説明

硬化性組成物およびその硬化物

【課題】 建築用シーリング材に使用できる低モジュラスである硬化性組成物で、上塗りされた塗料の汚染性が改善され、長期にわたり塗膜の美観が保たれることを目的とする。
【解決手段】 (A)反応性ケイ素基を含有する有機重合体、(B)硬化触媒、(C)充填材、からなり、JIS A1439に規定のH型引張試験での100%モジュラスが0.4MPa以下で、かつ硬化物のゲル分率が80%以上である硬化性組成物により上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素基(以下、「反応性ケイ素基」ともいう。)を含有する有機重合体を含む硬化性組成物に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体と、充填材、及び硬化触媒を含有することを特徴とする、塗料汚染性を改善したシーリング材に関する。この硬化物は低モジュラスにもかかわらず、塗料への汚染性が改善される。
【背景技術】
【0003】
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を含有する有機重合体は、室温においても湿分などによる反応性ケイ素基の加水分解反応などを伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状の硬化物が得られるという性質を有することが知られている。
【0004】
これらの反応性ケイ素基を含有する有機重合体の中で、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体、飽和炭化水素系重合体、および、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体については、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料などの用途に広く使用されている。
【0005】
なかでも建築用シーリング材用途では、20年以上にわたり市場でシェアを伸ばしてきた。特に高層ビルのようなアルミパネルを用いた建築物では、外気温によりパネルが伸縮するため、それに伴って目地にも大きな変動が生じる。シーリング材は建築物内部に空気や水分を入れないようにするのが役割であるため、目地の動きに追従する必要がある。変動が大きな目地では、硬化したシーリング材が伸張時に基材との接着界面に強度がかかり、強度が大きい場合には界面破壊して水漏れ等の事故につながる。これを防ぐために、変動が大きな目地には、JIS A1439のタイプFの25LMカテゴリーに適合するような、その硬化物が柔軟性を有し低モジュラスに設計された硬化性組成物が用いられてきた。モジュラスを下げるためには、有機重合体への反応性ケイ素基の導入率を下げること、有機重合体に対する可塑剤の相対量を増やすこと等で調整されてきた。
【0006】
近年、建築物の改修等の際に、外壁とともに硬化したシーリング材にも塗料が塗布される場合があり、シーリング材上の塗膜が汚れるという問題が浮上してきた。これらの問題を解決する方法として、特許文献1には、高分子量の可塑剤を使用することが提案されている。また、特許文献2には、低分子の可塑剤の代わりに分子鎖の片末端が有機基で封鎖され、かつ、他の片末端に反応性ケイ素基を有するポリエーテルを用いる方法が提案され、特許文献3には、高分子量で、かつ、1分子あたりの反応性ケイ素基の含有量が多いポリエーテルに、低分子量で、かつ、1分子あたりの反応性ケイ素基の含有量が少ないポリエーテルを併用する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法により塗料汚染性を改善することはできるが、塗料には多くの種類があり、すべての塗料に効果的とは限らなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平01−279958号公報
【特許文献2】特開平04−057850号公報
【特許文献3】特開平09−095619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、主に建築用シーリング材に使用できる硬化性組成物で、低モジュラスであるにも関らず、塗料への汚染性を解決された硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、低モジュラスに設計された硬化性組成物であって、かつ硬化物のゲル分率が80%以上となる硬化性組成物は、汚れやすい水性エマルション塗料を塗布した場合に塗膜の汚染が少ないということを初めて見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)反応性ケイ素基を含有する有機重合体、(B)硬化触媒、(C)充填材を含有し、JIS A1439に規定のH型引張試験での100%モジュラスが0.4MPa以下で、かつ硬化物のゲル分率が80%以上であることを特徴とする硬化性組成物に関する。
また、本発明は、硬化物のゲル分率が85%以上であることが好ましい。
また、本発明は、(B)成分の硬化触媒が、カルボン酸金属塩、カルボン酸、アミン化合物、および有機錫からなる群から選ばれる一つ以上の化合物であることが好ましい。
また、本発明は、(A)成分が、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリアクリル系重合体、炭化水素系重合体のいずれか又は複数であることが好ましい。
また、本発明は、(A)成分の主鎖が、ポリオキシアルキレン系重合体であることが好ましい。
また、本発明は、(A)成分が、(D)1分子に平均して0.5個以上1.2個未満の反応性ケイ素基を含有する有機重合体を含有するものであることが好ましい。
また、本発明は、(D)成分の有機重合体が、ポリオキシアルキレン系重合体であることが好ましい。
また、本発明は、(D)成分の反応性ケイ素基が、トリアルコキシシリル基であることが好ましい。
また、本発明は、(D)成分の反応性ケイ素基が、トリエトキシシリル基であることが好ましい。
また、本発明は、(E)成分として、真比重0.01以上0.5未満の粒子状物質をさらに含有することが好ましい。
また、本発明は、(B)成分の硬化触媒が、カルボン酸金属塩および/またはアミン化合物であることが好ましい。
また、本発明は、(B)成分の硬化触媒が、カルボン酸錫であることが好ましい。
また、本発明は、前記硬化性組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
また、本発明は、前記硬化性組成物を施工し、硬化した後、表面に水系アクリル塗料を塗布する施工方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物は、作業性が良好であって、硬化させた場合にその硬化物が柔軟性を有し低モジュラスであり、その硬化物の上に塗料を塗布した場合、塗膜が長期間汚れず美観を保つ硬化性組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(A)反応性ケイ素基を含有する有機重合体、(B)硬化触媒、(C)充填材、からなり、JIS A1439に規定のH型引張試験での100%モジュラスが0.4MPa以下で、かつ硬化物のゲル分率が80%以上であることを特徴とする。
【0013】
