説明

粒状体の接着方法および有害物質除去フィルタとこれを用いた有害物質除去フィルタユニット

【課題】接着強度に優れ、粒状体の機能性を最大限に活用できる粒状体の接着方法が必要とされている。
【解決手段】本発明の粒状体の接着方法は、粒状体の表面を被覆するとともに粒状体同士を連結しているホットメルト樹脂膜8に、微細孔9を形成することによって流体透過性を持たせることを特徴とする。粒状体をホットメルト樹脂膜8が被覆しているので接着強度が大きく、ホットメルト樹脂膜8が流体透過性を有しているので流体の粒状体への到達や粒状体からの流体の放出が促進され、粒状体の吸着容量を最大限に活用できる粒状体の接着方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の有害物質を吸着する粒状体の接着方法および有害物質除去フィルタとこれを用いた有害物質除去フィルタユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸着剤、芳香剤、調湿剤に代表されるような、機能性を有する粒状体を使用する場合、そのままでは粒径が小さすぎたり、あるいは流動性が高すぎたりして取り扱いが困難な場合がある。こうした場合、粒状体同士を接着して成型体として使用することが多い。
【0003】
例えば、空気中あるいは水中に含まれる有害物質を除去するために、従来から活性炭等の吸着剤を通気性に優れる基材に担持したフィルタが使用されてきたが、近年ではフィルタの交換の手間を減らすために長期間交換不要な長寿命フィルタが求められている。
【0004】
寿命を延ばすためにはフィルタに含まれている吸着剤の量を増やす必要があるので、吸着剤担持基材を用いないで、吸着剤をバインダーで強固に接着する方法を用いてフィルタ形状に成型する方法が提案されている。
【0005】
このような粒状吸着剤をバインダーで接着したフィルタとしては、特許文献1および特許文献2に記載されるような形態のフィルタが提案されている。特許文献1に記載のガス除去フィルタは、粒状吸着剤とプラスチック粉末の混合物を加熱して粒状吸着剤同士を接着したものをハニカム状に成型したものである。また、特許文献2に記載のフィルタは、活性炭表面に多孔質のバインダーを被覆したものを板状に成型したものである(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特許第2523059号公報
【特許文献2】特開2001−129393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸着剤や芳香剤といった粒状体表面を介して機能性を発現する粒状体を接着する場合、粒状体の表面がバインダーによって被覆されてしまうと、流体の粒状体表面への到達や粒状体からの流体の放出が妨げられるので、機能性を発現するのが困難となり性能が低下してしまう。
【0007】
例えば有害物質除去フィルタは、前述のように寿命を長くするために吸着剤の重量を多くしてより多くの有害物質を除去できるようにしており、具体的には吸着剤同士をバインダーで接着したものをフィルタ形状に成型したものが多い。
【0008】
しかしながら、このようにバインダーで吸着剤同士を接着する方法を用いると、活性炭のように細孔を有する吸着剤を使用した場合、表面がバインダーで被覆されると細孔が塞がれてしまい、吸着容量が低下してしまうという問題が生じる。
【0009】
そのためバインダーの量を減らして、表面を被覆しないように点接着を行う必要があるが、点接着では吸着剤とバインダーの接着面が少ないので接着強度およびその接着方法を用いて成型したフィルタの強度が低くなってしまうという課題がある。
【0010】
例えば、特許文献1のガス除去フィルタは粒状吸着剤とプラスチック粉末の混合物をハニカム状に成型したものであるが、バインダーであるプラスチック粉末が粒状吸着剤の表面を被覆しないようにバインダーを少なめにして点接着しているので、振動や衝撃によって接着部分が切れて粒落ちし易く、またフィルタ全体の強度も弱いという課題がある。
【0011】
また、特許文献2のガス除去フィルタは、バインダー被膜で活性炭を覆っているので接着強度には優れるが、バインダーと活性炭の接着部分やバインダー被膜の厚い部分では活性炭の細孔が塞がれてしまい、吸着容量が低下し寿命が短くなるという課題がある。
【0012】
このように、粒状体表面を介して機能性を発現する粒状体をバインダーで接着して成型体とする場合、いかに表面を被覆しないように強固な接着を施すかが重要となる。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、接着強度に優れるとともに粒状体の機能性を最大に活用できる粒状体の接着方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の粒状体の接着方法は、粒状体の表面を被覆するとともに粒状体同士を連結しているホットメルト樹脂膜に、微細孔を形成することによって流体透過性を持たせることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粒状体の接着方法は、粒状体の表面を被覆するとともに粒状体同士を連結しているホットメルト樹脂膜に、微細孔を形成することによって流体透過性を持たせるので、接着強度に優れるとともに粒状体の機能性を最大に活用できるように粒状体を接着することができる。
【0016】
また、本発明の有害物質除去フィルタは、流体透過性を有するホットメルト樹脂膜が、粒状吸着剤の表面を被覆するとともに前記粒状吸着剤同士を連結している成型体からなるので、フィルタ強度に優れ有害物質除去容量の大きい長寿命な有害物質除去フィルタを得ることができる。
【0017】
また、本発明の有害物質除去フィルタユニットは、請求項5から20いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタをプリーツ状に配置してなるので、流体が通過する際の抵抗が小さく、有害物質や粉塵の捕集効率が高い有害物質除去フィルタユニットを得ることができる。
