説明

立体撮影光学系、交換レンズ装置、カメラシステム

【課題】矩形状の1つの撮像素子上に、相互に干渉のない2つの光学像を並べて形成することができ、レンズ交換式デジタルカメラシステムにも適用可能な立体撮像光学系を提供する。
【解決手段】立体撮像光学系2は、並列に配置される一対のレンズ系3R及び3Lと、これらの物体側に配置される視野絞り4とを備える。レンズ系3R及び3Lは、被写体の光学像を撮像領域11R及び11Lにそれぞれ形成する。視野絞り4は、レンズ系3R及び3Lの前面に配置される開口を有し、レンズ系3Rに入射する光束のうち、撮像領域11Lに入射する光束のみを遮光すると共に、レンズ系3Lに入射する光束のうち、撮像領域11Rに入射する光束のみを遮光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元画像の撮像に用いられる立体撮像光学系、これを用いた交換レンズ装置及びカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元画像を表示可能な表示装置が脚光を浴びている。3次元画像の再現方法としては、原理の異なるいくつかのものが知られているが、左右の目に視差のある画像を提示することによって、立体画像を知覚させる手法が現在主流である。3次元画像を再現するための画像は、左右の角度差(視差)のある一対の画像を同時に形成可能な光学系を用いて撮像される(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、一対の像形成レンズと複数のミラーとを用いて、フィルム面上に視差のある画像を並べて結像できる光学系が記載されている。
【0004】
特許文献2には、一対のレンズと複数のミラーとの配置を変更することによって、2次元画像および3次元画像の両方を撮影できるカメラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0114231号明細書
【特許文献2】米国特許第6269223号明細書
【特許文献3】特開2000−338412号公報
【特許文献4】特許第2627598号公報
【特許文献5】実開昭51−163940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載の光学系では、フィルムの現像後に得られる写真を立体視できるようにするため、ミラーを用いて左右の画像を入れ替えている。しかしながら、ミラーを複数用いることによって、光学系の構成が複雑化し、構成サイズも大きくなってしまう。また、特許文献1のように、一対のレンズを並列に配置した場合、それぞれのレンズによって形成される像同士が干渉するという問題が生じる。
【0007】
上記の特許文献2に記載のカメラでは、視差画像の撮影時には、カメラ内に設けられる移動式の隔壁を用いて、一対のレンズによって形成される像同士の干渉を防止している。ただし、このような隔壁は、レンズと本体とが一体型のカメラには適用可能性があるが、最近人気のあるレンズ交換式デジタルカメラシステムには適用が困難である。何故なら、レンズ交換式デジタルカメラの本体内にある撮像素子の近傍には、ローパスフィルタ、手振れ補正機構、ゴミ取り機構などが配置されており、更に隔壁のような構造物を配置するスペースを確保できないからである。
【0008】
それ故に、本発明は、矩形状の1つの撮像素子上に、相互に干渉のない2つの光学像を並べて形成することができ、レンズ交換式デジタルカメラシステムにも適用可能な立体撮像光学系、並びに、これを備えた交換レンズ装置及びカメラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る立体撮像光学系は、第1及び第2の撮像領域のそれぞれに被写体の光学像を形成するものであって、第1の撮像領域に被写体の光学像を形成する第1のレンズ系と、第1のレンズ系と並列に配置され、第2の撮像領域に被写体の光学像を形成する第2のレンズ系と、第1及び第2のレンズ系の物体側に配置される視野絞りとを備える。第1及び第2のレンズ系は、各々によって形成される像円が第1及び第2の撮像領域の両方と重なり合うような位置関係に配置されている。視野絞りは、第1の撮像領域に対して第2の撮像領域と反対側の領域に入射する光束と、第2の撮像領域に対して第1の撮像領域と反対側の領域に入射する光束とを遮光せず、第1のレンズ系から第2の撮像領域に入射する光束と、第2のレンズ系から第1の撮像領域に入射する光束とを遮光する。
