説明

移動体通信端末試験装置

【課題】 本発明の目的は、被試験通信端末の試験において、何回かパラメータ値を変更して試験している場合に、規則に沿ったパラメータ値で試験すべきところを、過って他のパラメータ値で試験することを防止するようにすることである。
【解決手段】 試験手段4に対して、複数種類の項目に対するパラメータ値を設定し、そのパラメータ値で試験を行わせる試験制御手段5を備え、ユーザインタフェース手段10が、項目対してパラメータ値を入力設定可能に主設定画面を表示させ、入力設定された項目のパラメータ値とデフォルト値記憶手段6bが記憶している同じ項目のデフォルト値とを比較し、値が異なっていれば、主設定画面で入力設定された項目のパラメータが変更されていることを識別可能に表示させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種通信方式沿った通信機器の試験、例えば、W−CDMA、cdma2000、GSM等の任意の通信方式を採用した移動体通信端末の試験を行うための移動体通信端末試験装置に係る。本発明は、移動体通信端末と通信接続可能な擬似基地局機能を有し、例えば、セル(各基地局のサービスエリアの単位)間を移動するセル方式の移動体通信端末を想定し、そのセル間の移動に対応して、移動体通信端末の接続状態が適切にセル間を遷移しているかどうかを、所定の規則(或いは規格)に沿って所定の条件の基に、移動体通信端末と通信しながら、試験を行う。特に、本発明は、試験しているときの上記条件がデフォルト値(規則に従って試験するときの値)で試験しているのか、変更した条件で試験しているのかを明瞭に認識可能にした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
試験を実行するときの上記条件としては、一例であるが図6で示されるものがあり、これは、非特許文献の規定に沿った項目である。「Graph」は、試験中に表示を行うかどうかを示す項目、「Progress Report」は、」試験途中で経過レポートを出力するかどうかを示す項目である。そして、「Measure Time」は試験回数、「Measure Interval」は試験繰り返し間隔、「Initial Interval」は初期の立ち上げ時間を示す項目である。「Spec]は、上記のセル間の遷移が所定時間、例えば8秒以内で行われたときは成功、8秒以上で行われたときは失敗と判定するが、その規定値(例では8秒であるが、項目に応じて、各種規定値がある。)であることを示す項目である。「IorIoc」は、移動体通信端末に対するトータルパワー(Ior:ノイズパワー+移動体通信端末のチャンネルにおけるパワー)対ノイズパワーの比、「Ioc」はノイズパワー、「Downlink Power」は、基地局としての本試験装置の送信パワーを示す項目である。「Scenario」は、当該試験の手順を指定するための項目である。
【0003】
上記の試験が移動体通信端末の製品出荷試験である場合は、図6の各項目に所定の規則(規定)に合致すべき条件の値(以下、「パラメータ値」という。)を入れて、そのパラメータ値で試験していた。しかし、移動体通信端末の開発段階、或いは調整段階では、パラメータ値を変え、その周辺のパラメータ値にして実験、試験、又は調整を試み、その上で出荷するパラメータ値で試験することがしばしば起こる。
【0004】
そうしたとき、操作者は、同一の項目を複数回、異なったパラメータ値に設定することがあるが、どれが製品出荷試験用のパラメータ値かどれが変更したパラメータ値なのか不案内になり、ときとして、製品出荷に係る試験を変更したパラメータ値で試験してしまう恐れが在った。
【非特許文献1】「3GPP TS 34.121、V3.11.0、2002年12月、3GPP Organizational Partners(ARIB,CWTS,ETSI,T1,TTA,TTC)、フランス、P.316〜330
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、移動体通信端末を擬似基地局によって試験する場合に、少なくとも使用している条件(パラメータ値)が製品試験用のものか他の変更したものかを識別可能にした技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、製品試験用のパラメータ値をデフォルト値として記憶し、他の目的である項目のパラメータ値をデフォルト値と異なったパラメータ値を設定して試験しているときは、少なくとも該当する項目のパラメータ値が変更されていることを、操作者が視認できる構成とした。
【0007】
