説明

種籾播種装置及び種籾シートの製造方法

【課題】 繊維構造物層上の所望の位置に種籾を播種しうる種籾播種装置を提供する。
【解決手段】 この種籾播種装置は、回転する木製ロール1と、木製ロール1の上部に配設されたホッパー2と、ホッパー2の下端に取り付けられた動植物製ブラシ3とで構成されている。木製ロール1の周面には、種籾5を収納しうる凹部4が設けられている。ホッパー2には、種籾5,5・・・が収納されており、この種籾5は木製ロール1の凹部4に供給される。動植物製ブラシ3は、木製ロール1と接触している。この種籾播種装置の下方で繊維構造物層Aを搬送しながら、木製ロール1を回転させると、凹部4に収納されている種籾5が下方へ落下する。木製ロール1と動植物製ブラシ3によって、静電気が発生しにくくなっているので、落下した種籾5は飛び散りにくく、繊維構造物層Aの所望の箇所に置かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲作に用いる種籾シートの製造方法に関し、特に不織布等の繊維構造物層上に種籾を播種して種籾シートを製造する方法に関するものである。また、種籾を播種する際に用いる種籾播種装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、特許文献1において、従来の稲作技術とは全く異なる新規な稲作技術を提案した。特許文献1に記載された稲作技術は、以下のようなものである。まず、水田に水中浮遊性繊維構造物を敷設する。水中浮遊性繊維構造物としては、一般に綿製不織布が用いられ、また水中浮遊性繊維構造物中に種籾が播種されてなる種籾シートであってもよい。本件は、この種籾シートの製造する方法に関するものである。水田に種籾シートを敷設した後、水田に灌漑し、水田と種籾シートとの間に水を貯留し、種籾シートを水中に浮遊させる。数日後、水田上には雑草類が成長して、雑草類中の単子葉植物の鞘葉から本葉が発生する。一方、種籾シート中の種籾からは出芽し、葉が現れる。この状態となったとき(特に種籾から第三葉が現れたとき)、水田に貯留されていた水を落水する。そうすると、雑草類の本葉は、種籾シートによって圧倒され、しかも種籾シートによって被覆されるので、光合成が行えず、雑草類は枯死する。一方、出芽している種籾の根は、種籾シートが水中に浮遊していたときには、水中に伸びていたものであるが、落水することによって、この根が水田と接して地中に伸び、地中から養分を取って成長する。特許文献1に記載された稲作技術は、以上のようなものであるため、農薬等の除草剤は不要であって、環境に悪影響を及ぼすことがなく、しかも省力化されたものである。
【0003】
特許文献1の実施例に記載されているように、種籾シートとしては、二枚の不織布の間に、種籾を播種したものが好適である。二枚の不織布の間に種籾を播種する方法としては、一枚の不織布上に種籾を散播した後、その上に他の一枚の不織布を積層すればよい。したがって、種籾シートは容易に製造しうるものである。しかしながら、種籾は適当に散播するよりも、一定の間隔を置いて筋播きするのが好ましい。たとえば、図1に示したような態様で筋播きするのが好ましい。この理由は、成長した稲が過密になるのを防止し、隣接する稲間に風や光がよく通るようにするためである。これによって、稲の葉の硬度が向上し、害虫からの被害を少なくしうるのである。
【0004】
一枚の不織布上に、種籾を一定の間隔を置いて筋播きするには、以下のような方法が考えられる。すなわち、周面に種籾を収納しうる凹部を備えた回転するロールを用い、このロールの上方に設けたホーパーから種籾を凹部に供給し、一方、ロールの下方で不織布を搬送させながら、凹部から種籾を落下させて播種するという方法が考えられる。本件発明者等は、このような方法によって、種籾を播種したが、所望の位置に種籾を播種するのが困難であった。すなわち、回転するロール表面や不織布表面には静電気が発生し、この静電気によって、種籾を播種する際又は播種した後に飛び散るということがあった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−274769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した方法において、特に回転するロール表面に静電気が発生しないようにし、種籾が飛び散るのを防止して、所望の位置に種籾を播種することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、本件発明者等は、回転するロールとして木製ロールを用い、しかも、木製ロール周面を除電するため、特定のブラシが木製ロール周面に接触するよう配設したものである。すなわち、本発明は、周面に種籾を収納しうる凹部を備えた回転する木製ロールと、該木製ロールの上部に配設され、該木製ロールの凹部に種籾を供給するホッパーと、該ホッパーの下端に取り付けられ、該木製ロール周面と接触する動植物製ブラシとからなることを特徴とする種籾播種装置に関するものである。また、この種籾播種装置を用いた種籾シートの製造方法に関するものである。
【0008】
