説明

耕耘軸の支持構造

【課題】耕耘軸の外表面と軸受部の内周面との間に介挿されるベアリング部材およびシール部材の設置空間への草や泥等のダストの侵入を有効に防止しつつ、前記耕耘軸の回転方向に拘わらず前記設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を外部へ排出し得る耕耘軸の支持構造を提供する。
【解決手段】ダストカバー130に正転用スリット133および逆転用スリット134が設けられる。正転用スリット133は、車輌幅方向内方側から外方側へ行くに従って連結フランジ111bの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜されている。一方、逆転用スリット134は、正転用スリット133の車輌幅方向内端部から連結フランジ111bの正転方向へ向かって延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに適用される耕耘軸の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも車輌幅方向内方側が開口とされた軸受部と、前記軸受部内に設置されたベアリング部材およびシール部材と、車輌幅方向内端部が前記軸受部より車輌幅方向内方へ延在された状態で前記ベアリング部材および前記シール部材を介して前記軸受部に軸線回り回転自在に支持される軸本体および該軸本体の車輌幅方向内方に設けられた連結フランジを有する耕耘ファイナル軸と、前記連結フランジを介して前記耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される耕耘爪軸とを備えた耕耘軸の支持構造において、前記ベアリング部材および前記シール部材の設置空間を外部から遮閉するように前記連結フランジにダストカバーを設けると共に、前記ダストカバーに、車輌幅方向内端側から外端側へ行くに従って前記連結フランジの回転方向とは反対側に位置するように傾斜されたスリットを形成することが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載の耕耘軸の支持構造は、前記ダストカバーによって前記ベアリング部材および前記シール部材の設置空間への草や泥等のダストの侵入を防止しつつ、前記設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を前記連結フランジの回転に伴う遠心力を利用して前記スリットから外部へ排出させ得るようになっている。
【0004】
ところで、前記耕耘ファイナル軸は、車輌本機に備えられたPTO軸からの動力によって回転駆動されるが、前記車輌本機の仕様によっては、前記PTO軸の回転方向が正転方向または逆転方向に切替可能とされる。
このようにPTO軸の回転方向が正逆切替可能とされた車輌本機に前記従来の構成を適用すると、前記PTO軸が正転方向に回転駆動される場合には、前記スリットを介して前記設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を外部へ排出し得るが、その一方で、前記PTO軸が逆転方向に回転駆動される場合には、前記スリットを介して前記設置空間内に泥水等の不要液体が流入することになる。
【特許文献1】実公昭54−4402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、耕耘軸の外表面と軸受部の内周面との間に介挿されるベアリング部材およびシール部材の設置空間への草や泥等のダストの侵入を有効に防止しつつ、前記耕耘軸の回転方向に拘わらず前記設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を外部へ排出し得る耕耘軸の支持構造を提供することを、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る耕耘軸の支持構造は、少なくとも車輌幅方向内方側が開口とされた軸受部と、前記軸受部内に設置されたベアリング部材およびシール部材と、車輌幅方向内端部が前記軸受部より車輌幅方向内方へ延在された状態で前記ベアリング部材および前記シール部材を介して前記軸受部に軸線回り回転自在且つ液密に支持される軸本体および該軸本体の車輌幅方向内方に設けられた連結フランジを有する耕耘ファイナル軸と、前記連結フランジを介して前記耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される耕耘爪軸と、前記ベアリング部材および前記シール部材の設置空間を外部から遮閉するように前記連結フランジに設けられたダストカバーとを備えた耕耘軸の支持構造であって、前記ダストカバーには、前記設置空間の内部と外部とを連通する正転用スリットであって、車輌幅方向内方側から外方側へ行くに従って前記連結フランジの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜された正転用スリットと、前記正転用スリットの車輌幅方向内端部から前記連結フランジの正転方向へ向かって延びる逆転用スリットとが設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
