説明

粉粒体散布機

【課題】粉粒体を地面に散布するに際して、粉粒体が粉塵として大気中に飛散することを抑え、地面に付着し易くするとともに、付着後においても定着性を高める散布機を提供する。
【解決手段】車輪7,8を有する機体2に、粉粒体を収納するホッパー3を備えるともに、該ホッパー3の下部に粉粒体の吐出口3fを設け、機体2の進行方向における前記吐出口3fの前後の少なくとも一方に散水ノズル部13a,14aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒体散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鳥インフルエンザが社会問題化しており、その防止策として、鶏舎内の通路や、鶏舎周辺、及び周辺の道路、敷地に消石灰(生石灰)を散布し、殺菌、消毒することが必要とされている。
【0003】
従来の散布方法としては、フォークリフトにバケットを装着、あるいはトラックの荷台に消石灰を搭載し、人がスコップ等で地面に散布したり、巾狭く消石灰を散布し、ほうき等で地面上に掃き散らす等の方法や、また、地面に粉粒体を散布する機械として、粉粒体を動力(エンジン等)、人力等を使用し圧風を発生させて収納タンクからパイプ状の散布筒等に圧送し、散布筒の下部に開口した複数の散布孔から圧風によって、粉粒体を地面に向って広範囲に散布する方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−289812
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の散布機は、粉粒体を地面に向って広範囲に散布する手段として、散布筒の散布孔から粉粒体を圧風により放出するため、粉粒体が粉塵として大気中に飛散する割合が多く、地面に付着する量も少なくなるとともに、付着後においても風で粉粒体が散乱する等して非効率的であった。更に、飛散した粉塵を人が吸い込む等して、周囲に及ぼす影響も大きかった。
【0005】
そこで本発明は、前記の課題を解決する粉粒体散布機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、車輪を有する機体に、粉粒体を収納するホッパーを備えるともに、該ホッパーの下部に粉粒体の吐出口を設け、機体の進行方向における前記吐出口の前後の少なくとも一方に散水ノズル部を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記散水ノズル部を前記吐出口の前後に配置したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、機体に水タンクを搭載し、該水タンクからパイプを介して前記散水ノズル部に給水するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記水タンクを2個搭載し、一方の水タンクの水を前側の散水ノズル部に、他方の水タンクの水を後側の散水ノズル部に、各々別配管で給水するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記粉粒体が消石灰又は生石灰であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、散水ノズル部を吐出口の前後の少なくとも一方に配置したことにより、例えば吐出口の前側に散水ノズル部を設けることにより、先に濡らされた地面に粉粒体を散布することで、粉粒体が大気中へ飛散することを減少させながら散布し、粉粒体を地面に付着し易くできる。
【0012】
また、後側に散水ノズル部を設けることにより、粉粒体の散布後に散水ノズル部によって粉粒体を上から水で濡らすことにより、上記と同様の効果が得られる。
【0013】
更に、請求項2の発明のように、散水ノズル部を前後に設けて、粉粒体の散布の前後で散水することにより、粉粒体を確実に地面に付着させると同時に粉塵の飛散を一層防止し地面への定着性を高め、路面の亀裂部等にも粉粒体を浸透させることができる。
【0014】
更に、粉流体が大気中へ飛散することにより、その粉塵が作業者に振りかかることも防止でき、健康を害することがない。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、水源のない場所でも使用できる。
