説明

耕耘軸の支持構造

【課題】耕耘ファイナル軸への雑草等の巻き付きを防止することができる耕耘軸の支持構造を提供する。
【解決手段】チェーンケース333には、チェーンケース333の下方部分を覆うプロテクタ500が設けられている。そして、プロテクタ500の本体部510によりチェーンケース510が覆われる一方で、本体部510から耕耘ファイナル軸111に向かって延びた延在片520の自由端部が耕耘ファイナル軸111の外周面に近接されている。そして、耕耘ファイナル軸111の軸線回り所定範囲においてのみ、耕耘ファイナル軸111の外周面が延在片520の自由端部によって囲繞される。ここで、耕耘ファイナル軸111の回転に伴って耕耘ファイナル軸111に雑草等が巻き付こうとした際、巻き付こうとした雑草等が延在片520の自由端部に接触して、掻き取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに適用される耕耘軸の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動機構を収容する油貯留可能な伝動ケースと、前記伝動ケースに設けられた軸受部材と、前記軸受部材に設置されたベアリング部材およびオイルシール部材を介して軸線回り回転自在かつ液密に支持される軸本体および該軸本体の伝動方向下流側に設けられた連結フランジを有する耕耘ファイナル軸と、前記連結フランジを介して前記耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される耕耘爪軸とを備えた耕耘軸の支持構造であって、前記伝動ケースの下方部分をプロテクタで覆う耕耘軸の支持構造が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載の耕耘軸の支持構造は、前記プロテクターで伝動ケースの下方部分を覆うことにより、耕耘時に地面の土等に接触し易い伝動ケースの下方部分が磨耗することを防止している。
【0004】
ところで、前記耕耘ファイナル軸は、車輌本機に備えられたPTO軸からの動力が伝動機構を介して伝達されることにより回転駆動されるが、耕耘時において耕耘ファイナル軸の軸本体に雑草などが巻き付くことがある。特に、伝動ケースおよび/または軸受部材と耕耘ファイナル軸との摺動箇所付近に雑草が巻き付くと、耕耘ファイナル軸の回転に対して抵抗力が生じることとなり、エンジンや伝動機構への負荷が増大することになる。
【特許文献1】特開2002−281802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、耕耘ファイナル軸への雑草等の巻き付きを防止することができる耕耘軸の支持構造を提供することを、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る耕耘軸の支持構造は、伝動機構を収容する油貯留可能な伝動ケースと、前記伝動ケースに設けられた軸受部材と、前記軸受部材に設置されたベアリング部材およびオイルシール部材を介して軸線回り回転自在かつ液密に支持される軸本体および該軸本体の伝動方向下流側に設けられた連結フランジを有する耕耘ファイナル軸と、前記連結フランジを介して前記耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される耕耘爪軸と、前記伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタとを備えた耕耘軸の支持構造であって、前記プロテクタは、前記伝動ケースを覆う本体部と、前記本体部から前記耕耘ファイナル軸へ向かって延び、自由端部が前記耕耘ファイナル軸の外周面に近接された延在片とを有し、前記延在片は、前記自由端部が前記耕耘ファイナル軸の軸線回り所定範囲においてのみ該耕耘ファイナル軸の外周面を囲繞するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
上記構成の耕耘軸の支持構造によれば、油貯留可能な伝動ケースに伝動機構が収容される。伝動ケースには、軸受部材が設けられ、耕耘ファイナル軸の軸本体がベアリング部材およびオイルシール部材を介して軸受部材に軸線回り回転自在かつ液密に支持される。耕耘ファイナル軸は、軸本体の伝動方向下流側に連結フランジが設けられ、当該連結フランジを介して耕耘爪軸が耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される。
一方、伝動ケースには、伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタが設けられている。そして、プロテクタの本体部により伝動ケースが覆われる一方で、本体部から耕耘ファイナル軸に向かって延びた延在片の自由端部が耕耘ファイナル軸の外周面に近接されている。そして、耕耘ファイナル軸の軸線回り所定範囲においてのみ、耕耘ファイナル軸の外周面が延在片の自由端部によって囲繞される。
