説明

筆記具

【課題】芯の出没操作を従来にない方法によって、変化を楽しみつつ行うことができ、使用者の興味をそそる形態となし得る筆記具を提供することを課題とする。
【解決手段】芯2を先端部から出没させる軸筒1と、軸筒1の後端部に軸方向に回動可能に設置され、その回動動作に伴って芯2を軸筒1の先端部から出没させるように作用する操作部21とから成り、芯2を支持する芯軸3の先端部に、芯2が常時没方向に移動するように作用するリターンスプリング8が纏装されると共に、芯軸3の後端部に、軸筒1の後端部内を摺動する従動筒9が取り付けられ、操作部21には、軸筒1を回動可能に支持する枢支手段22と、その回動動作に伴って従動筒9に作用して従動筒9を軸筒1の後端部内を軸方向に摺動させる板カム25が設けられ、板カム25の作用で従動筒9が外方向に摺動することにより芯2が没状態となり、内方向に摺動する時に芯2が出状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具に関するものであり、より詳細には、芯を軸の先端から出没させるタイプのボールペン等の筆記具で、その芯の繰り出し操作を、従来のノック式あるいは回転式とは異なる方法によって行うことができて、使用者の興味をそそる形態となし得る筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールペン等の芯をペン先から出没させるタイプの筆記具としては、軸筒の頭部に配置され、あるいは、軸筒の上部側面から飛び出るように配置されたノックを親指で押下し又は引き下げるタイプの、いわゆるノック式のものが一般的である。このノック式ペンとしては、ノックを動物やキャラクター等の頭部に見立てたり、更に軸部をその頭部に対応する胴部として表現したもの等、種々工夫を凝らしたデザインのものが出回っている(例えば、実公平7−21353号公報参照)。
【0003】
例えば、本出願人は先に、デザイン上の特徴を持たせるために、軸筒の上部側面から飛び出るように配置された一対のノックを大きくして動物やキャラクター等の耳やカエルの目等に見立て、軸筒の上端部に当該動物やキャラクター等の顔をあしらったデザインの製品(通称、耳ノックペン)を提案して製品化しているが、使用者が興味を抱いて操作し得る筆記具として、好評を博している(特開2010−12743号公報)。
【0004】
しかし、このような興趣あるデザインのノック式ペンであっても、芯の出し入れは、結局はノックを親指で押下し又は引き下げることによるのであって、その芯繰り出し操作自体は何ら代わり映えしないものである。また、軸筒の上部を下部に対して回転させることによって芯を出没させるタイプのものもあるが、その場合は比較的構造が複雑になってコスト高になりやすく、一般的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−21353号公報
【特許文献2】特開2010−12743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のノック式ペンにおける芯の繰り出し操作は、軸筒の頭部に配置され、あるいは、軸筒の上部側面から飛び出るように配置されたノックを親指で押下し又は引き下げるというもので、その操作自体は代わり映えしないものである。そこで本発明は、芯の出没操作を従来にない新規な方法によって、変化を楽しみつつ行うことができ、種々の興味をそそる形態に仕上げることができる筆記具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、収納した芯を先端部から出没させる軸筒と、前記軸筒の後端部に軸筒に対して垂直方向に回動可能に設置され、その回動に伴って前記芯を前記軸筒の先端部から出没させるように作用する操作部とから成り、前記軸筒内に収納された前記芯の芯軸の先端部に、前記芯を没方向に付勢するリターンスプリングが纏装されると共に、前記芯軸の後端部に、前記軸筒の後端部内を軸方向に摺動する従動筒が取り付けられ、前記操作部には、前記軸筒を回動可能に支持する枢支手段と、その回動動作に伴って前記従動筒に作用して前記従動筒を前記軸筒の後端部内を軸方向に摺動させる板カムが配設され、前記板カムの作用で前記従動筒が前記軸筒内に引っ込む方向に摺動することにより前記芯が繰り出され、前記板カムの作用で前記従動筒が前記軸筒から出る方向に摺動することにより前記芯が没状態となることを特徴とする筆記具である。