【0018】
なお、流体とは気体および液体のことである。また、流体透過性とは、流体が通り抜けることができる微細孔や亀裂といった空間を物体が有しており、物体が流体を透過させることができる性質のことである。
【0019】
なお、ホットメルト樹脂とは、粉末状や粒状などの形状をしている溶融処理前のホットメルト樹脂のことである。また、ホットメルト樹脂膜とは、ホットメルト樹脂が溶融して形成された膜状のホットメルト樹脂のことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記目的を達成するために本発明の粒状体の接着方法は、粒状体の表面を被覆するとともに粒状体同士を連結しているホットメルト樹脂膜に、微細孔を形成することによって流体透過性を持たせるという特徴を有する。
【0021】
通常、吸着剤や芳香剤といった粒状体表面を介して機能性を発現する粒状体の表面をバインダーが被覆してしまうと、流体の粒状体表面への到達や粒状体からの流体の放出が妨げられるので機能性を発現できなくなってしまう。例えば、粒状吸着剤を使用して流体中の有害物質を除去する場合、流体が粒状吸着剤表面へ到達できなくなるので粒状吸着剤が有する吸着性能を発現できなくなる。
【0022】
また、粒状の芳香剤を使用して流体に香りをつける場合、芳香剤から発生する芳香成分がバインダーの被膜を通り抜けられないので芳香剤の芳香効果が得られない。そこで、粒状体を接着する場合には粒状体の表面を覆わないように最小限の面積で点接着することが多い。
【0023】
そのため、こうした場合は粒状体とバインダーの接着面積が少なくなるので接着強度が弱くなり、振動や衝撃によって粒状体が脱落することがある。
【0024】
本発明では、接着強度および物理的強度に優れるホットメルト樹脂膜が粒状体を広範囲に被覆して面接着しているので、振動や衝撃によってバインダーと粒状体の接着面が剥離することがなく、粒状体が脱落することがない。
【0025】
また、従来の点接着では水中において粒状体とバインダーの間に水が入り込んで接着が切れ易くなる。本発明では粒状体をホットメルト樹脂膜で包み込むように接着しているので、水中で粒状体とバインダーの剥離が起きた場合にも粒状体が保持され、脱落することがない。
【0026】
また、前述のとおり粒状体をホットメルト樹脂膜が被覆してしまうと、流体の粒状体表面への到達や粒状体からの流体の放出が妨げられ機能性の低下が見られる。本発明では、ホットメルト樹脂膜に微細孔が存在し流体透過性を有しているので、流体がこれらの空間を通過することにより粒状体表面への流体の到達や粒状体からの流体の放出が促進されることとなる。
【0027】
例えば、粒状吸着剤を使用して流体中の有害物質を除去する場合、有害物質を含有する流体が微細孔を通り抜け粒状吸着剤の表面へ到達することが容易になり、粒状吸着剤の吸着性能が十分得られるようになる。また、芳香剤のように粒状体内部に存在している物質を外部へ放出する必要がある場合、芳香剤内部に存在している芳香成分が微細孔を通り抜けてホットメルト樹脂膜の外側へ放出されることが容易となる。
【0028】
このように粒状体をホットメルト樹脂膜が被覆しているので接着強度が大きく、ホットメルト樹脂膜が流体透過性を有しているので流体の粒状体への到達や粒状体からの流体の放出が促進され、粒状体の機能性を最大限に活用できるという作用を有する。
【0029】
また、ホットメルト樹脂溶融時に粒状体中の水分が揮発してホットメルト樹脂膜を通過することにより、前記ホットメルト樹脂膜に微細孔を形成することを特徴とするものである。通常、イオン交換樹脂やゼオライトといった粒状体内部には水分が存在している。あるいは、粒状体に水分を添加して使用することで粒状体内部に水分を含有させることができる。
【0030】
粒状体を接着する時にはバインダーであるホットメルト樹脂を溶融するために加熱する必要があり、加熱時に粒状体内に含まれる水分がホットメルト樹脂膜内部を通過して徐々に外部に揮発することにより、ホットメルト樹脂膜に流体が透過できる微細孔が形成される。このため、接着強度が大きく、吸着容量を低下させること無く粒状体を容易に接着できるという作用を有する。
【0031】
また、ホットメルト樹脂膜は発泡剤を含み、この発泡剤が発泡することにより、前記ホットメルト樹脂膜に微細孔を形成することを特徴とするものである。ホットメルト樹脂膜の原料として、内部に発泡剤を含有しているホットメルト樹脂、あるいは粉末状ホットメルト樹脂に発泡剤を混合したものを用いることにより、成型後のホットメルト樹脂膜には発泡剤が分散して存在することになる。
【0032】
この状態で発泡剤の発泡温度まで加熱することにより、発泡剤から生じた気体がホットメルト樹脂膜を破って放出される。この気体が通り抜けた後には、流体が通り抜けられる微細孔が生じる。このように発泡剤を使用することにより、流体が透過できる微細孔を確実に形成できるという作用を有する。また、発泡剤の粒径を反映した孔径の微細孔が形成されるので、微細孔の孔径の制御が容易であるという利点を有する。
【0033】
また、ホットメルト樹脂膜は粉末状ホットメルト樹脂を使用して形成することを特徴とするものである。粉末状ホットメルト樹脂は粒状体と混合すると粒状体の表面に付着する。この状態で粉末状ホットメルト樹脂の融点まで加熱すると粒状体表面を均一に被覆することができる。
【0034】
また、粉末状ホットメルト樹脂の粒径や添加量を変えることにより、容易にホットメルト樹脂膜の厚みを変えることができる。このように粉末状ホットメルト樹脂を用いることにより、ホットメルト樹脂膜の性状を容易に変化させることができるという作用を有する。
【0035】
また、本発明の有害物質除去フィルタは、流体透過性を有するホットメルト樹脂膜が、粒状吸着剤の表面を被覆するとともに前記粒状吸着剤同士を連結している成型体からなることを特徴とするものである。通常、活性炭のような粒状吸着剤の表面をバインダーが被覆してしまうと吸着剤内部の細孔へ有害物質が侵入できなくなるので、吸着容量が低下する。