シーリング材のような硬化物の引張物性を評価するには、アルミ板基材2枚の間に挟んだいわゆるH型試験体や、厚み2〜4mm程度のシート状試験体からダンベル型や短冊型に打ち抜いた試験体を引っ張る方法等が知られている。これらは伸張時の試験体の断面積や伸張速度が異なるために、引張応力であるモジュラスの値に違いが生じることがある。本発明では、建築用シーリング材の評価方法を記載したJIS A1439に規定のH型試験体でのモジュラス値を採用する。
【0014】
シーリング材は、用途によって高モジュラス、中モジュラス、低モジュラスのものがあり、特に建築用シーリング材で目地の動きが大きい箇所に使用される場合、目地に対する接着性が確保されることから低モジュラスのものが好適に使用される。JIS A5758では建築用シーリング材の種類が規定されており、本発明はタイプFのクラス25LM用途に関するものであり、100%モジュラスが0.4MPa以下である必要がある。
【0015】
本発明では、硬化物のゲル分率が80%以上であれば、硬化物の表面上に塗料を塗布しても汚れにくいということを見出した。ゲル分率の値は、実施例の項に記載の方法で得られる値である。ゲル分率の値は80%以上が好ましいが、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0016】
本発明で使用する有機重合体(A)は、分子内に反応性ケイ素基を含有していれば、どのような重合体であっても使用できる。このような重合体としては、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリアクリル系重合体、炭化水素系重合体から選ばれる一つ以上の重合体であることが好ましい。中でも、比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れる点で、ポリオキシアルキレン系重合体がより好ましい。
【0017】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよく、他の繰り返し単位が含まれていてもよい。繰り返し単位としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシドなどに起因する繰り返し単位が例示される。特にプロピレンオキシド単位を80重量%以上、好ましくは90重量%以上含有するプロピレンオキシドを主成分とする重合体が、非晶質であることや比較的低粘度である点から好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、たとえばKOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平11−60723号に示されるフォスファゼンを用いた重合法等があげられるが、製造コストなどの理由から、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法が好ましい。
【0019】
反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)中に含有される反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し硬化触媒によって触媒される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。代表例としては、下記一般式(1)で示される
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R1およびR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のα―ハロアルキル基またはR'3SiO−(R'は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR'は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2を、それぞれ示す。またm個の下記一般式(2)
【0022】
【化2】

【0023】
で表される基におけるbは同一である必要はない。mは0〜19の整数を示す。但し、a+(bの和)≧1を満足するものとする。)で表わされる基があげられる。
【0024】
上記Xで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0025】
該加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+(bの和)は1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
前記反応性ケイ素基を形成するケイ素原子は1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合等により連結されたケイ素原子の場合には、20個程度あってもよい。なお、下記一般式(3)
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、R1,Xは前記と同じ、aは1,2または3の整数)で表わされる反応性ケイ素基が、入手が容易である点から好ましい。
【0029】
また、上記化学式におけるR1およびR2の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、α―クロロメチル基等のα―クロロアルキル基や、R'がメチル基、フェニル基等であるR'3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中では重合体の硬化性と安定性のバランスが良いことからメチル基が好ましく、また硬化物の硬化速度が特に速い点ではα―クロロメチル基が好ましい。それらの中でも、入手の容易性からメチル基が特に好ましい。
【0030】
反応性ケイ素基のより詳細な具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、α―クロロメチルジメトキシシリル基、α―クロロメチルジエトキシシリルが挙げられる。
【0031】
ケイ素原子、特に同一のケイ素原子、に結合している加水分解性基の数が多くなるほど、反応性ケイ素基の反応性が高くなるため、硬化性組成物の硬化速度が大きくなり、硬化物の破断伸びは低下する傾向にある。例えばトリメトキシシリル基はジメトキシメチルシリル基より反応性が高く、トリメトキシシリル基を含有する有機重合体はジメトキシメチルシリル基を含有する有機重合体より反応性が高く硬化速度が速くなるが、硬化物の破断伸びは小さくなる傾向にある。トリメトキシシリル基を含有する有機重合体を用いたり、トリメトキシシリル基を含有する有機重合体とジメトキシメチルシリル基を含有する有機重合体を併用することにより、硬化速度が速い硬化性組成物を得ることができる。また、同じ有機重合体に両方の基を導入することによっても、硬化速度が速い硬化性組成物を得ることができる。トリメトキシシリル基を含有する有機重合体など、反応性が高い有機重合体の使用量や同じ有機重合体中の両方の基の割合などは、所望の硬化物の破断伸びや硬化速度が得られるように適宜定められる。
【0032】
反応性ケイ素基の導入は、公知の方法で行うことができる。すなわち、分子中に水酸基、ビニル基などの不飽和基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。例えば以下の方法が挙げられる。
【0033】
