盛土支持地盤の補強構造
【課題】低改良率の地盤改良により盛土支持地盤を有効に補強して充分な側方流動防止効果を得る。
【解決手段】盛土1の少なくとも周縁部を支持する地盤改良体3を盛土支持地盤2中に築造するとともに、地盤改良体の上部に引張耐力を有する芯材6を一体に固着して該地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強せしめる。地盤改良体が盛土の幅方向に沿う壁状である場合にはその幅方向内側の上部に芯材を固着する。盛土の両側にそれぞれ地盤改良体を設けて双方を引張材により連結する場合には、双方の地盤改良体の幅方向外側の上部にそれぞれ芯材を固着してそれら芯材の上部に引張材を連結する。
【解決手段】盛土1の少なくとも周縁部を支持する地盤改良体3を盛土支持地盤2中に築造するとともに、地盤改良体の上部に引張耐力を有する芯材6を一体に固着して該地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強せしめる。地盤改良体が盛土の幅方向に沿う壁状である場合にはその幅方向内側の上部に芯材を固着する。盛土の両側にそれぞれ地盤改良体を設けて双方を引張材により連結する場合には、双方の地盤改良体の幅方向外側の上部にそれぞれ芯材を固着してそれら芯材の上部に引張材を連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な盛土支持地盤上に盛土を造成する際の、盛土支持地盤の安定化や側方流動の防止等のための補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように地盤改良は軟弱地盤を補強し液状化を防止するための手法として一般的であり、たとえば特許文献1には、既設構造物の基礎の外周に沿って地盤改良による固化体ブロックを形成し、その固化体ブロックに鋼管矢板を打設するという構造物基礎地盤の液状化防止構造が開示されている。また、特許文献2には、地盤改良により形成するソイルセメント柱内にそれよりも圧縮強度が高いコンクリート柱体を芯材として埋設するという地盤改良体および地盤改良工法が開示されている。
【0003】
また、軟弱地盤上に盛土を造成するに際して軟弱な原地盤を地盤改良により補強することも広く行われており、その一事例を図3に示す。
これは、道路や鉄道あるいは堰堤のような所定幅で一方向に長い形態の盛土1を軟弱な盛土支持地盤2(原地盤)上に造成する場合の適用例であって、深層混合処理工法等による地盤改良体3を盛土1の両側の法面の下部において安定な支持層4に達するように築造し、それら地盤改良体3によって盛土1による上載荷重を支持するとともに盛土支持地盤2に生じる側方流動に対して抵抗するというものである。
【特許文献1】特開2005−200870号公報
【特許文献2】特開2003−55956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される液状化防止構造は地上タンク等の構造物の基礎に適用してその支持地盤を補強するための手法としては好適であると思われ、また特許文献2に示される地盤改良体は地盤改良杭の支持力を増強するための手法としては好適と思われるが、これらを軟弱な盛土支持地盤を対象とする補強手法として適用することは、大がかりな施工を必要とするし工費がかさむものであるので必ずしも好適に採用できるものではない。
【0005】
その点では図3に示すような地盤改良体3による軟弱地盤に対する補強手法は有利であると考えられるが、これにも次のような問題を残している。
すなわち、盛土支持地盤2に側方流動等による水平変位が生じる場合には、図3(a)に示すように深部よりも地表部で大きな地盤変位が生じ、したがって地盤改良体3の上部には側方流動圧による大きな曲げ荷重が作用して外側への曲げ変形が生じることが想定される。この場合、地盤改良体3は圧縮力に対しては充分な耐力を有するものの引張力に対しては充分な耐力はないことから、上記のような曲げ変形が生じた場合には引張側となる上部内側に比較的容易にひび割れが生じてしまい、側方流動圧に対する充分な抵抗力を発揮できないことが懸念される。
そのため、従来においては地盤改良体3に過大な引張応力が生じないようにその幅寸法(側方流動を受ける方向の幅寸法)を充分に大きくする必要があり、通常は図示しているように地盤改良体3の幅Wを長さLに対して50〜70%程度にもする必要があるとされている。
