説明

自動二輪車及び緩衝器

【課題】本発明は、緩衝器の温度上昇を抑えることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】車体フレーム51に前端62が揺動可能に支持されるスイングアーム61と、このスイングアーム61にリンク64を介して下端74が支持されると共に支持孔11を介して車体フレーム51に上端20が支持される緩衝器10と、この緩衝器10に接続され緩衝器10へ流れる作動油を溜める円筒状のリザーブタンク15とが備えられている自動二輪車50において、リザーブタンク15は、その軸線29が、緩衝器10の上端に設けた支持孔11の軸線27よりも上方に位置すると共に車幅方向に延びるようにして配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器を備えた自動二輪車及び緩衝器の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレームとリヤスイングアームの間に緩衝器を渡した自動二輪車が知られている(例えば、特許文献1(図2、図4))。
【0003】
特許文献1の図2及び図4に示すように、エンジン(17)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)の後方に、リヤスイングアーム(23)を支える緩衝器(24)が配置される。そして、この緩衝器(24)の上部にリザーブタンク(24b)が備えられる。リザーブタンク(24b)の車幅方向右側に、エンジン(17)の排気ポート(17f)から車両後方へ延びる排気管(32)が配置される。
【0004】
リザーブタンク(24b)は、高熱の排気ガスが通る排気管(32)の近傍に配置される。加えて、リザーブタンク(24b)の前方に、緩衝器(24)の本体部としてのシリンダ(24a)が配置され、このシリンダ(24a)でリザーブタンク(24b)の前方が遮られている。リザーブタンク(24b)の前方が遮られ、その近傍にエンジン等の発熱体が配置されるため、リザーブタンク(24b)の温度が上昇し易い傾向にある。
【0005】
緩衝器の作動を考えると、緩衝器の温度がより安定することが求められる。そこで、緩衝器の温度上昇を抑えることができる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−83836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、緩衝器の温度上昇を抑えることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体フレームと、車体フレームに支持されるエンジンと、車体フレーム又はエンジンに前端が揺動可能に支持されると共に後輪を後端で回転可能に支持するスイングアームと、このスイングアームに下端が支持されると共に車体フレームに軸線が幅方向に延びる上端支持孔を介して車体フレームに支持される緩衝器と、この緩衝器に接続され緩衝器へ流れる作動油を溜める円筒状のリザーブタンクとが備えられている自動二輪車において、円筒状のリザーブタンクの軸線は、車幅方向に指向するように配置され、側面視で、リザーブタンクの軸線が、緩衝器の上端支持孔の軸線よりも上方に位置すると共に車幅方向に延びるようにして配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、車両側面視で、緩衝器は、リザーブタンクの外周下端が、支持孔の軸線と略同一高さ又はこの支持孔の軸線よりも上方になるように車体フレームに取付けられることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、車体フレームは、ヘッドパイプと、このヘッドパイプから車両後方下に延びるメインフレームと、このメインフレームの後部に取付けられ運転者が座るシートを支持するシートフレームとを備え、車両側面視で、このシートフレームと重なるように、リザーブタンクが配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、エンジンの上方に、走行風が流れる空間を介して燃料タンクが配置され、リザーブタンクの外周下端は、エンジンの上端よりも上方になるように配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、緩衝器の車両前方にエンジンが配置され、緩衝器の車両後方にエアクリーナが配置され、このエアクリーナとエンジンとはコネクテイングチューブで接続され、コネクテイングチューブは、緩衝器の車幅方向左右に配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、縦長に置かれるシリンダ部材と、このシリンダ部材に移動可能に収納したピストンと、このピストンから下方へ延びるピストンロッドと、シリンダ部材に付設され余剰となった作動油を溜める円筒状のリザーブタンクとからなる緩衝器であって、シリンダ部材の上面から上方へステイ部が延ばされ、このステイ部に支持孔が設けられ、この支持孔を用いて車体側に設けた支持部材へステイ部材を連結できるようにし、支持孔は、その軸線がシリンダ部材の軸線に略直交するように設けられ、リザーブタンクは、その軸線が支持孔の軸線と平行になるように配置され、支持孔の軸線に沿って目視したときに、リザーブタンクは、その軸線が、支持孔の上端よりも上方で、且つ、シリンダ部材の外面より外側になるようにして配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、リザーブタンクの軸線は、緩衝器の上端支持孔の軸線よりも上方に配置されるため、リザーブタンクの一部は緩衝器に遮られなくなり、リザーブタンクに走行風を多く当てることができるので、リザーブタンクの冷却性が高められ、リザーブタンクの温度上昇を抑えることができる。
