説明

硬性鏡装置

【課題】硬性鏡本体とその硬性鏡本体に接続されるカメラヘッド部とを備えた硬性鏡装置において、装置全体のサイズを小型化するとともに、操作性を向上させる。
【解決手段】体内に挿入され、入射された照射光を導光して体内の被観察部に照射するとともに、被観察部への照射光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して導光する硬性鏡本体30と、硬性鏡本体30に接続され、被観察部から発せられて硬性鏡本体30によって導光された光を受光して画像信号を出力する撮像部を有するカメラヘッド部20とを備えた硬性鏡装置において、カメラヘッド部20が照射光を出射する照射光出射部を備え、硬性鏡本体30が、カメラヘッド部20の照射光出射部から出射された照射光を受光して導光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に挿入され、体内の被観察部に照射光を照射するとともにその照射光の照射による被観察部の像を導光する硬性鏡本体と、その硬性鏡本体によって導光された像を受光して画像信号を出力するカメラヘッド部とを備えた硬性鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
そして、このような内視鏡システムの一つとして、被観察部の像をリレーレンズによって導光するいわゆる硬性鏡を用いたシステムが提案されている。
【0004】
具体的には、たとえば、特許文献1に記載のように、リレーレンズを備えた硬性鏡本体の接眼部に対して撮像素子を備えたカメラヘッド部を接続し、硬性鏡本体のリレーレンズによって導光された被観察部の像を接眼部を介してカメラヘッド部に入射させ、カメラヘッド部内の撮像素子に像を結像して画像信号を取得するものが提案されている。
【0005】
ここで、上述したような硬性鏡を用いた内視鏡システムにおいては、硬性鏡本体によって白色光が導光されてその先端から被観察部に向けて出射されるが、一般的には特許文献1に記載の硬性鏡システムのように、硬性鏡本体に対してコネクタを介してライトガイドが接続され、そのライトガイドを介して光源装置から出射された白色光が硬性鏡本体に入射されて被観察部に照射される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−290780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した硬性鏡システムにおいては、硬性鏡本体に対してライトガイドが接続されるだけでなく、カメラヘッド部に対して画像信号を取り出すための信号ケーブルも接続される。このようにライトガイドと信号ケーブルとを別々に接続する構成とした場合、これらの接続部分と硬性鏡本体とカメラヘッド部とを含む硬性鏡装置全体のサイズが大きくなってしまい、手術などにおいて用いる際、操作性の悪いものとなってしまう。また、硬性鏡装置を移動させる際、ライトガイドと信号ケーブルとの2本の長さの制約を受けることになるため、そのような意味でも操作性の悪いものとなってしまい、手術中、医師にとってストレスとなるおそれがある。
【0008】
また、ライトガイドと信号線ケーブルとをそれぞれ硬性鏡本体やカメラヘッド部に接続するようにしたのでは、これらを接続するのに手間がかかる。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、硬性鏡本体とその硬性鏡本体に接続されるカメラヘッド部とを備えた硬性鏡装置において、装置全体のサイズを小型化することができ、操作性を向上することができる硬性鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硬性鏡装置は、体内に挿入され、入射された照射光を導光して体内の被観察部に照射するとともに、被観察部への照射光の照射によって被観察部から発せられた光を受光して導光する硬性鏡本体と、硬性鏡本体に接続され、被観察部から発せられて硬性鏡本体によって導光された光を受光して画像信号を出力する撮像部を有するカメラヘッド部とを備えた硬性鏡装置において、カメラヘッド部が、照射光を出射する照射光出射部を備え、硬性鏡本体が、照射光出射部から出射された照射光を受光して導光するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の硬性鏡装置においては、照射光出射部を、照射光を導光して出射する光ファイバ、または照射光を発する蛍光体およびその蛍光体に照射される励起光を導光する光ファイバを備えたものとすることができる。
【0012】
また、硬性鏡本体とカメラヘッド部とが接続されているか否かを検出する硬性鏡接続検出部を設け、照射光出射部を、硬性鏡接続検出部によって硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続が検出されている間に照射光を出射するものとし、硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続が検出されていない間は照射光を出射しないものとできる。
【0013】
また、カメラヘッド部に入射される光を出射する光源装置とカメラヘッド部とが接続されているか否かを検出するカメラヘッド接続検出部を設け、照射光出射部を、硬性鏡接続検出部によって硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続が検出され、かつカメラヘッド接続検出部によってカメラヘッド部と光源装置との接続が検出されている間に照射光を出射するものとし、硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続またはカメラヘッド部と光源装置との接続が検出されていない間は照射光を出射しないものとできる。
【0014】
また、硬性鏡本体側およびカメラヘッド部側の少なくとも一方に対して、照射光出射部から出射された照射光がカメラヘッド部の撮像部に入射するのを妨げる遮光部を設けることができる。
【0015】
また、照射光出射部を、互いに波長帯域の異なる複数の照射光を出射するものとできる。
【0016】
また、複数の照射光のうちの1つを白色光とできる。
【0017】
また、複数の照射光のうちの1つを近赤外光または被観察部からの自家蛍光を励起する自家蛍光励起光とできる。
【0018】
また、硬性鏡本体を、複数の照射光が混合された光を受光する受光部を備えたものとできる。
【0019】
また、硬性鏡本体を、複数の照射光をそれぞれ別々に受光する複数の特定波長用受光部を備えたものとできる。
【0020】
また、複数の特定波長用受光部を、硬性鏡本体のカメラヘッド部との接続面の中心位置から互いに異なる半径の位置に設けることができる。
【0021】
また、複数の特定波長用受光部を、上記中心位置から同心円状に設けることができる。
【0022】
また、照射光出射部に対して照射光を拡散する拡散部を設けることができる。
【0023】
また、照射光出射部の出射面の近傍の屈折率または硬性鏡本体の照射光の受光面の近傍の屈折率と略同等の屈折率を有し、照射光出射部から出射された照射光を透過する透過部材を、上記出射面と上記受光面との間に設けることができる。
【0024】
また、上記透過部材として弾力性を有するものを用いることができる。
【0025】
また、上記透過部材として樹脂から形成されたものを用いることができる。
【0026】
また、上記透過部材を、カメラヘッド部または硬性鏡本体に対して着脱可能に設けることができる。
【0027】
