説明

移植機

【課題】 推進機構によって走行可能に支持された走行機体の後方側に、苗が育苗された苗トレイを支持し且つ該苗トレイから苗を取り出して圃場に植え付ける移植装置を備え、移植装置の後方側に操向ハンドルを備え、走行機体の側方がわに、予備の苗トレイを載せておくための予備苗載せ台を備えた歩行型移植機において、走行機体の後方側から苗トレイを取りやすくすると共に移植機の旋回時の操向ハンドルの押下げ荷重を軽減することができる歩行型移植機を提供する。
【解決手段】
前記予備苗載せ台を走行体の側方がわの位置から後方に移動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の苗を圃場に植え付ける歩行型の移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畝間の溝を転動する左右一対の前後輪を有する推進機構によって走行可能に支持された走行機体の後方側に、苗が育苗された苗トレイを支持し且つ該苗トレイから苗を取り出して圃場に植え付ける移植装置を備えると共に、該移植装置の後方側に操向ハンドルを備え、畝の長手方向に走行しながら該畝に苗を植え付ける歩行型の移植機が特許文献1にて開示されている。
この移植機にあっては、走行機体の左右両側に、育苗された苗を備えた予備の苗トレイを載せておくための予備苗載せ台が設けられており、移植装置にセットされた苗トレイの苗がなくなると、該苗がなくなった空の苗トレイを、予備苗載せ台上の、苗を備えた苗トレイと交換することにより、移植作業を継続して行うことができるようになっている。
【特許文献1】特開平9−289808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の移植機にあっては、予備苗載せ台は走行機体の側方がわに位置しており、また、植付け作業時においては、作業者は畝間溝の後輪の後方側を歩くことから、畝の長手方向の中途部で苗載せ台にセットされた苗トレイの苗がなくなった場合において、予備苗載せ台上の予備の苗トレイを取る際に、後輪等が障害となって予備苗載せ台上の苗トレイが取りにくいという問題がある。
また、畝の端部まで植付け作業を終えたときには、移植機を圃場の枕地でUターンさせて苗の植え付けが終わった畝の隣の畝に苗の植え付けを行うが、この移植機をUターンさせるときにあっては、左右の前後輪を走行機体に対して4輪同時に下降させることで走行機体を上昇させると共に、操向ハンドルを押し下げて後輪の接地部分を中心に前輪を持ち上げて移植機を旋回させるが、予備苗載せ台が走行機体の側方がわにあると、移植機の前輪を持ち上げる際に操向ハンドルを押し下げるのに大きな労力が必要となる。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題を解決することができる移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、推進機構によって走行可能に支持された走行機体の後方側に、苗が育苗された苗トレイを支持すると共に該苗トレイから苗取り出して圃場に植え付ける移植装置を備え、該移植装置の後方側に操向ハンドルを備え、前記走行機体の側方がわに、予備の苗トレイを載せておくための予備苗載せ台を備えた歩行型移植機において、
前記予備苗載せ台を走行機体の側方がわの位置から後方に移動可能としたことを特徴とする。
【0006】
また、移植装置は、操向ハンドルの前方側に位置していて苗トレイを載置して支持する苗載せ台と、この苗載せ台の前方側に位置していて該苗載せ台上の苗トレイから苗を取り出す苗取出し装置と、この苗取出し装置の下方側に位置していて該苗取出し装置から供給された苗を畝に植え付ける植付体とを備え、前記苗取出し装置及び植付体は走行機体の後方側に位置し、予備苗載せ台は走行機体の左右両側に設けられていて走行機体の側方がわの位置から苗取出し装置及び植付体の側方がわへと移動可能とされていてもよい。
また、走行機体側に設けられた支持体にサポートフレームを前後方向移動自在に支持し、このサポートフレームに予備苗載せ台を取り付けることにより、予備苗載せ台を走行機体の側方がわの位置から後方に移動可能としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予備苗載せ台を走行機体の側方がわの位置から後方に移動可能としたので、植付け作業を行うときには、予備苗載せ台をその移動領域の後端側に位置させておくことにより、苗トレイの交換時(苗トレイの補給時)に、走行機体の後方側から予備苗載せ台上の苗トレイが取りやすくなり、また、予備苗載せ台が走行機体の側方がわの位置にある場合に比べて、重心が後ろ側にあるので、移植機を枕地でUターンさせる際に、操向ハンドルを押し下げるのに要する労力(押し下げ荷重)を軽減することができる。