ここで、耕耘ファイナル軸の回転に伴って耕耘ファイナル軸に雑草等が巻き付こうとした際、巻き付こうとした雑草等が延在片の自由端部に接触して、掻き取られる(スクレーパ作用が生じる)。
【0008】
このように、伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタから延びた延在片の自由端部が耕耘ファイナル軸の軸線回り所定範囲においてのみ囲繞していることにより、耕耘ファイナル軸への雑草等の巻き付きを防止することができる。しかも、雑草等の掻き取りを伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタを用いて行うことにより、部品点数の増加を防止することができる。
【0009】
好ましくは、前記連結フランジは、伝動方向上流側へ行くに従って外径が縮径されるテーパ領域を有し、前記延在片の自由端部は前記テーパ領域に近接されているように構成される。
【0010】
この場合、連結フランジのテーパ領域においては、伝動方向上流側へ行くに従って外径が縮径されているため、耕耘ファイナル軸に巻き付こうとする雑草等に対して伝動方向上流側への移動が促される。
これにより、耕耘ファイナル軸の回転に伴って巻き付こうとする雑草等をプロテクタの延在片の自由端部の方向へ移動させることができる。したがって、プロテクタによる雑草等の掻き取り作用をより効果的に得ることができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記軸受部材は、伝動方向下流側が前記伝動ケースより伝動方向下流側へ突出され、前記連結フランジは、前記伝動ケースへ近接される延在部を有し、前記延在部は、前記テーパ領域を形成するとともに、前記軸受部材の前記突出部と共働して第1ラビリンスを形成するように構成される。
【0012】
この場合、伝動ケースより伝動方向下流側に突出された軸受部材の突出部と、連結フランジから伝動ケースへ近接された延在部とにより、第1ラビリンスが形成される。このとき、延在部には、耕耘ファイナル軸の回転に伴って巻き付こうとする雑草等をプロテクタの延在片の自由端部の方向へ移動させるテーパ領域が形成される。
したがって、第1ラビリンスを形成することにより、テーパ領域上をプロテクタの延在片の自由端部の方向へ移動してきた雑草等や泥等が、軸受部材と連結フランジとの間から侵入することを防止することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記延在部の伝動方向上流側端面は、対向する固定部材の端面と共働して第2ラビリンスを形成しているように構成される。
【0014】
この場合、連結フランジの延在部の伝動方向上流側端面と、対向する固定部材の端面とによって第2ラビリンスが形成される。
したがって、第2ラビリンスを形成することにより、テーパ領域上をプロテクタの延在片の自由端部の方向へ移動してきた雑草等や泥等が、連結フランジの延在部とこれに対向する固定部材の端面との間から侵入することを防止することができ、第1ラビリンスとともに耕耘ファイナル軸への雑草等の巻き付きや泥等の侵入をより効果的に防止することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記軸受部材は、伝動方向下流側が前記伝動ケースより伝動方向下流側へ突出されるとともに、該突出部に径方向外方へ延在するボス部が設けられており、前記連結フランジは、前記伝動ケースへ近接される延在部を有し、前記延在部は、前記テーパ領域を形成するとともに、前記突出部のうち前記ボス部より伝動方向下流側に位置する領域の外周面ならびに前記ボス部の伝動方向下流側を向く下流側端面および外周面と共働してラビリンスを形成するように構成される。
【0016】
この場合、軸受部材から突出された突出部に設けられたボス部を用いて、当該ボス部の伝動方向下流側を向く下流側端面および外周面と、突出部のうちボス部より伝動方向下流側に位置する領域の外周面と、連結フランジから伝動ケースへ近接される延在部とによってラビリンスが形成される。このとき、延在部には、耕耘ファイナル軸の回転に伴って巻き付こうとする雑草等をプロテクタの延在片の自由端部の方向へ移動させるテーパ領域が形成される。
したがって、ボス部を用いてラビリンスを形成することにより、テーパ領域上をプロテクタの自由端部の方向へ移動してきた雑草等や泥等が、軸受部材と連結フランジとの間から侵入することを防止することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記ボス部の下流側端面および前記延在部の上流側端面には凹凸状のラビリンスが形成されているように構成される。
