説明

粉粒状物散布装置

【課題】粉粒状物の走行機体への降り掛かりによる防錆を図る。
【解決手段】乗用型走行機体に、粉粒状物を収容する左右一対のタンク10を設け、該左右のタンク10,10夫々の下方に、左右方向の軸心回りに回転してタンク10内の粉粒状物を下方の通気筒30に繰り出す繰出ロール20a〜20dを設け、該通気筒30に第1噴管13を接続し、この第1噴管13に蛇腹管40を介して揺動自在に第2噴管14を接続した粉粒状物散布装置において、前記第1噴管13、及び第2噴管14に噴口32,50を設け、これらの噴口のうち、第1噴管13の噴口32には、噴風によって搬送される粉粒状物の一部に作用して吐出する粉粒状物を機体中央側でかつ前後方向においてアクスルケース9存在側とは反対側に向けて案内する衝突板33を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粉粒状物散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繰出ロールの回転により車速に応じた粉粒状肥料を繰出しながら散布する散布機の技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、繰り出された肥料を左右に長い噴管をブロア風によって噴風させて先端側まで送り噴出させるが、途中の噴口からの噴出を良好に行わせるために衝突板を設け、さらに機体の下方に延出する案内パイプを設ける構成が公知である(特許文献2)。
【0003】
ところで、特許文献2のように構成すると、圃場表面全体に粉粒体を散布することができる効果があるが、固定の衝突板や案内パイプを設けるのみであるから、噴風による粉粒体の量の多少によっては案内パイプからの噴出量にムラを生じ、あるいは詰りの原因となるため、出願人は、噴出量が大小に変化してもこれに容易に対応させて圃場全体に散布すべく改良した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329067号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特許第3596155号公報
【特許文献3】特願2008−282542号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献3のように構成すると、粉粒状物の噴出量が大小に変更してもこれに容易に対応できる効果があるが、噴風によって搬送される粉粒状物の一部に作用して吐出する粉粒状物を機体中央側に向けて案内する衝突板を設けるものであるから、吐出部近傍の機体側構成部材、例えばリヤアクスルケースに降り懸かり錆発生の恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑み、請求項1に記載の発明は、前後のアクスルケース8,9から下方に延出する延出ケース18,19を介して前輪4と後輪5を支持すると共に搭乗座席7を備えた乗用型走行機体に、粉粒状物を収容する左右一対のタンク10を設け、該左右のタンク10,10夫々の下方に、左右方向の軸心回りに回転してタンク10内の粉粒状物を下方の通気筒30に繰り出す繰出ロール20a,20b,20c,20dを設け、該通気筒30に第1噴管13を接続し、この第1噴管13に蛇腹管40を介して揺動自在に第2噴管14を接続した粉粒状物散布装置において、前記第1噴管13、及び第2噴管14に噴口32,50を設け、これらの噴口のうち、第1噴管13の噴口32には、噴風によって搬送される粉粒状物の一部に作用して吐出する粉粒状物を機体中央側でかつ前後方向において前記アクスルケース9存在側とは反対側に向けて案内する衝突板33を設けてなる粉粒状物散布装置の構成とする。
【0007】
上記の構成によると、左右のタンク10,10から繰り出される粉粒状物は通気筒30を経て噴管13,14に至り、夫々の噴口から吐出されて圃場に散布される。噴口32,50から吐出される粉粒状物は衝突板33,51に当たって機体中央側でかつアクスルケース9存在側とは反対の方向に向け噴口32から吐出される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前後のアクスルケース8,9から下方に延出する延出ケースを介して前輪4と後輪5を支持すると共に搭乗座席7を備えた乗用型走行機体に、粉粒状物を収容する左右一対のタンク10を設け、該左右のタンク10,10夫々の下方に、左右方向の軸心回りに回転してタンク10内の粉粒状物を下方の通気筒30に繰り出す繰出ロール20a,20b,20c,20dを設け、該通気筒30に第1噴管13を接続し、この第1噴管13に蛇腹管40を介して揺動自在に第2噴管14を接続した粉粒状物散布装置において、前記第1噴管13、及び第2噴管14に噴口32,50を設け、これらの噴口のうち、第2噴管14に設けた複数の噴口50,50…には、噴風によって搬送される粉粒状物の一部に作用して吐出する粉粒状物を機体中央側でかつ前後方向に傾斜案内する衝突板51´,51´…を夫々設けてなる粉粒状物散布装置の構成とする。