【0008】
一実施形態においては、前記操作部の前記軸筒の後端部を受け入れる挿入開口の両側に、内方向に延びて前記軸筒の回動角度を規制する当接板が配設され、前記軸筒が一方の前記当接板に当接するときに前記芯の没状態が維持され、前記軸筒が他方の前記当接板に当接するときに前記芯の出状態が維持されるようにされる。
【0009】
一実施形態においては、前記板カムは、前記操作部を構成するピースの内側面に形成される第1端係合部と、そこから延びる円弧部と、前記円弧部の端部に連設される第2端係合部と、第2端係合部から前記ピースの内側面に延びる支持部とから成り、前記従動筒の先端突部が前記第1端係合部に係合している時に前記芯の没状態が維持され、前記従動筒の先端突部が前記第2端係合部に係合している時に前記芯の出状態が維持されるようにされる。また、前記操作部の前記枢支手段は、前記軸筒の周面に形成される凹凸部に対応して係合する凹凸部とされる。
【0010】
一実施形態においては、前記軸筒が、それを挿入支持する挿入支持部を備えたクリップによって支持され、前記クリップは、前記軸筒を挿入保持した状態において起立可能にされる。また、一実施形態においては、前記操作部は動物の頭部を模した形態にされ、前記クリップは前記動物の胴部を模した形態にされ、前記軸筒の先端部は前記動物の尾部に対応する形態にされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る筆記具は上記構成であるため、芯の出没操作を、軸筒に対して操作部を垂直方向に回動させるという従来にない方法によって、変化を楽しみつつ行うことができ、例えば、操作部を動物の頭部にデザインし、首を振るが如き動きにて芯を出没させることができるので、大いに使用者の興味をそそる筆記具となし得る効果がある。
【0012】
請求項5乃至8に係る発明においては、クリップを立てて筆記具を支持することができ、前記操作部を動物の頭部を模したデザインとし、前記クリップを前記動物の胴部を模したデザインとすることにより、クリップの起立状態において四足で立った動物を表現することができ、その興趣あるデザインを楽しむことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る筆記具の一実施形態の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る筆記具の一実施形態における軸筒部分の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係る筆記具の一実施形態における芯の出し入れ操作の第1の工程(芯が引っ込んだ状態)を示す図である。
【図4】本発明に係る筆記具の一実施形態における芯の出し入れ操作の第2の工程(芯が出掛かった状態)を示す図である。
【図5】本発明に係る筆記具の一実施形態における芯の出し入れ操作の第3の工程(芯が出切った状態)を示す図である。
【図6】本発明に係る筆記具の一実施形態におけるクリップの使用方法を示す図である。
【図7】本発明に係る筆記具のそれぞれ異なる表現形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る筆記具は、収納した芯2を先端部から繰り出す軸筒1と、軸筒1の後端部に、軸筒1に対して垂直方向に回動可能に取り付けられ、その回動動作に伴って芯2を出没させるように作用する操作部21とから成る。
【0015】
軸筒1の先端には、ネジ手段によって脱着可能にしたトップ5が取り付けられる。トップ5の先端面には、芯2を出没させるための開口6が形成され、また、その内部に、先端部において芯2を支持する芯軸3の先端部に纏装されてトップ5内に挿入されるリターンスプリング8の下面を受け止める段部7が形成される。リターンスプリング8の上面は、芯軸3の側面に形成される突部4によって押さえ止められる。リターンスプリング8は、常時、芯2が開口6内に引き込まれる方向(図2において左方向)に移動するように付勢する。
【0016】
軸筒1の後端部(図2において左端部)内に、カムフォロアとして機能する従動筒9が摺動可能に嵌装される。従動筒9は、例えば、先端部に円錐状の先端突部10を形成した円筒形状に形成され、軸筒1の後端部内に嵌装された際に、その内部に芯軸3の後端部が差し込まれることにより芯軸3に取り付けられ、芯軸3と一体となって軸方向に移動する。
【0017】