【0018】
この場合、ボス部と延在部との間で、より複雑な形状のラビリンスが形成される。
したがって、テーパ領域上をプロテクタの延在片の自由端部の方向へ移動してきた雑草等や泥等が、軸受部材と連結フランジとの間から侵入することをより有効に防止することができる。
【0019】
好ましくは、前記プロテクタと前記伝動ケースとが対向する領域の少なくとも一部に空間部が存するように構成される。
【0020】
この場合、プロテクタと伝動ケースとが対抗する領域の一部に空間部が設けられる。
したがって、プロテクタの延在片の自由端部から泥等が仮に侵入した場合であっても、空間部に優先的に貯留されることとなり、泥等の侵入に弱いオイルシール部材に侵入することを防止して耐久性を向上させることができる。
【0021】
さらに好ましくは、前記プロテクタには、内端部が前記空間部に連通されかつ外端部が車輌後方側へ開口された排出口であって、前記内端部から前記外端部へ向かうに従って縮径された排出口が形成されているように構成される。
【0022】
この場合、泥等がプロテクタの空間部に侵入した際、車輌後方側へ開口された排出口から泥等が排出される。ここで、排出口は、内端部から外端部へ向かうに従って縮径されているため、排出口の外端部から内端部側(すなわち空間部内)には泥等が侵入し難く、内端部から外端部(すなわち外部)には泥等が排出し易い。
したがって、プロテクタの延在片の自由端部から泥等が仮に侵入した場合であっても、侵入した泥等を排出口から有効に排出することができる。
【0023】
好ましくは、前記延在片は、前記本体部に着脱可能に連結されているように構成される。
【0024】
この場合、プロテクタの本体部と延在片とは、別体に構成され、着脱が可能となる。
したがって、延在片の自由端部が磨耗した場合にはプロテクタの延在片のみを交換することで、維持費の上昇を抑えることができる。一方、プロテクタの本体部が磨耗した場合にはプロテクタの本体部のみを交換することで、同様の効果を得ることもできる。また、既存の(延在片のない)プロテクタにも延在片を取り付けることにより、既存のプロテクタを流用して本発明のプロテクタを実現することができ、製造コストを下げるとともに、仕様に応じて延在片520の有無を選択可能とすることもできる。
【0025】
さらに好ましくは、前記延在片は、前記本体部に位置調整可能に連結されているように構成される。
【0026】
この場合、プロテクタの延在片は、本体部に対して位置調整されて装着される。
したがって、プロテクタの設計誤差によらず、延在片の自由端部を耕耘ファイナル軸の外周面に可及的に近接させることができる。また、延在片の自由端部が磨耗した場合であっても、位置調整し直して適正に位置させることにより、雑草等の掻き取り作用をより長期にわたって持続させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る耕耘軸の支持構造によれば、伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタから延びた延在片の自由端部が耕耘ファイナル軸の軸線回り所定範囲においてのみ囲繞していることにより、耕耘ファイナル軸への雑草等の巻き付きを防止することができる。しかも、雑草等の掻き取りを伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタを用いて行うことにより、部品点数の増加を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る耕耘軸の支持構造の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る耕耘軸の支持構造の第1実施形態を適用したトラクタAを示す側面図である。
【0029】
図1に示すトラクタAは、トラクタ本機200と、該トラクタ本機200に付設されるロータリ耕耘機300とを備えている。
前記トラクタ本機200において、前後に前輪1および後輪2を懸架する本体の前部にボンネット6が配設され、該ボンネット6の内部には駆動源(ここではエンジン)5が配置されている。また運転席11の前方にはステアリングハンドル10が配設されている。
【0030】
前記駆動源5の後方にはミッションケース50が配設され、該駆動源5からの動力を前記ミッションケース50に伝達して変速し、前記後輪2や前記前輪1に駆動力を伝達するように構成されている。
前記ロータリ耕耘機300は、前記トラクタ本機200の後部に設けられた作業機装着装置220に、該装置220に設けられた連結機構210を介して装着されている。