【0036】
本発明では、ホットメルト樹脂膜が流体透過性を有しているので流体の粒状吸着剤への到達が促進され、吸着剤の吸着容量を最大限に活用できる。このように接着強度が大きく吸着容量を最大限に活用できる接着方法を用いるので、得られる成型体も強度が大きく寿命の大きいという作用を有する。
【0037】
また、粒状吸着剤としてイオン交換樹脂を使用することを特徴とするものである。イオン交換樹脂は、活性炭のように表面に存在する細孔の入り口が塞がれると細孔内部へ有害物質が侵入できなくなる吸着剤と異なり、細孔によって有害物質を補足するのではなく、分子鎖の網目構造の中に有害物質が浸透し、分子鎖に固定されたイオン交換基によって補足される吸着剤である。
【0038】
すなわちイオン交換樹脂表面全体がイオン交換樹脂内部への入り口となっていて、表面から侵入した有害物質はイオン交換樹脂内部に存在するイオン交換基にも到達することができる。
【0039】
そのため表面の一部が被覆されていても、近傍の表面からイオン交換樹脂へ侵入した後、イオン交換樹脂内部を拡散することで被覆された部分近傍に存在しているイオン交換基にも有害物質が到達することができる。このため、表面の被覆率の増加によって吸着容量が大幅に低下することが無く、高吸着容量を保つことができる。
【0040】
また、イオン交換樹脂がゲル型イオン交換樹脂であることを特徴とするものである。活性炭などの水分を放出し易い吸着剤では、ホットメルト樹脂を加熱溶融中に水分が完全に揮発してしまい、生じた微細孔が溶融状態にあるホットメルト樹脂膜に潰されて閉じてしまう可能性がある。あるいはホットメルト樹脂の融点に達する前の昇温過程で水分がなくなってしまうこともある。
【0041】
ゲル型イオン交換樹脂はイオン交換樹脂の中でも特に水分保持性に優れ、120℃以上の高温で長時間加熱しないと完全に乾燥しない。そのためイオン交換樹脂としてゲル型イオン交換樹脂を用いると、ホットメルト樹脂の加熱溶融中に水分が無くなってしまうことがない。このように、流体が透過できる微細孔を確実に形成できるという作用を有する。
【0042】
また、成型後に、イオン交換樹脂に水分を添加してイオン交換樹脂の体積を膨張させることを特徴とするものである。イオン交換樹脂は水分を吸うと膨張する。成型後に水分を添加すると、イオン交換樹脂の体積が膨張しホットメルト樹脂膜は膨張の圧力を受ける。
【0043】
その結果、圧力に耐えられなくなったホットメルト樹脂膜には部分的に亀裂が入り、この亀裂を流体が透過できるようになる。このように、流体透過性に優れたホットメルト樹脂膜が形成されるという作用を有する。
【0044】
また、イオン交換樹脂の膨張によって、イオン交換樹脂とホットメルト樹脂膜の接着面に歪みが生じ、ホットメルト樹脂膜がイオン交換樹脂表面から剥離することもある。この場合、イオン交換樹脂とホットメルト樹脂膜の間に空間を生じることとなり、この空間も流体が通過できるようになるとともにイオン交換樹脂の被覆面積も小さくなる。このため、流体がイオン交換樹脂表面に接触し易くなり、より効率的にイオン交換樹脂の吸着容量を活かすことができる。
【0045】
また、成型体が、流体の流入方向において上流面から下流面まで達する貫通孔を有することを特徴とするものである。貫通孔が存在することにより、流体が流入方向に対して平行に流れることができるので、流体を通過させるときの抵抗が小さく、圧力損失が低減するという作用を有する。
【0046】
また、成型体に貫通孔を設けるための複数のピンを有する型に粒状吸着剤とホットメルト樹脂の混合物を充填した後、加熱後冷却して粒状吸着剤を連結した成型体を作製し、前記成型体を型から取り外すことで貫通孔を設けることを特徴とするものである。型に入れて加熱・冷却するだけで容易に型の形状を反映した貫通孔が得られ、また型の形状を変化させることにより任意の形状の貫通孔を容易に得ることができるという作用を有する。充填された混合物は型の形状に沿って硬化するので、複数のピンを任意の配列で有する型を用いることにより、成型体に複数の貫通孔を任意の配列で設けることができるという作用を有する。
【0047】
また、型の表面が易剥離性を有することを特徴とするものである。ホットメルト樹脂を用いた場合、加熱時に型に対しても接着性を有するので、取り外す際に型崩れを起こす可能性があるが、型の表面が易剥離性を有することにより型崩れをすることなく取り外すことができるという作用を有する。
【0048】
また、貫通孔を形成する貫通孔壁の内部に繊維体を有することを特徴とするものである。繊維体は、粒状吸着剤の隙間に絡むように存在し、一本の繊維で多数の粒状吸着剤を同時に連結できるので、貫通孔壁の強度を増加させるとともに有害物質除去フィルタからの粒状吸着剤の脱落を低減させる作用を有する。
【0049】
また、繊維体が有害物質吸着能を有することを特徴とするものである。補強材として添加してある繊維体が有害物質を吸着することにより、有害物質除去フィルタの強度を増加させるとともに吸着容量を増加させる作用を有する。
【0050】
また、粒状吸着剤が非極性有害物質を吸着することを特徴とするものである。非極性有害物質の吸着性能に優れる粒状吸着剤のみを選択的に使用することにより、非極性有害物質の吸着容量を最大にすることができるため、寿命を特に長くする作用を有する。
【0051】
また、粒状吸着剤が酸性有害物質を吸着することを特徴とするものである。酸性有害物質の吸着性能に優れる粒状吸着剤のみを選択的に使用することにより、酸性有害物質の吸着容量を最大にすることができるため、寿命を特に長くする作用を有する。
【0052】
また、粒状吸着剤がアルカリ性有害物質を吸着することを特徴とするものである。アルカリ性有害物質の吸着性能に優れる粒状吸着剤のみを選択的に使用することにより、アルカリ性有害物質の吸着容量を最大にすることができるため、寿命を特に長くする作用を有する。
【0053】