また、予備苗載せ台を走行機体の側方がわの位置より後方寄りの位置に固定状に設けると、走行機体の後方側には移植装置があるので、該移植装置のメンテナンスをする際に支障をきたす。また、移植機を圃場から又は圃場へと移動させる際の路上走行時には走行機体を上昇させて走行させるが、移植機の後部側には重量のある移植装置があるので、予備苗載せ台があまり後側にあると、路上走行時の前後バランスがよくないなどの問題がある。
【0008】
これに対し、本発明の移植機では、予備苗載せ台が前後方向に移動可能であるので、移植装置のメンテナンス時や路上走行時にあっては、予備苗載せ台を走行機体の側方がわに位置させておくことにより、移植装置のメンテナンスがしやすく、また、路上走行時の安定性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2,3において、1は、畝Rの長手方向に移動しながら該畝Rに野菜等のソイルブロック苗2を所定間隔をおいて植え付ける歩行型の移植機である。
該移植機1は、畝Rを跨いで該畝Rの長手方向に走行する走行体3と、この走行体3の後方側に設けられた移植装置4と、この移植装置4を支持する支持フレーム5と、走行体3を操向する操向ハンドル7と、育苗された苗2を備えた予備の苗トレイTを載せておくための予備苗載せ台8とを備えている。
【0010】
苗トレイTは、プラスチック製で薄肉に形成されていて可撓性を有し、縦横に所定ピッチで碁盤目状に配列された多数のポット部Pを備えており、各ポット部Pの開口縁部は平板状の薄肉壁部で相互に接続されている。
この苗トレイTには、各ポット部Pに供給された床土に播種して育苗されたソイルブロック苗2が育成されている。
走行体3は、図5,6に示すように、走行機体9と、この走行機体9を走行可能に支持する推進機構10と、走行機体9に搭載されたエンジン11等を有する。
【0011】
走行機体9は、ミッションケース12と、このミッションケース12の前部に該ミッションケース12から前方突出状に取付固定された架台13とを備えてなる。
エンジン11は架台13上の前部に搭載されている。
推進機構10は、畝間溝Mを回転して動く無限回転体として左右一対の前輪14(車輪、前部無限回転体)と左右一対のクローラベルト15(後部無限回転体)とを有する車輪・クローラ複合型の無限回転推進機構が採用されている。
この推進機構10は、前輪14と、この前輪14を支持する前輪支持アーム17と、前輪14の後方側に配置されたクローラ式走行装置18と、このクローラ式走行装置18を支持する伝動ケース19とを走行機体9の左右両側に備えており、左右の各伝動ケース19内には、エンジン11からの動力をクローラ式走行装置18に伝達するチェーン伝動機構等からなる動力伝達機構が収納されている。
【0012】
左右の各前輪支持アーム17は、後方に行くに従って下方に移行する傾斜状に配置され、各前輪支持アーム17の前端側には左右方向の軸芯を有する六角筒状の取付具20が設けられ、各前輪支持アーム17の後端側には前輪14が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
前記架台13の前端側には、左右方向の軸芯を有する筒状の軸サポート22が設けられ、この軸サポート22には、左右方向の軸芯を有する左右一対の前輪支軸23の左右方向内端側が挿入されていて、該軸サポート22に左右の前輪支軸23が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0013】
左右の各前輪支軸23の左右方向外端側は左右方向の軸芯を有する六角筒体によって構成されたアーム取付部24とされ、このアーム取付部24に、左右方向で同じ側にある前輪支持アーム17の取付具20を一体回動自在に外嵌することにより、前輪支持アーム17が軸サポート22に前輪支軸23の軸芯回りに上下揺動自在に支持されている。