【0010】
また、本発明に係る交換レンズ装置は、撮像素子を内蔵するカメラ本体に着脱自在に取り付けられるものであり、上記の立体撮像光学系と、カメラ本体のカメラマウント部に接続可能なレンズマウント部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、視野絞りによって、撮像素子上に形成される一対の像同士の干渉を抑制できる。視野絞りは、第1及び第2のレンズ系の物体側に設けられるので、本発明に係る立体撮像光学系は、レンズ交換式デジタルカメラシステムにも適用が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の立体撮像光学系を備える交換レンズ装置の断面図
【図2】本発明の立体撮像光学系の正面図
【図3】視野絞りのない立体撮像光学系によって撮像素子上に形成される光学像を示す参考図
【図4】本発明の立体撮像光学系の光線図
【図5】本発明の立体撮像光学系によって撮像素子上に形成される光学像を示す図
【図6】実施の形態1(実施例1)に係るレンズ系の構成図及び収差図
【図7】実施の形態2(実施例2)に係るレンズ系の構成図及び収差図
【図8】実施の形態3(実施例3)に係るレンズ系の構成図及び収差図
【図9】実施の形態4(実施例4)に係るレンズ系の構成図及び収差図
【図10】実施の形態5に係るレンズ交換式カメラシステムの模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の立体撮像光学系を備える交換レンズ装置の断面図であり、図2は、本発明の立体撮像光学系の正面図である。
【0014】
交換レンズ装置1は、レンズ交換式デジタルカメラシステムのカメラ本体に着脱自在に取り付けられ、3次元画像(静止画・動画の両方を含む)を再現するための角度差のある画像を撮像するために用いられる。交換レンズ装置1は、立体撮像光学系2と、鏡筒5と、カメラ本体のカメラマウント部に着脱自在のレンズマウント部6と、保護部材8と、最前面に配置されるガラス板12とを備える。レンズマウント部6は、カメラマウント部に面接触するマウント面7を有する。
【0015】
立体撮像光学系2は、一対のレンズ系3R及び3Lと、レンズ系3R及び3Lの物体側に配置される視野絞り4とを備える。
【0016】
レンズ系3R及び3Lは、同一のレンズ構成を有し、各々の光軸が互いに平行となるように並列に配置されている。レンズ系3R及び3Lは、交換レンズ装置1をカメラ本体に取り付けた際に、カメラ本体の左右方向(撮像素子の長手方向)に整列する。そして、レンズ系3Rは、撮像素子の右半分の撮像領域に被写体の光学像を結像し、レンズ系3Lは、撮像素子の左半分の撮像領域に被写体の光学像を結像する。レンズ系3R及び3Lの光軸同士の間隔は、左右の撮影画像に所定の視差が生じるように設定されている。また、レンズ系3R及び3Lと撮像素子とは、レンズ系3Rによって撮像素子上に形成される像円と、レンズ系3Lによって撮像素子上に形成される像円とが、撮像素子の中央部分で重なり合うような位置関係に配置されている。
【0017】
レンズ系3R及び3Lの各々は、複数のレンズ素子から構成されている。一部のレンズ素子は、レンズマウント部6のマウント面7より像側に突出するように配置されている。ここで、レンズ素子が「マウント面より像側に突出する」とは、レンズ素子の少なくとも一部がマウント面を含む平面より像側に位置していることを言う。図1の例では、レンズ3R及び3L内で最も像側に配置される合計4枚のレンズ素子がマウント面7より像側に突出している。尚、レンズ系3R及び3Lのレンズ構成の詳細は後述する。
【0018】
マウント面より像側に突出した状態でレンズ素子を配置することによって、レンズ光学系内の絞りをレンズ主点よりも物体側に移動させることができる。また、マウント面7から突出するレンズ素子を保持する鏡筒の一部で、絞りより物体側から入る迷光をカットすることができる。
【0019】
視野絞り4は、1つの開口9を有する部材によって構成されている。開口9は、レンズ系3R及び3Lの物体側に位置しており、開口を構成する周縁の一部に、撮像素子の撮像面を左右に二分する中央線と同方向(図2の上下方向)に延びる直線状の一対のエッジ10R及び10Lを有する。これらのエッジ10R及び10Lによって、撮像素子の中央に入射する光束の一部が遮光される。この視野絞り4による入射光の遮光の詳細は後述する。
