説明

発泡体引張部材を組み込んだ、流体の充満した内袋

【課題】フットウェアまたは他の製品に組み込むことができる、流体の充満した内袋を提示する。
【解決手段】内袋は、密閉された外部障壁50b、発泡体引張部材60bおよび流体を含む。引張部材60bは障壁の内部に位置し、障壁の両対辺と接合されている。流体も障壁の内部に位置し、流体は障壁に外向きの力を加えるため、および引張部材に張力を生じさせるために加圧されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、フットウェアまたは種々の他の製品に組み込むことができる、流体の充満した内袋に関する。流体の充満した内袋は、例えば、発泡体引張部材を取り囲む隔壁を含みうる。
【背景技術】
【0002】
背景技術の説明
従来の競技用フットウェア製品は、甲部(upper)およびソール構造という2つの主要な構成要素を含む。甲部は、足をしっかりと収容してソール構造に対して正しく配置するための覆いを与える。さらに、甲部は、足を保護するとともに通気性を与え、それによって足を冷却して汗を取り除くような形状を有してもよい。ソール構造は甲部の下面に固定されており、一般的には足と地面との間に位置する。床反力を減衰させ、エネルギーを吸収する(すなわち、クッション性を与える)ことに加えて、ソール構造は、牽引力を与え、過度の回内といった有害な恐れのある足の動作も抑制する。したがって、甲部およびソール構造は協同的に働き、歩行およびランニングといったさまざまな移動活動のために適した快適な構造を提供する。甲部およびソール構造の一般的な特徴および形状について、以下にさらに詳細に考察する。
【0003】
競技用フットウェアのソール構造は一般に層状構造を示し、これは快適さを高めるインソール、ポリマー発泡体で形成された弾性ミッドソール、ならびに耐摩耗性および牽引力の両方を与える接地用アウトソールを含む。ミッドソール用に適したポリマー発泡体材料には、加荷重下で弾性的に圧縮されて、床反力を減弱させるとともにエネルギーを吸収する、エチルビニルアセテートまたはポリウレタンが含まれる。従来の発泡体材料は弾性的な圧縮が可能であるが、これは一部には、気体によって実質的に置き換えられた内部空間を規定する多数の連続気泡または独立気泡を含むためである。すなわち、発泡体は、気体を取り囲む材料中に形成された気泡を含む。しかし、圧縮を繰り返した後には、気泡構造が劣化し、それによって発泡体の圧縮性の低下が起こるであろう。このため、ミッドソールの力減弱特性およびエネルギー吸収特性はフットウェアの寿命とともに低下すると思われる。
【0004】
従来の発泡体材料を利用することに伴う欠点を克服するための手法の一つは、Rudyに対する米国特許第4,183,156号(特許文献1)(これは参照として本明細書に組み入れられる)に開示されており、そこではエラストマー材料でできた膨張性インサートによってクッション性が与えられている。このインサートは、フットウェアの全長にわたって実質的に縦方向に伸びた多数の管状チャンバーを含む。チャンバーは互いに流体連通下にあり、共同でフットウェアの横幅全体に及ぶ。Rudyに対する米国特許第4,219,945号(特許文献2)(これは参照として本明細書に組み入れられる)は、発泡体材料中に封入された膨張性インサートを開示している。インサートと封入材料の組み合わせはミッドソールとして機能する。甲部は封入材料の上面に取り付けられ、アウトソールまたは靴底部材は下面に固定されている。
【0005】
このような内袋は一般にエラストマー材料でできており、中間に1つまたは複数のチャンバーを収める上面および下面を有する構造をとる。チャンバーは、流体圧源と接続されたノズルまたは針を内袋に作られた充填用注入口に挿入することにより、周囲圧力を上回るように加圧される。チャンバーを加圧した後に、充填用注入口を例えば溶着によって密封し、ノズルを取り除く。
【0006】
このタイプの内袋は、2枚の別個のエラストマー薄膜のシートが内袋の全体的な周辺形態を表すように形成されている二膜法(two film technique)によって製造されている。続いて、これらのシートは各々の周辺部で一つに溶着されて密封構造を形成し、シートはさらに所定の内部領域でも溶着されて内袋に所望の形状を与える。すなわち、内部の溶着は、内袋に対して、所望の位置に所定の形態およびサイズを有するチャンバーを付与する。このような内袋は、液化したエラストマー材料を内袋の所望の全体的形態および形状を有する型の中に入れる吹き込み成形法によっても製造されている。型は加圧空気を与えるための開口部を一方の位置に有する。加圧空気は液化エラストマー材料を型の内面に押しつけ、材料を型の中で硬化させ、それによって所望の形態および形状を有する内袋を形成させる。
【0007】
フットウェア用途に適したもう1つのタイプの先行技術の内袋は、いずれもRudyに対する米国特許第4,906,502号(特許文献3)および第5,083,361号(特許文献4)(両方とも参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。このタイプの内袋は流体により加圧される膨張性構造として形成されており、二重壁布心の形状を有する引張部材の実質的に外面全体にわたって堅固に融合した気密的に密閉された外部障壁層を含む。引張部材は第1および第2の外部繊維層を含み、これらは通常互いに所定の距離を隔てた間隔にある。おそらくは多数の個別の単糸を有する多フィラメント糸の形態にある連結糸または落とし糸が、各々の繊維層の隣接面または向かい合う面の間に伸びている。落とし糸のフィラメントは引張抑制手段をなし、各々の繊維層に対して固定される。二重壁繊維構造を製造するために適した方法は、二本針棒によるラッシェル編み(double needle bar raschel knitting)である。
【0008】
いずれもGoodwin et al.に対して発行され、両方とも参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,993,585号(特許文献5)および第6,119,371号(特許文献6)は、内袋の上面と下面との中間に位置する周辺の縫い目を伴わない、引張部材を利用した内袋を開示している。その代わりに、縫い目は内袋の上面に隣接して位置する。この設計における利点には、屈曲が最大となる側壁の領域からの縫い目の除去、および内袋の内部(連結糸を含む)の視認性が含まれる。このタイプの内袋を作るために利用される工程には、型を用いた、下面および側壁を含むシェルの形成が含まれる。引張部材をカバーシートの上層に配置し、シェルは型から取りだした後にカバーシートおよび引張部材の上に配置する。続いて、組み合わせたシェル、カバーシートおよび引張部材を貼り合わせ用施設に移し、そこで高周波エネルギーによって引張部材の両対辺をシェルおよびカバーシートと融合させ、シェルの周辺をカバーシートと融合させる。続いて、連結糸を引っ張られた状態におくために、流体を挿入することによって内袋を加圧する。
