説明

空圧緩衝器

【課題】安価なコストで、貯油室内の潤滑油が軸受とピストンロッドとの摺動部分からロッド側室へ漏れるのを防止できる軸受構造を備えた空圧緩衝器を提供する。
【解決手段】シリンダ3の開口端部にピストンロッド6を案内するロッドガイド12を設け、このロッドガイド12の上面に、上記ピストンロッド6に摺接してこれらの間をシールする内周リップ15を備えたメインシール13を載置すると共に、ロッドガイド12に設けた貯留凹部18、上記メインシール13、及び上記ピストンロッド6とで貯油室Sを画成した空圧緩衝器において、上記内周リップ15にロッドガイド12と当接することで、上記貯油室S内の潤滑油Oがロッドガイド12とピストンロッド6との隙間を介して上記ロッド側室40へ漏れるのを防止する遮断リップ16を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空圧緩衝器に係わり、詳しくは自動車や産業車両等の車両のサスペンション装置に使用可能な空圧緩衝器のバルブ構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空圧緩衝器としては、種々の構造のものを例示することができるが、車両のサスペンション装置に使用される空圧緩衝器としては、特許文献1に示すものを例示することができる。
【0003】
即ち、図2に示すように、筒状に形成されたシリンダ42の上下端は、それぞれヘッド部材(本願発明のロッドガイドに該当)43とボトム部材44によって閉塞されると共に、シリンダ42内に摺動自在に挿入されるピストン45によってこのシリンダ42内がロッド側室40とピストン側室50とに区画されている。
【0004】
上記ヘッド部材43は環状に形成され、その内周にはピストンロッド51を軸支する軸受46を備えると共に、上端側から開口する貯留凹部47が設けられている。
【0005】
上記シリンダ42はシリンダ42の外方に配置される有底筒状の外筒41によって覆われており、この外筒41の図中の上端である開口端部には、内周側で環状シール(本願発明の内周リップに該当)48を保持する封止部材(本願発明のメインシールに該当)49が上記ヘッド部材43に積層された状態で固定されている。
【0006】
そして、上記封止部材49から突出している環状シール48の下端は、ヘッド部材43の貯留凹部47内に配置されており、この貯留凹部47、封止部材49、及びピストンロッド51で貯油室Sが画成されている。
【0007】
上記環状シール48の内周側にはシリンダ42から突出する上記ピストンロッド51が、ヘッド部材43の上記軸受46内に摺動自在に挿入され、この環状シール48は所定の緊迫力でピストンロッド51の外周面に圧接されている。
【0008】
従って、上記ピストンロッド51は貯油室Sを貫いており、この貯油室Sはピストンロッド51と環状シール48との摺動部に臨むようになっている。
【0009】
更に、貯油室Sは、ヘッド部材43に設けたロッド側通路52によってロッド側室40に連通されると共に、他のリザーバ側通路53によってリザーバ室R内に連通されている。
【0010】
上記ボトム部材44には、ピストン側室50とリザーバ室Rとを連通する通路54が設けられ、この通路54の途中には、ピストン側室50からリザーバ室Rへの流れのみを許容する逆止弁55が設けられている。
【0011】
そして、シリンダ42内には作動気体としてのガスGが封入されると共に、貯油室S内及びリザーバ室R内には潤滑油Oが充填されるが、貯油室S内の油面が、貯油室S内のガスG圧力とリザーバ室R内のガスG圧力とのバランスによって環状シール48の最下端より下方に下がらないような配慮のもと、リザーバ室R内には充分な量の潤滑油Oが充填されている。
【0012】
又、ロッド側室40及びピストン側室50内にも少量の潤滑油Oが注入されるが、ロッド側室40内に注入される潤滑油Oは、空圧緩衝器が伸縮作動を始めて行うときに、シリンダ42とピストン45との間を潤滑するためであり、ピストン側室50内の潤滑油Oは空圧緩衝器の収縮時、リザーバ室R内にガスGより先んじて潤滑油Oを供給して貯油室S内の油面の下降を防止するためである。
【特許文献1】特開2007−16880号公報(図2及び段落番号0032〜0043)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように構成された空圧緩衝器では、上記貯油室S内の油面が、貯油室S内のガスG圧力とリザーバ室R内のガスG圧力のバランスによって環状シール48の最下端より下方に下がらないように、上記リザーバ室R内に充分な量の潤滑油Oが充填されており、環状シール48がガスGと直接接触することで、この環状シール48とピストンロッド51との圧接部分から上記ガスGが大気側へ漏れるのを防止している。
