説明

筐体の回転機構、及び電子機器

【課題】回転ヒンジを目立たなくし、また、開いたときに筐体同士に段差が生じないようにする。
【解決手段】二つの筐体(1・2)を重ねた状態から相対的に回転させるために互いの端部同士で接続するヒンジ軸64と、両筐体(1・2)を相対的に回転させるのに伴って、ヒンジ軸64を両筐体(1・2)内からスライドさせて引き出すスライド部65・66と、を備える。具体的には、ヒンジ軸64が一方の筐体2と一体に回転するのに連動して、スライド部65・66をスライドさせるリンク部材61を備える。そして、ヒンジ軸64は二つの回転軸からなり、その一方の回転軸の偏心位置にリンク部材61が連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の回転機構と、その筐体の回転機構を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み式携帯通信機器においては、複数の筐体を折り畳んだ状態から、相対的に回転させて開放できるようにするため、筐体を接続する回転ヒンジを備えている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−324912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の回転ヒンジは外部に露出しており目立っている。また、開いたときに筐体同士に段差が発生している。
【0005】
本発明の課題は、回転ヒンジを目立たなくし、また、開いたときに筐体同士に段差が生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、二つの筐体を相対的に回転させるために互いの端部同士で接続するヒンジ軸と、両筐体を重ねた状態から相対的に回転させるのに伴って、前記ヒンジ軸を両筐体内からスライドさせて引き出すスライド部と、を備える筐体の回転機構を特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体の回転機構であって、前記ヒンジ軸が一方の筐体と一体に回転するのに連動して、前記スライド部をスライドさせるリンク部材を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の筐体の回転機構であって、前記ヒンジ軸は二つの回転軸からなり、その一方の回転軸の偏心位置に前記リンク部材が連結されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の筐体の回転機構であって、前記ヒンジ軸と一体的にトルク発生部が設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体の回転機構であって、前記ヒンジ軸及びスライド部を覆うカバーが設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の筐体の回転機構であって、前記ヒンジ軸が一方の筐体と一体に回転するのに連動して、前記スライド部をスライドさせる送りネジ部材を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の筐体の回転機構であって、前記ヒンジ軸は二つの回転軸からなり、その一方の回転軸と同軸上に設けた前記送りネジ部材にネジ結合されるレバー部材と、前記レバー部材を案内する斜めのレール部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の筐体の回転機構を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転ヒンジが内部に収納されているので目立たなくなっている。また、閉じた状態の第1筐体と第2筐体の厚み方向中心付近の高さにヒンジ軸を持ってくることにより、開いたときに筐体同士に段差が生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話の折り畳んで閉じた状態を示した斜視図(a)と、開いた状態を示した図(b)である。
【図2】図1(a)の閉じた筐体を透視して回転機構を示した斜視図(a)と、閉じた筐体の側面図(b)と、その筐体を透視して回転機構を示した図(c)である。
【図3】図1(b)の開いた筐体を透視して回転機構を示した斜視図(a)と、開いた筐体の側面図(b)と、その筐体を透視して回転機構を示した図(c)である。
【図4】図1の筐体と図2の回転機構及びカバーの分解斜視図である。
【図5】図2の閉じた筐体の回転機構の拡大図(a)と、図3の開いた筐体の回転機構の拡大図(b)である。
【図6】図5の回転機構の右構成部品の分解斜視図である。
【図7】図5の回転機構の左構成部品の分解斜視図である。
【図8】図5の回転機構の右構成部品の閉じた状態を示す拡大図(a)、開く中間状態を示す図(b)と、開いた状態を示す図(c)である。
【図9】図5の回転機構の平面図である。
【図10】図9の矢印A−A線に沿って右構成部品の閉じた状態を示す断面図(a)、開く中間状態を示す図(b)と、開いた状態を示す図(c)である。
