説明

等高線に基づいて作成された農作業用作業線に沿って走行位置を明示する表示装置及び農作業方法

【課題】従来、圃場の耕耘は区画の一辺に添うように耕耘した、合理的な方法が主であった。しかし降雨時に水流が発生すると、土壌流失になり、表土を流亡させる原因となっていた。土壌流失を防ぐには等高線耕耘が最も良い方法であり、目視で同一標高作業できることを提供する。
【解決手段】あらかじめ作成しておいた圃場の高低マップデーターをもとにして、等高線をできるだけ直線に近い線として演算し、諸条件を考慮の上表示部に少なくとも現在位置と線と区画を表示して、表示部の線に添って作業することによって、等高線耕耘になるようにし、土壌流失を防止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高低差のある圃場等の区画を牽引車両に牽引される作業機を用いて作業する方法において、衛星を利用した三次元測位システム、いわゆるGPS受信機を備えた作業機で、運転席の表示部の表示に従って、同一標高の地点が解るようにし、農作業用作業線を演算したことで、等高線に沿って作業することを可能にした、等高線耕作を援助するナビゲーションシステムに関するものである。この発明によって等高線耕作を容易に行えるようになり、土壌流失を防止し、更には棚田を容易に作れるようにするものである。

【背景技術】
【0002】
通常地表面は表土(soil)で覆われており、その下に心土(subsoil)が存在する。非特許文献1によると心土(subsoil)とは、「表層土の下の層で、風化不十分、有機物を含まない密な土壌。通常、養分が少ないが、表層の施肥分が流亡して心土に集積していることもあり、その場合の心土耕は耕土改良の効果がおおきい。」としている。
【0003】
また、表土(soil)とは、「地盤の最上層部で、風化作用で植生に適した状態の土層。化学的変化を受けた岩石の生成物と、そこに生活した動植物の遺体や分解生成物などからなる。また、多孔質で水、空気、微生物等を含む。」と非特許文献1に記載されている。
表土の中で作物を育てるための土を作土(plow layer)といい「土壌の最上部にあり、作物栽培のため、耕耘、施肥、管理等を行い、養分に富み、作物生育上最も重要な土。」と非特許文献1に記載されている。
【0004】
圃場を耕耘する場合、第一段階の耕起は、例えば図1のようなサブソイラ作業機20(特許文献1)で粗耕起され耕土改良される。このサブソイラ作業機は、30cm以上の深さの地中にナイフ状のビームを差し込んで牽引する心土層破砕機である。この作業によって作土層から心土層にかけて膨軟になり透水性を向上することができる。
非特許文献1によればサブソイラとは「心土耕を行い硬い耕盤を破砕して、心土だけを膨軟に耕すためのプラウ、犂体はのみ状のすき先と、り刀からなり、耕深は30センチメートル位まで可能で、反転機能はない」としている。しかし特許文献1のサブソイラ作業機は心土を作溝し反転して粗耕起する機能も持ち合わせている。
粗耕起(あらこうき)とは粗起こしともいい、作物栽培に必要な土壌の耕耘(こううん)整地における第一段階の耕起のことである。一般には秋起こしといわれている秋の作物収穫後の冬前に行う耕起をさすことが多い。
【0005】
粗耕起の目的は、土壌をこぶし大程度の土塊にし、圃場全体を膨軟にし乾燥させることである。粗耕起によって土塊間の空隙が大きくできるため透排水性が向上し、土壌深部まで空気が入り微生物を大量に育てることによって有機物の分解を早めることができ、次回収穫時の養分を増加することができる。従ってできるだけ深く耕耘し、土壌の深い部分まで微生物にとって好条件になるようにすることが望ましい。
【0006】
しかしこの図1のようなサブソイラ作業機20による粗耕起作業によって心土に作溝し、心土を膨軟にし、透排水性を良くし、土壌改良するものであるが、このことが土壌流失の原因になる。