【0009】
このように構成することによって、第2噴管14の噴口50から飛散される粉粒状物は衝突板51´,51´…によって夫々前後方向に傾斜案内されるから、粒状物は左右に円弧状を呈して吐出散布され、各噴口50,50…の円弧状散布粉粒状物はその一部が左右方向において重合し合う。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、噴管13,14の噴口32,50の下面に、支持板35を固着し、該支持板35の接合面35aに前記衝突板33,51´を上下長孔33aを介して固定具33bにより固定する構成とした。このように構成することによって、衝突板33,51´は個別に噴管32,50内への突出高さを調整できる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明は、噴口32から吐出される粉粒状物は衝突板33に当たって機体中央側でかつアクスルケース9存在側とは反対の方向に向け噴口32から吐出散布されるものであるから、アクスルケース9側への飛散がなされず、該アクスルケース9への飛散を防いで堆積による錆の発生を防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、第2噴管14の噴口50から飛散される粉粒状物は衝突板51´,51´…によって夫々前後方向に傾斜案内されるから、粒状物は左右に円弧状を呈して吐出散布され、各噴口50,50…の円弧状散布粉粒状物はその一部が左右方向において重合し合うため、円弧状散布粉粒状物の分布量が噴口50から遠ざかるに従い薄層を呈するも該重合によってほぼ均一化できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、衝突板33,51´は個別に噴管32,50内への突出高さを調整でき、粉粒状物の特性や散布量の相違に対応して適正散布状況を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】粒状施肥装置を装着した乗用管理機の平面図
【図2】粒状施肥装置を装着した乗用管理機の背面図
【図3】粒状施肥装置の繰出装置の一部拡大した平面図
【図4】第1噴管部拡大背面図
【図5】コントローラ接続一例を示す概要図
【図6】操作部の平面図
【図7】フローチャート
【図8】噴管部拡大背面図
【図9】第2衝突板の実施例を示す平面図
【図10】第2衝突板の従来例を示す下面図(A)、側断面図(B)、及び本発明の下面図(C)
【図11】参考例を示す乗用管理機の側面図
【図12】参考例を示す乗用管理機の背面図
【図13】参考例を示す操作部の平面図
【図14】参考例を示す噴管部の背面図
【図15】参考例を示す乗用管理機の側面図(A)、一部平面図(B)及び噴管受の拡大正面図(C)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
まず、図1と図2に示すように、粉粒状物散布装置1は、乗用管理機2の座席後部に装着される。即ち前部にエンジン3を搭載し、中央部にステアリングハンドル6や前記座席7を備え、エンジン3回転を適宜に変速して前後車輪4,5を伝動する乗用管理機2機体の後部には、左右一対のタンク10,10を装着する。上記粉粒状物散布装置1は左右夫々について、該タンク10、繰出装置11、送風装置12、第1噴管13、第2噴管14を設けてなり、またこれを制御する制御部15等からなる。
【0016】
なお、前輪4,4は、フロントアクスルケース8の左右に下向きに延出すべく接続する延出ケース18に、後輪5,5はリヤアクスルケース9の左右に下向きに延出すべく接続する延出ケース19にそれぞれ支持される。リヤアクスルケース9の左右延出ケース19について、該リヤアクスルケース9を中央の前後方向軸芯周りに揺動自在に設け、リヤアクスルケース9の左右端部には下向きに延出ケース19L,19Rを接続する。該延出ケース19L,19Rは上側の固定ケース部19aと下側の操舵ケース19bとからなり、操舵ケース19b側に設ける車輪軸5a,5aに後輪5L,5Rを支持する構成である。前記エンジン3の回転駆動力は、機体のミッションケース1A内伝動機構、リヤアクスルケース9内及び延出ケース19内伝動機構を経て車輪軸5a,5aに変速伝動される構成であり、後輪5L,5Rを駆動する。なお、前輪4L,4Rについて、フロントアクスルケース8、延出ケース18、延出ケースを構成する上側固定ケース部18aと下側操舵ケース18b、および車輪軸4a,4aを夫々後輪支持形態と同様に設けている。
