説明

粒状物の分配装置

【課題】様々な大きさや形状の粒状物に適応し、一粒ずつおよび複数粒ずつのいずれにおいても、高速で高精度な分配を実現できる粒状物の分配装置を提供する。
【解決手段】駆動軸12を回転させる回転機構(モータ)2と、供給側枠体4と、供給側枠体4内に供給された粒状物を所定量ずつ収容するホルダ21を外周部に備えた分配プレート5と、粒状物を収容する凹部25を、ホルダ21の位置に対応して外周部に備えた放出プレート7と、分配プレート5と放出プレート7の間に配置され、分配プレート5から放出プレート7へ粒状物を受け渡す受け渡し穴24が上部に形成された受け渡し板6と、放出プレート7の外周を覆い、下端部に、凹部25に収容された粒状物を放出する放出口26を備えた放出側枠体8とからなり、分配プレート5および放出プレート7が、いずれも駆動軸12を中心として、同方向且つ同速度で回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種子や肥料、錠剤等の粒状物を、一定の粒数ずつ高速に分配し、放出することができる粒状物の分配装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば種子を所定粒数ずつ所定位置に播くための播種機に用いられる分配装置には、ファンやブロアによる空気利用の真空式または加圧式、溝付きロールや目皿の回転によって種子を分配するロール式または傾斜目皿式などがある。
【0003】
従来、例えばトウモロコシなどの比較的大きな種子を高速に1粒ずつピックアップして播種する際には、一粒播き用の真空式または加圧式が用いられ、稲や麦などのように比較的小粒の種子を複数粒播種する際には、一定体積内に複数粒収容するロール式または目皿式などが用いられてきた。
【0004】
従来の真空式又は加圧式タイプでは、高速で種子を1粒ずつ播種することができるものの、一度に数粒の種子を播く株播きには適応できない。
【0005】
一方、ロール式又は目皿式タイプは、種子を1粒ずつあるいは複数粒ずつのいずれに分配することも可能であって、多様な種子に適応できるものの、速度を速くすると欠株が発生し易くなる。そのために種子を収容する穴を大きくすると、所定の粒数よりも多く種子が収容されることがあり、精度が低下する。したがって、高速性と精度の両立は困難である。
【0006】
また、例えば特許文献1には、種子収容穴を有する2体の搬送ベルトを対向させて種子を分配するベルト式の播種装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−333895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の播種装置は、播種速度が約0.6m/s以下であり、高速稼働させるとベルトに撓みが生じやすく、高速作業には向いていない。
【0009】
現状の播種機は、外国製は大きく重いために作業性に劣るうえ、比較的高価であること、国内製は播種の精度と速度の両立が難しいことが課題となっている。また、飼料作物はトウモロコシ、大豆、ソルガム、イネ、麦等、種類が多く、それぞれの作物の種子の大きさや形状、および播種条件(1粒播きまたは株播き)に応じて複数の播種機を揃える必要があり、経営コスト高の要因となっている。
【0010】
このような状況から、様々な大きさや形状の種子への適応性が高く、高速且つ高精度な播種作業を可能にする高性能播種機の開発を見据え、その心臓部である種子の高速分配装置が必要とされている。
【0011】
本発明の目的は、低コストで製造することができ、様々な大きさや形状の粒状物に適応し、一粒ずつおよび複数粒ずつのいずれにおいても、高速で高精度な分配を実現できる粒状物の分配装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するため、本発明は、駆動軸を回転させる回転機構と、供給側枠体と、前記供給側枠体内に供給された粒状物を所定量ずつ収容するホルダを外周部に備えた分配プレートと、前記粒状物を収容する凹部を、前記ホルダの位置に対応して外周部に備えた放出プレートと、前記分配プレートと前記放出プレートの間に配置され、前記分配プレートから前記放出プレートへ前記粒状物を受け渡す受け渡し穴が上部に形成された受け渡し板と、前記放出プレートの外周を覆い、下端部に、前記凹部に収容された前記粒状物を放出する放出口を備えた放出側枠体と、からなり、前記供給側枠体と前記受け渡し板および前記放出側枠体は固定され、前記分配プレートおよび前記放出プレートは、いずれも前記駆動軸を中心として、同方向且つ同速度で回転することを特徴とする粒状物の分配装置を提供する。
【0013】