【0014】
ところが、上記ピストンロッド51を軸支する軸受46の加工精度が悪い場合や、ピストンロッド51表面の面粗度が粗い場合と言った部品加工誤差が生じたときには、これらの部品を使用した空圧緩衝器を不使用状態或いは非作動状態で長期間放置しておくと、上記潤滑油Oが、この軸受46内周面と、ピストンロッド51外周面との僅かな隙間を通過してロッド側室40へ漏れることが考えられる。
【0015】
この場合には、上記油面が環状シール48の最下端より下方に下がり、環状シール48がガスGと直接接触し、上記した環状シール48とピストンロッド51との圧接部分から上記ガスGが大気側へ漏れることが考えられる。
【0016】
そこで、上記軸受46にOリング等のシール部材を配置して上記潤滑油Oがロッド側室40へ漏れるのを防止すると言う提案も考えられるが、実際問題として、ピストンロッド51との摺動部分である軸受46にシール部材を配置することは困難であり、配置するとしても相当複雑な構成にする必要があり、費用が嵩むことが考えられる。
【0017】
本発明の目的は、安価なコストで、貯油室S内の潤滑油Oが軸受とピストンロッドとの摺動部分からロッド側室へ漏れるのを防止できる軸受構造を備えた空圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明の一つの手段は、シリンダの開口端部にピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、このロッドガイドの上面に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールを載置すると共に、ロッドガイドに設けた貯留凹部、上記メインシール、及び上記ピストンロッドとで貯油室を画成し、この貯油室には上記外筒及びシリンダ間に形成されたリザーバ室からの潤滑油が供給されるリザーバ室側接続路と、この貯油室内の油をロッド側室へ供給するロッド室側接続路とを接続した空圧緩衝器において、上記内周リップにロッドガイドと当接することで、上記貯油室内の潤滑油がロッドガイドとピストンロッドとの隙間を介して上記ロッド側室へ漏れるのを防止する油漏れ遮断部材を設けたことを特徴とする。
【0019】
同じく、他の手段は、外筒の上端部内周となるシリンダの開口端部にピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、このロッドガイドの上面に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールを載置すると共に、ロッドガイドに設けた貯留凹部、上記メインシール、及び上記ピストンロッドとで貯油室を画成し、この貯油室には上記外筒及びシリンダ間に形成されたリザーバ室からの潤滑油が供給されるリザーバ室側接続路と、この貯油室内の油をロッド側室へ供給するロッド室側接続路とを接続した空圧緩衝器において、上記内周リップにロッドガイドと当接することで、上記貯油室内の潤滑油がロッドガイドとピストンロッドとの隙間を介して上記ロッド側室へ漏れるのを防止する油漏れ遮断部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記各手段に係る空圧緩衝器によれば、内周リップに対して、ロッドガイドと当接することで、貯油室内の潤滑油がロッドガイドとピストンロッドとの隙間を介して上記ロッド側室へ漏れるのを防止する油漏れ遮断部材を設けたので、例えば、加工精度が悪い内周面を持ったロッドガイドや、面粗度が粗い表面のピストンロッドと言った加工誤差の生じた部品を使用した空圧緩衝器を、不使用状態或いは非作動状態で長期間放置した場合でも、上記したロッドガイドの内周面と、ピストンロッドの外周面との隙間から貯留凹部内の潤滑油が、ロッド側室へ漏れるのを確実に防止できる。
【0021】
従って、従来例で示したように、潤滑油の油面がメインシールの最下端より下方に下がり、作動流体がメインシールと直接接触することで、上記したメインシールとピストンロッドとの圧接部分から大気側へ漏れると言ったことを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明のバルブ構造を自動車のサスペンション装置に使用する空圧緩衝器に具体化した一実施の形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態の空圧緩衝器1は、有底筒状の外筒2と、この外筒2の内側に同心的に配置されたシリンダ3と、このシリンダ3及び上記外筒2間に形成したリザーバ室Rと、上記シリンダ3内をロッド側室40とピストン側室50に区画するピストン5と、シリンダ3内にピストン5を介して移動自在に挿入されたピストンロッド6と、上記リザーバ室R及びピストン側室50を連通する連通路9と、同じく上記リザーバ室R及びロッド側室40を接続する接続路とを備え、上記ピストン側室50及びリザーバ室Rに潤滑油Oを注入すると共に、上記シリンダ3内に作動気体としてのガスGが封入されている。