(イ)分子中に水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基含有有機重合体を得る。ついで、得られた反応生成物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。特に亜鉛ヘキサシアノコバルテートなどの複合金属シアン化物錯体触媒を用いて得られた水酸基末端オキシプロピレン重合体をアルコキシド化した後、塩化アリルと反応させアリルオキシ(CH2=CHCH2O−)基末端オキシプロピレン重合体を製造し、ジメトキシメチルシランなどのシラン化合物を作用させてヒドロシリル化する方法があげられる。また、水酸基末端オキシプロピレン重合体をアルコキシド化した後、塩化メタリルと反応させメタリルオキシ基末端オキシプロピレン重合体を製造し、ジメトキシメチルシランなどのシラン化合物を作用させてヒドロシリル化することもできる。メタリルオキシ(CH2=C(CH3)CH2O−)基末端オキシプロピレン重合体を用いるとアリルオキシ基末端ポリオキシプロピレン重合体よりシリル化率が高い重合体を得ることができるため、この重合体を用いた硬化性組成物は大きい機械強度を有する硬化物を与えることができる。メタリルオキシ基末端オキシプロピレン重合体由来の反応性ケイ素基を含有する重合体は、アリルオキシ基末端オキシプロピレン重合体由来の反応性ケイ素基を含有する重合体と混合して用いることができる。
【0034】
(ロ)(イ)法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体に、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0035】
(ハ)分子中にヒドロキシ基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0036】
以上の方法の中で、(イ)または(ハ)の方法のうち、末端にヒドロキシ基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られるために好ましい。さらに、(イ)の方法で得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(ハ)の方法で得られる有機重合体よりも低粘度で作業性の良い硬化性組成物となること、また、(ロ)の方法で得られる有機重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(イ)の方法が特に好ましい。
【0037】
(イ)および(ロ)の法のうち、反応性ケイ素基を有する化合物を有機重合体の末端において反応させる方法が好ましい。
【0038】
反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)は、直鎖状であっても、分岐を有してもよい。分子量が同じであれば、直鎖状の有機重合体を用いると、分岐を有する有機重合体と比較して硬化物の破断伸びが大きいものになるが、硬化前の組成物の粘度が高くなり取り扱いにくくなる傾向にある。有機重合体(A)の数平均分子量は、下限は10,000が好ましい。上限は50,000が好ましく、30,000がより好ましく、25,000がさらに好ましい。数平均分子量が10,000未満では、得られる反応性ケイ素基含有有機重合体の硬化物の破断時伸び特性が低下し、50,000を越えると、架橋性官能基濃度(反応性ケイ素基濃度)が低くなりすぎ、硬化速度が遅くなる、また、有機重合体の粘度が高くなりすぎ、取扱いが困難となる傾向がある。
【0039】
反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)の数平均分子量は、JISK1557の水酸基価の測定方法と、JISK0070に規定されたよう素価の測定方法の原理に基づいた滴定分析により、直接的に末端基濃度を測定し、有機重合体の構造(使用した重合開始剤によって定まる分岐度)を考慮して求めた数平均分子量に相当する分子量(末端分子量)と定義している。有機重合体(A)の数平均分子量の相対測定法としては、有機重合体前駆体の一般的なGPC測定により求めたポリスチレン換算数平均分子量(GPC分子量)と上記末端基分子量の検量線を作成し、有機重合体(A)のGPC分子量を末端基分子量に換算して求めることで可能である。
【0040】
有機重合体(A)中の反応性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して1.2個以上有するが、1.3個以上が好ましい。上限については、特に限定されないが、3.0個以下が好ましく、2.4個以下がより好ましく、2.1個以下がさらに好ましい。分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が平均して1.2個未満になると、硬化性が不充分になり、また多すぎると網目構造があまりに密となるため良好な機械特性を示さなくなる。
【0041】
本発明における有機重合体(A)中の反応性ケイ素基の平均個数は、反応性ケイ素基が直接結合した炭素上のプロトンを高分解能1H−NMR測定法により定量する方法により求めた平均個数と定義している。本発明における有機重合体(A)中の反応性ケイ素基の平均個数の計算においては、反応性ケイ素基を導入する前の有機重合体前駆体に対し反応性ケイ素基を導入した際に、ケイ素基が導入されなかった有機重合体前駆体および副生する反応性ケイ素基が導入されていない有機重合体前駆体の変性体についても同一の主鎖構造を有している有機重合体(A)の成分の一部として、反応性ケイ素基の一分子中の平均個数を計算する際の母数(分子数)に含めて計算を行う。
【0042】
有機重合体(A)の反応性ケイ素基は、分子鎖の内部に側鎖として存在してもよく、末端に存在してもよいが、反応性ケイ素基が側鎖として存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれる有効網目鎖量が小さくなるため、高弾性率で低破断伸びを示すゴム状硬化物が得られやすくなる。一方、反応性ケイ素基が分子鎖の末端近傍に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれる有効網目鎖量が多くなるため、高強度、高破断時伸びで低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。特に、反応性ケイ素基が分子鎖の末端に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれる有効網目鎖量が最も多くなるため、引張り物性として大きい破断伸びと柔軟性に富むゴム弾性を有するゴム状硬化物が得られやすくなり、建築物のシーラント用途等には好適である。
【0043】
ポリオキシアルキレン系重合体への反応性ケイ素基の導入については、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同55−13468号、同57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3632557号、米国特許4345053号、米国特許4366307号、米国特許4960844号等の各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−218632号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いオキシプロピレン系重合体にヒドロシリル化等によりジメトキシメチルシリル基等の反応性ケイ素基を導入するものや、特開平3−72527号に提案されているものが例示できる。
【0044】
本発明では、(A)反応性ケイ素基を含有する有機重合体が、更に、(D)1分子に平均して0.5個以上1.2個未満の反応性ケイ素基を含有する有機重合体を含有させることが好ましい。
【0045】