このように、従来においては地盤改良体3による補強効果を充分に確保するためには幅の広い地盤改良体3を多数築造する必要があり、したがって盛土支持地盤2に対する改良率を充分に高くせざるを得ず、必然的にコスト削減や工期短縮にも自ずと限界があった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は盛土支持地盤を地盤改良体により補強する場合において、低改良率であっても充分な補強効果が得られて工費削減と工期短縮を充分に図ることのできる有効適切な補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は軟弱な盛土支持地盤上に盛土を造成する際の盛土支持地盤の補強構造であって、盛土の少なくとも周縁部を支持する地盤改良体を盛土支持地盤中に築造するとともに、該地盤改良体の上部に引張耐力を有する芯材を一体に固着して該地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強せしめてなることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、該地盤改良体の幅方向内側の上部に芯材を固着すると良い。
あるいは、盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向両側においてそれぞれ盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、それら地盤改良体の幅方向外側の上部にそれぞれ芯材を固着するとともに、双方の芯材の上部どうしを引張材により連結することが考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地盤改良体の上部に芯材を一体に固着することによって地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強でき、したがって地盤改良体に側方流動圧が作用してもその上部に大きな変位や曲げ変形が生じることを有効に回避でき、地盤改良体が倒れ込んだりその上部にひび割れが生じるといった事態を有効に回避することができ、その結果、改良率をさほど大きくせずとも優れた側方流動防止効果が得られ工費削減と工期短縮に大きく寄与し得る。
【0010】
特に、地盤改良体を盛土の幅方向に沿う壁状とする場合には、上部が外側に曲げ変形するので内側が引張側となり、したがって上部内側に芯材を設けることにより引張耐力を効果的に増強することができる。
また、盛土の両側にそれぞれ壁状の地盤改良体を設ける場合には、双方の地盤改良体に設けた芯材どうしを引張材により連結することによってその全体で優れた増強効果が得られるし、この場合には地盤改良体の上部の外側への曲げ変形が引張材により拘束されることにより外側が引張側となり、したがって上部外側に芯材を設けることにより引張耐力を効果的に増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態を図1に示す。本実施形態は図3に示した従来の補強構造と同様に、軟弱な盛土支持地盤(原地盤)2上に道路や鉄道あるいは堰堤のような所定幅で一方向に長い盛土1を造成する場合の適用例であって、盛土1の両側の対向する法面の下部(周縁部)に深層混合処理工法等による地盤改良体3を安定な支持層4に達するように築造し、その地盤改良体3によって盛土1による上載荷重を支持するとともに盛土支持地盤2に生じる側方流動等の水平変位に抵抗することを基本とするものであるが、特に本実施形態では地盤改良体3の頭部を含む上部に曲げ補強用の芯材6を一体に固着したことを主眼としている。
【0012】
図示例の地盤改良体3は、円形断面の3本の地盤改良杭を相互にラップさせて一体化することにより、盛土1の幅方向(横断方向:想定される側方流動等の水平変位方向である)に沿う壁状の形態で築造されたものである。
その地盤改良体3を形成している3本の地盤改良杭のうち最も内側に位置しているものの頭部を含む上部には、H形鋼あるいは鋼管等の鋼材からなる短尺の剛性のある芯材6、もしくは定着突起を設けたワイヤー等の可撓性の芯材6が挿入されて一体に固着されている。なお、この芯材6は引張耐力を有するものであれば鋼材に限らない。
芯材6は地盤改良体3の上部が外側に曲げ変形することによるひび割れの発生を防止するためのもので、曲げ変形した際に引張側となる上部内側に設けられているとともに、その芯材6の長さや強度はそこに生じると想定される引張応力がひび割れの生じる限界である許容応力の範囲となるように設定されており、これにより地盤改良体3の引張耐力は効果的に増強されたものとなっている。例えば、地盤改良体3の特性を表すための特性値βを算定し、地盤改良体3の頭部から下方に1/β〜1.5/βの範囲に入れることも考えられる。
なお、地盤改良体3に対する芯材6の一体化強度を確保するために、芯材6にたとえばスタッドや突起等の適宜の定着力増強手段を設けておいても良い。