また、照射光出射部の照射光の出射面と硬性鏡本体の照射光の受光面との間に上記出射面の近傍の屈折率または上記受光面の近傍の屈折率と略同等な屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材を設けることができる。
【0028】
また、照射光出射部を撮像部の周辺部分に設けることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の硬性鏡装置によれば、硬性鏡本体とカメラヘッド部とを備えた硬性鏡装置において、カメラヘッド部に対して照射光を出射する照射光出射部を設け、この照射光出射部から出射された照射光を硬性鏡本体が受光して導光し、被観察部に照射するようにしたので、従来の硬性鏡装置のように硬性鏡本体に対してライトガイドを接続しなくてもよいので、装置全体として小型化を図ることができるとともに、ライトガイドの接続や取り回しの手間を省くことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0030】
また、本発明の硬性鏡装置において、照射光出射部として、カメラヘッド部に対して照射光を導光して出射する光ファイバを設けるようにした場合には、既存の光源装置をカメラヘッド部に対して接続するだけで良いので、安価かつ簡易な構成で実現することが可能である。
【0031】
また、照射光照射部として、カメラヘッド部に対して照射光を発する蛍光体とその蛍光体に照射される励起光を導光する光ファイバを設けるようにした場合には、たとえば、硬性鏡本体の先端に上述した蛍光体を設けた構成と比較すると、硬性鏡本体先端の太さの細直化や最適化を図ることができるとともに、硬性鏡本体の先端の形状(直視、斜視など)に自由度をもたせることができる。
【0032】
また、硬性鏡本体とカメラヘッド部とが接続されているか否かを検出する硬性鏡接続検出部を設け、その硬性鏡接続検出部によって硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続が検出されている間に照射光を出射し、硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続が検出されていない間は照射光を出射しないようにした場合には、カメラヘッド部と硬性鏡本体とが接続される前に誤ってカメラヘッド部から出射された高輝度な光が目に入射するのを防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0033】
また、カメラヘッド部に入射される光を出射する光源装置とカメラヘッド部とが接続されているか否かを検出するカメラヘッド接続検出部をさらに設け、硬性鏡接続検出部によって硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続が検出され、かつカメラヘッド接続検出部によってカメラヘッド部と光源装置との接続が検出されている間に照射光を出射し、硬性鏡本体とカメラヘッド部との接続またはカメラヘッド部と光源装置との接続が検出されていない間は照射光を出射しないようにした場合には、カメラヘッド部と硬性鏡本体とが接続される前、もしくはカメラヘッド部と光源装置とが接続される前に誤ってカメラヘッド部や光源装置から出射された高輝度な光が目に入射するのを防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0034】
また、硬性鏡本体側およびカメラヘッド部側の少なくとも一方に対して、照射光出射部から出射された照射光がカメラヘッド部の撮像部に入射するのを妨げる遮光部を設けるようにした場合には、撮像部への照射光の入射によって画像信号にノイズが発生するのを防止することができる。
【0035】
また、硬性鏡本体に対して、カメラヘッド部から出射された複数の照射光をそれぞれ別々に受光する複数の特定波長用受光部を設けるようにした場合には、各特定波長用受光部として、その受光する照射光の波長特性に合った材料のものを使用することができるので、照射光の透過率の向上を図ることができる。
【0036】
また、カメラヘッド部において、硬性鏡本体との接続面の中心から互いに異なる半径の位置から各照射光を出射させるとともに、硬性鏡本体における複数の特定波長用受光部を、カメラヘッド部との接続面の中心から互いに異なる半径の位置に同心円状に設けるようにした場合には、硬性鏡本体とカメラヘッド部とがその接続面において相対的に回転したとしても、カメラヘッド部から出射された各照射光をその照射光に対応する特定波長用受光部によって確実に受光することができる。
【0037】
また、カメラヘッド部に設けられる照射光出射部に対して、照射光を拡散する拡散部を設けるようにした場合には、たとえば照射光としてレーザ光を用いた場合などにおいて、拡散部によってそのレーザ光を拡散することができるので、高輝度なレーザ光がカメラヘッド部から出射されて目に入射するのを防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0038】
また、照射光出射部の出射面の近傍の屈折率または硬性鏡本体の照射光の受光面の近傍の屈折率と略同等の屈折率を有し、照射光出射部から出射された照射光を透過する透過部材を上記出射面と上記受光面との間に設けたり、もしくは上記出射面と上記受光面との間に上記出射面または上記受光面の近傍の屈折率と略同等な屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材を設けるようにした場合には、照射光出射部の出射面と硬性鏡本体の受光面と間における空間的な光接続時に発生する導光効率の低下を抑制することができ、高い導光効率を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の硬性鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】硬性鏡本体とカメラヘッド部の概略構成図
【図3】図2に示す硬性鏡本体を矢印A方向から見た図
【図4】硬性鏡本体の長手方向断面図を示す図
【図5】図2に示すカメラヘッド部を矢印B方向から見た図
【図6】カメラヘッド部の内部の概略構成を示す図
【図7】白色光出射部から出射される光のスペクトルの一例を示す図
【図8】プロセッサおよび光源装置の概略構成を示すブロック図
【図9】硬性鏡接続検出部とカメラヘッド接続検出部とを設けた場合の一実施形態を示すブロック図
【図10】カメラヘッド部に拡散部を設けた場合の一実施形態を示す図
【図11】カメラヘッド部の出射面と硬性鏡本体の入射面との間に透過部材を設けた場合の一実施形態を示す図
【図12】カメラヘッド部の出射面と硬性鏡本体の入射面との間にマッチングオイルを供給する供給部材を設けた場合の一実施形態を示す図
【図13A】カメラヘッド部の白色光出射部と近赤外光出射部とを互いに異なる半径位置に設けた一実施形態を示す図
【図13B】硬性鏡本体の白色光用バンドルファイバと近赤外光用バンドルファイバとを同心円状に設けた一実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の硬性鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0041】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、後述する蛍光体を励起する青色光である励起光およびICGを励起する近赤外光を射出する光源装置2と、励起光の照射によって蛍光体から出射された白色光および近赤外光を導光して被観察部に照射するとともに、白色光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像および近赤外光の照射により被観察部のICGから発せられた蛍光に基づく蛍光像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施すプロセッサ3と、プロセッサ3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の通常画像および蛍光画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0042】