【図11】図1の筐体の開く中間状態を示す図(a)と、その回転機構カバーを外した図(b)である。
【図12】図11の筐体の背面側を示す図(a)と、その回転機構カバーを外した図(b)である。
【図13】図11の筐体を透視して回転機構を示した側面図である。
【図14】図1の筐体の開いた状態を示す図である。
【図15】図14の筐体を透視して回転機構及び配線を示した図である。
【図16】回転機構の変形例を示すもので、筐体を透視して開いた状態を示した図である。
【図17】スライド機構の変形例を示すもので、閉じた状態の斜視図(a)と、開いた状態の図(b)である。
【図18】トルク発生部の変形例1を示すもので、閉じた状態の斜視図(a)と、その弾性部材の形状を示した図(b)である。
【図19】図18の回転機構の開いた状態を示す図である。
【図20】トルク発生部の変形例2を示すもので、閉じた状態の斜視図(a)と、そのトルク発生部を覆う部分を外した図(b)である。
【図21】図20の回転機構の開く中間状態の図(a)と、そのトルク発生部を覆う部分を外した図(b)である。
【図22】図20の回転機構の開いた状態の図(a)と、そのトルク発生部を覆う部分を外した図(b)である。
【図23】実施形態2の回転機構を示すもので、筐体を透視して閉じた状態の斜視図(a)と、閉じた筐体の側面図(b)と、その筐体を透視して回転機構を示した図(c)である。
【図24】図23の筐体を開いた状態の斜視図(a)と、開いた筐体の側面図(b)と、その筐体を透視して回転機構を示した図(c)である。
【図25】図23の閉じた筐体の回転機構の拡大図(a)と、図24の開いた筐体の回転機構の拡大図(b)である。
【図26】図25の回転機構の構成部品の分解斜視図である。
【図27】図25(a)の閉じた状態でスライド部を透視した図(a)と、そのスライド部も示した図(b)である。
【図28】図27(a)の回転機構の開く中間状態の図(a)と、そのスライド部も示した図(b)である。
【図29】図25(b)の開いた状態でスライド部を透視した図(a)と、そのスライド部も示した図(b)である。
【図30】図24(a)の回転機構に配線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として折り畳み式携帯電話を示したもので、図1(a)は折り畳んで閉じた状態を示し、図1(b)は開いた状態を示しており、1は第1筐体、2は第2筐体、3は操作部、4は表示部、5はヒンジカバーである。
【0017】
図示のように、第1筐体1に操作部3が設けられて、第2筐体2に表示部4が設けられて、これら第1筐体1と第2筐体2はヒンジカバー5等で覆われたヒンジ機構(回転機構)を介して折り畳み自在(開閉自在)に結合されている。
【0018】
図2は閉じた状態、図3は開いた状態、図4は分解した状態を示したもので、図5は回転機構を拡大して示しており、6は右のヒンジユニット、7は左のヒンジユニットである。
【0019】
図6は右のヒンジユニット6の構成部品を分解したもので、60は固定部、61はリンク、62・63はピン、64はヒンジ軸、65・66はスライド部、67はトルク発生部、68は圧入部、69はワッシャである。
【0020】
図示のように、固定部60には、リンク61及びピン62・63を介してヒンジ軸64が連結されている。すなわち、固定部60にリンク61の一端がピン62で連結されて、リンク61の他端がピン63でヒンジ軸64の偏心位置に連結されている。また、ヒンジ軸64の左右端の同軸上に一対のスライド部65・66が相対回転自在に連結されている。
【0021】
一対のスライド部65・66は、固定部60の左右のレール60aに沿って係合溝65a・66aをスライド自在に組み付けて、凹凸結合部65b・66bで一体化結合される。そして、ヒンジ軸64の周囲には、トルク発生部67及び圧入部68が組み付けられて、ワッシャ69により抜け止めされている。なお、トルク発生部67は、図示しないクリック発生部と圧縮コイルバネ及びワッシャを内蔵して構成される。
【0022】
図7は左のヒンジユニット7の構成部品を分解したもので、70は固定部、71はスライド部、72は中空軸、73は圧入部、74はワッシャである。
【0023】
図示のように、固定部70の左右のレール70aに沿ってスライド部71の係合溝71aがスライド自在に組み付けられている。スライド部71は、中空軸72に相対回転自在に連結されている。そして、中空軸72の周囲には、圧入部73が組み付けられて、ワッシャ74により抜け止めされている。
【0024】
以上、左右のヒンジユニット6・7において、固定部60・70が第1筐体1の内部にそれぞれネジ止めして一体化されて、圧入部68・73が第2筐体2のヒンジボス20内にそれぞれ圧入して一体化される。
【0025】
図8及び図10は右ヒンジユニット6の作用を説明するもので、図8(a)及び図10(a)に示す閉じた状態において、第1筐体1と第2筐体2を開くと、第2筐体2のヒンジボス20内に圧入した圧入部68と一体化されたヒンジ軸64の回転により、その偏心位置にピン63で連結したリンク61が、固定部60に連結されたピン62を支点に揺動する。