【0017】
前記一対のタンク10の夫々に該タンク10から所定量の散布粉粒剤を繰出す繰出装置11が設けられる。繰出装置11は複数形態の繰出ロール20を繰出ロール駆動軸21に構成するもので、繰出凹部を同じ容量として周方向に複数形成した第1及び第2繰出ロール20a,20b、該第1繰出ロール20aと同形態の第3繰出ロール20c、及びこれら繰出ロールよりも短く且つ凹部深さを浅く形成した第4繰出ロール20dを1組とし、このうち第1,第2繰出ロール20a,20bをワンウェイクラッチ22,22を介して繰出ロール駆動軸21に装着し、第2繰出ロール20c及び第4繰出ロール20dは該繰出ロール駆動軸21に一体的に装着される構成である。
【0018】
従って、ロール駆動軸21が正転駆動するときは、ワンウェイクラッチ22の連動作用をもって第1,第2繰出ロール20a,20bが駆動されるため、第1〜第3繰出ロール20a〜20c全部が駆動される構成である。逆に繰出ロール駆動軸21が逆転駆動するときは、第1,第2繰出ロール20a,20bは停止し、第3繰出ロール20c,第4繰出ロール20dが駆動される。
【0019】
一方前記タンク10内は小容量タンク部16を備え、繰出装置11の第1〜第3繰出ロール20a〜20cに対応する区画Aと第4繰出ロール20dに対応する区画Bとに区分される構成となっている。例えば区画Aには一般的な施肥用粉粒状物用として、区画Bには少量散布が要求される除草用粉粒状物用として使用されるよう設けられている。従って、繰出ロール駆動軸21が正転するときは、第1繰出ロール20a〜第3繰出ロール20cが回転連動し区画Aの粉粒状物が繰出状態とされ、逆転するときは区画Aの第3繰出ロール20cのみの繰出し状態となる。なお、区画Bに粉粒状物を投入するときは、正転・逆転いずれも少量散布がなされる。
【0020】
ここで、前記小容量タンク部16の詳細について説明する。左右一対のタンク10は、夫々四角錘を逆さにして両者一体成形して形成される構成で、繰出ロール20a〜20dをのぞませる下端側に形成した四角形上の開口10aに向け、前後左右に傾斜面が構成される。そして小容量タンク部16Aは、繰出ロール20dにのぞむよう、外側傾斜面10bの一部を隔壁として利用し、この外側傾斜面10bと平面視コ型で3方をほぼ垂直壁に形成した仕切壁17Aとによって該小容量タンク部16Aを形成する。なお、図例では、平面視で左右タンク10の前後中央において左右方向に繰出ロール駆動軸21を配置し、小容量タンク部16Aもタンク10の前後中央に設けられる。
【0021】
以下の説明においては、第1〜第3繰出ロール20a,20bの繰出し状態を大供給状態、第3繰出ロール20cの繰出し状態を中供給状態、第4繰出ロール20dの繰出し状態を小供給状態という。また、これら大・中・小の3形態の繰出し状態において用いる繰出ロール又は繰出ロール組をもって繰出ロール種類1,2及び3が設定される。
【0022】
左右一対の繰出ロール駆動軸21,21は夫々に直交するモータ連動軸23、23にベベルギヤ24、24群によって連動される構成である。モータ連動軸23、23の一方は、繰出ロール駆動モータ25のモータ駆動軸26にカップリングで連結され、モータ連動軸23、23間はチェン、スプロケットによる連動機構27で連動されるものである。なお繰出ロール駆動モータ25は正・逆転切り替え連動する構成である。
【0023】
また、前記モータ連動軸23、23と左右の各ロール駆動軸21,21との間には、クラッチ手段28,28を備え、モータ連動軸23の回転を左側のロール駆動軸21へ伝達し又は非駆動の状態に切換え、該モータ連動軸23の回転を右側のロール駆動軸21へ伝達し又は非駆動の状態に切換できる構成とし、該クラッチ手段28,28は、運転席近傍の左・右ブーム散布レバー29,29によって各別に操作できる構成としている。
【0024】
前記のモータ連動軸23、ベベルギヤ24群、クラッチ手段28、ロール駆動軸21の組からなる伝動構成は、平面視において左右の組が同じ配置の伝動形態を採用して、左右対称構造におけるよりも誤組付を防止するものである。