左右の各伝動ケース19は、ミッションケース12の側面から後方に向けて延出状に配置され、各伝動ケース19の前端側は、ミッションケース12の側面にケース支持体25を介して左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されていて、該伝動ケース19が上下に揺動可能とされている。
【0014】
左右の各伝動ケース19の後端側の左右両側には筒状の軸ホルダ26が固定され、この軸ホルダ26にクローラ式走行装置18を駆動する駆動軸27が左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されており、この駆動軸27は左右方向内側の軸ホルダ26から左右方向内方に向けて突出状とされている。
また、伝動ケース19の後端側には軸取付ブラケット28が固定され、この軸取付ブラケット28に左右方向の軸芯を有する揺動支軸29が左右方向内方に向けて突出状に固定されている。
【0015】
クローラ式走行装置18は、上部の駆動輪30と、駆動輪30の前方で且つ下方側に配置された前アイドラ31と、駆動輪30の後方側で且つ下方側に配置された後アイドラ32と、前後のアイドラ31,32の間に配置された複数の転輪33と、これら駆動輪30,前後アイドラ32,転輪33にわたって巻き掛けられた無端帯状のクローラベルト15とを有する。
前記駆動輪30は、伝動ケース19の後端側に設けられた前記駆動軸27に一体回動自在に取付固定されており、前後アイドラ31,32及び転輪33は揺動フレーム34の下部側に左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されており、この揺動フレーム34の上部側は、駆動軸27の下方側において前記揺動支軸29に軸芯回り回動自在に支持されている。
【0016】
ミッションケース12には左右方向外方に向けて突出する左右一対の出力軸35が設けられ、この出力軸35にはエンジン11からの動力が伝達され、この出力軸35から伝動ケース19内の動力伝達機構を介して前記駆動軸27に動力が伝達され、該駆動軸27が回転駆動されることにより駆動輪30が回転駆動され、該駆動輪30と係合するクローラベルト15が周方向に循環回走(回転)されるよう構成されている。
また、揺動フレーム34には上方側に向けて開放状のコ字形に形成された牽制具36が設けられ、この牽制具36内に、内側の軸ホルダ26が挿入状として位置している。
【0017】
この牽制具36の前後の壁部に軸ホルダ26が接当することにより、揺動フレーム34の揺動支軸29回りの揺動が規制されるよう構成されている。
左右の各前輪支軸23には上方側に向けて突出する前ブラケット37が設けられ、左右の各ケース支持体25には上方側に向けて突出する後ブラケット38が設けられており、左右方向で同じ側にある前後のブラケット37,38は連動ロッド39によって連動連結されている。
また、走行機体9の架台13の左右両側に形成された前後方向のガイド溝70に左右方向の軸芯を有する軸サポート40が前後方向移動可能に支持され、この軸サポート40にはローリング軸41が左右両側から突出するように挿通されていると共に、該ローリング軸41は軸サポート40に左右方向の軸芯回りに回動自在に支持されている。
【0018】
ローリング軸41の左右一方には上方側に向けて突出する上レバー42が設けられ、ローリング軸41の左右他方には下方側に向けて突出する下レバー43が設けられており、上下のレバー42,43と、これら上下のレバー42,43と左右方向で同じ側にある後ブラケット38とは連結リンク44で連動連結されている。
また、架台13には、昇降シリンダ45とローリングシリンダ46とが設けられ、これら昇降シリンダ45とローリングシリンダ46とは油圧シリンダによって構成されている。
【0019】
昇降シリンダ45のチューブ45aは架台13に固定され、ピストンロッド45bは後方側に向けて突出されていて軸サポート40に連結されている。
また、ローリングシリンダ46のチューブ46aは架台13に前部側の枢支部47を中心として左右軸回りに回動自在に支持され、ピストンロッド46bは後方側に向けて突出されていて、ローリング軸41の左側に下方側に突出するように設けられたアーム48に枢着されている。
前記昇降シリンダ45のピストンロッド45bを進退させると軸サポート40及びローリング軸41が前後に移動し、左右の連結リンク44によって左右の後ブラケット38が押し引きされて左右の伝動ケース19が伴に上下に揺動すると共に、左右の連動ロッド39によって左右の前ブラケット37が押し引きされて左右の前輪支持アーム17が伴に上下に揺動する。