【0020】
鏡筒5は、ほぼ円筒形状を有し、その中央部分にレンズ素子3R及び3Lを保持する。鏡筒5の前面部分に視野絞り4が取り付けられ、後面部分にレンズマウント部6が設けられている。保護部材8は、レンズマウント部6のマウント面7より像側に突出するレンズ素子を保護するために設けられている。また、最前面のガラス板12は、レンズ系3R及び3Lの保護と、鏡筒5内への埃やゴミの侵入防止のために設けられている。
【0021】
ここで、1つの撮像素子で左右の画像を撮像する場合を例として、視野絞り4の機能の詳細を説明する。以下の説明では、撮像面の右半分を撮像領域11Rといい、撮像面の左半分を領域11Lという。
【0022】
図3は、視野絞りのない立体撮像光学系によって撮像素子上に形成される光学像を示す参考図である。
【0023】
並列に配置した2つのレンズ系のみを用いて、1つの撮像素子上の撮像領域11R及び撮像領域11Lに2つの画像を並べて形成する場合、撮像素子の中央部分で左右の像同士が混ざり合ったり、右側のレンズ系からの迷光が左側の撮像領域に入ったりする(もしくは、左側のレンズ系からの迷光が右側の撮像領域に入る)という問題が生じる。この場合、左右の画像の切り出しサイズを小さくする必要がある。
【0024】
図4は、本発明の立体撮像光学系の光線図であり、図5は、本発明の立体撮像光学系によって撮像素子上に形成される光学像を示す図である。尚、図4の破線は、マウント面の位置を表す。
【0025】
図4に示されるように、本発明の立体撮像光学系には、一対のレンズ系の物体側に、撮像素子の中央部分に入射する光束の一部を遮光するための視野絞り4が設けられている。視野絞り4を含む平面上では、左右のレンズ系3R及び3Lに入射する光束が部分的に重なり合っているが、視野絞り4が撮像素子の中央部分に入射する光束を遮光することによって、撮像面上では、レンズ系3Rによって集光される光束と、レンズ系3Lによって集光される光束とは重ならないか、重なっても、その重なり幅が最小限となる。より具体的には、図4及び5に示されるように、遮光絞り4の右側のエッジ10Rによって、右側のレンズ系3Rに入射する光束のうち、左側の撮像領域11Lに入射する角度を有する光束が遮光される。また、遮光絞り4の左側のエッジ10Lによって、左側のレンズ系3Lに入射する光束のうち、右側の撮像領域11Rに入射する角度を有する光束が遮光される。ただし、本発明に係る遮光絞り4を用いた場合には、撮像素子の短辺に沿った一対の領域(図4及び5の二点鎖線)、すなわち、撮像領域11Rに対して撮像領域11Lの反対側に位置する領域12Rと、撮像領域11Lに対して撮像領域11Rの反対側に位置する領域12Lとに入射する光束は遮光されない。
【0026】
このような視野絞り4の作用により、図5に示されるように、撮像素子上に形成される一対の像円は、撮像領域11R及び11Lの境界に沿ってD形にカットされる。この結果、一対の光学系によって形成される光学像が撮像素子上で混ざることを防止できる。したがって、本発明に係る立体撮像光学系2を用いれば、小型かつ簡易な構成で、1つの撮像素子の撮像面を効率的に利用し、左右の画像の画素数を大きくすることができる。
【0027】
撮像素子上に形成される像の切断位置(エッジ10R及び10Lに対応する部分)は、撮像領域11R及び11Lの境界(図5に一点鎖線で示す中央線)と一致することが理想的である。ただし、実際には、図4及び5に示すように、撮像素子上に形成される一対の光学像の間に僅かに遮光される部分が生じても良いし、撮像素子上に形成される一対の光学像が僅かに重なっていても良い。いずれの場合でも、図3に示した参考例と比べて、撮像領域11R及び11Lからの画像切り出しサイズを十分に大きくすることができる。
【0028】
本発明に係る立体撮像光学系は、撮像素子の前面に隔壁等の構造物を設ける必要がないので、レンズ交換式カメラシステムの交換レンズ装置に好適に利用できる。ただし、レンズ一体型カメラシステムにも同様に適用できる。
【0029】
