説明

脱穀装置の選別部構造

【課題】 二番コンベアの回転方向を工夫することによって、二番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることができて、かつ製造コストを削減することのできる脱穀装置の選別部構造を実現する。
【解決手段】 一番コンベア11と二番コンベア12の間に、二番コンベア12の上方を通って揺動選別装置Bの処理物搬送終端部に向う選別風を供給する回転ファン13を備えてある脱穀装置1の選別部構造において、二番コンベア12の回転方向を、フィードチェーン2側から見た側面視で反時計回りに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一番及び二番コンベアの間に、二番コンベアの上方を通って揺動選別装置の処理物搬送終端部に向う選別風を供給する回転ファンを備えてある脱穀装置の選別部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば、特許文献1に開示されているように、一番及び二番コンベアの間に回転ファンを備えた脱穀装置の選別部構造において、二番コンベアの回転方向を、回転ファンと同様に、フィードチェーン側から見た側面視で時計回りに設定されているものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−225561号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、一番及び二番コンベアの間に回転ファンを備えて、回転ファンから二番コンベアの上方に向って選別風を供給することで、二番物に含まれる藁屑を揺動選別装置の処理物搬送終端部に位置する排塵口に向って排出することができて、二番物に含まれる穀粒と藁屑を選別することができる。
しかし、二番コンベアの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で時計回りに設定すると、回転ファンから供給される選別風が向う方向と略同じ方向に向って二番コンベアから二番物が跳ね上げられるため、二番コンベアの上方で二番コンベアによって跳ね上げられた二番物に含まれる穀粒と藁屑があまり拡散しないものと考えられる。そのため、二番物に含まれる穀粒と藁屑を多く拡散することができれば、選別風による穀粒と藁屑の選別を促すことができて、二番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることが期待できる。従って、更なる選別能力の向上のため改良の余地がある。
【0005】
また、処理胴等(処理胴、唐箕等)の回転方向は、通常、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りである。そのため、二番コンベアの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で時計回りに設定して、処理胴等と二番コンベアをベルトで巻き掛け伝動しようとすると、回転方向が異なるため、回転方向を逆転させるための逆転ギアケースや逆転アイドラ等を使用する必要があり、製造コストがアップする一因となっていた。
本発明は、二番コンベアの回転方向を工夫することによって、二番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることができて、かつ、製造コストを削減することのできる脱穀装置の選別部構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、揺動選別装置と、前記揺動選別装置からの一番処理物を搬送する一番コンベアと、前記揺動選別装置からの二番処理物を搬送する二番コンベアとを備え、前記一番及び二番コンベアの間に、前記二番コンベアの上方を通って揺動選別装置の処理物搬送終端部に向う選別風を供給する回転ファンを備えてある脱穀装置の選別部構造において、次のように構成することにある。
前記二番コンベアの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定する。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、例えば図3に示すように、二番コンベア12の回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定することにより、回転ファン13から二番コンベア12の上方に向って供給された選別風の向う方向に対して、この選別風と対向する方向(選別風と衝突する方向)に二番コンベア12から二番物を跳ね上げることができる。そのため、二番コンベア12から跳ね上げられた二番物を回転ファン13から供給された選別風に衝突させて、二番物に含まれる穀粒と藁屑を多く拡散させることができる。
【0008】
二番コンベアの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定することにより、処理胴等を備えた脱穀装置の場合には、二番コンベアの回転方向を処理胴等と同じ回転方向に設定することができる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、二番コンベアから跳ね上げられた二番物に含まれる穀粒と藁屑を多く拡散させることができるため、選別風による穀粒と藁屑の選別を促すことができて、二番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることができる。