【0009】
フットウェア製品における内袋のクッション性の利点は文書で十分に立証されているが、二重壁の布心を利用した内袋を製造する先行技術の方法でそれらを製造するにはコストおよび時間がかかる。例えば、二重壁の布心は一般に、熱活性化される融剤の層をコアの外面に添付し、続いて内袋の構成要素を加熱して融剤を融解させ、それによってコアを内袋の外層に固定することにより、内袋の内部で固定される。実際上、融剤をコアの外面に添加することには時間がかかる上、さらに製造工程が必要となるため、全体的なコストが増大する。したがって、当技術分野は、引張部材を備えた簡単でよりコスト効果の高い内袋を必要としている。以下の開示によって明らかになるであろう他の利点に加えて、本発明はこの需要を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,183,156号
【特許文献2】米国特許第4,219,945号
【特許文献3】米国特許第4,906,502号
【特許文献4】米国特許第5,083,361号
【特許文献5】米国特許第5,993,585号
【特許文献6】米国特許第6,119,371号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、密閉された外部障壁、発泡体引張部材および流体を含む内袋(bladder)である。引張部材(tensile member)は、障壁の内部に位置し、障壁の両対辺と接合されている。流体も障壁の内部に位置し、流体は障壁に外向きの力を加えるため、および引張部材に張力を生じさせるために加圧されている。内袋は、例えばフットウェア製品に組み込むことができ、フットウェアのソール構造の一部分を構成することができる。さらに、内袋をさまざまな他の製品に組み込むこともできる。
【0012】
本発明のもう1つの局面において、フットウェア製品は甲部およびソール構造を含む。甲部は足を収容するための内部空隙を規定し、ソール構造は甲部に固定されている。ソール構造はミッドソールの少なくとも一部分を構成する内袋を組み込んでおり、内袋は障壁、引張部材および流体(例えば、気体、液体またはゲル)を含む。障壁は密閉され、熱可塑性ポリマーシート材料でできており、障壁は内部空間を規定する。引張部材は熱可塑性ポリマー発泡体材料でできており、引張部材は内部空間の内部に位置し、障壁の両対辺と接合されている。流体は内部空間の内部に位置する。流体の少なくとも一部分は引張部材から分離しており、流体は障壁に外向きの力を加え、引張部材に張力を生じさせるために加圧されている。
【0013】
本発明のさらにもう1つの局面は、フットウェア製品のための構成要素を製造する方法である。本方法は、内部空間を規定する障壁を形成する段階を含む。発泡体部材は内部空間の内部に配置されており、障壁の両対辺と直接接合されている。さらに、内部空間は、障壁に外向きの力を加え、発泡体部材に張力を生じさせるために加圧されている。
【0014】
本発明を特徴づける新規性の利点および特徴は、添付した特許請求の範囲において詳細に指摘されている。しかし、新規性の利点および特徴をさらによく理解するためには、本発明に関係したさまざまな態様および概念の説明および例示を行っている以下の記述事項および添付の図面を参照されたい。
【0015】
上記の発明の概要、ならびに以下の発明の詳細な説明は、添付の図面とともに読まれると、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による第1の内袋を組み込んだフットウェア製品の側面立面図である。
【図2】第1の内袋の斜視図である。
【図3】第1の内袋の側面図である。
【図4】第1の内袋の平面図である。
【図5】図5Aは、図4中の断面線5A-5Aに沿って定められた、第1の内袋の第1の横断面図である。図5Bは、図4中の断面線5B-5Bに沿って定められた、第1の内袋の第2の横断面図である。
【図6】第1の内袋の引張部材部分の斜視図である。
【図7】本発明による第2の内袋の斜視図である。
【図8】第2の内袋の側面図である。
【図9】第2の内袋の平面図である。
【図10】図10Aは、図9中の断面線10A-10Aに沿って定められた、第2の内袋の第1の横断面図である。図10Bは、図9中の断面線1OB-1OBに沿って定められた、第2の内袋の第2の横断面図である。
【図11】第2の内袋の引張部材部分の斜視図である。
【図12】本発明による第3の内袋を組み込んだフットウェア製品の側面立面図である。
【図13】第3の内袋の斜視図である。
【図14】第3の内袋の側面図である。
【図15】第3の内袋の正面図である。
【図16】第3の内袋の背面図である。
【図17】第3の内袋の平面図である。
【図18】図18Aは、図17中の断面線18A-18Aに沿って定められた、第3の内袋の第1の横断面図である。図18Bは、図17中の断面線18B-18Bに沿って定められた、第3の内袋の第2の横断面図である。
【図19】第3の内袋の引張部材部分の斜視図である。
【図20】本発明による第4の内袋の斜視図である。
【図21】第4の内袋の側面図である。
【図22A】図21中の断面線22A-22Aに沿って定められた、第4の内袋の第1の横断面図である。
【図22B】図21中の断面線22B-22Bに沿って定められた、第4の内袋の第2の横断面図である。
【図23】第4の内袋の引張部材部分の斜視図である。
【図24】本発明による第5の内袋の斜視図である。
【図25】第5の内袋の側面図である。
【図26】図26Aは、図25中の断面線26A-26Aに沿って定められた、第5の内袋の第1の横断面図である。図26Bは、図25中の断面線26B-26Bに沿って定められた、第5の内袋の第2の横断面図である。
【図27】本発明による第6の内袋の斜視図である。
【図28】第6の内袋の側面図である。
【図29】図29Aは、図28中の断面線29A-29Aに沿って定められた、第6の内袋の第1の横断面図である。図29Bは、図28中の断面線29B-29Bに沿って定められた、第6の内袋の第2の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
以下の考察および添付の図面は、本発明による流体の充満した内袋を組み入れたさまざまな競技用フットウェア製品を開示している。フットウェアに関する、より具体的には流体の充満した内袋に関する概念が、ランニングのために適した形状を有するフットウェアを参照することによって開示される。しかし、本発明はランニングのために設計されたフットウェアのみには限定されず、例えば、バスケットボールシューズ、クロストレーニング用シューズ、ウォーキングシューズ、テニスシューズ、サッカーシューズおよびハイキング用ブールを含む、広範囲にわたる競技用フットウェアの形式にも適用されうる。さらに、本発明は、礼装用靴、ローファー、サンダルおよび作業用ブーツを含む、競技用ではないと一般にみなされているフットウェアの形式に対しても適用されうる。したがって、関連技術分野の当業者は、本明細書で開示された概念が、以下の材料において考察され、添付の図面に示された具体的な形式に加えて、多岐にわたるフットウェアの形式に対しても適用されることを理解するであろう。