また、(D)成分の有機重合体は、有機重合体(A)で挙げられた有機重合体と同様なものを用いることができ、その中でも、ポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。さらに、(D)成分の反応性ケイ素基は、有機重合体(A)で挙げられた反応性ケイ素基と同様なものを用いることができ、その中でもトリアルコキシシリル基が好ましく、トリエトキシシリル基がより好ましい。
【0046】
(D)成分の1分子に平均して0.5個以上1.2個未満の反応性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン系重合体としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等が例示される。これらの中ではポリオキシプロピレンが好ましい。
【0047】
(D)成分のポリオキシアルキレン系重合体は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)中で可塑剤的に働くものである。数平均分子量の下限は、3000が好ましく、5000がより好ましい。上限は20,000が好ましく、15,000がより好ましい。分子量が低すぎると、反応性可塑剤同士のみが反応することで生成する分子量が比較的低い反応性可塑剤の縮合体や未反応の反応性可塑剤が熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、シーリング目地周辺の汚染、シーリング材表面に塗料が塗られた後に塗料汚染を引き起こしやすくなる。また、分子量が高すぎると、粘度が高くなり、作業性が悪くなる傾向にある。数平均分子量は、有機重合体(A)に用いる分子量と同じく、末端基分析によって得られた数平均分子量に相当する分子量であり、有機重合体(A)に用いるのと同様な方法により測定することが出来る。
【0048】
(D)成分のポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布Mw/Mnは、粘度の低減の観点から、小さいほうが好ましく、1.6以下、さらには1.5以下が好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ポリスチレン換算)を用いて測定する。
【0049】
(D)成分のポリオキシアルキレン系重合体は、通常の苛性アルカリを用いる重合法によって製造されたものでよいが、亜鉛ヘキサシアノコバルテートなどの複合金属シアン化物錯体を触媒として用いる重合法によって製造されたものも用いることができる。
【0050】
(D)成分のポリオキシアルキレン系重合体の反応性ケイ素基は、重合体1分子中に平均して0.5個以上1.2個有するが、上限は1.1個が好ましく、下限は0.7個が好ましい。反応性ケイ素基の数が平均して0.5個未満になると、塗膜の汚れが悪くなる傾向が大となり、また1.2個を超えると、硬化物の伸びが低下する傾向にあり、好ましくない。
【0051】
(D)成分のポリオキシアルキレン系重合体の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)全体重量に対して下限は5重量%が好ましく、10重量%がより好ましく、20重量%がさらに好ましい。上限は60重量%が好ましく、50重量%がより好ましい。5重量%未満では低モジュラス化の効果が発現しにくくなり、60重量%を越えると硬化物の機械強度が不足する傾向にある。なおこれらのポリオキシアルキレン系重合体は、硬化性組成物を製造する際に配合すればよい。また、有機重合体(A)または他の配合剤と事前に混合して配合することも可能である。
【0052】
本発明の硬化性組成物において、(D)成分のポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量は有機重合体(A)に比べて小さい方が粘度低減効果の点から好ましく、有機重合体(A)の数平均分子量の1/2以下であることが組成物の低温での作業性の点から好ましい。
【0053】
本発明で使用する硬化触媒(B)は、カルボン酸、カルボン酸金属塩、アミン化合物、および有機錫から選ばれる一つ以上の化合物であることが好ましい。また、カルボン酸金属塩とアミン化合物からなる硬化触媒、あるいはカルボン酸錫がさらに好ましい。
【0054】
カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの直鎖飽和脂肪酸類;ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、2−ヘキサデセン酸、6−ヘキサデセン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸などのモノエン不飽和脂肪酸類; リノール酸、10,12−オクタデカジエン酸、ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、7,10,13−ドコサトリエン酸、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、ドコサヘキサエン酸などのポリエン不飽和脂肪酸類;イソ酸、アンテイソ酸、ツベルクロステアリン酸、ピバル酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸などの枝分れ脂肪酸類;タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸、7−ヘキサデシン酸などの三重結合をもつ脂肪酸類;ナフテン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルビン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸などの脂環式カルボン酸類;サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸イプロール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、セレブロン酸などの含酸素脂肪酸類;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類等が挙げられる。これらの中では、入手性や触媒の活性の点で、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸が好ましい。
【0055】
カルボン酸金属塩は、前述のカルボン酸の金属塩であって、たとえばカルシウム塩、バナジウム塩、鉄塩、チタニウム塩、カリウム塩、バリウム塩、マンガン塩、ニッケル塩、コバルト塩、ジルコニウム塩、錫塩、鉛塩、ビスマス塩、ハフニウム塩、セリウム塩などが挙げられる。これらの中では、入手性と触媒活性の点で、錫塩、ビスマス塩、ジルコニウム塩が好ましく、硬化物の機械物性のバランスと無着色という点から、特にカルボン酸錫塩が好ましい。さらに、カルボン酸錫塩の中でも、バーサチック酸錫塩、2−エチルヘキサン酸錫塩、ネオデカン酸錫塩、ビバル酸錫塩などが、硬化速度が速く、硬化物の着色が少ないことからより好ましい。
【0056】
アミン化合物としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。これらの中では、入手性と触媒活性の点で、ラウリルアミンとジエチルアミノプロピルアミンが好ましい。
【0057】
