説明

研磨液及びそれを用いる半導体デバイスの製造方法

【課題】 埋め込み配線形成時の研磨工程において、配線金属、バリアメタルおよび該低誘電率の絶縁膜材料を適切な研磨選択比で研磨することの出来る研磨液及びそれを用いた半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体デバイスの配線工程において、配線溝を有し、バリアメタル膜で覆われた低誘電率の層間有機絶縁膜上に金属メッキ処理により金属配線膜を設けた後、上記金属膜を金属用研磨液にて研磨する第1の化学的機械的研磨工程と、その後、砥粒が有機粒子を含む研磨液にて研磨を行う第2の化学的機械的研磨工程とを有する半導体デバイスの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に関するものであり、特に半導体デバイスの配線工程における金属用研磨液およびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(以下LSIと記す)で代表される半導体デバイスの開発においては、小型化・高速化のため、近年配線の微細化と積層化による高密度化・高集積化が求められている。積層化を行うのにウエハ表面に凹凸があると、上層でそれが拡大して歩留まりが悪化するので、できる限り平坦であることが望ましい。平坦化のための技術として一般に化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下CMPと記す)が用いられる。
CMPの一般的な方法は、円形の研磨常盤上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を研磨液で浸して、パッドに基盤(ウエハ)の表面を押しつけ、その裏面から所定の圧力を加えた状態で研磨常盤及び基盤の双方を回転させ、発生する機械的摩擦により基盤の表面を平坦化するものである。CMPに用いる研磨液は一般にアルミナ、シリカなどの砥粒と酸化剤とを含み、酸化剤が配線金属面を酸化しその酸化皮膜を砥粒が除去すると考えられている。CMPにおいては確実に金属残渣が残留しないようにウエハ表面をオーバポリッシュする必要がある。
【0003】
一方、最近、配線用の金属として配線抵抗の低い銅が、また、層間絶縁膜や配線間絶縁膜としてSiOC、MSQ等の有機無機ハイブリッド系やテフロン(登録商標)などの有機ポリマーを用いた低誘電率膜が用いられ、さらに銅と絶縁層との間に過研磨防止の目的でタンタルや窒化タンタルを用いたバリア層と呼ばれる金属(化合物)膜が研磨停止層として一般に採用されている。このような層構成をもつウェーハ表面をCMPによりオーバポリッシュするには、配線金属と共にバリア層および層間絶縁膜を研磨することが必要となる。このとき金属配線を構成するCuやバリアメタル膜を構成するTaと同等の速度で、層間絶縁膜、特に、低誘電率絶縁膜が研磨されることが好ましいが、従来用いられている研磨液では十分に研磨できない問題があった。これに対して、砥粒レススラリーを用いる方法(例えば、特許文献1、参照。)や電解研磨を行う方法(例えば、特許文献2、参照。)などが開示されているが、その効果は十分ではなかった。
さらに、従来の銅CMPにおいては、砥粒として用いる無機粒子の表面を炭素および窒素原子含有化合物で修飾する方法(例えば、特許文献3参照。)や、無機粒子と有機重合体粒子を静電的に結合させた砥粒を用いる方法(例えば、特許文献4参照。)が示されているが、低誘電率絶縁膜材料における研磨への適用は考慮されておらず、さらには、Cu、バリアメタルおよび絶縁膜材料を適切な選択比で研磨するという観点からは、実用上、満足しうるレベルにはないのが実情である。
【特許文献1】特開2002−110679公報
【特許文献2】特開2003−311540公報
【特許文献3】特表2003−520283公報
【特許文献4】特開2000−269170公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、埋め込み配線形成時のCMP工程において、低誘電率絶縁膜またはキャップ膜を、該低誘電率絶縁膜に損傷を与えることなく研磨可能な研磨液を提供することにあり、上記研磨により配線金属、バリアメタルおよび該低誘電率の絶縁膜材料を適切な研磨選択比で研磨することの出来る研磨液及びそれを用いた研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、下記研磨方法及び研磨液を用いることによって問題を解決できることを見出して課題を達成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
<1> 半導体デバイスの配線工程において、配線溝を有し、バリアメタル膜で覆われた低誘電率の層間有機絶縁膜上に金属メッキ処理により金属配線膜を設けた後、上記金属膜を金属用研磨液にて研磨する第1の化学的機械的研磨工程と、その後、砥粒が有機粒子を含む研磨液にて研磨を行う第2の化学的機械的研磨工程とを有する半導体デバイスの製造方法。
砥粒が有機粒子を含むとは、言い換えれば、具体的には、使用される全砥粒に対し少なくとも20質量%の炭素原子を含むことが好ましい態様である。
また、本発明において低誘電率とは、誘電率が3.0以下であることを指す。
【0006】
<2> 低誘電率の絶縁膜に埋め込み配線を形成する際に用いる研磨液であって、該研磨液に砥粒が含有され、かつ、使用される全砥粒に対し少なくとも1質量%の窒素原子を含むことを特徴とする研磨液。
<3> 前記研磨液が、縮環していない複素5員環化合物を含有することを特徴とする<2>に記載の研磨液。
<4> 前記研磨液のpHが5〜9の範囲であることを特徴とする<2>又は<3>に記載の研磨液。
<5> 前記研磨液が少なくとも1つのカルボキシル基を有する分子量130以上300以下の化合物を含有することを特徴とする<2>乃至<4>のいずれか1項に記載の研磨液。
<6> 前記研磨液が0.01〜1質量%の過酸化水素を含有することを特徴とする<2>乃至<5>のいずれか1項に記載の研磨液。