【0010】
二番コンベアの回転方向を処理胴等と同じ回転方向に設定することができるため、処理胴等と二番コンベアをベルトで巻き掛け伝動する場合、二番コンベアの回転方向を逆転させるための逆転ギアケースや逆転アイドラ等を使用する必要がない。そのため、部品点数が少なくなって、製造コストを削減することができる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の脱穀装置の選別部構造において次のように構成することにある。
前記回転ファンの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0013】
本発明の第2特徴によれば、回転ファンの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定することにより、処理胴等を備えた脱穀装置の場合には、回転ファンの回転方向を処理胴等及び二番コンベアと同じ回転方向に設定することができる。
【0014】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、回転ファンの回転方向を処理胴等及び二番コンベアと同じ回転方向に設定することができるため、処理胴等と回転ファンをベルトで巻き掛け伝動する場合や、二番コンベアと回転ファンをベルトで巻き掛け伝動する場合に、回転ファンの回転方向を逆転させるための逆転ギアケースや逆転アイドラ等を使用する必要がない。そのため、部品点数が少なくなって、製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、コンバインに搭載された脱穀装置1を示している。この脱穀装置1は、その上部側に扱室A、中間部側に揺動選別装置B、下部側に回収装置Cを配設している。脱穀装置1には、刈取処理された穀稈をフィードチェーン2で挟持搬送しながら扱処理する扱胴3を扱室Aに軸架するとともに、扱処理された処理物を漏下させる受網5を扱胴3の下方側に配設している。なお、フィードチェーン2は、図1における手前側に配置されており、図1が、フィードチェーン2側から見た側面視に相当する。また、以下の説明において図1〜図3における左方を前方と、図1〜図3における右方を後方と表示する。
【0016】
揺動選別装置Bには、受網5から漏下した処理物を受け止めるグレンパン6、このグレンパン6の後方に順に位置させたチャフシーブ7及びストローラック8、チャフシーブ7の下方に位置するグレンシーブ9を、前後揺動駆動されるシーブケース16に架設するとともに、グレンパン6の下方側に風量調整可能な唐箕10を設けている。
【0017】
回収装置Cには、グレンシーブ9の下方にグレンシーブ9からの漏化物(一番物)を回収して横一側に横送りする一番コンベア11を配設するとともに、グレンシーブ9やチャフシーブ7等からの漏化物(二番物)を回収して横一側に横送りする二番コンベア12を配設している。一番コンベア11と二番コンベア12の間には、二番コンベア12の上方を通って揺動選別装置Bの処理物搬送終端部に位置する排塵口15に向って選別風を供給する回転ファン13が配設されている。扱胴3の後方下方には処理胴14を備え、扱胴3の後端部から排出される処理物をこの処理胴14によって解し処理し、塵埃から穀粒を取り出すように構成されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、一番コンベア11の下方にコンベアケース18を備え、このコンベアケース18から回転ファン13の上方に向って、上側ファンケース19が配設されている。この上側ファンケース19の下面で、回転ファン13の略真上に当たる位置には、回転ファン13からの選別風を二番コンベア12の上方に導くための折り曲げ成形されたガイド板19aが固着されている。回転ファン13と二番コンベア12との間には回転ファン13の外周に沿って、く字状に折り曲げ成形された下側ファンケース20を備え、この下側ファンケース20と上述した上側ファンケース19とで、回転ファン13の下側から吸い込んだ空気を二番コンベア12の上方に向って供給するように構成されている。
【0019】
二番コンベア12の下方にはコンベアケース21を備えて、このコンベアケース21の前方上端部は、下側ファンケース20の上端部と当接する位置から斜め後方上方に向って折り曲げ成形されている。このようにコンベアケース21を構成することで、二番コンベア12が回転することによって跳ね上げられた二番物が回転ファン13側に入り込まないようになっている。
【0020】
図1及び図2に示すように、この脱穀装置1の一番コンベア11、二番コンベア12、回転ファン13及び処理胴14の回転方向は、すべてフィードチェーン2側から見た側面視で、反時計回りに回転するように設定されている。
【0021】
図2の2点鎖線は、一番コンベア11、二番コンベア12、回転ファン13、処理胴14及び排塵ファン4のベルト伝動構造を示した概略であり、各機器の回転軸心に対して図示した円弧はプーリー23を示し、一番コンベア11と回転ファン13の間及び回転ファン13と二番コンベア12の間の円弧は、それぞれアイドラ24を示す。処理胴14と排塵ファン4の間に位置する円弧は、揺動選別装置Bを揺動させるプーリー23と、アイドラ24を介してベルト28で連動するための分岐プーリー25を示す。排塵ファン4は他の機器と回転方向が異なるため、プーリー23から逆転ギアケース26を介して排塵ファン4に接続されている。
