説明

脱穀機の穀粒選別装置

【課題】グレンシーブの前方側及び後方側に常に十分な選別風を供給可能な選別性能の良い脱穀機の穀粒選別装置を提供する。
【解決手段】第1扱室5及び第2扱室の下方に設けられた俳塵選別室9に、被選別物を選別する穀粒選別装置10を配設し、穀粒選別装置10は揺動選別体11と、唐箕ファン12と、吸引ファン13とから構成されている。揺動選別体11は、グレンシーブ21を有していると共に、グレンシーブ21の下方には仕切板23が配設され、唐箕ファン12の吹出口24には上側吹出口24aが下側吹出口24bよりも広くなるように風割部材22が配設されている。選別風路は風割部材22及び仕切板23により、唐箕ファン12の吹出口24からグレンシーブ21に亘って区分けされ、選別風は上側選別風路25及び下側選別風路26を通って、グレンシーブ21の前方側及び後方側にそれぞれ送風される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンバインやハーベスタなどの脱穀機に関し、詳しくは脱穀された穀粒及び藁屑などの夾雑物からなる被選別物を選別する穀粒選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱胴が回転自在に内装された扱室の下方に排塵選別室を設け、排塵選別室内に揺動選別手段と、選別風を送風する唐箕ファンと、排塵を吸引する吸引ファンとからなる穀粒選別装置を配設した脱穀機が案出されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
上記穀粒選別装置の揺動選別手段は、多数の平行フィンからなるチャフシーブと、その下方に配設されたグレンシーブとを有しており、チャフシーブから漏下した被選別物は、グレンシーブにおいてその前後揺動及び選別風により選別され、選別された穀粒がグレンシーブから漏下して1番口の揚穀ラセンによりグレンタンクへと回収されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−94769号公報
【特許文献2】特開2002−272254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2記載の脱穀機の穀粒選別装置にあっては、上記唐箕ファンの吹出口に風割部材を設けたり、グレンシーブの下方に仕切板を設けたりして選別風を案内し、選別能力の向上を図っているが、グレンシーブの後方側に比して前方側の選別風が弱く、グレンシーブの前方側から藁屑が落ちて、1番口から回収される穀粒に混入してしまうことがあった。
【0006】
また、この状態でグレンシーブに漏下する被選別物が増えると、グレンシーブの前方側に被選別物が堆積し、選別風が通りにくくなって、グレンシーブの前方側から後方側に逃げてしまっていた。そのため、グレンシーブの前方側の選別風は更に弱くなってしまうと共に、夾雑物が選別風によって取り除かれないため被選別物が益々堆積してしまい、選別能力の低下を招いていた。
【0007】
そこで、本発明は、風割部材及び仕切板により送風ファンの吹出口からグレンシーブに亘って選別風路を区分けし、上記課題を解決した脱穀機の穀粒選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明によると、扱室(5)に回転自在に内装された扱胴(6)と、該扱胴(6)の下方に位置する受網(7)と、該受網(7)から漏下する被選別物を排塵選別室(9)内で選別する揺動選別手段(11)と、前記排塵選別室(9)内に選別風を送風する唐箕ファン(12)と、を備え、前記揺動選別手段(11)は、チャフシーブ(19)と、該チャフシーブ(19)の下方に設けられたグレンシーブ(21)とを有してなる、脱穀機(1)の穀粒選別装置(10)において、
前記唐箕ファン(12)の吹出口で選別風を分割する風割部材(22)と、
前記グレンシーブ(21)の下方に位置し、一端を前記風割部材(22)へ向け、他端を前記グレンシーブ(21)の中央近傍まで延設した仕切板(23)と、を備え、
前記風割部材(22)及び仕切板(23)により選別風を、前記グレンシーブ(21)の前方側及び後方側にそれぞれ案内する、
ことを特徴とする脱穀機(1)の穀粒選別装置(10)にある。
【0009】
請求項2に係る発明によると、前記風割部材(22)は、前記唐箕ファン(12)の吹出口(24)を上側吹出口(24a)が下側吹出口(24b)よりも広くなるように上下に区分ける(L>L)と共に、前記下側吹出口(24b)の風路面積が下流側に向けて狭くなるように構成した、
請求項1記載の脱穀機(1)の穀粒選別装置(10)にある。