上記構成の耕耘軸の支持構造によれば、ダストカバーに正転用スリットおよび逆転用スリットが設けられる。正転用スリットは、車輌幅方向内方側から外方側へ行くに従って連結フランジの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜されている。このため、耕耘軸(耕耘ファイナル軸)が正転した際に、ベアリング部材およびシール部材の設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を連結フランジの回転に伴う遠心力を利用して正転用スリットから外部へ排出させることができる。一方、逆転用スリットは、正転用スリットの車輌幅方向内端部から連結フランジの正転方向へ向かって延びている。これにより、耕耘軸(耕耘ファイナル軸)が逆転した場合、泥水等の不要液体は、連結フランジの回転に伴い正転用スリットを通じて前記設置空間内に進入する方向に進むが、逆転用スリットにより外部に排出される方向に向きを変える。したがって、当該不要液体は、前記設置空間内に留まることなく連結フランジの回転に伴う遠心力を利用して逆転用スリットから外部へ排出される。
【0008】
このように、正転用スリットに加えて、正転用スリットの車輌幅方向内端部から前記連結フランジの正転方向へ向かって延びる逆転用スリットを設けることにより、耕耘軸の外表面と軸受部の内周面との間に介挿されるベアリング部材およびシール部材の設置空間への草や泥等のダストの侵入を有効に防止しつつ、前記耕耘軸の回転方向に拘わらず前記設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を外部へ排出することができる。
【0009】
好ましくは、前記逆転用スリットは、前記連結フランジの回転方向と略平行に伸延しているように構成される。
【0010】
この場合、正転用スリットから進入してくる不要液体の向きを排出する方向にスムーズに変更することができ、前記設置空間およびスリット内に不要液体を留めることなくより効果的に排出することができる。
【0011】
好ましくは、前記逆転用スリットは、前記正転用スリットより幅広となるように構成される。
【0012】
この場合、逆転用スリットの幅が正転用スリットの幅より広くなるため、耕耘軸が逆転した際に不要液体の排出口(すなわち逆転用スリット)が広くなり、排出を容易かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る耕耘軸の支持構造によれば、正転用スリットに加えて、正転用スリットの車輌幅方向内端部から前記連結フランジの正転方向へ向かって延びる逆転用スリットを設けることにより、耕耘軸の外表面と軸受部の内周面との間に介挿されるベアリング部材およびシール部材の設置空間への草や泥等のダストの侵入を有効に防止しつつ、前記耕耘軸の回転方向に拘わらず前記設置空間内に侵入した泥水等の不要液体を外部へ排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る耕耘軸の支持構造の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る耕耘軸の支持構造の一実施形態を適用したトラクタAを示す側面図である。
【0015】
図1に示すトラクタAは、トラクタ本機200と、該トラクタ本機200に付設されるロータリ耕耘機300とを備えている。
前記トラクタ本機200において、前後に前輪1および後輪2を懸架する本体の前部にボンネット6が配設され、該ボンネット6の内部には駆動源(ここではエンジン)5が配置されている。また運転席11の前方にはステアリングハンドル10が配設されている。
【0016】
前記駆動源5の後方にはミッションケース50が配設され、該駆動源5からの動力を前記ミッションケース50に伝達して変速し、前記後輪2や前記前輪1に駆動力を伝達するように構成されている。
前記ロータリ耕耘機300は、前記トラクタ本機200の後部に設けられた作業機装着装置220に、該装置220に設けられた連結機構210を介して装着されている。
前記作業機装着装置220は、トップリンク221や左右一対のロアリンク222等より構成されている。前記ロアリンク222は、前記ミッションケース50上部に配設した油圧ケース51の車輌幅方向側部に設けられたリフトアーム223にリフトロッド224を介して連結されている。
前記ロータリ耕耘機300は、前記リフトアーム223が前記油圧ケース51内の図示しない油圧シリンダの伸縮によって上下回動することにより、前記リフトロッド224および前記ロアリンク222を介して昇降回動可能とされている。
【0017】
また、前記ロータリ耕耘機300は、前記駆動源5からの動力の一部が前記ミッションケース50後面より突出したPTO軸15より自在継ぎ手16を介して前記ロータリ耕耘機300に伝えられて駆動するように構成されている。
なお、ミッションケース50内のギヤやクラッチ(図示せず)の接続態様を変更することにより、ロータリ耕耘機300の耕耘軸(後述)の正転(図1の矢印X方向)と逆転(図1の矢印Y方向)とが切り替えられる。
【0018】
図2は図1に示すロータリ耕耘機の動力伝達構造の展開断面図である。
前記ロータリ耕耘機300は、図1および図2に示すように、入力軸310と、動力伝達軸320と、ロータケース330と、耕耘部340と、前記耕耘部340を覆う耕耘カバー150とを備えている。
