説明

移植機

【課題】植付作業機の上昇操作を行う上昇操作具を変速レバーの把持部に設けて操作性を向上させた移植機において、オペレータの意図しない植付作業機の上昇を防止することを課題とする。
【解決手段】本発明は、走行機体3の後部に昇降可能に連結された植付作業機7と、植付作業機7の昇降制御を行う制御部23と、走行変速操作を行う変速レバー18の把持部18aに設けられて植付作業機7の上昇操作を行う上昇操作具24とを備えた移植機において、走行速度を検出する速度検出手段41を設け、制御部23が、上昇操作具24の植付作業機7上昇操作による植付作業機7の上昇作動を規制する規制モードを有し、速度検出手段41によって走行速度が所定速度以上になったことが検出されると、上記規制モードから、上昇操作具24の植付作業機7上昇操作による植付作業機7の上昇作動を許容する許容モードに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植付作業機の上昇操作を行う上昇操作具を変速レバーの把持部に設けた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の後部に昇降可能に連結された植付作業機と、植付作業機の昇降制御を行う制御部と、走行変速操作を行う変速レバーの把持部に設けられて植付作業機の上昇操作を行う上昇操作具とを備え、走行変速操作中における植付作業機の上昇操作を迅速且つ簡易的に行うことが可能な特許文献1に示す移植機が公知になっている。
【特許文献1】特開2007−37462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献の移植機は、変速レバーの把持部に上昇操作具を設けることによって上述のように操作性を向上させている一方で、変速レバーの把持部を把持して走行変速操作を行っている最中に誤って上昇操作具に触れることにより、オペレータの意図しない植付作業機の上昇作動が行われる場合があり、作業効率が低下するという課題がある。
【0004】
作業効率が低下する具体例としては、減速旋回後、変速レバーのグリップを把持して増速操作をしている最中に誤って上昇操作具に触れてしまい、植付作業機が上昇作動してしまう場合等が挙げられる。この場合には、増速中又は増速後に、植付作業機を下降させて圃場での植付作業を行う必要があるにも関わらず、植付作業機が上昇してしまうため、再び植付作業機を下降させる操作が必要になり、作業効率が低下する。
本発明は、上記課題を解決し、植付作業機の上昇操作を行う上昇操作具を変速レバーの把持部に設けて操作性を向上させた移植機において、オペレータの意図しない植付作業機の上昇を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の移植機は、第1に、走行機体3の後部に昇降可能に連結された植付作業機7と、植付作業機7の昇降制御を行う制御部23と、走行変速操作を行う変速レバー18の把持部18aに設けられて植付作業機7の上昇操作を行う上昇操作具24とを備えた移植機において、走行速度を検出する速度検出手段41を設け、制御部23が、上昇操作具24の植付作業機7上昇操作による植付作業機7の上昇作動を規制する規制モードを有し、速度検出手段41によって走行速度が所定速度以上になったことが検出されると、上記規制モードから、上昇操作具24の植付作業機7上昇操作による植付作業機7の上昇作動を許容する許容モードに移行することを特徴としている。
【0006】
第2に、一旦許容モードに移行すると、その後に走行速度が上記所定速度以下になっても許容モードを維持するように制御部23を構成したことを特徴としている。
【0007】
第3に、許容モード時、植付作業機7が所定高さ以上に上昇したことが検出されると、許容モードから規制モードに移行するように制御部23を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の移植機によれば、走行速度の所定速度以上が検出されることにより、上昇操作具の植付作業機上昇操作による植付作業機の上昇作動を規制する規制モードから、上昇操作具の植付作業機上昇操作による植付作業機の上昇作動を許容する許容モードに移行するので、移植機を減速させて移植機を旋回させた後、再び増速している最中に、誤って上昇操作具を操作しても、走行速度が所定速度に達していなければ植付作業機が上昇作動しないため、変速レバーの把持部に上昇操作具を設けることによる操作性を維持しつつ、オペレータの意図しない植付作業機の上昇を防止できるという効果がある。
【0009】