【0010】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、風割部材と仕切板とを選別風路に配置し、吹出口からグレンシーブに亘って選別風路を区分けることによって、グレンシーブの前方側及び後方側に最適な風量の選別風を送風することができる。更に、例えグレンシーブ上に被選別物が堆積しても、選別風がグレンシーブ後方側へと逃げるのを強制的に規制して、グレンシーブ前方側に十分な風量の選別風を送風することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によると、唐箕ファンの吹出口を風割部材によって上下に区分けし、上側吹出口を下側吹出口よりも大きく構成することにより、上下の吹出口の風量を略々均等にすることができる。また、下側吹出口の風路面積を、送風下流側に向って狭くしたことにより風速を高め、グレンシーブの前方側と比して距離のある後方側へ確実に選別風を送風し、選別性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面に基づいて本発明に係る実施形態を説明する。図1及び図2に示すように、コンバインの脱穀機1は、クローラ走行装置2に支持された機体フレーム3の略々機体中心から機体後方に亘って搭載されており、第1扱室5内には2つの扱胴6a,6bからなる第1扱胴6が回転自在に軸架され、その下方には受網7が設けられている。また、第1扱室5の後方かつ穂先側には第2扱室が並設されており、該第2扱室には第2扱胴(不図示)が同様に回転自在に軸架されている。
【0014】
上記第1扱室5及び第2扱室の下方には排塵選別室9が設けられており、この排塵選別室9内には、脱穀された穀粒と藁屑等の夾雑物とからなる被選別物を選別する穀粒選別装置10が配設されている。穀粒選別装置10は、被選別物を揺動選別する揺動選別体(揺動選別手段)11と、排塵選別室9内に選別風を送風する唐箕ファン12と、排塵選別室9内から排塵を吸引する吸引ファン13とからなり、選別された穀粒は1番口Aに設けられた揚穀ラセン14によってグレンタンク(不図示)に回収され、未選別の穀粒は2番口Bに設けられた2番還元ラセン15によって上述した第2扱室に還元され、再度選別処理をされる。また、排塵は吸引ファン13によって3番口Cから機体外へと排出されるように構成されている。
【0015】
上記揺動選別体11は、揺動手段16によってその枠体全体が機体前後方向に揺動し、第1扱胴6の受網7の下方に位置する揺動流板17と、該揺動流板17の後方に連設されたチャフシーブ19及びストローラック20と、チャフシーブ19の下方において前後の揺動及び選別風によって篩選別をするグレンシーブ21とから構成されている。また、上記チャフシーブ19は開度を調整可能な多数の平行フィンからなり、グレンシーブ21は前方側に山形の板を有し、その後方に金網を設けた構成をしている。
【0016】
一方、上述した唐箕ファン12は揺動流板17の下方に設けられていると共に、吸引ファン13はストローラック20の上方に設けられており、この唐箕ファン12の吹出口24から機体後部上方の吸引ファン13を通り、3番口Cに亘って、選別風路が形成されている。また、上記唐箕ファン12の吹出口24は、グレンシーブ21及びチャフシーブ19の方向に傾斜して形成されていると共に、風割部材22により上側吹出口24a(図2参照)と下側吹出口24b(図2参照)とに上下に区分けされている。
【0017】
上記風割部材22は、送風口24に対して平行に設けられた上側板部材と、この上側板部材に対して斜め下方に傾斜して設けられた下側板部材とからなり、吹出口24の中央よりも下方に配設されて、上側吹出口24aの上下幅Lを下側吹出口24bの上下幅Lより広く構成している(L>L)。また、上側吹出口24aはストレートな形状に構成されていると共に、下側吹出口24bは上述した風割部材22の下側板部材によって、選別風の送風下流に向けてその送風面積が狭くなるように先細りに構成されている。なお、上側吹出口24aはストレート形状ではなく、送風方向に沿って末広がり状に形成してもよい。
【0018】
また、グレンシーブ21の下方かつ揚穀ラセン14の上方には仕切板23が設けられており、その機体前方側の端部は上記風割部材22の後端へと向き、機体後側の端部はグレンシーブ21の略々中央部まで延設されている。この仕切板23は、選別風の送風方向に沿って斜めに傾斜していると共に機体前後方向に長く形成されており、選別風を案内し、グレンシーブ21の前側に送風される選別風が機体後方側へと逃げるのを防止している。
【0019】
上述した選別風路は、上記風割部材22及び仕切板23により、唐箕ファン12の吹出口24からグレンシーブ21に亘って、上側選別風路25と下側選別風路26とに区分けされており、上記風割部材22により分割された選別風は、仕切板23及び第1流板37などによって案内され、グレンシーブ21の前方側及び後方側にそれぞれ送風される。
【0020】
また、上記揺動選別体11の後端にはゴム板35が機体フレーム3近傍まで垂下して設けられており、その下端部分は機体フレーム3の後端の左右幅方向に亘って設けられた泥除板36上に乗るように構成されている。
【0021】
一方、上述した第1扱胴6及び第2扱胴によって脱穀された排稈は、脱穀フィードチェーン27により機体後方の排藁チェーン29へと受け渡され、上記ゴム板35の斜め上方に位置しているカッタ装置33へと搬送される。この排稈はノコ刃30及び掻込バン31からなるマルチカッタ32により細かく切断されて排出される。
【0022】
カッタ装置33は開閉可能に設けられており、上記揺動選別体11は、カッタ装置33を開くことによって開口する機体後方の開口部から脱着可能に設けられている。そのため、上記泥除板36の上端部の高さは、揺動選別体11の脱着を阻害しないように揺動選別体11の下端部よりも低く構成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係る脱穀機の穀粒選別装置の作用について説明する。
