説明

脱穀装置の排ワラ切断構造

【課題】 脱穀装置の後端に配備した円板型の排ワラカッタを、その一端側の縦向き支点を中心に旋回揺動可能に支持して、切断作用位置と後方に旋回開放されたメンテナンス位置とに切換え可能に構成した脱穀装置の排ワラ切断構造において、排ワラカッタへの伝動および遮断の切換えを簡単容易にしてメンテナンス作業性を高める。
【解決手段】 排ワラカッタにおける他端側に入力軸32を突設するとともに、脱穀装置後部から延出された支持フレーム21に中間伝動軸22を支承して脱穀装置の伝動系に巻き掛け連動連結し、中間伝動軸22と入力軸32とを咬合離脱可能な咬合伝動機構33を介して連動連結し、咬合伝動機構33の咬合を離脱した状態で排ワラカッタを縦向き支点周りに旋回揺動可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自脱型コンバインに搭載された脱穀装置に装備される排ワラ切断構造に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置の排ワラ切断構造としては、例えば、特許文献1に示されているように、脱穀装置の後端に配備した円板型の排ワラカッタを、その一端側の縦向き支点を中心に旋回揺動可能に支持して、排ワラ搬送径路に臨んで横架された切断作用位置と後方に旋回開放されたメンテナンス位置とに切換え可能に構成したものが知られている。
【特許文献1】特開平7−123854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記排ワラ切断構造は、排ワラカッタの詰まり除去、受け刃や切断刃の交換、あるいは、脱穀装置の後方からの清掃、などのメンテナンス作業を広い作業空間から容易に行うことができる利点があり広く実用化されているのであるが、排ワラカッタの駆動構造において改良の余地があった。
【0004】
つまり、一般に排ワラカッタは脱穀装置から動力を受けるものであり、排ワラカッタの入力軸に設けたプーリに脱穀装置の伝動機構に連動連結した伝動ベルトを巻き掛けている。従って、排ワラカッタを旋回揺動する場合にプーリに巻き掛けた伝動ベルトを外す必要があり、そのための操作が煩わしいものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、旋回揺動可能な排ワラカッタへの伝動および遮断の切換えを簡単容易にしてメンテナンス作業性を高めることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、脱穀装置の後端に配備した円板型の排ワラカッタを、その一端側の縦向き支点を中心に旋回揺動可能に支持して、排ワラ搬送径路に臨んで横架された切断作用位置と後方に旋回開放されたメンテナンス位置とに切換え可能に構成した脱穀装置の排ワラ切断構造であって、
前記排ワラカッタにおける他端側に入力軸を突設するとともに、脱穀装置の後部から延出された支持フレームに中間伝動軸を支承して脱穀装置の伝動系に巻き掛け連動連結し、前記中間伝動軸と入力軸とを咬合離脱可能な咬合伝動機構を介して連動連結し、咬合伝動機構の咬合を離脱した状態で排ワラカッタを前記縦向き支点周りに旋回揺動可能に構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、排ワラカッタをメンテナンス位置に旋回揺動するに先立って、咬合伝動機構を操作して中間伝動軸と入力軸との伝動を断ち、中間伝動軸を残した状態で排ワラカッタをメンテナンス位置に旋回揺動する。また、メンテナンス作業が終了すると、排ワラカッタを旋回揺動させて元の切断作用位置に戻した後、咬合伝動機構を操作して中間伝動軸と入力軸とを連動連結する。
【0008】
従って、第1の発明によると、排ワラカッタを旋回揺動する前後において、脱穀装置の伝動系に巻き掛け連動させた伝動ベルトを掛け外すような煩わしい操作は不要となり、旋回揺動可能な排ワラカッタへの伝動および遮断の切換えが簡単容易となってメンテナンス作業性を高めることができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記脱穀装置に装備された巻掛け伝動機構の伝動無端帯を延長して前記中間伝動軸に巻き掛け連動してあるものである。
【0010】
