説明

筐体

【課題】 筐体が挿入される収納室の筐体の載置面が傷付くのを防止する。
【解決手段】 底板1とフロントパネル2とリアパネル3とカバー本体4とで筐体を構成する。底板1の周縁部をほぼ全周に亘って上方へ折り曲げる。折り曲げられた底板1の周縁部にフロントパネル2及びリアパネル3の底面2h,3hとカバー本体4の下端部4hとを、底板1の底面1hよりも上方に位置するように接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は筐体に関し、特にモータ駆動回路等の電子機器を内蔵する筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体露光装置のウエハステージ及びレチクルステージの駆動手段として複数のモータが使用されており、各モータには駆動回路を内蔵した筐体がそれぞれ使用されている。一般に、複数の筐体はその筐体の形状に合致した複数の収納室を有するラックに収納される。筐体をラックに固定するための取付穴を形成するために筐体(カバー)の一部を折り曲げて鍔部を形成する(特開平6−244567号公報参照)。
【0003】
しかし、鍔部を精度良く直角に折り曲げることは難しいので、鍔部を筐体の底面と面一とすることは難しい。したがって、筐体をラックへ挿入するときやラックから引き出すときに鍔部によってラックの載置面が傷付く。
【0004】
このことを他の従来例を用いて以下に説明する。
【0005】
図4は従来の筐体の分解斜視図である。
【0006】
この筐体は底板11とフロントパネル12とリアパネル13とカバー本体14とで構成されている。
【0007】
矩形の底板11の四辺には鍔部11a,11b,11c,11dがそれぞれ形成されている。鍔部11a,11b,11c,11dは底板11の周縁部を上方へ直角に折り曲げて形成されている。
【0008】
鍔部11aにはフロントパネル12を取り付けるための2つの取付穴11a−1が、鍔部11aと対向する鍔部11cにはリアパネル13を取り付けるための2つの取付穴11c−1がそれぞれ形成されている。なお、図4では2つの取付穴11a−1のうちの片方は見えない。
【0009】
フロントパネル12は底板11に対して直角に取り付けられる。フロントパネル12の四辺には鍔部12a,12b,12c,12dがそれぞれ形成されている。
【0010】
鍔部12a,12b,12c,12dはフロントパネル12に対して直角に形成されている。鍔部12aと鍔部12b,12c,12dとは反対方向へ折り曲げられている。
【0011】
鍔部12aはリアパネル13から離れる方向へ折り曲げられている。鍔部12aには筐体をラック16(図5参照)に固定するボルト(図示せず)を通すための長穴12e,12fが形成されている。
【0012】
鍔部12b,12c,12dはリアパネル13へ近づく方向へ折り曲げられている。鍔部12bにはカバー本体14をフロントパネル12に取り付けるボルト18を通すための取付穴12b−1が形成されている。なお、図4では見えないが、鍔部12dにもカバー本体14をフロントパネル12に取り付けるボルト18を通すための取付穴が形成されている。
【0013】
フロントパネル12には筐体をラック16(図5参照)に挿入したり、ラック16から引き出したりするための一対のハンドル12Aが取り付けられている。
【0014】
底板11に対して直角に取り付けられるリアパネル13の三辺には鍔部13b,13c,13dがそれぞれ形成されている。
【0015】
鍔部13b,13dにはカバー本体14をリアパネル13に取り付けるボルト18を通すための取付穴13b−1,13d−1がそれぞれ形成されている。
【0016】
カバー本体14は2つの側板14a,14bと天板14cとで構成されている。側板14a,14bは互いに平行であり、天板14cに対してそれぞれ直角に折り曲げられている。側板14a,14bには、カバー本体14をフロントパネル12及びリアパネル13に取り付けるボルト18を通すための取付穴14a−1,14b−1がそれぞれ形成されている。
【0017】
図5は筐体のラック内への挿入方法を説明する斜視図、図6は筐体のラックへの取付方法を説明する斜視図である。
【0018】
図5,6はカバー本体14がフロントパネル12及びリアパネル13にボルト18で取り付けられ、フロントパネル12及びリアパネル13が底板11にボルト18で取り付けられた状態を示す。なお、図5,6ではボルト18の図示は省略されている。また、筐体内には図示しないモータ駆動回路等の電子機器が内蔵されている。
【0019】
図5に示すようにハンドル12Aを使用してラック16の収納室16Aの筐体載置面16aに筐体の底板11の底面11hを接触させながら筐体を収納室16Aへ挿入する。
【特許文献1】特開平6−244567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところが、実際上はフロントパネル12の鍔部12aや底板11の鍔部11a,11b,11c,11dを精度良く直角に折り曲げることは難しいとともに、底板11にフロントパネル12、リアパネル13及びカバー本体14を精度良く取り付けることは難しいので、
鍔部12aを底板11の底面11hと面一にすることは難しい。
【0021】
その結果、筐体をラック16へ挿入するときやラック16から引き出すとき、収納室16Aの筐体載置面16aが傷付く。
【0022】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は筐体が挿入される収納室の筐体の載置面が傷付くのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、底板とこの底板に装着されるカバーとを備え、ラックに取り付けられる筐体において、前記底板の周縁部のうち前記ラックに固定するための固定部以外が上方へ折り曲げられ、その折り曲げられた前記底板の周縁部に前記カバーの下端部が接続され、その下端部が前記底板の底面よりも上方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、筐体をラックに挿入するときやラックから引き出すときの載置面の傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1はこの発明の一実施形態に係る筐体の分解斜視図である。
【0027】