【0026】
このとき、固定部60に連結されたピン62を支点とするリンク61の揺動によって、ピン63を介して連結したヒンジ軸64の同軸上に相対回転自在に連結されたスライド部65・66が、固定部60のレール60aに沿って係合溝65a・66aでスライド移動して、図8(b)及び図10(b)に示す中間状態を経て図8(c)及び図10(c)に示す開いた状態になる。
【0027】
以上の結果、ヒンジ軸64は回転と同時にスライドする。つまり、ヒンジ軸64の回転角によりスライド位置が一義的に決まる。
【0028】
このような右ヒンジユニット6の動作と同期して左ヒンジユニット7も連動する。すなわち、第2筐体2のヒンジボス20内に圧入した圧入部73と一体化された中空軸72に相対回転自在に連結したスライド部71が、固定部70のレール70aに沿って係合溝71aでスライド移動する。
【0029】
以上の構成による右ヒンジユニット6及び左ヒンジユニット7を、第1筐体1と第2筐体2を閉じた状態において、図2に示すように、両筐体1・2内に収納した状態に組み付けてヒンジカバー5で覆った状態にする。なお、ヒンジ軸64は、閉じた状態の第1筐体1と第2筐体2の厚み方向中心付近の高さに位置している。また、開閉時の干渉を回避するため、第1筐体1もしくは第2筐体2のヒンジ側端部は切り欠き形状となっており、図2及び図3の例では、第2筐体2のヒンジ側端部が斜めの切り欠き形状となっている。
【0030】
図11(a)は両筐体1・2の開く中間状態を示し、図11(b)はそのヒンジカバー5を外したもので、図12(a)は図11の両筐体1・2の背面側を示し、図12(b)はそのヒンジカバー5を外したもので、図13は図11の両筐体1・2を透視してヒンジユニット6を示したものである。
【0031】
また、図14は図1の両筐体1・2の開いた状態を示し、図15はその両筐体1・2を透視してヒンジユニット6・7及び配線8を示したもので、図示のように、左のヒンジユニット7の中空軸72の中空部に、第1筐体1の操作部3と第2筐体2の表示部4とを電気的に接続する同軸細線による配線8を通している。
【0032】
以上、実施形態の折り畳み式携帯電話によれば、両筐体1・2を開放させるのに伴って、ヒンジ軸64を両筐体1・2内からスライドさせて引き出すスライド部65・66を備え、具体的には、ヒンジ軸64が第2筐体2と一体に回転するのに連動して、スライド部65・66をスライドさせるリンク61を備えることで、両筐体1・2を閉じた状態において、ヒンジカバー5が若干突出するだけで、回転ヒンジが内部に収納されているので目立たなくなっている。
また、閉じた状態の第1筐体1と第2筐体2の厚み方向中心付近の高さにヒンジ軸64を持ってくることにより、両筐体1・2を開いた状態において、筐体1・2同士に段差が生じることもない。
【0033】
(変形例)
図16は回転機構の変形例を示すもので、両筐体1・2を透視して開いた状態を示しており、左のヒンジユニット7を用いずに、図示のように、右のヒンジユニット6を一つだけ設けたものでもよい。
【0034】
図17はスライド機構の変形例を示すもので、図17(a)は閉じた状態、図17(b)は開いた状態を示しており、図示のように、左右のヒンジユニット6・7において、各々の固定部60・70に設けた円柱状のレール60c・70cを、各々のスライド部65・71に設けた貫通穴65c・71cにそれぞれ挿入した構造のスライド機構としてもよい。
【0035】
図18はトルク発生部の変形例1を示すもので、図18(a)は閉じた状態、図18(b)はその弾性部材9の形状を示し、図19は開いた状態を示しており、右のヒンジユニット6において、ヒンジ軸64上にトルク発生部67を設けずに、図示のように、スライド部65にねじりコイルバネ9を設けてもよい。
【0036】
図示例において、ねじりコイルバネ9は、その一端部を固定部60上にピン90で止めて、他端部をスライド部65下にピン91で止めている。
【0037】
このようにスライド部65に設けたねじりコイルバネ9の弾性付勢力によって、図18に示すように、ヒンジユニット6・7が閉じた状態に保たれ、また、図19に示すように、ヒンジユニット6・7が開いた状態に保たれる。
【0038】
図20はトルク発生部の変形例2を示すもので、図20(a)は閉じた状態、図20(b)はそのトルク発生部10を覆うスライド部65を外した状態を示し、図21(a)は開く中間状態、図21(b)はそのトルク発生部10を覆うスライド部65を外した状態を示し、図22(a)は開いた状態、図22(b)はそのトルク発生部10を覆うスライド部65を外した状態を示しており、図示のように、スライド部65にトルク発生部10を設けてもよい。
【0039】
図示例において、トルク発生部10は、係合駒11と、その軸部12の周囲に設けられた圧縮コイルバネ13とから構成される。係合駒11は、圧縮コイルバネ13の弾性付勢力によって、固定部60のスライド部65が係合する方のレール60aに形成した二個のストップ溝60d・60eのいずれかに係合した状態に保たれる。
【0040】