【0025】
前記一対の繰出装置11,11の下方には夫々通気筒30,30をのぞませ、該通気筒30,30の一端は送風装置12を備えた送風筒31に連通される。そして下流側他端は第1噴管13に連通接続される構成である。詳細に説明すると、送風装置12は乗用管理機2機体の後部側に位置して設けられ、前後方向に送風筒31が配置される。この送風筒31の前端が左右に分岐して通気筒30,30に連通する構成である。送風装置12のブロア12aは機体側の図外PTO軸からの動力を受けて高速回転して起風しその噴風は送風筒31内を流れ、対称的に2分して通気筒30,30に入り、繰出される粉粒状物を該噴風によって搬送し、該粉粒状物は後続の第1噴管13に至る構成である。この送風筒31の途中には風量調節弁(図示せず)を備え、風量調節レバー34によって軸回りに回動調節できる構成としている。
【0026】
前記左右各第1噴管13は、通気筒30の長手方向、即ち搬送方向に沿う下手側に配置され、さらに該第1噴管13には夫々蛇腹管40を介して屈曲自在に第2噴管14を接続する。
【0027】
上記蛇腹管40を接続する筒体42に横支軸47を設け、第2噴管14はこの支軸47を介して連結されていて、前側への折畳みによる収納姿勢への動きのほか、横支軸47周りに回動させることによって上下に回動しうる構成となり、垂直の収納姿勢と水平の作業姿勢とに姿勢切り替えできるもので、後述する手元の噴管上下レバーの操作に基づき左側又は右側の第2噴管14,14を垂直姿勢(非作業姿勢)又は水平姿勢(作業姿勢)に切り替えることができる。
【0028】
前記第2噴管14には所定間隔毎に所定口径の噴口50,50…を所定間隔毎に形成している。これらの噴口50,50…には、その移送下手側に位置して傾斜姿勢の衝突板51,51…を配設している。また、繰出装置11の下方に位置する前記左右の第1噴管13には夫々その下部に噴口32を形成し、該噴口32に前記第2衝突板51,51と同様に第1衝突板33を設けている。
【0029】
この第1噴管13に設ける第1衝突板33を設ける目的は機体腹部へ向けて粉粒状物を散布するものであるが、その構成は次のとおりである。第1噴管13の下面に、背面視V型に形成した支持板35を固着する。この支持板35の接合面35aに上記第1衝突板33を上下長孔33aを介して固定具33bにより固定する構成となっており、上記接合面35aに重合する第1衝突板33は、第1噴管13内噴風の方向に対して向かい角を有すべく前傾斜し、かつ機体後方向き、すなわち前記リヤアクスルケース9存在側とは反対向きに斜めに設けられている。このように構成することによってリヤアクスルケース9存在側とは反対側に向けて落下案内することができる。また、長孔33aに対する固定具33b取り付け構成に基づき、第1衝突板33の噴管13内突出高さを調節することができ、適正な量を噴口32から排出案内できる。
【0030】
次いで上記構成の粉粒状散布装置1の制御部15について説明する。制御部15は、施肥コントローラ15A,モータコントローラ15B、及び本機コントローラ15Cを夫々接続して備え(図7)、このうち施肥コントローラ15Aは、施肥や除草剤散布に必要なデータ、例えば前記繰出ロール駆動モータ24のモータ回転パルス、左・右ブーム散布レバー48L,48Rによる選択情報、送風ファン12aの駆動情報、前記タンク10に設ける残量センサ54,54検出信号等を入力する一方、モータコントローラ15Bへモータ回転出力パルス信号、モータ回転方向切替信号等を出力する(図7)。
【0031】
上記本機コントローラ15Cは車速を検出する手段からの車速データを施肥コントローラ15Aに送信する構成である。
また、施肥コントローラ15Aは、操作パネル55に配設するスイッチ類の情報を入力する。図7の操作パネル55における液晶表示部56の近傍には、可変スイッチ57、施肥設定スイッチ58、増・減スイッチ59U,59D、累計リセットスイッチ60を配設し、これらの操作スイッチ信号は施肥コントローラ15Aに入力される構成である。なお、液晶表示部56の表示内容は、施肥量設定値、比重値、メモリー値、累計値を夫々表示でき、表示切換スイッチ61のオン操作で順次切換表示すべく出力される。
【0032】
キースイッチ(図示せず)をオンすると自動モードに入る。この自動モードは、単位面積当たりの施肥量が一定になるよう、施肥量設定値および車速に対応して繰出装置11の繰出ロールを駆動する前記モータコントローラ15Bにモータ回転出力パルス(繰出ロール駆動モータ回転信号)を出力する構成である。
【0033】