また、一旦許容モードに移行すると、その後に走行速度が上記所定速度以下になっても許容モードを維持するように制御部を構成することにより、不要な規制モードへの移行を防止できるという効果がある。
【0010】
さらに、許容モード時、植付作業機が所定高さ以上に上昇したことが検出されると、許容モードから規制モードに移行するように制御部を構成することにより、オペレータの意図しない植付作業機の上昇をさらに効率的に防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1,2は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図及び全体平面図である。本乗用田植機における左右一対の前後1及び後輪2を備えた走行機体3は、前後方向中途部に操縦部4が設けられ、後端部に昇降リンク6を介して植付作業機7が昇降自在に連結されており、この植付作業機7は、油圧アクチュエータである油圧シリンダ8の伸縮作動によって昇降作動される。
【0012】
また、植付作業機7の左右の各側方には、圃場面の次行程に走行基準線を引くための車輪形状のマーカ(図示しない)が配置されており、この左右一対のマーカは、植付作業機側に上下回動可能に支持されることにより、植付作業機の外側方に振出されて走行基準線を圃場面に引く振出し姿勢と、植付作業機7の側部に沿って収納される収納姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。
【0013】
具体的には、切替部材(図示しない)を電動モータであるマーカモータ(マーカ振出し手段)9(図8参照)によってロック姿勢を切換えることにより、左右の各マーカが収容姿勢でロックされる状態になり、切換部材をマーカモータ9によって左マーカ振出し姿勢に切換えることにより、左マーカが植付作業機7の下降に伴って振出し姿勢に切換えられ且つ植付作業機7の上昇に伴って収納姿勢に切換えられる一方で右マーカが収容姿勢でロックされる状態になり、切換部材をマーカモータ9によって右マーカ振出し姿勢に切換えることにより、右マーカが植付作業機7の下降に伴って振出し姿勢に切換えられ且つ植付作業機7の上昇に伴って収納姿勢に切換えられる一方で左マーカが収容姿勢でロックされる状態になる。
【0014】
そして、本乗用田植機では、現行程の走行基準線に沿って本乗用田植機を前進走行(走行)させることにより、圃場の正しい位置に苗を植付けていくと同時に、本乗用田植機の左右の側方における苗が植付けられていない側のマーカを振出し姿勢に切換え且つ反対側のマーカを収納姿勢に切換えることにより、現行程の走行基準線と平行に、次行程の走行基準線を圃場面に引いていく。
【0015】
通常、乗用田植機は、植付作業機7を下降させて圃場での植付作業を行いながら、圃場の始端部から終端部まで走行し、終端部近くに達すると減速して植付作業機7を上昇させ、その後、小回り旋回して現行程から次行程に移行し、続いて、増速させるとともに植付作業機7を下降させて次行程での植付作業を始端から再び開始する。このため、小回り旋回毎に、振出されるマーカが左右で切換えられる。
【0016】
上記植付作業機7は、背面(後面)側に形成された苗を載置する苗載せ台11と、苗載せ台11下方に配置されて苗載せ台11上の苗を掻き取って圃場に植え付ける植付部12と、圃場を均す左右並列配置された複数の前後方向のフロート13とを備えており、入切によって動力を断続する植付クラッチを介して、走行機体3のエンジン動力がこの植付作業機7に伝動される。くわえて、上記複数のフロート13の内の1つは、植付作業機7の昇降高さを制御するための感知フロート13になっている。
【0017】
上記操縦部4は、オペレータが着座する座席14と、座席14の前方に設けられた前面操作パネル16とを備えており、該前面操作パネル16には操向操作を行うステアリングハンドル17が設置されている。
【0018】
図3は、前面操作パネルの要部平面図である。前面操作パネル16は、左部の左パネル16aと、左右方向中央部の中央パネル16bと、右部の右パネル16cとからなり、左パネル16aにはHSTレバー(変速レバー)18が支持され、中央パネル面16bには自動スイッチ(自動切替操作具)19及び準備スイッチ(準備操作具)21が設置されるとともに操作レバー(第1操作具)22及び上記ステアリングハンドル17が支持され、右パネル面16cには各種スイッチ等が設けられている。
【0019】
自動スイッチ19は、次行程に走行基準線を引くための前述した左右のマーカの振出し作動を、マイコン等からなる後述の制御部23(図8参照)によって自動的に行う振出し自動制御のON・OFFの切替を行う押しボタンであり、1回押し操作する毎に、振出し自動制御を行うON状態と、振出し自動制御を行わないOFF状態との切替を行う。