また、非極性有害物質、酸性有害物質、アルカリ性有害物質をそれぞれ吸着することが可能な各粒状吸着剤のうち、少なくとも2種類以上の粒状吸着剤を用いて形成されることを特徴とするものである。空気中には多種多様な有害物質が存在しており、また有害物質除去フィルタ自身からの発有害物質も起こりうるため、除去対象となる有害物質は複数存在することになるが、複数の粒状吸着剤を組み合わせることにより多くの種類の有害物質に対応できるという作用を有する。
【0054】
また、流体の流入方向における上流面、下流面のうち少なくとも一方の面に、流体透過性を有し粒状吸着剤の粒径よりも目が小さいシートを設けることを特徴とするものである。
【0055】
流体は通過することができるが粒状吸着剤は通過できない目の大きさを有するシートを有害物質除去フィルタの上流面もしくは下流面、もしくは両方の面に設けることにより、粒状吸着剤が有害物質除去フィルタから脱落したり、また、粒状吸着剤が有害物質除去フィルタの下流側に流出したりすることをなくすことができるという作用を有する。
【0056】
また、流体の流入方向における上流面、下流面のうち少なくとも一方の面に設けられたシートが有害物質吸着能を有することを特徴とするものである。イオン交換不織布などの吸着能を有する繊維群をシートとして用いることにより、有害物質除去フィルタ全体の吸着容量を増加させて寿命を大きくするという作用を有する。
【0057】
また、流体の流入方向における上流面、下流面のうち少なくとも一方の面に設けられたシートが流体中の粉塵を捕集する機能を有することを特徴とするものである。例えばポリプロピレンをメルトブロー法で繊維状に吹き付けてシート化し、帯電処理を行って作成した静電濾材などを有害物質除去フィルタの上流面もしくは下流面、もしくは両方の面に設けることにより、有害物質のみでなく流体中の粉塵をも捕集することが可能な有害物質除去フィルタを得ることができるという作用を有する。
【0058】
また、本発明の有害物質除去フィルタユニットは、請求項5から20いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタをプリーツ状に配置してなることを特徴とするものである。複数の有害物質除去フィルタをプリーツ状、すなわち蛇腹状に配置して、流体を有害物質除去フィルタのプリーツ面から通過させることによって濾過面積が増大して流体の通過速度が小さくなり、流体が通過する際の抵抗および有害物質や粉塵の捕集効率を高める作用を有する。
【0059】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に記述する実施の形態は本発明における一例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
(実施の形態1)
粒状吸着剤1の表面を被覆するとともに粒状吸着剤1同士を連結しているホットメルト樹脂膜に、微細孔を形成することによって流体透過性を持たせてあり、流入方向4において上流面5から下流面6まで達する貫通孔2を有する有害物質除去フィルタ14の構成図を図1に、A−A断面を示す構成図を図2に示す。なお、図1および図2において、粒状吸着剤1を被覆しているホットメルト樹脂膜8は省略してある。
【0061】
図1および図2に示すように、ホットメルト樹脂膜8によって連結された粒状吸着剤1が貫通孔2を形成する貫通孔壁7を形成している。粒状吸着剤1の表面はホットメルト樹脂膜8によって覆われており、同時に隣り合う粒状吸着剤1同士はホットメルト樹脂膜8によって非常に強固に結合しているのでフィルタが非常に強固なものとなっている。
【0062】
粒状吸着剤1の断面を拡大した図を図3に示す。このホットメルト樹脂膜8には流体が透過できる微細孔9が無数に存在している。流体はこの微細孔9を通って粒状吸着剤1まで到達することが可能であるので、粒状吸着剤1表面がホットメルト樹脂膜8に被覆されていても高い有害物質吸着効果が得られる。
【0063】
このように、ホットメルト樹脂膜8が粒状吸着剤1全体を強固に結合し、かつホットメルト樹脂膜8が流体透過性を有しているので、強固かつ吸着容量に優れたフィルタを得ることができる。
【0064】
また、有害物質除去フィルタ14には流入方向4において上流面5から下流面6まで達する貫通孔2が存在しているので、流入方向4に沿って上流面5から流入した有害物質は貫通孔2の内部を通り抜け、流体中に含まれる有害物質は貫通孔壁7を形成している粒状吸着剤1に接触・吸着されて除去される。有害物質が粒状吸着剤1に吸着されることにより、粒状吸着剤1近傍の有害物質濃度が小さくなって貫通孔2内で有害物質の濃度勾配が生じる。
【0065】
そして、有害物質濃度が均一になるように貫通孔2内で有害物質の拡散が起こる。この有害物質の濃度勾配の発生と拡散が繰り返し連続して起こることによって有害物質は捕集され流体中から除去される。貫通孔2を全て均一に孔径が小さくて流入方向4における長さをある程度有するものとすることによって、有害物質と粒状吸着剤1の距離を小さく、また有害物質と粒状吸着剤1とが接触する機会を多くすることができる。
【0066】
このように、貫通孔2内部では有害物質の濃度勾配の発生と拡散の繰り返しが迅速かつ無数に繰り返されることになることから全ての貫通孔2において高い有害物質捕集効率が得られる。
【0067】
また、有害物質除去フィルタ14の一部分だけに有害物質の流れが偏ってしまうとその部分だけに多量の有害物質が流れることになり、その一部分だけ有害物質捕集効率の低下が早くなって有害物質除去フィルタ14全体の寿命の低下を起こしてしまう。本実施例では、有害物質除去フィルタ14全面に同じ孔径の小さな貫通孔2が無数に空いているので、すべての貫通孔2に均一に有害物質を含む流体が通過する構造となっている。
【0068】
そのため、貫通孔2の一部だけ早く有害物質捕集効率が低下し、結果として寿命が低下してしまうといったことが無い。また、流入方向4において上流面5から下流面6まで達する貫通孔2が多数存在しており、流体の流れが流入方向4に対して平行流となるので流体通過時の抵抗が小さく、粒状吸着剤1が多いにもかかわらず低圧力損失を実現している。