尚、上記の例では、本発明に係る立体撮像光学系を用いて、1つの撮像素子上に左右の光学像を並べて形成しているが、本発明に係る立体撮像光学系は、並列に配置した2つの撮像素子と組み合わせても良い。2つの撮像素子の撮像領域間には、隙間が設けられていても良く、一対のレンズ系は、一対の撮像素子のそれぞれに光学像を形成するように配置される。この場合でも、上記の例と同様に、右側のレンズ系から左側の撮像領域に入射する光束と、左側のレンズ系から右側の撮像領域に入射する光束とを遮光する遮光絞りを設けることによって、各撮像素子上で左右の光学像が混ざったり、迷光が混入したりすることを防止できる。
【0030】
ここで、上記の立体撮像光学系に適用可能なレンズ系3R及び3Lの実施の形態を説明する。
【0031】
図6〜9において、セクション(a)は、各実施の形態に係るレンズ系の構成図であり、セクション(b)は、各実施の形態に係るレンズ系の収差図である。各構成図において、特定の面に付されたアスタリスク"*"は、非球面を表す。最も右側に記載された直線は、像面Sの位置を表す。符号Aは、絞りを表す。
【0032】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るレンズ系は、物体側から像側へと順に、両凸形状の第1レンズ素子L1と、両凹形状の第2レンズ素子L2と、負メニスカス形状の第3レンズ素子L3と、両凸形状の第4レンズ素子L4とからなる。第1レンズ素子L1の物体側面と、第4レンズ素子L4の像側面とが非球面である。また、第3レンズ素子L3と第4レンズ素子とが接合されている。
【0033】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るレンズ系は、物体側から像側へと順に、両凸形状の第1レンズ素子L1と、両凹形状の第2レンズ素子L2と、両凸形状の第3レンズ素子L3とからなる。
【0034】
(実施の形態3)
実施の形態3に係るレンズ系は、物体側から像側へと順に、両凸形状の第1レンズ素子L1と、両凹形状の第2レンズ素子L2と、負メニスカス形状の第3レンズ素子L3と、両凸形状の第4レンズ素子L4とからなる。第3レンズ素子L3と第4レンズ素子とが接合されている。
【0035】
(実施の形態4)
実施の形態4に係るレンズ系は、物体側から像側へと順に、正メニスカス形状の第1レンズ素子L1と、負メニスカス形状の第2レンズ素子L2と、負メニスカス形状の第3レンズ素子L3と、両凸形状の第4レンズ素子L4とからなる。第1レンズ素子L1の物体側面と、第4レンズ素子L4の像側面とが非球面である。また、第3レンズ素子L3と第4レンズ素子とが接合されている。
【0036】
実施の形態1、3及び4では、少なくとも第4レンズ素子L4がマウント面より像側に突出するように配置される。この突出する第4レンズ素子L4の正のパワーが強いため、色収差を補正するために、絞りの像側に2枚ずつ(左右で合計4枚)のレンズ素子が設けられている。特に、この2枚のレンズ素子は、正レンズ素子と負レンズ素子との組み合わせが好ましい。
【0037】
以下、本発明に係る立体撮像光学系が満足すべき条件を説明する。尚、以下では、複数の満足すべき条件が規定されるが、可能な限り多くの条件を満足する構成が最も好ましい。ただし、個別の条件を満足することにより、それぞれ対応する効果を奏する立体撮像光学系を得ることができる。
【0038】
本発明に係るレンズ系の広角端における対角画角(2ω)は35度以上であることが好ましい。この条件を満たす場合、小型で使いやすい画像が得られる立体撮像光学系を構成できる。また、画角が広角側になると、視野絞りのエッジ近傍を通過する光束が形成する像のボケ量が少なくなるので、左右の撮影画像の画素数を多くすることができる。
【0039】
本発明に係る立体撮像光学系は、以下の条件を満足することが好ましい。
0.1<T/fW<15.0 ・・・(1)
ここで、
T:レンズ系の最も物体側のレンズ面から視野絞りまでの距離
W:レンズ系の広角端における焦点距離
【0040】
条件(1)の下限を下回ると、視野絞りのエッジに対応する位置の像のボケ量が大きくなり、撮像面上で撮像のために使用できる範囲が狭くなる(撮像画像の画素数が減少する)。条件(1)の上限を越えると、レンズ系と視野絞りの距離が離れすぎてしまい、光学系全体が大型化してしまう。
【0041】
本発明に係るレンズ系は、以下の条件を満足することが好ましい。
0.3<frear/fW<2.8 ・・・(2)
ここで、
rear:マウント面より像側に突出するレンズ素子の合成パワー