上記粒状物の分配装置において、前記ホルダの形状は、外周に向けて開放する三角形であることが好ましい。また、前記分配プレートの、前記ホルダの回転方向前方側の厚さが、回転方向後方側の厚さよりも薄く形成されていることが好ましく、前記分配プレートの、前記ホルダの回転方向後方側に、前記分配プレートの厚さ方向に突出する突起が形成されてもよい。
【0014】
前記粒状物が一時貯留されるとともに前記供給側枠体へ前記粒状物を供給するホッパが設けられていてもよい。前記受け渡し穴の位置で、前記分配プレートの外周に弾性を有して接触するスクレーパが設けられていることが好ましく、前記スクレーパは、幅を有する板材の先端部を屈曲して形成され、その屈曲部が、前記分配プレートの外周のうち前記放出プレートの位置と反対側の角部に接触して、前記放出プレート側に向けて弾性を有していることが、さらに好ましい。
【0015】
前記駆動軸は、前記放出側枠体が前記分配プレートよりも低くなる向きに傾斜していることが好ましい。
【0016】
また、平面方向において前記駆動軸と直交する方向に進行しながら、前記粒状物を放出してもよい。その場合、前記放出プレートの下端における回転方向後方側へ進行しながら、前記粒状物を放出することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、1粒ずつ、または複数粒ずつのいずれにおいても、正確な量を高速に分配し、放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる粒状体の分配装置の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の分配プレートを示す部分斜視図である。
【図3】分配プレートの異なる例を示す部分斜視図である。
【図4】丸粒の種子を収容した分配プレートを示す部分正面図であり、(a)は本発明の分配プレート、(b)は従来の目皿式プレート、(c)は円弧状のホルダのプレートである。
【図5】扁平粒の種子を収容した分配プレートを示す部分正面図であり、(a)は本発明の分配プレート、(b)は従来の目皿式プレート、(c)は円弧状のホルダのプレートである。
【図6】本発明に用いられる分配プレートのバリエーションを示す正面図である。
【図7】スクレーパの設置状態を示す正面図である。
【図8】スクレーパが分配プレートに接触する様子を示す断面図である。
【図9】図1の放出プレートの正面図である。
【図10】分配装置の進行方向の説明図であり、(a)は本発明の進行方向、(b)は従来の進行方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の粒状物分配装置の分解斜視図である。本発明の分配装置1は、いわゆる傾斜目皿式であり、中心軸が鉛直方向に対して傾いて設置される。
【0021】
分配装置1は、回転機構として例えばステッピングモータ等のモータ2を備え、ホッパ3、供給側枠体4、分配プレート5、受け渡し板6、放出プレート7、放出側枠体8を有している。分配プレート5と放出プレート7は、モータ2の動力を例えばタイミングベルト11で伝えて駆動軸12を回転させ、駆動軸12を介して同軸且つ同速度で同じ方向に回転する。なお、本明細書においては、供給側枠体4側を表側、放出側枠体8側を裏側と記す。
【0022】
ホッパ3は、粒状体、例えば種子を一時貯留するとともに、供給側枠体4内へ粒状体を供給する供給口を備えている。以降、本実施形態について、播種機に搭載される種子の分配装置の場合として説明する。
【0023】
供給側枠体4は、円筒状の中空部13を有する枠体であり、裏面側に、分配プレート5が配置される。中空部13内に種子溜まりを形成するために、供給側枠体4は適宜厚みを有している。なお、図示するような全体が円筒形のものには限らず、直方体の中央に円筒状の中空部13を有していてもよい。また、供給側枠体4の表側には、ホッパ3から供給された種子が脱落しないように、カバーを設けてもよい。供給側枠体4は回転することなく、放出側枠体8に固定される。
【0024】
分配プレート5は、外周部に、種子を、一度に播種する粒数ずつ収容するホルダ21が、円周方向に設けられている。図2は分配プレート5の例を示し、ホルダ21の平面形状は、分配プレート5の外周側に向かって開放する三角形状に形成される。さらに、ホルダ21の回転方向後方側の辺に沿って、分配プレート5の厚み方向に突起22が設けられている。あるいは、図3に示すように、各ホルダ21の回転方向後方側の厚みを、回転方向前方側の辺よりも厚くして、隣接するホルダ21の回転方向前方側にかけて厚み方向に傾斜を有するように形成してもよい。
【0025】