加えて、リザーブタンクは、上端支持孔の軸線よりも上方に配置されると共に、軸線が車幅方向に延びているので、緩衝器の左右方向にスペースを確保し易くなり、種々の部品(例えば吸排気系部材)を配置することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、リザーブタンクの外周下端は、緩衝器の支持孔の軸線と略同一高さ又は上方に配置される。リザーブタンクのより多くの部分が、緩衝器の上方に配置されるので、車両正面視でリザーブタンクが露出する表面積はさらに大きなものとなる。結果、緩衝器に走行風を当たり易くでき、リザーブタンクの冷却性を一層高め、緩衝器の温度上昇を抑えることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、車両側面視で、シートフレームと重なるようにリザーブタンクが配置されている。リザーブタンクの側方は、シートフレームでガードされるため、リザーブタンクを外力から保護することができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、リザーブタンクの外周下端は、エンジンの上端よりも上方に配置される。
空間を流れる走行風は、エンジンに遮られることなく、リザーブタンクの外周に当たる。結果、リザーブタンクの外周下端がエンジンの上端と同一高さ又は下方に配置される場合に較べて、走行風がリザーブタンクへ流れ易くなり、リザーブタンクを良好に冷却させることができる。加えて、リザーブタンクは、エンジンの上端よりも上方に配置される。発熱体となるエンジンとリザーブタンク間の距離を大きくすることで、エンジンの熱影響を小さくすることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、コネクテイングチューブは、緩衝器の車幅方向左右に配置される。コネクテイングチューブが緩衝器の車幅方向左右の一方に配置される場合に較べて、大きな吸気容量が確保される。
【0019】
請求項6に係る発明では、リザーブタンクの軸線は、シリンダ部材の支持孔の上端よりも上方に配置され、シリンダ部材の外面より外側に配置される。リザーブタンクの軸線がシリンダ部材の外面の内側に配置され、若しくは、シリンダ部材の支持孔の上端よりも下方に配置される場合に較べて、リザーブタンクに走行風が当たり易くなる。結果、緩衝器の冷却性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る緩衝器の左側面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】本発明に係る緩衝器の斜視図である。
【図4】本発明に係る緩衝器の上部断面図である。
【図5】本発明に係る緩衝器を備えた自動二輪車である。
【図6】緩衝器及びその周辺部を説明する自動二輪車の要部左側面図である。
【図7】緩衝器及びその周辺部を説明する自動二輪車の要部右側面図である。
【図8】緩衝器及びその周辺部を説明する自動二輪車の要部平面図である。
【図9】緩衝器に備えられているリザーブタンクの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0022】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、緩衝器10は、上端支持孔11が設けられる上ステイ部13と、この上ステイ部13に固着され余剰の作動油を溜めるリザーブタンク15と、上ステイ部13の下端に固着され内側が作動油で満たされるシリンダ部材16と、シリンダ部材16とリザーブタンク15の間に渡されリザーブタンク15とシリンダ部材16間を流れる作動油の流量を調整するアジャスタ部17と、このシリンダ部材16から下方へ延びているピストンロッド18と、このピストンロッド18の下端に固着され下端支持孔12が設けられる下ステイ部14と、この下ステイ部14の近傍に設けらればね23の下端を支える鍔状の下鍔部21と、ばね23の上端を支える上鍔部22とを有する。
【0023】
シリンダ部材の上面25から上方へ上ステイ部としてのステイ部13が延ばされ、このステイ部13に上端支持孔11が設けられ、この上端支持孔11を用いて車体側に設けた支持部材へステイ部13を連結できるようにした。上端支持孔11は、その軸線27がシリンダ部材16の軸線28に略直交するように設けられている。
図中、30は緩衝器10において、上端支持孔11の水平方向の仮想中心線である。
【0024】
図2に示すように、上端支持孔11は、その軸線27がシリンダ部材の軸線28に略直交するように設けられる。リザーブタンク15は、リザーブタンク15の軸線29が上端支持孔の軸線27と平行になるように配置される。
【0025】
図3に示すように、緩衝器10は、その上部にてシリンダ部材16に上ステイ部13が固着されると共に、アジャスタ部17とリザーブタンク15とが一体的に設けられている。シリンダ部材16にアジャスタ部17とリザーブタンク15とが一体的に設けられているので、リザーブタンク15を別個独立に設けた場合に較べて、リザーブタンク15の取付に係るステー等の部品点数を減らすことができる。
【0026】
次に、緩衝器上部の断面構造について説明する。
図4に示すように、緩衝器10は、縦長に置かれるシリンダ部材16と、このシリンダ部材16に移動可能に収納したピストン31と、このピストン31から下方へ延びるピストンロッド18と、シリンダ部材16に付設され余剰となった作動油を溜める円筒状のリザーブタンク15と、このリザーブタンク15とシリンダ部材16の間に介在されピストン31の摺動速度を変化させるアジャスタ部17とからなる。
【0027】