具体的には、請求項1に記載の発明は、移動体通信端末を所定手順に基づいて通信しながら試験を実行する試験手段と、該試験を実行する条件を含む複数種類の項目に対するパラメータ値を該試験手段に対して設定し、該パラメータ値で前記試験を行わせる試験制御手段と、予め前記項目と該項目に対応する前記パラメータ値としてデフォルト値を記憶するデフォルト値記憶手段と、を備えた移動体通信端末試験装置であって、
操作部と、表示部と、少なくとも前記複数種類の項目に対してパラメータ値を入力設定可能に主設定画面を前記表示部に表示させ、前記操作部によって該入力設定がされたとき、該入力設定された項目のパラメータ値と前記デフォルト値記憶手段が記憶している同じ項目の前記デフォルト値とを比較し、値が異なっていれば、前記主設定画面で該入力設定された項目のパラメータ値が変更されていることを識別可能に表示させるインタフェース制御部と、を含むユーザインタフェース手段を備え、前記試験制御手段は、前記ユーザインタフェース手段によりパラメータ値が変更されたとき、前記デフォルト値に
、該変更されたパラメータ値で試験手段を制御する構成とした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記インタフェース制御部は、前記主設定画面が表示されているときに前記複数種類の項目の内、前記操作部により一つの特定項目が選択されたとき、前記特定項目に関連する複数のサブ項目と該サブ項目のパラメータ値がある場合は、前記サブ項目に対して該パラメータ値を入力設定可能に副設定画面を前記表示部に表示するとともに、前記操作部によって前記サブ項目に対するパラメータ値が入力設定されたとき、該入力設定された前記サブ項目に対するパラメータ値が前記デフォルト値記憶手段に記憶されているデフォルト値と異なる場合は、該入力設定されたサブ項目のパラメータ値が変更されていることを前記副設定画面上で識別可能に表示させるとともに、その後、前記主設定画面が選択されて該副設定画面が閉じられたとき、該主設定画面上で前記特定項目が識別可能に表示されている構成とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、試験時において所定のパラメータ値が変更されるとデフォルト値と変更された値とが比較されて表示されるので、試験しているパラメータ値がデフォルト値と異なった値であることが認識しやすい。したがって、本来、規則に沿ったパラメータ値で試験すべきところ、過って変更したパラメータ値で試験を行うという誤試験を防止できる。、
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、パラメータ値の設定が、階層上になっていても、副設定画面で下位のパラメータ値が変更されていれば、主設定画面で該当する上位のパラメータ表示において、変更されている旨を表示するので、副設定画面を表示しなくても、パラメータ値変更を容易に認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図を基に説明する。図1は本発明の機能構成を示す図である。図2は、主設定画面の設定前のデフォルト値を示す例、図3は、主設定画面でパラメータ値の一部を変更した例、図4は、副設定画面を説明するための図である。
【0012】
図1を基に本実施形態の機能構成を説明する。
【0013】
図1において、試験手段4には、移動体通信端末と搬送波帯で通信するための送受信手段4aを有し、その送受信機の機能は、当然ながら基地局同様に移動体通信端末と所定のシナリオ(手順)で必要なメッセージを交わして通信接続を行う機能を含む。受信測定手段4bは、上記送受信機の機能とともに、その通信接続を通して移動体通信端末から送られてくる信号を分析測定して、例えば、移動体通信端末におけるセル間の接続状態の遷移の確認、品質を試験する。上記のように、送受信手段4a及び受信測定手段4bは、擬似基地局機能と測定機能(試験機能)とを併せ持っている。
【0014】
判定手段4cは、試験制御手段5で設定された通りに試験手段4が動作しているとき(つまり擬似基地局として動作しているとき)、例えば、移動体通信端末における接続状態のセル間の遷移が所定時間内に行われているかどうかを判定する。所定時間内に遷移が行われていれば良と判定し、所定時間を超えて遷移した場合、或いは遷移しなかった場合は、否と判定していた。
【0015】
試験制御手段5は、上記した通信方式における試験方法、例えば、W−CDMAの規則に沿った試験手順に沿って、試験手段4の各部を制御する。試験制御手段5は、製品として出荷するための試験を行うときは、各試験項目等におけるパラメータ値は、後記するパラメータ管理手段6のデフォルト値記憶手段6bに記憶されている値、例えば、図2の右欄の項目に対する値を使用する。しかし、操作者は、開発等でデフォルト値以外のパラメータ値を使用したいときは、後記する更新パラメータ記憶手段6aに記憶されたパラメータ値を用いて、試験手段4を制御する。
【0016】