ホルダ21の形状を三角形とすることにより、丸粒および扁平粒の両方の種子に適応できる。図4に示すように、丸粒の種子9aの場合には、図4(a)に示す三角形のホルダ21でも、図4(b)に示す従来の目皿式プレートの円形のホルダ51でも、あるいは図4(c)に示す円弧状のホルダ52でも、確実に1粒ずつ分離して収納できる。一方、扁平粒の種子の場合、本発明の三角形のホルダ21によれば、図5(a)に示すように、種子9bがどの方向に収容されても、もう1粒入り込むことはできず、正確に1粒ずつ収容することができる。ところが、図5(b)に示す円形のホルダ51や図5(c)に示す円弧状のホルダ52の場合、種子9bが収容される角度等によっては、一個所のホルダ51、52に種子9bが2粒入ってしまう。したがって、円形または円弧状のホルダ51、52の場合には、丸粒の種子9aと扁平粒の種子9bとで、プレートを交換する必要があった。本発明によれば、ホルダ21を三角形状としたことにより、種子の形状への適応性が高くなり、分配プレート5を交換せずに使用できる場合が多くなる。
【0026】
なお、供給側枠体4が分配プレート5の回転を妨げず、且つホルダ21以外の場所から裏側に種子が入り込まないために、図4、図5に示すように、供給側枠体4の中空部13の内側面23と分配プレート5の外周との間に、種子が入り込まない程度の隙間が設けられる。また、後述する受け渡し板6の受け渡し穴24の位置で、確実に種子が放出プレート7側へ落下するように、受け渡し穴24の位置のみ、供給側枠体4の内側面23と分配プレート5の外周との隙間を広くしてもよい。
【0027】
本発明において、粒状物(種子)の分配精度を高めるために、分配する種子の大きさや数に応じて、ホルダ21の大きさや数の異なる分配プレート5を用いることが好ましい。図6に分配プレートの例を示す。(a)と(b)はホルダ21a、21bの数がいずれも16個でその大きさが異なるものであり、例えばトウモロコシの大粒の種子は(a)の分配プレート5a、小粒の種子は(b)の分配プレート5bというように、播種方法が同様で種子の大きさが異なる場合に使い分ける。また、(c)の分配プレート5cは小さいホルダ21cが32個あり、例えばソルガムのように小粒の種子に用いられ、(d)の分配プレート5dはホルダ21dが8個で間隔が大きく、例えば飼料イネや小麦を1箇所に複数粒ずつ繰り出す株播き用として用いられる。後述する放出プレート7の種子収容部である凹部25の位置とホルダ21の位置を対応させるために、それぞれの分配プレート5におけるホルダ21の個数は、例えば図6に示すように8の倍数で統一することが好ましい。(e)、(f)は、一個所に複数粒ずつ播種する場合に用いられる分配プレートの例である。(e)の分配プレート5eは、2個連続したホルダ21eが、分配プレート5eの外周に等間隔で設けられ、例えば大豆やトウモロコシ等を一個所に2粒ずつ播種する場合に用いられる。(f)の分配プレート5fは、3個連続したホルダ21fが、分配プレート5fの外周に等間隔で設けられ、例えばソルガム等のように比較的小粒の種子を一個所に3粒ずつ播種する場合に用いられる。なお、本発明において、分配プレート5は、1個または複数個連続したホルダ21が、外周に等間隔で配置されたものに限ることはなく、分配する粒状物の所望する放出位置に応じて、適宜間隔でホルダ21を配置すればよい。
【0028】
図1に示すように、分配プレート5と放出プレート7の間に、受け渡し板6が設けられる。受け渡し板6は、回転することなく放出側枠体8に固定される。また、外形は図示するような円形に限らず、例えば正方形でも構わない。受け渡し板6の上部、すなわち分配装置1として組み上げられた際に上側となる位置に、分配プレート5から放出プレート7へ種子を受け渡す受け渡し穴24が形成されている。
【0029】
図7に示すように、分配プレート5が回転してホルダ21が受け渡し穴24を通過し終わる前の位置に、分配プレート5の外周に接触するように、スクレーパ31が設けられる。スクレーパ31は、種子9がホルダ21に付着して放出プレート7側へ落下しない場合に、強制的に種子9を受け渡し穴24の方向へ押し出す。スクレーパ31は、例えばばね鋼製であり、幅を有する板材の先端部を屈曲して形成され、一端が例えば供給側枠体4の表側のカバー(図示省略)に取り付けられる。そして、図8に示すように、屈曲部32が、分配プレート5の外周の表側、すなわち、受け渡し板6や放出プレート7と反対側の角部27に接触し、放出プレート7側に向けて弾性を有して押し当てられる。このため、例えば図6に示すどのような分配プレート5a〜5dでも同様に使用でき、分配プレート5に応じて交換したり、取り付け位置等を調整する必要がない。さらに、スクレーパ31の弾性の向きを、分配プレート5の半径方向から放出プレート7側へ傾けることにより、確実に種子9を放出プレート7へ押し出すことができる。
