隣り合わないように、複数の第1発光部101と複数の第2発光部201とを配置している。
【0077】
上記発光装置が、第1発光部101および第2発光部201のそれぞれを複数備える場合、図11に示すようにしてもよい。青色LEDチップ103を近紫外LEDチップ203と電気的に直列接続させると共に、青色LEDチップ103を近紫外LEDチップ203と電気的に並列接続させてもよい。
【0078】
図11の電気接続にすると、青色LEDチップ103と、この青色LEDチップ103に電気的に直列接続されている近紫外LEDチップ203とに一定電流を流して、赤色蛍光体209の赤色光と、緑色蛍光体210の緑色光と、青色LEDチップ103の青色光との混色のバランスが崩れるのを防ぐことができる。
【0079】
上記第1実施形態において、青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203のうちの少なくとも一方は、エピタキシャル構造を有するようにしてもよい。
【0080】
また、上記青色LEDチップ103および近紫外LEDチップ203のうちの少なくとも青色LEDチップ103がエピタキシャル構造を有するようにした場合、青色LEDチップ103は高電流で短波長シフトし易い。したがって、上記青色LEDチップ103をパルス駆動することにより、青色LEDチップ103の青色光の波長を短波長から長波長までコントロールできる。
【0081】
例えば、上記青色LEDチップ103に供給するパルス電流を、図12に示す発振波長λpが475nmのものから、図13に示す発振波長λpが458nmのものに変更することにより、図14に示すように、青色LEDチップ103の出射光の色度をP1からP2にすることができる。
【0082】
なお、図13において、I’は図12のIよりも大きい数値であり、T1’は図12のT1よりも小さい数値であり、T2’は図12のT2よりも大きい数値である。また、図14のP3は第2発光部201の出射光の色度である。
【0083】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態の発光装置についてより詳細に説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態の構成部と同一構成部には、上記第1実施形態の構成部と同一参照番号を用いる。
【0084】
上記発光装置は、近紫外LEDチップ203を搭載するめっき表面に赤色蛍光体209を共析させたリードフレームを用いている点が、上記第1実施形態と異なる。
【0085】
上記リードフレームの形成方法としては、リードフレームのベース金属である銅(鉄、42アロイまたはアルミニウム)の表面に、ニッケルめっきを施して、更に、銀鍍金(金めっきまたはパラジウムめっき)を施す時に赤色蛍光体209を共析させることで、ベース金属と一体となったコンポジットめっきを用いる方法がある。
【0086】
また、上記めっき表面と同様に、リフレクタ204の反射面207に赤色蛍光体209を共析させてもよい。このようにした場合、赤色光の生成効率を高めることができる。
【0087】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態の発光装置についてより詳細に説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態の構成部と同一構成部には、上記第1実施形態の構成部と同一参照番号を用いる。
【0088】
上記発光装置は、近紫外LEDチップ203を搭載する表面に赤色蛍光体209を含侵させたリードフレームを用いている点が、上記第1実施形態と異なる。
【0089】
上記リードフレームの形成方法としては、アルミニウムをリードフレーム素材として使用した場合に、アルミニウム表面を陽極酸化した時にできるポーラスな微小井戸状の孔に赤色蛍光体209を含侵させた後、封孔処理をする方法がある。この方法であれば、安定したアルマイト皮膜の中に赤色蛍光体209を埋め込むことになるので、通常は化学変化し易い有機蛍光体を用いることができる。
【0090】
本発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態の記載事項を適宜組み合わせて、本発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0091】
101…第1発光部
102,202…リードフレーム
103…青色LEDチップ
104,204…リフレクタ
108…ボンディングペースト
201…第2発光部
203…近紫外LEDチップ
208…蛍光体含有ボンディングペースト
209…赤色蛍光体
210…緑色蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光を出射する第1GaN発光ダイオードチップと、
近紫外光または紫外光を出射する第2GaN発光ダイオードチップと、
上記第2GaN発光ダイオードチップの下面から出射される近紫外光または紫外光で励起され、上記青色光に混合させる赤色光を出射する赤色蛍光体と、
上記第2GaN発光ダイオードチップの上面および側面のうちの少なくとも一方から出射される近紫外光または紫外光で励起され、上記青色光に混合させる緑色光を出射する緑色蛍光体と
を備えたことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
上記第1GaN発光ダイオードチップが出射する青色光のピーク波長は460nmよりも長いことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置において、
上記第1GaN発光ダイオードチップと上記第2GaN発光ダイオードチップとは互いに電気的に直列接続されていることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の発光装置において、
上記第1GaN発光ダイオードチップと上記第2GaN発光ダイオードチップとは互いに電気的に並列接続されていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の発光装置において、
上記第1GaN発光ダイオードチップは、エピタキシャル構造を有し、パルス駆動されることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−115353(P2013−115353A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262354(P2011−262354)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】