説明

絶縁被膜プローブピン及びその製造方法

【課題】簡単な方法で絶縁被膜の端部の形状を剥離作業を行うことなく全周に渡りバラツキのない形状に容易に調整する。
【解決手段】絶縁被膜12を形成する電着材料を含む電着液L内に電極22を浸すと共に、プローブピン11をその検出端側11aが上方を向くように垂直に挿入し、電極22とプローブピン11とに通電する電圧を調整することで、絶縁被膜12における検出端側12aの形状を全周に渡り上方に向かって先細となるテーパ形状から端部の断面が直角となる形状又は端部が他の領域よりも膨らむ形状まで希望の形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体よりなるプローブピンと、該プローブピンの検出端側の部分が露出するように該プローブピンの外周を被膜する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板や半導体素子等を検査する場合、通常、それらに設けられた電極や電極パッドにプローバの絶縁被膜プローブピン検出端側のプローブピン先端を接触させることにより通電を行う。絶縁被膜プローブピンは、金属製のプローブピンを備え、一般に、その検出端側の部分が露出され、一方、その他の部分の外周が絶縁被膜で被膜された構成を有する。
【0003】
特許文献1には、電着液に金属製のプローブピンの検出端側から所定長を浸漬した後に通電を行い、それによって電着塗装で絶縁被膜を形成することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、金属製のプローブピンを電着塗装して絶縁被膜を形成するための電着液として、ブロック共重合ポリイミドを含むサスペンジョンを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3038114号公報
【特許文献2】特開2010−107420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体検査に用いられる絶縁被膜プローブピンでは、絶縁被膜層の検出端側の端部は絶縁被膜が設けられず、しかもその界面(角部)の断面形状が全周に渡りバラツキのないことが要求される。形状にバラツキがあると、検査対象物を押す力が強くなったり弱くなったりして検査結果が安定しないためである。絶縁被膜を剥離させるためには、切削等による機械的な剥離方法、レーザ等を用いた光学的な剥離方法、溶剤等を使用した化学的な剥離方法があるが、いずれも難易度が高く、さらに作業が繁雑なために製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、簡単な方法で絶縁被膜の端部の形状を剥離作業を行うことなく容易に調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、プローブピンに通電する電圧を調整することにより、絶縁被膜の検出端側端部の形状を全周に渡り偏りのないように調整するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
導電体よりなるプローブピンと、該プローブピンの検出端側の部分が露出するように該プローブピンの外周を被覆する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピンの製造方法を対象とし、
上記製造方法では、まず、上記絶縁被膜を形成する電着材料を含む電着液内に電極を浸すと共に、上記プローブピンを該プローブピンの検出端側が上方を向くように垂直に挿入し、
上記電極と上記プローブピンとに通電する電圧を調整することで、
上記絶縁被膜におけるプローブピンの検出端側の形状を全周に渡り上方に向かって先細となるテーパ形状から端部の断面が直角となる形状又は端部が他の領域よりも膨らむ形状まで希望の形状に形成する構成とする。
【0010】
上記の構成によると、電着時の電着液の表面付近では、導体に加わる電圧により絶縁被膜のできやすさが異なり、電圧が小さすぎると形状がなだらかになり、大きすぎると大きく膨らむ形状となる。このことを利用して、電圧を調整することで絶縁被膜を剥離することなく所望の形状が簡単に得られる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記クローン効率を120μm/C以上220μm/C以下とし、
上記検出端側の端部の断面が略直角となるように、上記絶縁被膜を形成する。