<7> <1>に記載の研磨方法の第2の化学的機械的研磨工程において、低誘電率の層間絶縁膜を保護するバリアメタル膜の研磨用に使用されることを特徴とする<2>乃至<6>のいずれか1項に記載の研磨液。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、埋め込み配線形成時の化学的機械的研磨(CMP)工程において、低誘電率絶縁膜またはキャップ膜を、該低誘電率絶縁膜に損傷を与えることなく研磨可能な研磨液及び研磨方法を提供することができる。本発明の研磨液を用いることで、配線金属、バリアメタルおよび該低誘電率の絶縁膜材料を適切な研磨選択比で研磨することが出来るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の研磨液は、低誘電率の絶縁膜に埋め込み配線を形成する際に用いるものであり、研磨液に砥粒が含有されてなる。ここで、用いる砥粒としては、有機粒子を含むものであるか、あるいは、全砥粒に対して1質量%以上の窒素原子を含むものであることを特徴とする。本発明で言う有機粒子とは、有機重合体粒子のような粒子全体が有機物である場合も、無機粒子の外側に有機物を固着させたような表面が大部分有機物である場合も含む。有機粒子を含む本発明に特有の砥粒を以下、適宜、特定砥粒と称する。
【0009】
以下、本発明のCMP用研磨液に含まれる各成分について説明する。
〔特定砥粒〕
本発明における特定砥粒は、有機粒子を含むもの、あるいは、全砥粒に対して1質量%以上の窒素原子を含むものである。即ち、全砥粒中に少なくとも有機化合物を含むか、含窒素化合物を含むことを示す。
好ましい砥粒の形態としては、金属酸化物砥粒の表面に有機化合物を結合させる形態が挙げられる。金属酸化物砥粒表面に有機化合物を結合させる方法としてはいかなる方法を用いても良いが、特に好ましくは、下記一般式1〜一般式3のシラン化合物を用いる方法が挙げられる。
【0010】
【化1】

【0011】
前記一般式1〜3中、X1〜X6はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基および芳香族基であり、それらは置換基を含んでも良い。置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、水酸着、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン、硫黄およびリン元素およびそれらを含む原子団が挙げられる。
金属酸化物砥粒の表面に有機化合物を結合させてなる粒子の粒子サイズは5nm〜500nmが好ましく、10nm〜100nmが更に好ましい。
【0012】
別の好ましい砥粒として、有機重合体粒子を用いる方法が挙げられる。有機重合体粒子としてはポリスチレン、PMMA、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の1種以上により形成された粒子を用いることが出来る。
有機重合体粒子の粒子サイズは30nm〜200nmが好ましく、50nm〜100nmが更に好ましい。
【0013】
本発明の金属用研磨液には、本発明に係る特定砥粒である有機粒子に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の砥粒を併用することもできる。併用しうる好ましい砥粒としては、例えば、シリカ(沈降シリカ、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、合成シリカ)、セリア、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、酸化マンガンなどが挙げられ、特にコロイダルシリカが好ましい。併用しうる他の砥粒は、平均粒径が5〜1000nmであるものが好ましく、10〜200nmの範囲であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明に用いる特定砥粒が、有機重合体粒子である場合には、これらと金属酸化物砥粒とを併用することも好ましい態様である。前記有機重合体粒子と組み合わせて用いる金属酸化物砥粒の粒子サイズは10nm〜70nmが好ましく、20nm〜50nmが更に好ましい。
両者を混合して用いる場合、全砥粒に対する有機粒子の含量は10%以上が好ましく、更に好ましくは50%以上である。また、砥粒の全てが有機粒子である場合も好ましい態様の一つであるといえる。
【0015】
ここで粒子サイズとは、球形であれば、その直径を指し、不定形粒子の場合には、該粒子体積と等しくなる球の直径で表される。粒子サイズは光子相関法、レーザー回折法、コールターカウンター法等の公知の様々な方法で測定することが可能であるが、本発明においては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して、個々の粒子の形状とサイズを求め、算出する方法を用いることが好ましい。具体的には、長さ既知の回折格子を基準に、粒子の投影面積と、レプリカのシャドーから粒子厚みを求め、これらから粒子個々の体積を算出する。この場合、粒子サイズ分布にもよるが、500個以上の粒子を測定し統計処理することが望ましい。この方法については、特開2001−75222公報の段落番号〔0024〕に詳細に記載され、その記載を本発明にも適用することができる
【0016】
金属酸化物砥粒と有機重合体粒子を併用する場合、両者は独立に存在する、即ち、異なる砥粒の混合物として用いても良いし、互いに結合した状態のものを用いても良い。
金属酸化物砥粒と有機重合体粒子を結合させる方法としては、各々のゼータ電位を逆符号にして静電的に凝集させる方法などが挙げられる。例えば、有機重合体粒子のゼータ電位は、通常、ほぼ全pH領域において負であることが多いが、アミノ基およびアンモニウム基を有する重合体粒子の場合には中性以上のpHでゼータ電位を正にすることが出来る。金属酸化物粒子は様々なゼータ電位を有するが、シリカ粒子は中性付近でゼータ電位が負であり、アミノ基を含有する有機重合体粒子とシリカ粒子を中性pHで共存させると、静電力により金属酸化物粒子と有機重合体粒子が結合する。逆に、アルミナ粒子は中性以上のpHで正のゼータ電位を有するため、PMMA等の有機重合体粒子と結合させることが出来る。このように金属(酸化物)粒子と有機重合体粒子との電位を考慮することで両者が互いに結合した粒子を調製することができる。
【0017】
また、本発明における特定砥粒の他の態様として、少なくとも1質量%の窒素原子を含む砥粒が挙げられる。砥粒に窒素原子を含有させる方法としては、金属酸化物粒子表面に窒素原子を含む有機化合物を結合させる方法、有機重合体微粒子を形成する際に、材料となる有機重合体として窒素原子を含むものを用いる方法などが挙げられる。少なくとも1質量%の窒素原子を含む有機重合体としては、具体的には、例えば、ポリアクリルアミド、アクリル樹脂などが挙げられる。