土壌流失(soil loss)とは、「通常、水食による土壌の流失、南面の15度以上の傾斜地では特に著しい。また、火山灰土壌は透水性が良く流亡が大きい。流亡は降雨の強さが浸透速度より大きい時に起きる。」と非特許文献1に記載されている。
【0007】
したがって土壌流失を防止するには、できるだけ水流が発生しないように、斜面に沿って同一標高で耕耘し、降雨時に水の流れを発生させないように配慮して耕耘し、できるだけ水分を地中に浸透させることが望ましい。
【0008】
本発明は三次元測位システム、いわゆるGPS受信機を備えた作業機で、等高線耕作を行うものであるが、牽引車両に牽引される均平機を用いて均平にする方法についてはレーザ光を用いた方法が実用化されている(特許文献2)。さらにレーザ光の代りに三次元測位システム、いわゆるGPS受信機を使用したものとしては、特許文献3で提示されている。
【0009】
図7の二つのサブソイラ作業20h,20gを示す。サブソイラ作業20hは同一標高で作業し、傾斜に直交した溝hを作溝する。サブソイラ作業20gは傾斜に添った方向に作業し、傾斜方向と同一の方向に溝gを作溝する。
図2ののようなサブソイラ作業機20は心土層bまで届く溝hもしくは溝gを作溝するので、サブソイラ作業20gのような方向に作業すると大量の降雨により一旦水流が発生すると溝gに沿って水流が発生し、急速に表土aが流失してしまう。
非特許文献1に記載されているような、従来のサブソイラ作業機のように、心土耕を行い硬い耕盤を破砕して、心土だけを膨軟に耕すだけだとしても、傾斜方向と同一の方向にサブソイラ作業すれば膨軟になった滞留帯部分が急速に侵食されて、水流が発生しやすくなる。
その結果、図7の断面図のように自然界では本来、破線より上の表土a部分のように均等な厚みで表土が存在するが、作物を作り表土が耕耘されて膨軟になり作土と化すと、降雨のたびに少しずつ表土が流失しa´の表土分布状態になってしまう。
その結果谷部では表土が厚く作物が育つが、山部では植生に適した表土が無く作物が育たない。そして耕作面積が徐々に狭くなってしまう原因になっていた。
【0010】
【特許文献1】特開平9-322601号公
【特許文献2】特開平10-108508号公報
【特許文献3】特開平2001-8505号公報
【非特許文献1】鏑木豪夫監修、今井正信編著、「農業機械用語辞典」株式会社新農林社、平成6年3月25日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
圃場を作るために表土を耕耘し作土にすると、土壌が膨軟になるために、風や雨のたびに少なからず表土は流失してしまう。そこで降雨時に傾斜溝g内に水流が発生しないように、図7のサブソイラ作業20hのように同一標高で作業すると、水平溝hには水が溜まり、滞留帯を形成し多少の雨では水流が発生せず、水が地中に染み込むまでの間滞留することによって土壌流失を防ぐことができる。
【0012】
図7の斜面に沿ったサブソイラ作業20gのような、作業でできた傾斜溝gの場合は、水流が発生しやすいため、水流の発生のたびに侵食され溝gの周りの表土(作土)が急速に流失してしまう。しかしサブソイラ作業20hのように同一標高で溝hを作溝することは目視では困難な作業である。
次に図3の水田Qを作るための畦Lや作物を作るための畝なども同じで、同一標高で水平に作られていた方が、水田の場合は均平にしやすく、たとえ水田でなく作付けのための畝の場合でも、溝部Nが同一標高に形成されているので、降雨時に水流が発生しにくく土壌流失を防止することができる。
しかし水田Qを作るためには、圃場面を水平にする必要がある。斜面を切り崩す量が多いと畦が低くなり、水をためることができなくなる。斜面を切り崩す量が少ないと、必要以上に小さな水田になり、栽培効率が悪くなってしまうと言う問題があった。