前記入力軸310は、本機に設けられた前記PTO軸15に前記自在継ぎ手16を介して作動連結されるように構成されており、前記駆動源5からの動力が該PTO軸15および自在継ぎ手16を介して伝達されるようになっている。
【0019】
前記動力伝達軸320は、前記入力軸310からの動力が第1伝動機構350によって伝達されるように構成されており、該第1伝動機構350を介して該入力軸310に作動連結されている。
【0020】
詳しくは、前記第1伝動機構350は、ベベルギヤボックス351と、第1および第2ベベルギヤ352,353とを備えている。
前記ベベルギヤボックス351は、前記入力軸310を軸線回り回転自在に支持すると共に、該入力軸310に対して直交するように配置された前記動力伝達軸320の一端部側を軸線回り回転自在に支持している。
また、前記第1ベベルギヤ352は、前記ベベルギヤボックス351内に収容されており、前記入力軸310に外嵌固定されている。前記第2ベベルギヤ353は、前記ベベルギヤボックス351内に収容されており、前記第1ベベルギヤ352と噛合するように、前記動力伝達軸320の一端部側に外嵌固定されている。
【0021】
前記ロータケース330は、前記伝動機構350の車輌幅方向の両側に設けられた左右一対のメーンビーム331,332と、前記左右一対のメーンビーム331,332の車輌幅方向外端部にそれぞれ配設された支持部材333,334とを備えている。
【0022】
詳しくは、前記一方のメーンビーム331に配設された前記支持部材333は、ここではチェーンケースとされており、前記他方のメーンビーム332に配設された前記支持部材334は、ここではサイドフレームとされている。
前記一方のメーンビーム331は、前記ベベルギヤボックス351の一方の側面と前記チェーンケース333の上端部とを連結するように配設されており、前記動力伝達軸320が内装されている。前記他方のメーンビーム332は、前記ベベルギヤボックス351の他方の側面と前記サイドフレーム334の上端部とを連結するように配設されている。
【0023】
前記チェーンケース333は、上端部が前記動力伝達軸320の他端部側を軸線回り回転自在に支持しており、下端部の軸受部101が前記耕耘部340を構成する耕耘軸110の一端部側をベアリング部材410およびオイルシール420を介して軸線回り回転自在且つ液密に支持している。
前記オイルシール420は、ここでは、前記チェーンケース333内の潤滑油の漏れを防止する為のものとされている。
また、前記サイドフレーム334は、下端部の軸受部が前記耕耘軸110の他端部を軸線回り回転自在に支持している。
【0024】
前記耕耘部340は、耕耘軸110と、耕耘爪120とを備えている。
前記耕耘軸110は、前記動力伝達軸320からの動力が第2伝動機構360によって伝達されるように構成されており、該第2伝動機構360を介して該動力伝達軸320に作動連結されている。
【0025】
詳しくは、前記第2伝動機構360は、第1および第2スプロケット361,362と、チェーン363とを備えている。
前記第1スプロケット361は、前記動力伝達軸320の他端部側に外嵌固定されており、前記第2スプロケット362は、前記耕耘軸110の一端部側に外嵌固定されている。そして、前記チェーン363は、前記第1および第2スプロケット361,362に巻掛けられている。
また、前記耕耘爪120は、前記耕耘軸110を構成する後述する耕耘爪軸112に軸線回り相対回転不能に設けられている。
【0026】
斯かる構成を備えることにより、前記ロータリ耕耘機300は、前記入力軸110から前記第1伝動機構350を介して前記動力伝達軸320に伝達された動力が前記第2伝動機構360を介して前記耕耘軸110に伝達され、これにより、該耕耘軸110における前記耕耘爪120が軸線回りに回転駆動(正転または逆転駆動)されるようになっている。
【0027】
次に、本実施の形態に係る耕耘軸110の支持構造100について図3を参照しながら詳述する。図3は本実施の形態に係る耕耘軸の支持構造の概略構成を示す断面図である。
前記耕耘軸110は、図3に示すように、耕耘ファイナル軸111と、耕耘爪軸112とを備えている。
【0028】
前記耕耘ファイナル軸111は、軸本体111aおよび連結フランジ111bを備えている。
前記軸本体111aは、前記支持部材(ここでは、チェーンケース333)の前記軸受部101に設置された前記ベアリング部材410およびオイルシール部材420を介して軸線回り回転自在且つ液密に支持されており、前記連結フランジ111bは、前記軸本体111aの車輌幅方向内方に設けられている。
また、前記耕耘爪軸112は、前記耕耘ファイナル軸111を構成する前記連結フランジ111bを介して該耕耘ファイナル軸111に軸線回り相対回転不能に連結されている。
【0029】
また、図3に示すように、前記チェーンケース333における前記軸受部101の車輌幅方向内方には、開口333aが設けられている。
前記軸本体111aは、前記チェーンケース333に形成された前記開口333aに装着された中空ホルダー430に前記ベアリング部材410および前記オイルシール部材420を介して軸線回り回転自在且つ液密に支持されている。
詳しくは、前記ベアリング部材410および前記オイルシール部材420は、前記第2スプロケット362と前記連結フランジ111bとの間に設けられており、前記オイルシール部材420は、前記ベアリング部材410の車輌幅方向内方に配置されている。
