説明

背負い式送風機

【課題】背負い式送風機において、エンジンの冷却を損ねず、またエンジンの利用効率を高めながら、エンジンによってファンケースの構造を変える必要のないようにし、全体構成の大型化を抑止し、デザインの自由度を高める。
【解決手段】ファン3を内蔵したファンケース1とファン3を回転させるエンジン2とを背負う背負い式送風機において、ファンケース1は、背面側にファン3の回転中心を囲む位置にある吸気口123を、周面の接線方向に排気口をそれぞれ開口し、吸気口123に対して隙間を残してエンジン2を支持させた背負い式送風機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば落ち葉やごみを高速気流により寄せ集める送風掃除機や薬剤散布機に利用される背負い式送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の背負い式送風機は、特許文献1又は特許文献2に見られるように、作業者の背中に背負うフレームに、エンジン(電動モータを含む。以下、同じ)が一体化されたファンケースを搭載する。ファンケースは、背中と平行に回転するファンを内蔵した中空筐体で、全体がファンの回転に倣って円形をしており、前面側(背中に対向する側)にファンの回転中心を囲む位置にある吸気口を、周面の接線方向に排気口をそれぞれ開口している。エンジンは、ファンケースの背面側に空冷ユニット(ファンケースから外気の一部を取り込む小型ファンを内蔵したユニット)を介して支持され、ファンケース及びエンジンを一体にカバーで覆っている。
【0003】
ファンケースは、吸気口に対して隙間を残してフレームに取り付けられ、ファンの回転に応じて吸気口から外気を吸気する。吸気された外気は、ファンのブレードに沿って半径外向きに向かって流れ、周回する内面に沿った旋回流を形成しながら排気口に向かい、排気口からフレキシブルパイプを経て噴射ノズルから噴射される。エンジンは、ファンケースの吸気口から吸気された外気の一部を、空冷ユニットの働きにより、ファンケースの背面側から連続したカバーに沿って取り込むことで、空冷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-308273号公報
【特許文献2】特開平09-067815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の背負い式送風機は、同じファンケースでも取り付けるエンジンによって背面側の構造が異なる結果、エンジンに合わせてファンケースの構造が変わる問題があった。これは、吸気された外気の一部をカバーに沿って送り込んでエンジンを空冷すること、また後述するように、フレームに対して支持させるファンケース及びエンジンの一体性を高くする必要があったこと等による制約である。しかし、前述のように、エンジンに合わせてファンケースの構造が変わる問題のほか、吸気口から吸気した外気をすべて送風に利用できない問題(エンジンの利用効率の低下)をももたらしていた。
【0006】
また、吸気口から外気を取り込むには、ファンケースの前面側を作業者の背中に接面させることができないので、作業者の背中に接面させるフレームに、吸気口に対する隙間を残しながらファンケースを部分的に支持させ、取り付けられなければならなかった。これは、フレームに対してファンケース及びエンジン(エンジンはファンケースに支持される)とを安定に支持させる接続構造が必須であることを意味し、全体構成の大型化やデザインの自由度を低下させる原因となっていた。また、ファンケースの背面側にある吸気口が、作業者の服や髪の毛を吸引しないようにする構造上の配慮が必要だった。
【0007】
そこで、背負い式送風機において、エンジンの冷却を損ねず、またエンジンの利用効率を高めながら、エンジンによってファンケースの構造を変える必要のないようにし、これによって全体構成の大型化を抑止したり、またデザインの自由度を高められるようにするため、特にファンケースとエンジンとの関係に着目して、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、ファンを内蔵したファンケースとファンを回転させるエンジンとを背負う背負い式送風機において、ファンケースは、背面側(背中と反対側)にファンの回転中心を囲む位置にある吸気口を、周面の接線方向に排気口をそれぞれ開口し、吸気口に対して隙間を残してエンジンを支持させた背負い式送風機である。ファンケースは、ファンの回転中心を囲む位置にある吸気口を開口した支持面に前記ファンの回転中心に軸線が一致する貫通開口を開口し、回転軸を突出させたエンジンの取付板を支持面に接面又は嵌合させて固定し、貫通開口からファンケースの内部に突出させた回転軸にファンを装着させて、支持面にエンジンを支持させる。
【0009】
本発明の背負い式送風機は、ファンケースの背面側(背中と反対側)に開口し、エンジンに対して隙間を有する吸気口から外気を吸気し、主に回転軸近傍のエンジンが前記外気の流れにより空冷される。この場合、エンジンは、空冷のためにファンから外気の一部を導く必要がないので、エンジンにカバーを被せることなく、外部に露出させることにより、空冷しやすくできる。そして、吸気された外気はすべて排気口へ送られるので、従来と同じエンジンを用いて同じ出力で使用しても、噴射ノズルから噴射される送風量を増加させることができる。
【0010】