図1に示すように、硬性鏡撮像装置10におけるカメラヘッド部20と光源装置2およびプロセッサ3とはケーブル5を介して接続されている。ケーブル5は、光源装置2から出射された励起光を導光する励起光用光ケーブル5aと、光源装置2から出射された近赤外光を導光する近赤外光用光ケーブル5bと、カメラヘッド部20から出力された画像信号などを伝送する信号ケーブル5cとが1つにまとめられたものであり、これらのケーブルを一体としたコネクタCを介してカメラヘッド部20に接続されている。なお、近赤外光と励起光とは、光源装置2内においてレンズやミラーなどを用いて合波するようにしてもよく、この場合には、光源装置2に接続される光ケーブルは1本にすることができる。
【0043】
ケーブル5は、カメラヘッド部20に対してコネクタCを介して着脱可能に設けるようにしてもよいし、固定して設けるようにしてもよい。また、ケーブル5は、光源装置2およびプロセッサ3に対して着脱可能に設けられるものである。
【0044】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、患者の体腔内に挿入される硬性鏡本体30と、硬性鏡本体30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像するカメラヘッド部20とを備えている。そして、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、硬性鏡本体30とカメラヘッド部20とが着脱可能に接続されたものである。硬性鏡本体30とカメラヘッド部20との着脱機構については、たとえばネジ式によって構成するようにしてもよいし、その他公知の構成を採用するようにしてもよい。
【0045】
硬性鏡本体30は、接続部30a、挿入部材30b、撮像窓30dおよび照射窓30e,30fを備えている。
【0046】
接続部30aは、硬性鏡本体30(挿入部材30b)のカメラヘッド部20側の一端部に設けられており、上述したようにカメラヘッド部20側の接続部分に着脱可能に接続されるものである。
【0047】
挿入部材30bは、体腔内の撮影を行う際に体腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。
【0048】
図3は、図2に示す硬性鏡本体30の接続部30aを矢印A方向から見た図であり、図4は、図2に示す硬性鏡本体30の長手方向断面図を示すものである。
【0049】
硬性鏡本体30の内部には、図3および図4に示すように、カメラヘッド部20から出射された白色光および近赤外光を導光する2本のバンドルファイバ30eと30fとが設けられている。バンドルファイバ30e,30fは、マルチモード光ファイバをバンドル化したものであり、硬性鏡本体30の接続部30a側の一端から反対側の先端まで延設されるものである。そして、バンドルファイバ30e,30fの先端部分が研磨されて白色光および近赤外光の照射窓が形成されており、この照射窓から被観察部に向けて白色光および近赤外光が照射される。なお、本実施形態においては、バンドルファイバ30e,30fには、それぞれ白色光と近赤外光とが混合されて入射されて導光されるものとする。また、本形態においては、2本のバンドルファイバ30e,30fを設けるようにしたが、1本にしてもよいし、3本以上設けるようにしてもよい。さらに、バンドルファイバの断面形状は、図3に示すように円形状に限らず、三日月形状などの弧状としてもよい。
【0050】
また、硬性鏡本体30の内部には、図3および図4に示すように、撮像窓30dから入射された被観察部の通常像L3および蛍光像L4を結像し、硬性鏡本体30のカメラヘッド部20側の一端部まで導光してその一端部から出射させるリレーレンズ30gが設けられている。このリレーレンズ30gから出射された通常像L3および蛍光像L4が、カメラヘッド部20に入射される。
【0051】
また、硬性鏡本体30の接続部30aのカメラヘッド部20側の面には、図3および図4に示すように、リレーレンズ30gの周囲に円状に形成された遮光部30hが設けられている。この遮光部30hは、硬性鏡本体30とカメラヘッド部20とが接続された際に、カメラヘッド部20から出射された白色光や近赤外光がリレーレンズ30gや後述するカメラヘッド部20内の撮像ユニット35内に入射するのを妨げるものである。遮光部30hの材料としては、たとえば、着色された樹脂などの弾性体を用いることができる。
【0052】
カメラヘッド部20は、硬性鏡本体30のリレーレンズ30gから出射された通常像L3および蛍光像L4を撮像する撮像ユニット35を備えたものである。また、カメラヘッド部20の硬性鏡本体30側には硬性鏡本体30と着脱可能に接続される接続部20aが形成されているとともに、ケーブル5が接続されるコネクタC側には、使用者がカメラヘッド部20を握りやすいように把手部20cが形成されている。また、カメラヘッド部20には、操作ボタン20bが設けられている。操作ボタン20bは、使用者による動作指示を受け付けるものであり、たとえば白色光や近赤外光の照射指示を受け付けるものである。また、本実施形態においては図示していないが、たとえば、硬性鏡本体30の先端に液体や気体などを吐出する吐出口を設ける場合には、その吐出口からの液体や気体などの吐出指示なども受け付けることができる。
【0053】
図5は、図2に示すカメラヘッド部20の接続部20aを矢印B方向から見た図であり、図6は、カメラヘッド部20内の概略構成を示す図である。
【0054】
カメラヘッド部20には撮像ユニット35が設けられており、この撮像ユニット35は、硬性鏡本体30内のリレーレンズ30gにより結像された被観察部の蛍光像L4を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、硬性鏡本体30内のリレーレンズ30gにより結像された被観察部の通常像L3を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、通常像L3を反射するとともに、蛍光像L4を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0055】
第1の撮像系は、被観察部において反射し、ダイクロイックプリズム21を透過した励起光の波長以下の光をカットするとともに、後述する蛍光波長域照明光を透過する励起光カットフィルタ22と、硬性鏡本体30から射出され、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を透過した蛍光像L4を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像された蛍光像L4を撮像する高感度撮像素子24とを備えている。
【0056】
高感度撮像素子24は、蛍光像L4の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子24としては、たとえばモノクロの撮像素子を用いることができる。