【0030】
放出プレート7の外周には、分配プレート5から受け渡された種子を収容する凹部25が設けられている。図9は放出プレート7の例を示し、凹部25は、1粒播きの大粒の種子や株播き時等に用いるための比較的大きい凹部25aと、短い間隔で播種する場合等に用いられる比較的小さい凹部25bとが交互に等間隔で設けられている。凹部25の位置は、分配プレート5のホルダ21に対応し、大きい凹部25aは、大粒の種子用や株播き用の分配プレート5のホルダ21よりも大きく、小さい凹部25bは小粒の種子用の分配プレート5c(図6(c)参照)のホルダ21cよりも大きく形成される。これにより、放出プレート7は、図6(a)〜(d)に示したような複数種類の分配プレート5a〜5dに対して、同じものを用いることができる。あるいは、大きい凹部25aが、図6(e)、(f)に示す連続する複数のホルダ21e、21fを合わせた大きさよりも大きければ、図6(e)、(f)に示した分配プレート5e、5fに対しても、同じ放出プレート7を用いることができる。なお、凹部25は、表側に開放し裏側は有底とし、表側から受け渡された種子が裏側から抜け出ることなく凹部25内に保持されるようにすることが好ましい。
【0031】
放出プレート7は、放出側枠体8の内部に設置される。放出側枠体8は、放出プレート7の外周全体を覆い、下端部に放出口26が設けられている。放出側枠体8が放出プレート7の回転を妨げず、且つ凹部25に収容された種子が、放出口26以外の位置で凹部25の外へ出ないために、放出側枠体8の内側面と放出プレート7の外周との間に、種子が入り込まない程度の隙間が設けられる。これにより、放出プレート7の凹部25に収納された種子は、放出プレート7の回転によって下方まで搬送され、放出口26から放出される。
【0032】
本発明の分配装置1は、従来の傾斜目皿式の種子分配装置と同様、種子の放出側(放出側枠体8)が供給側(供給側枠体4)よりも低い位置に設置される向きに、中心軸(駆動軸12)が傾斜を有している。傾斜角度は、鉛直方向0°に対して、例えば38°〜58°程度であれば、精度よく播種することができる。
【0033】
以上説明した分配装置1を播種機に搭載した場合の動作を説明する。
【0034】
ホッパ3に一時貯留された種子が供給側枠体4内に供給され、供給側枠体4内にできた種子溜まりから、1回の播種に必要な所定の粒数ずつの種子が、分配プレート5のホルダ21に収納される。分配プレート5の回転により、受け渡し板6の受け渡し穴24の位置に到達したホルダ21に収納された種子は、受け渡し穴24を介して落下し、放出プレート7の凹部25に収納される。ホルダ21が外周側に開放する三角形であり、且つ回転方向後方側の厚さが回転方向前方側よりも厚いことにより、種子の収納時にはホルダ21内に種子が入りやすく、受け渡し時には種子が出やすい。
【0035】
凹部25に収納された種子は、放出プレート7の回転により放出口26まで搬送され、下端部すなわち地面に近い位置に設けられた放出口26から放出される。
【0036】
本発明の分配装置1は、例えば播種機等に搭載される場合、図10(a)に示す進行方向に移動させながら播種作業を行う。すなわち、上から見た平面方向において駆動軸と直交する方向、且つ、放出プレート7の下端における回転方向後方側に進行し、分配装置1の進行方向に対して種子が後ろ向きに放出されるようにする。これにより、分配装置1全体の速度と、種子の放出時の速度が相殺されて、種子と地面との速度差が小さくなり、正確な位置に放出することができる。この場合の進行方向とは、放出位置に対する分配装置1の相対的な進行方向の場合も含まれる。つまり、例えば分配装置1全体の位置が固定され、放出位置がコンベア等で移動する場合にも、分配装置1の相対的な進行方向後方に向けて粒状物を放出する。従来の播種機では、図10(b)に示すように、分配装置1が進行方向に対して後ろ向きに傾斜しており、仮に放出位置を地面近くに設けた場合、プレートの回転方向が、進行方向に対して横向きとなるため、横向きに種子が放出される。そのため、プレートの回転速度を上げると、所望する播種位置よりも大きく横方向(回転方向前方)にずれることがある。本発明によれば、放出位置が横方向にずれることなく、所望する位置に正確に播種することができる。
【0037】
以上のように、本発明によれば、例えば種子等の粒状物を所定粒数ずつ分離する分配プレート5と、分離された粒状物を放出する放出口26まで搬送する放出プレート7とを別体とすることにより、高い分配精度と放出精度を両立できる。したがって、播種機に搭載した場合、例えばトウモロコシやソルガム、大豆等の1粒播きや、イネ等の株播きのいずれにおいても、高速化が可能になる。
【0038】