【0069】
除去対象となる有害物質としては、空気中においてはアンモニアなどのアルカリ性有害物質、SOx、NOxやボロンといった酸性有害物質が挙げられる。水中ではカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび銅イオンといった金属イオンや硝酸イオンや塩化物イオンなどのイオンが挙げられる。また、トルエンなどの非極性物質も除去対象物質となる。
【0070】
また、本発明の有害物質除去フィルタ14を流体中の不純物の分離や、流体の精製の目的で使用する場合には流体中に含まれる不純物が除去対象物質となる。例えば、アミノ酸の精製に用いる場合にはアミノ酸に含まれるオリゴマー成分等の不純物が除去対象物質となる。
【0071】
粒状吸着剤1は球状や破砕状といった粒子状であり、様々な種類のものが挙げられるが主に活性炭やイオン交換樹脂、ゼオライトなどが挙げられ、粒径は0.1mm以上10mm以下程度が望ましい。
【0072】
アルカリ性有害物質の吸着捕集には燐酸などの酸を添着した酸添着活性炭やスルホ基などの陽イオン交換基を有する陽イオン交換樹脂が用いられる。また、酸性有害物質の吸着捕集には炭酸カリウムなどを添着したアルカリ添着活性炭やトリメチルアンモニウム基などの陰イオン交換基を有する陰イオン交換樹脂が用いられる。また、非極性有害物質の吸着捕集には化学物質の添着を行わない無添着活性炭や、また、芳香族系やアクリル系樹脂から合成され、メソ孔やマクロ孔を有する多孔質体である合成吸着剤がよく用いられる。
【0073】
また、除去対象となる有害物質が明確な場合、その有害物質の有害物質捕集効率に特化した粒状吸着剤1を用いることにより寿命を最大限に延ばした有害物質除去フィルタ14を作製することが可能である。例えば、除去対象有害物質がアンモニアである場合は陽イオン交換樹脂を、二酸化硫黄である場合は陰イオン交換樹脂を用いることにより、除去対象有害物質に対する吸着容量を大きくし最大限に寿命を延ばすことができる。
【0074】
また、除去対象となる有害物質が複数である場合は、粒状吸着剤1を複数種併用することにより多様な有害物質除去に対応可能な有害物質除去フィルタ14を作製することができる。空気中には複数の有害物質が含まれているのが普通であり、これらの有害物質が除去対象となった場合、アルカリ性有害物質用吸着剤、酸性有害物質用吸着剤および非極性有害物質用吸着剤を用いることにより、一枚の有害物質除去フィルタ14で多数の有害物質を除去可能となる。
【0075】
粒状吸着剤1の被覆・接着に用いるホットメルト樹脂の材質としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ウレタン系樹脂あるいはポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0076】
また、ホットメルト樹脂の形状としては粉末状や粒状などのものがあるが、粒状吸着剤1との混合が容易で、均一な被覆が可能であることから粉末状ホットメルト樹脂が好ましく、粒径は好ましくは10μm以上1.0mm以下である。
【0077】
ホットメルト樹脂膜8の被覆面積としては、被覆面積が少ないと接着強度が低くなるので、粒状吸着剤1の表面積の70%以上100%以下であることが好ましい。また、ホットメルト樹脂膜8の厚みとしては、薄すぎると強度が不足し、厚すぎると流体透過性を持たせることが困難となることから10μm以上1mm以下であることが好ましい。
【0078】
ホットメルト樹脂膜8に流体透過性を持たせる方法としては、本実施例のようにホットメルト樹脂膜8表面から粒状吸着剤1表面まで達する、流体が透過できる微細孔9を持たせることが挙げられる。
【0079】
この方法としては、粒状吸着剤1に含まれる水分を利用する方法がある。成型時にはホットメルト樹脂を溶融して粒状吸着剤1を被覆するために加熱する必要がある。この加熱時に、粒状吸着剤1中の水分がホットメルト樹脂膜8内部を通過して徐々に揮発することにより、ホットメルト樹脂膜8に流体が通り抜けられる微細孔9が形成される。
【0080】
また、ここで水分保持性に優れたゲル型イオン交換樹脂1を用いると、水分含有量が多いのでホットメルト樹脂が溶融する前に水分が完全に揮発してしまうことがなく、加熱中継続して水蒸気を放出することができるので好ましい。また、含有水分量の少ない粒状吸着剤1を用いる場合、予め粒状吸着剤1重量の5〜30%程度になるように水分を添加しておくと、微細孔を生じ易いので好ましい。
【0081】
また、ホットメルト樹脂膜8に微細孔9を持たせる方法として発泡剤を利用する方法がある。ホットメルト樹脂膜8の原料として、内部に発泡剤を含有しているホットメルト樹脂、あるいは粉末状ホットメルト樹脂に発泡剤を混合したものを用いることにより成型後のホットメルト樹脂膜8に発泡剤が分散して存在することになる。
【0082】
この状態で発泡剤の発泡温度まで成型体3を加熱することにより、発泡剤が分解して生じた気体がホットメルト樹脂膜8を破って放出されるので、流体が通り抜けられる微細孔9が生じる。
【0083】
発泡剤としては、発泡温度が140℃〜200℃程度のアゾジカルボンアミド系や120℃〜200℃程度のジニトロソペンタメチレンテトラミン系の有機系粉末状発泡剤、あるいは発泡温度が150℃程度の炭酸水素ナトリウムなどの無機系粉末状発泡剤が使用できる。粒径は1μm以上100μm以下であると発泡後の微細孔9の流体透過性が良好であるので好ましい。
【0084】
発泡剤の添加割合としては、ホットメルト樹脂膜8の強度を低下させないで十分な発泡効果を得るために、ホットメルト樹脂膜8の体積のうち、発泡剤の占有体積が0.1〜1%程度であると好ましい。
【0085】