請求項4記載の発明によれば、両散水ノズル部をそれぞれ別々の水タンクに配管したことから、水タンクからの各散水ノズル部までの配管距離が相違しても、前後の散水ノズル部から同量の水を散水することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、粉粒体として消石灰又は生石灰を適用することで、消毒用の散布機として上記の効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1を示す。
図1に示すように、本発明の散布機1は、機体2に、散布する粉粒体を蓄えるホッパー3と、散水する水を蓄える水タンク4,5が搭載されて構成されている。
【0019】
機体2は、両側部と後部を構成するフレーム6と、両側部のフレーム6を中央で連結する中央フレーム6aと、機体2の前方を保護する前フレーム6bに備えた前車輪7とフレーム6に備えた後車輪8,8とで構成されている。
【0020】
前車輪7は機体2の前方中央に1本設けられており、この前車輪7の前輪回転軸7bが、機体2の進行方向における右側に位置して配置されて、かつ、中央フレーム6aと前フレーム6bに固定された前軸受部7aに、ベアリングユニット等の軸受を介して設けて回転可能に備えられている。また、該前車輪7は後述する後車輪8,8に比べて径と幅が大きいタイヤで構成され、凹凸が大きい路面においても乗り越え易くなっている。また、後車輪(ブレーキ付きキャスター)8,8は、機体2の後方において、フレーム6の両側部に亘って固定された後輪取付部8aの両側に回転可能に設けられて、左右に2本備えられている。該後車輪8,8にはブレーキ8b,8bが備えられており、停車時にブレーキをかけておくことができるようになっている。
【0021】
機体2の中間部両側端と後部両側端には支柱9a,9bが立設しており、各支柱9a,9bの上部には受台10が固設されている。また、後側の右左の支柱9b,9bにはハンドル11が固設されて立設しており、該ハンドル11の上部は、機体2の後方へ傾斜するとともに左右方向に亘って架設されている。
【0022】
受台10の上部には、図1及び図3に示すように、中空状の左側の水タンク支持台4aと,右側の水タンク支持台5aが設けられ、この水タンク支持台4a,5aは固定金具12によって受台10に固定されている。該水タンク支持台4a,5aの上には、水タンク4,5が載置されている。該水タンク4,5は、その嵌合部4b,5bを水タンク支持台4a,5aの上部開口部に嵌合して設置される。該水タンク4,5の上部には蓋4c,5cが、底面には流出口4d,5dが形成されており、左側の水タンク4の流出口4dにはパイプ13が,右側の水タンク5の流出口5dにはパイプ14が水タンク支持台4a,5aの中空部内において配管されている。
【0023】
両パイプ13,14は、まず、水タンク4,5の底面の流出口4d,5dから水タンク支持台4a,5aの中空部を通って機体2の前方へ向かい、機体2の左右方向における中央、すなわち、水タンク4と水タンク5の間を通るように屈曲し、更に、機体2の後方まで達し、更に機体2の両側へそれぞれ離反するように配管されている。その後、両パイプ13,14は、機体2の前方へ向かい、その途中で受台10を上面から底へ貫通してフレーム6の高さまで下降する。そして、左側のパイプ13は中央フレーム6a部まで達し、その後右側へ屈曲して機体2を横断するように、すなわち、機体2の左右方向に亘って配管されている。また、右側のパイプ14は、前側の支柱9aの下方まで達し、その下方から左側へ屈曲して機体2を横断するように、すなわち、左右方向に亘って配管されている。
【0024】
前記パイプ13,14において図2に示すように、機体2の左右方向に配管されたパイプ13a,14aの下面には図4に示すように水を放水する散水穴13b,14bが所定の間隔、本実施例では26.5mm間隔で設けられている。この散水穴13b,14bが形成されて左右方向に配置されたパイプ13a,14aを散水ノズル部とする。
【0025】
また、各パイプ13,14には、その水タンク4,5の間を通る部分に位置して、バルブ13c,14cが設けられ、このバルブ13c,14cを夫々独立して開閉調節することにより、両パイプ13,14からの散水量を調整したり止めたりできるようになっている。
【0026】
更に、機体2には、前記水タンク4,5と前車輪7との間に位置してホッパー3が配置され、支持金具3aと前側支柱9aに対してナットで固設して機体2に搭載されている。ホッパー3の左右方向における位置は両側部のフレーム6の間に配置され、ホッパー3の右壁面と右側のフレーム6の間には、後述するチェーン18が配置される空間が空けられている。
【0027】