作業開始前に施肥設定スイッチ58をオンして現在設定の施肥量(反当り施肥量(kg)を表示させ、これからの作業に見合う施肥量であるか否か確認し、相違するときは増スイッチ59U又は減スイッチ59Dによって1kg単位で変更し、再度施肥設定スイッチ58を所定時間以上(例えば2秒以上)オンするとその値A(kg)が記憶される(図9、ステップ101)。
【0034】
次いで比重設定を行なう(ステップ102)。表示切換スイッチ61をオンし「比重」を選択すると、現在の設定値が表示される。これからの作業に見合う比重値であるか否か確認し、相違するときは増スイッチ59U又は減スイッチ59Dによって0.01単位で変更し、再度施肥設定スイッチ58を所定時間以上(例えば2秒以上)オンするとその値D(g/cm)が記憶される。
【0035】
前記のように、上記施肥量Aが予め設定された設定値大、中、小のいずれの範囲に該当するかによって、前記繰出装置11のどの繰出ロールを用いるか、即ち繰出ロール種類が判定される。本実施例の場合には、施肥量の判定がなされると(ステップ102〜ステップ105)、繰出ロール駆動モータ24の回転方向が決定されるよう構成している。即ち、施肥量Aが例えばa1(例えばa1=25kg)以上の大散布量に該当するときは、前記第1繰出ロール20a、及び第2繰出ロール20bが作動するよう繰出ロール駆動モータ24に正転信号が出力される(ステップ106、108)。
【0036】
同様に施肥量Aがa2≦A≦a1(例えばa2=5kg)の中散布量に該当するときは、前記第2ロール20bが作動するよう繰出ロール駆動モータ24に逆転信号が出力される(ステップ104、107)。
【0037】
そして施肥量AがA<a2の小散布量に該当するときも第3ロール20dが作動するよう繰出ロール駆動モータ24に逆転信号が出力される(ステップ105、107)。なお、中散布量とは同じモータ逆転信号が出力されるが、区画A又は区画Bのいずれに散布物が貯留されるかによって繰出装置11からの繰出散布物が決定されるものである(ステップ108、109)。
【0038】
上記のように、散布物の散布量設定によって大小に繰出量が異なるように設定されまたは用いる繰出ロールの組合せを変更設定することにより繰出ロール種類1、種類2又は種類3が判定され駆動状態に設定される。
【0039】
本実施例では、タンク内を区画A、区画Bに仕切って繰出ロール種類の選択設定を行なう構成としているが、特に区画B、仕切壁17Aとタンク10の外側傾斜面10bとで形成される小容量タンク部16Aへの粉粒状物の投入は、この小容量タンク部16Aがタンク10の前後中央に配置される構成であるから、後側からも前側からも容易にその上方解放部から投入を容易に行うことができる。
【0040】
前記のようにモータ駆動回転方向の判定がなされた後は、車速信号の入力、設定比重の判定の後、繰出ロール回転数が決定される(ステップ110〜113)。
前記のように車速S他に基づき施肥コントローラ15Aで算出された繰出ロール回転数Rbは、モータコントローラ15Bに出力され、この算出値に基づき繰出ロール駆動モータ25を回転連動する。
【0041】
なお、機体走行開始によって車速Sが規定値に達するとモータ回転出力パルス(ロール
駆動モータ回転信号)を出力し、規定値以下になると走行停止と判定してモータ回転出力パルスを出力停止する。また、走行中であっても、散布スイッチ69がオフされたり、ファンスイッチ70「切」のときはモータ回転出力パルス(繰出ロール駆動モータ回転信号)を出力停止する。さらに、車速が高速になり、モータ回転数計算値が予め設定した上限値を超えたときは、長音間欠でブザー(図示せず)をオンする。
【0042】
前記のように設定された繰出ロール回転方向と駆動モータ回転数とによって、所定に粉粒状物は繰出され、送風装置12のブロア12aによる噴風を受けて第1、第2噴管13、14を経由して散布されるが、ブロア12aからの噴風が送風筒13内で前方に送り出され、その終端で左右に分岐し、左右の通気筒30に入る。ここで、通気筒30の上方にのぞむ繰出ロール20a〜20cが上部から機体前側を経て下方に至る回転Xを正転に設定すると、繰出量が多くとも、噴風の通気筒30への送り込み作用で半径を大きく移行する噴風の方が流速が早いため、円滑に搬送できることになる。また、繰出された粉粒状物は噴風に乗って第1、第2噴管13、14内を搬送されるが、その搬送方向は一直線であるから、噴風が乱流となり難く、円滑に移送できる。
【0043】
