説明

籾すり機の安全装置

【課題】籾殻回収装置の収納袋又は収納箱が満杯になったら、籾すり機の選別性能に悪影響を与えたり内部循環経路中に詰まりを生じさせる前に、直ちに籾すり作業者に気付かせて必要な処置ができるようにした、構造が簡単で安価な安全装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】籾すり機1の籾殻排出パイプ2に籾殻搬送パイプ3を介して籾殻回収装置4を接続し、籾すり機1から選別風と共に排出される籾殻を回収する構成において、筒体外周面の一部に適宜の大きさの非常口9を開口し、通常の作業状態では前記非常口9を閉塞し、筒体内風圧の異常増加により非常口9を開放するように、安全弁10の一辺を丁番11等で筒体表面に固着して開閉自在と成した安全装置8を、籾殻搬送経路中の任意の位置に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は籾すり機に籾殻回収装置等を接続した場合の、籾すり機の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、籾すり機から選別風と共に排出される籾殻を回収するために、籾すり機の籾殻排出口に接続された籾殻搬送パイプの先端排出部付近に、籾殻収納袋又は籾殻収納箱等の籾殻回収装置を設置して籾すり作業をすることがある(例えば特許文献1、特許文献2参照。)。
また、共同利用施設として用いられる籾すり調整プラント等においては、籾殻搬送パイプ内における籾殻の詰まり状態を検出して警報を発し、それでも応急策が取られない場合には籾すり機を停止するべく構成したものも公知である(例えば特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開昭55−73238号公報
【特許文献2】実開昭55−81474号公報
【特許文献3】実公平4−50897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、籾すり機に籾殻回収装置等を接続した場合には、籾殻収納用袋又は籾殻収納箱に籾殻が満杯になっても、作業者が気付かずに籾すり作業を続けていると、籾殻搬送パイプ内に籾殻が充満すると共に選別風が籾すり機外に排出されないために、籾殻が未脱ぷ籾や玄米と共に籾すり機内部を循環して、玄米選別部の選別性能に悪影響を及ぼしたり、やがては籾すり機内各部に滞留して負荷を増大させ、機内各部を破損する事故につながる虞がある。
【0005】
また、特許文献3に示した安全装置は籾すり調整プラント等、高能率で大量の籾すり処理する設備で利用されているもので、センサー及び制御装置は高価なものであって、一般の小規模個人農家で使用されている小型の籾すり機と、上記特許文献1又は特許文献2に開示される籾殻回収装置等とを組み合わせた作業構成では導入に難がある。
【0006】
本発明は、前記従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、籾殻回収装置の収納袋又は収納箱が満杯になったら、籾すり機の選別性能に悪影響を与えたり内部循環経路中に詰まりを生じさせる前に、直ちに籾すり作業者に気付かせて必要な処置ができるようにした、構造が簡単で安価な安全装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、籾すり機1の籾殻排出パイプ2に籾殻搬送パイプ3を介して籾殻回収装置4を接続し、籾すり機1から選別風と共に排出される籾殻を回収する構成において、筒体外周面の一部に適宜の大きさの非常口9を開口し、通常の作業状態では前記非常口9を閉塞し、筒体内風圧の異常増加により非常口9を開放するように、安全弁10の一辺を丁番11等で筒体表面に固着して開閉自在と成した安全装置8を、籾殻搬送経路中の任意の位置に設けたものである。
【0008】
上記解決手段による作用は次の通りである。すなわち、籾殻回収装置4の籾殻収納袋7等に籾殻が満杯になり、籾殻回収装置4の筒体部分に籾殻が充満して、籾すり機1から送風される選別風を大気中に排風できなくなると、安全装置8筒体内の風圧力が上昇し、安全弁10を跳ね上げて非常口9を開放し籾殻と共に選別風が吹き出すため、籾すり作業者が視認しやすく、直ちに必要な処置を講ずることができる。
【発明の効果】
【0009】
上述したように本発明の安全装置は、複雑な電気回路等を必要とせず構造が簡単で安価にできて故障もなく、取扱いも簡単な安全装置を提供することができる。
【0010】
また、本発明の安全装置は籾殻搬送経路中の籾すり作業者が視認しやすい任意の位置に設けることができ、直ちに必要な処置を講ずることができるが、仮に処置が遅れても籾殻を含む選別風は非常口9から排出されるので、籾すり機1の選別性能に悪影響を与えたり内部循環経路中に詰まりを生じさせることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0012】
図において、1は籾すり機で籾すり後の籾殻を機外に排出する籾殻排出パイプ2を備えている。また、3は籾殻搬送パイプで作業所外等遠方に籾殻を搬送するため籾殻排出パイプ2に連続して接続されている。籾殻搬送パイプ3は搬送距離に応じて複数本設置されることがある。
【0013】