【0020】
これによって、左右の前輪14と左右のクローラ式走行装置18とが、同時に、走行機体9に対して相対的に上下動し且つ前輪14及びクローラベルト15が接地していることから、必然的に走行機体9が接地面に対して昇降するよう構成されている。
また、ローリングシリンダ46のピストンロッド46bを進退させるとローリング軸41が回動して、一方の連結リンク44が一方の後ブラケット38を押動すると共に他方の連結リンク44が他方の後ブラケット38を引動する。
これによって、左右一方の前輪14及びクローラ式走行装置18が走行機体9に対して相対的に上昇すると共に、左右他方の前輪14及びクローラ式走行装置18が走行機体9に対して相対的に下降し、走行機体9の左右方向に対する傾きを修正することができるよう構成されている。
【0021】
図2及び図5は、移植機1が苗2を畝Rに植え付ける植付姿勢とされている状態であり、圃場から又は圃場へと移動する際には、走行機体9を最上げ位置に上昇させる。
このとき、図7に示すように、伝動ケース19の後端側の軸ホルダ26が牽制具36の後側の壁部に接当することにより、クローラ式走行装置18の揺動フレーム34の揺動が規制され、これにより、クローラ式走行装置18の前部側が接地面から浮き上がった状態とされる。
移植機1を枕地等で旋回させる際には、この最上げ状態で、操向ハンドル7を押し下げて、移植機1の前部をクローラ式走行装置18の接地部分を中心として上昇させ、前輪14を接地面から浮かせて旋回させる。
【0022】
支持フレーム5は左右一対のメインフレーム49を有し、左右のメインフレーム49は前部側で連結プレート50によって連結されていると共にミッションケース12の後部上部側に取付固定されている。
メインフレーム49はミッションケース12から後方側に向けて延出されると共に後端側で上方側に向けて延出されている。
操向ハンドル7は、平面視で前方に向けて開放状の略コ字形に形成されており、左右両側部の前端側が左右のメインフレーム49に連結されている。
【0023】
移植装置4は、苗トレイTを載置して支持する苗載せ台51と、この苗載せ台51上の苗トレイTから苗2を取り出す苗取出し装置52と、この苗取出し装置52から供給された苗2を畝Rに植え付ける植付体53と、畝Rに植え付けられた苗2の左右両側を鎮圧する鎮圧輪54(覆土輪)とを備えている。
苗載せ台51は、操向ハンドル7の前方側に位置しており、前方に行くに従って下方に移行する傾斜状に設けられていて苗トレイTの底部が載置されて該苗トレイTを支持する載置板55を有し、支持フレーム5の後部側に設けられた前後一対のスライドレール56に左右方向移動可能に支持されている。
【0024】
また、苗載せ台51は横送り機構によって、苗トレイTのポット部Pの横方向の1ピッチ分、間欠的に左右方向に往復横送り可能とされ、また、苗載せ台51には、その左右方向の移動域の左右両側の端部において、苗トレイTをポット部Pの縦方向の1ピッチ分、下方側に縦送りする縦送り機構が備えられている。
苗取出し装置52は、ポット部Pから苗2を取り出す苗取出爪57を備えると共にエンジン11からの動力によって駆動されて苗取出爪57を動作させる運動機構を備え、ポット部P内の床土に対して前側から苗取出爪57を進行させて該床土を突き刺すと共に突き刺した後に苗取出爪57を後退させることによりポット部Pから苗2を取り出し可能としている。
【0025】
また、ポット部Pから取り出された苗2は、苗受取り位置に位置する植付体53の上方に移送されて植付体53へと放出可能とされている。
植付体53は、上側から苗2が供給できるように上端が開放状とされ、内部に苗2を保持でき且つ該苗2を下方に放出できるように下部が開閉自在とされており、走行機体9に取り付けられた昇降機構によって昇降自在に支持され、上下移動範囲の上死点又はその付近の苗受取り位置において苗取出し装置52から苗2が供給され、上下移動範囲の下死点側で畝Rに突入し且つ開くことにより、畝Rに植え穴を形成する共に該植え穴に苗2を放出し、これにより苗2が畝Rに植え付けられる。
【0026】
鎮圧輪54は、左右一対設けられていて、畝R上面の苗2の植付け位置の左右両側を転動し、植え穴に投入された苗2の左右両側の土を押圧する。