エンジンは、上述のように、ファンケースから連続するカバーで覆う必要がなく、取付板を支持面に接面又は嵌合させて固定するだけでファンケースに支持される。これから、支持面と取付板との接面関係又は嵌合関係を同一としながら、支持面又は取付板のいずれか又は両方を交換自在にすることにより、ファンケースとエンジンとの組み合わせを自由に変更できる。ファンケースは、通常樹脂製部材であるから、形状又は大きさが変化しても同一仕様の支持面を一体形成すればよい。エンジンは、回転軸を支持するベアリングを保持させた取付板を交換自在にするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の背負い式送風機は、吸気口から吸気する外気によりエンジンを冷却することができるし、また吸気された外気をすべて排気口へ送ることでエンジンの利用効率を高めることができる効果が得られる。そして、ファンケースは、前面側を作業者の背中に接面させる(実際にはクッションシート等を介装する)ことができるためにフレームを必要としなくなるので、全体構成の大型化を抑制し、またデザインの自由度を高めることができる。このほか、吸気口がファンケースの背面側にあるため、作業者の服や髪の毛を吸引しないようにする構造上の配慮が不要になる利点もある。
【0012】
また、本発明の背負い式送風機は、支持面又は取付板のいずれか又は両方を交換自在にすることにより、ファンケースとエンジンとの組み合わせが自由になり、エンジンと切り離してファンケースを構成できるようになる。裏返せば、同じファンケースを用いながら異なる仕様のエンジンを利用できるようになる。これは、部品の共通化による製造コスト及び管理コストの低減や、例えば既存のファンケースに対してエンジンのみを交換できるようにする利便性の向上といった効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した背負い式送風機の一例における前後方向部分断面図である。
【図2】本例の背負い式送風機の背面図である。
【図3】本例の背負い式送風機のエンジンを図示略した図2相当背面図である。
【図4】本例の背負い式送風機のエンジンのみの正面図である。
【図5】本例の背負い式送風機におけるファン、ファンケースの背面側部材、そして防護ネットを表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。本発明の背負い式送風機は、図1〜図3(いずれも背負うためのベルトやクッションパッド等は図示略)に見られるように、ファンケース1及びエンジン2の並び順は従来同様ながら、ファンケース1が外気を取り込む吸気口123を背面側に設け、前記吸気口123に対して隙間を残してエンジン2をファンケース1に支持させている点が従来と相違する。このため、ファンケース1の前面側に作業者の背中に対する隙間を形成する必要がないことからフレームが省略され、平坦な倣い面としたファンケース1の前面側を作業者の背中に接面させることができる(実際は、ファンケース1の前面側にクッションパッドを装着するが、図1中クッションパッドを図示略している)。
【0015】
ファンケース1は、従来同種と同様な構成、すなわち背中と平行に回転するファン3を内蔵した樹脂製の中空筐体で、正面視形状(=背面視形状)がファンの回転に倣って円形をしており(図4参照)、前後に半割された前面側部材11及び背面側部材12を、ファン3を内蔵した状態でボルトにより一体化して構成される。前面側部材11は、前面側に縦横に延びる複数の補強リブを設け、部材としての剛性を高めると共に、前記補強リブの前縁を含む倣い平面を平坦にして、作業者の背中に接面させる。排気口13は、周面の接線方向(本例では背面から見て右斜め下方向、図2及び図3参照)に突出しており、前面側部材11及び背面側部材12それぞれに半割された部分が形成されている。排気口13は、例えば接続アダプタ131を介してフレキシブルパイプ(図示略)が接続される。
【0016】
吸気口123は、図4に見られるように、背面側部材12に設けた円形開口の内周縁から周方向等間隔かつ半径内向きに張り出した多数の支持リブ121相互の隙間であり、それぞれがファン3の回転中心を囲む位置にある。より具体的には、ファン3が有する捻り羽根31の半径方向内側に設けた湾曲板に対応した位置に吸気口123を開口している。支持リブ121は、ファン3の回転中心を含む背面視円形の支持面122を支持しており、前記支持面122は、ファン3の回転中心に軸線が一致する貫通開口124を開口している。エンジン2は、回転軸21を突出させた取付板22を前記支持面122に接面させてボルト止めにより固定し、支持面122に支持される。支持面122と取付板22とは、0度及び90度の対角線上4個所に設けた一対の位置決め突起125及び位置決め穴部222の嵌合により組み付ける位置関係が特定される。位置決め突起125は、防護ネット14の内周環状板141に設けた貫通孔を貫通して突出し、取付板22の位置決め穴部222に嵌合する。
【0017】
本例のファンケース1は、吸気口123からの異物の侵入を防止し、また作業者が指を突っ込まないようにするため、円環状の防護ネット14ですべての吸気口123を覆うようにしている。防護ネット14は、支持面122の外周縁部に接面する内周環状板141とカバー4に内側から接面する外周環状板142との間に網体を形成した樹脂製の一体成形品で、支持面122の外周縁部と取付板22の外周縁部とで前記内周環状板141を挟持されることにより固定される。支持面122に対する防護ネット14の位置関係は、45度及び135度の対角線上4個所に設けた支持面122の環状凸部126と内周環状板141の切欠凹部143との掛合により特定される。本例の防護ネット14に代えて、例えば支持リブ121に一体成形される網体を用いてもよいし、逆に取付板22に一体の金属製又は樹脂製の網体を用いてもよい。