なお、図2は、後記する主設定画面の例であるが、その左欄には非特許文献に含まれている試験項目「Cell Re−selection Idle Single Carrier」が選択されており、右欄には、その試験項目に沿って試験を実行する条件を、項目(Item)及びパラメータ値(Value)として入力設定可能にされている。ただし、デフォルト値は予め入力されている。したがって、図2の例では、上記、図6で説明した各項目が含まれている。
【0017】
パラメータ管理手段6は、製品出荷試験に合わせたパラメータ値を予めデフォルト値として記憶するデフォルト値記憶手段6bと、そのデフォルト値を変更したい場合に、ユーザインタフェース手段10によって変更された値を記憶する更新パラメータ記憶手段6aとを備える。デフォルト値記憶手段6b及び更新パラメータ記憶手段6aは、いずれも、図2の右欄に示すように、項目(Item)(その項目を特定するための識別子)とパラメータ値(Value)を対応させて記憶し、この識別子をもって該当するパラメータ値を検索できるようにしてある。
【0018】
ユーザインタフェース手段10は、操作部1、表示部2、及び操作部1と表示部2とを介して操作者と対話する制御を行うインタフェース制御部3とを備える。操作部1は、マウスや、数値キー、機能キー等で構成されている。
【0019】
インタフェース制御部3は、フォーマット記憶部3aと、入力設定部3bと、比較部3cと、履歴記憶手段3dとを備える。フォーマット記憶部3aは、各種の表示や、操作者と対話するためのマーカ等のフォーマットを記憶している。そして、フォーマット記憶部3aは、少なくとも主設定画面として、図2に示すように試験を実行するための項目欄とその項目に対してパラメータ値を記載可能な欄を備えたフォーマットを有するとともに、主設定画面の各項目のうち、詳細項目がある場合は、図4の副設定画面に示すように、その詳細項目についてパラメータ値が設定可能な副設定画面を関連づけて備えている。
【0020】
入力設定部3bは、操作者により操作部1で主設定画面表示の要求が出された場合(例えば、図2の左欄の試験内容「Cell Re−selection Idle Single Carrier」が選択された場合)、前記フォーマット記憶部3aから主設定画面のフォーマットを読み出して表示部2の右欄に該当する項目(前記試験内容応じた項目)を表示する。そのとき、最初の表示であれば、主設定画面の各項目に対応するパラメータ値は、デフォルト値記憶手段6bのデフォルト値を読み出して挿入して表示する。
【0021】
入力設定部3bは、主設定画面の表示後、操作手段1から、例えば項目のうち「Measure Time」のパラメータ値を「100」から「150」に変更する情報を受けた場合、主設定画面の該当パラメータ値を変更して表示するとともに、比較部3cへ、その変更が有った旨を通知する。
【0022】
比較部3cは、変更があった項目の「Measure Time」の識別子でデフォルト値記憶手段6bからデフォルト値「100」を検索し、その「Measure Time」のデフォルト値「100」と変更された後の値「150」とを比較し、一致していれば、何もしないが、この例のように一致していない場合は、変更を確定して、主設定画面の変更された項目「Measure Time」の色を反転することによって、他の項目と識別可能に表示する(図3を参照)。操作者が識別できれば良いので、反転以外にも、マークする、色付けするなどの他の方法でも良い。
【0023】
また、比較部3cは、変更された項目「Measure Time」の識別子と変更後の値「150」を対応させて、更新パラメータ記憶手段6aに送り、記憶させる。したがって、パラメータ管理手段6は、変更があった項目「Measure Time」については、更新パラメータ記憶手段6aに記憶された「150」を試験制御手段5が利用できるように管理する。いずれも、項目に対応した識別子と値で管理される。
【0024】
入力設定部3bは、例えば、操作者が操作部1により図2の主設定画面で項目「Spec」を選択したとき、その選択した旨の情報を受けて、その項目「Spec」に副設定画面があると判断したときは、項目「Spec」に該当する副設定画面を読み出して、詳細項目(以下、「サブ項目」と言う。)に対してパラメータ値を入力設定可能に表示する。図4にその表示例を示す。
【0025】
なお、副設定画面でパラメータ値が設定、変更された場合の比較部3cの動作は、上記、項目「Measure Time」を例にして説明した動作と同じであるが、例えば、図4の副設定画面のサブ項目「Spec3」が変更され、確定したときは、サブ項目「Spec3」の色と、主設定画面の項目「Spec」の色を反転することにより、その後に、副設定画面を閉じた場合であっても、主設定画面上で項目「Spec」がデフォルト値と異なった値に変更されていることを操作者へ視覚視認させることができる。