本発明に係る種籾播種装置の基本的構成は、図2に示したとおり、木製ロール1と、木製ロール1の上部に配設されたホッパー2と、木製ロール1とホッパー2の間に取り付けられた動植物製ブラシ3とからなるものである。金属製ロールやプラスチック製ロールを使用せずに、木製ロールを使用する理由は、なるべく静電気が発生しにくい材料を使用するためであると共に、種籾5に悪影響を与えないように天然の素材としたものである。この木製ロール1周面には、種籾5を収納しうる凹部4が設けられている。この凹部4の大きさは、種籾5が一個づつ収納される程度の大きさであるのが好ましい。複数個収納しうる大きさの凹部4としても差し支えないが、種籾5,5・・・同士の摩擦によって静電気が発生する恐れがある。木製ロール1に設けられる凹部4の態様としては、図3及び図4に示した態様が好ましい。すなわち、木製ロール1の周面に周方向に列をなした凹部4,4・・群が、木製ロール4の軸方向に一定の間隔を置いて平行に並んでいる態様である。図3は凹部4が一個づつ列をなしているものであり、図4は凹部4が複数個集められ、それが列をなしているものである。この木製ロール1は、左右いづれか一方向に回転しており、凹部4がホッパー2側に位置したとき種籾5が凹部4に収納され、凹部4がホッパー2の反対側の下方に位置したとき、種籾5が下方に落下して、不織布等の繊維構造物層上に置かれる。
【0009】
ホッパー2は、木製ロール1の上部に配設されており、ホッパー2内には多数の種籾5,5・・・が収納されている。ホッパー2の材料は任意でよいが、一般的には合成樹脂製であるのが好ましい。ホッパー2と木製ロール1とは、直接接触しておらず、動植物製ブラシ3を介して接している。直接接触していると、摩擦により静電気が発生しやすくなる。本発明においては、ホッパー2の下端に動植物製ブラシ3が取り付けられており、この動植物製ブラシ3によって、回転する木製ロール1周面が常に擦過されている状態となっている。つまり、回転する木製ロール1周面は、動植物製ブラシ3によって常に掃かれている状態(ほうきで掃かれているような状態)となっている。動植物製ブラシ3は、種籾に悪影響を与えないない天然の素材であると共に、帯電しにくく静電気を通しやすいものである。したがって、木製ロール1周面に静電気が発生したとしても、動植物製ブラシ3はよく静電気を通すので、静電気はホッパー2を通り、ホッパー2の支持枠などを通って除電されるのである。動植物製ブラシ3の長さ及び植設密度は、ホッパー2の最下層に存在し、凹部4に収納されなかった種籾5,5・・・が外部へこぼれないような長さ及び密度にすればよい。本発明において用いる動植物製ブラシ3としては、椰子製,しゅろ製,竹製,タンピコ製,馬毛製等のブラシを用いることができる。
【0010】
上記した種籾播種装置を用いて種籾シートを製造する方法は、搬送されている繊維構造物層Aの上に、上記した種籾播種装置に設けられた回転する木製ロール1の凹部4から落下する種籾5,5・・・を置き、その後、繊維構造物層Bで種籾5,5・・・を被覆しながら、繊維構造物層Aに積層するという方法である。この方法を、使用する装置と共に順を追って説明すれば、以下のとおりである。まず、不織布等の繊維構造物層Aを、一対のニップロール6,6やベルトコンベア(図示せず)等の搬送手段によって、搬送する。図5上では、右方向に搬送される。次に、上記した種籾播種装置によって、繊維構造物層A上に、種籾5,5・・・を置く。木製ロール1と繊維構造物層A間の距離は、任意ではあるが数cm程度、具体的には5cm程度が好ましい。これよりも距離が長いと、種籾5,5・・・を繊維構造物層A上に置くときに、落下エネルギーが大きくなり、繊維構造物層A上で種籾5,5・・・が飛び散りやすくなる。繊維構造物層Aを種籾播種装置に導入する前に、水蒸気噴霧器7によって、繊維構造物層Aに水蒸気を噴霧してもよい。水蒸気を繊維構造物層Aに噴霧することにより、繊維構造物層A表面に静電気が帯電するのを防止することができる。
【0011】
繊維構造物層A上に種籾5,5・・・を播種した後、種籾5,5・・・を被覆するようにして、不織布等の繊維構造物層Bを積層する。繊維構造物層Bは、繊維構造物層Aと同一幅として、両者を合致させて積層するのが好ましい。積層するには、ニップロール8,8等の積層手段によって、繊維構造物層A及びBを押圧すればよい。単に押圧しただけで、繊維構造物層AとBとが、ある程度一体化してなる種籾シート9が得られる。しかしながら、この種籾シート9を水田に敷設すると、風等によって、種籾シート9の端縁において繊維構造物層A又Bが捲くれ上がるということがある。このような捲くれ上がりを防止するためには、種籾シート9の巾方向両端近傍に、ニードリング装置を設け、繊維構造物層AとBの各構成繊維を絡ませて、種籾シート9の巾方向両端近傍において一体化の程度を高くすることが好ましい。このニードリング装置は、周面に多数の針12,12・・・が植設されたニードルロール10と、各針12が嵌入する凹部(図示せず)を持つ凹凸ロール11とが、対向して同速度で回転しているものである。そして、このニードルロール10と凹凸ロール11の間に、積層された繊維構造物層A及びBを通すと、針12が繊維構造物層に突き刺さった後、直ちに抜かれることになる。これによって、上層の繊維構造物層Bの構成繊維は下層に進入し、一方、下層の繊維構造物層Aの構成繊維は上層に進入することになるから、各繊維構造物層A,Bの各繊維が相互に絡むことになる。針12としては、繊維構造物層A及びBの各構成繊維が絡み合うようなものであれば、どのようなものであってもよいが、更によく絡み合うように、その先端近傍にトゲを有するトゲ付き針を用いるのが好ましい。トゲによって、上層から下層へ、下層から上層への構成繊維の進入の程度が高くなり、よく絡み合うからである。