有機錫化合物としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズフタレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジエチルヘキサノレート、ジブチルスズジメチルマレエート、ジブチルスズジエチルマレエート、ジブチルスズジブチルマレエート、ジブチルスズジオクチルマレエート、ジブチルスズジトリデシルマレエート、ジブチルスズジベンジルマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジエチルマレエート、ジオクチルスズジオクチルマレエート、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジノニルフェノキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジオクチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズジエチルアセトアセトナート、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズオキサイドとシリケートとの反応物等の4価の錫化合物などが挙げられる。これらの化合物(B)は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
硬化触媒(B)の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部程度が好ましく、1〜10重量部程度が更に好ましい。0.1重量部未満であると、硬化速度が遅くなり、また硬化反応が充分に進行しにくくなる傾向がある。一方、20重量部を超えると、硬化時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られにくくなるので、好ましくない。
【0059】
本発明で使用する充填剤(C)としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末の如き充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤等が挙げられる。充填剤を使用する場合、その使用量は反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して1〜300重量部が好ましく、10〜200重量部がさらに好ましい。
【0060】
低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびバルーンなどから選ばれる充填剤を、反応性ケイ素基を含有する有機重合体100重量部に対して5〜200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。なお、一般的に炭酸カルシウムは、比表面積の値が大きいほど硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きくなる。
【0061】
これら充填剤の使用により比較的強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤が好ましく、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対し、1〜200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。
【0062】
また、もちろんこれら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。脂肪酸表面処理膠質炭酸カルシウムと表面処理がされていない重質炭酸カルシウムなど粒径が1μm以上の炭酸カルシウムを併用して用いることができる。
【0063】
本願発明の硬化性組成物は、真比重0.01以上0.5未満の粒子状物質(E)を含むことが好ましい。真比重の下限は0.02が好ましく、上限は、0.4が好ましくい。0.01未満であると、計量時に吸入して健康被害を引き起こしたり、配合の計量誤差を生じる可能性があり、0.5を越えると、硬化性組成物の軽量化への寄与が小さいため、多量の使用が必要となるためである。
【0064】
粒子状物質(E)としては、バルーン、火山灰、黄砂に代表される砂、すす、ばいじん、海塩などが挙げられる。
【0065】
ここでいうバルーンとは、球状体充填剤で内部が中空のものである。バルーンの材料としては、ガラス、シラス、シリカなどの無機系の材料、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、サラン、アクリロニトリルなどの有機系の材料があげられるが、これらのみに限定されるものではなく、無機系の材料と有機系の材料とを複合させたり、また、積層して複数層を形成させたりすることもできる。無機系の、あるいは有機系の、またはこれらを複合させるなどしたバルーンを使用することができる。また、使用するバルーンは、同一のバルーンを使用しても、あるいは異種の材料のバルーンを複数種類混合して使用しても差し支えがない。さらに、バルーンは、その表面を加工ないしコーティングしたものを使用することもできるし、またその表面を各種の表面処理剤で処理したものを使用することもできる。たとえば、有機系のバルーンを炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどでコーティングしたり、無機系のバルーンをシランカップリング剤で表面処理することなどがあげられる。 バルーンの粒径は、3〜200μmであることが好ましく、特に10〜110μmであることが好ましい。3μm未満では、軽量化への寄与が小さいため大量の添加が必要となり、200μm以上では、硬化したシーリング材の表面が凹凸になったり、伸びが低下する傾向がある。
【0066】
バルーンを用いる際には特開2000−154368号公報に記載されているようなスリップ防止剤、特開2001−164237号公報に記載されているような硬化物の表面を凹凸状態に加えて艶消し状態にするためのアミン化合物、特に融点35℃以上の第1級および/または第2級アミンを添加することができる。
【0067】
バルーンの具体例は特開平2−129262号、特開平4−8788号、特開平4−173867号、特開平5−1225号、特開平7−113073号、特開平9−53063号、特開平10−251618号、特開2000−154368号、特開2001−164237号、WO97/05201号などの各公報に記載されている。
【0068】
粒子状物資(E)の使用量は、反応性ケイ素基を有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましい。下限は0.1重量部がより好ましく、上限は20重量部がより好ましい。0.01重量部未満では作業性の改善効果がなく、30重量部を超えると硬化物の伸びと破断強度が低くなる傾向がある。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、硬化物の表面改質剤として光硬化性化合物、酸素硬化性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0070】