また、ホットメルト樹脂の溶融温度と発泡剤の発泡温度の両方を超える温度で成型を行った場合、成型と微細孔9の形成を同時に行えるので好ましい。この場合、発泡温度はホットメルト樹脂の溶融温度と同じ程度が好ましく、例えばホットメルト樹脂として溶融温度が120℃〜150℃程度のポリアミド系ホットメルト樹脂を用いる場合には、発泡剤の発泡温度は120℃〜150℃が好ましい。
【0086】
これらの方法によって形成される微細孔9については、平均孔径が1μm以上100μm以下であると流体透過性が高いので好ましい。また、ホットメルト樹脂膜8の体積のうち、微細孔の占有体積が1〜10体積%程度であると、ホットメルト樹脂膜8の強度を低下させること無く、高い流体透過性を持たせることができるので好ましい。
【0087】
また、粒状吸着剤1としてイオン交換樹脂を用いて、ホットメルト樹脂膜8に亀裂を生じさせることにより、より高い流体透過性を持たせることができる。具体的な方法としては、成型後の有害物質除去フィルタ14に水分を添加してイオン交換樹脂を膨張させ、ホットメルト樹脂膜8表面からイオン交換樹脂表面まで達する亀裂をホットメルト樹脂膜8に生じさせる方法がある。
【0088】
水分添加量としては、イオン交換樹脂中の水分量が20〜40%程度になる程度であると、体積の膨張が著しく亀裂が生じ易いので好ましい。
【0089】
これらのようなホットメルト樹脂膜8に流体透過性を持たせる方法を組み合わせることで、さらに高い効果が得られる。
【0090】
成型体3に形成されている貫通孔2の断面形状としては、多角形や円形など、規則的に配列しやすい形状が挙げられる。貫通孔2の大きさは、平均半径が0.5mm以上10mm以下程度であると十分な通気性が得られ好ましい。
【0091】
また、粒状吸着剤1により形成される貫通孔壁7の厚みは、薄いと有害物質除去フィルタ14の強度が低下し、厚すぎると貫通孔壁7内部に埋もれて有害物質の吸着に有効活用されない粒状吸着剤1の割合が多くなるので、0.5mm以上10mm以下程度が好ましい。
【0092】
貫通孔2の形状や貫通孔壁7の厚みは、圧力損失、有害物質捕集効率、寿命および有害物質除去フィルタ14の強度に大きく影響するので、要求される項目および流入方向4における寸法すなわち有害物質除去フィルタ14の厚みを考慮して決定するのが好ましい。
【0093】
実際の製造方法としては、図4に示すような複数のピン10を有し、表面が易剥離性を有する型11に粒状吸着剤1とホットメルト樹脂の混合物を充填した後、加熱後冷却して粒状吸着剤1を連結した成型体3を作製し、前記成型体3を型11から取り外すことで貫通孔2を設ける方法が挙げられる。
【0094】
この方法では、粒状吸着剤1とホットメルト樹脂の混合物を型11に充填して加熱冷却するだけで、型11の形状を反映した貫通孔2が設けることができ、多様な有害物質除去フィルタ14設計に対しても対応し易いという利点がある。さらに、成型体3作製時、粒状吸着剤1とホットメルト樹脂の混合物を充填した後に加圧する工程を加えることにより、密で強固な成型体3が得られる。
【0095】
なお加熱方法としては、オーブン中で加熱しても良いし、通電処理による発熱、あるいはマイクロ波処理や超音波処理による発熱などを利用して加熱もよい。
【0096】
このようにして得られた成型体には、粒状吸着剤1の水分が揮発することよってホットメルト樹脂膜8に微細孔9が形成されているが、必要に応じて前述のような流体透過性をホットメルト樹脂膜8に持たせる処理を行うことが好ましい。
【0097】
ピン10の断面形状が有害物質除去フィルタ14の貫通孔2の断面形状に反映される。そのため、ピン10の断面形状は得ようとする貫通孔2の断面形状と同じにすればよい。また、ピン10の先端が徐々に細くなっていると、成型体3を型11から取り外すのが容易になる。また、ピン10の長さは有害物質除去フィルタ14の厚みを考慮して決定することが好ましいが、一般的には5mm以上200mm以下程度である。
【0098】
また、型11およびピン10の材質としては、アルミや鉄、ステンレス等の金属であると強度に優れ、繰り返し使えるので好ましい。
【0099】
易剥離性は、型11と成型体3の接着性を弱め成型体3を型11から外し易くするために重要である。しかしながら、液体の離型剤を用いると粒状吸着剤1の表面が離型剤によって覆われて有害物質捕集効率に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0100】
そのため、型11に易剥離性を付与するには、フッ素樹脂系の離型剤を型11に噴霧し、溶剤を揮発させて型11の表面をフッ素樹脂でコーティングしたり、フッ素樹脂コーティング剤に含浸乾燥してフッ素樹脂の膜を形成して表面を被覆したりして型11の表面に易剥離性をもたせる方法が好ましい。
【0101】
加熱温度は、ホットメルト樹脂が溶融する温度で十分であるが、前述の粒状吸着剤1の水分を利用する方法や、発泡剤を利用して同時に微細孔9を形成する方法でホットメルト樹脂膜8に微細孔9を形成する場合、あまりに高温すぎると形成されたホットメルト樹脂膜の流動性が高まり、形成した微細孔9を塞いでしまう可能性があるのでホットメルト樹脂の融点より10℃から30℃高い程度の温度が好ましい。
【0102】
以上のように、粒状吸着剤1の表面を被覆しているホットメルト樹脂膜8に微細孔9や亀裂を形成することにより、従来の有害物質除去フィルタ14よりも強度に優れ吸着容量も最大限に活用できる有害物質除去フィルタ14を作製できる。
【0103】
なお、本実施の形態においては、有害物質の除去を目的とするので粒状体として粒状吸着剤1を使用したが、粒状体として調湿剤や芳香剤を使用して、同様の製造方法を行うことにより他の用途での使用が可能なフィルタが得られる。
【0104】
例えば、粒状体として、気化することでヒノキやミントなどの香りを生じる芳香液を内部に含有している芳香剤を用いることにより、通過した流体に香りをつけることができる芳香フィルタになる。また、粒状体として、ゼオライトなどの調湿剤を用いることで、通過した流体の調湿が可能な調湿フィルタになる。
【0105】