本実施例のように、送風筒が後方から前方に至りその後左右に通気筒を接続すると共にその通気筒による送風の案内方向に延長する形態で噴管13、14を設ける構成とすると、上記のように送風の迂回のみで済み、粉粒状物の曲がり搬送をなくし得て搬送ロスを少なくできる。
【0044】
図10は、第1噴管13、第2噴管14の詳細を示す。前記のように、第1噴管13に蛇腹管40一端を挿通し、該蛇腹管40の他端に第2噴管14の基部を装着する構成である。蛇腹管40の先端筒部に硬質塩化樹脂製の第2噴管14のやや径大に成形した基部を外嵌し、クランプ41で固着する。43は第2噴管14に沿わせて設ける補強用のロッドで、その基部は上下回動用の前記横支軸47から延出状態に設けたアーム部材44と一体的に設ける筒体45であって、前記蛇腹管40の先端部に嵌合させて保持手段を構成するものである。該筒体45に前記補強ロッド43の基部を挿通保持しうる保持筒46を一体的に設けてある。補強ロッド43は基部をこの保持筒46に挿通し、途中部、及び先端部は、ブラケット48にて保持される。なおこのブラケット48は、第2噴管14に外嵌するように設ける一対の金具からなり、その上部に形成された対向する延長保持部48aに前記補強ロッド43を保持する構成である。
【0045】
上記のように、補強ロッド43の基部を所定に長い保持筒46に挿通保持させる構成であるから、従来ブラケット板によって補強ロッド43の側面を螺子締めによって保持する構成に比較して、補強ロッド43の伸び出し姿勢と第2噴管14の伸び出し姿勢にズレを生じ難く、第2噴管14の亀裂破損を防止できる。すなわち、前記従来の構成では、補強ロッド43の基部の側面一部を固定するのみであるから、補強ロッド43を拘束し難く安定性に欠け、第2噴管14とのずれを生じ易くて上記亀裂破損の原因となっているが、本実施例のように構成することにより、安定良く支持できる。
【0046】
なお、前記ブラケット48の上端にはワイヤ75を連結しており、該ワイヤ75は、左右の噴管上下レバー76に連結される。該レバー76の回動操作に基づき、第2噴管14は前記横支軸47を中心に上方回動し収納姿勢となる。ワイヤ75は、散布装置1の主フレーム77の側上部に配設した滑車78に巻き掛けられ、さらに、フレーム77側下部に滑車79に巻き掛けられた後、そのワイヤ端部は噴管上下レバー76に連動する連動部材に止着される。このように構成し、噴管上下レバー76を引き上げ操作すると、ワイヤ75が引かれ第2噴管14を機体側に引き寄せて垂直に立てることができる。
【0047】
図11は、第2噴管14の改良例を示すもので、該第2噴管14の噴口50,50…に、前記第1噴管13を所定間隔毎に形成している。これらの噴口50,50…には、その移送下手側に位置して噴風の流れ方向に対して前傾姿勢でかつ後方向きにも傾斜した第2衝突板51´,51´…を配設している。単に前傾姿勢のみの場合には、図12(A)(B)で示すように、第2噴管14の比較的下層に多く通過する粉粒状物はその一部が第2衝突板51,51…に衝突して噴口50,50…から落下排出される粉粒状体の散布状況は、直下部近くから遠ざかるに従い薄層を呈し、第2噴管14の全長に亘る範囲については分布状況が大小異なることとなる。ところが、上記のように構成すると、同図(C)に示すように、第2噴管14よりも平面視後方において、下方広がり状に分布するが左右端側が薄層になるも隣接との重合散布によって、第2噴管14の長手方向にほぼ均一に散布できる。なお、これら第2衝突板51´,51´…についても前記第1衝突板33と同様に、第2噴管14の下面に、背面視V型に形成した支持板35を固着し、支持板35の接合面35aに上記第2衝突板51´を上下長孔33aを介して固定具33bにより固定する構成となっており、第2衝突板51´,51´…の第2噴管14内への突出高さを調整できるようになっている。
【0048】
図11は前記図8における第2噴管14を吊り下げるワイヤ75の改良構成を示すものである。肥料タンク10から粉粒状物を下方に繰り出す繰出装置11を機体前後方向に沿わせる形態に設け、繰出装置11の下方の第1噴管13も機体前後方向に配設しその後方に蛇腹管40を介して第2噴管14を設けてなる。蛇腹管40を接続する筒体42に横支軸47を設け、第2噴管14はこの支軸47を介して連結されていて、前側への折畳みによる収納姿勢への動きのほか、横支軸47周りに回動させることによって上下に回動しうる構成となっている。そして、後述の構成の連動機構81により、左側又は右側の第2噴管14,14を垂直姿勢(非作業姿勢)又は水平姿勢(作業姿勢)に切り替えることができるように構成している。
【0049】