また、本実施形態では、両側の地盤改良体3に加えて、それらの間に複数(図示例では3本)の他の地盤改良杭7を間隔をおいて築造しているが、これら地盤改良杭7は必ずしも設けることはなく盛土1全体の幅が小さいような場合には省略しても差し支えない。
【0013】
本第1実施形態の補強構造によれば、軟弱な盛土支持地盤2に側方流動が生じた場合にはその側方流動圧が地盤改良体3の特に上部に作用して地盤改良体3の上部は外側に曲げ変形しようとするのであるが、地盤改良体3の頭部を含む上部には曲げ補強材としての芯材6を差し込んで一体に固着していることから、その芯材6によって地盤改良体3の曲げ変形が拘束され、したがって地盤改良体3の幅Wをさほど大きくせずとも、また地盤改良体3自体の強度をさほど大きくせずとも優れた側方流動等の水平変位防止効果が得られ、図3に示した従来例のような単なる地盤改良による場合に比べて改良率を充分に削減することが可能であり、工費削減と工期短縮に大きく寄与し得る。
【0014】
図2は第2実施形態を示すものである。これは、第1実施形態と同様に地盤改良体3の頭部を含む上部に芯材6を固着して引張耐力を増強するものであるが、芯材6を対向する盛土周縁部の両側に位置する地盤改良体3の頭部を含む上部で外側に設置するとともに、それら芯材6の頭部を盛土1内にやや突出させて盛土1と盛土支持地盤2との層境付近でかつ芯材6の上部に引張材5を連結することにより、双方の芯材6どうしを引張材5により連結したものである。
【0015】
引張材5としては所望の引張強度を有する素材からなる棒材や線材、たとえば小断面の鉄骨材や鋼材、鉄筋やPC鋼線、あるいは高強度繊維によるジオテキスタイルやロープ等、が好適に採用可能であり、必要に応じて耐久性確保のための防錆等の処理を施せば良い。
その引張材5は両端部がそれぞれ上記の芯材6を介して両側の地盤改良体3の頭部を含む上部に強固に定着されることにより両側の地盤改良体3の上部相互間に架設され、したがってこの引張材5がタイロッドと同様に機能して両側の地盤改良体3どうしが構造的に連結されてそれらの全体でいわば門形のフレームが構成されたものとなっている。
また、引張材5の中間部は、両側の地盤改良体3の間に設けられた地盤改良杭7の頭部によって下方から支持されており、これにより引張材5の中間部が下方に大きく撓んでしまったり、引張材5自体が盛土支持地盤2中に沈下してしまうことが防止されるようになっている。
【0016】
なお、必要であれば破線で示しているように一部あるいは全ての地盤改良杭7の頭部を含む上部にも芯材6を固着して、引張材5の中間部もその芯材6を介して地盤改良杭7に対して連結しても良い。
それから、例えば盛土1の幅が広い場合は、上記の盛土1の両側の対向する地盤改良体3の上部どうしを引張材5で盛土1の幅方向に沿って連結するのではなく、それらの中間部に位置する芯材6が配された他の地盤改良体7と一方の周縁部に位置する芯材6が配された地盤改良体3との上部どうしを引張材5で盛土1の幅方向に沿って連結するものであっても良い。
また、引張材5は盛土1と盛土支持地盤2の層境付近に配設すれば良く、その限りにおいては引張材5を盛土1内の底層部に配設しても良いし、あるいは盛土支持地盤2内の表層部に配設しても良く、その場合には芯材6の上部を盛土1内に突出させる必要はない。
【0017】
本第2実施形態の補強構造においては、第1実施形態と同様に地盤改良体3の上部における引張耐力が芯材6により増強されることに加え、両側の地盤改良体3どうしを引張材5により連結していることから、双方の地盤改良体3はそれぞれ引張材5によって後方側から支持され、かつ双方の地盤改良体3に作用する側方流動圧は引張材5を介して逆側の地盤改良体3にも伝達され、したがってそれらの全体で地盤改良体3の変位や曲げ変形を確実に拘束することができる。
この場合、地盤改良体3の上部は外側への変位が引張材5により拘束されることから内側が圧縮側となって外側が引張側となるので、図示例のように第1実施形態とは逆に芯材6を外側に設置することにより引張耐力を効果的に増強できるものとなっている。
【0018】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、地盤改良体3の引張耐力を増強するべくその上部の引張側となる範囲に鋼材からなる芯材6を挿入して一体に固着するという本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、その他の構成は任意であって様々な設計的変形や応用が可能であることはいうまでもない。
この他、第1実施形態、第2実施形態の双方において、地盤改良体3の間に間隙8が空けられているが、この間隙8の大きさについては、この間隙8から盛土支持地盤2内の土砂が盛土支持地盤2外に向け出さないように設定する必要がある。具体的には、軟弱地盤の粘着力や側方流動圧等を基に設定される。