【0022】
一番コンベア11、二番コンベア12、回転ファン13、処理胴14及び排塵ファン4を駆動する複数のプーリー23は、2つのアイドラ24及び分岐プーリー25を介して一本のベルト27で巻き掛け伝動されている。そのため、従来(例えば特許文献1)のように、処理胴14の回転方向と、回転ファン13及び二番コンベア12の回転方向が異なる場合に比べ、これらの回転方向を逆転させるための逆転ギアケース(図示せず)や逆転アイドラ(図示せず)等を設ける必要がなく、ベルト伝動構造を簡素化することができ、製造コスト削減を図ることができる。
【0023】
図3に示すように、回転ファン13がフィードケース2側から見た側面視で反時計回りに回転すると、選別風が上側ファンケース19と下側ファンケース20に案内されて、二番コンベア12の上方に向かう。一方、二番コンベア12がフィードケース2側から見た側面視で反時計回りに回転すると、二番物が回転ファン13の吹き出し口22の方向に向かって跳ね上げられる。二番コンベア12によって跳ね上げられた二番物が回転ファン13から供給された選別風と衝突し、二番物に含まれる穀粒と藁屑を拡散させることで、比重の重い穀粒は再び二番コンベア12に向かって落下し、比重の軽い藁屑は回転ファン13から吹き出された選別風に乗って揺動選別装置Bの処理物搬送終端部に位置する排塵口15に導かれる。このように、二番コンベア12と回転ファン13の回転方向を設定することによって、その回転を有効に活用して二番コンベア12の上方で二番物に含まれる穀粒と藁屑を拡散させることで、二番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることができる。
【0024】
なお、この脱穀装置1においては、一番コンベア11の回転方向についても、フィードケース2側から見た側面視で反時計回りに回転するように設定されている。この一番コンベア11の上方には、唐箕10から供給された唐箕風が通過するため、この一番コンベアによって跳ね上げられた一番物が、上述した二番コンベヤ12の場合と同様に、唐箕風と衝突し、一番物に含まれる穀粒と藁屑を拡散させることができ、一番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることができるように構成されている。
【0025】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、回転ファン13の回転方向を、フィードチェーン2側から見た側面視で反時計回りに設定した例を示したが、回転ファン13の回転方向を、フィードチェーン2側から見た側面視で時計回りに設定してもよい。このように、回転ファン13の回転方向を、フィードチェーン2側から見た側面視で時計回りに設定した場合であっても、二番物に含まれる穀粒と藁屑の選別能力を向上させることができる。ただし、処理胴14や二番コンベア12と回転方向が異なることになるため、ベルト27で巻き掛け伝動する場合には、回転ファン13の回転方向を逆転させるための逆転ギアケース(図示せず)や逆転アイドラ(図示せず)等を設ける必要がある。
【0026】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]及び[発明の実施の第1別形態]においては、コンバインに搭載した脱穀装置1の選別部構造を例に示したが、コンバインに搭載する脱穀装置1に限らず、例えば、刈取部(図示せず)を備えていないハーベスタ(図示せず)に搭載する脱穀装置1においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】回転ファン等の配置及びベルト伝動構造を示す縦断側面図
【図3】二番コンベア付近の処理物の拡散状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0028】
1 脱穀装置
2 フィードチェーン
11 一番コンベア
12 二番コンベア
13 回転ファン
B 揺動選別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動選別装置と、前記揺動選別装置からの一番物を搬送する一番コンベアと、前記揺動選別装置からの二番物を搬送する二番コンベアとを備え、
前記一番及び二番コンベアの間に、前記二番コンベアの上方を通って揺動選別装置の処理物搬送終端部に向う選別風を供給する回転ファンを備えてある脱穀装置の選別部構造であって、
前記二番コンベアの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定してある脱穀装置の選別部構造。
【請求項2】
前記回転ファンの回転方向を、フィードチェーン側から見た側面視で反時計回りに設定してある請求項1記載の脱穀装置の選別部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−17706(P2008−17706A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189567(P2006−189567)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】