光硬化性化合物を使用すると、硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のべたつきや硬化物の耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用によってかなり短時間に分子構造が化学変化をおこし硬化などの物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂或いはそれらを含む組成物等多くのものが知られており、市販の任意のものを採用し得る。代表的なものとしては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が使用できる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー或いはそれ等の混合物であって、プロピレン(又はブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)ジメタクリレート等の単量体又は分子量10,000以下のオリゴエステルが例示される。具体的には、例えば特殊アクリレート(2官能)のアロニックスM−210,アロニックスM−215,アロニックスM−220,アロニックスM−233,アロニックスM−240,アロニックスM−245;(3官能)のアロニックスM−305,アロニックスM−309,アロニックスM−310,アロニックスM−315,アロニックスM−320,アロニックスM−325,及び(多官能)のアロニックスM−400 などが例示できるが、特にアクリル官能基を含有する化合物が好ましく、また1分子中に平均して3個以上の同官能基を含有する化合物が好ましい(上記アロニックスはいずれも東亞合成株式会社の製品である)。ポリケイ皮酸ビニル類としては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体が例示される。アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液の他、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁〜、第106頁〜、第117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類などの促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
【0071】
光硬化性化合物の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、さらには0.5〜10重量部範囲がより好ましい。0.01重量部以下では耐候性を高める効果が小さく、20重量部以上では硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じるため好ましくない。
【0072】
酸素硬化性化合物としては、空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のべたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止するなどの作用をする。酸素硬化性物質の具体例には、キリ油、アマニ油などで代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどのジエン系化合物を重合または共重合させてえられる1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエンの重合体などの液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させてえられるNBR、SBRなどの液状共重合体や、さらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちではキリ油や液状ジエン系重合体がとくに好ましい。又、酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果が高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩や、アミン化合物等が例示される。酸素硬化性物質の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で使用するのが好ましく、さらに好ましくは1〜10重量部である。前記使用量が0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部をこえると硬化物の引張り特性などが損なわれる傾向が生ずる。特開平3−160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのがよい。
【0073】
本発明の硬化性組成物は、硬化物の復元性のためにエポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物としては、エポキシ基を有していれば特に限定されない。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物及びそれらの混合物等が例示できる。 具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ジ−(2−エチルヘキシル)4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカーボキシレート(E−PS)、エポキシオクチルステアレ−ト、エポキシブチルステアレ−ト等があげられる。これらのなかではE−PSが特に好ましい。硬化物の復元性を高めるには特に分子中にエポキシ基を1個有する化合物を用いるのが好ましい。エポキシ化合物は反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して0.5〜50重量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。
【0075】
特に、加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、特開平5−117521号公報に記載されている化合物をあげることができる。また、ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどのアルキルアルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのR3SiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物、特開平11−241029号公報に記載されているトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールあるいはソルビトールなどの水酸基数が3以上の多価アルコールの誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのR3SiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物をあげることができる。
【0076】
また、特開平7−258534号公報に記載されているようなオキシアルキレン重合体の誘導体であって加水分解によりトリメチルシラノールなどのR3SiOHを生成するシリコン化合物を生成する化合物もあげることができる。さらに特開平6−279693号公報に記載されている架橋可能な加水分解性ケイ素含有基と加水分解によりモノシラノール含有化合物となりうるケイ素含有基を有する重合体を使用することもできる。
【0077】
前記物性調整剤を用いることにより、本発明に用いる組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0078】
物性調整剤は反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲で使用される。