前記作業機装着装置220は、トップリンク221や左右一対のロアリンク222等より構成されている。前記ロアリンク222は、前記ミッションケース50上部に配設した油圧ケース51の車輌幅方向側部に設けられたリフトアーム223にリフトロッド224を介して連結されている。
前記ロータリ耕耘機300は、前記リフトアーム223が前記油圧ケース51内の図示しない油圧シリンダの伸縮によって上下回動することにより、前記リフトロッド224および前記ロアリンク222を介して昇降回動可能とされている。
【0031】
また、前記ロータリ耕耘機300は、前記駆動源5からの動力の一部が前記ミッションケース50後面より突出したPTO軸15より自在継ぎ手16を介して前記ロータリ耕耘機300に伝えられて駆動するように構成されている。
【0032】
図2および図3は図1に示すロータリ耕耘機の動力伝達構造の展開断面図である。図2は伝動方向上流側の動力伝達構造の展開断面図であり、図3は図2から続く伝動方向下流側の動力伝達構造の展開断面図である。
前記ロータリ耕耘機300は、図1〜図3に示すように、入力軸310と、動力伝達軸320と、ロータケース330と、耕耘部340と、前記耕耘部340を覆う耕耘カバー150とを備えている。
前記入力軸310は、本機に設けられた前記PTO軸15に前記自在継ぎ手16を介して作動連結されるように構成されており、前記駆動源5からの動力が該PTO軸15および自在継ぎ手16を介して伝達されるようになっている。
【0033】
前記動力伝達軸320は、前記入力軸310からの動力が第1伝動機構350によって伝達されるように構成されており、該第1伝動機構350を介して該入力軸310に作動連結されている。
【0034】
詳しくは、前記第1伝動機構350は、ベベルギヤボックス351と、第1および第2ベベルギヤ352,353とを備えている。
前記ベベルギヤボックス351は、前記入力軸310を軸線回り回転自在に支持するとともに、該入力軸310に対して直交するように配置された前記動力伝達軸320の一端部側を軸線回り回転自在に支持している。
また、前記第1ベベルギヤ352は、前記ベベルギヤボックス351内に収容されており、前記入力軸310に外嵌固定されている。前記第2ベベルギヤ353は、前記ベベルギヤボックス351内に収容されており、前記第1ベベルギヤ352と噛合するように、前記動力伝達軸320の一端部側に外嵌固定されている。
【0035】
前記ロータケース330は、前記伝動機構350の車輌幅方向の両側に設けられた左右一対のメーンビーム331,332と、前記左右一対のメーンビーム331,332の車輌幅方向外端部にそれぞれ配設された支持部材333,334とを備えている。
【0036】
詳しくは、前記一方のメーンビーム331に配設された前記支持部材333は、ここではチェーンケースとされており、前記他方のメーンビーム332に配設された前記支持部材334は、ここではサイドフレームとされている。
前記一方のメーンビーム331は、前記ベベルギヤボックス351の一方の側面と前記チェーンケース333の上端部とを連結するように配設されており、前記動力伝達軸320が内装されている。前記他方のメーンビーム332は、前記ベベルギヤボックス351の他方の側面と前記サイドフレーム334の上端部とを連結するように配設されている。
【0037】
前記チェーンケース333は、上端部が前記動力伝達軸320の他端部側を軸線回り回転自在に支持しており、下端部に設けられた軸受部材101が前記耕耘部340を構成する耕耘軸110の一端部側をベアリング部材410およびオイルシール部材420を介して軸線回り回転自在かつ液密に支持している。なお、本実施形態の軸受部材101は、チェーンケース333とは、別体とされたベアリングケースとなっており、チェーンケース333に溶接等により固着されているが、チェーンケース333と一体形勢されてもよい。
前記オイルシール部材420は、ここでは、前記チェーンケース333内の潤滑油の漏れを防止する為のものとされている。
また、前記サイドフレーム334は、下端部の軸受部材101が前記耕耘軸110の他端部を軸線回り回転自在に支持している。
【0038】
前記耕耘部340は、耕耘軸110と、耕耘爪120とを備えている。
前記耕耘軸110は、前記動力伝達軸320からの動力が第2伝動機構360によって伝達されるように構成されており、該第2伝動機構360を介して該動力伝達軸320に作動連結されている。
【0039】
詳しくは、前記第2伝動機構360は、第1および第2スプロケット361,362と、チェーン363とを備えている。
前記第1スプロケット361は、前記動力伝達軸320の他端部側に外嵌固定されており、前記第2スプロケット362は、前記耕耘軸110の一端部側に外嵌固定されている。そして、前記チェーン363は、前記第1および第2スプロケット361,362に巻掛けられている。