また、ホッパー3の上部は開口しており、該開口部は蓋体3bにより開閉可能に閉塞できるようになっている。更に、ホッパー3の下部は図1、図5に示すように、前後側板3c,3dが内側に向って傾斜した漏斗状に形成されており、ホッパー3が下方に行くほど狭くなるように構成されている。前記の後側板3dの水平に対する傾斜角は、前側板3cの傾斜角よりも大きく設定され、そのホッパー3の下端部3eが後方へ偏位している。これにより、ホッパー3の下端部3eは中央フレーム6aより後方で、かつ、地面近くにおいて形成されている。
【0028】
更に、図5に示すように、下端部3eの最下面にはホッパー3内の左右方向の全長に亘って吐出口3fが開口形成され、かつ、該吐出口3fは、前側板3cを後側板3dの下端より下方へ長く形成して、機体2の後方に指向するように形成されている。また、吐出口3fの外部には、その全長に亘ってシャッター3gが設けられている。該シャッター3gには、その上下方向に長孔3hが形成され、これにボルト3iが挿入され、該ボルト3iを前記後側板3dに螺着するようになっている。したがって、ボルト3iを緩めることにより、シャッター3gが後側板3dの上下方向にスライド可能となっており、このスライドにより吐出口3fの開口面積を調節して、ホッパー3内の粉粒体の散布量を調整することができるようになっている。
【0029】
以上の構成より、図1に示すように、ホッパー3の吐出口3fの前側に前側の散水ノズル部13aが配置され、後側に後側の散水ノズル部14aが配置され、これらが吐出口3fに近接して配置され、かつ、吐出口3fが前側の散水ノズル部13aと後側の散水ノズル部14a、更にフレーム6よりも下方に位置するように構成されている。
【0030】
また、図5に示すように、前記ホッパー3の下端部3eにおける内側には、回転軸15が左右方向に架設され、該回転軸15の一方の端部である左端部はホッパー3の左壁に、他方の端部である右端部はホッパー3の右壁を貫通して回転可能に設置されている。この回転軸15の外周面には、ロールブラシ16が設けられ、該ロールブラシ16の外周縁が前側板3cと後側板3dに接するように配置されている。
【0031】
回転軸15には、前記のようにホッパー3の右壁と右側のフレーム6の間の空間においてスプロケット17が固着され、該スプロケット17にはチェーン18が巻装されている。このチェーン18は、前車輪7の前輪回転軸7bに設けられたスプロケット19に巻装され、前車輪7の回転をスプロケット17に伝達するようになっている。これにより、前車輪7が図1の矢印A方向に回転するとホッパー3内のロールブラシ16が図5の矢印A方向に回転し、ロールブラシ16が、ホッパー3内の粉粒体を吐出口3f方向へかき出すようになっている。
【0032】
次に使用状態について説明する。
まず、散布機1のバルブ13c,14cを閉じてから、水タンク4,5の蓋4c,5cを開けて水を水タンク4,5内に注入する。そして、シャッター3gが閉まっていることを確認し、粉粒体(本実施例では消石灰又は生石灰)をホッパー3の蓋体3bを開けてホッパー3内に投入する。
【0033】
次に、ハンドル11を押して鶏舎内や牧場、畑等、散布したい場所へ散布機1を移動させ、散布開始場所において、シャッター3gのボルト3iを緩めてシャッター3gを上方へ引き上げ、散布量に合せて吐出口3fを所望の広さに開口させ、更に、バルブ13c,14cを散水量に合せて調節して開く。その後、散布したい地面に沿って散布機1を押していく。
【0034】
この時、水タンク4,5内の水は受台10によって上方に設置されたことで、重力により水圧が発生し、散水ノズル部13a,14aの散水穴13b,14bから地面に向って散水される。
【0035】
また、散布機1が前進すると、前車輪7が回転し、その回転力がチェーン18を介して、ホッパー3内のロールブラシ16の軸に取付けたスプロケット17に伝達され、ロールブラシ16が前車輪7と同方向に回転する。すると、ホッパー3内に投入された前側板3c周辺の粉粒体を順にロールブラシ16が掻きこみ、粉粒体が一定量ずつ吐出口3fから地面に排出される。この散布機1の移動による前車輪7の回転をロールブラシ16の駆動力とするため、電動機のような回転駆動機が必要なく、散布機を簡単、安価に製造でき、更に、電源のない場所でも使用できる。
【0036】
これにより、まず、前側の散水ノズル部13aから散水された水によって地面が濡らされ、次に、吐出口3fから排出される粉粒体が、前記の散水されて濡れた地面に散布され、その後、後側の散水ノズル部14aから散水された水が、前記散布された地面の粉粒体の上に散水されて粉粒体を濡らす。
【0037】
