説明

穀物保管庫

【課題】 外気温の高い地域で、本格的な冷却装置を設けなくても穀物を好適な気温で貯蔵することができる穀物保管庫を得る。
【解決手段】 外気温検出センサによって検出された外気温Toが、内気温検出センサによって検出された庫内の気温Tiより所定温度以上高いか否かを判定し(100)、否定されると、吸気シャッタ及び排気シャッタを開放状態とし、また、吸気ファンを回転させ、吸気管から外気を取り込み、穀物保管庫本体の内部へ供給する(102)。次に、内気温検出センサによって検出された庫内の気温Tiが玄米貯蔵に適した温度である適正温度より高いか否かを判定し(104)、判定が肯定されると、補助冷却装置の作動を開始させる(108)。これにより、吸気ファンが取りこんだ外気を冷却し、冷気を穀物保管庫本体の内部へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物保管庫に係り、特に、外気温の高い地域で籾や玄米等の穀物を保管するのに好適な穀物保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫した籾や玄米等の穀物を袋詰めし、低温条件下で貯蔵する際に穀物保管庫が用いられる。この種の穀物保管庫としては、クーラユニットによる冷気が穀物保管庫本体の内部を低温に維持する穀物保管庫(特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特許3171815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の穀物保管庫による場合、穀物を低温貯蔵するために本格的な冷却装置であるクーラユニットを設けているため、製造コストが高くなる、という問題がある。また、日中の高温時にクーラユニットを作動してもエネルギー効率が悪いため、ランニングコストがかかる、という問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、本格的な冷却装置を設けなくても穀物を好適な気温で貯蔵することができる穀物保管庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明に係る穀物保管庫は、外気導入口及び内気排出口を備えた穀物を保管するための断熱構造の箱状の穀物保管庫本体と、前記穀物保管庫本体の外部の気温を検出する外気温検出手段と、前記穀物保管庫本体内の気温を検出する内気温検出手段と、外気を前記外気導入口から取り込み、内気排出口から排出することにより、外気を前記穀物保管庫本体内に循環させる外気循環手段と、前記外気導入口から取り込まれる外気を冷却する冷却手段と、前記外部の気温に対する前記穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度未満の場合に、外気循環手段を作動させて前記外気を循環させ、前記差が所定温度未満で、かつ前記穀物保管庫本体内の気温が穀物保管に適した気温より高くなった場合に、前記冷却手段を作動させて冷却された外気を循環させるように制御する制御手段と、を有している。
【0006】
本発明に係る穀物保管庫によれば、制御手段が、外部の気温に対する穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度未満の場合に、外気循環手段を作動させて外気を循環させ、外部の気温に対する穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度未満で、かつ穀物保管庫本体内の気温が穀物保管に適した気温より高くなった場合に、冷却手段を作動させて冷却された外気を循環させるように制御する。
【0007】
従って、外気導入口から取り込まれる外気を冷却し、穀物保管庫本体内に循環させることにより、本格的な冷却装置を設けなくても穀物に適した温度で貯蔵することができる。
【0008】
また、外部の気温に対する穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度未満であれば、冷却手段を作動させるため、外部の気温が比較的高い場合でも、冷却した外気を穀物保管庫本体内に取り込むことができ、穀物保管庫本体内の気温を穀物保管に適した気温にすることができる。
【0009】
本発明に係る制御手段は、外部の気温に対する穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度より高い場合に、外気を穀物保管庫本体内に循環させないように外気循環手段を制御することができる。これにより、外部の気温が高い時は、断熱効果により穀物保管庫本体内の気温を維持することができる。