【0018】
フットウェアに加えて、流体の充満した内袋を、例えば、バックパックおよびゴルフバッグを運ぶためのストラップ、フットボールもしくはホッケーのためのクッションパッド、または自転車の座部を含む、さまざまな他の製品に組み込むこともできる。流体の充満した内袋はさまざまなタイプの競技用製品に適するが、流体の充満した内袋を、例えば膨張性マットレスおよび感圧性シートクッションといった、さまざまな非競技用製品に組み込むこともできる。したがって、フットウェアに関連して以下に開示される、流体の充満したさまざまな内袋を、さまざまな製品と組み合わせて用いることもできる。
【0019】
フットウェア製品10は図1に示されており、これは甲部20およびソール構造30を含む。甲部20は実質的に従来の形状を有し、互いに縫合または接着されて足を確実かつ快適に収容するための内部空隙を形成する、布地、発泡体および革の材料といった複数の構成要素を含みうる。ソール構造30は甲部20の下方に配置され、これはミッドソール31およびアウトソール32という2つの主要な構成要素を含む。ミッドソール31は例えば縫合または接着によって甲部20の下面に固定されており、ソール構造30が地面と衝突した時に、力を減弱させ、エネルギーを吸収する働きをする。すなわち、ミッドソール31は、例えば歩行またはランニングの際に、足にクッション性を与えるように構築されている。アウトソール32はミッドソール31の下面に固定されており、地面と係わり合うのに適した耐久性のある耐摩耗性材料でできている。さらに、ソール構造30が、フットウェア10の快適性を高めるために空隙の内部に足の底面と隣接して位置する薄いクッション部材であるインソール(図示されていない)を含んでもよい。
【0020】
ミッドソール31は主として、流体の充満した内袋40を包み込む、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテートといったポリマー発泡体材料でできている。図1に示されているように、内袋40はミッドソール31の踵領域に配置されているが、これは所望の程度のクッション反応を得るためにミッドソール31の任意の領域に配置することができる。さらに、ミッドソール31が、内袋40の一般的な形状を有する、流体の充満した多数の内袋を包み込んでもよい。内袋40は、ミッドソール31の内部に部分的に包み込まれるだけでもよく、またはミッドソール31の内部に全体が包み込まれてもよい。例えば、内袋40の部分がミッドソール31の側面から外向きに突出してもよく、または内袋40の上面がミッドソール31の上面と一致してもよい。または、ミッドソール31が内袋40を覆い、その全周囲に及んでもよい。したがって、フットウェア10に対する内袋40の配置には、本発明の範囲内でかなりの差がありうる。
【0021】
図2〜6に示されているように、内袋40の主な構成要素は、外部障壁50および引張部材60である。障壁50は、内袋40に含まれる加圧された流体に対して実質的に不浸透性である第1の障壁層51および第2の障壁層52を含む。このため、加圧された流体は一般に、フットウェア10の予想寿命を含む期間にわたり、内袋40の内部に密閉されたままに留まる。第1の障壁層51および第2の障壁層52は各々の周辺の周りで互いに接合されて周辺接合部53を形成し、引張部材60および加圧された流体が内部に位置する密閉チャンバーを協同で形成する。
【0022】
引張部材60は、第1の障壁層51および第2の障壁層52のそれぞれと接合されている発泡体エレメントである。引張部材60の上面および下面は一般に平面かつ平行であり、引張部材60は開口部も他の不連続部も含まない連続的形状を有するものとして図示されている。本発明のさらなる態様において、引張部材60の上面および下面は平面でも平行でもなくてよく、さまざまな開口部が引張部材60を全体的または部分的に貫いて伸びていてもよい。さらに、引張部材60のさまざまな部分を構成する材料の密度または圧縮性に差があってもよい。例えば、ランニング中の足における回内の程度を制限するために、フットウェア10の外側領域に位置する引張部材60の部分がフットウェア10の内側領域に位置する引張部材60の部分とは異なる密度を示してもよい。
【0023】
内袋40に含まれる加圧された流体は障壁50に外向きの力を生じさせ、これは第1の障壁層51および第2の障壁層52を分離させる、または別の様式で外向きに押す傾向がある。引張部材60がなければ、加圧された流体によって生じる外向きの力が、内袋40に丸みを帯びた形状または別の様式で膨らんだ形状をとらせる。しかし、引張部材60は第1の障壁層51および第2の障壁層52のそれぞれと接合されており、第1の障壁層51と第2の障壁層52との分離は抑止される。したがって、引張部材60は流体による張力下に置かれており、図面に示された内袋40の全般的に平坦な形状を保持する。
【0024】
以上に考察したように、引張部材60は第1の障壁層51および第2の障壁層52のそれぞれと接合されている。障壁50および引張部材60を合わせて固定するためにはさまざまな接合方法を用いることができ、接合方法は少なくとも部分的には、障壁50および引張部材60のそれぞれに対して選択された材料によって決定される。例えば、障壁50が熱可塑性ポリマー材料でできていて、引張部材60が熱硬化性ポリマー材料でできている場合には、接着剤を用いて構成要素を接合させてもよい。しかし、障壁50および引張部材60のうち少なくとも1つが熱可塑性ポリマー材料でできている場合には、直接的な接合が障壁50および引張部材60を固定する有効な手段であると考えられる。
【0025】
本出願で用いる場合、「直接的な接合」またはその変形物は、冷却した場合に障壁50および引張部材60の材料が互いに固定されるように障壁50および引張部材60のうち少なくとも1つを融解または軟化させることを含む、障壁50と引張部材60との固定法と定義される。一般に、直接的な接合は、材料が障壁50と引張部材60との間の境界層の全体に拡散し、冷却した場合に合わせて固定されるように障壁50および引張部材60の両方を融解または軟化させることを含みうる。また、融解した材料が他の材料によって形成された裂け目または空洞の中に広がり、それにより、冷却した場合に構成要素が合わせて固定されるように、直接的な接合が障壁50および引張部材60のうち一方のみの融解または軟化を含んでもよい。したがって、障壁50と引張部材60との直接的な接合は一般に、接着剤の使用を必要としない。正確に言えば、障壁50および引張部材60は互いに直接的に接合されている。
【0026】