前記一連の動作により、粉粒体が大気中へ飛散することを減少させながら幅広く均一に散布できる。また、吐出口3fの前側の散水ノズル部13aによって、先に濡らされた地面に粉粒体を散布することで、粉粒体を地面に付着し易くできる。更には、散布後に散水ノズル部14aによって粉粒体を上から濡らすことにより、粉粒体を確実に地面に付着させると同時に粉塵の飛散を防止し地面への付着性を高め、路面の亀裂部等にも粉粒体を浸透させることができ、更なる付着効果を発揮することができる。
【0038】
なお、生石灰を使用した場合においては、水を含むことにより生石灰が溶解し地面に一層浸透させることができる。
【0039】
更に、大気中へ飛散した粉塵が作業者に振りかかることも防止され健康を害することがない上に、一人で散布作業が行なえ効率的である。
【0040】
また、散水においては、左側の水タンク4から前側の散水ノズル13aが、右側の水タンク5から後側の散水ノズル14aがそれぞれ別々に配管されていることから、次のような効果も発揮する。
【0041】
例えば、一つの水タンクから前側と後側の散水ノズル部に配管すると、その前側ノズル部までの距離と後側ノズル部までの距離が異なる場合が生じる。このように距離が異なる2つの配管をすると、水圧の違いによって前後の散水量に差異が生じる問題がある。そこで、本実施例のように別配管とすることにより上記の問題が解消できる。
【0042】
また、配管途中の使用者の手が届く位置にバルブを13c,14cを設けたことにより、水量の調整が手元で行え、更には、必要に応じて前側、後側の散水ノズル部13a,14aのどちらか一方を選択して散水することができる。
【0043】
なお、本実施例では、散水ノズル部13a.14aを吐出口3fの前後の両方に設けたが、いずれか一方だけに設けても散水による効果が得られる。その場合は吐出口3fの後側の散水ノズル部14aを使用することが望ましく、散布した粉粒体の上面を濡らして散布後に粉粒体が飛散することを防止できる。
【0044】
また、本実施例では散水用に水タンクを使用したが、機体に水タンクを搭載することなく、機体にホースリールを備え、このホースの一端を直接水道管の蛇口に接続して取水し、他端を前記パイプ13,14に接続して散水してもよい。
【0045】
なお、本発明の散布機は、消石灰(生石灰)のみならず、他の粉粒体の散布機としても使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例を示す側面図。
【図2】図1の上面図。
【図3】本発明の実施例における水タンクの組付け図。
【図4】本発明の実施例における散水ノズル部の下面図。
【図5】本発明の実施例におけるホッパーの下端部の断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 散布機
2 機体
3 ホッパー
3f 吐出口
4,5 水タンク
13,14 パイプ
13a,14a 散水ノズル部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する機体に、粉粒体を収納するホッパーを備えるともに、該ホッパーの下部に粉粒体の吐出口を設け、機体の進行方向における前記吐出口の前後の少なくとも一方に散水ノズル部を設けたことを特徴とする粉粒体散布機。
【請求項2】
前記散水ノズル部を前記吐出口の前後に配置したことを特徴とする請求項1記載の粉粒体散布機。
【請求項3】
機体に水タンクを搭載し、該水タンクからパイプを介して前記散水ノズル部に給水するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の粉粒体散布機。
【請求項4】
前記水タンクを2個搭載し、一方の水タンクの水を前側の散水ノズル部に、他方の水タンクの水を後側の散水ノズル部に、各々別配管で給水するようにしたことを特徴とする請求項2又は3記載の粉粒体散布機。
【請求項5】
前記粉粒体が消石灰又は生石灰であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粉粒体散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−152212(P2007−152212A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349878(P2005−349878)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(391006452)株式会社瑞穂機械製作所 (2)
【Fターム(参考)】