【0024】
脱穀フィードチェーン27によって穀稈が搬送されると、第1扱室5及び第2扱室に配設された第1扱胴6及び第2扱胴によって脱穀されると共に、受網7から被選別物が排塵選別室9へと漏下する。排塵選別室9へと漏下した被選別物は、揺動選別体11の揺動流板17上へとその多くが落下し、揺動流板17によって揺動選別されながら、その後方のチャフシーブ19へと搬送されて行く。
【0025】
チャフシーブ19上へと搬送された被選別物は、チャフシーブ19及びその下方のグレンシーブ21において、前後揺動及び選別風による篩選別が行われる。この時、グレンシーブ21の前方側には上側選別風路25を通って選別風が送風され、被選別物が堆積していたとしても、選別風を後方へ逃がすことなく夾雑物を3番口Cへと吹き飛ばし、後方側には狭い下側吹出口24bから風速の速い選別風が下側選別選別風路26を通って送風され、確実に夾雑物を選別風によって3番口Cへと吹き飛ばす。
【0026】
グレンシーブ21から漏下した穀粒は、1番口Aから揚穀ラセン14によってグレンタンク(不図示)へと回収され、未選別の穀粒についてはターボファン39からの選別風により更に選別をされ、2番口Bから第2扱室(不図示)へと還元される。
【0027】
上記のように脱穀機1の穀粒選別装置10を構成したことによって、風割部材22及び仕切板23により、唐箕ファン12の吹出口24からグレンシーブ21に亘って選別風路を区分け、グレンシーブ21の前方側の選別風がグレンシーブ後方側へと逃げるのを規制し、グレンシーブ21の前方及び後方に十分な選別風を供給することができる。そのため、グレンシーブ前方側に被選別物が堆積したとしても、夾雑物を取り除くことができ、選別能力を向上させることができる。
【0028】
また、上側吹出口24aの上下幅Lを、下側吹出口24bの上下幅Lよりも広く形成した(L>L)ことによって、グレンシーブ21の前方側及び後方側に送風される選別風の風量を略々同じにすることができる。
【0029】
更に、下側吹出口24bの風路面積を、その送風方向に沿って下流側に向うに従って小さくしたことによって、グレンシーブ後方側に選別風の風速が速くなり、グレンシーブ前方側と比して距離のある後方側にも確実に選別風を送風することが出来ると共に、夾雑物の多い選別後半の選別風の風速が強くなり、選別性能を向上させることができる。また、下側吹出口24bに選別風が通りにくくなり、上側吹出口24aに選別風を流れやすくすることもできる。
【0030】
一方、泥除板36を設け、その上にゴム板35の下端を乗せることにより、3番口Cの下方に続く排藁排出口34や、カッタ装置33にクローラ走行装置2が跳ね上げた泥土が堆積することを防止することができ、泥土によって阻害されずに、円滑に藁屑の排出や、カッタ装置33による藁の切断及び排出をすることができる。また、ゴム板35の揺動を規制し、切藁の揺動選別体11への侵入を防止すると共に、泥除け作用の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る脱穀機の断側面図。
【図2】本発明に係る脱穀機の拡大断側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 脱穀機
5 第1扱室(扱室)
6 第1扱胴(扱胴)
7 受網
9 排塵選別室
10 穀粒選別装置
11 揺動選別体(揺動選別手段)
12 唐箕ファン
19 チャフシーブ
21 グレンシーブ
22 風割部材
23 仕切板
24 吹出口
24a 上側吹出口
24b 下側吹出口
上側吹出口上下幅
下側吹出口上下幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室に回転自在に内装された扱胴と、該扱胴の下方に位置する受網と、該受網から漏下する被選別物を排塵選別室内で選別する揺動選別手段と、前記排塵選別室内に選別風を送風する唐箕ファンと、を備え、前記揺動選別手段は、チャフシーブと、該チャフシーブの下方に設けられたグレンシーブとを有してなる、脱穀機の穀粒選別装置において、
前記唐箕ファンの吹出口で選別風を分割する風割部材と、
前記グレンシーブの下方に位置し、一端を前記風割部材へ向け、他端を前記グレンシーブの中央近傍まで延設した仕切板と、を備え、
前記風割部材及び仕切板により選別風を、前記グレンシーブの前方側及び後方側にそれぞれ案内する、
ことを特徴とする脱穀機の穀粒選別装置。
【請求項2】
前記風割部材は、前記唐箕ファンの吹出口を上側吹出口が下側吹出口よりも広くなるように上下に区分けると共に、前記下側吹出口の風路面積が下流側に向けて狭くなるように構成した、
請求項1記載の脱穀機の穀粒選別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−171919(P2009−171919A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16071(P2008−16071)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】