【0018】
エンジン2は、出力軸(図示略)と接続される回転軸21をベアリング221により支持する背面視円形かつ支持面122に相当する大きさの取付板22を前面側に取り付けている。回転軸21は、既述したように、前記取付板22を接面させた支持面122の貫通開口124からファンケース1の内部に突出させてファン3を装着させる。取付板22は、支持面122に接面させて固定することで、エンジン2を安定してファンケース1に支持させる支持部材としての働きのほか、支持面122に対する構造を一致させて、様々なエンジン2を同じファンケース1に取り付けられるようにする取付アダプタとしての働きも有する。これから、取付アダプタとしての取付板22は、本例のように接面関係だけでなく、嵌合関係により支持面122に嵌合させてもよい。
【0019】
ファン3は、軸方向から吸気し、半径方向に排気するインペラであり、背面側にある側面が凹曲面の円錐台状本体32の前記側面に捻り羽根31を多数設け、回転軸21と軸線を一致させた中空の挿通軸33を一体に設けている。本例のファン3における捻り羽根31は、半径内外で断面形状が異なる3次元曲面から構成される。捻り羽根31の半径方向外側は、軸方向に平行で、かつ半径方向に延びる平板として、ファンケース1の内周面(半径方向外側)に向けて外気を導きやすくしており、同じく半径方向内側は、半径方向外側に比べて軸方向に張り出し、かつ回転方向上流に向けて傾けた湾曲板として、外気を取り込みやすくしている。本例のファン3は、回転軸21を差し込んだ挿通軸33の六画断面凹部331と前記回転軸21の点対称位置に形成した平面との間に楔片212を圧入して回転軸21に対する空回りを防止し、そして挿通軸33端から突出した回転軸21先端の雄ネジに装着ナット211を螺着して、回転軸21に装着する。
【0020】
本例の背負い式送風機は、ファンケース1をカバー4で覆い、前後に貫通する空間を前記カバー4の上縁部に形成して把っ手41を構成し、下方に突出して水平に張り出す脚部を有するスタンド42を下縁部に取り付けている。スタンド42は、カバー4と別部材で、カバー4の下縁部から下方に突出する取付突起(図示略)に外嵌して取り付けている。本発明の背負い式送風機は、エンジン2に向けて外気を導く必要がないことからエンジン2をカバーで覆う必要がない。また、作業者の背中が吸気口を塞ぐ虞がないことからフレームを省略している。ファンケース1を覆うカバー4は、省略したフレームに代わり、把っ手41及びスタンド42を設ける部材である。
【0021】
本例のカバー4は、作業者の背中に接面する前面側以外、吸気口123及び支持面122を含む円形開口を除いてファンケース1を包み込む大きさの背面視略長方形外形の樹脂製箱体で、ファンケース1の背面側部材12に直接ネジ止めされるほか、保護ネット14の外周環状板142にピンを掛合させ(図1参照)、位置固定される。このカバー4は、ファンケース1を包み込む大きさであることから、ファンケース1を保護する働きのほか、ファンケース1に代わって装置全体のデザインを決定する働きを有する。これは、カバー4の外形を変更することにより、装置全体の外観を変更できることを意味し、例えば把っ手41の位置又は形状を変更したり、スタンド42の外形を変更したり、スタンド42を取り付ける位置を変更したりして、背負い式送風機のデザインを変更できるようになる。
【符号の説明】
【0022】
1 ファンケース
11 前面側部材
12 背面側部材
121 支持リブ
122 支持面
123 吸気口
13 排気口
14 防護ネット
2 エンジン
21 回転軸
22 取付板
3 ファン
4 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを内蔵したファンケースとファンを回転させるエンジンとを背負う背負い式送風機において、
ファンケースは、背面側にファンの回転中心を囲む位置にある吸気口を、周面の接線方向に排気口をそれぞれ開口し、吸気口に対して隙間を残してエンジンを支持させたことを特徴とする背負い式送風機。
【請求項2】
ファンケースは、ファンの回転中心を囲む位置にある吸気口を開口した支持面に前記ファンの回転中心に軸線が一致する貫通開口を開口し、回転軸を突出させたエンジンの取付板を支持面に接面又は嵌合させて固定し、貫通開口からファンケースの内部に突出させた回転軸にファンを装着させて、支持面にエンジンを支持させた請求項1記載の背負い式送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220222(P2011−220222A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90183(P2010−90183)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000104065)カーツ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】