障壁50には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルポリウレタンおよびポリエーテルポリウレタンを含む、さまざまな熱可塑性ポリマー材料を利用することができる。障壁50に適したもう1つの材料は、Mitchell et alに対する米国特許第5,713,141号および5,952,065号(これらは参照として本明細書に組み入れられる)に開示されているような、熱可塑性ポリウレタンおよびエチレンビニルアルコール共重合体の交互の層でできたフィルムである。中央の層がエチレンビニルアルコール共重合体でできており;中央の層に隣接した2つの層が熱可塑性ポリウレタンでできており;外側の層が熱可塑性ポリウレタンおよびエチレンビニルアルコール共重合体の粉砕再生材料でできている、この材料の変形物を用いることもできる。また、Bonk et al.に対する米国特許第6,082,025号および第6,127,026号(これらはいずれも参照として本明細書に組み入れられる)に開示されているように、障壁50が、気体遮断材料およびエラストマー材料の交互の層を含む柔軟なミクロ層膜でできていてもよい。さらに、Dow Chemical Companyの製品であるPELLETHANE;BASF Corporationの製品であるELASTOLLAN;およびB.F. Goodrich Companyの製品であるESTANE(これらはすべてエステルまたはエーテルを基にしている)などの、さまざまな熱可塑性ウレタンを利用することもできる。ポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトンおよびポリカーボネートマクロゲルを基にしたさらに他の熱可塑性ウレタンを用いてもよく、さまざまな窒素遮断材料を用いることもできる。そのほかの適した材料は、Rudyに対する米国特許第4,183,156号および第4,219,945号(これらは参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。それ以外の適した材料には、Rudyに対する米国特許第4,936,029号および第5,042,176号(これらは参照として本明細書に組み入れられる)に開示された結晶質材料を含む熱可塑性フィルム、ならびにBonk et al.に対する米国特許第6,013,340号;第6,203,868号;および第6,321,465号(これらも参照として本明細書に組み入れられる)に開示されたような、ポリエステルポリオールを含むポリウレタンが含まれる。
【0027】
熱可塑性および熱硬化性のポリマー材料の両方を、障壁50のために利用することができる。熱硬化性ポリマー材料を用いることに対して、障壁50のために熱可塑性ポリマー材料を利用することの利点は、周辺接合部53の位置に熱を加えることによって第1の障壁層51および第2の障壁層52を一つに接合させうることである。さらに、第1の障壁層51および第2の障壁層52を加熱し縫合して、障壁50を所望の形態に適合させることもできる。第1の障壁層51は内袋40の上面を形成し、一方、第2の障壁層52は内袋40の下面と、側壁の大部分を形成する。この形状は周辺接合部53を上面に隣接して配置させ、側壁を通しての視認性を高める。または、周辺接合部53を、下面に隣接して、または上面と下面との間の位置に配置させることもできる。このため、周辺接合部53は、第1の障壁層51および第2の障壁層52の両方が側壁の実質的に等しい部分を形成するように側壁を通して広がりうる。したがって、障壁50の具体的形状および周辺接合部53の配置には、本発明の範囲で大きな差がありうる。
【0028】
さまざまな発泡体材料が引張部材60に適している。エチルビニルアセテートおよびポリウレタンを含む熱硬化性ポリマー発泡体は、接着剤とともに用いること、または直接的な接合が引張部材60の発泡気泡によって形成された空洞内に融解材料が広がるように障壁50の融解もしくは軟化を含む場合に用いることができる。障壁50および引張部材60の両方が熱可塑性ポリマー発泡体でできている場合には、材料が障壁50と引張部材60との間の境界層の全体に拡散し、冷却した場合に合わせて固定されるように、その両方の構成要素を形成する材料を融解または軟化させるとよい。このため、引張部材60が熱硬化性または熱可塑性ポリマー発泡体のいずれでできているかに関係なく、直接的な接合は障壁50と引張部材60との間で起こる。また、熱可塑性ポリマー発泡体は熱硬化性ポリマー発泡体よりも引裂特性および剪断特性が強く、熱可塑性ポリマー発泡体は再利用またはリサイクルが可能であるというという利点も示す。
【0029】
熱可塑性ポリマー発泡体に関して、適した材料の一つは、Huntsman International, L.L.C.によってSMARTLITEという商標で製造されている。この熱可塑性ポリウレタン発泡体の適した型は、立方センチ当たり0.65グラムという密度、およびShore A尺度で57という硬度を示す。本発明のさらなる態様において、立方センチ当たり0.50グラムの密度およびShore A尺度で85という硬度を示す熱可塑性ポリウレタン発泡体を用いることもできる。したがって、適したポリマー発泡体の密度および硬度には、本発明の範囲内でかなりの差がありうる。もう1つの適した材料は、Trexel, Incorporatedによって開発された工程によって製造され、MUCELLという商標で販売されている。この工程は、二酸化炭素または窒素などの超臨界流体を熱可塑性ポリウレタンに注入することを含む。すると、大幅かつ急速な圧力低下によって多数の核形成部位が熱可塑性ポリウレタン中に形成される。気泡の成長制御は圧力低下後の圧力および温度のモニタリングによって行われ、熱可塑性ポリウレタンを型に注入することで引張部材60が形成される。
【0030】
内袋40に含められる流体は、例えばヘキサフルオロエタンおよび六フッ化イオウのように、Rudyに対する米国特許第4,340,626号(これは参照として本明細書に組み入れられる)に開示された気体の任意のものでよい。さらに、流体には、加圧されたオクタフルオロプロパン、窒素および空気も含まれうる。流体の圧力は、例えば、平方インチ当たりゼロから50ポンドまでのゲージ圧の範囲であってよい。
【0031】
図1を参照すると、内袋40は、ミッドソール31のポリマー発泡体材料によって少なくとも部分的に包み込まれている。歩行、ランニングまたは他の移動活動中には、ミッドソール31および内袋40が足の踵と地面との間で圧縮され、それによって床反力を減弱させ、エネルギーを吸収する(すなわち、クッション性を与える)。以上に考察したように、引張部材60は第1の障壁層51および第2の障壁層52のそれぞれと接合されており、加圧された流体による張力下に置かれている。このため、内袋40が踵と足との間で圧縮されると、内袋40が圧縮され、引張部材60における張力が軽減される。足および地面によって引き起こされる圧縮力がなくなると、流体によって生じる外向きの力が引張部材60における張力を回復させる。
【0032】