上記構成によると、脱穀装置の各種駆動軸を連動連結する巻掛け伝動機構の伝動無端帯を延長して排ワラカッタ駆動系を構成できるので、排ワラカッタ駆動専用の伝動ベルトを掛け外し可能に装備して脱穀装置の伝動系に連動連結していた従来伝動構造に比較してカッタ駆動構造を簡素化することができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記排ワラカッタが前記切断作用位置にある状態において前記中間伝動軸と前記入力軸とが同芯状に突き合せ配備されるよう構成し、前記咬合伝動機構を、中間伝動軸あるいは入力軸に装着支持した伝動体を軸心方向にシフトして、中間伝動軸と入力軸とを一体回動可能に咬合連動する伝動状態と、咬合連動を解除した非伝動状態とに切換え操作可能に構成してあるものである。
【0012】
上記構成によると、伝動体を正逆にシフト操作すること中間伝動軸から入力軸への伝動を簡単かつ速やかに断続することができ、取扱い性に優れたものとなる。また、伝動体は同芯状に突き合せ配備され中間伝動軸と入力軸との間に配備されるので、咬合伝動機構を中間伝動軸および入力軸と同芯状の嵩低いものに構成することができる。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記伝動体を中間伝動軸および入力軸に亘って回転伝達可能に咬合外嵌される伝動スリーブで構成してあるものである。
【0014】
上記構成によると、咬合伝動機構を中間伝動軸および入力軸より少し大径のものに構成することができ、第3の発明の上記効果を助長する。
【0015】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記咬合伝動機構を咬合伝動状態に付勢してあるものである。
【0016】
上記構成によると、切断作用位置にある排ワラカッタへの伝動状態が安定維持され、細断作業中に不用意に伝動が断たれて排ワラ詰まりが発生するようなことを未然に回避することができる。
【0017】
第6の発明は、上記第5の発明において、
前記咬合伝動機構を咬合解除状態に係止保持する手段を備えてあるものである。
【0018】
上記構成によると、排ワラカッタを旋回開放する際、咬合解除した咬合伝動機構を咬合付勢作用に抗して保持しておくことができるので、メンテナンス作業中に咬合伝動機構が勝手に咬合伝動状態に戻ってしまうことがなく、メンテナンス作業が終了すると、排ワラカッタを元の切断作用位置にまで戻した後、係止保持を解除して咬合伝動機構を再び咬合状態に戻せばよく、第5の発明の上記効果をもたらすとともに、取扱い性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に、本発明に係る脱穀装置の排ワラ切断構造を備えた自脱型コンバインの側面図が、また、図2に、その機体後部の平面図がそれぞれ示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に複数条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、穀粒回収タンク6、等が搭載された構造となっている。
【0020】
前記脱穀装置5の左側面には、前記刈取り部3から搬送されてきた刈取り穀稈を横倒れ姿勢で受け取って、穂部を扱室に挿入した状態で後方に挟持搬送するフィードチェーン7が装備され、また、脱穀装置5の後部には脱穀処理されれ扱室から搬出されてきた排ワラをフィードチェーン7から受け取って後方および穂先側に向けて斜め搬送する株元チェーン8aおよび穂先係止搬送チェーン8bとからなる排ワラ搬送装置8が装備されるとともに、脱穀装置5の後端には、円板型の排ワラカッタ9が排ワラ搬送装置8の排ワラ搬送径路Fに臨むよう連結されている。
【0021】
排ワラカッタ9は、低速駆動される供給軸10に横方所定ピッチで並列装着した円板状の受け刃11と、高速駆動される切断軸12に横方向所定ピッチで並列装着した円板状の切断刃13とを互いに対向させて左右のカッタフレーム14に亘って水平軸支するとともに、受け刃11と切断刃13とを互いに内向きに駆動回転することで、受け刃11と切断刃13との間に上方から横倒れ姿勢で供給された排ワラを所定ピッチで細断するよう構成されている。
【0022】
なお、前記供給軸10と切断軸12とは、その軸間距離が調節可能に左右のカッタフレーム14に支持されるとともに、切断刃13は複数枚(この例では2枚)おきに大径に構成されている。従って、供給軸10と切断軸12との軸間距離を小さくすると、図2に示すように、全ての受け刃1と切断刃13とが重複して切断刃配列ピッチでの細かい切断が行われ、軸間距離を大きくして大径の切断刃13だけが対向する受け刃11と重複させることで、大径の切断刃13のピッチで排ワラを粗く切断することができるようになっている。