【0010】
また、本発明に係る外気循環手段には、外部の気温に対する穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度未満の場合に、外気導入口を開放する第1開放手段及び内気排出口を開放する第2開放手段を設け、制御手段によって、外部の気温に対する穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度より高い場合に、第1開放手段及び第2開放手段を閉止状態にするように制御することができる。また、本発明に係る冷却手段は、ペルチェ素子で構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の穀物保管庫によれば、本格的な冷却装置を設けなくても穀物保管に適した気温で貯蔵することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。第1の実施の形態は、籾や玄米等の穀物を保管するための穀物保管庫に本発明を適用したものである。
【0013】
図1に示すように、穀物保管庫10は、前面が開放された箱体形状に形成され、かつ内部に穀物保管室12を有する穀物保管庫本体14を備えている。なお、穀物保管庫本体14の前面には図示しない扉(片開き、両開きのいずれでもよい)が設けられており、扉を開放して穀物が詰め込まれた穀物袋16を出し入れする。
【0014】
上記穀物保管庫本体14の壁は、断熱構造、好ましくは高断熱構造となっており、例えば、鋼板で構成された内板18及び外板20と、両者の間に介在された厚さ10〜20cm程度の発砲スチロールで構成された断熱層22と、によって構成されている。穀物保管庫本体14の底壁にはすのこ24が設けてあり、その上に穀物袋16が積み上げられている。すのこ24の下には、活性炭やゼオライト等の外孔質材料によって構成された吸湿剤26が配置されている。
【0015】
また、穀物保管庫本体14の頂壁には、吸気口52及び排気口54が設けられており、吸気口52及び排気口54には吸気管28及び排気管30がそれぞれ接続されている。吸気管28は、例えば、L字管で構成されており、一端部は穀物保管庫本体14の頂壁に差し込まれて穀物保管室12と連通されている。また、吸気管28の他端部には、回転することにより外気を吸い込む吸気ファン32及び吸気ファン32を作動させるファンモータ34(図2参照)が配設されている。さらに、吸気管28の中間部には、吸気管28の他端部から吸気ファン32によって送給される外気を冷却する補助冷却装置50が配設されている。補助冷却装置50は、外気を冷却する低温部及び熱を発生する高温部を有するペルチェ素子と、熱を排出する排熱用ファン及び放熱板と、で構成され、排熱用ファン及び放熱板はペルチェ素子の高温部側に配置されている。ペルチェ素子の低温部側において、吸気ファン32によって送給された外気を例えば約5℃冷却した冷気を生成し、吸気ファン32の作動により穀物保管室12へ冷気を送給する。一方、ペルチェ素子の高温部側では、排熱用ファン及び放熱板により吸気管28の外へ熱を排出する。また、穀物保管庫本体14の頂壁の下面側には、吸気管28の一端部から送給される冷気を天井に沿って流通させるための風向板36が吸気管28の一端部と対面するように配設されている。
【0016】
排気管30は、例えば、J字管で構成されており、一端部は穀物保管庫本体14の頂壁に差し込まれて穀物保管室12と連通されている。また、排気管30の他端部は外部に開放されている。
【0017】
上記吸気管28の一端部の近傍には、シャッタ開閉モータ38(図2参照)によって開閉作動する吸気シャッタ40が配設されている。同様に、排気管30の一端部の近傍には、排気シャッタ42が配設されている。排気シャッタ42は吸気シャッタ40と図示しない連結手段を介して連結されており、吸気シャッタ40の作動に同期して開閉作動する。なお、本実施形態では、構造の簡素化及び低コスト化の観点から、単一のシャッタ開閉モータ38で吸気シャッタ40及び排気シャッタ42の双方を作動させる構成を例に紹介したが、排気シャッタ42専用のシャッタ開閉モータを追加して個別に開閉作動させる構成としてもよい。
【0018】
また、穀物保管庫本体14の外部には、外部の気温を測定するための外気温検出センサ44が配設されている。さらに、穀物保管庫本体14の内部には、穀物保管室12の気温を測定するための内気温検出センサ46が配設されている。
【0019】