【0030】
前記耕耘軸110の支持構造100は、ダストカバー130を備えている。図4は図3に示す支持構造におけるダストカバーおよび該ダストカバーが設けられた前記耕耘ファイナル軸を示す斜視図である。
図3および図4に示すように、前記ダストカバー130は、前記連結フランジ111bの車輌幅方向外端面に対向状態で固着(例えば、溶着等の接合手段により該連結フランジ111bと一体的に形成)されるリング状の基端面部131と、前記基端面部131の径方向外端部から車輌幅方向外方へ延びるカバー部132とを有している。
なお、前記連結フランジ111bには、図4に示すように、前記耕耘爪120を固定するボルト等の固定部材BL1の邪魔にならないように凹部Sが形成されている。
【0031】
また、前記第1ダストカバー130は、図3に示すように、前記耕耘カバー150の側板151または該側板151に連結された耕耘カバー側部材152(ここでは、該側板151に連結されたヒンジプレート152)と前記連結フランジ111bと共働して、前記ベアリング部材410及び前記オイルシール部材420の設置空間Pを外部から遮閉するように構成されている。前記ヒンジプレート152は、前記側板151に着脱可能に連結されており、前記中空ホルダー430に外挿されている。
また、前記ヒンジプレート152は、前記ダストカバー130のカバー部132を被覆するように配置されており、ダストカバー130およびヒンジプレート152により、いわゆるラビリンス構造を形成する。
【0032】
詳しくは、前記ヒンジプレート152は、車輌幅方向内方側において、前記ダストカバー130の前記カバー部132の自由端部を取り囲むように前記耕耘軸110の軸線回りの円周状に且つ車輌幅方向外方に延びる溝152aと、ボルト等の固定部材BL2により前記側板151に連結される連結部152dとが設けられている。
【0033】
本実施形態のダストカバー130の構成についてより詳しく説明する。図5は図3の支持構造における耕耘ファイナル軸を示す側面図である。
前記ダストカバー130は、前記耕耘カバー150の側板151または該側板151に連結された耕耘カバー側部材152(ここでは、該側板151に連結されたヒンジプレート152)と前記連結フランジ111bと共働して、前記ベアリング部材410および前記オイルシール部材420の設置空間Pを外部から遮閉するように構成されている。
そして、ダストカバー130には、前記設置空間Pの内部と外部とを連通する正転用スリットであって、車輌幅方向内方側から外方側へ行くに従って前記連結フランジ111bの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜された正転用スリット133と、前記正転用スリット133の車輌幅方向内端部から前記連結フランジ111bの正転方向へ向かって延びる逆転用スリット134とが設けられている。
【0034】
本実施形態に係る耕耘軸110の支持構造100によれば、図4に示すように、ダストカバー130に正転用スリット133および逆転用スリット134が設けられる。正転用スリット133は、車輌幅方向内方側から外方側へ行くに従って連結フランジ111bの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜されている。このため、耕耘軸112(と同軸の耕耘ファイナル軸111)が正転した際に、ベアリング部材410およびオイルシール部材420の設置空間P内に侵入した泥水等の不要液体を連結フランジ111bの回転に伴う遠心力を利用して正転用スリット133から外部へ排出させることができる。一方、逆転用スリット134は、正転用スリット133の車輌幅方向内端部から連結フランジ111bの正転方向へ向かって延びている。
本実施形態において、逆転用スリット134は、連結フランジ111bの回転方向と略平行に伸延するよう構成している。
【0035】
これにより、耕耘軸112(と同軸の耕耘ファイナル軸111)が逆転した場合、泥水等の不要液体は、連結フランジ111bの回転に伴い正転用スリットを通じて前記設置空間P内に進入する方向に進むが、逆転用スリット134により外部に排出される方向(連結フランジ111bの回転方向と略平行な方向)に向きを変える。したがって、当該不要液体は、前記設置空間P内に留まることなく連結フランジ111bの回転に伴う遠心力を利用して逆転用スリット134から外部へ排出される。
【0036】
このように、正転用スリット133に加えて、正転用スリット133の車輌幅方向内端部から前記連結フランジ111bの正転方向へ向かって延びる逆転用スリット134を設けることにより、耕耘軸112の外表面と軸受部の内周面との間に介挿されるベアリング部材410およびオイルシール部材420の設置空間Pへの草や泥等のダストの侵入を有効に防止しつつ、前記耕耘軸112の回転方向に拘わらず前記設置空間P内に侵入した泥水等の不要液体を外部へ排出することができる。
また、逆転用スリット134が連結フランジ111bの回転方向と略平行に伸延するよう構成していることにより、正転用スリット133から進入してくる不要液体の向きを排出する方向にスムーズに変更することができ、前記設置空間Pおよびスリット133,134内に不要液体を留めることなくより効果的に排出することができる。