【0057】
第2の撮像系は、硬性鏡本体30から射出され、ダイクロイックプリズム21を反射した通常像L3を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25により結像された通常像L3を撮像する撮像素子26を備えている。
【0058】
撮像素子26は、通常像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)、またはシアン(C)、マゼンダ(M)およびイエロー(Y)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0059】
また、カメラヘッド部20は撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、高感度撮像素子24から出力された蛍光画像信号と撮像素子26から出力された通常画像信号とに対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介してプロセッサ3に出力するものである。
【0060】
また、カメラヘッド部20内の撮像ユニット35の周辺には、図5および図6に示すように、光源装置2から出射された励起光を導光し、その励起光に基づいて白色光を出射し、その出射した白色光を硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fに入射させる白色光出射部28と、光源装置2から入射された近赤外光を導光して出射し、その近赤外光を硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fに入射させる近赤外光出射部29とが設けられている。
【0061】
白色光出射部28は、光源装置2から出射された励起光を導光する励起光用マルチモード光ファイバ28aと、励起光用マルチモード光ファイバ28aによって導光された励起光(青色光)の一部を吸収して励起され、緑色〜黄色の可視光を発する蛍光体28bと、蛍光体28bから発せられた白色光を硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fの入射端に照射する照射窓28cとを備えている。蛍光体28bは、複数種類の蛍光物質から形成されており、たとえば、YAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質などを含んで形成される。
【0062】
図7は、白色光出射部28から出射される光のスペクトルの一例を示す図である。図7に示すように、白色光出射部28からは蛍光体28bを透過する青色光スペクトルS1の光と、励起光の照射によって蛍光体28bから発せられた緑色〜黄色の可視光スペクトルS2の光とが出射される。
【0063】
なお、本明細書における白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、たとえば、基準光であるR(赤)、G(緑)、B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、たとえば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光なども広義に含むものとする。したがって、白色光出射部28は、図7に示すような青色光スペクトルS1と可視光スペクトルS2とを出射するものであるが、これらのスペクトルからなる光も白色光であるとする。
【0064】
近赤外光出射部29は、光源装置2から出射された近赤外光を導光する近赤外光用マルチモード光ファイバ29aと、近赤外光用マルチモード光ファイバ29aによって導光された近赤外光を硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fの入射端に照射する照射窓29bとを備えている。
【0065】
白色光出射部28と近赤外光出射部29において使用されるマルチモード光ファイバとしては、たとえば、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径が直径0.3mm〜0.5mmの細径なものを使用することができる。
【0066】
なお、図6においては、白色光出射部28と近赤外光出射部29とを1つずつしか示していないが、実際には、図5に示すように、白色光出射部28と近赤外光出射部29とはそれぞれ2つずつ設けられている。そして、図5に示すように、隣接して配置された白色光出射部28の両側にそれぞれ1つずつ近赤外光出射部29が配置されている。
【0067】
また、カメラヘッド部20内の白色光出射部28および近赤外光出射部29の光軸と、硬性鏡本体30内のバンドルファイバ30e,30fとの光軸とが互いに近傍に位置するような構成をさらに付加することが望ましく、たとえば、カメラヘッド部20の接続部20aに対する硬性鏡本体30の円周方向の回転を規制するような構成をカメラヘッド部20の接続部20aおよび硬性鏡本体30の接続部30aにそれぞれ設けることが望ましい。具体的には、上述したようなネジ式でカメラヘッド部20の接続部20aと硬性鏡本体30の接続部30aとを接続することによって円周方向の回転を規制するようにしてもよいし、たとえば硬性鏡本体30の接続部30aに凸部を設けるとともに、カメラヘッド部20の接続部20aに上記凸部に嵌合するような溝を形成するようにしてもよい。
【0068】
また、カメラヘッド部20の接続部20aの硬性鏡本体30側の面には、図5および図6に示すように、撮像ユニット35の周囲に円状に形成された遮光部25が設けられている。この遮光部25は、硬性鏡本体30とカメラヘッド部20とが接続された際に、カメラヘッド部20から出射された白色光や近赤外光がリレーレンズ30gや撮像ユニット35内に入射するのを妨げるものである。遮光部25の材料としては、たとえば、着色された樹脂などの弾性体を用いることができる。
【0069】
プロセッサ3は、図8に示すように、通常画像入力コントローラ41、蛍光画像入力コントローラ42、画像処理部43、メモリ44、ビデオ出力部45、操作部46、TG(タイミングジェネレータ)47およびCPU48を備えている。
【0070】
通常画像入力コントローラ41および蛍光画像入力コントローラ42は、所定容量のラインバッファを備えており、通常画像入力コントローラ41は、カメラヘッド部20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の通常画像信号を一時的に記憶するものであり、蛍光画像入力コントローラ42は、撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の蛍光画像信号を一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ41に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ42に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ44に格納される。
【0071】
画像処理部43は、メモリ44から読み出された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。
【0072】
ビデオ出力部45は、画像処理部43から出力された通常画像信号および蛍光画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0073】