ここで、全砥粒中における窒素原子の含有量は、砥粒を強酸又は強塩基で溶解または分解した後、ICP(Inductively Coupled Plasma)或いはICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)により測定することができる。
【0018】
本発明に係る特定砥粒の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般には、金属用研磨液の全質量に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%の範囲であることがより好ましい。また、特定砥粒に加えて他の砥粒を併用する場合、研磨液に含まれる砥粒の総添加量も、上記と同様に、金属用研磨液の全質量に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0019】
〔酸化剤〕
本発明の研磨液は、研磨対象の金属を酸化できる化合物(酸化剤)を含有することが好ましい。
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水および銀(II)塩、鉄(III)塩が挙げられる。中でも、過酸化水素、ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩、鉄(III)の有機錯塩が好ましく、鉄(III)の有機錯塩を用いる場合の好ましい錯形成化合物は、例えば、酢酸、クエン酸、シュウ酸、サリチル酸、ジエチルジチオカルバミン酸、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−エタンジチオール、マロン酸、グルタル酸、3−ヒドロキシ酪酸、プロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、3−ヒドロキシサリチル酸、3,5−ジヒドロキシサリチル酸、没食子酸、安息香酸、マレイン酸などやこれらの塩の他、アミノポリカルボン酸及びその塩が挙げられる。
【0020】
酸化剤の中でも過酸化水素、ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩、鉄(III)の有機錯塩が好ましく、鉄(III)の有機錯塩としては、エチレンジアミン−N,N,N',N'−四酢酸、1,3−ジアミノプロパン−N,N,N',N'−四酢酸及びエチレンジアミンジコハク酸などのアミノポリカルボン酸の錯塩が最も好ましい。
【0021】
酸化剤の添加量は、CMP速度の確保と研磨面の損傷抑制の観点から、研磨に使用する際の金属用研磨液の1Lあたり、0.003mol〜8molとすることが好ましく、0.03mol〜6molとすることがより好ましく、0.1mol〜4molとすることが特に好ましい。
【0022】
〔複素環化合物〕
本発明の研磨液は、研磨対象の金属表面に不動態膜を形成する化合物として少なくとも1種の複素環化合物を含有することが好ましい。
「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。
ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びセレン原子であり、特に好ましくは、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子であり、最も好ましくは窒素原子、及び硫黄原子である。
【0023】
また、母核となる複素環について述べれば、複素環化合物の複素環の環員数は特に限定されず、単環化合物あっても縮合環を有する多環化合物であってもよい。単環の場合の員数は、好ましくは5〜7であり、特に好ましくは5である。縮合環を有する場合の環数は、好ましくは2または3である。
【0024】
これらの複素環として具体的に、以下のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
ピロール環、チオフェン環、フラン環、ピラン環、チオピラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、クロマン環、チオクロマン環、イソクロマン環、イソチオクロマン環、インドリン環、イソインドリン環、ピリンジン環、インドリジン環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、ナフチリジン環、フタラジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、アクリジン環、ペリミジン環、フェナントロリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、アンチリジン環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアジン環、トリアゾール環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズチアジアゾール環、ベンズフロキサン環、ナフトイミダゾール環、ベンズトリアゾール環、テトラアザインデン環等が挙げられ、より好ましくはトリアゾール環、テトラゾール環が挙げられる。
【0025】
次に、上記複素環が有しうる置換基について述べる。
本発明で用いる複素環化合物に導入しうる置換基は、例えば以下のものが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
複素環が有しうる置換基としては、例えばハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、ビシクロアルキル基のように多環アルキル基であっても、活性メチン基を含んでもよい)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、ヘテロ環基が挙げられる。
さらに、複数の置換基のうち2以上が互いに結合して環を形成してもよく、例えば、芳香環、脂肪族炭化水素環、複素環などを形成し、これらがさらに組み合わされて多環縮合環を形成することもでき、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環などが挙げられる。