図1、図3及び図4に示すように、予備苗載せ台8は、走行機体9の左右両側で且つ走行機体9より上方側に上下2段配置されている(1段又は3段以上であってもよい)。
各予備苗載せ台8は、走行機体9の左右両側に配置されたサポートフレーム58に取り付けられ、各サポートフレーム58は、走行機体9の左右両側に設けられた支持機構59によって前後方向移動可能に支持されており、予備苗載せ台8は、実線で示す、走行機体9の側方がわ(で且つ前輪の上方)の位置から後方に移動可能とされている。
【0027】
本実施形態では、仮想線で示す、苗取出し装置52及び植付体53の側方がわへと移動可能とされている(図例では、予備苗載せ台8を後方に移動させた状態では、予備苗載せ台8の後部が苗取出し装置52及び植付体53の側方がわに位置しているが、予備苗載せ台8の前後方向中央部が苗取出し装置52及び植付体53の側方がわに位置するようにしてもよい)。
なお、側方がわとは、部材及び機構の真横及び該真横の上下を含む範囲をいう。
サポートフレーム58は、パイプ又は丸棒材等の長尺部材によって構成され、上下方向に延びる台取付部60と、この台取付部60の下端側から後方に延びる基部61とから構成されており、前記台取付部60に予備苗載せ台8の前後方向の略中央部が取り付けられている。
【0028】
左右の各支持機構59は、図4に示すように、ミッションケース12に取り付けられた取付台62と、この取付台62に固定されたガイド部材63(支持体)と、このガイド部材63に前後方向移動可能に支持された可動部材64とから主構成されている。
ガイド部材63は前後方向の軸芯を有する前後開口状の短尺な角筒から構成されており、該ガイド部材63には、左右の側壁を左右方向に貫通するピン挿通孔65が前後方向に関して一カ所設けられている。
可動部材64は、前後方向の軸芯を有する長尺な角筒から構成されていて、ガイド部材63に前後方向移動自在に挿通されている。
【0029】
また、可動部材64には、左右の側壁を左右方向に貫通するピン挿通孔66が前後方向に関して複数箇所(本実施形態では3カ所)設けられている。
可動部材64の後端側には、連結プレート67を介してサポートフレーム58の基部61が固定されており、ガイド部材63に対して可動部材64を前後移動させることで予備苗載せ台8が前後方向に移動できるよう構成されている。
また、サポートフレーム58の後端と可動部材64の後端とにわたってコ字形の把持部材68が設けられており、この把持部材68を把持することで予備苗載せ台8の移動操作が行える。
【0030】
前記可動部材64に設けたピン挿通孔66のいずれかをガイド部材63に設けたピン挿通孔65に一致させ、該一致させたピン挿通孔65,66にわたってピン69を挿通すると共に該ピン69を抜止めすることにより、可動部材64の前後方向の移動が規制されるよう構成されている(したがって、本実施形態では、予備苗載せ台8を前後方向3位置で位置決めできるよう構成されている。前後方向2位置又は前後方向4位置以上で位置決めされるようにしてもよい)。
なお、ピン69の抜き差しはクローラ式走行装置18の後方側からでも行える。
【0031】
また、可動部材64の後端側のピン挿通孔66をガイド部材63のピン挿通孔65に位置合わせした状態で前記連結プレート67がガイド部材63の後端に接当するようになっており、連結プレート67によって予備苗載せ台8の前方への位置規制が行える。
また、可動部材64はガイド部材63に対して後方側に抜脱することができる。
植付け作業を行うときには、可動部材64の前端側のピン挿通孔66をガイド部材63のピン挿通孔65に位置合わせし、該位置で予備苗載せ台8を位置決めする。
これによって、畝Rの中途部で苗載せ台51上の苗トレイTが空になった場合でも、クローラ式走行装置18(又は後輪)の後方側から予備苗載せ台8上の苗トレイTが取りやすくなる。
【0032】
また、植付け作業時においては、例えば、畝Rの左側の畝間溝Mを歩くので、従来にあっては、特に、右側の予備苗載せ台8上の苗トレイTが取りにくく、右側の予備苗載せ台8上の苗トレイTを取る場合には、畝Rを跨いで右側の畝間溝Mに移動する必要があるが、本実施形態の移植機1にあっては、作業者が歩く畝間溝Mとは反対側の予備苗載せ台8上の苗トレイTも取りやすくなる。