また、前記耕耘爪120は、前記耕耘軸110を構成する耕耘爪軸112に固定部材BL1を用いて軸線回り相対回転不能に設けられている。
【0040】
斯かる構成を備えることにより、前記ロータリ耕耘機300は、前記入力軸110から前記第1伝動機構350を介して前記動力伝達軸320に伝達された動力が前記第2伝動機構360を介して前記耕耘軸110に伝達され、これにより、該耕耘軸110における前記耕耘爪120が軸線回りに回転駆動されるようになっている。
【0041】
次に、本実施の形態に係る耕耘軸110の支持構造100について前記図3を参照しながら詳述する。
前記耕耘軸110は、図3に示すように、耕耘ファイナル軸111と、耕耘爪軸112とを備えている。
【0042】
前記耕耘ファイナル軸111は、軸本体111aおよび連結フランジ111bを備えている。
前記軸本体111aは、軸受部材101に設置された前記ベアリング部材410およびオイルシール部材420を介して軸線回り回転自在かつ液密に支持されており、前記連結フランジ111bは、前記軸本体111aの伝動方向下流側(車輌幅方向内方)に設けられている。
また、前記耕耘爪軸112は、前記耕耘ファイナル軸111を構成する前記連結フランジ111bを介して該耕耘ファイナル軸111に軸線回り相対回転不能に連結されている。
【0043】
また、図3に示すように、前記チェーンケース333における前記軸受部材101の伝動方向下流側には、開口333aが設けられている。
前記軸本体111aは、前記チェーンケース333に形成された前記開口333aに装着された中空ホルダー430に前記ベアリング部材410および前記オイルシール部材420を介して軸線回り回転自在かつ液密に支持されている。
詳しくは、前記ベアリング部材410および前記オイルシール部材420は、前記第2スプロケット362と前記連結フランジ111bとの間に設けられており、前記オイルシール部材420は、前記ベアリング部材410の車輌幅方向内方(伝動方向下流側)に配置されている。
【0044】
本実施形態において、前記軸受部材101は、伝動方向下流側がチェーンケース333より伝動方向下流側へ突出された突出部101aを有している。また、連結フランジ111bは、軸本体111aから径方向外方に延在するプレート部と当該プレート部の外周縁からチェーンケース333に近接する方向に伸びる延在部111cとを有している。ここで、前記延在部111cは、軸本体111aの伝動方向上流側(車輌幅方向内方)へ行くに従って外径が縮径されるテーパ領域111ctを形成するとともに、軸受部材101の突出部101aと共働して第1ラビリンスを形成する。
さらに、延在部111cの伝動方向上流側端面111dは、対向する固定部材の端面152aと共働して第2ラビリンスを形成しているように構成される。本実施形態において、固定部材は、耕耘カバー150の側板151および該側板151に連結された耕耘カバー側部材152(ここでは、該側板151に連結されたヒンジプレート152)で構成されており、固定部材の端面152aは、ヒンジプレート152の下流側端面である。
このような第1および第2ラビリンスにより、ベアリング部材410およびオイルシール部材420の設置空間Pを外部から遮閉するように構成されている。
【0045】
ここで、本実施形態においては、図3に示されるように、伝動ケースであるチェーンケース333の下方部分を覆うプロテクタ500が設けられている。ここで、図4は図3のプロテクタ500を伝動方向下流側から見た図である。
図3および図4に示すように、前記プロテクタ500は、前記チェーンケース333を覆う本体部510と、前記本体部510から前記耕耘ファイナル軸111へ向かって延び、自由端部が前記耕耘ファイナル軸111の外周面に近接された延在片520とを有している。そして、前記延在片520は、図4に示すように、前記自由端部が前記耕耘ファイナル軸111の軸線回り所定範囲においてのみ該耕耘ファイナル軸111の外周面を囲繞するように構成されている。囲繞する範囲は、全周でない限り種々設定可能である。
【0046】
上記構成の耕耘軸の支持構造100によれば、プロテクタ500の本体部510によりチェーンケース333が覆われる一方で、本体部510から耕耘ファイナル軸111に向かって延びた延在片520の自由端部が耕耘ファイナル軸111の外周面に近接されている。そして、耕耘ファイナル軸111の軸線回り所定範囲においてのみ、耕耘ファイナル軸111の外周面が延在片520の自由端部によって囲繞される。