【0079】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。また、垂れ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。チクソ性付与剤は反応性ケイ素基を含有する有機重合体100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部の範囲で使用される。
【0080】
本発明の硬化性組成物には、酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐候性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できるが、特にヒンダードフェノール系が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144; CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上いずれもチバ・ジャパン株式会社製);アデカスタブLA−57,アデカスタブLA−62,アデカスタブLA−67,アデカスタブLA−63,アデカスタブLA−68(以上いずれも株式会社ADEKA製); サノールLS−770, サノールLS−765, サノールLS−292, サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上いずれも三共ライフテック株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。
【0081】
本発明の硬化性組成物には、光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。光安定剤の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも記載されている。
【0082】
本発明の硬化性組成物に光硬化性物質を配合する場合、特に不飽和アクリル系化合物を
用いる場合、特開平5−70531号公報に記載されているようにヒンダードアミン系光安定剤として3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが組成物の保存安定性改良のために好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としてはチヌビン622LD,チヌビン144;CHIMASSORB119FL(以上いずれもチバ・ジャパン株式会社製);アデカスタブLA−57,LA−62,LA−67,LA−63(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノールLS−765,LS−292,LS−2626,LS−1114,LS−744(以上いずれも三共ライフテック株式会社製)などの光安定剤が例示できる。
【0083】
本発明の硬化性組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。フェノール系やヒンダードフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用するのが好ましい。
【0084】
本発明の硬化性組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、難燃剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、溶剤、防かび剤などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本明細書にあげた添加物の具体例以外の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号の各公報などに記載されている。
【0085】
本発明の硬化性組成物は、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤等の成分を配合しておき、該配合材と反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)を使用前に混合する2成分型として調製することができる。また、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することもできる。
【0086】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体(A)を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲルなどを使用した脱水法が好適である。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。かかる脱水乾燥法に加えてメタノール、エタノールなどの低級アルコール;n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
【0087】
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は反応性ケイ素基を含有する有機重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部の範囲がより好ましい。
【0088】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
(株)カネカ製、商品名「カネカMSポリマーS810」100重量部、ポリマーB:数平均分子量8000で、かつ、分子の片末端のみに反応性シリル基を有するポリオキシプロピレン重合体であって、1分子中に0.8個のジメトキシメチルシリル基を含有するポリオキシプロピレン重合体 80重量部、膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名「白艶華CCR−B」)130重量部、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム工業(株)製、商品名「ホワイトンSB」)70重量部、エポキシ可塑剤(新日本理化(株)製、商品名「E−PS」)25重量部、タレ防止剤(楠本化成(株)製、商品名「ディスパロン#308」)5重量部、紫外線吸収剤(チバ・ジャパン社製、商品名「チヌビン326」)1重量部、光安定剤(三共ライフテック株式会社製、商品名「サノールLS770」)1重量部、表面改質剤(東亞合成(株)製、商品名「アロニクスM−309」)3重量部、マイクロバルーン(松本油脂製薬(株)製、商品名「マイクロスフェアーMFL−80GCA」)10重量部、酸化チタン(石原産業(株)製、商品名「タイペークR−820」)5重量部を加え、三本ペイントロールでよく混練した後、硬化触媒としてオクチル酸錫3重量部、ラウリルアミン0.6重量部加え、均一に混練し、硬化性組成物を得た。
【0090】
(実施例2)
実施例1において、ポリマーBを使用しない代わりに、ポリマーC:数平均分子量8000で、かつ、分子の片末端のみに反応性シリル基を有するポリオキシプロピレン重合体であって、1分子中に0.8個のトリメトキシシリル基を含有するポリオキシプロピレン重合体を80重量部使用すること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0091】
(実施例3)
