説明

窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法

【課題】 大粒径の窒化アルミニウム焼結顆粒を工業的に製造することを可能とする窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する樹脂組成物を押出成形して、好ましくは、直径が300〜1000μmのストランド状グリーン体に成形後、該ストランド状グリーン体を、好ましくは、ストランド状グリーン体の直径に対して、0.3〜3倍の長さに切断加工してグリーン片を得、次いで、得られたグリーン片を、例えば、1500〜2000℃で焼成して窒化アルミニウム焼結顆粒を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム焼結顆粒の新規な製造方法に関する。詳しくは、大粒径の窒化アルミニウム焼結顆粒を工業的に製造することを可能とする窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム( 以下、「AlN」と略記することもある。)は、熱伝導性、機械的強度および電気絶縁性に優れた特性を持つ無機物質として知られており、放熱性が要求される半導体基板や、放熱性フィラー等、放熱機能性材料として多方面に使用されつつある。
【0003】
AlNの製法としては、例えば、アルミナと炭素との混合物を窒素中で加熱するアルミナ還元法(例えば、特許文献1参照)、アルミニウムと窒素とを反応させる直接窒化法(例えば、特許文献2参照)、アルキルアルミニウムとアンモニアとを気相で反応させるアルキルアルミ法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。これらの方法で得られるAlNは、いずれも数μm以下の粉末である。
【0004】
一方、上記AlNを放熱性材料、例えば、放熱性フィラーとして樹脂に充填して使用する場合、樹脂への充填密度を向上させて放熱性を高めるため、上記AlN粉末を数百μm〜数mm程度の顆粒体にまで大粒子化することが求められている。
【0005】
上記技術的要求に対して、例えば、AlN粉末、有機バインダーおよび焼結助剤を有機溶剤に混合してスラリーを調製し、このスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥してAlNの顆粒を得、この顆粒を非酸化性雰囲気中にて1600〜1900℃で焼成する方法(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
【0006】
これらの方法で得られるAlNの焼結顆粒は、樹脂に充填してシート状など、用途に応じた形状に成形されて、放熱性材料として使用される。そして、代表的な形態であるシート状に成形されたものは、放熱性シートとして、半導体素子等の発熱体とヒートシンク等の放熱部材の層間に配置されて使用される。
【0007】
しかしながら、昨今の半導体の小型化、高機能化に伴って、電気部品からの発熱量は増大する傾向にあり、そのため、AlN顆粒の大きさは、前記した従来の大粒子化技術では製造が困難な、数百μm程度を超える大きさのAlN焼結顆粒が求められるようになってきた。即ち、樹脂に充填する放熱性フィラーの大粒径化は、個々の粒子間に存在する樹脂による熱抵抗を減少せしめることを意図するものであり、究極的には、半導体素子等の発熱体とヒートシンク等の放熱部材の層間に、樹脂を結合材としてAlN顆粒を配列する態様が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2826023号公報
【特許文献2】特許第2680681号公報
【特許文献3】特許第2726703号公報
【特許文献4】特開2003−267708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、従来の方法によって製造することが困難であった、大粒径、例えば、500μm以上のAlN焼結顆粒を工業的に有利な方法により製造することが可能な、AlN焼結顆粒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する樹脂組成物を、目的とする顆粒の大きさに合う、極めて細いストランド状グリーン体に押出成形により成形し、これを所定の大きさに切断することによって、グリーン片とし、これを焼成することにより、AlN焼結顆粒における所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する樹脂組成物を押出成形してストランド状グリーン体に成形後、該ストランド状グリーン体を切断加工してグリーン片を得、次いで、得られたグリーン片を焼成することを特徴とする窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法である。
【0012】
また、本発明の上記方法において、焼結助剤としては酸化イットリウムが、熱可塑性樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂が好適に使用される。
【0013】