放出プレート7と分配プレート5とを分けたことにより、地面に近いところで、部材等に当たることなく種子を放出することができるので、部材や地面での跳ね返りを小さくすることができ、播種精度が高くなる。従来の傾斜目皿式播種機では、種子の放出位置をプレートの回転中心よりも低くすると、種子溜まりの位置と干渉するため困難であったが、本発明では、種子を種子溜まりの位置よりも低いところまで運んで放出することが可能である。
【0039】
さらに、本発明は、構造がシンプルであるため、例えば播種機の種子分配装置として用いた場合、機械の減価償却費が抑えられ播種作業の低コスト化に貢献することが期待される。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例1】
【0041】
品種、大きさ、形状が異なる種子について、本発明の分配装置を用いて、種子の繰り出し速度の精度への影響を調べる性能試験を行った。トウモロコシの場合の繰り出し速度は、播種機への搭載時に最大2m/sの速度で1株1粒ずつの播種作業を想定し、4回/s、8回/s、12回/sの回転速度で試験した。トウモロコシの品種は、丸粒がKD777LR(千粒重397g)とNS129SR(千粒重226g)、扁平粒がKD772スーパーLF(千粒重326g)とKD670SF(千粒重263g)の計4種類とした。
【0042】
精度の指標は1粒率とした。なお、上記の播種作業の想定速度は、市販の1粒播き用の空気加圧式播種機と同等として設定した。試験結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1において、1粒率、欠株率、2粒率は、それぞれ、100回の連続繰り出しを5回行った平均値であり、高速度カメラで種子の落下地点を撮影した後、モニタで再生してカウントした。分配プレートの記号については、Nは分配プレートの外周に形成されたホルダの数、φはホルダの内接円の直径(mm)、tは分配プレートの最厚部の厚さ(mm)を示す。
【0045】
4種類のトウモロコシについては、表1に示すように、丸粒、扁平粒ともに、4〜12回/sの繰出速度で、1粒率が概ね98%以上と高精度であった。
【実施例2】
【0046】
実施例1と同様に、ソルガムについて、繰り出し速度の精度への影響を調べる性能試験を行った。繰り出し速度は、播種機への搭載時に最大2m/sの速度で1株1粒ずつの播種作業を想定し、8回/s、16回/s、24回/sの回転速度で試験した。ソルガムの品種は、スーパーシュガー(千粒重32g)とした。
【0047】
精度の指標は、実施例1のトウモロコシと同様、1粒率とした。試験結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2において、1粒率、欠株率、2粒率は、それぞれ、200回の連続繰り出しを3回行った平均値であり、実施例1と同様、高速度カメラで種子の落下地点を撮影した後、モニタで再生してカウントした。分配プレートの記号については、実施例1に記載した通りである。
【0050】
ソルガムは、表2に示すように、8〜24回/sの繰出速度で、1粒率が約99%と高精度であった。
【実施例3】
【0051】
実施例1と同様に、株播きが行われる飼料イネと小麦について、繰り出し速度の精度への影響を調べる性能試験を行った。繰り出し速度は、1.5m/sで1株複数粒ずつの播種作業を想定し、4回/s、6回/s、8回/sの回転速度とした。飼料イネの品種は、リーフスター(千粒重27g)とニシアオバ(千粒重37g)、小麦の品種は農林61号(千粒重39g)とした。
【0052】
上記の播種作業の想定速度は、市販の水稲の条播用の灌水直播機と同等またはそれ以上として設定した。精度の指標は、1株の平均粒数とし、50回の連続繰り出しを1回行って、1株粒数の平均値と標準偏差、変動係数を求めた。1株粒数は、上記実施例と同様に、高速度カメラで撮影し、モニタで再生してカウントした。なお、分配プレートは、N8−φ7−t7とした。試験結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
飼料イネと小麦は、表3に示すように、4〜8回/sの範囲で繰出速度を変えても、平均繰出粒数に大きな変化はなく、標準偏差は1粒前後、1回の繰出粒数の変動係数は、いずれの作物も繰出速度の違いにかかわらず15%以下であり、ほぼ一定と判断できる範囲であった。
【実施例4】
【0055】
分配プレートおよび放出プレートを回転させる駆動軸の傾斜角度が播種精度に与える影響を調べる性能試験を行った。種子は実施例1の丸粒、大型のトウモロコシKD777LRとした。駆動軸の傾斜角度は、鉛直方向を0°として38°、43°、48°、53°、58°の5種類とし、100回の連続繰り出しを5回行った1粒率、欠株率、2粒率の平均値を、上記実施例と同様の方法でカウントした。繰り出し速度は、8回/sとした。試験結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
