説明

脱穀装置の受網

【課題】一般的に受網は扱室前端から後端に亘る長いもので構成されており、そのため受網単体が大きくなり加工性が悪いという問題があった。また、受網の一部が摩耗又は破損した場合に全て交換しなければならないという問題があった。本発明の目的は、上記従来の不具合を改善する点にある。
【解決手段】受網(22)を複数の分割受網(25,26,27)を前後方向に連設して構成し、前記受網(25,26)の内面に処理物を停滞させて脱粒処理を促進する板状部材(25b,26b)を立設し、該板状部材(25b,26b)により分割受網(25,26)の後枠(25b,26b)を構成すると共に、板状部材(25b,26b)の背後に位置する分割受網(26,27)の前枠(26a,27a)を板状部材(25b,26b)より低く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の受網構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、扱胴の外周に沿って受網を設けると共に、該受網の内面に処理物を停滞させて脱粒処理を促進させる複数の円弧状部材を設けた脱穀装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−61335公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載されるように、一般的に受網は扱室前端から後端に亘る長いもので構成されており、そのため受網単体が大きくなり加工性が悪いという問題があった。また、受網の一部が摩耗又は破損した場合に全て交換しなければならないという問題があった。
本発明の目的は、上記従来の不具合を改善する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明においては、扱室内に前後方向軸心回りで回転可能に支持された扱胴の外周に沿って受網を設けた脱穀装置において、前記受網を複数の分割受網を前後方向に連設して構成し、前記受網の内面に処理物を停滞させて脱粒処理を促進する板状部材を立設し、該板状部材により分割受網の後枠を構成すると共に、板状部材の背後に位置する分割受網の前枠を板状部材より低く構成したことを特徴とする脱穀装置の受網。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によれば、受網単体が小さいので加工性が良く、また、摩耗又は破損箇所の部分的な受網交換が可能となる。
また、分割受網の後枠を処理物を停滞させて脱粒処理を促進する板状部材により構成したので、別途板状部材を設ける必要がなく部品点数を少なくできる。
更に、板状部材の背後に位置する分割受網の前枠を板状部材より低く構成したので、例えば分割受網の後枠が低く、後枠の背後に位置する分割受網の前枠が高く構成されたもののように、後枠と前枠の段差部に処理物が引っ掛かることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はコンバインの平面図、図2はコンバインの一部を省略した正面図である。
コンバインは、左右のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に、植立穀稈を引き起こした後刈り取って後方に搬送する前処理部3を昇降自在に連結し、前記走行機体2の上部左側に前記前処理部3から搬送される穀稈を脱穀処理する脱穀装置4を、その右側に脱穀された穀粒を貯溜する穀粒タンク5を、その後方に脱穀済みの排稈を切断処理する後処理部6を、前記穀粒タンク5の前方に運転操作部7を配置して構成されている。
【0007】
図3は前記脱穀装置4の側面図、図4は扱室10の正面図である。
脱穀装置4は、前処理部3から搬送される穀稈を挟持レール8と脱穀フィードチェーン9で挟持搬送する穀稈搬送装置と、該穀稈搬送装置で搬送される穀稈の穂先側を扱室10内に前後方向軸心回りで回転可能に支持した扱胴11の扱歯と、扱胴11の外周に沿って
設けられた受網12とで脱粒処理する脱穀部と、受網12から落下する処理物を送風ファン13による風選別と揺動選別装置14による篩選別により穀粒と藁屑とに選別する選別部と、脱穀済みの排稈を排藁搬送チェーン15で後方へ搬送する排藁搬送部により構成されている。
【0008】
前記脱穀部及び排藁搬送部は、内部のメンテナンス作業を容易に行うために開放可能に構成されている。具体的には図1及び図2に示すように、脱穀部及び排藁搬送部の上方を覆う上部カバー16を、排藁搬送チェーン15の搬送終端より右側で、尚かつ正面視(図2)において穀粒タンク5とラップする位置に設けられた回動軸X中心で上下揺動自在に機体側に支持すると共に、該上部カバー16に扱室12上部を形成し扱胴11を回動可能に支持する上部枠体17及び排藁搬送チェーン15を取付支持している。よって、上部カバー16を回動軸X中心で上方回動させると扱胴11及び排藁搬送チェーン11が一緒に上方回動して脱穀部及び排藁搬送部の内部が開放される構成となっている。
【0009】
また、18は電動式のロック装置であり、扱室12を形成する前記上部枠体17と下部枠体19とを連結することにより上部カバー16、扱胴11及び、排藁搬送チェーン15を下降閉じ状態で固定する構成となっており、該ロック装置18は上部カバー16の下降閉じ状態を検出する検出手段(図示なし)が閉じ状態を検出すると自動的に連結作動する共に、挟持レール8の外方を覆うレールカバーに設けられたモーメンタリスイッチからなる解除ボタン20を押し操作することにより連結解除作動する構成となっている。
【0010】
図5は前記受網12の斜視図である。
受網12は、扱胴11回転方向で2分割されており、脱穀フィードチェーン9側の扱口側受網21と機体内方側の奥側受網22から構成されている。
前記扱口側受網21は湾曲した鉄板に複数の漏下孔23を形成して構成されており、その内面には移送される処理物を停滞させて扱胴11の扱歯による脱粒処理を促進させる仕切板24が設けられている。
【0011】
図6は前記奥側受網22の斜視図、図7は奥側受網22の断面図である。