なお、上記実施形態のように、盛土1の周縁部に位置する地盤改良体3は盛土1の幅方向に沿うような壁状に築造することが好ましいが、要は地盤改良体3の上部における曲げ耐力を芯材6とともに可及的に増強すれば良いのであって、その限りにおいて地盤改良体3は必ずしも壁状に築造することはない。また、壁状に築造する場合であっても、必ずしも盛土の幅方向に平行ないし沿うように設けることなく、例えば幅方向に対して斜めに築造したり、さらには長さ方向に沿うように築造しても勿論良い。
また、これらの実施形態において、盛土支持地盤2の上に直接盛土1が載荷される形態の他に、擁壁や補強壁等の基礎版や補強シート等を介して盛土1が載荷される形態であっても良く、その場合にはそれら基礎版や補強シート等と盛土支持地盤2との間に引張材5を配設すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の盛土支持地盤の補強構造の第1実施形態を示す図である。
【図2】同、第2実施形態を示す図である。
【図3】従来の盛土支持地盤の補強構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 盛土
2 盛土支持地盤(軟弱地盤)
3 地盤改良体
4 支持層
5 引張材
6 芯材(鋼材)
7 地盤改良杭(地盤改良体)
8 間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な盛土支持地盤上に盛土を造成する際の、盛土支持地盤の安定化や側方流動の防止等のための補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように地盤改良は軟弱地盤を補強し液状化を防止するための手法として一般的であり、たとえば特許文献1には、既設構造物の基礎の外周に沿って地盤改良による固化体ブロックを形成し、その固化体ブロックに鋼管矢板を打設するという構造物基礎地盤の液状化防止構造が開示されている。また、特許文献2には、地盤改良により形成するソイルセメント柱内にそれよりも圧縮強度が高いコンクリート柱体を芯材として埋設するという地盤改良体および地盤改良工法が開示されている。
【0003】
また、軟弱地盤上に盛土を造成するに際して軟弱な原地盤を地盤改良により補強することも広く行われており、その一事例を図3に示す。
これは、道路や鉄道あるいは堰堤のような所定幅で一方向に長い形態の盛土1を軟弱な盛土支持地盤2(原地盤)上に造成する場合の適用例であって、深層混合処理工法等による地盤改良体3を盛土1の両側の法面の下部において安定な支持層4に達するように築造し、それら地盤改良体3によって盛土1による上載荷重を支持するとともに盛土支持地盤2に生じる側方流動に対して抵抗するというものである。
【特許文献1】特開2005−200870号公報
【特許文献2】特開2003−55956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される液状化防止構造は地上タンク等の構造物の基礎に適用してその支持地盤を補強するための手法としては好適であると思われ、また特許文献2に示される地盤改良体は地盤改良杭の支持力を増強するための手法としては好適と思われるが、これらを軟弱な盛土支持地盤を対象とする補強手法として適用することは、大がかりな施工を必要とするし工費がかさむものであるので必ずしも好適に採用できるものではない。
【0005】
その点では図3に示すような地盤改良体3による軟弱地盤に対する補強手法は有利であると考えられるが、これにも次のような問題を残している。
すなわち、盛土支持地盤2に側方流動等による水平変位が生じる場合には、図3(a)に示すように深部よりも地表部で大きな地盤変位が生じ、したがって地盤改良体3の上部には側方流動圧による大きな曲げ荷重が作用して外側への曲げ変形が生じることが想定される。この場合、地盤改良体3は圧縮力に対しては充分な耐力を有するものの引張力に対しては充分な耐力はないことから、上記のような曲げ変形が生じた場合には引張側となる上部内側に比較的容易にひび割れが生じてしまい、側方流動圧に対する充分な抵抗力を発揮できないことが懸念される。
そのため、従来においては地盤改良体3に過大な引張応力が生じないようにその幅寸法(側方流動を受ける方向の幅寸法)を充分に大きくする必要があり、通常は図示しているように地盤改良体3の幅Wを長さLに対して50〜70%程度にもする必要があるとされている。