ここで、耕耘ファイナル軸111の回転に伴って耕耘ファイナル軸111に雑草等が巻き付こうとした際、巻き付こうとした雑草等が耕耘ファイナル軸111の軸線回り所定範囲においてのみ囲繞された延在片520の自由端部に接触して、掻き取られる(スクレーパ作用が生じる)。
【0047】
このように、チェーンケース333の下方部分を覆うプロテクタ500から延びた延在片520の自由端部が耕耘ファイナル軸111の軸線回り所定範囲においてのみ囲繞していることにより、耕耘ファイナル軸111への雑草等の巻き付きを防止することができる。しかも、雑草等の掻き取りをチェーンケース333の下方部分を覆うプロテクタ500を用いて行うことにより、部品点数の増加を防止することができる。
【0048】
本実施形態において、前記延在片520の自由端部は前記テーパ領域111ctに近接されているように構成される。
【0049】
この場合、連結フランジ111bから延出された延在部111cのテーパ領域111ctにおいては、軸本体111aの外径が伝動方向上流側へ行くに従って縮径されているため、耕耘ファイナル軸111の回転に伴って巻き付こうとする雑草等は、プロテクタ500の自由端部520に近接する方向へ移動する。
これにより、耕耘ファイナル軸111の回転に伴って巻き付こうとする雑草等をプロテクタ500の自由端部の方向へ移動させることができる。したがって、プロテクタ500の延在片520による雑草等の掻き取り作用をより効果的に得ることができる。
【0050】
また、固定部材の端面(本実施形態においてはヒンジプレート152の下流側端面)と連結フランジ111bの延在部111cの伝動方向上流側端面とによって形成された前記第2ラビリンスにより、テーパ領域111ct上をプロテクタ500の延在片520の自由端部の方向へ移動してきた雑草等や泥等が、ヒンジプレート152と連結フランジ111bの延在部111cとの間から侵入することを防止することができる。しかも、例え、第2ラビリンスを越えて泥等が侵入してきたとしても、連結フランジ111bの延在部111cと軸受部材101の突出部101aとによって形成された前記第1ラビリンスにより、ベアリング部材410およびオイルシール部材420の設置空間Pへの泥等の侵入を防止し、当該設置空間Pを外部から確実に遮閉することができる。
【0051】
本実施形態においては、前記プロテクタ500と前記チェーンケースとが対向する領域の少なくとも一部に空間部530が存するように構成される。
しかも、前記プロテクタ500には、図4に示すように、内端部が前記空間部530に連通されかつ外端部が車輌後方側へ開口された排出口540であって、前記内端部から前記外端部へ向かうに従って縮径された排出口540が形成されている。
【0052】
この場合、プロテクタ500とチェーンケース333とが対抗する領域の一部に空間部530が設けられることにより、プロテクタ500の延在片520の自由端部から泥等が仮に侵入した場合であっても、空間部530に優先的に貯留されることとなり、泥等の侵入に弱いオイルシール部材420に侵入することを防止して耐久性を向上させることができる。
【0053】
しかも、泥等がプロテクタ500の空間部530に侵入した際、車輌後方側へ開口された排出口540から泥等が排出される。ここで、排出口540は、内端部から外端部へ向かうに従って縮径されているため、排出口540の外端部から内端部側(すなわち空間部530内)には泥等が侵入し難く、内端部から外端部(すなわち外部)には泥等が排出し易い。
したがって、プロテクタ500の延在片520の自由端部から泥等が仮に侵入した場合であっても、侵入した泥等を排出口540から有効に排出することができる。
【0054】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る耕耘軸の支持構造の概略構成を示す断面図である。本実施形態が前記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、前記軸受部材101の突出部101aに、径方向外方へ延在するボス部101bが設けられており、前記連結フランジ111bの延在部111cは、前記テーパ領域111ctを形成するとともに、前記突出部101aのうち前記ボス部101bより伝動方向下流側に位置する領域の外周面ならびに前記ボス部101bの伝動方向下流側を向く下流側端面および外周面と共働してラビリンスが形成されていることである。また、この際、前記ボス部101bの下流側端面および前記延在部111cの上流側端面には、凹凸状のラビリンスが形成されている。より具体的には、ボス部101bの下流側端面に突起部が設けられるとともに、延在部111cの上流側端面に前記突起部に対応する凹部が設けられている。なお、前記突起部および凹部の形状は、図5に示す態様に限られず種々適用可能である。
【0055】