【0012】
以上のようにして得られた種籾シート9は、基本的には、特許文献1に記載した稲作技術に適用されるものである。すなわち、本発明に係る方法で得られた種籾シートを、水田に敷設する。敷設後、水田に灌漑し、水田と種籾シートとの間に水を貯留し、種籾シートを水中に浮遊させる。数日後、水田上には雑草類が成長して、雑草類中の単子葉植物の鞘葉から本葉が発生し、種籾シートからは出芽し葉が現れる。この状態となったときに、水田に貯留されていた水を落水する。後は、適宜、水管理及び追肥を行えば、農薬等の除草剤を用いることなく、稲作を行えるのである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る種籾播種装置は、静電気の発生しにくい木製ロールが用いられており、また、静電気を帯電しにくくかつ良好に除電しうる動植物製ブラシが木製ロールに接触するように配設されているので、種籾を繊維構造物層に播種するとき、種籾が飛び散ることが少なく、所定の位置に種籾を置くことができる。したがって、本発明に係る種籾播種装置を用いれば、所望のとおり、筋播きされた種籾シートを得ることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る種籾播種装置を用いて、種籾シートを製造する際、種籾播種装置に繊維構造物層を導入する前に、当該繊維構造物層上に水蒸気を噴霧しておけば、繊維構造物層表面にも静電気が帯電しにくく、種籾の飛び散りをより防止できるという効果を奏する。
【0015】
さらに、種籾シートの巾方向両端近傍をニードリングして、繊維構造物層Aの構成繊維と繊維構造物層Bの構成繊維とを絡ませて、一体化すると、種籾シートを水田に敷設したとき、種籾シートの両側端において、繊維構造物層A又はBが風等によって捲くり上がるのを防止しうるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】繊維構造物層A上に、種籾が筋播きされた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一例に係る種籾播種装置の概略側面図である。
【図3】本発明に係る種籾播種装置に用いる木製ロールの一例を示す側面図である。
【図4】本発明に係る種籾播種装置に用いる木製ロールの他の例を示す側面図である。
【図5】本発明の一例に係る種籾シートの製造装置の概略側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 木製ロール
2 ホッパー
3 動植物製ブラシ
4 木製ロールの周面に設けられた凹部
5 種籾
6 ニップロール
7 水蒸気噴霧器
8 ニップロール
9 種籾シート
10 ニードルロール
11 凹凸ロール
12 針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に種籾を収納しうる凹部を備えた回転する木製ロールと、該木製ロールの上部に配設され、該木製ロールの凹部に種籾を供給するホッパーと、該ホッパーの下端に取り付けられ、該木製ロール周面と接触する動植物製ブラシとからなることを特徴とする種籾播種装置。
【請求項2】
凹部の大きさは種籾が一個収納される程度である請求項1記載の種籾播種装置。
【請求項3】
搬送されている繊維構造物層Aの上に、請求項1記載の種籾播種装置の回転する木製ロールの凹部から落下する種籾を置き、その後、繊維構造物層Bで該種籾を被覆しながら、該繊維構造物層Aに積層することを特徴とする種籾シートの製造方法。
【請求項4】
搬送されている繊維構造物層A上に水蒸気を噴霧する請求項3記載の種籾シートの製造方法。
【請求項5】
積層された繊維構造物層A及び繊維構造物層Bの巾方向両端近傍をニードリングして、繊維構造物層Aの構成繊維と繊維構造物層Bの構成繊維とを絡ませて、両繊維構造物層A及びBを一体化する請求項3記載の種籾シートの製造方法。
【請求項6】
繊維構造物層Aを搬送する搬送手段と、搬送されている繊維構造物層A上に種籾を播種する請求項1記載の種籾播種装置と、搬送されている繊維構造物層Aに、播種された種籾を被覆しながら繊維構造物層Bを積層する積層手段とからなることを特徴とする種籾シートの製造装置。
【請求項7】
請求項1記載の種籾播種装置に、繊維構造物層Aが導入される前に、該繊維構造物層Aに水蒸気を噴霧するための水蒸気噴霧器が設けられている請求項6の種籾シートの製造装置。
【請求項8】
積層手段の後に、種籾シートの巾方向両端近傍に、周面に針が植設されたニードルロールと、該針が嵌入する凹部を持つ凹凸ロールとを備えたニードリング装置が設けられている請求項6の種籾シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−42631(P2006−42631A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225651(P2004−225651)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000157348)丸三産業株式会社 (15)
【出願人】(399022803)
【Fターム(参考)】