散布装置1の主フレーム77にタンク10、繰出装置11、送風装置12、第1噴管13を装着しておく。78はキャスタを備えた移動用フレームで、前記主フレーム77と一体に設けられている。主フレーム77又は移動用フレーム78のいずれかに連結フレーム79を設ける。該連結フレーム79の前端は、走行機体の後部に構成する連結ヒッチ80に上下回動自由に装着できる構成である。上記連動機構81は、折り畳み状態(散布装置1の作業姿勢装着状態)の前記移動用フレーム78に設けた滑車部82、伸縮シリンダ機構83、及び連結ワイヤ84等からなる。垂直姿勢として伸縮シリンダ機構83のシリンダ筒部を移動用フレーム78の下方に支持させ上下方向に伸縮作動可能に設けている。滑車部82はこの垂直姿勢の伸縮シリンダ機構83の直上に位置すべく移動用フレーム78の上部に設けている。この伸縮シリンダ機構83のピストン部と前記第2噴管14の途中部とを連結ワイヤ84で連結し、伸縮シリンダ機構83を短縮させると第2噴管14を横支軸47回りに回動させることができる。
【0050】
なお、上記滑車部82及び伸縮シリンダ機構83は左右に一対設けられ、左右の第2噴管14,14に対応付けられている。また伸縮シリンダ機構83,83は手元の操作ボックスに上下スイッチを配設し、運転席から操作できる構成としている。
【0051】
このように、伸縮シリンダ機構83,83を設けると第1及び第2噴管の上位に配設できるので、伸縮シリンダ機構83への粉粒状物の飛散の恐れが少なく、錆発生を防止できる。
【0052】
また、伸縮シリンダ機構83は移動用フレーム78の前側に配置構成することができ、後方からの衝突に対して該フレーム78がバンパーの役割を果たし該衝突による損傷の恐れが少ない。
【0053】
図12は、噴管上下ワイヤ及びその連動構成の改良に関する。第1、第2噴管13,14をタンク10の前後幅内に配置し、ロール駆動軸21の延長方向に張り出して該第1、第2噴管13,14を設ける構成において、一端を第2噴管14の途中部に連結したワイヤ86の他端を、散布装置1の主フレーム87の側面の上部に設けた滑車部88に巻き掛け、同じく主フレーム87の側面の下部に設けた伸縮シリンダ機構89に連結している。伸縮シリンダ機構89が短縮作動すると前記ワイヤ86を引き、第2噴管14を横支軸47周りに上方に回動できる。
【0054】
第2噴管14、ワイヤ86及び伸縮シリンダ機構89は同一垂直面内に配置構成されているため、滑車部88の動力損失を少なくし、シリンダ推力をも小さくできる。また、第2噴管14は収納状態から展開作業状態まで略90°の角度を回動させるものであるが、どの角度位置にあっても噴管の持上げ荷重が一定で持上げ速度も一定で速い効果がある。
【0055】
また、伸縮シリンダ機構89は垂直配置でかつ移動用フレーム78の左右巾寸法以内に設けるものであるから、走行中において障害物との接触が防止できる。
また、垂直姿勢の伸縮シリンダ機構89とは別に水平姿勢で伸縮シリンダ機構91を設け、第2噴管14を縦支軸92回りに回動できる構成とすることによって、水平状態で展開収納を行わせることができる。
【0056】
なお、これら両方の伸縮シリンダ機構89,91の操作スイッチを運転席手元の操作ボックスに配設することにより、遠隔操作で楽に操作できる。そして、この水平展開収納と上下角度調整とを左右夫々に十字レバー形態のスイッチ手段93,93にて構成することができる。この場合、左右の第2噴管14,14の操作に対して一対の十字レバースイッチ手段93,93を構成するものである。なお、図13に示すように自動収納スイッチ94、自動展開スイッチ95を同時にあるいは別々に設けることにより、ワンタッチ操作で左右の第2噴管14,14を自動収納又は自動展開張り出しすることができ便利である。なお実施例では、左右の噴管14,14を一括して収納・展開できる構成としたが、左・右第2噴管14,14毎に設ける形態でもよい。
【0057】
上記水平姿勢の伸縮シリンダ機構91は縦支軸92の上部近傍に設け、その上部に垂直の伸縮シリンダ機構89を配設しているから、第2噴管14が下方からの外力に基づき上方に揺動動作されても上方向に緩衝機能を備えて回動でき、噴管を損傷させる恐れがない。
【0058】
前記横支軸47部に角度検出センサ96及び操作ボックスには設定ダイヤル97を設け、左右の第2噴管14,14毎に前記十字レバースイッチ手段93,93により上下高さを微調整して水平状態におき、角度検出センサ96,96はこのときの角度情報を制御手段の記憶部に記憶する。次回作業からは十字レバースイッチ手段93,93の一気の操作(たとえば予め設定したストッパ位置までの)で記憶部に記憶した角度情報を呼び出しこの角度になるよう左右夫々の第2噴管14,14は下降展開される。このように構成すると、ワイヤの弛みなどに伴なう調整作業、つまりいちいち十字レバースイッチ手段93,93による微調整設定操作を省略でき、作業を円滑に行うことができる。