また、移植機1を枕地で旋回させるときにあっては、該移植機1を最上げ位置に上昇させると共に、操向ハンドル7を押し下げて前輪14を浮かせるが、このとき、予備苗載せ台8が走行機体9の側方がわに位置している場合に比べて、重心が後ろ側に位置し、操向ハンドル7を押し下げるのに要する労力が少なくてすむ。
【0033】
また、予備苗載せ台8が、植付体53等の側方がわに位置していると、移植装置4のメンテナンスを行うときに予備苗載せ台8が邪魔者となるが、このときには、予備苗載せ台8を走行機体9の側方がわの位置に移動させることにより、移植装置4のメンテナンスがしやすくなる。
また、移植機1を圃場から移動させる際又は圃場へと移動させる際(路上走行の際)には、移植機1を最上げ位置に上昇させて走行するが、このときにおいて、後部側に重量のある移植装置4があるので、予備苗載せ台8がその移動域の後端側にあると、路上走行時の前後バランスがよくないが、路上走行の際には、予備苗載せ台8をその移動域の前端側に位置させることにより、走行安定性を確保することができる。
【0034】
図8は他の実施形態を示し、クローラ式走行装置18の代わりに後輪16を採用した車輪型の無限回転推進機構10を採用したものであり、その他の構成は前記実施形態と同様に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】予備苗載せ台の側面図である。
【図2】移植機の側面図である。
【図3】移植機の平面図である。
【図4】(a)は予備苗載せ台を支持するサポートフレームの支持部分の一部断面側面、(b)は支持部分の背面断面図である。
【図5】走行体の植付け姿勢の側面図である。
【図6】走行機体の平面図である。
【図7】操向機体を最上げしたときの移植機の側面図である。
【図8】他の実施形態に係る移植機の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
2 苗
4 移植装置
7 操向ハンドル
8 予備苗載せ台
9 走行機体
10 推進機構
51 苗載せ台
52 苗取出し装置
53 植付体
58 サポートフレーム
63 支持体
R 畝
T 苗トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進機構(10)によって走行可能に支持された走行機体(9)の後方側に、苗(2)が育苗された苗トレイ(T)を支持すると共に該苗トレイ(T)から苗(2)取り出して圃場に植え付ける移植装置(4)を備え、該移植装置(4)の後方側に操向ハンドル(7)を備え、前記走行機体(9)の側方がわに、予備の苗トレイ(T)を載せておくための予備苗載せ台(8)を備えた歩行型移植機において、
前記予備苗載せ台(8)を走行機体(9)の側方がわの位置から後方に移動可能としたことを特徴とする歩行型移植機。
【請求項2】
移植装置(4)は、操向ハンドル(7)の前方側に位置していて苗トレイ(T)を載置して支持する苗載せ台(51)と、この苗載せ台(51)の前方側に位置していて該苗載せ台(51)上の苗トレイ(T)から苗(2)を取り出す苗取出し装置(52)と、この苗取出し装置(52)の下方側に位置していて該苗取出し装置(52)から供給された苗(2)を畝(R)に植え付ける植付体(53)とを備え、前記苗取出し装置(52)及び植付体(53)は走行機体(9)の後方側に位置し、予備苗載せ台(8)は走行機体(9)の左右両側に設けられていて走行機体(9)の側方がわの位置から苗取出し装置(52)及び植付体(53)の側方がわへと移動可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の歩行型移植機。
【請求項3】
走行機体(9)側に設けられた支持体(63)にサポートフレーム(58)を前後方向移動自在に支持し、このサポートフレーム(58)に予備苗載せ台(8)を取り付けることにより、予備苗載せ台(8)を走行機体(9)の側方がわの位置から後方に移動可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行型移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−254309(P2009−254309A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109023(P2008−109023)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】