【0012】
ここで、クーロン効率は、1C(クーロン)でどれだけ被膜ができるかを示す指標であり、上記の構成では、このクローン効率が120μm/C以上220μm/C以下に保たれているので電圧を適度に調整することにより絶縁被膜の端部形状を断面が略直角となるように調整することができ、低すぎて絶縁被膜の端部形状がなだらかになったり、高すぎて端部の形状が盛り上がりすぎて半導体検査の検査結果にバラツキが生じることはない。なお、「略直角」とは、完全に90°でなくても、2〜3°程度のブレは許容することを意味する。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、
上記電着液の粘度を5mPa・s以上8mPa・s以下とする。
【0014】
すなわち、電着液の粘度が5mPa・s未満であれば、クローン効率を適切に調整しても端部の形状を略直角等に形成しにくく、なだらかになりやすい。逆に8mPa・s未満だと、絶縁被膜の均一性を保つのが困難になる。しかし、上記の構成によると、電着液の粘度が5mPa・s以上8mPa・s以下に適切に保たれているので、電圧を調整することで、絶縁被膜の端部の形状を容易に調整できる。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、
上記電着液の温度を15℃以上30℃以下とする。
【0016】
すなわち、15℃よりも低いと、電着液に電圧がかかりにくくなり、端部の形状を略直角等に形成しにくく、なだらかになりやすい。また、30℃を超えると、電着液が劣化しやすくなり、また、粘度が低下して端部の形状がなだらかになりやすい。しかし、上記の構成によると、電着液の温度が適度に保たれているので、端部の形状を電圧を調整することで、絶縁被膜の端部の形状を容易に調整できる。
【0017】
第5の発明では、導電体よりなるプローブピンと、該プローブピンの検出端側の部分が露出するように該プローブピンの外周を被覆する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピンを対象とし、
上記絶縁被膜は、剥離処理を伴わずに電着材料を含んだ電着液で電着処理を行うことにより、上記検出端側の端部が全周に渡って断面が略直角に形成されている。
【0018】
上記の構成によると、絶縁被膜の検出端側の端部は、全周に渡って、その断面が略直角に形成されているので、プローブ孔からの突出量のバラツキがなくなり、正確な電気的特性の測定を行うことができる。
【0019】
第6の発明では、上記第5の発明と同様の絶縁被膜プローブピンを対象とし、
上記絶縁被膜は、剥離処理を伴わずに電着材料を含んだ電着液で電着処理を行うことにより、上記検出端側の端部が全周に渡って接続端側の端部よりも厚肉に形成されている。
【0020】
上記の構成によると、絶縁被膜におけるプローブピンの検出端側の端部が全周に渡って接続端側の端部よりも厚肉に形成されているので、例えばプローバに多数の絶縁被膜プローブピンが短い間隔で並列して設けられたような場合でも、絶縁被膜の厚肉の端部同士が干渉するため、絶縁被膜プローブピンの検出端側の露出した部分同士が接触しにくくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、絶縁被膜を形成する電着材料を含む電着液内に電極とプローブピンを挿入し、電極とプローブピンとに通電する電圧を調整することで、絶縁被膜におけるプローブピンの検出端側の形状を調整するようにしたので、簡単な方法で絶縁被膜の端部の形状を剥離作業を行うことなく全周に渡りバラツキのない形状に容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る絶縁被膜プローブピンを製造するための電着塗装装置の一例を示す断面図である。
【図2】絶縁被膜プローブピンを示す正面図である。
【図3】絶縁被膜プローブピンの縦断面図である。
【図4】本実施形態に係る絶縁被膜プローブピンの使用状態を示す説明図である。
【図5】絶縁被膜が形成される様子を示す図1相当図である。
【図6】本実施形態に係る絶縁被膜プローブピンの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】電圧を低くした場合の絶縁被膜プローブピンを示す図2相当図である。
【図8】電圧を高くした場合の絶縁被膜プローブピンを示す図2相当図である。