これらの粒状体を用いてフィルタを製造する場合においても、本実施の形態で説明した有害物質除去フィルタ14の製造方法と同様の方法で成型することが可能である。なお、芳香剤を用いた場合、成型工程で芳香液の一部が放出されてしまうことが考えられるが、フィルタ成型後に再度芳香液を添着することにより、成型工程で放出されて低下した機能性を回復することができる。
【0106】
このように、本発明によって機能性を有する粒状体を、流体透過性を有するホットメルト樹脂膜8で強固に接着することにより、粒状体の機能性を損なうことなくフィルタなどの成型体として活用することができる。
【0107】
(実施の形態2)
貫通孔壁7内部が有害物質吸着能を有する繊維体12を有している有害物質除去フィルタ14の拡大図を図5に示す。図5に示すように、長い繊維体12が粒状吸着剤1の隙間を縫うように、また絡み合って存在しているので、繊維体12と粒状吸着剤1間の接着によりさらに有害物質除去フィルタ14の強度が増加している。また、繊維体12自身が有害物質吸着能を有するので、より多くの有害物質を吸着することが可能となっている。
【0108】
繊維体12としては一般的な有機繊維や無機繊維が使用できるが、特にガラス繊維や炭素繊維、セラミック繊維等の強度に優れた繊維体12を用いるとより強度に優れた有害物質除去フィルタ14となる。また、イオン交換基が繊維内部や表面に固定化されたイオン交換繊維や、有害物質を吸着できる細孔を有している活性炭素繊維等、有害物質吸着能を有する繊維体12を用いるとより吸着容量に優れた有害物質除去フィルタ14となる。
【0109】
繊維長は短すぎると有害物質除去フィルタ14から脱落し易くなるので2mm以上50mm以下程度であることが好ましい。また、繊維径はより高い強度を得るために、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0110】
このような繊維体12を成型前の粒状吸着剤1およびホットメルト樹脂の混合物に添加することにより、成型後の貫通孔壁7の内部に繊維体12が補強材として存在する有害物質除去フィルタ14が得られる。繊維体12の配合量としては、繊維体12の重量が全体の重量の1%以上20%以下程度であると粒状吸着剤1の量を保ちつつ有害物質除去フィルタ14強度を増加することができるので好ましい。
【0111】
(実施の形態3)
実施の形態1に記載された有害物質除去フィルタ14の両方の面に、流体透過性を有し粒状吸着剤1の粒径よりも目が小さいシート13が設けられ、そのシート13が粉塵を捕集する機能を有する有害物質除去フィルタ14の斜視図を図6に示す。本来は、成型体3およびシート13は一体化しているが、構造をわかり易くするため少し離して示してある。
【0112】
粒状吸着剤1が有害物質除去フィルタ14から絶対に脱落しないとは限らず、使用時に粒状吸着剤1が下流側に流出して流体を汚染したり、取り扱い時に粒状吸着剤1が有害物質除去フィルタ14から脱落して使用環境を汚染する可能性が万が一でもありうる。シート13を有害物質除去フィルタ14の上流面5および下流面6に設けることにより粒状吸着剤1の有害物質除去フィルタ14からの脱落をほぼ確実になくすことができる。
【0113】
シート13としては、スパンボンド法やサーマルボンド法により製造される繊維径1μm以上50μm以下の不織布で、通気口径5μm以上100μm以下のものを、使用する粒状吸着剤1等の粒径に合わせて適時用いると下流側の汚染を漏れなく防止でき好ましい。
【0114】
また、シート13として粉塵を捕集する機能を有する集塵濾材、例えばポリプロピレンをメルトブロー法で繊維状に吹き付けてシート化し帯電処理を行って作成した静電濾材や、ガラス繊維をすきこみバインダーで結合したガラス繊維濾材などを用いることにより、有害物質のみでなく流体中の粉塵をも効率よく捕集することができる。
【0115】
また、シート13作製時にイオン交換繊維や活性炭繊維等を添加して吸着能を持たせたり、グラフト重合等によりシート13に吸着官能基を付加したりすると、有害物質除去フィルタ14の総吸着容量が増加し寿命を延ばすことができる。
【0116】
(実施の形態4)
実施の形態1に記載された有害物質除去フィルタ14をプリーツ状に配置してなる有害物質除去フィルタユニット15を上面から見た図を図7に示す。流体は流入方向4から有害物質除去フィルタユニット15に流入し、有害物質除去フィルタユニット15内部に存在する粒状吸着剤1に吸着されて有害物質は除去される。
【0117】
有害物質除去フィルタ14をプリーツ状に配置すると、プリーツ状に配置していない平面状のものと比較して濾過面積が増大して流体を通過させたときの流速が小さくなり、有害物質の有害物質捕集効率が向上するとともに圧力損失が低減し流体透過性が向上するという効果が得られる。
【0118】
有害物質除去フィルタ14をプリーツ状に配置する場合、プリーツ深さが20mm以上でプリーツ間隔が10mm以上であるとプリーツの山と山の間に流体が通りやすくなるとともに有害物質捕集効率が向上するので好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の粒状体の接着方法は、接着強度に優れるとともに粒状体の機能性を低下させることが無く、成型体を作製する際の粒状体の接着方法として利用可能である。また、本接着方法を用いて作製した有害物質除去フィルタおよび有害物質除去フィルタユニットは、流体中の有害物質の除去が長期間にわたって可能な有害物質除去フィルタおよび有害物質除去フィルタユニットとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】実施の形態1に記載の有害物質除去フィルタの構成図
【図2】実施の形態1に記載の有害物質除去フィルタのA−A断面を示す構成図
【図3】実施の形態1に記載の粒状吸着剤の断面を拡大した図
【図4】実施の形態1に記載の型の斜視図
【図5】実施の形態2に記載の有害物質除去フィルタの拡大図
【図6】実施の形態3に記載の有害物質除去フィルタの斜視図