【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで考え出されたものが当発明であり、高低差に基づいてあらかじめ作成された等高線に基づいて農作業用作業線を作成する演算部と、当該農作業用作業線表示装置を搭載した農業機械の現在位置を測定する測定部と、前記農作業用作業線と前記農業機械の現在位置を表示する表示部とを備えた農作業用作業線表示装置であり、
高低差に基づいてあらかじめ作成された等高線に基づいて農作業用作業線を作成する演算部と、
当該農作業用作業線表示装置を搭載した農業機械の現在位置を測定する測定部と、前記農作業用作業線と前記農業機械の現在位置を表示する表示部とを備えた農業機械によって行う農作業地の作業方法において、前記農作業用作業線に沿った農作業を前記農業機械によって行うことにより帯状膨軟部もしくは溝又は畝を形成することにより帯状の滞留帯を形成し、水流の発生を防止し表土の流失を防ぐようにしたことを特徴とする農作業地の土壌流失防止作業方法であり、
前記農作業用作業線の一つが畦の農作業用作業線として指定されると、その隣接する農作業用作業線の間との土量を算出し、前記農業機械により作成される畦高さより低く均平にできるように前記指定された農作業用作業線を再作成して再表示することを特徴とする農作業用作業線表示装置である。

【発明の効果】
【0014】
図1、図2、図3で示されるように、等高線作業支援システムを使用することによって、溝hが土壌流失防止農作業用作業線(例えば図6の1の農作業用作業線d4)に沿って掘削され、斜面に対し同一標高であるY方向に作られるので、降雨時に水流が発生しにくく土壌流失を防止することができる。
図3のように棚田Qを作成する時も等高線に沿って畦Lが作られていれば、水田として均平にすることが容易である。また、作物を作るための畝立て作業の場合だとしても、傾斜に直交するように作られていれば、水流が発生しにくいので土壌流失を防ぐ効果が著しい。
また、斜面に水田を作る場合でも、棚田農作業用作業線(例えば図6の2の農作業用作業線d4a)に沿って一定畦高さeの畦を成形するので、畦余裕高さfを残して均平な水田Qにするために必要とする土量を計算して畦間隔Sを演算して、均平化するための土量を算出してあるために、後作業で水平化しやすくて、できる限り大きな水田を合理的に作ることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における等高線作業方法は、計測部と演算部と表示部からなっており、三次元方位システムいわゆるGPSで現在位置を測定し、あらかじめ作成された高低マップと現在位置と、トラクタの大きさや最小回転半径、耕耘幅などの各種条件を演算部で演算し、許された曲率のベジェ曲線等のパラメトリック曲線(図6のd4、d4a)で農作業用作業線を作成し、表示部11に高低マップデータd1と農作業用作業線d4と現在位置d5を表示させ、同一標高で、作業できるようにすることによって等高線作業を可能にしたものである。