実施例1において、ポリマーBを使用しない代わりに、ポリマーD:数平均分子量8000で、かつ、分子の片末端のみに反応性シリル基を有するポリオキシプロピレン重合体であって、1分子中に0.8個のトリエトキシシリル基を含有するポリオキシプロピレン重合体を80重量部使用すること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0092】
(実施例4)
実施例1において、MSポリマーS810を使用しない代わりに、ポリマーA:数平均分子量26000であり、1分子中に2.1個のジメトキシメチルシリル基を含有する分岐構造のポリオキシプロピレン重合体を100重量部使用すること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0093】
(比較例1)
実施例1において、ポリマーBを使用しない代わりに、数平均分子量が12000のポリプロピレングリコール系可塑剤(バイエル(株)社製、商品名「Acclaim11200」を80重量部使用すること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0094】
(比較例2)
実施例1において、ポリマーBを使用しない代わりに、フタル酸エステル系可塑剤(ジェイ・プラス(株)社製、商品名「DINP」を80重量部使用すること以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0095】
(比較例3)
実施例4において、ポリマーBを使用しない代わりに、フタル酸エステル系可塑剤を80重量部使用すること以外は、実施例4と同様にして硬化性組成物を得た。
【0096】
この硬化性組成物を以下の方法にて評価し、結果を表1に示した。
(1)塗料汚染性は、以下の方法にて評価した。それぞれの硬化性組成物を用いて、厚さ3mmのシート状を作製し、23℃で3日間放置した後、50℃で4日間硬化させた。このシートの表面に、水性アクリルエマルション塗料(エスケー化研(株)製、商品名「プリーズコート」)を塗布して、さらに、23℃7日放置した。その後、珪砂として新東陶料(株)製67ブラックを使用してサンプル表面に均一に塗布した。3時間経過後に、刷毛で珪砂を軽く拭き取った時の状態を観察し、結果を6段階評価で表した。良(珪砂付着なし)6点 → 悪(一面に多数付着):1点。
(2)ゲル分率は、以下の方法にて評価した。それぞれの硬化性組成物を23℃で3日間放置した後、50℃で4日間硬化させた。この硬化物の小片を金網に入れて、23℃条件下でアセトンに3日間浸漬した。ついで、アセトンから取り出し、金網に入った状態での硬化物残渣を105℃の乾燥機に2時間入れてアセトンを蒸発させて重量を測定した。初期重量に対するアセトン浸漬後の重量を計算し、ゲル分率として求めた。
(3)粘度は、トキメック社製のBS型粘度計とローターNo.7を用いて、23℃、50%RH条件下で測定した。
(4)引張物性は、JIS A1439に基づき、以下の方法にて評価した。陽極酸化アルミ基材にプライマー(横浜ゴム(株)製、No.40)を2回塗布し、30分から1時間放置した後、2つのアルミ基材の間に硬化性組成物が12×12×50mmの形状となるよう充填し、試験体を作成した。23℃、50%RHで7日間放置した後、50℃で7日間硬化養生させた後、島津(株)製のオートグラフを用いて引張測定を実施した。それぞれ50%、100%伸張したときのモジュラスと、破断時の強度と伸びを測定した。
【0097】
結果を表1に示した。
【0098】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の硬化性組成物は、シーリング材に使用された場合に、シーリング材表面に水系アクリル塗料塗布されても塗料汚染が少ない。
【0100】
本発明の硬化性組成物は、建造物、船舶、自動車、道路などの密封剤として使用しうる。 更に、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などの如き広範囲の基質に密着しうるので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。接着剤として通常の接着剤の他、コンタクト接着剤としても使用できる。更に、食品包装材料、注型ゴム材料、型取り用材料、塗料としても有用である。
【0101】
また、本発明の施行方法では、前記硬化性組成物を成分として含むシーリング材を施工し、硬化した後、表面に水系アクリル塗料を塗布する。前記硬化性組成物を成分として含むシーリング材では、シーリング材表面への可塑剤の流出がなく、シーリング材表面に塗料を塗布した場合、可塑剤が塗料を汚染するということがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、(B)硬化触媒、(C)充填材を含有し、JIS A1439に規定のH型引張試験での100%モジュラスが0.4MPa以下で、かつ硬化物のゲル分率が80%以上であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
硬化物のゲル分率が85%以上であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(B)成分の硬化触媒が、カルボン酸金属塩、カルボン酸、アミン化合物、および有機錫からなる群から選ばれる一つ以上の化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(A)成分の主鎖が、ポリオキシアルキレン系重合体、ポリアクリル系重合体、炭化水素系重合体のいずれか又は複数であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
(A)成分の主鎖が、ポリオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(A)成分が、(D)1分子に平均して0.5個以上1.2個未満の反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
(D)成分の有機重合体が、ポリオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
(D)成分の反応性ケイ素基が、トリアルコキシシリル基であることを特徴とする、請求項6または7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
(D)成分の反応性ケイ素基が、トリエトキシシリル基であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
(E)成分として、真比重0.01以上0.5未満の粒子状物質を含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
(B)成分の硬化触媒が、カルボン酸金属塩および/またはアミン化合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
(B)成分の硬化触媒が、カルボン酸錫であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の硬化性組成物を施工し、硬化した後、表面に水系アクリル塗料を塗布する施工方法。


【公開番号】特開2011−153249(P2011−153249A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16671(P2010−16671)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】