更に、本発明の上記方法において、前記ストランドグリーン体は、直径が300〜1000μmであり、該ストランド成形体を切断加工における切断長が、該ストランドグリーン体の断面積より算出される円相当直径に対して、0.3〜3倍の長さとすることにより、従来に無い、大粒径のAlN焼結顆粒を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のAlN焼結顆粒の製造方法によれば、従来の方法によっては製造が困難であった、球相当直径が250μm、特に、500μmを超える大粒径のAlN焼結顆粒を工業的に製造することができる。
【0015】
そして、上記得られたAlN焼結顆粒は、切断において、切断長さを一定とすることにより、極めてシャープな粒度分布を有するものを得ることができるというメリットをも有する。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、従来のAlN焼結顆粒の製造方法よりも簡便に大粒径の成形体を造粒することが可能であり、本発明のAlN焼結顆粒を低コストで製造できる。
【0017】
尚、AlN焼結体顆粒をかかる方法で得る試みは、本発明者らによって初めて成されたものであり、従来の焼結顆粒の製造方法を大きく改革するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔窒化アルミニウム粉末〕
本発明において、前記樹脂組成物の製造に用いられる窒化アルミニウム粉末は、直接窒化法やアルミナ還元法等の公知の方法で製造されたもの、またはこれらの混合物が特に制限なく使用できる。最終的に得られる窒化アルミニウム焼結顆粒が良好な焼結性を有する点では、還元窒化法で得られた窒化アルミニウム粉末が好ましい。
【0019】
また、上記窒化アルミニウム粉末の不純物については、特に制限はないが、得られるAlN焼結顆粒の熱伝導性を十分高めるために、酸素、陽イオン等の不純物が少ないものが好ましい。例えば、酸素含有量が好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは0.4重量%〜1.3重量%の範囲であり、陽イオン不純物の含有量が好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下であることが好ましい。このような窒化アルミニウム粉末を原料とした場合には、焼結性に優れた窒化アルミニウム焼結顆粒を得ることができる。
【0020】
上記窒化アルミニウム粉末の平均粒子径についても、特に制限されないが、通常1μm〜10μm、好ましくは1μm〜5μm、最も好ましくは1μm〜3μmである。窒化アルミニウム粉末の平均粒子径を上記範囲内とすることにより、焼結性に優れた窒化アルミニウム焼結顆粒が得られるため好ましい。
【0021】
〔焼結助剤〕
本発明の焼結顆粒の製造に用いられる焼結助剤は、公知の焼結助剤が用いられ、一般的には、アルカリ土類金属又は希土類元素の酸化物から選ばれる。上記アルカリ土類金属元素としては、一般にベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が用いられ、特にカルシウム、ストロンチウム、バリウムが好適に用いられる。また、希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、ブラセオシウム、ネオジウム、プロメシウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が用いられ、特にイットリウム、ランタン、セリウム、ネオジウムが好適に用いられる。
【0022】
また、上記焼結助剤は、通常前記した金属の酸化物が用いられるが、窒化アルミニウム顆粒が焼結される条件下で、該金属酸化物を形成する金属化合物、例えば、硝酸塩、炭酸塩、塩化物等として用いることもできる。
【0023】
また、上記希土類金属化合物とアルカリ土類金属化合物とは併用しても良く、さらに、それぞれ数種類を用いても良い。
【0024】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において、焼結顆粒の製造に用いる熱可塑性樹脂は、公知のものが何等制限なく使用できる。具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン樹脂などの炭化水素系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニルなどの極性ビニル系樹脂、ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレン・ブタジエン系,ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、アイオノマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる群より選ばれる熱可塑性樹脂は、窒化アルミニウム粉末と優れた化学親和性を有し、押出成形等の熱成形性、脱脂性が良好である点で好ましい。
【0026】
〔樹脂組成物〕
本発明において、樹脂組成物は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤および熱可塑性樹脂を溶融混練することによって得られる。