【図7】実施の形態4に記載の有害物質除去フィルタユニットを上面から見た図
【符号の説明】
【0121】
1 粒状吸着剤
2 貫通孔
3 成型体
4 流入方向
5 上流面
6 下流面
7 貫通孔壁
8 ホットメルト樹脂膜
9 微細孔
10 ピン
11 型
12 繊維体
13 シート
14 有害物質除去フィルタ
15 有害物質除去フィルタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状体の表面を被覆するとともに粒状体同士を連結しているホットメルト樹脂膜に、微細孔を形成することによって流体透過性を持たせることを特徴とする粒状体の接着方法。
【請求項2】
ホットメルト樹脂溶融時に粒状体中の水分が揮発してホットメルト樹脂膜を通過することにより、前記ホットメルト樹脂膜に微細孔を形成することを特徴とする請求項1記載の粒状体の接着方法。
【請求項3】
ホットメルト樹脂膜は発泡剤を含み、この発泡剤が発泡することにより、前記ホットメルト樹脂膜に微細孔を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の粒状体の接着方法。
【請求項4】
ホットメルト樹脂膜は粉末状ホットメルト樹脂を使用して形成することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の粒状体の接着方法。
【請求項5】
流体透過性を有するホットメルト樹脂膜が、粒状吸着剤の表面を被覆するとともに前記粒状吸着剤同士を連結している成型体からなることを特徴とする有害物質除去フィルタ。
【請求項6】
粒状吸着剤としてイオン交換樹脂を使用することを特徴とする請求項5記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項7】
イオン交換樹脂がゲル型イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項6記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項8】
成型後に、イオン交換樹脂に水分を添加してイオン交換樹脂の体積を膨張させることを特徴とする請求項6または7に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項9】
成型体が、流体の流入方向において上流面から下流面まで達する貫通孔を有することを特徴とする請求項5から8いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項10】
成型体に貫通孔を設けるための複数のピンを有する型に粒状吸着剤とホットメルト樹脂の混合物を充填した後、加熱後冷却して粒状吸着剤を連結した成型体を作製し、前記成型体を型から取り外すことで貫通孔を設けることを特徴とする請求項9記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項11】
型の表面が易剥離性を有することを特徴とする請求項10記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項12】
貫通孔を形成する貫通孔壁の内部に繊維体を有することを特徴とする請求項9から11いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項13】
繊維体が有害物質吸着能を有することを特徴とする請求項12記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項14】
粒状吸着剤が非極性有害物質を吸着することを特徴とする請求項5から13いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項15】
粒状吸着剤が酸性有害物質を吸着することを特徴とする請求項5から13いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項16】
粒状吸着剤がアルカリ性有害物質を吸着することを特徴とする請求項5から13いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項17】
非極性有害物質、酸性有害物質、アルカリ性有害物質をそれぞれ吸着することが可能な各粒状吸着剤のうち、少なくとも2種類以上の粒状吸着剤を用いて形成されることを特徴とする請求項5から13いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項18】
流体の流入方向における上流面、下流面のうち少なくとも一方の面に、流体透過性を有し粒状吸着剤の粒径よりも目が小さいシートを設けることを特徴とする請求項5から17いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項19】
流体の流入方向における上流面、下流面のうち少なくとも一方の面に設けられたシートが有害物質吸着能を有することを特徴とする請求項18記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項20】
流体の流入方向における上流面、下流面のうち少なくとも一方の面に設けられたシートが流体中の粉塵を捕集する機能を有することを特徴とする請求項18または19に記載の有害物質除去フィルタ。
【請求項21】
請求項5から20いずれか1項に記載の有害物質除去フィルタをプリーツ状に配置してなることを特徴とする有害物質除去フィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−209314(P2009−209314A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56130(P2008−56130)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】