このようにスライド部65に設けたトルク発生部10の圧縮コイルバネ13の弾性付勢力によって、図20に示すように、固定部60のストップ溝60dに係合駒11が係合して、ヒンジユニット6・7が閉じた状態に保たれ、また、図22に示すように、固定部60のストップ溝60eに係合駒11が係合して、ヒンジユニット6・7が開いた状態に保たれる。
【0041】
しかも、ストップ溝60d・60eに対する係合駒11の圧縮コイルバネ13の弾性付勢力を伴う係合・離脱の際、すなわち、図21に示した中間状態から図20または図22に示した係合状態への移行やその逆の移行の際、適度のクリック感が得られる。
【0042】
なお、以上のスライド機能を利用して、図示しないが、他の部品を駆動させてもよい。
例えば、閉じている時と開いている時でサイドキーの表示を変えたり、あるいは、閉じているときはカメラレンズにカバーがスライドして覆って傷の防止を図り、ヒンジを開くとカメラカバーがスライドして開き撮影可としてもよい。
【0043】
また、以上の実施形態では、第2筐体2のヒンジボス20にヒンジ軸64及び中空軸72を圧入したが、筐体に設けた取付板に開けた穴にヒンジ軸を通してネジ止めしてもよい。
【0044】
(実施形態2)
図23及び図24は実施形態2の回転機構を示すもので、図23(a)は筐体1・2を透視して閉じた状態の斜視図、図23(b)はその閉じた筐体1・2の側面図、図23(c)はその筐体1・2を透視して回転機構を示し、図24(a)は筐体1・2を開いた状態の斜視図、図24(b)はその開いた筐体1・2の側面図、図24(c)はその筐体1・2を透視して回転機構を示しており、101はヒンジユニット、105はヒンジカバーである。
【0045】
ヒンジユニット101は、図25及び図26に示すように、第1筐体固定部110、スライド部111、第2筐体固定部113、ヒンジ軸114、中空軸115、送りネジ118・119、レバー120等から構成される。
【0046】
すなわち、第1筐体固定部110の左右のレール110aに沿ってスライド部111の係合溝111aがスライド自在に組み付けられるとともに、スライド部111が第1筐体固定部110の一対の縦方向溝110bに沿ってピン112でスライド自在に組み付けられている。
【0047】
そして、スライド部111に設けた左右一対の結合片111bに第2筐体固定部113が同一軸線上のヒンジ軸114及び中空軸115を介して回転自在に結合されている。左側のヒンジ軸114は、ホルダ116を介して第2筐体固定部113内を貫通するように結合片111bに組み付けられ、右側の中空軸115は、第2筐体固定部113の右側を貫通してカラー117を介し結合片111bに組み付けられている。
【0048】
また、ヒンジ軸114には同一軸線上に雄ネジ118が一体に形成されている。この雄ネジ118に雌ネジ119をネジ結合して、送りネジ部材が構成されている。さらに、雌ネジ119上にレバー120の一端部が一体化して組み付けられている。このレバー120の他端部には、第1筐体固定部110の左側に形成された斜め方向溝110cと、スライド部111の左側に形成された横方向溝111cとを貫通するピン121が取り付けられている。
【0049】
また、第2筐体固定部113内において、ヒンジ軸114上にトルク発生部103が組み付けられている。トルク発生部103は、一対のクリック発生部130・131と、圧縮コイルバネ132と、ワッシャ133により構成されている。
【0050】
以上の構成によるヒンジユニット101を、第1筐体1と第2筐体2を閉じた状態において、図23に示すように、両筐体1・2内に収納した状態に組み付けてヒンジカバー105でヒンジ軸114、中空軸115、送りネジ部材118・119及びトルク発生部103等を覆った状態にする。
【0051】
図27(a)及び(b)は閉じた状態を示したもので、図示のように、一対の縦方向溝110bの下端にピン112が位置して、斜め方向溝110cの左下端で横方向溝111cの左端にピン121が位置している。また、雄ネジ118の左端に雌ネジ119が位置している。このような閉じた状態は、トルク発生部103の圧縮コイルバネ132の弾性付勢力により保持され、また、一対のクリック発生部130・131の係合・離脱により適度のクリック感が得られる。
【0052】
図28(a)及び(b)は開く中間状態を示したもので、第1筐体1と第2筐体2を開くと、第2筐体固定部113と一体にヒンジ軸114が回転すると同時に、図示のように、ヒンジ軸114と一体の雄ネジ118の回転により雌ネジ119を介してレバー120が右方向に移動する。このとき、レバー120の下端のピン121が、斜め方向溝110cに沿って右上方向に移動するとともに、横方向溝111cに沿って右方向に移動する結果、縦方向溝110bに沿ってピン112が上方向に移動し、すなわち、第1筐体固定部110に対しスライド部111が上方向に移動する。
【0053】
図29(a)及び(b)は開いた状態を示したもので、図示のように、一対の縦方向溝110bの上端にピン112が位置して、斜め方向溝110cの右上端で横方向溝111cの右端にピン121が位置している。また、雄ネジ118の右端に雌ネジ119が位置している。このような開いた状態は、閉じた状態と同様、圧縮コイルバネ132の弾性付勢力により保持され、また、一対のクリック発生部130・131の係合・離脱により適度のクリック感が得られる。