また、籾殻搬送パイプ3の最先端部には、一例として特許文献1(実開昭55−73238号公報)に開示されている籾殻回収装置4が設けられている。この籾殻回収装置4には筒体の途中から下向きに籾殻排出口6が分岐されていて、さらに分岐部分の筒体内には金網などの通気性部材のスクリーン5が設けられ、籾殻だけを籾殻排出口6に導入し、選別風は筒体の先方から大気中に排気されるように構成されている。そして、籾殻排出口6に籾殻収納袋7を交換自在に取り付けて籾殻を連続的に収納できるようにされている。なお、図示していないが籾殻排出口6を複数個設け、袋交換し易いように工夫されているものもある。
【0014】
また、籾殻排出パイプ2と籾殻回収装置4を連絡する籾殻搬送経路中で適宜な位置には、籾殻搬送パイプ3に連続して安全装置8を設けている。安全装置8は筒状に形成され円周上面の一部には籾すり機1の排風ファンの能力に応じて適宜な大きさの非常口9が開口されていて、通常の籾すり作業時には前記非常口9を閉塞し、筒体内風圧の異常増加時により非常口9を開放するように、安全弁10の一辺が安全装置8の筒体表面に丁番11で開閉自在に固着されている。
【0015】
本実施の形態例では筒体の円周略上面に非常口9を開口したので、通常の籾すり作業時には前記非常口9を閉塞する安全弁10の閉塞力を調整するため、安全弁10の自重に加えて丁番11取付辺と反対側の一辺を外方に立ち上げ、適宜な重さの錘12を小ねじ及びナットで固着してあり、籾すり機1の排風ファンの能力に応じて、重量の異なる錘12を選択可能に取り付けられるようにされている。
【0016】
以下、上記構成の動作を説明する。籾すり機1の排風ファンにより籾殻排出パイプ2から選別風と共に排出される籾殻は、籾殻搬送パイプ3を通過して籾殻回収装置4に至るとスクリーン5により選別風のみ通過して大気中に排出され、籾殻は籾殻排出管6から籾殻収納袋7に収納される。
【0017】
作業者は籾殻収納袋7に籾殻が満杯になると別の袋を付け替えて籾すり作業を続行するのであるが、時には満杯になったことに気が付かないで籾すり作業を続けてしまうことがある。そのような時には、籾殻回収装置4の筒体内に籾殻が充満してスクリーン5を塞いでしまい選別風が大気中に排出されないため、籾殻搬送パイプ3内の圧力が上昇して、安全装置8に設けた非常口9を塞ぐ安全弁10の自重と錘12の重圧に抗して、丁番11を支点に安全弁10を跳ね上げ非常口9を開放して選別風とともに籾殻が吹き出る。
【0018】
以上のように、籾殻搬送経路の途中から籾殻が吹き出れば作業者は直ぐに気付き、籾すり作業を中止して籾殻収納袋7を交換するなどの必要な処置をとることができる。また、仮に作業者が気付かず籾すり作業を続行した場合でも、開放された非常口9から選別風とともに籾殻が吹き出るので、籾すり機1の内部に籾殻が滞留し選別性能に悪影響を与えたり内部循環経路中に詰まり各部を損傷する等の不具合を発生する虞がない。
【0019】
なお、本実施例では安全装置8は図4のように筒体を円筒状に形成し、非常口9の中心を筒体中心の垂直線より右に傾け、安全弁10の錘12が筒体中心の垂直線に近い位置に来るように設定してあるので、筒体内の風圧が異常増加した時に非常口9が全開放になりやすく、又、籾殻が上方に吹き上げられるので作業者が確認しやすくなっている。
【0020】
また、安全装置8の筒体形状については円筒形だけでなく図6のように角形あるいは多角形状にしても良い。また、非常口9も筒体外周のどの位置に開口しても良いが、安全弁10で非常口を閉塞する手段として錘12に代えて、図示はしなかったが磁石を利用したり、ばね付き丁番を用いて閉塞力を調整するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を説明する一部省略の斜視図
【図2】安全装置の上面図
【図3】同安全装置の図2におけるA−A線断面図
【図4】同安全装置の図2におけるB−B線断面図
【図5】安全弁が開いた状態の安全装置の断面図
【図6】安全装置の別実施例断面図
【符号の説明】
【0022】
1 籾すり機
2 籾殻排出パイプ
3 籾殻搬送パイプ
4 籾殻回収装置
5 スクリーン
6 籾殻排出口
7 籾殻収納袋
8 安全装置
9 非常口
10 安全弁
11 丁番
12 錘


【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾すり機の籾殻排出パイプに籾殻搬送パイプを介して籾殻回収装置を接続し、籾すり機から選別風と共に排出される籾殻を回収する構成において、筒体外周面の一部に適宜の大きさの非常口を開口し、通常の作業状態では前記非常口を閉塞し、筒体内風圧の異常増加により非常口を開放するように、安全弁の一辺を丁番等で筒体表面に固着して開閉自在と成した安全装置を、籾殻搬送経路中の任意の位置に設けたことを特徴とする籾すり機の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167732(P2007−167732A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366383(P2005−366383)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000207160)大島農機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】