このように、従来においては地盤改良体3による補強効果を充分に確保するためには幅の広い地盤改良体3を多数築造する必要があり、したがって盛土支持地盤2に対する改良率を充分に高くせざるを得ず、必然的にコスト削減や工期短縮にも自ずと限界があった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は盛土支持地盤を地盤改良体により補強する場合において、低改良率であっても充分な補強効果が得られて工費削減と工期短縮を充分に図ることのできる有効適切な補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は軟弱な盛土支持地盤上に盛土を造成する際の盛土支持地盤の補強構造であって、盛土の少なくとも周縁部を支持する地盤改良体を盛土支持地盤中に築造するとともに、該地盤改良体の上部に引張耐力を有する芯材を一体に固着して該地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強せしめてなることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、該地盤改良体の幅方向内側の上部に芯材を固着すると良い。
あるいは、盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向両側においてそれぞれ盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、それら地盤改良体の幅方向外側の上部にそれぞれ芯材を固着するとともに、双方の芯材の上部どうしを引張材により連結することが考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地盤改良体の上部に芯材を一体に固着することによって地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強でき、したがって地盤改良体に側方流動圧が作用してもその上部に大きな変位や曲げ変形が生じることを有効に回避でき、地盤改良体が倒れ込んだりその上部にひび割れが生じるといった事態を有効に回避することができ、その結果、改良率をさほど大きくせずとも優れた側方流動防止効果が得られ工費削減と工期短縮に大きく寄与し得る。
【0010】
特に、地盤改良体を盛土の幅方向に沿う壁状とする場合には、上部が外側に曲げ変形するので内側が引張側となり、したがって上部内側に芯材を設けることにより引張耐力を効果的に増強することができる。
また、盛土の両側にそれぞれ壁状の地盤改良体を設ける場合には、双方の地盤改良体に設けた芯材どうしを引張材により連結することによってその全体で優れた増強効果が得られるし、この場合には地盤改良体の上部の外側への曲げ変形が引張材により拘束されることにより外側が引張側となり、したがって上部外側に芯材を設けることにより引張耐力を効果的に増強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態を図1に示す。本実施形態は図3に示した従来の補強構造と同様に、軟弱な盛土支持地盤(原地盤)2上に道路や鉄道あるいは堰堤のような所定幅で一方向に長い盛土1を造成する場合の適用例であって、盛土1の両側の対向する法面の下部(周縁部)に深層混合処理工法等による地盤改良体3を安定な支持層4に達するように築造し、その地盤改良体3によって盛土1による上載荷重を支持するとともに盛土支持地盤2に生じる側方流動等の水平変位に抵抗することを基本とするものであるが、特に本実施形態では地盤改良体3の頭部を含む上部に曲げ補強用の芯材6を一体に固着したことを主眼としている。
【0012】
図示例の地盤改良体3は、円形断面の3本の地盤改良杭を相互にラップさせて一体化することにより、盛土1の幅方向(横断方向:想定される側方流動等の水平変位方向である)に沿う壁状の形態で築造されたものである。
その地盤改良体3を形成している3本の地盤改良杭のうち最も内側に位置しているものの頭部を含む上部には、H形鋼あるいは鋼管等の鋼材からなる短尺の剛性のある芯材6、もしくは定着突起を設けたワイヤー等の可撓性の芯材6が挿入されて一体に固着されている。なお、この芯材6は引張耐力を有するものであれば鋼材に限らない。
芯材6は地盤改良体3の上部が外側に曲げ変形することによるひび割れの発生を防止するためのもので、曲げ変形した際に引張側となる上部内側に設けられているとともに、その芯材6の長さや強度はそこに生じると想定される引張応力がひび割れの生じる限界である許容応力の範囲となるように設定されており、これにより地盤改良体3の引張耐力は効果的に増強されたものとなっている。例えば、地盤改良体3の特性を表すための特性値βを算定し、地盤改良体3の頭部から下方に1/β〜1.5/βの範囲に入れることも考えられる。