【0037】
本実施形態において、前記逆転用スリット134は、前記正転用スリット133より幅広となるよう構成している。
【0038】
この場合、図5に示すように、逆転用スリット134の幅Bが正転用スリット133の幅Aより広くなる。したがって、耕耘軸112が逆転した際に不要液体の排出口(すなわち逆転用スリット134)が広くなり、排出を容易に行うことができる。
【0039】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。図6〜図8は本発明に係る耕耘軸の支持構造における耕耘ファイナル軸の他の例を示す側面図である。
例えば、本実施形態において、逆転用スリット134は、図5に示すように、直線的なスリット形状を有しているが、これに限られず、例えば、図6に示すように、円形のスリット形状(すなわち、直径Bが正転用スリット133の幅Aより大きい穴)を有することとしてもよい。また、本実施形態において、逆転用スリット134は、図5に示すように、正転用スリット133に連接された構成となっているが、これに限られず、例えば、図7に示すように、正転用スリット133と離間した構成とされてもよい。また、本実施形態において、逆転用スリット134は、図5に示すように、連結フランジ111bの回転方向と略平行に延びているように構成されるが、これに限られず、図8に示すように、車輌幅方向外方側から内方側へ行くに従って連結フランジ111bの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜されているように構成されてもよい。この際、図8においては、逆転用スリット134が正転用スリット133と離間して設けられているが、両者が連接した構成も採用可能である。
【0040】
なお、本実施の形態に係る耕耘軸110の支持構造100は、前記支持部材として作用する前記チェーンケース333側に適用されるように構成したが、前記支持部材として作用する前記サイドフレーム334側に適用されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る耕耘軸の支持構造の一実施形態を適用したトラクタを示す側面図である。
【図2】図1に示すロータリ耕耘機の動力伝達構造の展開断面図である。
【図3】本実施の形態に係る耕耘軸の支持構造の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す支持構造におけるダストカバーおよび該ダストカバーが設けられた耕耘ファイナル軸を示す斜視図である。
【図5】図3の支持構造における耕耘ファイナル軸を示す側面図である。
【図6】本発明に係る耕耘軸の支持構造における耕耘ファイナル軸の他の例を示す側面図である。
【図7】本発明に係る耕耘軸の支持構造における耕耘ファイナル軸の他の例を示す側面図である。
【図8】本発明に係る耕耘軸の支持構造における耕耘ファイナル軸の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
100…耕耘軸の支持構造 101…軸受部 110…耕耘軸
111…耕耘ファイナル軸 111a…軸本体 111b…連結フランジ
112…耕耘爪軸 130…ダストカバー 133…正転用スリット
134…逆転用スリット 410…ベアリング部材 420…オイルシール部材
P…設置空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車輌幅方向内方側が開口とされた軸受部と、前記軸受部内に設置されたベアリング部材およびシール部材と、車輌幅方向内端部が前記軸受部より車輌幅方向内方へ延在された状態で前記ベアリング部材および前記シール部材を介して前記軸受部に軸線回り回転自在且つ液密に支持される軸本体および該軸本体の車輌幅方向内方に設けられた連結フランジを有する耕耘ファイナル軸と、前記連結フランジを介して前記耕耘ファイナル軸に軸線回り相対回転不能に連結される耕耘爪軸と、前記ベアリング部材および前記シール部材の設置空間を外部から遮閉するように前記連結フランジに設けられたダストカバーとを備えた耕耘軸の支持構造であって、
前記ダストカバーには、前記設置空間の内部と外部とを連通する正転用スリットであって、車輌幅方向内方側から外方側へ行くに従って前記連結フランジの正転方向とは反対側へ位置するように傾斜された正転用スリットと、前記正転用スリットの車輌幅方向内端部から前記連結フランジの正転方向へ向かって延びる逆転用スリットとが設けられていることを特徴とする耕耘軸の支持構造。
【請求項2】
前記逆転用スリットは、前記連結フランジの回転方向と略平行に伸延していることを特徴とする請求項1に記載の耕耘軸の支持構造。
【請求項3】
前記逆転用スリットは、前記正転用スリットより幅広となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の耕耘軸の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−72981(P2008−72981A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257625(P2006−257625)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】