【図9】電圧を低くした場合の絶縁被膜プローブピンに対応する図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
−絶縁被膜プローブピンの構成−
図2及び図3に本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10を示し、この絶縁被膜プローブピン10は、例えば回路基板や半導体素子等を検査する際に用いられるプローバに取り付けられる部品である。
【0025】
本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10は、金属製のプローブピン11を備え、そのプローブピン11の検出端側11aが露出している。中間部の外周が絶縁被膜12で被覆され、検出端側11aと反対側の接続端側11bも露出している。本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10は、直線状に形成されていてもよく、また、用途に応じて屈曲部を有していてもよい。本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10は、例えば、長さが10〜150mm、外径が20〜400μm、及び検出端側のプローブピン11の露出長さが0.5〜30mmである。
【0026】
プローブピン11は金属線で構成されている。プローブピン11は高導電性及び高弾性率を有することが好ましく、これを形成する金属材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、タングステン、レニウムタングステン、鋼が挙げられる。プローブピン11は、単一の金属材料で形成されていてもよく、また、複数の金属材料の合金で形成されていてもよい。かかる合金としては、例えば、高硬度でかつ高弾性のベリリウム銅が挙げられる。プローブピン11は、例えば表面に金メッキ等が施されていてもよい。プローブピン11の横断面は円形に形成されていてもよく、また、例えば矩形等の多角形のように非円形に形成されていてもよい。プローブピン11の検出端側の先端は、検査体である電極や電極パッドの種類に応じて、フラット、ラウンド(球面)、尖頭、三角錐などの形状に加工されていてもよい。なお、プローブピン11は、金属製に限らず、導電体であれば、例えば導電性樹脂で構成されていてもよい。この導電性樹脂は、導電性を有し、プローブピン11として要求される弾性を有するものであればよい。
【0027】
絶縁被膜12は、絶縁性の樹脂で形成されている。絶縁被膜12を形成する樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。絶縁被膜12を形成する樹脂材料としては分子骨格にシロキサン結合含むポリイミド樹脂が好ましい。プローブピン11は、単一の樹脂材料で形成されていてもよく、また、複数の樹脂材料が混合されて形成されていてもよい。
【0028】
絶縁被膜12は、長さ方向のいずれの部分においても、プローブピン11の外周に全周に渡って偏肉を有することなく均一厚さで付着している。絶縁被膜12は、長さ方向に沿って例えば1〜50μmの均一厚さを有している。プローブピン11の検出端側の端部12aは、全周に渡って、その断面が略直角に形成されている。
【0029】
なお、接続端側11bは、それほど寸法制度を要求されないので、絶縁被膜12をレーザ等を使用した光学剥離又は溶剤等を使用した化学剥離によるできるだけ簡単な方法で剥離すればよい。
【0030】
−絶縁被膜プローブピンの用途−
次いで、本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10の用途について説明する。詳しくは図示しないが、例えば図4に示すように、絶縁被膜プローブピン10の検出端側の絶縁被膜12が設けられていない露出した部分が、電気的特性測定用の配線パターンが形成された基板Sのプローブ孔Hから突出及び没入し、突出する際に絶縁被膜12の端部12aがプローブ孔Hの周縁に係止される。プローブピン11の接続端側11bが配線パターンに接続され、さらにテスタに接続される。可動テーブル上に載置された検査対象のウエハ等に形成された半導体集積回路BのパッドPにプローブピン11の検出端側11aを接触させて、電気的特性の測定を行う。
【0031】
かかる用途において、絶縁被膜プローブピン10で通電試験を行う際には、絶縁被膜プローブピン10のプローブ孔Hからの突出量のバラツキが問題となる。
【0032】