W:レンズ系の広角端における焦点距離
【0042】
条件(2)の下限を下回ると、像面性が悪化する。条件(2)の上限を超えると、主点位置を像側に移動させる効果が弱まり、レンズの広角化が出来ない。条件(2)を満足する場合、絞りの像側に強い正のパワーを配分することによって、絞りをレンズの主点より物体側に配置することができる。また、マウント面より像側に正のパワーを有するレンズ素子を配置することによって、迷光を減少させ、保護部材の遮光効果を向上させることができる。
【0043】
本発明に係るレンズ系は、以下の条件を満足することが好ましい。
0.11<fW/D<1.5 ・・・(3)
ここで、
W:レンズ系の広角端における焦点距離
D:撮像素子の対角線の長さ
【0044】
条件(3)の下限を下回ると、レンズのパワーが強くなり、収差を押さえるためにレンズ枚数が増えてしまう。条件(3)の上限を越えると、画角が狭くなってしまい、得られる画像が使いにくくなる。
【0045】
(実施の形態5)
図10は、実施の形態5に係るレンズ交換式カメラシステムの模式図であって、カメラ本体の上から見た図に相当する。
【0046】
本実施の形態に係るレンズ交換式デジタルカメラシステム15(以下、単に「カメラシステム」という)は、カメラ本体16と、カメラ本体16に着脱自在に接続される交換レンズ装置1とを備える。
【0047】
カメラ本体16は、交換レンズ装置1のレンズ系3R及び3Lによって形成される光学像を受光して、電気的な画像信号に変換する撮像素子17と、撮像素子17によって変換された画像信号を表示する液晶モニタ19と、カメラマウント部18とを含む。
【0048】
一方、交換レンズ装置1は、上記の実施の形態1〜4のいずれかに係るレンズ系3R及び3Lと、視野絞り4と、カメラ本体のカメラマウント部18に接続されるレンズマウント部6とを含む。カメラマウント部18及びレンズマウント部6は、物理的な接続のみならず、カメラ本体16内のコントローラ(図示せず)と交換レンズ装置1内のコントローラ(図示せず)とを電気的に接続し、相互の信号のやり取りを可能とするインターフェースとしても機能する。
【0049】
本発明に係る交換レンズ装置1は、隔壁等の構造物を用いることなく、前面部分に配置された視野絞り4によって、一対のレンズ系3R及び3Lによって形成された像同士の干渉や迷光の侵入を防止できるので、本実施の形態のように、レンズ交換式のカメラ本体と組み合わせて、3次元画像を手軽に撮像することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施の形態1〜4に係るレンズ系を具体的に実施した数値実施例を説明する。数値実施例1〜4は、実施の形態1〜4の構成にそれぞれ対応する。各数値実施例において、表中の長さの単位はすべて「mm」であり、画角の単位はすべて「°」である。また、各数値実施例において、rは曲率半径、dは面間隔、ndはd線に対する屈折率、vdはd線に対するアッベ数である。また、各数値実施例において、アスタリスク"*"印を付した面は非球面であり、非球面形状は次式で定義している。
【数1】

【0051】
ただし、数式中の各項によって表される事項は以下の通りである。
Z:光軸からの高さがhの非球面上の点から、非球面頂点の接平面までの距離
h:光軸からの高さ
r:頂点曲率半径
κ:円錐定数
An:n次の非球面係数
【0052】
数値実施例1〜4に係るレンズ系の縦収差図を、図6〜9のセクション(b)に示す。図6〜9のセクション(b)には、左側から順に、球面収差(SA(mm))、非点収差(AST(mm))、歪曲収差(DIS(%))を示す。球面収差図において、横軸はデフォーカス量を表し、縦軸はFナンバー(図中、Fで示す)を表し、実線はd線(d−line)、短破線はF線(F−line)、長破線はC線(C−line)の特性である。非点収差図において、横軸はデフォーカス量を表し、縦軸は像高(図中、Hで示す)を表し、実線はサジタル平面(図中、sで示す)、破線はメリディオナル平面(図中、mで示す)の特性である。歪曲収差図において、横軸は歪曲収差を表し、縦軸は像高(図中、Hで示す)を表す。
【0053】
(数値実施例1)
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞
1* 24.16800 2.00000 1.72916 54.7