この場合、軸受部材101から突出された突出部101aに設けられたボス部101bを用いて、当該ボス部101bの伝動方向下流側を向く下流側端面および外周面と、突出部101aのうちボス部101bより伝動方向下流側に位置する領域の外周面と、連結フランジ111bからチェーンケース333へ近接される延在部111cとによってラビリンスが形成される。加えて、前記ボス部101bの下流側端面に形成された突起部および前記延在部111cの上流側端面に形成された凹部が係合することにより、ボス部101bと延在部111cとの間で、より複雑な(入り組んだ)形状のラビリンスが形成される。
また、延在部111cには、耕耘ファイナル軸111の回転に伴って巻き付こうとする雑草等をプロテクタ500の延在片520の自由端部の方向へ移動させるテーパ領域111ctが形成される。
【0056】
このように、ボス部101bを用いてラビリンスを形成することにより、テーパ領域111ct上をプロテクタ500の延在片520の自由端部の方向へ移動してきた雑草等や泥等が、軸受部材101と連結フランジ111bとの間から侵入することを防止することができる。このとき、ラビリンスの形状をより複雑にすることにより泥等の侵入をより有効に防止することができる。
【0057】
続いて、本発明に係る第3実施形態について説明する。図6は本発明の第3実施形態に係る耕耘軸の支持構造の概略構成を示す断面図である。本実施形態が前記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、前記プロテクタ500の延在片520は、前記本体部510に着脱可能に連結されており、しかも、前記延在片520は、前記本体部510に位置調整可能に連結されていることである。
より具体的には、例えば、本体部510および延在片520の双方に連結孔560が設けられ、当該連結孔560にねじ等の連結部材550により、両者を固定する。ここで、本体部510および延在片520の連結孔560の少なくともいずれか一方が連結部材550の固定位置を軸本体111aの伝動方向(車輌幅方向)に位置調整可能な長孔とされることにより実現可能である。
【0058】
この場合、プロテクタ500の本体部510と延在片520とは、別体に構成され、着脱が可能となる。しかも、プロテクタ500の延在片520は、本体部510に対して位置調整されて装着される。
【0059】
このように、プロテクタ500の延在片520を着脱可能とすることにより、延在片520の自由端部が磨耗した場合にはプロテクタ500の延在片520のみを交換することで、維持費の上昇を抑えることができる。一方、プロテクタ500の本体部510が磨耗した場合にはプロテクタ500の本体部510のみを交換することで、同様の効果を得ることもできる。また、既存の(延在片520のない)プロテクタ500にも延在片520を取り付けることにより、既存のプロテクタを流用して(軽微な加工のみを施すことにより)本実施形態のプロテクタ500を実現することができ、製造コストを下げるとともに、仕様に応じて延在片520の有無を選択可能とすることもできる。
また、プロテクタ500の延在片520を位置調整可能とすることにより、プロテクタ500の設計誤差によらず、延在片520の自由端部を耕耘ファイナル軸111の外周面(テーパ領域111ct)に可及的に近接させることができる。また、延在片520の自由端部が磨耗した場合であっても、位置調整し直して適正に位置させることにより、雑草等の掻き取り作用をより長期にわたって持続させる(言い換えると、延在片520の交換サイクルを長くする)ことができる。
【0060】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
例えば、上記実施形態においては、耕耘軸110が第2伝動機構360(チェーンケース333)に対して車輌幅方向内方にある(言い換えると、耕耘ファイナル軸111において伝動方向下流側が車輌幅方向内方となる)サイドロータリ型耕耘機について説明したが、第2伝動機構(チェーンケース)の車輌幅方向両側に耕耘軸が設けられた(言い換えると、耕耘ファイナル軸において伝動方向上流側が車輌幅方向外方となる)センタロータリ型耕耘機についても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る耕耘軸の支持構造の第1実施形態を適用したトラクタを示す側面図である。
【図2】図1に示すロータリ耕耘機の伝動方向上流側の動力伝達構造の展開断面図である。
【図3】図1に示すロータリ耕運機の伝動方向下流側の動力伝達構造の展開断面図である。