なお、地盤改良体3に対する芯材6の一体化強度を確保するために、芯材6にたとえばスタッドや突起等の適宜の定着力増強手段を設けておいても良い。
また、本実施形態では、両側の地盤改良体3に加えて、それらの間に複数(図示例では3本)の他の地盤改良杭7を間隔をおいて築造しているが、これら地盤改良杭7は必ずしも設けることはなく盛土1全体の幅が小さいような場合には省略しても差し支えない。
【0013】
本第1実施形態の補強構造によれば、軟弱な盛土支持地盤2に側方流動が生じた場合にはその側方流動圧が地盤改良体3の特に上部に作用して地盤改良体3の上部は外側に曲げ変形しようとするのであるが、地盤改良体3の頭部を含む上部には曲げ補強材としての芯材6を差し込んで一体に固着していることから、その芯材6によって地盤改良体3の曲げ変形が拘束され、したがって地盤改良体3の幅Wをさほど大きくせずとも、また地盤改良体3自体の強度をさほど大きくせずとも優れた側方流動等の水平変位防止効果が得られ、図3に示した従来例のような単なる地盤改良による場合に比べて改良率を充分に削減することが可能であり、工費削減と工期短縮に大きく寄与し得る。
【0014】
図2は第2実施形態を示すものである。これは、第1実施形態と同様に地盤改良体3の頭部を含む上部に芯材6を固着して引張耐力を増強するものであるが、芯材6を対向する盛土周縁部の両側に位置する地盤改良体3の頭部を含む上部で外側に設置するとともに、それら芯材6の頭部を盛土1内にやや突出させて盛土1と盛土支持地盤2との層境付近でかつ芯材6の上部に引張材5を連結することにより、双方の芯材6どうしを引張材5により連結したものである。
【0015】
引張材5としては所望の引張強度を有する素材からなる棒材や線材、たとえば小断面の鉄骨材や鋼材、鉄筋やPC鋼線、あるいは高強度繊維によるジオテキスタイルやロープ等、が好適に採用可能であり、必要に応じて耐久性確保のための防錆等の処理を施せば良い。
その引張材5は両端部がそれぞれ上記の芯材6を介して両側の地盤改良体3の頭部を含む上部に強固に定着されることにより両側の地盤改良体3の上部相互間に架設され、したがってこの引張材5がタイロッドと同様に機能して両側の地盤改良体3どうしが構造的に連結されてそれらの全体でいわば門形のフレームが構成されたものとなっている。
また、引張材5の中間部は、両側の地盤改良体3の間に設けられた地盤改良杭7の頭部によって下方から支持されており、これにより引張材5の中間部が下方に大きく撓んでしまったり、引張材5自体が盛土支持地盤2中に沈下してしまうことが防止されるようになっている。
【0016】
なお、必要であれば破線で示しているように一部あるいは全ての地盤改良杭7の頭部を含む上部にも芯材6を固着して、引張材5の中間部もその芯材6を介して地盤改良杭7に対して連結しても良い。
それから、例えば盛土1の幅が広い場合は、上記の盛土1の両側の対向する地盤改良体3の上部どうしを引張材5で盛土1の幅方向に沿って連結するのではなく、それらの中間部に位置する芯材6が配された他の地盤改良体7と一方の周縁部に位置する芯材6が配された地盤改良体3との上部どうしを引張材5で盛土1の幅方向に沿って連結するものであっても良い。
また、引張材5は盛土1と盛土支持地盤2の層境付近に配設すれば良く、その限りにおいては引張材5を盛土1内の底層部に配設しても良いし、あるいは盛土支持地盤2内の表層部に配設しても良く、その場合には芯材6の上部を盛土1内に突出させる必要はない。
【0017】
本第2実施形態の補強構造においては、第1実施形態と同様に地盤改良体3の上部における引張耐力が芯材6により増強されることに加え、両側の地盤改良体3どうしを引張材5により連結していることから、双方の地盤改良体3はそれぞれ引張材5によって後方側から支持され、かつ双方の地盤改良体3に作用する側方流動圧は引張材5を介して逆側の地盤改良体3にも伝達され、したがってそれらの全体で地盤改良体3の変位や曲げ変形を確実に拘束することができる。
この場合、地盤改良体3の上部は外側への変位が引張材5により拘束されることから内側が圧縮側となって外側が引張側となるので、図示例のように第1実施形態とは逆に芯材6を外側に設置することにより引張耐力を効果的に増強できるものとなっている。
【0018】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、地盤改良体3の引張耐力を増強するべくその上部の引張側となる範囲に鋼材からなる芯材6を挿入して一体に固着するという本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、その他の構成は任意であって様々な設計的変形や応用が可能であることはいうまでもない。