【0020】
準備スイッチ21は、上記自動スイッチ19の左側に配置された押しボタンであり、1回押し操作する毎に、操作レバー22の操作及び後述する押しボタン式の上昇スイッチ(上昇操作具,第2操作具)24の操作による所定の作動を規制する規制モードと、規制しない非規制モードとの切替操作を行う。具体的には、準備スイッチ21が入(ON)状態時に規制モードが実行され、準備スイッチ21が切(OFF)状態時に非規制モードが実行され、準備スイッチ21を1回押し操作する毎に、入状態と切状態が切換えられる。ちなみに、規制される所定の作動については後述する。
【0021】
図4(A)乃至(E)は、HSTレバーの平面図、左側面図、背面図、右側面図及び正面図である。HSTレバー18は、上半部が上方に向かって前方に湾曲形成されるとともに上端部に左右方向に延びる筒状のグリップ(把持部)18aが成形されており、前後及び左右揺動操作可能に前面操作パネル16側に支持されている。
【0022】
一方、図4に示すように、左パネル16aにはHSTレバー18を揺動案内するガイド溝25が穿設されている。ガイド溝25は、前後方向の延びて軸心が左右にずらされた前後の前進部25a及び後進部25bと、前進部25aの後端側と後進部25bの前端側を最短で連接する左右方向の切換部25cとから構成されている。
【0023】
オペレータは、前進部25a内でHSTレバー18を前方揺動させることにより、油圧式無段階変速機であるHSTからなる走行変速装置を介して、本乗用田植機の前進増速側への無段階の走行変速操作を行う一方で、後進部25b内でHSTレバー18を後方揺動させることにより、上記走行変速装置を介して、本乗用田植機の後進増速側への無段階の走行変速操作を行う他、切換部25c内でHSTレバー18を左右揺動させて前進部25a内から後進部25b内又は後進部25b内から前進部25a内にHSTレバー18を変位させることにより本乗用田植機の前後進切換操作を行う。ちなみに、HSTレバー18が切換部25c内に位置している際には、上記走行変速装置は、ニュートラル状態(中立状態)になる。
【0024】
さらに、図5に示すように、HSTレバー18のグリップ18a右側部には、前述した上昇スイッチ24が押し操作可能に設けられている。後述する所定条件下で、この上昇スイッチ24を1回押し操作することにより、植付作業機7が上昇作動される。ちなみに、オペレータは、左手でグリップ18aを把持して拇指により上昇スイッチ24の押し操作を行うが、植付作業機7を上昇させるにあたり、上昇スイッチ24を押し状態で保持する必要はない。
【0025】
図5は、ステアリングハンドル及び操作レバーの斜視図である。操作レバー22は、ステアリングハンドル17の基端側から右側方に突出した状態で設けられ、上下揺動及び前後揺動可能に支持されており、オペレータが操作レバー22から手を離すと自然に基端部から先端部に向かって右斜め上方に延びる基本姿勢に復元するように構成されている。
【0026】
植付作業機7が圃場に接地して植付クラッチが入っている状態から操作レバー22を1回上方揺動操作すると植付作業機7が上昇駆動し、さらにもう1回上方揺動操作すると植付クラッチが切操作されて植付部12の駆動が停止される。植付作業機7が上昇位置に固定されている状態から機操作レバー22を1回下方揺動操作すると植付作業機7が下降駆動し、さらにもう1回下方揺動操作すると植付クラッチが入操作されて植付部12が駆動される。なお、植付作業機7の上昇駆動時に操作レバー22を下方揺動操作することにより植付作業機7の上昇を停止させ、植付作業機7の下降駆動時に操作レバー22を上昇揺動操作することにより植付作業機7の下降を停止させる。この制御の詳細については後述する。
【0027】
また、操作レバー22を前後揺動操作することにより、左右のマーカの振出し操作を行う。具体的には、操作レバー22を前方揺動操作することによりマーカモータ9を介した上記切替部材の左マーカ振出し姿勢への切換を行う一方で、操作レバー22を後方揺動操作することによりマーカモータ9を介した上記切替部材の右マーカ振出し姿勢への切換を行う他、操作レバー22の基本姿勢時にはマーカモータ9を介して上記切替部材がロック姿勢に切換えられる。
【0028】
次に、図6及び7に基づき植付作業機7の昇降制御の構成について説明する。
図6は、油圧シリンダを介して植付作業機を昇降作動させる構成を示す側面図である。植付作業機7を昇降させるため、油圧シリンダ8に対して圧油を供給・排出して油圧シリンダ8を伸長作動させる油圧バルブであるコントロールバルブ26が昇降リンク6の走行機体3側端部近傍に設けられている。