内袋40aは図7〜11に示されており、これは以上に考察したような内袋40の一般的な形状を有する。すなわち、内袋40aは外部障壁50aおよび引張部材60aを含む。障壁50aは、内袋40aに含まれる加圧された流体に対して実質的に不浸透性である第1の障壁層51aおよび第2の障壁層52aを含む。第1の障壁層51aおよび第2の障壁層52aは、各々の周辺の周りで互いに接合されて周辺接合部53aを形成し、引張部材60aおよび加圧された流体が内部に位置する密閉チャンバーを協同で形成する。
【0033】
引張部材60aは、第1の障壁層51aおよび第2の障壁層52aのそれぞれと接合されている発泡体エレメントである。引張部材60aの上面および下面は一般に平面かつ平行である。内袋40とは、より詳細には引張部材60とは対照的に、引張部材60aは、引張部材60aを貫いて横方向に伸びる5つの流路(channels)62aを規定している。本発明のさらなる態様において、引張部材60aの上面および下面は平面でも平行でもなくてよく、さまざまな流路62aが、引張部材60aを貫いて縦方向に、または横方向および縦方向の両方に伸びていてもよい。
【0034】
内袋40aに含まれる加圧された流体は障壁50aに外向きの力を生じさせ、これは第1の障壁層51aおよび第2の障壁層52aを分離させる、または別の様式で外向きに押す傾向がある。引張部材60aは流体による張力下に置かれており、図面に示された内袋40aの全般的に平坦な形状を保持する。内袋40の場合と同じく、直接的な接合が障壁50aおよび引張部材60aを固定する有効な手段であることもある。
【0035】
フットウェア製品1Obは図12に示されており、これは甲部20bおよびソール構造30bを含む。甲部20bは実質的に従来の形状を有し、互いに縫合または接着されて足を確実かつ快適に収容するための内部空隙を形成する、布地、発泡体および革の材料といった複数の構成要素を含みうる。ソール構造30bは甲部20bの下方に配置され、これはミッドソール31bおよびアウトソール32bという2つの主要な構成要素を含む。ミッドソール31bは例えば縫合または接着によって甲部20bの下面に固定されており、ソール構造30bが地面と衝突した時に、力を減弱させ、エネルギーを吸収する働きをする。
【0036】
ミッドソール31bは、フットウェア10bの踵領域に配置された内袋40bを含む。内袋40bの第1の表面は甲部20bの下面に固定され、内袋40bの対側の第2の表面はアウトソール32bに固定されている。このため、内袋40とは異なり、内袋40bはミッドソール31bの他の部分を構成するポリマー発泡体材料から分離している(すなわち、包み込まれていない)。しかし、さらに別の形状において、内袋40bがミッドソール31bを形成するポリマー発泡体材料の内部に包み込まれてもよく、または内袋40bが足の全体を支えるためにミッドソール31bの長軸方向にわたって広がってもよい。
【0037】
図13〜19に示されているように、内袋40bの主な構成要素は、外部障壁50bおよび引張部材60bである。障壁50bは、内袋40bに含まれる加圧された流体に対して実質的に不浸透性である第1の障壁層51bおよび第2の障壁層52bを含む。内袋40bに含まれる加圧された流体は障壁50bに外向きの力を生じさせ、これは第1の障壁層51bおよび第2の障壁層52bを分離させる、または別の様式で外向きに押す傾向がある。しかし、引張部材60bは第1の障壁層51bおよび第2の障壁層52bのそれぞれと接合され、加圧された流体による張力下に置かれており、それによって障壁50bの外向き移動を抑制する。
【0038】
第1の障壁層51bおよび第2の障壁層52bは各々の周辺の周りで互いに接合されて周辺接合部53bを形成し、引張部材60bおよび加圧された流体が内部に位置する密閉チャンバーを協同で形成する。障壁50bに適した材料には、障壁50に関連して以上に考察した材料のうち任意のものが含まれる。引張部材60bは、障壁50bと接合されているポリマー発泡体部材である。障壁50bおよび引張部材60bを固定するために接着を利用してもよいが、障壁50bおよび引張部材60bの両方が熱可塑性ポリマーでできている場合には直接的な接合も適している。したがって、引張部材60bのポリマー発泡体材料は、Huntsman lnternational, L.L.C.によってSMARTLITEという商標で製造されている熱可塑性ポリウレタン発泡体でもよく、またはTrexel, Incorporatedによって開発された工程によって製造され、MUCELLという商標で販売されている材料であってもよい。熱可塑性または熱硬化性の別にかかわらず、他の適した発泡体を引張部材60bのために用いることもできる。
【0039】
引張部材60は、以上に考察したように、障壁50と接合されている表面が平面かつ平行であるような形状を有する。これに対して、引張部材60bは凹型の形状を有する上面を含み、引張部材60bは全般に平面な下面を含む。上面の凹型形状は、甲部20と密着する凹型甲部領域を内袋40bに与え、着用者の踵を確実に収容するための凹みを形成する。同様に、平面な下面は、アウトソール32bと密着する全般的に平面な形状を内袋40bに与え、地面と接触するための表面を形成する。引張部材60bの表面のさまざまな外形が、以上に考察した形状とかなり異なってもよい。例えば、下面にはフットウェア10の後外側の隅で斜面を組み込んでもよく、または両方の表面が平面であってもよい。
【0040】
引張部材60は障壁の両対辺50の間に連続的に伸びているが、引張部材60bは、ポリマー発泡体材料を貫いて伸びる多数の交差する流路61bおよび62bを含む。流路61bは引張部材60bの前方部分から引張部材60bの後方部分へと縦方向に伸びている。同様に、流路62bは引張部材60bの両端間を横方向に伸びている。流路61bおよび62bは引張部材60bの圧縮性を高め、内袋40bの総重量を軽くする。引張部材60bは4つの流路61bおよび6つの流路62bを有するものとして描かれているが、任意の数の流路61bおよび62bが本発明の範囲に含まれることを想定している。さらに、流路61bおよび62bは、引張部材60bの全体を貫いて伸びるのではなく、引張部材60bを部分的に貫いて伸びてもよい。
【0041】
流路61bおよび62bは引張部材60bの部分を取り除いており、引張部材60bの上部および下部の間に伸びた多数の支柱63bを形成する。支柱63bの寸法には、流路61bおよび62bの量および寸法に応じてかなりの差がありうる。支柱63bの寸法は内袋40bの圧縮性に影響を及ぼすため、関連技術分野の当業者は、適した圧縮性の修正または別の様式での選択のために、流体の圧力および支柱63bの寸法などのさまざまな要因の均衡をとることができる。内袋40bの圧縮性に影響を及ぼしうる他の要因には、ポリマー発泡体材料の密度および内袋40bの厚みが含まれる。内袋40b内部の加圧された流体は、引張部材60bを張力下に置く。引張部材60bの上部および下部は張力下にあるが、張力の大部分は支柱63bによって生じる。張力は支柱63bを引き延ばす、または別の様式で伸長させる傾向がある。したがって、支柱63bの伸長の程度が制限されるように支柱63bの寸法を選択してもよい。
【0042】