この他、第1実施形態、第2実施形態の双方において、地盤改良体3の間に間隙8が空けられているが、この間隙8の大きさについては、この間隙8から盛土支持地盤2内の土砂が盛土支持地盤2外に向け出さないように設定する必要がある。具体的には、軟弱地盤の粘着力や側方流動圧等を基に設定される。
なお、上記実施形態のように、盛土1の周縁部に位置する地盤改良体3は盛土1の幅方向に沿うような壁状に築造することが好ましいが、要は地盤改良体3の上部における曲げ耐力を芯材6とともに可及的に増強すれば良いのであって、その限りにおいて地盤改良体3は必ずしも壁状に築造することはない。また、壁状に築造する場合であっても、必ずしも盛土の幅方向に平行ないし沿うように設けることなく、例えば幅方向に対して斜めに築造したり、さらには長さ方向に沿うように築造しても勿論良い。
また、これらの実施形態において、盛土支持地盤2の上に直接盛土1が載荷される形態の他に、擁壁や補強壁等の基礎版や補強シート等を介して盛土1が載荷される形態であっても良く、その場合にはそれら基礎版や補強シート等と盛土支持地盤2との間に引張材5を配設すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の盛土支持地盤の補強構造の第1実施形態を示す図である。
【図2】同、第2実施形態を示す図である。
【図3】従来の盛土支持地盤の補強構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 盛土
2 盛土支持地盤(軟弱地盤)
3 地盤改良体
4 支持層
5 引張材
6 芯材(鋼材)
7 地盤改良杭(地盤改良体)
8 間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱な盛土支持地盤上に盛土を造成する際の盛土支持地盤の補強構造であって、
盛土の少なくとも周縁部を支持する地盤改良体を盛土支持地盤中に築造するとともに、
該地盤改良体の上部に引張耐力を有する芯材を一体に固着して該地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強せしめてなることを特徴とする盛土支持地盤の補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の盛土支持地盤の補強構造であって
盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、該地盤改良体の幅方向内側の上部に芯材を固着してなることを特徴とする盛土支持地盤の補強構造。
【請求項3】
請求項1記載の盛土支持地盤の補強構造であって
盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向両側においてそれぞれ盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、
それら地盤改良体の幅方向外側の上部にそれぞれ芯材を固着するとともに、双方の芯材の上部どうしを引張材により連結してなることを特徴とする盛土支持地盤の補強構造。
【請求項1】
軟弱な盛土支持地盤上に盛土を造成する際の盛土支持地盤の補強構造であって、
盛土の少なくとも周縁部を支持する地盤改良体を盛土支持地盤中に築造するとともに、
該地盤改良体の上部に引張耐力を有する芯材を一体に固着して該地盤改良体の上部における曲げ耐力を増強せしめてなることを特徴とする盛土支持地盤の補強構造。
【請求項2】
請求項1記載の盛土支持地盤の補強構造であって
盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、該地盤改良体の幅方向内側の上部に芯材を固着してなることを特徴とする盛土支持地盤の補強構造。
【請求項3】
請求項1記載の盛土支持地盤の補強構造であって
盛土の周縁部を支持する地盤改良体を盛土の幅方向両側においてそれぞれ盛土の幅方向に沿う壁状に築造し、
それら地盤改良体の幅方向外側の上部にそれぞれ芯材を固着するとともに、双方の芯材の上部どうしを引張材により連結してなることを特徴とする盛土支持地盤の補強構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−303581(P2008−303581A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150565(P2007−150565)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】
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