【0029】
コントロールバルブ26の周辺には、前後回動によりコントロールバルブ26を開度調整可能に開閉作動させる側面視略正方形状に成形された作動アーム28と、前後回動により植付クラッチを入切作動させて植付作業機への動力を断続させる操作アーム29と、上記作動アーム28及び操作アーム29を前後回動させるように作動アーム28及び操作アーム29と係合する側面視扇状の作業機操作カム31と、作業機操作カム31を回動駆動させる作業機操作カムモータ(昇降手段,動力入切手段)32と、作業機操作カム31の位置を検出する作業機操作カムポテンショ33とがそれぞれ設置支持されている。
【0030】
この作業機操作カム32は、植付作業機7が上昇状態且つ植付クラッチが切り状態になる位置に作動アーム28及び操作アーム29を回動させる「上げ」ポジションと、植付作業機7が停止状態且つ植付クラッチが切り状態になる位置に作動アーム28及び操作アーム29を回動させる「固定」ポジションと、植付作業機7が感知フロート13による自動昇降制御状態且つ植付クラッチが切り状態になる位置に作動アーム28及び操作アーム29を回動させる「下げ」ポジションと、植付作業機7が感知フロート13による自動昇降制御状態且つ植付クラッチが入り状態になる位置に作動アーム28及び操作アーム29を回動させる「植付」ポジションとの何れかに位置決めされる。
【0031】
図7は、植付作業機の感知フロートによる自動昇降制御の構成を示す側面図である。感知フロート13は、後端部が植付作業機7に対して上下揺動自在に支持されており、植付作業機7が下降して感知フロート13が圃場面に勢い良く接地すると圃場からの土圧で上方揺動されて前上り状態になる一方で、植付作業機7が上昇して感知フロート13が圃場面から離間すると自重で下方揺動作動して前下がり状態になる
【0032】
感知フロート13の前端部は、連係機構34を介して、前述したコントロールバルブ26の作動アーム28と連結されている。上記連係機構34は、作業機操作カム31によって植付作業機7が感知フロート13にる自動昇降制御状態である場合に、感知フロート13が前下がり状態になると植付作業機7を下降駆動させる方向に、感知フロート13が前上がり状態になると植付作業機7を上昇駆動させる方向に作動アーム28をそれぞれ回動操作するように構成されており、これによって圃場での植付部12による苗の植付深さが最適制御される。
【0033】
前述したマーカモータ9及びリフトカムモータ32は、前述の制御部23からの電気的な出力信号によって駆動が制御される。すなわち、制御部23は、マーカの振出し及び植付作業機7の昇降及び植付部12の駆動制御を行う。
【0034】
次に、図8乃至10に基づいて制御部23の構成について説明する。
図8は、制御部のブロック図である。制御部23の入力側には、前述の準備スイッチ21、自動スイッチ19、上昇スイッチ24及び作業機操作カムポテンショ33が接続されている他、植付作業機7の走行機体3に対する相対的な昇降高さを検出するリフト角ポテンショ(昇降高さ検出手段)36と、前述の切替部材がロック姿勢か左マーカ振出し姿勢か右マーカ振出し姿勢かの検出を行う検出スイッチ(マーカ状態検出手段)37と、HSTレバー18の切換部25c内における前進部25aから後進部25bへの変位を検知することにより乗用田植機の後進操作(後進状態)を検出する後進操作検出スイッチ(後進状態検出手段)38と、走行変速装置から後輪2に動力を伝動する伝動軸39(図1参照)の回転速度を検出することにより本乗用田植機の走行速度を検出する速度センサ(速度検出手段)41と、操作レバー22の上方揺動操作(上昇操作)を検出する上昇スイッチ(上昇操作検出手段)42と、操作レバー22の下方揺動操作(下降操作)を検出する下降スイッチ(下降操作検出手段)43と、操作レバー22の前方揺動操作(左マーカ振出し操作)を検出する左マーカ振出し操作検出スイッチ(左マーカ振出し操作検出手段)44と、操作レバー22の後方揺動操作(右マーカ振出し操作)を検出する右マーカ振出し操作検出スイッチ(右マーカ振出し操作検出手段)46とが接続されている。
【0035】
なお、上記速度検出手段41を、HSTレバー18の前後揺動位置を検出して間接的に走行速度を検出するポテンショメータ等の走行変速操作位置検出センサ(走行変速操作位置検出手段)により構成してもよい。
【0036】
一方、制御部47の出力側には、前述の作業機操作カムモータ32及びマーカモータ9が接続されている。
【0037】