しかしながら、本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10によれば、絶縁被膜12の検出端側の端部12aは、全周に渡って、その断面が略直角に形成されているので、プローブ孔Hからの突出量のバラツキがなく、正確な電気的特性の測定を行うことができる。
【0033】
−絶縁被膜プローブピンの製造方法−
次に、本実施形態に係る絶縁被膜プローブピン10の製造方法の一例について図面を用いて説明する。
【0034】
図6に示すように、まず、ステップS01において、プローブピン11を準備する。本実施形態では、予めプローブピン11の検出端側の先端加工を行っておくが、この加工は、電着後に行ってもよい。
【0035】
次いで、ステップS02の第1洗浄工程において、電着塗装を行う前に洗浄槽にプローブピンを浸けて洗浄を行う。この洗浄は、プローブピン11の脱脂など及びその水洗作業よりなる。
【0036】
次いで、ステップS03の電着塗装工程において、プローブピン11に電着塗装を行う。図1に電着塗装装置20を示すように、この電着塗装装置20は、電着バス21、電極22及び電源部23を備えている。
【0037】
電着バス21は、上方に開口した槽であり、内部に電着塗料よりなる電着液Lが入れられている。具体的には、電着液Lは、樹脂成分を含む導電性を有する液体であれば、樹脂成分が、液体中に溶解していてもよく、乳化していてもよく、縣濁状態で存在していてもよいが、電着効率が良好な点から、樹脂成分の平均粒径が0.1μm以上のサスペンジョンが好ましく、絶縁被膜12の厚さの均一性からから、平均粒径が10μm以下のサスペンジョンがより好ましい。ここで、平均粒径は、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000S(シスメックス社製)を用いて、電着液L中の分散粒子の粒度分布より測定可能である。樹脂成分は、ポリマーであってもよく、また、ポリマー前駆体であってもよい。樹脂成分は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのアニオン性基を有するものであってもよく、また、有機アンモニウム基、ピリジウム基などのカチオン性基を有するものであってもよい。樹脂成分がアニオン性基を有する場合にはプローブピン11側の電源部23が正極及び電極22が負極とされ、一方、樹脂成分がカチオン性基を有する場合にはプローブピン11側の電源部23が負極及び電極22が正極とされる。樹脂成分としては、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂は、耐熱性が高く電気絶縁性が良好で、機械的強度が高いという利点がある。アクリル樹脂及びエポキシ樹脂は、耐熱性が低いが機械的強度が高い。ウレタン樹脂及びポリエステル樹脂は、耐熱性が低いが、熱で分解しやすいので剥離しやすい。電着液Lには、樹脂成分以外に、水、水性或いは油性有機溶剤、顔料、レベリング剤、分散剤、消泡剤等が含まれていてもよい。電着液Lの電気伝導度は例えば1.5〜15mS/mとし、2.5〜5mS/mとすることが好ましい。電着液LのpHは例えば6〜9とし、6.5〜7.5とすることが好ましい。電着液Lの表面張力は例えば10〜70mN/mとし、20〜40mN/mとすることが好ましい。電着液Lの固形分濃度は例えば1〜20質量%とし、3〜10質量%とすることが好ましい。
【0038】
電着液の粘度は、5mPa・s以上8mPa・s以下が好ましい。すなわち、電着液Lの粘度が5mPa・s未満であれば、クローン効率を適切に調整しても端部12aの形状を略直角等に形成しにくく、なだらかになりやすい。逆に8mPa・s未満だと、絶縁被膜12の均一性を保つのが困難になる。しかし、電着液Lの粘度が5mPa・s以上8mPa・s以下に適切に保たれているので、クローン効率を調整することで、絶縁被膜12の端部12aの形状を容易に調整できる。
【0039】
また、電着液Lの温度は、15℃以上30℃以下とすることが好ましい。すなわち、15℃よりも低いと、電着液に電圧がかかりにくくなり、端部の形状を略直角等に形成しにくく、図7に示すようになだらかになりやすい。また、30℃を超えると、電着液が劣化しやすくなり、また、粘度が低下して端部の形状がなだらかになりやすい。しかし、上記範囲とすることで、電着液の温度が適度に保たれ、端部の形状を電圧を調整することで、絶縁被膜の端部の形状を容易に調整できる。
【0040】