【0027】
上記溶融混練において、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂の配合比率は特に限定されず、押出成形用の樹脂組成物として、公知の組成が特に制限無く採用される。
【0028】
例えば、得られる樹脂組成物において、焼結助剤は、酸化物換算で窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、0.05〜10重量部、好ましくは1〜6重量部の範囲で用いることが好ましく、かかる範囲内で、窒化アルミニウム粉末中の酸素含有量、不純物含有量、粒子径等を勘案して好適な配合量を適宜決定すればよい。
【0029】
また、熱可塑性樹脂は、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、5〜20量部、好ましくは、8〜15量部の割合になるように調整することが成形性、脱脂性、得られる焼結顆粒の物性も良好となり好ましい。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物は、その他成分として、界面活性剤、可塑剤、滑剤、さらに、脂肪族アミン等の解膠剤、鉱油、椰子油等の油等をさらに含有していてもよい。
【0031】
〔界面活性剤〕
本発明において好適に用いられる界面活性剤を具体的に例示すると、カルボキシル化トリオキシエチレントリデシルエーテル、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノステアレート、カルボキシル化ヘプタオキシエチレントリデシルエーテル、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
【0032】
上記界面活性剤は、前記したものが特に制限なく用いることができ、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、通常0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.02重量部〜3.0重量部の範囲の量で使用することができる。
〔可塑剤〕
上記可塑剤としては、特に制限は無く、具体的には、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルステアレート、トリクレゾールフォスフェート、トリ−N−ブチルフォスフェート、グリセリンなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記可塑剤は、前記したものが特に制限なく用いることができ、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。
〔滑剤〕
上記滑剤としては、特に制限はなく、具体的には、パラフィン等の石油系ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸及びそれらのエステル等が挙げられる。
【0034】
上記滑剤は、前記したものが特に制限なく用いることができ、窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。
【0035】
上記樹脂組成物及びこれを使用して得られるグリーン片は、前記組成により、2.20〜2.80g/cm、特に、2.35〜2.60g/cmという高い密度を達成することが可能であり、これにより、グリーン片の強度が高くなり、また、脱脂、焼結時の寸法安定性も向上する。
【0036】
本発明の樹脂組成物を押出成形に供する際、該樹脂組成物は、120℃、せん断速度100(1/S)での粘度が、50〜10000Pa・sの範囲にあることが好ましく、100〜6000Pa・sであることがさらに好ましい。粘度が上記範囲にあると、押出成形性が良好となりグリーン片の強度も高い。
【0037】
本発明の樹脂組成物の上記粘度は、例えば、使用される窒化アルミニウム粉末の粒径や比表面積、充填量を勘案し、熱可塑性樹脂の種類や分子量、可塑剤、滑剤の量を増減させることにより調整させることができる。
〔樹脂組成物の調整方法〕
本発明において、樹脂組成物は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂、その他の成分を、公知の混練装置により溶融混練して得られる。かかる混練装置としては、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ディスクニーダー、連続式混練機等を挙げることができる。例えば、加圧ニーダーにより混練する場合、温度50〜200℃、好ましくは70〜150℃、時間5分〜3時間、好ましくは10分〜2時間の条件下で行うことができる。
【0038】
前記混練装置への原料の供給は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂、その他の成分を一度に全量仕込んで加圧混練してもよく、それら成分の一部を加圧混練した後、残余の原料を仕込んでさらに加圧混練してもよい。
【0039】
[樹脂組成物を用いたグリーン片及びAlN焼結顆粒の製造方法]