【0026】
比較部3cが、上記のように変更された項目を反転した場合、変更したパラメータ値、その項目(或いはその項目の識別子)及び「反転」という情報をバックアップされたメモリに記憶している。つまり、試験後或いは試験途中で、電源スイッチがオフにされた後に、電源がオンされて、試験制御手段5が再び試験後或いは試験途中の状態から試験を始めようとしたとき、電源オフ前に変更したパラメータ値、「反転」の状態を引き続き、表示するようにしている。
【0027】
履歴記憶部3dは、各項目のパラメータが変更された順(或いは年月日、或いは他の識別子で特定できるように)に変更された内容を記憶しておき、操作部1によりその項目が指定されたとき(例えば、主設定画面で所望の項目にマーカをおいてダブルクリックした場合)に、図5のようにその履歴を表示するものである。また、図5において、例えば、履歴表示の中の項番「2」をクリックすると、その項番「2」のパラメータ値で試験することができるようにすることもできる。
【0028】
このような表示を行うことにより、先に試験した条件と同じ条件で試験したい場合、或いはどのような判定結果がどのようなパラメータ値のときものか、後になってサーチする場合に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態における機能構成を示す図である。
【図2】デフォルト値をを表示する主設定画面の例を示す図である。
【図3】主設定画面でパラメータ値の一部を変更した例を示す図である。
【図4】副設定画面を説明するための図である。
【図5】履歴画面を説明するための図である。
【図6】パラメータ値の概要を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 操作部、 2 表示部、 3 インタフェース制御部、 3a フォーマット記憶部、 3b 入力設定部、 3c 比較部、 3d 履歴記憶部、
4 試験手段、 4a 送受信手段、 4b 受信測定手段、
4c 判定手段、 5 試験制御手段、 6 パラメータ管理手段、
6a 更新パラメータ記憶手段、 6b デフォルト値記憶手段、
10 ユーザインタフェース手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信端末を所定手順に基づいて通信しながら試験を実行する試験手段(4)と、該試験を実行する条件を含む複数種類の項目に対するパラメータ値を該試験手段に対して設定し、該パラメータ値で前記試験を行わせる試験制御手段(5)と、予め前記項目と該項目に対応する前記パラメータ値としてデフォルト値を記憶するデフォルト値記憶手段(6b)と、を備えた移動体通信端末試験装置であって、
操作部(1)と、表示部(2)と、少なくとも前記複数種類の項目に対してパラメータ値を入力設定可能に主設定画面を前記表示部に表示させ、前記操作部によって該入力設定がされたとき、該入力設定された項目のパラメータ値と前記デフォルト値記憶手段が記憶している同じ項目の前記デフォルト値とを比較し、値が異なっていれば、前記主設定画面で該入力設定された項目のパラメータ値が変更されていることを識別可能に表示させるインタフェース制御部(3)と、を含むユーザインタフェース手段(10)を備え、
前記試験制御手段は、前記ユーザインタフェース手段によりパラメータ値が変更されたとき、前記デフォルト値に変えて、該変更されたパラメータ値で試験手段を制御することを特徴とする移動体通信端末試験装置。
【請求項2】
前記インタフェース制御部は、前記主設定画面が表示されているときに前記複数種類の項目の内、前記操作部により一つの特定項目が選択されたとき、前記特定項目に関連する複数のサブ項目と該サブ項目のパラメータ値がある場合は、前記サブ項目に対して該パラメータ値を入力設定可能に副設定画面を前記表示部に表示するとともに、前記操作部によって前記サブ項目に対するパラメータ値が入力設定されたとき、該入力設定された前記サブ項目に対するパラメータ値が前記デフォルト値記憶手段に記憶されているデフォルト値と異なる場合は、該入力設定されたサブ項目のパラメータ値が変更されていることを前記副設定画面上で識別可能に表示させるとともに、その後、前記主設定画面が選択されて該副設定画面が閉じられたとき、該主設定画面上で前記特定項目が識別可能に表示されていることを特徴とする請求項1に記載の移動体通信端末試験装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−33107(P2006−33107A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205433(P2004−205433)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】