図9は、操作レバーの上下揺動操作に基づく植付作業機の制御部を介した昇降制御の処理手順を示すフロー図である。制御部23は、電源が入れられると、ステップS1から処理を開始する。ステップS1では、下降スイッチ43による検出を行い、操作レバー22の下方揺動操作が検出されないと、ステップS2に進む。ステップS2では、上昇スイッチ42による検出を行い、操作レバー22の上方揺動操作が検出されると、ステップS3に進む。
【0038】
ステップS3では、植付作業機7の状態を検出し、「上昇状態」以外であればステップS4に進み、「上昇状態」が検出されるとステップS1に処理を戻す。なお、植付作業機7は、上記作業機操作カムポテンショ33によって状態が検出され、作業機操作カム32が前述した「上げ」ポジションに位置決めされていると「上昇状態」として、前述した「固定」ポジションに位置決めされていると「固定状態」として、前述した「下げ」ポジションに位置決めされていると「自動状態(自動下降状態)」として、前述した「植付」ポジションに位置決めされていると「植付状態」として制御部23に認識される。
【0039】
ステップS4でも、植付作業機7の状態を検出し、「固定状態」以外であればステップS5に進む。ステップS5でも、植付作業機7の状態を検出し、「植付状態」であればステップS6に進む。ステップS6では、作業機操作カム32を「下げ」ポジションに位置決めして植付作業機7を「自動状態」とし、ステップS1に処理を戻す。
【0040】
ステップS2において、操作レバー22の上方揺動操作が検出されないと、ステップS7に進む。ステップS7では、「植付けクラッチ入り待ち状態」の検出を行い、「植付けクラッチ入り待ち状態」が検出されるとステップS8に進み、検出されないとステップS1に処理を戻す。ちなみに、「植付けクラッチ入り待ち状態」とは、第1操作具22により植付クラッチの入操作がされているが、植付作業機7が植付部12による圃場での植付作業機が可能な作業高さまで下降していない状態を意味し、上記リフト角ポテンショ36等により検出される。
【0041】
ステップS8では、「作業機下降動作停止」の検出を行い、「作業機下降動作停止」が検出されるとステップS9に進み、検出されないとステップS1に処理を戻す。ちなみに、「作業機下降動作停止」とは、「自動状態」にある植付作業機7の感知フロート13が圃場に接地して植付作業機7の下降が停止している状態を意味し、上記リフト角ポテンショ36及び作業機操作カムポテンショ33等により検出される。この状態では、植付作業機7が少なくとも前述した作業位置まで下降している。ステップS9では、作業機操作カム32を「植付」ポジションに位置決めして植付作業機7を「植付状態」とし、処理をステップS1に戻す。
【0042】
ステップS4において、植付作業機の「固定状態」が検出されると、ステップS10に進む。ステップS10では、作業機操作カム32を「上げ」ポジションに位置決めして植付作業機7を「上昇状態」とし、ステップS1に処理を戻す。
【0043】
ステップS5において、植付作業機7の「自動状態」が検出されると、ステップS11に進む。ステップS11では、「作業機下降動作停止」の検出を行い、「作業機下降動作停止」が検出されるとステップS10に進み、「作業機下降動作停止」が検出されないとステップS12に進む。ステップS12では、作業機操作カム32を「固定」ポジションに位置決めして植付作業機7を「固定状態」とし、ステップS1に処理を戻す。
【0044】
ステップS1において、操作レバー22の下方揺動操作が検出されると、ステップS16に進む。ステップS16では、準備スイッチ21による検出を行い、準備スイッチ21のON状態が検出されると、ステップS17に進む。ステップS17では、植付作業機7の状態を検出し、「上昇状態」以外であればステップS18に進む。
【0045】
ステップS18でも、植付作業機7の状態を検出し、「自動状態」以外であればステップS19に進む。ステップS19でも、植付作業機7の状態を検出し、「固定状態」であればステップS20に進み、「植付状態」であればステップS1に処理を戻す。ステップS20では、作業機操作カム32を「下げ」ポジションに位置決めして植付作業機7を「自動状態」とし、ステップS1に処理を戻す。
【0046】
ステップS17において、植付作業機7の「上昇状態」が検出されると、ステップS21に進む。ステップS21では、作業機操作カム32を「固定」ポジションに位置決めして植付作業機7を「固定状態」とし、ステップS1に処理を戻す。
【0047】