電極22を電着バス21内に、上部が電着液Lの液面Aから突出しかつ底面が槽底に接触しないように設置する。電極22を形成する金属材料としては例えば銅が挙げられる。電極22は電源部23に接続されている。一方、プローブピン11の検出端側11aも電源部23に接続されている。図のように1本のプローブピン11ではなく、複数本のプローブピン11を一度に電源部23に接続するようにしてもよい。
【0041】
次に、図1に示すように、検出端側11aを上方としたプローブピン11を垂直に電着バス21内の電着液Lに浸し、電極22も電着バス21内の電着液Lに浸す。
【0042】
電着液Lの表面の乱れがなくなった後、電極22と電源部23との間に電圧を一定時間印加する。印加電圧は例えば1〜200Vとし、5〜50Vとすることが好ましい。電圧印加時間は例えば1〜180秒とし、1〜30秒とすることが好ましい。
【0043】
このとき、電極22と電源部23に把持されたプローブピン11との間に、電着液Lを介して電位差が生じ、図5に示すように、プローブピン11の電着液Lに浸かった部分に樹脂成分による絶縁被膜12が析出する。このときのクローン効率を120μm/C以上220μm/C以下とする。
【0044】
電着時の電着液Lの液面A付近では、プローブピン11に加わる電圧により絶縁被膜12のできやすさが異なる。このため、電圧を小さくする(1〜20V程度)とすると、図7に示すように、検出端側の端部12aの形状がなだらかになり、大きくする(60〜200V)と、図8に示すように、検出端側の端部12aが大きく膨らむ形状となる。
【0045】
このことを利用して、電圧を25〜55V程度に調整することで絶縁被膜12を剥離することなく、検出端側の端部12aの形状を図3に示すように断面が略直角になるように形成することができる。このため、電気的特性測定時の絶縁被膜プローブピン10のプローブ孔Hからの突出量のバラツキがなくなり、測定精度が向上する。
【0046】
そして、電源部23への通電を停止し、電極22と、絶縁被膜12が形成されプローブピン11とを電着バス21から取り出す。ここで、絶縁被膜12の下方への垂れを抑制する観点からは、この引き上げ速度は0.5〜300mm/sとすることが好ましく、1〜10mm/sとすることがより好ましい。
【0047】
次いで、ステップS04において、第2洗浄工程を行う。この第2洗浄工程では、電着塗装後の絶縁被膜プローブピン10の余分な電着液の除去のため洗浄槽に浸けて洗浄を行う。
【0048】
次いで、ステップS05において、第3洗浄工程を行う。この第3洗浄工程では、さらに表面調整用の溶剤を含む洗浄槽に浸けて洗浄を行う。なお、これらの第1〜第3の洗浄工程は、必要に応じて行えばよく、必須の工程ではない。
【0049】
次いで、ステップS06において、プローブピン11を乾燥炉で乾燥させて水分や有機溶剤を蒸発させる。
【0050】
最後に、ステップS07において、焼付炉で焼き付けを行う。
【0051】
このように製造することで、絶縁被膜12の煩雑な剥離作業を伴うことなく寸法精度が高く、形状のバラツキのない品質の高い絶縁被膜プローブピン10が極めて簡単かつ低コストな方法で得られる。
【0052】
一方、例えば加える電圧の範囲を60V〜200Vとすると、図8に示すような検出端側の端部12aが全周に渡って接続端側の端部12aよりも厚肉に形成される。すると、例えばプローバに多数の絶縁被膜プローブピン10が短い間隔で並列して設けられたような場合でも、絶縁被膜12の厚肉の端部12a同士が干渉するため、プローブピン11の検出端側11aの露出した部分同士が接触しにくくなるという利点がある。また、絶縁被膜12の補強がなされ、プローブ孔Hの周縁に接触して大きな応力が作用したとしても、絶縁被膜12の端部12aの削れや剥離が規制され、その結果、絶縁被膜プローブピン10のプローブ孔Hからの突出量のバラツキを抑制することができる。また、プローブピン10の製品寿命を長くすることができる。このような絶縁被膜12の補強の観点からは、絶縁被膜12は、図8に示すように、検出端側の端部12aからプローブピン11の接続端側に向かって漸次薄肉となってテーパ状に形成されている部分を有することが好ましい。絶縁被膜12におけるプローブピン11の検出端側の端部12aの最も厚肉となる部分から接続端側の均一厚さの部分の始点までの長さは、絶縁被膜プローブピン10の検出端側の露出した部分同士の接触を防ぎやすいという観点から、0.02〜1.5mmであることが好ましい。
【0053】