図15および16に示されているように、流路61bは引張部材40bの長軸方向全体に沿って伸び、一般に矩形の形態を示す。同様に、図14に示されているように、流路62bは引張部材60bの横幅全体にわたって伸び、一般に卵形の形態を示す。これらは流路61bおよび62bに関して適した形態であるが、流路61bおよび62bの形態は、円形、三角形、六角形または他の規則的もしくは不規則的な形状を含むように、さまざまであってよい。流路61bおよび62bは引張部材60bの長さ方向および幅方向の全体を通じて一定の形態を有するように描かれているものの、これは一定でない変化する形態または変化する寸法を有してもよい。したがって、流路61bおよび62bの形状は、引張部材60bの異なる部分に対して異なる圧縮性または特性を与えるように変化していてもよい。例えば、流路61bおよび62bは、後外側隅でのソール構造30bの全体的圧縮性を低下させるために引張部材60bの後外側部分では寸法が大きくてもよい。
【0043】
引張部材60bの上面および下面は障壁50bと接合されている。しかし、引張部材60bの側面が障壁50bと接合されないままであってもよい。内袋40bの側壁が、内袋40b内部の流体の圧力のために隆起するか、または他の様式で突出してもよい。いくつかの態様において、引張部材60bの側壁は障壁50bと全体的または部分的に接合されている。
【0044】
引張部材60bは、引張部材60bの一般的な形態を備えた空隙を有する型にポリマー発泡体を注入する射出成形工程によって形成させることができる。種々の除去可能な棒を、流路61bおよび62bの配置に対応する場所で空隙を通して伸ばしてもよい。ポリマー発泡体の少なくとも部分的な硬化の後に、棒を除去し、型を開けて引張部材60bを取り出すことができる。
【0045】
図20〜23を参照すると、もう1つの内袋40cが、外部障壁50cおよび引張部材60cを含むものとして描かれている。以前の態様と同じく、障壁50cは、内袋40cに含まれる加圧された流体に対して実質的に不浸透性である第1の障壁層51cおよび第2の障壁層52cを含む。内袋40cに含まれる加圧された流体は、障壁5Ocに外向きの力を生じさせ、これは第1の障壁層51cおよび第2の障壁層52cを分離させる、または別の様式で外向きに押す傾向がある。しかし、引張部材60cは第1の障壁層51cおよび第2の障壁層52cのそれぞれと接合され、加圧された流体による張力下に置かれており、それによって障壁50cの外向き移動を抑制する。
【0046】
第1の障壁層51cおよび第2の障壁層52cは各々の周辺の周りで互いに接合されて周辺接合部53cを形成し、引張部材60cおよび加圧された流体が内部に位置する密閉チャンバーを協同で形成する。障壁50cに適した材料には、障壁50に関連して以上に考察した材料のうち任意のものが含まれる。引張部材60cは、障壁50cと接合されているポリマー発泡体部材である。障壁50cおよび引張部材60cを固定するために接着を利用してもよいが、障壁50cおよび引張部材60cの両方が熱可塑性ポリマーでできている場合には直接的な接合も適している。したがって、引張部材60cのポリマー発泡体材料は、Huntsman lnternational, L.L.C.によってSMARTLITEという商標で製造されている熱可塑性ポリウレタン発泡体でもよく、またはTrexel, Incorporatedによって開発された工程によって製造され、MUCELLという商標で販売されている材料であってもよい。熱可塑性または熱硬化性の別にかかわらず、他の適した発泡体を引張部材60cのために用いることもできる。
【0047】
引張部材60cは凹型形状を有する上面を含み、引張部材60cは全般に平面な下面を含む。上面の凹型形状は、甲部と密着する凹型甲部領域を内袋40cに与え、着用者の踵を確実に収容するための凹みを形成する。同様に、平面な下面は、アウトソールと密着する全般的に平面な形状を内袋40cに与え、地面と接触するための表面を形成する。しかし、引張部材60cの表面のさまざまな外形が、以上に考察した形状とかなり異なってもよい。
【0048】
引張部材60cは、ポリマー発泡体材料の全体または少なくとも一部を貫いて伸びた多数の流路61cおよび62cを含み、引張部材60cの上部および下部の間に伸びた支柱63cを形成する。流路61cは引張部材60cの両端間を横方向に伸びている。流路62cは後方部分でポリマー発泡体材料の中を伸び、放射状形状を形成する。すなわち、流路62cは引張部材60cの半円形の後方部分の周りでポリマー発泡体材料の中を伸び、流路62cは最後方の流路61cと交差する。引張部材60bとは異なり、引張部材60cは縦方向に伸びる流路を有するものとしては描かれていないが、さらに別の態様では長軸方向の流路を有しうる。流路61cおよび62cは引張部材60cの圧縮性を高め、内袋40cの総重量を軽くする。
【0049】
流路61cおよび62cは、種々の領域における引張部材60cの圧縮性を選択的に高める、または変化させるように構成されている。図21を参照すると、引張部材60cの前方領域における流路61cは垂直方向にある。しかし、その後の流路61cは、流路61cが後方に伸びるとともに徐々に対角方向または他の様式での非垂直方向となっている。さらに、種々の支柱63cも後方領域では前方領域よりも垂直でなくなる傾向がある。圧縮されると、垂直な支柱63cは一般に、垂直でない支柱または対角な支柱63cを上回る支えを与えると考えられる。したがって、流路63cの向きを利用して、さまざまな領域での内袋40cの圧縮性を影響を与えること、またはそれを別の様式で設定することができる。さらに、後方領域での内袋40cの圧縮性をさらに高めるために流路62cが垂直でない向きを示してもよい。
【0050】
引張部材60cの上面および下面は障壁50cと接合されている。引張部材60cの側面が障壁50cと接合されないままであってもよい。内袋40cの側壁が、内袋40c内部の流体の圧力のために隆起するか、または他の様式で突出してもよい。いくつかの態様において、引張部材60cの側壁は障壁50cと全体的または部分的に接合されている。
【0051】
図24〜26Bを参照すると、内袋40dが外部障壁50dおよび多数の引張部材60dを含むものとして描かれている。障壁50dは、内袋40dに含まれる加圧された流体に対して実質的に不浸透性である第1の障壁層51dおよび第2の障壁層52dを含む。第1の障壁層51dおよび第2の障壁層52dは各々の周辺の周りで互いに接合されて周辺接合部53dを形成し、引張部材60dおよび加圧された流体が内部に位置する密閉チャンバーを協同で形成する。
【0052】
引張部材60dは多数の離散的な発泡体部材であり、これは第1の障壁層51dおよび第2の障壁層52dのそれぞれと接合されている支柱の形状を有してもよい。引張部材60dは一般に均一な寸法を有するものとして描かれているが、高さおよび厚みといった異なる寸法を有してもよく、それも本発明の範囲に含まれる。引張部材60dの上面および下面は一般に平面かつ平行であるが、内袋40dの形態を与えるような凹凸を有してもよい。