上述した外気温検出センサ44及び内気温検出センサ46は、図2に示すようにコントローラ48に接続されており、常時検出結果がコントローラ48に出力される。また、ファンモータ34、シャッタ開閉モータ38、及び補助冷却装置50もコントローラ48に接続されており、それらの作動が制御される。コントローラ48は、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータで構成されており、ROMには以下で説明する運転プログラムが記憶されており、CPUが運転プログラムを実行する。
【0020】
次に、本発明の第1の実施の形態の作用を、外気温の比較的高い地域で玄米を穀物保管庫10に低温貯蔵する場合を例にして説明する。
【0021】
穀物保管庫10の電源スイッチ(図示省略)がオンされると、コントローラ48により図3に示す運転プログラムのルーチンが実行され、まず、ステップ100で、外気温検出センサ44によって検出された外気温Toが、内気温検出センサ46によって検出された庫内の気温Tiより所定温度、例えば5℃以上高いか否かを判定する。否定された場合、即ち外気温Toの方が(Ti+所定温度)℃未満である場合(例えば、図4の期間A及び期間Cのような朝晩等の比較的外気温が低い場合)には、ステップ102へ移行し、シャッタ開閉モータ38を正転駆動させ吸気シャッタ40を開放状態とする。またこれに連動して、排気シャッタ42も開放状態とする。さらに、ファンモータ34を駆動させ、吸気ファン32を回転させ、吸気管28から外気を取り込み、穀物保管庫本体14の内部へ供給する。
【0022】
次のステップ104では、内気温検出センサ46によって検出された庫内の気温Tiが玄米貯蔵に適した温度である適正温度、例えば12℃より高いか否かを判定する。判定が肯定された場合(例えば、図4の期間A)、ステップ108へ移行し、補助冷却装置50の作動を開始させる。これにより、吸気ファン32が取りこんだ外気を所定温度(例えば約5℃)冷却し、(To−所定温度)℃の冷気を穀物保管庫本体14の内部へ供給する。これにより、内気より温度の低い冷気が穀物保管庫本体14の内部へ供給されるため、内気温を下げることができる。判定が否定された場合(例えば、図4の期間D)、ステップ106へ移行し、補助冷却装置50を停止させてステップ100へ戻る。
【0023】
このステップ100〜108が繰り返されることにより、図4の期間Dのように、庫内の気温Tiが玄米貯蔵に好適な適正温度(例えば12℃)の状態を維持することができる。
【0024】
一方、ステップ100で肯定された場合、即ち外気温Toが内気温Tiより所定温度以上高い場合(例えば、図4の期間Bのような日中の場合)には、ステップ110へ移行し、シャッタ開閉モータ38を逆転駆動させ吸気シャッタ40及び排気シャッタ42を閉止状態とする。また、ファンモータ34及び補助冷却装置50を停止状態とする。この場合、穀物保管庫10の断熱効果により庫内の気温Tiが適正温度に近い温度に保持され、低温状態を維持することができる。
【0025】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る穀物保管庫10によれば、本格的な冷却装置を設けなくても玄米を好適な温度で貯蔵することができ、製造コスト及びランニングコストを抑えることができる。また、図3のステップ100において、外気温Toが庫内の気温Tiより高いか否かを判定するのではなく、庫内の気温Tiより所定温度以上高いか否かを判定することにより、常に外気温Toが比較的高く補助冷却装置50が作動しない時期においても、補助冷却装置50を作動させることができ、玄米を低温貯蔵することができる。
【0026】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同一構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図5に示すように、穀物保管庫60では、穀物保管庫本体14の頂壁に吸気管及び排気管を設けるのではなく、薄型且つ小型にできるペルチェ素子等により構成された補助冷却装置62、吸気口64、及び排気口66を穀物保管庫本体14の側面に配設したことに特徴がある。
【0028】
穀物保管庫60には、穀物保管庫本体14の扉(図示省略)を設けた側面と対向する側面に、吸気口64及び排気口66が配設されている。吸気口64から外側に向かって、補助冷却装置62が配設されており、補助冷却装置62から外側に向かって吸気ファン32及びファンモータ34が配設されている。補助冷却装置62及び吸気ファン32の内側と外側とは開放されており、外気が穀物保管庫本体14の内部へ入るようになっている。また、吸気口64には、吸気シャッタ40が配設されている。また、排気口66にも同様に排気シャッタ42が配設されている。