【0026】
本発明で特に好ましく用いることができる複素環化合物の具体例としては、これらに限定されるものではないが以下のものが挙げられる。
すなわち、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールである。
【0027】
本発明で用いる複素環化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明で用いる複素環化合物は、常法に従って合成できるほか、市販品を使用してもよい。
本発明で用いる複素環化合物の添加量は、総量として、研磨に使用する際の研磨液(即ち、水または水溶液で希釈する場合は希釈後の研磨液。)1L中、0.0001〜1.0molが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.5mol、更に好ましくは0.0005〜0.05molである。
本発明においては、研磨剤のpHは5〜9であることが好ましく、特に好ましくはpHが6〜8である。
【0028】
〔有機酸、アミノ酸〕
本発明においてはカルボキシル基を有する有機酸やアミノ酸が1種以上存在することが好ましく、さらにはアミノ酸が好ましい。
有機酸としては、水溶性のものが望ましい。以下の群から選ばれたものがより適している。例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、及びそれらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩、硫酸、硝酸、アンモニア、アンモニウム塩類、又はそれらの混合物等が挙げられる。これらの中ではギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が銅、銅合金及び銅又は銅合金の酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属層を含む積層膜に対して好適である。
【0029】
アミノ酸としては、水溶性のものが好ましい。以下の群から選ばれたものがより適している。
グリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−アルギニン、L−カナバニン、L−シトルリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、エルゴチオネイン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等のアミノ酸。
特に、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリシン、グリコール酸については実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で好ましい。
【0030】
有機酸、アミノ酸は、目的に応じて適宜選択して用いられ、1種のみを含んでいてもよく、2種以上を用いることもできる。2種以上用いる場合、異なる種類の有機酸同士、アミノ酸同士を組み合わせて用いてもよく、また、有機酸とアミノ酸とを併用することもできる。
有機酸、アミノ酸の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0005〜0.5molとすることが好ましく、0.005mol〜0.3molとすることがより好ましく、0.01mol〜0.1molとすることが特に好ましい。即ち、酸の添加量は、エッチングの抑制の点から0.5mol以下が好ましく、充分な効果を得る上で0.0005mol以上が好ましい。
【0031】
〔キレート剤〕
本発明の研磨液は、混入する多価金属イオンなどの悪影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤(すなわち硬水軟化剤)を含有することが好ましい。
キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物であり、例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五
酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンスルホン酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−
(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N′−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N′−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
【0032】
キレート剤は必要に応じて2種以上併用しても良い。
キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良く、例えば、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0003mol〜0.07molになるように添加する。
【0033】
〔その他の添加剤〕
また、本発明の研磨液には以下の添加剤を用いることも好ましい。
アンモニア;ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン等のアルキルアミンや、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム及びキトサン等のアミン;ジチゾン、クプロイン(2,2'−ビ
キノリン)、ネオクプロイン(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)、バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)及びキュペラゾン(ビスシクロヘキサノンオキサリルヒドラゾン)等のイミン;ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール等のメルカプタン。
【0034】
これらの中でもキトサン、エチレンジアミンテトラ酢酸、L−トリプトファン、キュペラゾン、トリアジンジチオールが高いCMP速度と低いエッチング速度を両立する上で好
ましい。
【0035】