ステップS18において、植付作業機7の「自動状態」が検出されると、ステップS22に進む。ステップS22では、「作業機下降動作停止」の検出を行い、「作業機下降動作停止」の検出がされると、ステップS23に進む。ステップS23では、リフタカムを「植付」ポジションに位置決めして植付作業機7を「植付状態」とし、処理をステップS1に戻す。
【0048】
ステップS22において「作業機下降動作停止」が検出されないと、ステップS24に進む。ステップS24では、「植付クラッチ入り待ち状態」である旨の情報を制御部23にフィードバックして処理をステップS1に戻す。
【0049】
ステップS16において、準備スイッチ21のOFF状態が検出されると、ステップS25に進む。ステップS25では、植付作業機7の状態を検出し、「上昇状態」であれば前述のステップS21に、「上昇状態」以外の状態であればステップS26に進む。ステップ26でも植付作業機7の状態を検出し、「固定状態」が検出されるとステップS27に進み、「固定状態」以外の状態が検出されるとステップS1に処理を戻す。ステップS27では、作業機操作カム32を「下げ」ポジションに位置決めして植付作業機7を「自動状態」とし、ステップS1に処理を戻す。
【0050】
上記処理フローによって、作業機操作レバー22を介した植付作業機7の昇降制御及び植付クラッチの入切制御が行われる。なお、ステップS16の処理によって、準備スイッチ21がON状態になっていないと、作業機操作レバー22の下方揺動操作による植付クラッチの入切作動が行えないようになっている。
【0051】
図10は、上昇スイッチ24の操作に基づく植付作業機の制御部を介した昇降制御の処理手順を示すフロー図である。制御部23は、電源が入れられると、ステップS31から処理を開始する。ステップS31では、準備スイッチ21の入切状態を検出し、切状態であればステップS31の検出処理を繰返す一方で、入状態であればステップS32に進む。すなわち、準備スイッチ21がONされていない場合には、上昇スイッチ24による植付作業機7の昇降操作ができないように、制御部23が構成されている。
【0052】
ステップS32では、後進操作検出スイッチ38による後進操作検出を行い、後進操作が検出されるとステップS31に処理を戻し、検出されないとステップS33に進む。ステップS33では、作業機操作カムポテンショ33による作業機操作カム32の位置検出等により植付クラッチの切状態(エンジン動力が植付作業機7に伝動されていない状態)の検出を行い、検出されると処理をステップS31に戻し、検出されないとステップS34に進む。
【0053】
ステップS34では、リフト角ポテンショ36によって、植付作業機7の第1設定高さ(所定高さ)以上の検出を行い、検出されれば上昇スイッチ24の押し操作によって植付作業機7を上昇作動させる必要がないため、再びステップS34の処理を繰返す一方で、検出されなければ、ステップS35に処理を進める。ちなみに、上記第1設定高さは、少なくとも、植付作業機7が植付部12による植付作業を行わない非作業高さよりも高くなるように設定する。
【0054】
ステップS35では、速度センサ41によって本乗用田植機の設定速度(所定速度)以上を検出し、上記設定速度以上が検出されないと、本乗用田植機が小回り旋回中又は小回り旋回を行って次行程に移行した後に増速している最中で十分な速度に達していない状態であるとみなして、処理をステップS31に戻す。このため、上記設定速度は、植付作業機7による圃場での植付作業を行うために十分な走行速度に設定する必要がある。
【0055】
一方、ステップS35において、上記設定速度以上が検出されると、ステップS36に進む。ステップS36では、タイマーによる時間計測を0から開始し、ステップS37に進む。ステップS37では、上記計測開始から設定時間(所定時間)が経過したか否かの検出をタイマーによって行い、上記設定時間を経過していなければステップS37の検出処理を再び繰返す一方で、上記設定時間を経過していれば、本乗用田植機が小回り旋回して次行程に移行した後、圃場の始端から走行して再び終端側付近まで達したとみなして、処理をステップS38に進める。
【0056】
ステップS38では、上昇スイッチ24の押し操作検出を行い、上昇スイッチ24の押し操作が検出されるとステップS39に進み、検出されないとステップS38の検出処理を繰返す。ステップS39では、作業機操作カムモータ32によって作業機操作カム32を「上げ」ポジションに位置決めし、植付作業機7を上昇作動させ、ステップS40に進む。
【0057】
ステップS40では、植付作業機7が前述の非作業高さよりも高い第2設定高さ(所定高さ)になっているか否かの検出を行い、植付作業機7の第2設定高さ以上が検出されるとステップS41に進む一方で、植付作業機7の第2設定高さ以上が検出されないとステップS40の検出処理を繰返す。ステップS41では、タイマーの計測時間を0にセットすることによりタイマーをリセットして、処理をステップS31に戻す。