【0054】
図30はヒンジユニット101に配線8を示したもので、図示のように、ヒンジユニット101の中空軸115の中空部に、第1筐体1の操作部3と第2筐体2の表示部4とを電気的に接続する同軸細線による配線8を通している。
【0055】
以上、実施形態2の折り畳み式携帯電話によれば、両筐体1・2を開放させるのに伴って、ヒンジ軸114を両筐体1・2内からスライドさせて引き出すスライド部111を備え、具体的には、ヒンジ軸114が第2筐体2と一体に回転するのに連動して、スライド部111をスライドさせる送りネジ部材118・119を備えることで、両筐体1・2を閉じた状態において、ヒンジカバー105が若干突出するだけで、回転ヒンジが内部に収納されているので目立たなくなっている。
また、閉じた状態の第1筐体1と第2筐体2の厚み方向中心付近の高さにヒンジ軸114を持ってくることにより、両筐体1・2を開いた状態において、筐体1・2同士に段差が生じることもない。
【0056】
(他の変形例)
以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などで複数の筐体よりなり回転自在となっている電子機器の全てに用いることができる。
また、実施形態の縦開き以外、横開きにも適用できる。
さらに、ヒンジ軸を引き出すのは軸と連動するリンク部材以外に、電動で押し出してもよい。
また、筐体、ヒンジ軸、スライド部の構成、リンク部材、カバー、送りネジ部材、レバー部材、レール部材の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 第1筐体
2 第2筐体
20 ヒンジボス
3 操作部
4 表示部
5 ヒンジカバー
6 右のヒンジユニット
60 固定部
61 リンク
62・63 ピン
64 ヒンジ軸
65・66 スライド部
67 トルク発生部
68 圧入部
69 ワッシャ
7 左のヒンジユニット
70 固定部
71 スライド部
72 中空軸
73 圧入部
74 ワッシャ
8 配線
9 弾性部材
10 トルク発生部
101 ヒンジユニット
110 第1筐体固定部
110c 斜めのレール部材
111 スライド部
112 ピン
113 第2筐体固定部
114 ヒンジ軸
115 中空軸
116 ホルダ
117 カラー
118 送りネジ部材
119 送りネジ部材
120 レバー
121 ピン
103 トルク発生部
130・131 クリック発生部
132 圧縮コイルバネ
133 ワッシャ
105 ヒンジカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの筐体を相対的に回転させるために互いの端部同士で接続するヒンジ軸と、
両筐体を重ねた状態から相対的に回転させるのに伴って、前記ヒンジ軸を両筐体内からスライドさせて引き出すスライド部と、を備えることを特徴とする筐体の回転機構。
【請求項2】
前記ヒンジ軸が一方の筐体と一体に回転するのに連動して、前記スライド部をスライドさせるリンク部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の筐体の回転機構。
【請求項3】
前記ヒンジ軸は二つの回転軸からなり、その一方の回転軸の偏心位置に前記リンク部材が連結されることを特徴とする請求項2に記載の筐体の回転機構。
【請求項4】
前記ヒンジ軸と一体的にトルク発生部が設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の筐体の回転機構。
【請求項5】
前記ヒンジ軸及びスライド部を覆うカバーが設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の筐体の回転機構。
【請求項6】
前記ヒンジ軸が一方の筐体と一体に回転するのに連動して、前記スライド部をスライドさせる送りネジ部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の筐体の回転機構。
【請求項7】
前記ヒンジ軸は二つの回転軸からなり、その一方の回転軸と同軸上に設けた前記送りネジ部材にネジ結合されるレバー部材と、前記レバー部材を案内する斜めのレール部材と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の筐体の回転機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の筐体の回転機構を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−142531(P2011−142531A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2534(P2010−2534)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】