基準の48度に対して±10度程度傾いていても、1粒率はほぼ98%以上であり、精度がほとんど低下しなかった。したがって、本発明によれば、従来の傾斜目皿式分配装置よりも広い設置角度に対応できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、主に高い作業能率が求められるコントラクタの利用を前提として開発が期待される、高性能播種機や不耕起播種機等の種子繰出装置として利用できる。また、種子に限らず、肥料や食品、薬剤等、概ね丸い形状または扁平形状の粒状物を1粒ずつあるいは所定粒数ずつ、高速かつ正確に分配する装置として適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 分配装置
2 モータ
3 ホッパ
4 供給側枠体
5 分配プレート
6 受け渡し板
7 放出プレート
8 放出側枠体
9 種子
12 駆動軸
21 ホルダ
24 受け渡し穴
25 凹部
26 放出口
31 スクレーパ
32 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を回転させる回転機構と、
供給側枠体と、
前記供給側枠体内に供給された粒状物を所定量ずつ収容するホルダを外周部に備えた分配プレートと、
前記粒状物を収容する凹部を、前記ホルダの位置に対応して外周部に備えた放出プレートと、
前記分配プレートと前記放出プレートの間に配置され、前記分配プレートから前記放出プレートへ前記粒状物を受け渡す受け渡し穴が上部に形成された受け渡し板と、
前記放出プレートの外周を覆い、下端部に、前記凹部に収容された前記粒状物を放出する放出口を備えた放出側枠体と、からなり、
前記供給側枠体と前記受け渡し板および前記放出側枠体は固定され、
前記分配プレートおよび前記放出プレートは、いずれも前記駆動軸を中心として、同方向且つ同速度で回転することを特徴とする、粒状物の分配装置。
【請求項2】
前記ホルダの形状は、外周に向けて開放する三角形であることを特徴とする、請求項1に記載の粒状物の分配装置。
【請求項3】
前記分配プレートの、前記ホルダの回転方向前方側の厚さが、回転方向後方側の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の粒状物の分配装置。
【請求項4】
前記分配プレートの、前記ホルダの回転方向後方側に、前記分配プレートの厚さ方向に突出する突起が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の粒状物の分配装置。
【請求項5】
前記粒状物が一時貯留されるとともに前記供給側枠体へ前記粒状物を供給するホッパが設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の粒状物の分配装置。
【請求項6】
前記受け渡し穴の位置で、前記分配プレートの外周に弾性を有して接触するスクレーパが設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粒状物の分配装置。
【請求項7】
前記スクレーパは、幅を有する板材の先端部を屈曲して形成され、その屈曲部が、前記分配プレートの外周のうち前記放出プレートの位置と反対側の角部に接触して、前記放出プレート側に向けて弾性を有していることを特徴とする、請求項6に記載の粒状物の分配装置。
【請求項8】
前記駆動軸は、前記放出側枠体が前記分配プレートよりも低くなる向きに傾斜していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の粒状物の分配装置。
【請求項9】
平面方向において前記駆動軸と直交する方向に進行しながら、前記粒状物を放出することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の粒状物の分配装置。
【請求項10】
前記放出プレートの下端における回転方向後方側へ進行しながら、前記粒状物を放出することを特徴とする、請求項9に記載の粒状物の分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−193831(P2011−193831A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65913(P2010−65913)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】