これら添加剤の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜0.5molとすることが好ましく0.001mol〜0.2molとすることが
より好ましく、0.005mol〜0.1molとすることが特に好ましい。即ち、添加剤の添加量は、エッチング抑制の点から0.0001mol以上が好ましく、CMP速度低下防止の点から0.5mol以下が好ましい。
【0036】
〔界面活性剤/親水性ポリマー〕
本発明の研磨液は、界面活性剤や親水性ポリマーから選択される化合物を1種以上含有することが好ましい。
界面活性剤と親水性ポリマーは、いずれも被研磨面の接触角を低下させる作用を有して、均一な研磨を促す作用を有する。用いられる界面活性剤や親水性ポリマーとしては、以下の群から選ばれたものが好適である。
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が挙げられ、両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができ、非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、また、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
さらに、親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール等のポリグリコール類、ポリビニルアルコール、ポロビニルピロリドン、アルギン酸等の多糖類、ポリメタクリル酸等のカルボン酸含有ポリマー等が挙げられる。
【0037】
なお、本発明の方法を適用する対象が、半導体集積回路用シリコン基板などの場合はアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸もしくはそのアンモニウム塩が望ましい。基体がガラス基板等である場合はその限りではない。上記例示化合物の中でもシクロヘキサノール、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリビニルアルコール、コハク酸アミド、ポロビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーがより好ましい。
【0038】
これらの界面活性剤や親水性ポリマーの重量平均分子量としては、500〜100000が好ましく、特には2000〜50000が好ましい。
界面活性剤や親水性ポリマーの添加量は、総量として、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0039】
〔アルカリ剤及び緩衝剤〕
本発明の研磨液は、必要に応じて、pH調整のためにアルカリ剤、さらにはpHの変動抑制の点から緩衝剤を含有することができる。
アルカリ剤及び緩衝剤としては、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドなどの有機水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのようなアルカノールアミン類などの非金属アルカリ剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシル塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロキシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。
【0040】
アルカリ剤及び緩衝剤の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化
リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、四ホウ酸カリウム、o−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(サリチル酸ナトリウム)、o−ヒドロキシ安息香酸カリウム、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−スルホサリチル酸ナトリウム)、5−スルホ−2−ヒドロキシ安息香酸カリウム(5−スルホサリチル酸カリウム)、水酸化アンモニウムなどを挙げることができる。
特に好ましいアルカリ剤として水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドである。
【0041】
アルカリ剤及び緩衝剤の添加量としては、pHが好ましい範囲に維持される量であればよく、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜1.0molとすることが好ましく、0.003mol〜0.5molとすることがより好ましい。
研磨に使用する際の研磨液のpHは2〜14が好ましく、3〜12がより好ましく、3.5〜8が最も好ましい。この範囲において本発明の金属液は特に優れた効果を発揮する。
【0042】
本発明においては、研磨面への吸着性や反応性、研磨金属の溶解性、被研磨面の電気化学的性質、化合物官能基の解離状態、液としての安定性などにより、適時化合物種、添加量やpHを設定することが好ましい。一般的には、先に述べたようにpHは5〜9であることが好ましく、特に好ましくはpHが6〜8である。
【0043】
なお、金属用研磨液の濃縮液作製時に添加する成分の内、室温での水に対する溶解度が5%未満のものの配合量は、濃縮液を5℃に冷却した際の析出を防止する点で、室温での水に対する溶解度の2倍以内とすることが好ましく、1.5倍以内とすることがより好ましい。
【0044】
〔低誘電率絶縁膜〕
本発明において、研磨する対象の一つである低誘電率絶縁膜について説明する。従来、半導体デバイスの層間絶縁膜材料としてSiO2(比誘電率約4.1)が用いられてきた。本発明における低誘電率絶縁膜材料の誘電率は3.0以下と定義する。
本発明で用いられる低誘電率絶縁膜は有機系でも無機系でもよいが、好ましくはSiOC、MSQ等の有機−無機ハイブリッド系、またはポリイミド、テフロン(登録商標)等の有機ポリマー系である。これらの材料は微小な空孔を有しても構わない。
膜形成方法はプラズマCVDでもスピン塗布でもよい。誘電率は低い方が好ましいが、特に好ましくは1.8〜2.5である。具体的には、SiOC−プラズマCVD方式の「ブラックダイヤモンド(アプライドマテリアルズ社、商標)」や有機ポリマー系の「SiLK(ダウケミカルカンパニー社、商標)」などが挙げられる。