【実施例】
【0016】
本発明を取り付けた作業機を図1に示す。本発明を取り付けた作業機による作業の様子を図2、図3に示す。また、本発明のフローチャートを図4、図5に示す。更に本発明の表示部11の表示例を図6の1及び図6の2に示す。本発明による作業と従来の作業を対比して図7に示す。
【0017】
図1、図2によって本発明を説明する。トラクタ1によって牽引されるサブソイラ作業機20はトラクタ1のロアリンク8とトップリンク9にピンによって連結されて牽引され、サブソイラ作業機20のチゼル21が心土b部を掘削し、溝hを作溝しながら前進する。その結果作土aから心土bにかけて作溝され溝h近傍の土が膨軟になり透水性と排水性が向上する。
【0018】
図1のようにトラクタ1には、GPS等の三次元測位システム10が搭載されている。表示部11の一つの表示例として図示すると図6の1のようになっている。圃場形状はd3によって表されており、例えばグランドピアノを真上から見たような形状をしており、下側が丸みを帯び上側と左右側はほぼ直線状態の形状をしている。
【0019】
この圃場は図示の通り、右上が高く左下が低くなっており、等高線tの色の違いもしくは濃淡の違いで高低が表現されるようになっている。
表示部11に記載された等高線tはあらかじめ作成しておいた、高低マップデータd1に基づいて作成される。これらの高低マップデータd1は、図4のフローチャートのように演算部12で記憶される。次に演算部12でこれらの高低マップデータd1を用いて農作業用作業線d4を算出する。
【0020】
農作業用作業線d4算出時には、幾つかの条件を考慮して作成される。その条件とは耕耘作業機の作業幅や農作業用作業線が一定の曲率で曲線化しても良いか、もしくは直線状態でなくてはならないのか、水平距離的に等間隔で行うのか、高さ的に等間隔で行うのか等の諸条件を与えて演算部に演算させることによって作成する。
【0021】
作成した農作業用作業線d4は、図6の1の表示部11の例ように、区画図d3内に描かれる。更に区画図d3内にトラクタ1の現在位置d5が描かれ、その進行方向Vも同時に描写される。
トラクタ1の運転手は表示部11の農作業用作業線d4上を現在位置d5がなぞって移動するように操作すれば、容易に等高線耕耘が完了する。
以上の方法によって、サブソイラ作業や心土破砕作業等の耕土改良作業を行えば、降雨時には図2の溝h及びその周りの帯状膨軟部の土層に帯状の水の溜まる部分、即ち滞留帯ができるので水流ができにくく、水が地中に染み込む猶予を与えることができ、土壌流失を防止することができる。
【0022】
なおここで、図6の1の表示部11の表示例で、矢印X、矢印Y、矢印Zは表示部11には記載されていない。この3方向の矢印は、本出願の説明のために記載したもので実際には表示されない矢印である。矢印Xは今までのサブソイラ作業機20が往復していた耕耘手順で、作業効率がよく、きれいな直線で仕上がるものである。
【0023】
しかしこの圃場d3は矢印Z方向に傾斜しているので、降雨時には矢印X方向に作られた溝に水流が発生しやすく、土壌流失が発生する可能性がある。そこで農作業用作業線d4と平行に往復する、矢印Y方向であれば矢印X方向よりも水流の発生は大幅に防止することができ、土壌流失を防ぐことができることを説明するために、加筆したものである。
【0024】
図3のように畦Lを成形して水田にする際も同様である。図6の区画d3を全て水田化するためには、高い個所の土を全て低い箇所に移動せねばならず、低い箇所の畦を相当に高く成形しなければならない。
【0025】
しかし図3のような畦成形機30は、その成形する畦Lの畦高さeが一定であり特別に高く作ることはできない。そこで均平にしたときの土の移動量を考慮して算出し、畦余裕高さfを残して均平な水田Qにするために必要とする土量を計算して畦間隔Sを演算して、図6の2の農作業用作業線d4aの上流に畦を成形するべく農作業作業線d4bを作成する。この線をなぞって作業すれば容易に棚田Qを作るための畦L1、L2を成形することができる。
【0026】
図の6の1と図6の2について更に詳細に説明する。高低マップデータd1は数ミリメートル単位から数メートル単位の高低差を等高線tで表現することができる。しかし本件の場合において実際に多用されるのは、数センチメートル単位である。
任意の倍率の等高線tを選択して、一定曲率以上のパラメトリック曲線を演算すると、図6の2のd4aの曲線が作成される。もしくは、選択した等高線t上の任意の点を、滑らかに繋ぐことによってもパラメトリック曲線は作成することができる。
【0027】
このとき基準となる曲率は、トラクタの最小旋回半径であったり、今後の作業がやりやすくなるように考慮した半径であり、場合によっては直線に限りなく近くなることもある。
農作業用作業線d4aの作成者は仕上げたいと思う曲率を演算部12にインプットして作成する。もしくはパラメトリック曲線を作成するために選択した等高線t上の任意の点の位置を変更することによって曲率を修正することができる。
【0028】
図6の2の場合、農作業用作業線d4a〜eは平行でなく等間隔でもない。場合によっては農作業用作業線d4a〜eは重なってしまう場合もありうる。そのために修正可能なようになっている。
修正は、地形や、作業機の能力、仕上がりのきれいさ、後作業のやりやすさ等を演算部にインプットすることで実行される。また直接、農作業用作業線d4a〜eを移動したり変形したり修正したりすることもできる。
農作業用作業線d4a〜eの間隔は農作業機の作業幅によって変更することができる。通常作業幅はトラクタ1の後輪の幅よりやや広くなっており、タイヤ跡が残らないような作業幅になっている。
【0029】
このようにして直線で等間隔で平行になるように農作業用作業線d4aを修正したものが、図6の1の農作業用作業線d4である。サブソイラ作業機20でこの農作業用作業線d4に沿って作業すれば、仕上がりのきれいな圃場にすることができる。