本発明において、AlN焼結顆粒は、前記樹脂組成物を押出成形してストランド状グリーン体に成形後、該ストランド状グリーン体を切断加工してグリーン片を得、次いで、得られたグリーン片を1600〜1900℃で焼成することにより得ることができる。
【0040】
上記押出成形により成形されるストランド状グリーン体の大きさは、特に制限されないが、本発明の特徴を十分に発揮する大きさは、断面積が、70000〜800000μm(円形の場合、直径300〜1000μmに相当)、特に、70000〜400000μm(円形の場合、直径300〜700μmに相当)の場合である。
【0041】
また、ストランド状グリーン体の断面形状は、円形が一般的であるが、楕円形、多角形、長方形等の形状も特に制限なく採用される。
【0042】
本発明において、押出成形には、公知の1軸あるいは2軸押出成形機および公知の金型を使用することができる。また、押出成形条件は、グリーン体の直径や使用する押出成形機の能力に応じて異なるが、一般には押出圧力0.5〜100MPa、好ましくは1〜50MPa、押出速度1〜300mm/秒、好ましくは5〜200mm/秒、シリンダー温度50〜300℃、好ましくは50〜200℃とすることができる。
【0043】
また、得られたストランド状グリーン体の切断加工は、ペレタイザー等公知の樹脂ペレット製造装置を使用することができる。また、切断加工方法は、ダイの出口で押出直後に切断加工するホットカット方式であってもよいし、空冷後や水冷後に切断加工するコールドカット方式であってもよいが、得られるグリーン片の形状安定性を考慮すると、コールドカット方式がより好ましい。
【0044】
上記ストランド状グリーン体の切断加工において、ストランド状グリーン体の切断長は、特に制限されないが、顆粒を得る目的より、ストランド状グリーン体の断面積より算出される円相当直径に対して、0.3〜3倍、特に、0.5〜2倍となるように調整することが好ましい。また、切断方法は、所望のグリーン片サイズとなるように適宜決定すれば良く、例えば、切断刃の作動周期、ストランドの引き取り速度等により調整することができる。
【0045】
本発明において、上記切断加工により得られたグリーン片は、必要に応じて脱脂(脱有機成分)後、焼成される。ここで、前記熱可塑性樹脂として熱分解性に優れるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いた場合、脱脂を省略することも可能である。
【0046】
上記脱脂を行う場合、その条件は、常圧雰囲気、加圧雰囲気、減圧雰囲気等での加熱による方法、溶剤等による抽出による方法、および加熱と抽出とを組み合わせた方法等、公知の手法により行うことができる。
【0047】
また、脱脂は、常圧雰囲気にて、空気中、窒素中、水素中等の任意の雰囲気で加熱することにより行うことが好ましいが、残留炭素量および残留酸素量の調整がし易い、空気中で脱脂を行うことがさらに好ましい。また、脱脂温度は、通常200〜900℃、好ましくは300〜600℃である。
【0048】
本発明において、前記焼成条件は、公知の条件が特に制限無く採用されるが、アルゴン、窒素などの中性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0049】
上記焼成には、焼成用の容器として、非カーボン製、例えば、窒化アルミニウム焼結体、窒化ホウ素成形体等の容器を使用し、該容器中に上記グリーン片又はその脱脂体を収納して焼結を行うことができる。また、上記焼成において、焼成時にグリーン片又はその脱脂体同士の固着を防止するため、窒化ホウ素粉末を離型材として粒子間に存在させた状態で焼結を行うことも好ましい態様である。かかる態様において、固着防止に使用した窒化ホウ素は、焼成後、得られるAlN焼結顆粒との粒径差を利用して、篩い分け等の分離手段により製品より容易に分離することができる。また、上記焼成において、焼成時にグリーン体又はその脱脂体同士の固着を防止するため、窒化ホウ素粉末を離型材として粒子間に存在させずに焼結を行った場合は、焼成後、得られるAlN焼結顆粒を、振動式振とう機や音波式振とう機等、公知の振とう機を用いることにより、固着した焼結顆粒同士を分離させることが出来る。
【0050】
上記焼成は、温度1500〜2000℃、好ましくは1600〜1900℃で、少なくとも1時間、特に3時間以上実施することが好ましい。焼成時間の上限は特に制限はされないが、通常は5時間程度である。また、上記焼成時の雰囲気は、中性或いは還元性雰囲気が好ましい。
【0051】
〔後処理〕
本発明のAlN焼結顆粒は、必要に応じて、公知の後処理を行うことができる。例えば、粒径をよりシャープにするために篩等による分級操作、形状を整えるための研磨処理、耐水性の付与処理などを挙げることができる。
【実施例】
【0052】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
<焼結助剤および窒化アルミニウム粉末の粒度分布>
窒化アルミニウム粉末をホモジナイザーにてピロリン酸ソーダ中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて平均粒子径(D50)を測定した。
【0054】
<窒化アルミニウム粉末の陽イオン不純物含有量>