【0045】
〔配線金属原材料〕
本発明においては、研磨する対象である半導体が、銅金属及び/又は銅合金からなる配線を持つ半導体集積回路(以下、適宜、LSIと記す)であることが好ましく、特には銅合金が好ましい。更には、銅合金の中でも銀を含有する銅合金が好ましい。銅合金に含有される銀含量は、40質量%以下が好ましく、特には10質量%以下、さらには1質量%以下が好ましく、0.00001〜0.1質量%の範囲である銅合金において最も優れた効果を発揮する。
【0046】
〔配線の太さ〕
本発明においては、研磨する対象である半導体が、例えばDRAMデバイス系ではハーフピッチで0.15μm以下で特には0.10μm以下、更には0.08μm以下、一方、MPUデバイス系では0.12μm以下で特には0.09μm以下、更には0.07μm以下の配線を持つLSIであることが好ましい。これらのLSIに対して、本発明の研磨液は特に優れた効果を発揮する。
【0047】
〔バリアメタル〕
本発明においては、半導体が銅金属及び/または銅合金からなる配線と層間絶縁膜との間に、銅の拡散を防ぐ為のバリアメタル層を設けることが好ましい。バリアメタル層を構成する材料としては低抵抗のメタル材料がよく、特にはTiN、TiW、Ta、TaN、W、WNが好ましく、中でもTa、TaNが特に好ましい。
【0048】
〔研磨方法〕
研磨液は、濃縮液であって使用する際に水を加えて希釈して使用液とする場合、または、各成分が次項に述べる水溶液の形態でこれらを混合し、必要により水を加え希釈して使用液とする場合、あるいは使用液として調製されている場合がある。本発明の研磨液を用いた研磨方法は、いずれの場合にも適用でき、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する研磨方法である。
研磨する装置としては、被研磨面を有する半導体基板等を保持するホルダーと研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。研磨条件には制限はないが、研磨定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面(被研磨膜)を有する半導体基板の研磨パッドへの押しつけ圧力は、5〜500g/cm2であることが好ましく、研磨速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、12〜240g/cm2であることがより好ましい。
【0049】
研磨している間、研磨パッドには研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが
好ましい。研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄した後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させる。本発明の研磨方法では、希釈する水溶液は、次ぎに述べる水溶液と同じである。水溶液は、予め酸化剤、酸、添加剤、界面活性剤のうち少なくとも1つ以上を含有した水で、水溶液中に含有した成分と希釈される研磨液の成分を合計した成分が、研磨液を使用して研磨する際の成分となるようにする。水溶液で希釈して使用する場合は、溶解しにくい成分を水溶液の形で配合することができ、より濃縮した研磨液を調製することができる。
【0050】
濃縮された研磨液に水または水溶液を加え希釈する方法としては、濃縮された研磨液を供給する配管と水または水溶液を供給する配管を途中で合流させて混合し、混合し希釈された研磨液を研磨パッドに供給する方法がある。混合は、圧力を付した状態で狭い通路を通して液同士を衝突混合する方法、配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法、配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常に行われている方法を採用することができる。
【0051】
研磨液の供給速度は10〜1000ml/minが好ましく、研磨速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、170〜800ml/minであることがより好ましい。
【0052】
濃縮された研磨液を水または水溶液などにより希釈し、研磨する方法としては、研磨液を供給する配管と水または水溶液を供給する配管を独立に設け、それぞれから所定量の液を研磨パッドに供給し、研磨パッドと被研磨面の相対運動で混合しつつ研磨する方法である。または、1つの容器に、所定量の濃縮された研磨液と水または水溶液を入れ混合してから、研磨パッドにその混合した研磨液を供給し、研磨をする方法がある。
【0053】
本発明の別の研磨方法は、研磨液が含有すべき成分を少なくとも2つの構成成分に分けて、それらを使用する際に、水または水溶液を加え希釈して研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する方法である。
例えば、酸化剤を1つの構成成分(A)とし、酸、添加剤、界面活性剤及び水を1つの構成成分(B)とし、それらを使用する際に水または水溶液で構成成分(A)と構成成分(B)を希釈して使用する。
また、溶解度の低い添加剤を2つの構成成分(A)と(B)に分け、酸化剤、添加剤及び界面活性剤を1つの構成成分(A)とし、酸、添加剤、界面活性剤及び水を1つの構成成分(B)とし、それらを使用する際に水または水溶液を加え構成成分(A)と構成成分(B)を希釈して使用する。この例の場合、構成成分(A)と構成成分(B)と水または水溶液をそれぞれ供給する3つの配管が必要であり、希釈混合は、3つの配管を、研磨パッドに供給する1つの配管に結合し、その配管内で混合する方法があり、この場合、2つの配管を結合してから他の1つの配管を結合することも可能である。
【0054】