【0029】
なお、第2の実施の形態の作用は、第1の実施の形態の作用と同様であるので、説明を省略する。
【0030】
第2の実施の形態に係る穀物保管庫10によれば、補助冷却装置62及び吸気ファン32を穀物保管庫本体14の側面に配設することにより、穀物保管庫本体14の天井部分を平坦にすることができ、穀物保管庫10の上部空間を有効に使うことができる。
【0031】
なお、上記の実施の形態では、補助冷却装置が作動するための基準温度である庫内の適正温度が12℃である例を説明したが、貯蔵する農産物が玄米以外である場合には、その農産物の貯蔵に適した温度を基準として補助冷却装置を作動させてもよい。
【0032】
また、吸気シャッタ及び排気シャッタを開放状態にし、吸気ファンを回転させるための条件が、外気温が庫内の気温より5℃高い気温より低いことである例を説明したが、これに限定されるものではなく、特に、補助冷却装置の能力が高い場合には、庫内の温度よりその冷却能力に応じた温度だけ高い温度より外気温が低い場合に、吸気シャッタ及び排気シャッタを開放状態にし、吸気ファンを回転させてもよい。
【0033】
また、コントローラ48は、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている例を説明したが、回路によってコントローラ48の機能を実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る穀物保管庫の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る穀物保管庫の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る穀物保管庫のコントローラが実行する運転プログラムのフローチャートである。
【図4】外気温の変化と、本発明の第1の実施の形態に係る穀物保管庫の制御による内気温の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る穀物保管庫の概略全体構成図である。
【符号の説明】
【0035】
10、60 穀物保管庫
14 穀物保管庫本体
32 吸気ファン
40 吸気シャッタ
42 排気シャッタ
44 外気温検出センサ
46 内気温検出センサ
48 コントローラ
50、62 補助冷却装置
52、64 吸気口
54、66 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入口及び内気排出口を備えた穀物を保管するための断熱構造の箱状の穀物保管庫本体と、
前記穀物保管庫本体の外部の気温を検出する外気温検出手段と、
前記穀物保管庫本体内の気温を検出する内気温検出手段と、
外気を前記外気導入口から取り込み、内気排出口から排出することにより、外気を前記穀物保管庫本体内に循環させる外気循環手段と、
前記外気導入口から取り込まれる外気を冷却する冷却手段と、
前記外部の気温に対する前記穀物保管庫本体内の気温の差が所定温度未満の場合に、外気循環手段を作動させて前記外気を循環させ、前記差が前記所定温度未満で、かつ前記穀物保管庫本体内の気温が穀物保管に適した気温より高くなった場合に、前記冷却手段を作動させて冷却された外気を循環させるように制御する制御手段と、
を有する穀物保管庫。
【請求項2】
前記制御手段は、前記差が前記所定温度より高い場合に、前記外気を前記穀物保管庫本体内に循環させないように前記外気循環手段を制御する請求項1に記載の穀物保管庫。
【請求項3】
前記外気循環手段は、前記差が前記所定温度未満の場合に、前記外気導入口を開放する第1開放手段及び前記内気排出口を開放する第2開放手段を備え、
前記制御手段は、前記差が前記所定温度より高い場合に、第1開放手段及び第2開放手段を閉止状態にするように前記外気循環手段を制御する請求項1又は2に記載の穀物保管庫。
【請求項4】
前記冷却手段は、ペルチェ素子である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の穀物保管庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−29707(P2006−29707A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210755(P2004−210755)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000144898)株式会社山本製作所 (144)
【Fターム(参考)】