【図4】図3のプロテクタ500を伝動方向下流側から見た図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る耕耘軸の支持構造の概略構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る耕耘軸の支持構造の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
100…耕耘軸の支持構造 110…耕耘軸 112…耕耘爪軸
101…軸受部材 101a…突出部 101b…ボス部
111…耕耘ファイナル軸 111a…軸本体 111b…連結フランジ 111c…延在部 111ct…テーパ領域
333…チェーンケース(伝動ケース) 360…第2伝動機構(伝動機構)
410…ベアリング部材 420…オイルシール部材
500…プロテクタ 510…本体部 520…延在片 530…空間部 540…排出口 550…連結部材 560…連結孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動機構を収容する油貯留可能な伝動ケースと、前記伝動ケースに設けられた軸受部材と、前記軸受部材に設置されたベアリング部材およびオイルシール部材を介して軸線回り回転自在かつ液密に支持される軸本体および該軸本体の伝動方向下流側に設けられた連結フランジを有する耕耘ファイナル軸と、前記連結フランジを介して前記耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される耕耘爪軸と、前記伝動ケースの下方部分を覆うプロテクタとを備えた耕耘軸の支持構造であって、
前記プロテクタは、前記伝動ケースを覆う本体部と、前記本体部から前記耕耘ファイナル軸へ向かって延び、自由端部が前記耕耘ファイナル軸の外周面に近接された延在片とを有し、
前記延在片は、前記自由端部が前記耕耘ファイナル軸の軸線回り所定範囲においてのみ該耕耘ファイナル軸の外周面を囲繞するように構成されていることを特徴とする耕耘軸の支持構造。
【請求項2】
前記連結フランジは、伝動方向上流側へ行くに従って外径が縮径されるテーパ領域を有し、
前記延在片の自由端部は前記テーパ領域に近接されていることを特徴とする請求項1に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項3】
前記軸受部材は、伝動方向下流側が前記伝動ケースより伝動方向下流側へ突出され、
前記連結フランジは、前記伝動ケースへ近接される延在部を有し、
前記延在部は、前記テーパ領域を形成するとともに、前記軸受部材の前記突出部と共働して第1ラビリンスを形成することを特徴とする請求項2に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項4】
前記延在部の伝動方向上流側端面は、対向する固定部材の端面と共働して第2ラビリンスを形成していることを特徴とする請求項3に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項5】
前記軸受部材は、伝動方向下流側が前記伝動ケースより伝動方向下流側へ突出されるとともに、該突出部に径方向外方へ延在するボス部が設けられており、
前記連結フランジは、前記伝動ケースへ近接される延在部を有し、
前記延在部は、前記テーパ領域を形成するとともに、前記突出部のうち前記ボス部より伝動方向下流側に位置する領域の外周面ならびに前記ボス部の伝動方向下流側を向く下流側端面および外周面と共働してラビリンスを形成することを特徴とする請求項2に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項6】
前記ボス部の下流側端面および前記延在部の上流側端面には凹凸状のラビリンスが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項7】
前記プロテクタと前記伝動ケースとが対向する領域の少なくとも一部に空間部が存することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項8】
前記プロテクタには、内端部が前記空間部に連通されかつ外端部が車輌後方側へ開口された排出口であって、前記内端部から前記外端部へ向かうに従って縮径された排出口が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項9】
前記延在片は前記本体部に着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項10】
前記延在片は前記本体部に位置調整可能に連結されていることを特徴とする請求項9に記載の耕耘軸の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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