操作部46は、種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG47は、カメラヘッド部20の高感度撮像素子24、撮像素子26および後述する光源装置2のLDドライバ51,54を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。また、CPU48は装置全体を制御するものである。
【0074】
また、プロセッサ3には、カメラヘッド部20内の撮像制御ユニット27から出力された画像信号を伝送する信号配線やプロセッサ3から出力された制御信号を伝送する制御配線などを含む、上述した信号ケーブル5cが接続されている。
【0075】
光源装置2は、図8に示すように、445nmの青色光を射出するLD光源からなる励起光源50と、励起光源50を駆動するLDドライバ51と、励起光源50から射出された青色光を集光してケーブル5における励起光用光ケーブル5aに入射させる集光レンズ52とを備えている。
【0076】
また、光源装置2は、750〜790nmの近赤外光を射出する近赤外LD光源53と、近赤外LD光源53を駆動するLDドライバ54と、近赤外LD光源53から射出された近赤外光を集光してケーブル5における近赤外光用光ケーブル5bに入射させる集光レンズ55とを備えている。
【0077】
なお、励起光用光ケーブル5aは、2本のバンドルファイバから構成されており、各バンドルファイバによって導光された励起光が、カメラヘッド部20の各白色光出射部28にそれぞれ入射されるものとする。また、近赤外光用光ケーブル5bも、2本のバンドルファイバから構成されており、各バンドルファイバによって導光された近赤外光が、カメラヘッド部20の各近赤外光出射部29にそれぞれ入射されるものとする。
【0078】
また、本実施形態においては、通常像を撮像するための白色光以外の光として近赤外光を用いるようにしたが、近赤外光の波長域に限定されず、蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定された光を用いるようにしてもよい。
【0079】
次に、本実施形態の硬性鏡システムの作用について説明する。
【0080】
まず、ケーブル5の励起光用光ケーブル5aおよび近赤外光用光ケーブル5bが光源装置2に接続されるとともに、ケーブル5の信号ケーブル5cがプロセッサ3に接続される。また、カメラヘッド部20とケーブル5とが着脱可能に構成されている場合には、さらにケーブル5のコネクタCがカメラヘッド部20に接続される。また、上述したようにしてケーブル5が接続されたカメラヘッド部20に対して、硬性鏡本体30が接続される。なお、このとき、上述したようにカメラヘッド部20内の白色光出射部28および近赤外光出射部29の光軸と、硬性鏡本体30内のバンドルファイバ30e,30fとの光軸とが互いに近傍に位置するように接続される。また、カメラヘッド部20と硬性鏡本体30とが接続されることによって、カメラヘッド部20の接続部20aに設けられた遮光部25と硬性鏡本体30の接続部30aに設けられた遮光部30hとが密着接触し、硬性鏡本体30内のリレーレンズ30gとカメラヘッド部20の撮像ユニット35とがほぼ完全に遮光された状態となる。
【0081】
次に、使用者によってプロセッサ3の操作部46もしくはカメラヘッド部20の操作ボタン20bを用いて白色光および近赤外光の照射開始指示が入力され、この照射開始指示に応じて励起光源50からの励起光の射出が開始されるとともに、近赤外LD光源53からの近赤外光の射出が開始される。
【0082】
そして、光源装置2の励起光源50から射出された励起光L5と近赤外LD光源53から射出された近赤外光L2とがケーブル5によって導光され、カメラヘッド部20の白色光出射部28と近赤外光出射部29とにそれぞれ入射される。
【0083】
白色光出射部28に入射された励起光は、白色光出射部28内の励起光用マルチモード光ファイバ28aによって導光されて蛍光体28bに照射される。そして、励起光の照射によって蛍光体28bから発せられた白色光が照射窓28cを介して硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fに向けて出射される。
【0084】
一方、近赤外光出射部29に入射された近赤外光は、近赤外光出射部29内の近赤外光用マルチモード光ファイバ29aによって導光されて照射窓29bに入射され、照射窓29bを介して硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fに向けて出射される。
【0085】
そして、カメラヘッド部20の白色光出射部28と近赤外光出射部29とから出射された白色光と近赤外光とが混合されて硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fに入射される。
【0086】
次いで、硬性鏡本体30内のバンドルファイバ30e,30fによって導光された白色光L1および近赤外光L2が、硬性鏡本体30の先端から被観察部に向けて照射される。
【0087】
そして、上述したような白色光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像が撮像されるとともに、近赤外光L2の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像が撮像される。なお、被観察部には、予めICGが投与されており、このICGから発せられる蛍光を撮像するものとする。
【0088】
具体的には、通常像の撮像の際には、白色光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像L3が挿入部材30bの先端部から入射し、挿入部材30b内のリレーレンズ30gにより導光されてカメラヘッド部20内の撮像ユニット35に向けて射出される。
【0089】
撮像ユニット35に入射された通常像L3は、ダイクロイックプリズム21により撮像素子26に向けて直角方向に反射され、第2結像光学系25により撮像素子26の撮像面上に結像され、撮像素子26によって所定のフレームレートで順次撮像される。
【0090】
撮像素子26から順次出力された通常画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、信号ケーブル5cを介してプロセッサ3に順次出力される。
【0091】
そして、プロセッサ3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ41において一時的に記憶された後、メモリ44に格納される。そして、メモリ44から読み出された1フレーム毎の通常画像信号は、画像処理部43において階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部45に順次出力される。
【0092】
そして、ビデオ出力部45は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。
【0093】
一方、蛍光像の撮像の際には、近赤外光L2の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像L4が挿入部材30bの先端部から入射し、挿入部材30b内のリレーレンズ30gにより導光されてカメラヘッド部20内の撮像ユニット35に向けて射出される。
【0094】
撮像ユニット35に入射された蛍光像L4は、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を通過した後、第1結像光学系23により高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、高感度撮像素子24によって所定のフレームレートで撮像される。