【0024】
以下、更に詳述すると、外筒2の上端部内周となるシリンダ3の開口端部には、上記ピストンロッド6を案内するロッドガイド12が設けられ、このロッドガイド12の上面にはメインシール13が載置されている。
【0025】
そして、上記外筒2の上端を内側に折り曲げることでこの外筒2、メインシール13、ロッドガイド12及びシリンダ3が一体的に加締め固定されている。
【0026】
上記ロッドガイド12は、中心部に軸受としてのベアリング12aが取り付けられる案内孔17を備えた円柱状に形成されており、ベアリング12aの内周面がピストンロッドの外周面と摺接することで、このピストンロッド6を摺動自在に軸受支持すると共に、上面中央側には潤滑油Oを蓄えるための貯留凹部18が形成されている。
【0027】
上記貯留凹部18は、この貯留凹部18とメインシール13とで貯油室Sを画成すると共に、貯留凹部18には上記リザーバ室Rへ連通するリザーバ室側接続路19と、上記ロッド側室40へ連通するチェック弁20a付きロッド室側接続路20とが接続されており、リザーバ室Rの潤滑油Oが一旦、貯油室Sに蓄えられ、その後、ロッド室側接続路20を介してロッド側室40へ流出するようになっている。
【0028】
上記メインシール13は、環状のインサートメタル14と、このインサートメタル14の内周側に一体形成された環状の内周リップ15とを備えている。
【0029】
上記内周リップ15は、所謂、三重リップ構造に形成されており、最も大気側から順に、ピストンロッド6の外周面に摺接して大気側からのダストの侵入を防止するダストリップ15aと、同じくピストンロッド6の外周面に摺接して上記貯油室Sからの潤滑油Oがシリンダ3内に封入されたガスGと共に大気側へ漏れるのを防止するオイルリップ15bと、同じくピストンロッド6の外周面に摺接して貯油室Sからの潤滑油OがガスGと共にロッド側室40側へ漏れるのを防止する油漏れ遮断部材としての遮断リップ16とが一体形成されている。
【0030】
上記遮断リップ16は、上記内周リップ15と一体形成された基部16bと、同じくこの基部16bと一体形成されてピストンロッド6に向かって伸びる遮断部材としてのリップ部16aとから形成されており、リップ部16a下面が上記ロッドガイド6の案内孔17周縁部に圧接されており、貯油室S内の潤滑油Oがこの圧接部分を通過してロッド側室40へ漏れないようになっている。
【0031】
上記遮断リップ16と上記オイルリップ15bとの間にはピストンロッド6の外周面との間で断面略等脚台形状をなす油溜まり室28が形成されており、上記基部16bにはこの油溜まり室28と貯油室Sとを連通する連通孔16cが複数個設けられている。
【0032】
そして、上記リップ部16aは、ピストンロッド6の作動時にこのピストンロッド6に付着した潤滑油がO上記油溜まり室28内に掻き込まれるようなリップ形状に形成されると共に、リップ部16aの上下両側、即ち、貯油室S内及び油溜まり室28と、ロッド側室40との圧力差が所定値より大きくなったとき、弾性変形して上記貯油室S及び油溜まり室28からの潤滑油Oが、ロッドガイド12とピストンロッド6との隙間を介して上記ロッド側室40へ流れるように設計されている。
【0033】
又、上記貯油室S内には上記遮断リップ16の基部16bが浸漬する位置まで潤滑油Oが蓄えられ、上記連通孔16cを介して油溜まり室28へ潤滑油Oを導くと共に、この油溜まり室28に蓄えられた潤滑油Oによって内周リップ15とピストンロッド6との間の油膜切れを防止すると共に、空圧緩衝器1の圧行程で貯油室S内の内圧が上がった場合には、その内圧で遮断リップ16のリップ部16a下面を上記ロッドガイド12の案内孔17周縁部に圧接させてこの圧接部分のシール性を更に向上させるようになっている。
【0034】
そして、遮断リップ16の連通孔16cより上方まで溜まった余分な潤滑油Oがロッド側室40へ流出するように、ロッド室側接続路20の貯留凹部18に対する接続位置が、上記連通孔16cよりも上方位置に設定されている。
【0035】