軸筒1の後端部の側面(通例、両側面)には、後述する操作部21を回動可能に枢支するための手段である凹凸部が形成される。図示した例の凹凸部は、操作部21に形成される突部22が嵌合する枢支孔11(貫通していてもいなくてもよい。)とされているが、この枢支手段における凹凸関係は逆であってもよい。即ち、軸筒1の側に突部を形成し、操作部21の側に、この突部が嵌合する枢支孔を設けることとしてもよい。
【0018】
操作部21は、上記突部22を軸に、軸筒1に対して回動可能に取り付けられるものであり、通例、ほぼ対称形状に形成された2つのピース23を合接して構成される。各ピース23の内面には、上記突部22が形成されると共に、その合接を容易にするための、互いに係合し合う係合手段(凹凸部)24が1又は複数形成される。操作部21は、組立て時に両側から軸筒1の枢支孔11に嵌合することにより、軸筒1の端部に回動自在に取り付けられる。
【0019】
更に、一方又は双方(通例、双方)のピース23の内側面に、操作部21の回動動作に伴って従動筒9に作用し、従動筒9を軸筒1の後端部内において軸方向に摺動させる板カム25が配設される。板カム25は、ピース23の内側面に形成される第1端係合部26と、そこから延びる円弧部27と、円弧部27の端部に連設される第2端係合部28と、第2端係合部28からピース23の内側面に延びる支持部29とから成る。
【0020】
第1端係合部26と第2端係合部28は、従動筒9の先端突部10が嵌合する凹陥部とされ、先端突部10が第1端係合部26に収まっている時に芯2の開口6からの没状態が維持される(図3参照)。そして、操作部21の回動に伴って先端突部10が第1端係合部26を脱し、円弧部27に摺接しつつ移動するにつれ、芯2が次第に開口6から露出し(図4参照)、やがて先端突部10が第2端係合部28に収まるに至って芯2が出切り、その出状態が維持されて筆記に供される(図5参照)。
【0021】
操作部21は、ピース23、23を合接した際に形成される、軸筒1の後端部を受け入れる挿入開口30を有するが、この挿入開口30の両側に、軸筒1の回動端を規制するための、換言すれば、板カム25の第1端係合部26並びに第2端係合部28にそれぞれ対応する当接板31、32が、内方に延びるようにハの字状に配設される。即ち、一方の側の当接板31は第1端係合部26に対応していて、先端突部10が第1端係合部26に嵌合した際に軸筒1が当接板31に当接して芯の没状態が維持され(図3の状態)、他方の側の当接板32は第2端係合部28に対応していて、先端突部10が第2端係合部28に嵌合した際に軸筒1が当接板32に当接して芯の出状態が維持される(図5の状態)。
【0022】
上記構成の筆記具(筆記具本体)は、上述したようにして芯2を繰り出し、軸筒1を持って筆記に供するが、一実施形態においては、筆記具本体は、その軸筒1を挿入支持する挿入支持部を備えたクリップ41によって支持させることができる。クリップ41は、軸筒1を挿入支持した状態において起立可能に形成することにより、物を挟持するというクリップ本来の機能の他に、スタンドとしての機能を果たすように構成することができる。
【0023】
クリップ41は、一般のクリップと同様に、一対の側板42、43と、側板42、43間に配置されるU字状の板バネ44で構成される(図1、6参照)。各側板42、43には、軸筒1の挿入支持部となる、軸筒挿入口47を設けた軸支板45、46がそれぞれ一対形成される。軸支板45と軸支板46は、その一方の軸筒挿入口47の周縁に設けた環状溝に、その他方の軸筒挿入口47の周縁に設けた環状突条を係合させることにより、相対的に回動可能に結合され、その連通した軸支板45と軸支板46の軸筒挿入口47を通して軸筒1の挿入が可能となる。
【0024】
上部内面に板バネ44の端部が固定されている側板42、43は、その上部を押し摘まむことにより、係合し合う環状溝と環状突条を軸にして開閉動作し、クリップ本来の挟持機能を果たすので、クリップ41は、筆記具本体を支持した状態で、あるいは、単独で、ノートの端部その他任意の個所に挟み置くことができる。
【0025】
クリップ41の側板42、43は任意の形状とすることができ、例えば、下端部を水平に延長して平坦部48を設けることにより、起立可能にすることができる。また、筆記具とクリップ41の組み合わせにて、例えば、動物を表現することができる。その場合、操作部21を以て動物の頭部を表現し、クリップ41を以てその頭部に対応する胴部を表現し、また、突出する軸筒1の先端部を以てその尾を表現するようにデザインすることができる。