また、例えば加える電圧の範囲を1〜20Vとすると、図7に示すように検出端側の端部12aが全周に渡ってなだらかな形状となる。この場合、例えば図9に示すように、プローブ孔Hの形を意図的に絶縁被膜12の端部12aと同じ角度のテーパー状にすれば、直角の場合は絶縁被膜12の端部12aの界面だけで支えるのに対してテーパー全体で支えることになるので、絶縁被膜12の端部12aにかかる負荷を低減することができる。また、同じプローブピン11を用いてパッドPにあたる力を意図的に操作したい場合、プローブ孔Hの内径を微妙に変化させれば、プローブ孔Hが大きめのときは押し圧を大きくし、プローブ孔Hが小さめのときは押し圧を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、導電体よりなるプローブピンと、このプローブピンの検出端側の部分が露出するように、このプローブピンの外周を被膜する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピン絶縁被膜プローブピン及びその製造方法に関する。
【符号の説明】
【0055】
10 絶縁被膜プローブピン
11 プローブピン
11a 検出端側
11b 接続端側
12 絶縁被膜
12a 端部
12b 端部
20 電着塗装装置
21 電着バス
22 電極
23 電源部
L 電着液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体よりなるプローブピンと、該プローブピンの検出端側の部分が露出するように該プローブピンの外周を被覆する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピンの製造方法であって、
上記絶縁被膜を形成する電着材料を含む電着液内に電極を浸すと共に、上記プローブピンを該プローブピンの検出端側が上方を向くように垂直に挿入し、
上記電極と上記プローブピンとに通電する電圧を調整することで、
上記絶縁被膜におけるプローブピンの検出端側の形状を全周に渡り上方に向かって先細となるテーパ形状から端部の断面が直角となる形状又は端部が他の領域よりも膨らむ形状まで希望の形状に形成する
ことを特徴とする絶縁被膜プローブピンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された絶縁被膜プローブピンの製造方法において、
上記クローン効率を120μm/C以上220μm/C以下とし、
上記検出端側の端部の断面が略直角となるように、上記絶縁被膜を形成する
ことを特徴とする絶縁被膜プローブピンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された絶縁被膜プローブピンの製造方法において、
上記電着液の粘度を5mPa・s以上8mPa・s以下とする
ことを特徴とする絶縁被膜プローブピンの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載された絶縁被膜プローブピンの製造方法において、
上記電着液の温度を15℃以上30℃以下とする
ことを特徴とする絶縁被膜プローブピンの製造方法。
【請求項5】
導電体よりなるプローブピンと、該プローブピンの検出端側の部分が露出するように該プローブピンの外周を被覆する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピンであって、
上記絶縁被膜は、剥離処理を伴わずに電着材料を含んだ電着液で電着処理を行うことにより、上記検出端側の端部が全周に渡って断面が略直角に形成されている
ことを特徴とする絶縁被膜プローブピン。
【請求項6】
導電体よりなるプローブピンと、該プローブピンの検出端側の部分が露出するように該プローブピンの外周を被覆する絶縁被膜と、を備えた絶縁被膜プローブピンであって、
上記絶縁被膜は、剥離処理を伴わずに電着材料を含んだ電着液で電着処理を行うことにより、上記検出端側の端部が全周に渡って接続端側の端部よりも厚肉に形成されている
ことを特徴とする絶縁被膜プローブピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127869(P2012−127869A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280995(P2010−280995)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】