2 -44.28300 0.74800
3 -35.66200 0.80000 1.48749 70.4
4 5.00000 5.80300
5(絞り) ∞ 0.40000
6 18.39700 5.80200 1.84666 23.8
7 6.11600 0.01000 1.56732 42.8
8 6.11600 4.50000 1.77250 49.6
9* -8.79100 12.84100
10 ∞ BF
像面 ∞

非球面データ
第1面
K= 0.00000E+00, A4=-2.64660E-05, A6=-4.21465E-07
第9面
K=-1.15010E+00, A4= 0.00000E+00, A6= 0.00000E+00

各種データ
焦点距離 10.0084
Fナンバー 9.10188
画角 27.4677
像高 5.0000
レンズ全長 32.9137
BF 0.00970
【0054】
(数値実施例2)
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞
1 8.90410 1.50000 1.84666 23.8
2 -523.51880 1.06200
3 -10.41960 0.80000 1.84666 23.8
4 5.00000 0.40000
5(絞り) ∞ 0.40000
6 12.39620 4.42800 1.72916 54.7
7 -5.73700 13.44000
8 ∞ BF
像面 ∞

各種データ
焦点距離 13.0111
Fナンバー 10.23062
画角 22.7504
像高 5.2330
レンズ全長 22.0300
BF 0.00000
【0055】
(数値実施例3)
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞
1 15.36880 1.80000 1.71300 53.9
2 -13.02980 0.63370
3 ∞ 0.00000
4 -6.29790 0.80000 1.48749 70.4
5 5.00000 0.40000
6(絞り) ∞ 0.40000
7 30.38940 3.37600 1.84666 23.8
8 5.65600 0.01000 1.56732 42.8
9 5.65600 4.50000 1.77250 49.6
10 -6.63000 12.96920
11 ∞ BF
像面 ∞

各種データ
焦点距離 12.0070
Fナンバー 7.89480
画角 24.4705
像高 5.2330
レンズ全長 24.8889
BF 0.00000
【0056】
(数値実施例4)
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞
1* 24.58600 2.00000 1.72916 54.7
2 29.13400 1.48000
3 229.52100 3.00000 1.48749 70.4
4 5.00000 9.21500
5(絞り) ∞ 0.40000
6 13.48000 7.03000 1.84666 23.8
7 5.00000 0.01000 1.56732 42.8
8 5.00000 4.50000 1.77250 49.6
9* -9.02500 11.57200
10 ∞ BF
像面 ∞

非球面データ
第1面
K= 0.00000E+00, A4= 6.49448E-05, A6=-5.79601E-08, A8= 2.45414E-09
第9面
K=-1.62147E+00, A4= 0.00000E+00, A6= 0.00000E+00, A8= 0.00000E+00

各種データ
焦点距離 7.0076
Fナンバー 8.87139
画角 36.5642
像高 5.0000
レンズ全長 39.2163
BF 0.00931
【0057】
上記の実施例1〜4に係るレンズ系を用いて立体撮像光学系(図4)を構成した場合の各条件値を、以下の表1に示す。表1において、フランジバックは、レンズマウント部のマウント面から撮像素子までの距離(図4のL)であり、ステレオベースは、一対のレンズ系の光軸間隔(図4のD)である。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、3次元画像を撮像するための撮像装置の光学系として利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 交換レンズ装置