【0026】
例えば、図7の(A)では、クマが表現され、(B)ではパンダが表現され、(C)では、首を傾げたトラが表現されている。このように、操作部21とクリップとを対応する形態に仕上げることにより、全体視において、種々の動物やキャラクターを表現することができ、種々の興趣あるデザインのスタンド型筆記具を提供することが可能となる。
【0027】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白である。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
1 軸筒
2 芯
3 芯軸
5 トップ
6 開口
7 段部
8 リターンスプリング
9 従動筒
10 先端突部
11 枢支孔
21 操作部
22 突部
23 ピース
25 板カム
26 第1端係合部
27 円弧部
28 第2端係合部
29 支持部
30 挿入開口
31、32 当接板
41 クリップ
42、43 側板
44 板バネ
45、46 軸支板
47 軸筒挿入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納した芯を先端部から出没させる軸筒と、前記軸筒の後端部に軸筒に対して垂直方向に回動可能に設置され、その回動に伴って前記芯を前記軸筒の先端部から出没させるように作用する操作部とから成り、
前記軸筒内に収納された前記芯の芯軸の先端部に、前記芯を没方向に付勢するリターンスプリングが纏装されると共に、前記芯軸の後端部に、前記軸筒の後端部内を軸方向に摺動する従動筒が取り付けられ、前記操作部には、前記軸筒を回動可能に支持する枢支手段と、その回動動作に伴って前記従動筒に作用して前記従動筒を前記軸筒の後端部内を軸方向に摺動させる板カムが配設され、前記板カムの作用で前記従動筒が前記軸筒内に引っ込む方向に摺動することにより前記芯が繰り出され、前記板カムの作用で前記従動筒が前記軸筒から出る方向に摺動することにより前記芯が没状態となることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記操作部の前記軸筒の後端部を受け入れる挿入開口の両側に、内方向に延びて前記軸筒の回動角度を規制する当接板が配設され、前記軸筒が一方の前記当接板に当接するときに前記芯の没状態が維持され、前記軸筒が他方の前記当接板に当接するときに前記芯の出状態が維持される、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記板カムは、前記操作部を構成するピースの内側面に形成される第1端係合部と、そこから延びる円弧部と、前記円弧部の端部に連設される第2端係合部と、前記第2端係合部から前記ピースの内側面に延びる支持部とから成り、前記従動筒の先端突部が前記第1端係合部に係合している時に前記芯の没状態が維持され、前記従動筒の先端突部が前記第2端係合部に係合している時に前記芯の出状態が維持される、請求項1又は2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記操作部の前記枢支手段は、前記軸筒の周面に形成される凹凸部に対応して係合する凹凸部である、請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具。
【請求項5】
前記軸筒が、それを挿入支持する挿入支持部を備えたクリップによって支持される、請求項1乃至4のいずれかに記載の筆記具。
【請求項6】
前記クリップは、前記軸筒を挿入保持した状態において起立可能にされる、請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
前記操作部は動物の頭部を模した形態にされ、前記クリップは前記動物の胴部を模した形態にされ、前記軸筒の先端部は前記動物の尾部に対応する形態にされる、請求項6に記載の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95027(P2013−95027A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238836(P2011−238836)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(500205840)株式会社 エポックケミカル (6)
【Fターム(参考)】