上記ピストン5はその中心部に設けた取付孔5aをピストンロッド6の下端に形成した取付部6aに挿入してナット4で締付固定することによって取り付けられており、ピストン5の外周にはシリンダ3の内周面に摺接するピストンリング4aが嵌挿されている。
【0036】
ピストン5の背面(図1における上面を言う)にはロッド側室40とピストン側室50とを連通し、同一円周上に配置された複数の圧側連通路21と、この圧側連通路21と同一円周上に互い違いに配置された複数の伸側連通路22が夫々下面に向かって穿設されている。
【0037】
上記ピストン5の背面における圧側連通路21の出口端には後述する圧側リーフバルブ23が載置される圧側シート面24aを備えた圧側シート部24bが膨出形成されており、ピストン5の下面における伸側連通路22の出口端には、後述する伸側リーフバルブ25が載置される伸側シート面26aを備えた伸側シート部26bが膨出形成されている。
【0038】
上記圧側シート面24aにはこの圧側連通路21を開閉可能に閉塞する環状の圧側リーフバルブ23が複数枚積層載置されており、この圧側リーフバルブ23の上面に間座27を介して載置された圧側バルブストッパ37によって外周側の撓み量が規制されるようになっている。
【0039】
又、上記伸側シート面26aにはこの伸側連通路22を開閉可能に閉塞する環状の伸側リーフバルブ25が複数枚積層載置されており、この伸側リーフバルブ25の下面に間座27を介して載置された伸側バルブストッパ38によって外周側の撓み量が規制されるようになっている。
【0040】
上記圧側シート面24aの外周側にはこのシート面24aよりも低い溝底部29aを有する圧側溝部29が設けられている。
【0041】
上記圧側溝部29は、平面状の上記溝底部29aと、この溝底部29aから上方に向かって拡径する平面状の壁部29bとから構成されており、ピストン5を焼結成形によって形成する際に一体的に形成されている。
【0042】
又、伸側シート面26aの外周側にはこのシート面26aよりも低い溝底部30aを有する伸側溝部30が設けられている。
【0043】
上記伸側溝部30は、平面状の上記溝底部30aと、この溝底部30aから下方に向かって拡径する平面状の壁部30bとから構成されており、同じくピストン5を焼結成形によって形成する際に一体的に形成されている。
【0044】
そして、これら圧側及び伸側溝部29,30の存在により、圧側及び伸側バルブ23、25の外周側を撓ませて噴出した作動流体としてのガスGが、この圧側及び伸側溝部29、30に一旦導かれ、減圧してからロッド側室40又はピストン側室50に流入し、これによりガスGの圧力変化が穏やかになって上記ガスGの噴出し音の発生が抑制されるようになっている。
【0045】
尚、本実施の形態では、上記圧側及び伸側のリーフバルブ23、25が上記圧側溝部29及び伸側溝部30の上部を半分程度覆うような外径に設定されており、各リーフバルブ23、25を撓ませて噴出するガスGを確実に圧側及び伸側溝部29、30に導くことで、上記した噴出し音の抑制作用を確実に発揮させるようになっている。
【0046】
上記シリンダ3の下端にはバルブケース31が設けられており、このバルブケース31には上記リザーバ室Rとピストン側室50とを連通する上記連通路9が形成されると共に、この連通路9の途中にはピストン側室50からリザーバ室Rへと向かうガスG及び潤滑油Oの流れのみを許容するケース側逆止弁32が設けられている。
【0047】
そして、上記ロッド側室40、ピストン側室50及びリザーバ室Rには作動流体としてのガスGが封入されており、ピストン側室50及びリザーバ室Rには潤滑油Oが注入されている。
【0048】
このように構成された空圧緩衝器は、例えば、ピストンロッド6先端に設けられた図示しないロッド側アイを車体側に取り付けると共に、シリンダ3の下端に設けられたシリンダ側アイ36を車軸側に取り付けることで自動車のサスペンション装置に組み込まれる。
【0049】
続いて、その作用を説明すると、ピストンロッド6がシリンダ3内から退出する、即ち、空圧緩衝器1の伸長行程では、ロッド側室40内に封入されたガスGがピストン5に設けた伸側連通路22を通過してピストン側室50に流入すると共に、この伸側連通路22の出口端の伸側シート面26aに載置された伸側リーフバルブ25の外周側を撓ませることによって伸側減衰力が発生する。
【0050】
又、ピストンロッド6がシリンダ3内へ侵入する、即ち、空圧緩衝器1の圧縮行程では、ピストン側室50内に封入されたガスGがピストン5に設けた圧側連通路21を通過してロッド側室40に流入すると共に、この圧側連通路21の出口端の圧側シート面24aに載置された圧側リーフバルブ23の外周側を撓ませることによって圧側減衰力が発生する。