2 立体撮像光学系
3 レンズ系
4 視野絞り
6 レンズマウント部
7 マウント面
8 保護部材
9 開口部
10 エッジ
11 撮像領域
12 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の撮像領域のそれぞれに被写体の光学像を形成する立体撮像光学系であって、
前記第1の撮像領域に前記被写体の光学像を形成する第1のレンズ系と、
前記第1のレンズ系と並列に配置され、前記第2の撮像領域に前記被写体の光学像を形成する第2のレンズ系と、
前記第1及び第2のレンズ系の物体側に配置される視野絞りとを備え、
前記第1及び第2のレンズ系は、各々によって形成される像円が前記第1及び第2の撮像領域の両方と重なり合うような位置関係に配置されており、
前記視野絞りは、前記第1の撮像領域に対して前記第2の撮像領域と反対側の領域に入射する光束と、前記第2の撮像領域に対して前記第1の撮像領域と反対側の領域に入射する光束とを遮光せず、前記第1のレンズ系から前記第2の撮像領域に入射する光束と、前記第2のレンズ系から前記第1の撮像領域に入射する光束とを遮光する、立体撮像光学系。
【請求項2】
前記視野絞りは、1つの開口を有する部材よりなり、
前記開口を構成する周縁のうち、前記第1及び第2の撮像領域の撮像面と平行で、かつ、前記第1及び第2のレンズ系の並列方向と直交する方向に延びる直線状の一対のエッジ部分によって、前記撮像素子の中央部分に入射する光束を遮光する、請求項1に記載の立体撮像光学系。
【請求項3】
前記視野絞りを含む平面上で、前記第1のレンズ系に入射する光束と、前記第2のレンズ系に入射する光束とが部分的に重なり合う、請求項1に記載の立体撮像光学系。
【請求項4】
以下の条件を満足する、請求項1に記載の立体撮像光学系:
0.1<T/fW<15.0 ・・・(1)
ここで、
T:第1及び第2のレンズ系の最も物体側のレンズ面から視野絞りまでの距離
W:第1及び第2のレンズ系の広角端における焦点距離
【請求項5】
前記第1及び第2のレンズ系の広角端における対角画角が35度以上である、請求項1に記載の立体撮像光学系。
【請求項6】
前記撮像素子を内蔵するカメラ本体に着脱自在に取り付けられる交換レンズ装置であって、
請求項1に記載の立体撮像光学系と、
前記カメラ本体のカメラマウント部に接続可能なレンズマウント部とを備える、交換レンズ装置。
【請求項7】
前記レンズマウント部は、前記カメラマウント部に面接触するマウント面を有しており、
前記第1及び第2の撮像光学系は、前記マウント面より像側に突出するレンズ素子を含む、請求項6に記載の交換レンズ装置。
【請求項8】
前記マウント面より像側に突出するレンズ素子を保護するための保護部材を更に備える、請求項7に記載の交換レンズ装置。
【請求項9】
以下の条件を満足する、請求項7に記載の交換レンズ装置:
0.3<frear/fW<2.8 ・・・(2)
ここで、
rear:マウント面より像側に突出するレンズ素子の合成パワー
W:第1及び第2のレンズ系の広角端における焦点距離
【請求項10】
前記マウント面より像側に突出するレンズ素子の数が4枚である、請求項7に記載の交換レンズ装置。
【請求項11】
以下の条件を満足する、請求項6に記載の交換レンズ装置:
0.11<fW/D<1.5 ・・・(3)
ここで、
W:第1及び第2のレンズ系の広角端における焦点距離
D:撮像素子の対角線の長さ
【請求項12】
カメラシステムであって、
請求項1に記載の立体撮像光学系を有する交換レンズ装置と、
前記交換レンズ装置とカメラマウント部を介して着脱可能に接続され、前記ズームレンズ系が形成する光学像を受光して、電気的な画像信号に変換する撮像素子を含むカメラ本体とを備える、カメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−3022(P2012−3022A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137685(P2010−137685)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】