【0023】
図3に示すように、排ワラカッタ9の上部にはカッタ入口15を開閉する流路切換え板16が後支点pを中心に上下揺動可能に配備されており、図示のように流路切換え板16が上方に揺動されてカッタ入口15が開放されることで排ワラ細断状態となり、流路切換え板16が下方に揺動されてカッタ入口15が閉塞されることで排ワラが流路切換え板16の上面に沿って流下してそのまま後方に排出される長ワラ排出状態となるように構成されている。
【0024】
また、この排ワラカッタ9は、その穂先側において脱穀装置5の後部フレーム17に縦向き支点xを中心に旋回揺動可能に支持されており、図2に示すように、排ワラ搬送装置8の下側に形成された排ワラ搬送径路Fに臨んで横架された切断作用位置と、図6に示すように、後方に旋回開放されたメンテナンス位置とに切換え可能に構成されている。
【0025】
上記排ワラカッタ9の駆動構造を以下に説明する。
【0026】
図7,8に示すように、排ワラカッタ9の株元側の外側には脱穀装置5の後部から延出された支持フレーム21が配備され、この支持フレーム21に、カッタフレーム14における切断軸12と同芯に中間伝動軸22が回転自在に支承され、この中間伝動軸22に脱穀装置5からの動力を受けるプーリ23が備えられている。
【0027】
図4に示すように、脱穀装置5の左側面には、図示されていないエンジンから唐箕軸24に伝達された動力を、1番スクリュー駆動軸25、2番スクリュー駆動軸26、シーブケース駆動軸27、および、排塵ファン駆動軸28に一連の伝動ベルト(伝動無端帯)29で伝達する巻き掛け伝動機構30が配備され、その伝動ベルト29が後方に延長されて前記プーリ23に巻き掛けられている。また、排塵ファン駆動軸28に伝達された動力が減速ケース31でギヤ減速されてフィードチェーン7が駆動されるようになっている。
【0028】
図8に示すように、前記切断軸12の左端部が左側のカッタフレーム14から突出されて排ワラカッタ9の入力軸32とされており、この入力軸32と前記中間伝動軸22とが咬合伝動機構33を介して同芯状に連動連結されるとともに、図7に示すように、入力軸32と供給軸10とがチェーン34および減速ギヤ35,36を介して連動連結されている。
【0029】
前記咬合伝動機構33は、中間伝動軸22と入力軸32とに亘って伝動スリーブ(伝動体)37をスプライン外嵌して構成されており、バネ38によって伝動スリーブ37が入力軸32と咬合する位置にスライド付勢されている。伝動スリーブ37は、カッタフレーム14に支点Y周りに左右揺動可能に装着したシフトフォーク39に係合されており、シフトフォーク39の操作レバー部39aを人為的に操作して伝動スリーブ37をバネ38に抗して中間伝動軸側にシフトし、伝動スリーブ37と入力軸32との咬合を解除することで中間伝動軸22から入力軸32への伝動が断たれるようになっている。
【0030】
なお、入力軸32との咬合が解除する位置までシフトされた伝動スリーブ37は、支持フレーム21に片持ち状に取付けられたバネ片40に係止され、操作レバー部39aから手を放しても伝動スリーブ37が咬合解除位置に係止保持されるようになっている。
【0031】
本発明の排ワラ切断構造は以上のように構成されており、通常の刈取り収穫作業時には、排ワラカッタ9を旋回揺動させて切断作用位置で固定するとともに、咬合伝動機構33の伝動スリーブ37を中間伝動軸22と入力軸32とに亘って咬合させて排ワラカッタ9を脱穀装置5からの動力で駆動する。
【0032】
また、排ワラカッタ9の詰まり除去、受け刃11や切断刃13の交換、あるいは、脱穀装置5の後方からの清掃、などのメンテナンス作業時には、先ず、図8(ロ)に示すように、操作レバー部39aを揺動操作して咬合伝動機構33の伝動スリーブ37をバネ38に抗して入力軸32との咬合解除位置までシフト操作してバネ片40に係止保持させ、この状態で排ワラカッタ9を縦向き支点X周りに旋回揺動して開放する。
【0033】
メンテナンス作業が終了すると、排ワラカッタ9を再び元の切断作用位置まで旋回揺動して脱穀装置5に固定した後、操作フォーク39を逆方向(図8においては時計方向)に大きく揺動操作してバネ片40から連設した操作片40aを蹴り上げることで、バネ片40全体を変形させて伝動スリーブ37から外すことができ、これによって伝動スリーブ37はバネ38によってスライド進出して入力軸32に咬合する。
【0034】