【0051】
このとき、圧側リーフバルブ23の外周を撓ませて噴出したガスGは、圧側シート面24aの外周側に形成された圧側溝部29に一旦導かれ、減圧してからロッド側室40に流入し、これにより噴出したガスGの圧力変化が穏やかになってこのガスGの噴出し音の発生が抑制される。
【0052】
そして、貯油室S内に溜まった余剰な潤滑油Oは、ロッド室側接続路20を介してロッド側室40へ流出し、ピストン5とシリンダ3との摺接部分に付着して摺動性を向上させる。
【0053】
又、ピストン側室50に注入された潤滑油Oはバルブケース31に設けられた上記連通路9を通過してリザーバ室Rに流れ込み、その後、上記ロッドガイド12に設けたリザーバ室側接続路19を介して上記貯油室Sへ導かれる。
【0054】
なお、空圧緩衝器1の圧縮行程において、ピストン側室50内に封入されたガスGがピストン5に設けた圧側連通路21を通過してロッド側室40に流入することから明らかなように、連通路9、リザーバ室R、リザーバ室側接続路19およびロッド側室側接続路20の少なくとも一つ以上は、ガスGおよび潤滑油Oの流れに圧側リーフバルブ23より大きな抵抗を与えるが、この抵抗はピストン側室50からリザーバ室Rを介してロッド側室40へ至る間に弁を設けて与えるようにしてもよいし、ピストン側室50からリザーバ室Rを介してロッド側室40へ至る間の管路抵抗で与えてもよく、具体的にはたとえば、チェック弁20a或いはケース側逆止弁32或いはその両方をリーフバルブとしたり、連通路9、リザーバ室側接続路19およびロッド側室側接続路20の流路面積を小さくしたり、リザーバ室Rの環状の断面積を極小さくするようにしてもよい。
【0055】
以上、詳述したように、本実施の形態の空圧緩衝器1においては、内周リップ15に対して、この内周リップ15と一体形成された基部16bと、この基部16bと一体形成されてピストンロッド6に向かって伸びるリップ部16aとからなる遮断リップ16を一体形成すると共に、上記リップ部16a下面を、上記ロッドガイド6の案内孔17周縁部に圧接させることで、貯油室S内の潤滑油Oがこの圧接部分を通過してロッド側室40へ漏れないようしたので、例えば、加工精度が悪いベアリング12aや、面粗度が粗い表面のピストンロッド6と言った加工誤差の生じた部品を使用した空圧緩衝器1を、不使用状態或いは非作動状態で長期間放置した場合でも、上記したベアリング12a内周面と、ピストンロッド6外周面との隙間から貯油室S内の潤滑油Oが、ロッド側室40へ漏れるのを確実に防止できる。
【0056】
従って、従来例で示したように、潤滑油Oの油面がメインシール13の最下端より下方に下がり、ガスGがメインシール13と直接接触することで、上記したメインシール13とピストンロッド6との圧接部分から大気側へ漏れると言ったことを確実に防止できる。
【0057】
又、遮断リップ16は、内周リップ15の成形時に一体的に形成されているので、安価に製造可能であると共に、一般的な空圧緩衝器に使用する場合でも、上記内周リップ15を交換するだけで済むので、従来例で示したようなベアリング部分に加工を加えることで上記作用と同様の作用を発揮させようとする場合に比較し、簡単且つ、安価に具体化可能である。
【0058】
又、遮断リップ16と、オイルリップ15bとの間に油溜まり室28を形成し、この油溜まり室28を上記貯油室Sと連通させたので、オイルリップ15bに対して確実に潤滑油Oを供給してシール性を確保できると共に、オイルリップ15bが直接、ガスGと接触することも防止できるので、上記したガスGの大気側への漏れも確実に防止できる。
【0059】
更には、空圧緩衝器1の圧縮行程で貯油室S内の内圧が上がった場合には、その内圧が油溜まり室28を介して遮断リップ16のリップ部16aに伝達され、このリップ部16aを下方に変形させるので、リップ部16a下面が上記ロッドガイド12の案内孔17周縁部に圧接し、この圧接部分のシール性が更に向上する。
【0060】
又、遮断リップ16のリップ部16aの形状を、ピストンロッド6の作動時に、このピストンロッド6に付着した潤滑油Oが上記油溜まり室28内に掻き込まれるようなリップ形状としたので、油溜まり室28に確実に作動油Oを溜めておくことができる。
【0061】
更には、上記リップ部16aの上下両側、即ち、貯油室S及び油溜まり室28と、ロッド側室40との圧力差が設定値より大きくなったとき、弾性変形して上記貯油室S及び油溜まり室28からの潤滑油Oが、ロッドガイド12とピストンロッド6との隙間を介して上記ロッド側室40へ流れるように設計したので、リップ部16a自体の耐久性も確保できる。