例えば、溶解しにくい添加剤を含む構成成分と他の構成成分を混合し、混合経路を長くして溶解時間を確保してから、さらに水または水溶液の配管を結合する方法である。その他の混合方法は、上記したように直接に3つの配管をそれぞれ研磨パッドに導き、研磨パッドと被研磨面の相対運動により混合する方法、1つの容器に3つの構成成分を混合して、そこから研磨パッドに希釈された研磨液を供給する方法である。上記した研磨方法において、酸化剤を含む1つの構成成分を40℃以下にし、他の構成成分を室温から100℃の範囲に加温し、且つ1つの構成成分と他の構成成分または水もしくは水溶液を加え希釈して使用する際に、混合した後に40℃以下とするようにすることもできる。温度が高いと溶解度が高くなるため、研磨液の溶解度の低い原料の溶解度を上げるために好ましい方法である。
【0055】
酸化剤を含まない他の成分を室温から100℃の範囲で加温して溶解させた原料は、温度が下がると溶液中に析出するため、温度が低下したその成分を用いる場合は、予め加温して析出したものを溶解させる必要がある。これには、加温し溶解した構成成分液を送液する手段と、析出物を含む液を攪拌しておき、送液し配管を加温して溶解させる手段を採用することができる。加温した成分が酸化剤を含む1つの構成成分の温度を40℃以上に高めると酸化剤が分解してくる恐れがあるので、加温した構成成分とこの加温した構成成分を冷却する酸化剤を含む1つの構成成分で混合した場合、40℃以下となるようにする。
【0056】
また本発明においては、上述したように研磨液の成分を二分割以上に分割して、研磨面に供給してもよい。この場合、酸化物を含む成分と酸を含有する成分とに分割して供給する事が好ましい。また、研磨液を濃縮液とし、希釈水を別にして研磨面に供給してもよい。
【0057】
〔パッド〕
研磨用のパッドは、無発泡構造パッドでも発泡構造パッドでもよい。前者はプラスチック板のように硬質の合成樹脂バルク材をパッドに用いるものである。また、後者は更に独立発泡体(乾式発泡系)、連続発泡体(湿式発泡系)、2層複合体(積層系)の3つがあり、特には2層複合体(積層系)が好ましい。発泡は、均一でも不均一でもよい。
更に研磨に用いる砥粒(例えば、セリア、シリカ、アルミナ、樹脂など)を含有したものでもよい。また、それぞれに硬さは軟質のものと硬質のものがあり、どちらでもよく、積層系ではそれぞれの層に異なる硬さのものを用いることが好ましい。材質としては不織布、人工皮革、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート等が好ましい。また、研磨面と接触する面には、格子溝/穴/同心溝/らせん状溝などの加工を施してもよい。
【0058】
〔ウエハ〕
本発明の研磨液でCMPを行なう対象ウエハは、径が200mm以上であることが好ましく、特には300mm以上が好ましい。300mm以上である時に顕著に本発明の効果を発揮する。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<実施例1〜20>
砥粒A−1〜A−6の調製
(砥粒A−1)
10wt%のコロイダルシリカ(光子相関法直径:40nm)を含む水分散物1LをpH4.0に保ち、室温において攪拌しながら20wt%のジエトキシメチルフェニルシランのエタノール溶液500mLを3時間かけてゆっくり滴下した。その後、更に2時間攪拌した後、セラミックスフィルター(ジルコニア)でろ過、洗浄し、砥粒A−1を得た。砥粒A−1は、コロイダルシリカ粒子表面に有機化合物が結合した層を有する粒子であり、砥粒を遠心分離後、濃硫酸により溶解及び分解することにより得られた液をICP−MSにて定量することにより得られた炭素含有量は、全砥粒重量に対して25%であった。
【0060】
(砥粒A−2)
ジエトキシメチルフェニルシランのエタノール溶液を1L添加したこと以外は砥粒A−1と同様の方法で砥粒A−2を調製した。分析の結果全砥粒重量に対して炭素原子は42%含有されていた。
(砥粒A−3)
ジエトキシメチルフェニルシランのエタノール溶液の代わりに、3アミノプロピルトリエトキシシラン(100%)を120mL添加したこと以外は砥粒A−1と同様の方法で砥粒A−3を調製した。分析の結果全砥粒重量に対して窒素原子は6%含有されていた。
(砥粒A−4)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(100%)を240mL添加したこと以外は砥粒A−3と同様の方法で砥粒A−4を調製した。分析の結果全砥粒重量に対して窒素原子は10%含有されていた。
【0061】
(砥粒A−5)
メチルメタクリレート180g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート10g、4−ビニルピリジン10g、アゾ系光重合開始剤(和光純薬株式会社製、商品名「V50」)4gおよびイオン交換水800mLを2Lフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら70℃に昇温し、6時間攪拌した。これにより平均粒子径0.15μmのポリメタクリル酸系粒子を得た。得られた粒子のゼータ電位を超音波方式のゼータ電位計DT−1200を用いて測定したところ、pH6において、+10mVであった。本重合体粒子20gとコロイダルシリカ(光子相関法直径:40nm)20gを含む水分散物500mLを良く攪拌し、砥粒A−5を得た。該コロイダルシリカのpH6におけるゼータ電位は、−50mVであった。砥粒のSEM写真より、重合体粒子とコロイダルシリカが結合し、2次粒子が形成されていた。
【0062】
(砥粒A−6)
メチルメタクリレート190g、メタクリル酸8g、ジビニルベンゼン2g、メタクリルアミド1g、ラウリル硫酸アンモニウム0.06g、過硫酸アンモニウム1.2gおよびイオン交換水800mLを2Lフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら70℃に昇温し、6時間攪拌した。これにより平均粒子径0.17μmのポリメチルメタクリル酸系粒子を得た。得られた粒子のゼータ電位を超音波方式のゼータ電位計DT−1200を用いて測定したところ、pH6において、−30mVであった。本重合体粒子20gとコロイダルシリカ(光子相関法直径:40nm)20gを含む水分散物500mLを良く攪拌し、砥粒A−6を得た。砥粒のSEM写真より、重合体粒子とコロイダルシリカは完全に分散していることを確認した。
【0063】
〔研磨液の調製〕
前記のようにして得られた研磨液、及び、特定砥粒に代えてコロイダルシリカ粒子を砥粒として用い、下記表1に示す処方の研磨液を調製し、スラリー1〜21を得て、これを研磨液として、以下に示す研磨試験を行い、評価した。
【0064】
【表1】

【0065】