【0095】
高感度撮像素子24から順次出力された蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、信号ケーブル5cを介してプロセッサ3に順次出力される。
【0096】
そして、プロセッサ3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ42において一時的に記憶された後、メモリ44に格納される。そして、メモリ44から読み出された1フレーム毎の蛍光画像信号は、画像処理部43において所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部45に順次出力される。
【0097】
そして、ビデオ出力部45は、入力された蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する。
【0098】
上記実施形態の硬性鏡システムによれば、カメラヘッド部20に対して白色光出射部28と近赤外光出射部29を設け、これらから出射された白色光および近赤外光を硬性鏡本体30によって受光して導光し、被観察部に照射するようにしたので、従来の硬性鏡装置のように硬性鏡本体30に対してライトガイドを接続しなくてもよいので、装置全体として小型化を図ることができるとともに、ライトガイドの接続や取り回しの手間を省くことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0099】
なお、上記実施形態の硬性鏡システム1においては、操作部46や操作ボタン20bにおいて白色光および近赤外光の照射開始指示が行われた際に、白色光や近赤外光の照射を開始するようにしたが、たとえば、誤ってカメラヘッド部20と硬性鏡本体30とが接続されていないときに照射開始指示が行われた場合に、カメラヘッド部20の近赤外光出射部29から出射された近赤外のレーザ光や白色光出射部28から射出された青色のレーザ光が人の目に入るのを回避する必要がある。また、同様に、カメラヘッド部20がケーブル5を介して光源装置2に接続されていないときに照射開始指示が行われた場合に、光源装置2から出射された青色光のレーザ光や近赤外のレーザ光が人の目に入るのを回避する必要がある。
【0100】
そこで、図9に示すように、カメラヘッド部20と硬性鏡本体30とが接続されているか否かを検出する硬性鏡接続検出部60を設けるとともに、光源装置2とカメラヘッド部20とが接続されているか否かを検出するカメラヘッド接続検出部56,57とを設けるようにしてもよい。硬性鏡接続検出部60やカメラヘッド接続検出部56,57としては、たとえば光学的なセンサなどを用いることができるが、その他のセンサや電気的なスイッチなどを用いるようにしてもよい。また、図9に示すカメラヘッド接続検出部56,57は、ケーブル5が光源装置2に接続されているか否かを検出することによってカメラヘッド部20がケーブル5を介して光源装置2に接続されているか否かを検出するものであるが、たとえばケーブル5のコネクタCがカメラヘッド部20に対して着脱可能な構成である場合には、このケーブル5のコネクタCがカメラヘッド部20に対して接続されているか否かを検出するようにしてもよい。もしくは、ケーブル5と光源装置2との接続と、ケーブル5とカメラヘッド部20との接続との両方を検出するようにしてもよい。
【0101】
そして、プロセッサ3のCPU48が、硬性鏡接続検出部60によって硬性鏡本体30とカメラヘッド部20との接続が検出され、かつカメラヘッド接続検出部56,57によってカメラヘッド部20と光源装置2との接続が検出されている場合には、通常通りに励起光源50および近赤外LD光源53から励起光および近赤外光を射出させ、硬性鏡本体30とカメラヘッド部20との接続またはカメラヘッド部20と光源装置2との接続が検出されていない場合は、励起光源50および近赤外LD光源53から励起光および近赤外光を射出させないようにしてもよい。なお、カメラヘッド部20や光源装置2からのレーザ光の射出を停止する方法としては、光源自体を制御する方法に限らず、シャッターなどを設けて、これを制御するようにしてもよい。
【0102】
また、カメラヘッド部20に対して硬性鏡本体30が接続されていない場合におけるカメラヘッド部20からのレーザ光の出射に対する安全対策として、図10に示すように、白色光出射部28の照射窓28cに対して白色光を拡散する拡散部70を設けるとともに、近赤外光出射部29の照射窓29bに対して近赤外光を拡散する拡散部71を設けるようにしてもよい。拡散部70,71としては、たとえば、レンズ拡散板(LSD:Light shaping Diffusers)、拡散フィルム、拡散シート、拡散フィルタなどを用いることができ、要するに入射される光を拡散して透過するものであれば如何なるものでもよい。
【0103】
また、拡散部70,71として、たとえばレンズ拡散板を用いる場合には、図10に示すように、サーフェス・レリーフ・ホログラムパターンが形成された拡散面70a,71aが白色光および近赤外光の入射面となるように、すなわち、拡散面70a,71aがカメラヘッド部20の光の出射端面側となるように設置することが望ましい。拡散面70a,71aを上述の向きに配置することによって、拡散面に汚れや水などが付着して拡散機能が低下するのを防止することができる。
【0104】
なお、上述したように拡散部70,71を設けるようにした場合、図11に示すように、拡散部70,71と硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fの入射面との間に、照射窓28cと照射窓29bおよび/またはバンドルファイバ30e,30fと同等の屈折率を有し、拡散部70,71から出射された白色光および近赤外光を透過する透過部材75を設けるようにしてもよい。この透過部材75を設けることによって、カメラヘッド部20と硬性鏡本体30とを接続した際、カメラヘッド部20の拡散部70,71と硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fを光学的に接続することができ、白色光と近赤外光の導光効率を向上することができる。
【0105】
また、この透過部材75としては、弾力性を有する材料から形成されたものを用いることが望ましく、たとえば樹脂から形成されたものを用いることが望ましい。このような透過部材としては、たとえばLED用シリコーン材料(SLJ9101,SLJ9102,SLJ9105,SLJ9106(旭化成製)など)や、高透明ウレタンゴムなどを用いることができる。
【0106】
このように弾力性のある透過部材75を用いることにより、拡散部70,71の拡散面70a,71aと透過部材75との間の密着性および透過部材75とバンドルファイバ30e,30fの入射面との間の密着性を向上させることができる。
【0107】
特に、拡散部70,71の拡散面70a,71aが、図11に示すように、白色光および近赤外光の出射面側(硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fの入射面側)に向くように配置した場合には、拡散部70,71の拡散面70a,71aと透過部材との間の密着性を向上させることによって拡散面70a,71aにおける拡散効果を抑制することができるので、白色光および近赤外光の導光効率をさらに向上させることができる。
【0108】