前記奥側受網22は前後方向で前部受網25、中部受網26及び、後部受網27に3分割されており、複数の分割受網25,26,27が連設されて構成されている。前記分割受網25,26,27はそれぞれ前枠25a,26a,27a、後枠25b,26b,27b及び、横枠25c,26c,27cが枠組みされて構成された受網フレームに、平板状部材からなる横桟28と湾曲形成した棒状鋼材からなる縦桟29を格子状に設けて構成されている。また、25d,26d,27dは縦桟であると共に補強フレームを兼ねる円弧状部材である。
【0012】
また、前記分割受網25,26,27は受網同士が着脱可能に構成されている。具体的には前部受網25後端の後枠25bと中受網26前端の前枠26aを接合させて連結部材であるボルト30により連結可能に構成している。また、中受網26後端の後枠26bと後受網27前端の前枠27aも同様にボルト30により連結可能に構成している。よって分割受網25,26,27を連結して1つの奥側受網22として持ち運べるので取り扱いが容易である。31は持ち運び用の取っ手である。
【0013】
また、前記前枠25a,26a,27a、後枠27b、横枠25c,26c,27c、横桟28、縦桟29及び、円弧状部材25d,26d,27dのそれぞれの上面から扱胴11までの距離は略同一に構成されているのに対し、後枠25b及び26bの距離は小さく設定されている。
即ち、後枠25bは横桟28の上面よりH1高く、後枠26bは横桟28の上面よりH2高く構成し、高さH1より高さH2を大きく設定している。よって、後枠25b及び2
6bは移送される処理物を停滞させて扱胴11の扱歯による脱粒処理を促進する仕切板(板状部材)の役割を兼ねている。
【0014】
上記構成により、分割受網25,26,27単体が小さいので加工性が良く、また、摩耗又は破損箇所の部分的な受網交換が可能となる。
また、分割受網25,26の後枠25b,26bを移送される処理物を停滞させて扱胴11の扱歯による脱粒処理を促進する仕切板により構成したので、別途仕切板を設ける必要がなく部品点数を少なくできる。
更に、後枠25b,26bの背後に位置する分割受網26,27の前枠26a,27aを後枠25b,26bより低く構成したので、例えば分割受網25,26の後枠25b,26bが低く、後枠25b,26bの背後に位置する分割受網26,27の前枠26a,27aが高く構成されたもののように、後枠25b,26bと前枠26a,27aの段差部に処理物が引っ掛かることを防止できる。
【0015】
図8は、受網目詰まり検出センサの説明図である。
受網12の下方にレーザー発光部31とレーザー受光部32より構成される受網目詰まり検出センサーを、前後方向に複数配置する。前記レーザー発光部31から発せられるレーザー光は受網12の網目空間を通過してレーザー受光部32に到達する。受網12の前記レーザー光が通過する部分の網目が詰まり、レーザー受光部32へのレーザー光が遮断され、設定時間連続してレーザー受光部32がレーザー光を検出しないと受網目詰まり検出センサーが目詰まりと判定する。
よって、前記受網目詰まり検出センサーにより目詰まり具合がわかるので、受網の掃除のタイミングが分かり作業性が向上する。また、目詰まりが進行しない程度のコンバイン刈取速度が分かり連続作業が可能となる。
【0016】
図9は、朝露防止装置の説明図である。
コンバインによる稲刈り作業を行う前に、稲が雨、又は朝露によって濡れることが分かっている場合には、朝露防止装置を圃場にセットしてシートで稲の上方を覆い、稲が濡れるのを防止する。前記朝露防止装置は、稲が濡れるのを防止するシート33と、シートを支持するシート支持装置34により構成される。シート33には複数の孔33aが形成されており、圃場の所定位置に立てたシートスタンド装置34の先端部を前記孔33aに差し込みセットする。34aはシートの抜け止め具、34bはシート受け具である。
よって、朝露防止装置により稲が濡れるのを防止できるので、稲の乾燥を待つことなく稲刈り作業が行えるので作業性が良い。圃場をシート33で覆う時は、雨を防止する場合は圃場全体を覆うようにし、朝露を防止する場合は図10に示す回り刈り部分を覆うようにする(回り刈りが終わる頃には圃場の中央は乾く)。コンバインで刈取作業を行う時は朝露防止装置を圃場から取り除いて作業を行う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの平面図である。
【図2】コンバインの一部を省略した正面図である。
【図3】脱穀装置の側面図である。
【図4】扱室の正面図である。
【図5】受網の斜視図である。
【図6】奥側受網の斜視図である。
【図7】同上断面図である。
【図8】受網目詰まり検出装置の説明図であって、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【図9】朝露防止装置の説明図であって、(a)は斜視図、(b)シート支持装置の先端部の詳細図である。
【図10】圃場でのコンバイン刈取作業手順の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
10 扱室
11 扱胴
22 奥側受網(受網)
25 分割受網
25b 後枠(板状部材)
26 分割受網
26a 前枠
26b 後枠(板状部材)
27 分割受網
27a 前枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(10)内に前後方向軸心回りで回転可能に支持された扱胴(11)の外周に沿って受網(22)を設けた脱穀装置において、前記受網(22)を複数の分割受網(25,26,27)を前後方向に連設して構成し、前記受網(25,26)の内面に処理物を停滞させて脱粒処理を促進する板状部材(25b,26b)を立設し、該板状部材(25b,26b)により分割受網(25,26)の後枠(25b,26b)を構成すると共に、板状部材(25b,26b)の背後に位置する分割受網(26,27)の前枠(26a,27a)を板状部材(25b,26b)より低く構成したことを特徴とする脱穀装置の受網。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−136275(P2006−136275A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330559(P2004−330559)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】