(研磨試験)
研磨パッド: IC1400XY−K Groove(ロデール社)
研磨機:LGP−612(LapmaSterSFT社)
押さえ圧力:140g/cm2
研磨液供給速度:200ml/min
(被研磨対象)
(1) 銅(Cu)ブランケットウエハ: 厚さ1.4μmの銅膜を形成したウエハ(200mm)
(2) タンタル(Ta)ブランケットウエハ: 厚さ0.15μmのタンタル膜を形成したウエハ(200mm)
(3) ブラックダイヤモンド(BD)ブランケットウエハ:厚さ0.15μmのブラックダイヤモンド(アプライドマテリアルズ社)膜を形成したウエハ(200mm)
【0066】
(評価方法)
研磨速度:銅またはタンタルブランケットウエハ面上の49箇所に対し、金属膜のCMP前後での膜厚さを電気抵抗値から換算して、平均研磨速度(nm/min)を求めた。ブラックダイヤモンドの研磨速度は、研磨前後の膜厚を光学干渉式膜厚計にて測定して求めた。表1のスラリーを用いて各ブランケットウエハを研磨した際の銅(Cu)、タンタル(Ta)及びブラックダイヤモンド(BD)それぞれの研磨速度を表2に示した。
なお、実用上の適切な研磨選択比といった観点からは、CuとTaの研磨速度比(Cu/Ta)は3倍以下が好ましい。また、Taと絶縁膜の研磨速度比(Ta/絶縁膜)は5倍以下であることが好ましい。
【0067】
【表2】

【0068】
前記表2の結果より、本発明の研磨液を用いることで、低誘電率絶縁膜であるブラックダイヤモンド(表中にBDと記載)を、配線金属を形成するCu、バリアメタルであるTaに近い速度、即ち、前記適切な研磨選択比で研磨することができ、ウエハ全面の平坦化にとって有利であることがわかる。また、押さえ圧力:140g/cm2の低研磨負荷状態において、実用上十分な研磨速度を達成していることがわかる。
一方、本発明に係る特定砥粒に代えてコロイダルシリカ粒子を砥粒として含む研磨液を使用した比較例1では、銅の研磨速度に比較し、低誘電率絶縁膜であるBDの研磨速度が極めて遅く、配線やバリアメタルと該低誘電率の絶縁膜材料であるBDが適切な研磨選択比で研磨されていないことがわかる。
【0069】
(実施例2)
下記に示す研磨液を調製し、研磨試験を行い、評価した。
(第一研磨液の調製)
ベンゾトリアゾール 0.15g/L
過酸化水素(酸化剤) 10g/L
グリシン(酸) 9g/L
コロイダルシリカ(平均粒子径40nm) 40g/L
純水を加えて全量 1000mL
pH(アンモニア水と硫酸で調整) 7.0
【0070】
(第一段階銅研磨)
研磨パッド:IC1400K−Groove(ロデール社)
研磨機: LGP−612(LapmaSter FT社)
押さえ圧力: 150g/cm2
研磨液供給速度:200ml/min
ウエハ: セマテック社製CMP854パターンウエハ(200mm)
研磨パッド/ウエハの回転数:95/95rpm
以上の条件で、非配線部の銅が完全に研磨されるまで研磨を行った。この段階でのライン100μm&スペース100μm部のディッシングは130nmであった。
【0071】
(第二研磨液の調製)
上記の第一研磨終了後のウエハを実施例1のスラリーNo,1および20を用いて下記の条件にて研磨を行った。
【0072】
(第二段階バリアメタル層研磨)
研磨パッド:IC1400K−Groove(ロデール社)
研磨機: LGP−612(LapmaSter FT社)
押さえ圧力: 150g/cm2
研磨液供給速度:200ml/min
研磨速度測定用ウエハ:厚さ1.5μmのタンタルの膜を形成したシリコン基板
【0073】
第一段階銅研磨を終了したパターンウエハを、バリアメタル層研磨液で60秒間研磨し、ディッシングの評価を行った。
(評価方法)
ディッシング: 触針式段差計DektakV320Si(Veeco社製)で、ライン100μm&スペース100μm部の段差として求めた。
その結果、第二研磨終了時のディッシングは、スラリーNo.1(本発明のスラリー)を用いた場合には、30nm、スラリーNo.21(比較例のスラリー)を用いた場合には90nmであった。このことから、本発明の研磨液を使用した研磨方法によれば、ディッシングの発生が抑制され、ウエハ全面の平坦化にとって有利であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの配線工程において、配線溝を有し、バリアメタル膜で覆われた低誘電率の層間有機絶縁膜上に金属メッキ処理により金属配線膜を設けた後、上記金属膜を金属用研磨液にて研磨する第1の化学的機械的研磨工程と、その後、砥粒が有機粒子を含む研磨液にて研磨を行う第2の化学的機械的研磨工程とを有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
低誘電率の絶縁膜に埋め込み配線を形成する際に用いる研磨液であって、有機粒子を含む砥粒が含有され、かつ、使用される全砥粒に対し少なくとも1質量%の窒素原子を含むことを特徴とする研磨液。
【請求項3】
前記研磨液が、縮環していない複素5員環化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の研磨液。
【請求項4】
前記研磨液のpHが5〜9の範囲であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の研磨液。
【請求項5】
前記研磨液が少なくとも1つのカルボキシル基を有する分子量130以上300以下の化合物を含有することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記研磨液が0.01〜1質量%の過酸化水素を含有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の研磨液。
【請求項7】
請求項1に記載の研磨方法の第2の化学的機械的研磨工程において、低誘電率の層間絶縁膜を保護するバリアメタル膜の研磨用に使用されることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の研磨液。

【公開番号】特開2007−67089(P2007−67089A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249776(P2005−249776)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】