陽イオン不純物含有量(金属元素濃度)は、窒化アルミニウム粉末をアルカリ溶融後、酸で中和し、島津製作所製「ICP−1000」を使用して溶液のICP発光分析により定量した。
【0055】
<窒化アルミニウム粉末の酸素含有量>
酸素含有量(酸素濃度)は、堀場製作所製「EMGA−2800」を使用して、グラファイトるつぼ中での高温熱分解法により発生したCOガス量から求めた。
【0056】
・熱可塑性樹脂
ポリブチルメタクリレート(PBMA)(三洋化成工業株式会社製CB−1)
・焼結助剤
酸化イットリウム(日本イットリウム製高純度酸化イットリウム(純度99.9%以上)、平均粒子径(D50):1.5μm、比表面積:12.5m/g)
・窒化アルミニウム粉末
窒化アルミニウム粉末(株式会社トクヤマ製Hグレード、平均粒子径(D50):1.25μm、酸素含有量:0.8重量%、陽イオン不純物含有量Ca:220ppm、Si:45ppm、Fe:15ppm)
・可塑剤
フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(シージーエスター株式会社製DOP)
・滑剤
ステアリン酸(日本油脂株式会社製ステアリン酸つばきシリーズ)
グリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製リケマールS−100)
(実施例1)
ポリブチルメタクリレート100重量部、酸化イットリウム60重量部、ステアリン酸2重量部をニーダー(入江商会製卓上型ニーダーPBV−0.1型)に投入し、140℃で10分予備混練した。これら原料の合計の仕込み量は、ミキサー混練容量に対して70容量%となるように調整した。
【0057】
次いで、窒化アルミニウム粉末100重量部、前記予備混練物14重量部、ステアリン酸2部、グリセリン脂肪酸エステル1部、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)5重量部を卓上型ニーダーに投入し、120℃で20分混練した。
【0058】
得られた混練物を真空押出成形機(宮崎鉄工製 FM−20)120℃にて造粒し、ペレット状の樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、真空押出成形機に投入し、直径300μmのストランド状グリーン体を得た。上記真空押出成形機において、シリンダー温度は110℃とし、押出圧力は2MPa、押出速度16mm/secであった。
【0059】
得られたストランド状グリーン体をペレタイザー(星プラスチック製ファンカッター)によって円柱高さが300μmとなるように切断加工してグリーン片を得た。得られた円柱状のグリーン片を、空気雰囲気下、10℃/時間の速度で昇温して530℃で4時間脱脂し、窒素雰囲気下、1800℃で5時間焼成を行い、焼結顆粒を得た。得られた焼結顆粒を篩分けした結果、250〜300μmの焼結顆粒の収率は86%であった。
【0060】
(実施例2)
実施例1において、直径600μmのストランド状グリーン体を作製し、得られたストランド状のグリーン体を、ペレタイザーによって円柱高さが600μmとなるように切断加工してグリーン片を得たこと以外は、実施例1と同様にして焼結顆粒を得た。得られた焼結顆粒を篩分けした結果、500〜600μmの焼結顆粒の収率は88%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、窒化アルミニウム粉末及び焼結助剤を含有する樹脂組成物を押出成形してストランド状グリーン体に成形後、該ストランド状グリーン体を切断加工してグリーン片を得、次いで、得られたグリーン片を焼成することを特徴とする窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法。
【請求項2】
上記焼成温度が、1500〜2000℃である請求項1記載の窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法。
【請求項3】
焼結助剤が酸化イットリウムであり、熱可塑性樹脂が、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体よりなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である、請求項1又は2記載の窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法。
【請求項4】
ストランドグリーン体の断面積が70000〜800000μmであり、該ストランド成形体を切断加工における切断長が、該ストランドグリーン体の断面積より算出される円相当直径に対して、0.3〜3倍の長さである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化アルミニウム焼結顆粒の製造方法。

【公開番号】特開2013−60322(P2013−60322A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199399(P2011−199399)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】