同様にして高低マップデータd1に農作業用作業線d4aが作成されれば農作業用作業線d4aに図3のように、畦高さeの畦が作られた時、畦余裕高さfを残して均平な水田Qにするために必要とする土量を計算して畦間隔Sを演算して、図6の2において農作業用作業線d4aに対する農作業用作業線d4b更にd4c〜eが作成される。この農作業用作業線に基づいて図3のような畦L1と畦L2が形成される。
【0030】
以上のように、均平にするための土量は高さと面積から計算されるので、均平になる高さ(標高)を算出することで、L1とL2の間隔Sを設定することができる。
なお、畦形成の場合でも、図6の1の農作業用作業線d4と同じように、人の手によって直線で等間隔で平行になるように修正することができる。
【0031】
以上のような作業機で作業する場合を説明する。
図2は、角度θがついた傾斜地である。サブソイラ作業機20で水平溝hのような溝をZ方向に耕耘すると、水流が発生し表土aは溝部を通じて流失してしまう。しかし、矢印Yの方向に掘削された水平溝hであれば、降雨の際も水流が発生する事が少なく、表土aが流失することが少ない。仮にいくらか表土aが流されたとしても水平溝hの底部にたまり区画外に持ち出されることが少ない。例えば諸条件として農作業用作業線d4が区画内を均等に引かれるように設定すれば、あとは表示部11をナビゲーターとして農作業用作業線d4に添って作業すればよい。
【0032】
図3も同様に角度θがついた傾斜地を棚田化する作業である。畦Lの高さが一定なので均平しても畦L1の高さを乗り越えない程度に次の畦L2の位置を設定する必要がある。どれだけの土量を移動させればどの高さで均平な水田にできるかはGPSを利用した均平耕法として特願2005―85385及び特願2005-239276に記載されている。
従ってどの位置にどの程度の高さの畦を作れば水田Qが作られるのかは容易に算出することができる。
このことは、前記したように等高線t上の任意の点の位置を滑らかに繋ぎ理想的な農作業用作業線を作成しその一つを指定すると、指定された農作業用作業線を基準にして土量を測定し隣接する農作業用作業線を算出して表示するものである。
【0033】
畦つくりの方法についても同様である。図3のようにトラクタ1にロアリンク8とトップリンク9で牽引される畦成形機30の前側には土を軟らかくするロータリ31があって、その後方に土を盛上げる為のドラム32が構成されていることにより、ロータリ31で耕起された土をドラム32で畦状に塗り固めることができるようになっている。
従来は人力によって一定高さの畦を作ってから、斜面を削って均平にしていたが、表示部11に地形と農作業用作業線d4が同時に表示できることによって、地形に合わせた圃場を計画的に無理なく作ることができる。合理的に棚田を作ることができる。
また、この方法は水田の畦を作るためだけでなく、例えば斜面に土壌流失させないための緩やかな排水溝用の作溝作業等にも応用する事ができる。
更に、作付けのための畝立て作業にも応用する事ができる。
【0034】
図4について説明する。これはトラクタ1に取り付けられた計測部10が常にGPS信号を受信して作業機の現在位置測定値d2を測定し、コンピュータである演算部12に送信する。演算部12は、あらかじめ作られた高低マップデータd1と、その都度変化する現在位置d5及び耕耘幅や、曲線の良し悪しなどの諸条件d7をインプットして演算する。
【0035】
演算部12には区画図d3と農作業用作業線d4と作業機の現在位置d5を表示部11に送信し、表示部11で区画内d3における農作業用作業線d4と現在位置d5を表示d6する。更に可能であれば等高線tや作業機の移動方向V等も記載する。
作業機の現在位置を計測する計測部10は市販されているGPS信号を受信するナビゲーションシステムでよく、演算部12と表示部11は市販のノートパソコンなどを応用して後付けすることも可能である。
【0036】
図5について説明する。a1はトラクタ1のエンジンのスタートなどを意味する。a2は他のコンピュータにあらかじめ作成しておいた高低マップデータd1を演算部12に記憶させ、諸条件d7や、作業機の現在位置d2などをインプットする作業を意味する。a3は演算部12による農作業用作業線d4を演算させa4は表示部11に表示する作業を意味する。a5は農作業用作業線d4に沿って作業し全ての農作業用作業線d4に沿って作業したら作業終了a6を意味する。