【0058】
上記構成の乗用田植機では、速度センサ41によって上記設定速度以上が検出されるまでは、制御部23によって、ステップS31からステップS35までの処理が繰返され、上昇スイッチ24によって植付作業機7の上昇操作がされても、植付作業機7が上昇作動されない規制モードで保持される。
【0059】
そして、ステップS35において設定速度以上が検出されると、ステップS36からステップS39までの処理が制御部23によって実行され、上昇スイッチ24の植付作業機7上昇操作による植付作業機7の上昇作動が許容される許容モードに移行する。一度許容モードに移行すると、その後、速度センサ41により設定速度以下が検出されても、制御部23は、同図に示すように、規制モードには戻らずに許容モードを保持する。
【0060】
そして、許容モード時に、ステップS40で、リフト角ポテンショ36による植付作業機7の第2設定高さ以上が検出されると、制御部23によって、再び許容モードから規制モードに移行する。
【0061】
以上により、現行程から次行程に移行するための小回り旋回中や、小回り旋回直後の増速中におけるオペレータの意図しない上昇スイッチ24操作による植付作業機7上昇作動が防止される一方で、現行程から次行程に移行するための小回り旋回直前の減速中又は減速後におけるオペレータの意図した上昇スイッチ24操作による植付作業機7上昇作動が許容される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【図2】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体平面図である。
【図3】前面操作パネルの要部平面図である。
【図4】(A)乃至(E)は、HSTレバーの平面図、左側面図、背面図、右側面図及び正面図である。
【図5】ステアリングハンドル及び操作レバーの斜視図である。
【図6】油圧シリンダを介して植付作業機を昇降作動させる構成を示す側面図である。
【図7】植付作業機の感知フロートによる自動昇降制御の構成を示す側面図である。
【図8】制御部のブロック図である。
【図9】操作レバーの上下揺動操作に基づく植付作業機の制御部を介した昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
【図10】上昇スイッチ24の操作に基づく植付作業機の制御部を介した昇降制御の処理手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0063】
3 走行機体
7 植付作業機
18 HSTレバー(変速レバー)
18a グリップ(把持部)
23 制御部
24 上昇スイッチ(上昇操作具,第2操作具)
41 速度センサ(速度検出手段,走行変速操作位置検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)の後部に昇降可能に連結された植付作業機(7)と、植付作業機(7)の昇降制御を行う制御部(23)と、走行変速操作を行う変速レバー(18)の把持部(18a)に設けられて植付作業機(7)の上昇操作を行う上昇操作具(24)とを備えた移植機において、走行速度を検出する速度検出手段(41)を設け、制御部(23)が、上昇操作具(24)の植付作業機(7)上昇操作による植付作業機(7)の上昇作動を規制する規制モードを有し、速度検出手段(41)によって走行速度が所定速度以上になったことが検出されると、上記規制モードから、上昇操作具(24)の植付作業機(7)上昇操作による植付作業機(7)の上昇作動を許容する許容モードに移行する移植機。
【請求項2】
一旦許容モードに移行すると、その後に走行速度が上記所定速度以下になっても許容モードを維持するように制御部(23)を構成した請求項1の移植機。
【請求項3】
許容モード時、植付作業機(7)が所定高さ以上に上昇したことが検出されると、許容モードから規制モードに移行するように制御部(23)を構成した請求項1又は2の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−98967(P2010−98967A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271466(P2008−271466)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】