この筐体は底板1とフロントパネル2とリアパネル3とカバー本体4とを備えている。この実施形態ではフロントパネル2とリアパネル3とカバー本体4とで請求項1記載のカバーが構成される。
【0028】
矩形の底板1の四辺には鍔部1a,1b,1c,1dがそれぞれ形成されている。鍔部1a,1b,1c,1dは底板1の周縁部を上方へ直角に折り曲げて形成されている。
【0029】
鍔部1aが形成された側の底板1の一辺には、ラック6(図2参照)に筐体を取り付けるボルト(図示せず)を通す取付穴1e−1,1f−1が形成された延出部1e,1fが底板1と面一となるように形成されている。
【0030】
鍔部1aにはフロントパネル2を取り付けるための2つの取付穴1a−1が、鍔部1aと対向する鍔部1cにはリアパネル3を取り付けるための2つの取付穴1c−1がそれぞれ形成されている。なお、図1では鍔部1aの2つの取付穴1a−1のうち片方は見えない。
【0031】
ボルト8を用いてリアパネル3を鍔部1cに取り付けたとき、リアパネル3の底面3hが底板1の底面1hよりも上方となるように取付穴1c−1,3a−1は形成されている。
【0032】
底板1に対して直角に取り付けられるフロントパネル2の三辺には鍔部2b,2c,2dがそれぞれ形成されている。
【0033】
鍔部2b,2c,2dはフロントパネル2に対して直角に折り曲げられている。
【0034】
鍔部2b,2c,2dはリアパネル3に近づく方向へ折り曲げられている。
【0035】
鍔部2bにはカバー本体4をフロントパネル2に取り付けるボルト8を通すための取付穴2b−1が形成されている。なお、見えないが、鍔部2dにもカバー本体4をフロントパネル2に取り付けるボルト8を通すための取付穴が形成されている。
【0036】
フロントパネル2には取付穴1a−1と対向する位置に取付穴2a−1が形成されている。
【0037】
フロントパネル2には筐体をラック6に挿入したりラック6から筐体を引き出したりするために使用される一対のハンドル2Aが取り付けられている。
【0038】
底板1に対して直角に取り付けられるリアパネル3の三辺には鍔部3b,3c,3dがそれぞれ形成されている。
【0039】
鍔部3b,3c,3dはリアパネル3に対して直角に折り曲げられている。鍔部3b,3c,3dはフロントパネル2へ近づく方向へ折り曲げられている。なお、折り曲げられた部分は曲面形状となるため、ラック6への挿入時にラック6の筐体載置面6aに傷が付きにくい。
【0040】
鍔部3b,3dにはカバー本体4をリアパネル3に取り付けるボルト8を通すための取付穴3b−1,3d−1がそれぞれ形成されている。
【0041】
底板1の鍔部1a,1cの下端の角部には溶接・研摩によって丸みが付けられている。
【0042】
カバー本体4は2つの側板4a,4bと天板4cとで構成されている。側板4a,4bは互いに平行であり、天板4cに対して直角に折り曲げられている。側板4a,4bには、カバー本体4をフロントパネル2及びリアパネル3に取り付けるボルト8を通すための取付穴4a−1,4b−1がそれぞれ形成されている。
【0043】
図2は筐体のラック内への挿入方法を説明する斜視図、図3は筐体のラックへの取付方法を説明する斜視図である。
【0044】
図2,3にはカバー本体4がフロントパネル2及びリアパネル3にボルト8で取り付けられ、フロントパネル2及びリアパネル3が底板1にボルト8で取り付けられた状態が示されている。なお、ボルト8の図示は省略されている。また、筐体内には図示しないモータ駆動回路等の電子機器が内蔵される。
【0045】
ボルト8によって筐体を組み立てたとき、フロントパネル2及びリアパネル3の底面2h,3h、カバー本体4の下端部4hは底板1の底面1hよりも上方に位置する。したがって、例えばフロントパネル2が底板1に対して傾いて取り付けられた場合であっても、フロントパネル2やリアパネル3の下端が底板1の底面1hより下方にならない。
【0046】
図2に示すようにハンドル2Aを使用してラック6の収納室6Aの筐体載置面6aに筐体の底面を接触させながら筐体を収納室6A内へ挿入したとき、収納室6Aの筐体載置面6aに底板1の底面1hだけが面接触する。したがって、筐体によって収納室6Aの筐体載置面6aが傷付くことがない。筐体は収納室6Aの指定位置まで挿入された後、取付穴1e−1,1f−1を介して挿入した筐体固定用ボルト9によってラック6に固定される。
【0047】
なお、筐体をラック6から引き出すときには、上記手順を逆に辿ればよい。
【0048】
この実施形態によれば、筐体の底面と収納室6Aの筐体載置面6aとが面接触するので、筐体をラック6の収納室6Aに挿入するときやラック6の収納室6Aから引き出すとき、収納室6Aの筐体載置面6aを傷付けるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1はこの発明の一実施形態に係る筐体の分解斜視図である。
【図2】図2は筐体のラック内への挿入方法を説明する斜視図である。
【図3】図3は筐体のラックへの取付方法を説明する斜視図である。
【図4】図4は従来の筐体の分解斜視図である。
【図5】図5は筐体のラック内への挿入方法を説明する斜視図である。
【図6】図6は筐体のラックへの取付方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 底板
1a,1b,1c,1d 鍔部
1h,2h,3h 底面
2 フロントパネル
3 リアパネル
4 カバー本体
4h 下端部
6 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板とこの底板に装着されるカバーとを備え、ラックに取り付けられる筐体において、
前記底板の周縁部のうち前記ラックに固定するための固定部以外が上方へ折り曲げられ、
その折り曲げられた前記底板の周縁部に前記カバーの下端部が接続され、
その下端部が前記底板の底面よりも上方に位置する
ことを特徴とする筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−165367(P2006−165367A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356230(P2004−356230)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】