【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のような等高線に沿って走行位置を明示する作業ナビゲーターを使用することによって、土壌流失を防止する耕耘が容易になり、畝立て作業も容易に行うことができる。また、棚田のような斜面に沿った水田の製作もよういにおこなうことができる。
また、プラウ作業を行う場合であれば、等高線に沿って高い方向に土を移動(反転)することができるので、年々少しずつ作土が下降してくるのを食い止めることができる。

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を取り付けたトラクタとサブソイラ作業機を耕法から見た鳥瞰図である。
【図2】角度θのついた斜面を傾斜方向Zに直行するように等高線耕耘するサブソイラ作業機の図である。
【図3】角度θのついた斜面を傾斜方向Zに直行するように畦成形機30で作業し、畦Lを成形し均平な水田Qを成形する作業の図である。
【図4】本発明の作業機1と計測部10と演算部12と表示部11のデーターの流れを表現したフローチャートである。
【図5】本発明の作業手順の流れを表現したフローチャートである。
【図6】本発明の表示部11の表示例である。
【図7】本発明による作業と従来の作業を対比して見れるようにした鳥瞰図である。
【符号の説明】
【0039】
1
トラクタ
8
ロアリンク
9
トップリンク
10
計測部
11
表示部
12
演算部
20
サブソイラ作業機
21
チゼル
30
畦成形機
31
ロータリー
32
ドラム
a1〜a6 作業手順の種類(図5)
d1〜d7 データの種類(図4)
a 表土
a´ 流失した表土
b 心土
g 傾斜溝
h 水平溝
20g 傾斜に添って作業したサブソイラ作業
20h 同一標高で作業したサブソイラ作業
θ 傾斜角
t 等高線
V 作業機の進行方向
X 合理的な作業方向
Y 等高線耕耘方法
Z 傾斜方向
e 畦高さe
f 畦余裕高さ
S 畦間隔
L1〜L2 畦
Q 水田Q

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高低差に基づいてあらかじめ作成された等高線に基づいて農作業用作業線を作成する演算部と、
当該農作業用作業線表示装置を搭載した農業機械の現在位置を測定する測定部と、
前記農作業用作業線と前記農業機械の現在位置を表示する表示部とを備えた農作業用作業線表示装置。

【請求項2】
高低差に基づいてあらかじめ作成された等高線に基づいて農作業用作業線を作成する演算部と、
当該農作業用作業線表示装置を搭載した農業機械の現在位置を測定する測定部と、
前記農作業用作業線と前記農業機械の現在位置を表示する表示部とを備えた農業機械によって行う農作業地の作業方法において、
前記農作業用作業線に沿った農作業を前記農業機械によって行うことにより帯状膨軟部もしくは溝又は畝を形成することにより帯状の滞留帯を形成し、水流の発生を防止し表土の流失を防ぐようにしたことを特徴とする農作業地の土壌流失防止作業方法。

【請求項3】
前記農作業用作業線の一つが畦の農作業用作業線として指定されると、その隣接する農作業用作業線の間との土量を算出し、前記農業機械により作成される畦高さより低く均平にできるように前記指定された農作業用作業線を再作成して再表示することを特徴とする請求項1記載の農作業用作業線表示装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−17735(P2008−17735A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190443(P2006−190443)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(391057937)スガノ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】