【0053】
内袋40dに含まれる加圧された流体は、障壁5Odに外向きの力を生じさせ、これは第1の障壁層51dおよび第2の障壁層52dを分離させる、または別の様式で外向きに押す傾向がある。引張部材60dはそれぞれ流体による張力下に置かれており、図面に示された内袋40dの全般に平坦な形状を保持する。内袋40の場合と同じく、直接的な接合が障壁50dおよび引張部材60dを固定する有効な手段であることもある。
【0054】
内袋40eは図27〜29Aに示されており、以上に考察したような内袋40の一般的な形状を有する。すなわち、内袋40eは外部障壁50eおよび引張部材60eを含む。障壁50eは、内袋40eに含まれる加圧された流体に対して実質的に不浸透性である第1の障壁層51eおよび第2の障壁層52eを含む。第1の障壁層51eおよび第2の障壁層52eは、各々の周辺の周りで互いに接合されて周辺接合部53eを形成し、引張部材60eおよび加圧された流体が内部に位置する密閉チャンバーを協同で形成する。
【0055】
引張部材60eは、第1の障壁層51eおよび第2の障壁層52eのそれぞれと接合されている発泡体部材である。引張部材60eの上面および下面は一般に平面かつ平行であるが、凹凸を有してもよい。内袋40とは、より詳細には引張部材60とは対照的に、引張部材60eは、引張部材60eを貫いて垂直に伸びる多数の流路61eを規定している。
【0056】
内袋40eに含まれる加圧された流体は障壁50eに外向きの力を生じさせ、これは第1の障壁層51eおよび第2の障壁層52eを分離させる、または別の様式で外向きに押す傾向がある。引張部材60eは流体による張力下に置かれており、図面に示された内袋40eの全般的に平坦な形状を保持する。内袋40の場合と同じく、直接的な接合が障壁50eおよび引張部材60eを固定する有効な手段であることもある。
【0057】
本発明を、以上および添付の図面において、さまざまな態様を参照しながら開示してきた。しかし、本開示によって果たされる目的は、本発明に関係するさまざまな特徴および概念の例を提供するこであり、発明の範囲を限定することではない。当業者は、添付する特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を逸脱することなく、上記の態様に対してさまざまな変更および修正を行いうることを認識していると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含む内袋(bladder):
密閉された外部障壁;
障壁の内部に位置し、障壁の両対辺と接合された発泡体引張部材(foam tensile member);ならびに
障壁の内部に位置する流体であって、障壁に外向きの力を加えるため、および引張部材に張力を生じさせるために加圧されている流体。
【請求項2】
引張部材が障壁の両対辺と直接接合されている、請求項1記載の内袋。
【請求項3】
障壁が第1の部分および第2の部分を有する内部空間を規定し、流体が第1の部分の内部に位置し、引張部材が第2の部分の内部に位置する、請求項1記載の内袋。
【請求項4】
引張部材が第1の区域および第2の区域を有し、第1の区域における引張部材の密度が第2の区域における引張部材の密度よりも高い、請求項1記載の内袋。
【請求項5】
引張部材が連続的であって障壁の両対辺の間に伸びている、請求項1記載の内袋。
【請求項6】
引張部材が障壁の両対辺の間に伸びており、発泡体の中に伸びた多数の流路(channels)を規定する、請求項1記載の内袋。
【請求項7】
流路が引張部材を貫いて伸びている、請求項6記載の内袋。
【請求項8】
流路が引張部材を通して一定の寸法を示す、請求項6記載の内袋。
【請求項9】
第1の流路が横向きに配置され、第2の流路が縦向きに配置される、請求項6記載の内袋。
【請求項10】
第1の流路および第2の流路が交差する、請求項9記載の内袋。
【請求項11】
流路が発泡体の支柱を形成する、請求項6記載の内袋。
【請求項12】
支柱が引張部材の第1の部分では実質的に垂直であり、支柱が引張部材の第2の部分では垂直でない、請求項11記載の内袋。
【請求項13】
流路の少なくとも一部分が放射状の向きを示す、請求項6記載の内袋。
【請求項14】
障壁の第1の表面が、凹みを形成するような輪郭となっている、請求項1記載の内袋。
【請求項15】
障壁の第2の表面が実質的に平面である、請求項14記載の内袋。
【請求項16】
障壁および引張部材が熱可塑性ポリマー材料でできている、請求項1記載の内袋。
【請求項17】
障壁および引張部材が熱可塑性ポリウレタン材料でできている、請求項1記載の内袋。
【請求項18】
甲部および甲部に固定されたソール構造を有するフットウェア製品(article of footwear)であり、ソール構造が、
ポリマー材料でできている密閉された外部障壁;
ポリマー材料でできている発泡体引張部材であって、直接障壁の両対辺と接合された引張部材;ならびに
障壁の内部に位置する流体であって、障壁に外向きの力を加えるため、および引張部材に張力を生じさせるために加圧されている流体
を含む、フットウェア製品(article of footwear)。
【請求項19】
ポリマー材料が熱可塑性ポリウレタンである、請求項18記載のフットウェア製品。
【請求項20】
障壁、引張部材、および流体が、少なくとも部分的にはポリマー発泡体材料によって包まれた内袋を形成する、請求項18記載のフットウェア製品。
【請求項21】
内袋がフットウェアの踵領域に配置されている、請求項20記載のフットウェア製品。
【請求項22】
引張部材が第1の区域および第2の区域を有し、第1の区域における引張部材の密度が第2の区域における引張部材の密度よりも高い、請求項18記載のフットウェア製品。
【請求項23】
引張部材が連続的であって障壁の両対辺の間に伸びている、請求項18記載のフットウェア製品。
【請求項24】
引張部材が障壁の両対辺の間に伸びており、熱可塑性ポリマー発泡体材料の中に伸びた多数の流路を規定する、請求項18記載のフットウェア製品。
【請求項25】
流路が引張部材を貫いて伸びている、請求項24記載のフットウェア製品。
【請求項26】
流路の少なくとも一部分が放射状の向きを示す、請求項24記載のフットウェア製品。
【請求項27】
流路が発泡体の支柱を形成する、請求項24記載のフットウェア製品。
【請求項28】
支柱が引張部材の第1の部分では実質的に垂直であり、支柱が引張部材の第2の部分では垂直でない、請求項27記載のフットウェア製品。
【請求項29】
障壁が側壁部分では引張部材と接合されていない、請求項18記載のフットウェア製品。
【請求項30】
以下のものを含むフットウェア製品:
足を収容するための内部空隙(interior void)を規定する甲部;ならびに
甲部に固定されたソール構造であって、ミッドソールの少なくとも一部分を構成する内袋を含み、内袋が以下のものを含むソール構造:
熱可塑性ポリマーシート材料でできた密閉された外部障壁であって、内部空間を規定する障壁;
熱可塑性ポリマー発泡体材料でできた引張部材であって、内部空間の内部に位置し、障壁の両対辺と接合された引張部材;ならびに
内部空間の内部に位置する流体であって、少なくとも一部分が引張部材から分離されており、障壁に外向きの力を加えるため、および引張部材に張力を生じさせるために加圧されている流体。
【請求項31】
引張部材が障壁の両対辺と直接接合されている、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項32】
障壁が内袋の側壁部分では引張部材と接合されていない、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項33】
熱可塑性ポリマーシート材料および熱可塑性ポリマー発泡体材料がポリウレタン材料である、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項34】
障壁が流体に対して実質的に不浸透性である、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項35】
引張部材が第1の区域および第2の区域を有し、第1の区域における引張部材の密度が第2の区域における引張部材の密度よりも高い、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項36】
引張部材の第1の区域がフットウェアの内側に配置されている、請求項35記載のフットウェア製品。
【請求項37】
内袋がフットウェアの踵領域に配置されており、内袋の上面が足の踵部分を収容するための凹みを形成している、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項38】
障壁の下面が実質的に平面である、請求項37記載のフットウェア製品。
【請求項39】
引張部材が連続的であって障壁の両対辺の間に伸びている、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項40】
引張部材が障壁の両対辺の間に伸びており、熱可塑性ポリマー発泡体材料の中に伸びた多数の流路を規定する、請求項30記載のフットウェア製品。
【請求項41】
流路が引張部材を貫いて伸びている、請求項40記載のフットウェア製品。
【請求項42】
第1の流路が横方向に配置されており、第2の流路が縦方向に配置されている、請求項40記載のフットウェア製品。
【請求項43】
第1の流路および第2の流路が交差する、請求項42記載のフットウェア製品。
【請求項44】
流路の少なくとも一部分が放射状の向きを示す、請求項40記載のフットウェア製品。
【請求項45】
流路が発泡体の支柱を形成する、請求項40記載のフットウェア製品。
【請求項46】
支柱が引張部材の第1の部分では実質的に垂直であり、支柱が引張部材の第2の部分では垂直でない、請求項45記載のフットウェア製品。
【請求項47】
以下のものを含むフットウェア製品:
足を収容するための内部空隙を規定する甲部;ならびに
甲部に固定されたソール構造であって、ミッドソールの少なくとも一部分を構成する内袋を含み、内袋が以下のものを含むソール構造:
互いに接合されて内部空間を規定するポリマー材料の第1のシートおよび第2のシートでできた、密閉された外部障壁;
ポリマー発泡体材料ででき、内部空間の内部に位置する引張部材であって、第2の部分から間隔をおいて配置されて多数の支柱と接続している第1の部分であって第1のシートと接合された第1の部分、および第2のシートと接合された第2の部分を含む引張部材;ならびに
内部空間の内部に位置する、加圧された流体。
【請求項48】
ポリマー材料およびポリマー発泡体材料が熱可塑性ポリマーである、請求項47記載のフットウェア製品。
【請求項49】
第1の部分および第2の部分が障壁と直接接合されている、請求項47記載のフットウェア製品。
【請求項50】
障壁が内袋の側壁部分では引張部材と接合されていない、請求項47記載のフットウェア製品。
【請求項51】
支柱が、熱可塑性ポリマー発泡体材料の中に伸びた多数の流路を形成する、請求項47記載のフットウェア製品。
【請求項52】
流路が引張部材を貫いて伸びている、請求項51記載のフットウェア製品。
【請求項53】
第1の流路が横方向に配置されており、第2の流路が縦方向に配置されている、請求項51記載のフットウェア製品。
【請求項54】
流路の少なくとも一部分が放射状の向きを示す、請求項51記載のフットウェア製品。
【請求項55】
支柱が引張部材の第1の部分では実質的に垂直であり、支柱が引張部材の第2の部分では垂直でない、請求項47記載のフットウェア製品。
【請求項56】
流体が障壁に外向きの力を加え、支柱に張力を生じさせる、請求項47記載のフットウェア製品。
【請求項57】
フットウェア製品のための構成要素を製造する方法であって、
内部空間を規定する障壁を形成する段階;
発泡体部材を内部空間の内部に配置する段階;
発泡体部材を障壁の両対辺と直接結合させる段階;および
障壁に外向きの力を加え、発泡体部材に張力を生じさせるために内部空間を加圧する段階
を含む方法。
【請求項58】
形成の段階が、熱可塑性ポリマー材料の少なくとも1つのシートから障壁を製造することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
直接結合させる段階が、発泡体部材および障壁を接着剤なしに結合させるために、発泡体部材および障壁を加熱することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
直接結合させる段階が、構成要素の側壁部分に非結合領域を形成することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
加圧の段階が、障壁を密封することを含む、請求項57記載の方法。
【請求項62】
障壁および発泡体部材のための材料が熱可塑性ポリマーであるように選択する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項63】
熱可塑性ポリマーがポリウレタンである、請求項62記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−148915(P2010−148915A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48619(P2010−48619)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2007−500872(P2007−500872)の分割
【原出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(505087849)ナイキ インコーポレーティッド (123)
【Fターム(参考)】