また、上述した透過部材75は、硬性鏡本体30側およびカメラヘッド部20側のうちのどちらに設けるよういしてもよいが、これらに対して着脱可能に設けることが望ましい。このように構成することにより、たとえば透過部材にゴミなどが付着した場合でも、透過部材を取り外してゴミを取り除き、再び装着することができる。透過部材75を着脱可能にする構成としては、たとえば、透過部材75を硬性鏡本体30やカメラヘッド部20に対して固定して設置することなく、手で自由に取り出せるよう構成してもよいし、硬性鏡本体30またはカメラヘッド部20に対して着脱可能な部材に対して透過部材を設けるようにしてもよい。
【0109】
なお、透過部材75は、拡散部70,71を設ける場合に限らず、拡散部70,71を設けない場合にも設けることができ、これにより空間的な光接続時に発生する導光効率の低下を抑制することができる。
【0110】
また、図12示すように、カメラヘッド部20に対して、カメラヘッド部20の白色光出射部28および近赤外光出射部29の光出射面と硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fの光入射面との間に、照射窓28cおよび照射窓29bおよび/またはバンドルファイバ30e,30fと同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材80を設けるようにしてもよい。
【0111】
供給部材80は、上述した液体やジェルが溜められた溜部82と、この溜部82が設けられ、カメラヘッド部20に対して設置される設置部材81とを備えている。この設置部材81は、カメラヘッド20に対して着脱可能に構成することが望ましく、これにより供給部材80はディスポーザブルな構成とすることができる。また、溜部82は、人の手で押されることによって変形可能な樹脂などの材料によって形成されるものであり、その中に充填される液体やジェルは、照射窓28cおよび照射窓29bと同等の屈折率を有するものである。このような液体としてマッチングオイルやマッチングジェルなどがある。たとえば、http://www.cargille.com/refractivestandards.shtmlに記載されているカーギル社製の屈折液を利用することができる。
【0112】
そして、カメラヘッド部20と硬性鏡本体30とが接続された後、溜部82が人の手で押されて変形することよって溜部82内の液体などが設置部材81およびカメラヘッド部20に形成された穴を介して吐出される。
【0113】
この吐出された液体などはカメラヘッド部20に設けられた拡散部70,71と硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fの入射面との間に供給され、これにより拡散部70,71とバンドルファイバ30e,30fが光学的に接続され、導光効率を向上させることができる。
【0114】
なお、上述したような供給部材80を用いる場合には、拡散部70,71は、図11に示すように、その拡散面70a,71aが、バンドルファイバ30e,30fの入射端側に向くように設けることができる。このように構成した場合、拡散部70,71の拡散面70a,71aと供給部材80から供給された液体などとを接触させることによって拡散面70a,71aにおける拡散効果を抑制することができるので、白色光および近赤外光の導光効率を向上させることができる。
【0115】
ただし、拡散面70a,71aの向きはこれに限らず、逆に、白色光出射部28および近赤外光出射部29の光の出射端面側に向くようにしてもよい。このように拡散部70,71を設けた場合には、供給部材80から供給された液体などが拡散面70a,71aに付着してその拡散効果が低減するのを防止することができる。また、拡散部70,71を設けない場合においても、供給部材80を設けるようにしてもよく、これにより白色光および近赤外光の導光効率を向上させることができる。
【0116】
なお、ここでは白色光出射部28の照射窓28cと近赤外光出射部29の照射窓29bと同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給するようにしたが、たとえば、白色光出射部28と近赤外光出射部29とが、マルチモード光ファイバ単体で構成されるような場合には、そのマルチモード光ファイバと同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給するようにすればよい。要するに、白色光出射部28と近赤外光出射部29の出射端面近傍の材料と同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給するようにすればよい。
【0117】
また、供給部材80についても、拡散部70,71を設ける場合に限らず、拡散部70,71を設けない場合にも設けることができ、これにより空間的な光接続時に発生する導光効率の低下を抑制することができる。
【0118】
また、上記実施形態の硬性鏡システム1においては、白色光出射部28から出射された白色光と近赤外光出射部29から出射された近赤外光とを混合して、硬性鏡本体30のバンドルファイバ30e,30fに入射させるようにしたが、このような構成に限らず、たとえば、硬性鏡本体30内に設けられるバンドルファイバとして、白色光を導光する白色光用バンドルファイバと近赤外光を導光する近赤外光用バンドルファイバとを別個に設け、白色光出射部28から出射された白色光を白色光用バンドルファイバに入射させるとともに、近赤外光出射部29から出射された近赤外光を近赤外光用バンドルファイバに入射させるようにしてもよい。このように構成することによって、硬性鏡本体30内のバンドルファイバとして、導光する光の波長に対して最適なものを選択することができ、白色光および近赤外光の透過率の向上を図ることができる。
【0119】
また、上述したように、近赤外光用バンドルファイバと白色光用バンドルファイバとを別個に設ける構成としては、たとえば、図13Aに示すように、カメラヘッド部20において、白色光出射部28の照射窓28cをカメラヘッド部20の断面(接続面)中心Cから距離Rの位置に配置するとともに、近赤外光出射部29の照射窓29bを断面(接続面)中心Cから距離Rとは異なる距離rの位置に配置し、これに対し、硬性鏡本体30において、図13Bに示すように、白色光用バンドルファイバ32を硬性鏡本体30の断面(接続面)中心Cから距離Rの位置に配置するとともに、近赤外光用バンドルファイバ31を断面(接続面)中心Cから距離rの位置に配置させるようにしてもよい。なお、カメラヘッド部20の断面(接続面)中心Cと硬性鏡本体30の断面(接続面)中心Cとは、カメラヘッド部20と硬性鏡本体30を接続した際、同一の中心軸上に配置されるものとする。
【0120】
そして、さらに白色光用バンドルファイバ32と近赤外光用バンドルファイバ31とを、図13Bに示すように断面中心Cから同心円状に形成するようにすれば、カメラヘッド部20と硬性鏡本体30とがその円周方向に相対的に回転したとしても、白色光出射部28から出射された白色光を白色光用バンドルファイバ32に入射させ、近赤外光出射部29から出射された近赤外光を近赤外光用バンドルファイバ31に入射させることができるので、これらの光が混合されて各バンドルファイバに入射されることはない。なお、白色光用バンドルファイバ32と近赤外光用バンドルファイバ31とは、必ずしも円状ではなくてもよく、半円形状や三日月形状など弧状に形成するようにしてもよい。
【0121】