〔他の実施例〕
【0035】
(1)図9に示すように、伝動スリーブ37をシフト操作するシフトフォーク39の支点Yを支持フレーム21側に設けて実施することもできる。この場合、シフトフォーク39を咬合解除位置に保持するデテント機構を備えておくとよい。
【0036】
(2)図示しないが、前記伝動スリーブ(伝動体)37を入力軸32側に装備して中間伝動軸22に咬合離脱させるようにして実施することもできる。
【0037】
(3)図10に示すように、咬合伝動機構33を、入力軸32に連結した固定伝動体41と中間伝動軸22にシフト可能にスプライン装着した可動伝動体42とで構成して、可動伝動体42を固定伝動体41に軸心方向から咬合させる爪クラッチ構造にして実施することもできる。
【0038】
(4)図11に示すように、咬合伝動機構33を、中間伝動軸22に備えた駆動ギヤ43と入力軸32に備えた従動ギヤ44とを咬合させる構造にして実施することもでき、この構造によると、排ワラカッタ9を切断作用位置に旋回セットすると咬合状態となり、排ワラカッタ9をメンテナンス位置に向けて旋回揺動すると自動的に咬合解除状態となり、先例のような咬合切換えのための特別な操作は不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】自脱型コンバインの側面図
【図2】脱穀装置および排ワラ処理部の平面図
【図3】排ワラ処理部の側面図
【図4】脱穀装置の伝動構造を示す側面図
【図5】排ワラカッタの平面図
【図6】旋回開放の途中にある排ワラカッタの平面図
【図7】排ワラカッタ駆動部の平面図
【図8】排ワラカッタ駆動用の咬合伝動機構を示す横断平面図
【図9】咬合伝動機構の別実施例を示す横断平面図
【図10】咬合伝動機構の別実施例を示す横断平面図
【図11】咬合伝動機構の別実施例を示す横断平面図
【符号の説明】
【0040】
5 脱穀装置
9 排ワラカッタ
21 支持フレーム
22 中間伝動軸
29 伝動無端帯(伝動ベルト)
30 巻き掛け伝動機構
32 入力軸
33 咬合伝動機構
37 伝動体(伝動スリーブ)
F 排ワラ搬送径路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置の後端に配備した円板型の排ワラカッタを、その一端側の縦向き支点を中心に旋回揺動可能に支持して、排ワラ搬送径路に臨んで横架された切断作用位置と後方に旋回開放されたメンテナンス位置とに切換え可能に構成した脱穀装置の排ワラ切断構造であって、
前記排ワラカッタにおける他端側に入力軸を突設するとともに、脱穀装置の後部から延出された支持フレームに中間伝動軸を支承して脱穀装置の伝動系に巻き掛け連動連結し、前記中間伝動軸と入力軸とを咬合離脱可能な咬合伝動機構を介して連動連結し、咬合伝動機構の咬合を離脱した状態で排ワラカッタを前記縦向き支点周りに旋回揺動可能に構成してあることを特徴とする脱穀装置の排ワラ切断構造。
【請求項2】
前記脱穀装置に装備された巻掛け伝動機構の伝動無端帯を延長して前記中間伝動軸に巻き掛け連動してある請求項1記載の脱穀装置の排ワラ切断構造。
【請求項3】
前記排ワラカッタが前記切断作用位置にある状態において前記中間伝動軸と前記入力軸とが同芯状に突き合せ配備されるよう構成し、前記咬合伝動機構を、中間伝動軸あるいは入力軸に装着支持した伝動体を軸心方向にシフトして、中間伝動軸と入力軸とを一体回動可能に咬合連動する伝動状態と、咬合連動を解除した非伝動状態とに切換え操作可能に構成してある請求項1または2記載の脱穀装置の排ワラ切断構造。
【請求項4】
前記伝動体を中間伝動軸および入力軸に亘って回転伝達可能に咬合外嵌される伝動スリーブで構成してある請求項3記載の脱穀装置の排ワラ切断構造。
【請求項5】
前記咬合伝動機構を咬合伝動状態に付勢してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱穀装置の排ワラ切断構造。
【請求項6】
前記咬合伝動機構を咬合解除状態に係止保持する手段を備えてある請求項5記載の脱穀装置の排ワラ切断構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−67911(P2006−67911A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255729(P2004−255729)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】