【0062】
又、遮断リップ16の基部16bに設けた連通孔16cよりも上方に位置するように上記ロッド側室接側通路20を配置したので、貯油室S内の潤滑油Oを確実に油溜まり室28内に導くことができる。
【0063】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、以下のように変更することも可能である。
【0064】
(1)本実施の形態では、油漏れ遮断部材として遮断リップ16を用いたが、このリップ形状に限定されるものではなく、リップ以外の形状としても良い。
【0065】
(2)本実施の形態では、遮断リップ16を内周リップ15と一体成形したが、これに限定されるものではなく、遮断リップ16のみを別に成形しておいて、接着や嵌合等の任意に方法によって内周リップ15に接合するようにしても良い。
【0066】
(3)本実施の形態では、外筒2、リザーバ室R,接続路19を設けたものについて説明したが、これらの部材が無い単筒式の空圧緩衝器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態を示す空圧緩衝器の断面図である。
【図2】従来例を示す空圧緩衝器の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 空圧緩衝器
2 外筒
3 シリンダ
6 ピストンロッド
12 ロッドガイド
13 メインシール
15 内周リップ
16 遮断リップ(油漏れ遮断部材)
16a リップ部(遮断部材)
16b 基部
16c 連通孔
18 貯留凹部
19 リザーバ室側接続路
20 ロッド室側接続路
40 ロッド側室
O 潤滑油
R リザーバ室
S 貯油室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの開口端部にピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、このロッドガイドの上面に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールを載置すると共に、ロッドガイドに設けた貯留凹部、上記メインシール、及び上記ピストンロッドとで貯油室を画成した空圧緩衝器において、上記内周リップにロッドガイドと当接することで、上記貯油室内の潤滑油がロッドガイドとピストンロッドとの隙間を介して上記ロッド側室へ漏れるのを防止する油漏れ遮断部材を設けたことを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項2】
外筒の上端部内周となるシリンダの開口端部にピストンロッドを案内するロッドガイドを設け、このロッドガイドの上面に、上記ピストンロッドに摺接してこれらの間をシールする内周リップを備えたメインシールを載置すると共に、ロッドガイドに設けた貯留凹部、上記メインシール、及び上記ピストンロッドとで貯油室を画成し、この貯油室には上記外筒及びシリンダ間に形成されたリザーバ室からの潤滑油が供給されるリザーバ室側接続路と、この貯油室内の油をロッド側室へ供給するロッド室側接続路とを接続した空圧緩衝器において、上記内周リップにロッドガイドと当接することで、上記貯油室内の潤滑油がロッドガイドとピストンロッドとの隙間を介して上記ロッド側室へ漏れるのを防止する油漏れ遮断部材を設けたことを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項3】
上記油漏れ遮断部材は、上記内周リップと一体形成された基部と、同じくこの基部と一体形成されてピストンロッドに向かって伸びる遮断部材とから形成されており、内周リップ、基部、遮断部材及びピストンロッドで画成された油溜まり室と、上記貯油室とを上記基部に設けられた連通孔を介して連通している請求項2記載の空圧緩衝器。
【請求項4】
上記連通孔は、上記ロッド室側接続路よりも下方に位置するように配置されている請求項2記載の空圧緩衝器。
【請求項5】
上記遮断部材はピストンロッドの作動時にこのロッドに付着した潤滑油が上記油溜まり室内に掻き込まれるようなリップ形状に形成されている請求項3記載の空圧緩衝器。
【請求項6】
上記遮断部材はその上下両側の圧力差が設定値より大きくなったとき、弾性変形して上記油溜まり室内の潤滑油がロッドガイドとピストンロッドとの隙間を介して上記ロッド側室へ流れるよう設計されている請求項3記載の空圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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