また、上記実施形態の硬性鏡システム1においては、励起光用マルチモード光ファイバ28aと蛍光体28bと照射窓28cとから白色光出射部28を構成するようにしたが、白色光出射部28の構成としてはこれに限らず、たとえば、光源装置2に対してキセノンランプまたはハロゲンランプなどの白色光源を設け、その白色光源から射出されてケーブル5を介して入射された白色光を導光する白色光用マルチモード光ファイバから白色光出射部28を構成するようにしてもよい。また、白色光を発するLED(Light Emitting Diode)を白色光出射部28としてカメラヘッド部20に設けるようにしてもよい。
【0122】
また、近赤外光出射部29についても、近赤外光を発するLEDやLD(Laser Diode)をカメラヘッド部20に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 プロセッサ
4 モニタ
5a 励起光用光ケーブル
5b 近赤外光用光ケーブル
5c 信号ケーブル
10 硬性鏡撮像装置
20 カメラヘッド部
20 硬性鏡本体
20 カメラヘッド部
20a 接続部
20b 操作ボタン
24 高感度撮像素子
26 撮像素子
27 撮像制御ユニット
28 白色光出射部
28a 励起光用マルチモード光ファイバ
28b 蛍光体
28c 照射窓
29 近赤外光出射部
29a 近赤外光用マルチモード光ファイバ
29b 照射窓
30 硬性鏡本体
30a 接続部
30b 挿入部材
30d 撮像窓
30e,30f バンドルファイバ
30g リレーレンズ
30h 遮光部
31 近赤外光用バンドルファイバ
32 白色光用バンドルファイバ
35 撮像ユニット
50 励起光源
53 近赤外LD光源
56,57 カメラヘッド接続検出部
60 硬性鏡接続検出部
70,71 拡散部
75 透過部材
80 供給部材
81 設置部材
82 溜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入され、入射された照射光を導光して前記体内の被観察部に照射するとともに、該被観察部への前記照射光の照射によって前記被観察部から発せられた光を受光して導光する硬性鏡本体と、該硬性鏡本体に接続され、前記被観察部から発せられて前記硬性鏡本体によって導光された光を受光して画像信号を出力する撮像部を有するカメラヘッド部とを備えた硬性鏡装置において、
前記カメラヘッド部が、前記照射光を出射する照射光出射部を備え、
前記硬性鏡本体が、前記照射光出射部から出射された前記照射光を受光して導光するものであることを特徴とする硬性鏡装置。
【請求項2】
前記照射光出射部が、前記照射光を導光して出射する光ファイバ、または前記照射光を発する蛍光体および該蛍光体に照射される励起光を導光する光ファイバを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の硬性鏡装置。
【請求項3】
前記硬性鏡本体と前記カメラヘッド部とが接続されているか否かを検出する硬性鏡接続検出部を備え、
前記照射光出射部が、前記硬性鏡接続検出部によって前記硬性鏡本体と前記カメラヘッド部との接続が検出されている間に前記照射光を出射するものであり、前記硬性鏡本体と前記カメラヘッド部との接続が検出されていない間は前記照射光を出射しないものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項4】
前記カメラヘッド部に入射される光を出射する光源装置と前記カメラヘッド部とが接続されているか否かを検出するカメラヘッド接続検出部を備え、
前記照射光出射部が、前記硬性鏡接続検出部によって前記硬性鏡本体と前記カメラヘッド部との接続が検出され、かつ前記カメラヘッド接続検出部によって前記カメラヘッド部と前記光源装置との接続が検出されている間に前記照射光を出射するものであり、前記硬性鏡本体と前記カメラヘッド部との接続または前記カメラヘッド部と前記光源装置との接続が検出されていない間は前記照射光を出射しないものであることを特徴とする請求項4記載の硬性鏡装置。
【請求項5】
前記硬性鏡本体側および前記カメラヘッド部側の少なくとも一方に対して、前記照射光出射部から出射された前記照射光が前記カメラヘッド部の前記撮像部に入射するのを妨げる遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項6】
前記照射光出射部が、互いに波長帯域の異なる複数の照射光を出射するものであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項7】
前記複数の照射光のうちの1つが白色光であることを特徴とする請求項7記載の硬性鏡装置。
【請求項8】
前記複数の照射光のうちの1つが近赤外光または前記被観察部からの自家蛍光を励起する自家蛍光励起光であることを特徴とする請求項7または8記載の硬性鏡装置。
【請求項9】
前記硬性鏡本体が、前記複数の照射光が混合された光を受光する受光部を備えたものであることを特徴とする請求項7から9いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項10】
前記硬性鏡本体が、前記複数の照射光をそれぞれ別々に受光する複数の特定波長用受光部を備えたものであることを特徴とする請求項7から9いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項11】
前記複数の特定波長用受光部が、前記硬性鏡本体の前記カメラヘッド部との接続面の中心位置から互いに異なる半径の位置に設けられていることを特徴とする請求項11記載の硬性鏡装置。
【請求項12】
前記複数の特定波長用受光部が、前記中心位置から同心円状に設けられていることを特徴とする請求項12記載の硬性鏡装置。
【請求項13】
前記照射光出射部に対して前記照射光を拡散する拡散部が設けられていることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項14】
前記照射光出射部の出射面の近傍の屈折率または前記硬性鏡本体の前記照射光の受光面の近傍の屈折率と略同等の屈折率を有し、前記照射光出射部から出射された照射光を透過する透過部材が、前記出射面と前記受光面との間に設けられていることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項15】
前記透過部材が、弾力性を有するものであることを特徴とする請求項15載の内視鏡装置。
【請求項16】
前記透過部材が、樹脂から形成されるものであることを特徴とする請求項15または16記載の内視鏡装置。
【請求項17】
前記透過部材が、前記カメラヘッド部または前記硬性鏡本体に対して着脱可能に設けられるものであることを特徴とする請求項15から17いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項18】
前記照射光出射部の前記照射光の出射面と前記硬性鏡本体の前記照射光の受光面との間に前記出射面の近傍の屈折率または前記受光面の近傍の屈折率と略同等な屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材が設けられていることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の硬性鏡装置。
【請求項19】
前記照射光出射部が、前記撮像部の周辺部分に設けられていることを特徴とする請求項
1から19いずれか1項記載の硬性鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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