【0059】
また、前記設定ダイヤル97によって水平状態を基準に上下に所定角度の傾斜設定を行うことができ、等高線作業等に便利である。
図15は第2噴管14,14の収納構成に関する。機体の前部には別途作業装置、たとえば薬液散布装置のブームを装着保持する前部フレーム98を有し、この前部フレーム98を利用して噴管受99を構成し、第2噴管14を機体の側方に沿わせて収納しようとする。従来は各別に機体側から延出させた噴管受に拠っていたが、上記のように構成すると前部フレーム98を利用した受部構成となって機体側からの延出構成をなくすることができる。なお、前部フレーム97支持間隔は後部の第2噴管14の基端部間隔に対して広い関係に設けられる。したがって、前記噴管受99の基部は回転自在に設けてなる。即ち、前部フレーム98の上部から外方に突出するブラケット部98aに縦軸100を設け、該縦軸100に噴管受99のブラケット99aを組み合わせて噴管受99が縦軸100芯回りに回動自在とする。
【符号の説明】
【0060】
4 前輪
5 後輪
7 搭乗座席
8 フロントアクスルケース
9 リヤアクスルケース
10 タンク
13 噴管(第1噴管)
14 噴管(第2噴管)
20a、20b、20c、20d 繰出ロール
30 通気筒
32 噴口
33 衝突板(第1衝突板)
33a長孔
33b固定具
35 支持板
50 噴口
51 衝突板(第2衝突板)
51´衝突板(第2衝突板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後のアクスルケース(8,9)から下方に延出する延出ケースを介して前輪(4)と後輪(5)を支持すると共に搭乗座席(7)を備えた乗用型走行機体に、粉粒状物を収容する左右一対のタンク(10)を設け、該左右のタンク(10,10)夫々の下方に、左右方向の軸心回りに回転してタンク(10)内の粉粒状物を下方の通気筒(30)に繰り出す繰出ロール(20a,20b,20c,20d)を設け、該通気筒(30)に第1噴管(13)を接続し、この第1噴管(13)に蛇腹管(40)を介して揺動自在に第2噴管(14)を接続した粉粒状物散布装置において、前記第1噴管(13)、及び第2噴管(14)に噴口(32,50)を設け、これらの噴口のうち、第1噴管(13)の噴口(32)には、噴風によって搬送される粉粒状物の一部に作用して吐出する粉粒状物を機体中央側でかつ前後方向において前記アクスルケース(9)存在側とは反対側に向けて案内する衝突板(33)を設けてなる粉粒状物散布装置。
【請求項2】
前後のアクスルケース(8,9)から下方に延出する延出ケースを介して前輪(4)と後輪(5)を支持すると共に搭乗座席(7)を備えた乗用型走行機体に、粉粒状物を収容する左右一対のタンク(10)を設け、該左右のタンク(10,10)夫々の下方に、左右方向の軸心回りに回転してタンク(10)内の粉粒状物を下方の通気筒(30)に繰り出す繰出ロール(20a,20b,20c、20d)を設け、該通気筒(30)に第1噴管(13)を接続し、この第1噴管(13)に蛇腹管(40)を介して揺動自在に第2噴管(14)を接続した粉粒状物散布装置において、前記第1噴管(13)、及び第2噴管(14)に噴口(32,50)を設け、これらの噴口のうち、第2噴管(14)に設けた複数の噴口(50,50…)には、噴風によって搬送される粉粒状物の一部に作用して吐出する粉粒状物を機体中央側でかつ前後方向に傾斜案内する衝突板(51´,51´…)を夫々設けてなる粉粒状物散布装置。
【請求項3】
噴管(13,14)の噴口(32,50)の下面に、背面視V型に形成した支持板(35)を固着し、該支持板(35)の接合面(35a)に前記衝突板(33,51´)を上下長孔(33a)を介して固定具(33b)により固定する構成とした請求項1又は請求項2に記載の粉粒状物散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−50261(P2011−50261A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199826(P2009−199826)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】