ピストン31は、シリンダ部材16の内側を形成するダンパ室32を移動するものであり、ダンパ室32を第1室33と第2室34とに区画する。ピストン31に第1室33と第2室34とを連通し作動油が移動可能にする複数のオリフィス35が設けられる。また、リザーブタンク15とアジャスタ部17の間に作動油が通る第1通路37が形成され、アジャスタ部17とダンパ室32の間に作動油が通る第2通路38が形成される。ダンパ室32、第1通路37及び第2通路38は、全て作動油で満たされている。
【0028】
リザーブタンク15に、タンク内部の作動油に圧力を付与するゴム製の圧力容器41が設けられている。この圧力容器41に例えば圧縮窒素が封入される。また、アジャスタ部17に、作動油の流量を調整するニードル弁42が回動可能に取付けられている。
【0029】
図1に戻って、支持孔の軸線27に沿って目視したときに、リザーブタンク15は、その軸線29が、支持孔の上端20よりも上方で、且つ、シリンダ部材の外面19より外側になるようにして配置されている。
【0030】
次に、上記緩衝器が装着される自動二輪車について説明する。
図5に示すように、自動二輪車50は、車体フレーム51と、この車体フレーム51に懸架されるエンジン52と、車体フレーム51のヘッドパイプ71に取付けられ前輪53を支えるフロントフォーク55と、この車体フレーム51のピボットフレーム56に前端62が揺動可能に支持されると共に後輪54を後端63で回転可能に支持するスイングアーム61と、このスイングアーム61にリンク64を介して下端74が支持されると共に軸線が略水平に延びる上端支持孔11を介して車体フレーム51に上端が支持される緩衝器10とが備えられる。フロントフォーク55に操向ハンドル75が取付られる。
なお、本実施例では、スイングアームと緩衝器の間にリンクが介在されるが、このリンクを省くことは差し支えない。
【0031】
車体フレーム51は、ヘッドパイプ71と、このヘッドパイプ71から車両後方下に延びるメインフレーム76と、このメインフレーム76の下方にてヘッドパイプ71から車両後方下に延びるダウンフレーム77と、メインフレーム76の後端から下方に延びスイングアーム61を支持するピボット部78を有するピボットフレーム部79と、ダウンフレーム77の下端部から車両後方へ延びてピボットフレーム56へ連結されるロアフレーム部81と、メインフレーム76の後部にて車幅方向に延びるメインクロス部材117と、メインフレーム76から車両後方へ延びているシートフレーム82及びこのシートフレーム82を支えるサブフレーム83とからなる。シートフレーム82は、メインフレーム76の後部に取付けられ運転者が座るシート84を支持する部材である。
なお、本実施例では、スイングアームの前端は、車体フレームに支持されるが、エンジンに支持されるようにしても差し支えない。
【0032】
ダウンフレーム77にラジエータユニット91が設けられる。車体フレーム51に懸架されるエンジン52は、クランクケース92と、このクランクケース92の上に取付けたシリンダ部94とを有する。このシリンダ部の前面95から排気管97が延び、シリンダ部の後面96にコネクテイングチューブ98が接続され、このコネクテイングチューブ98の車両後方にてコネクテイングチューブ98にエアクリーナ99が接続される。
【0033】
排気管97は、シリンダ部94から前方へ延びた後向きを変え車両後方へ延びており、この排気管97の後端に消音器100が接続される。シリンダ部94の上方に燃料タンク101が配置される。燃料タンク101はメインフレーム76に取付けられている。
【0034】
エンジン52と後輪54の間に駆動力を伝達するチェーン58が巻き掛けられ、このチェーン58の上下左右への振れを抑えるチェーンガイド59がスイングアーム61に取付けられる。ピボットフレーム部79の下部に、運転者が足を置く足置き60が車幅方向外側に延びるように取付けられる。
【0035】
次に、緩衝器の配置構造等について説明する。
図6に示すように、緩衝器10の車両前方にエンジン52が配置され、緩衝器10の車両後方にエアクリーナ99が配置され、このエアクリーナ99とエンジン52とはコネクテイングチューブ98で接続される。コネクテイングチューブ98に燃料の供給量を調整するスロットルボデイ102が介在される。
【0036】
エンジン52の上方に、走行風が流れる空間103を介して燃料タンク101が配置され、リザーブタンクの外周下端105は、エンジンの上端73よりも上方になるように配置される。
【0037】
緩衝器10に、この緩衝器10へ流れる作動油を溜める円筒状のリザーブタンク15が備えられている。リザーブタンク15は、車両側面視で、シートフレーム82と重なるように配置される。
リザーブタンク15の側方は、シートフレーム82でガードされるため、リザーブタンク15を外力から保護することができる。
【0038】
車両側面視で、緩衝器10は、リザーブタンクの外周下端105が、支持孔11の軸線27と略同一高さ又はこの支持孔の軸線27よりも上方になるように車体フレーム51に取付けられる。リザーブタンク15は、その径方向中心軸線29が、緩衝器10の上端に設けた支持孔11の軸線27よりも上方に位置するように配置される。
図中、88はエンジンのシリンダ部94上端に水平に延ばした仮想線である。
【0039】
次に、車両右側方から見たときの緩衝器及びその周辺部の構造を説明する。
図7に示すように、エアクリーナ99から延びるコネクテイングチューブ98は、緩衝器10の外方を通ってエアクリーナ99よりも車両前方側に設けたエンジン(図6、符号52)へ延びている。
アジャスタ部17のニードル弁42は、車幅方向右側から工具を差し込んで、緩衝器10のダンパ特性を容易に調整することができるようにした。
【0040】
次に、上方から見たときの緩衝器及びその周辺部の構造を説明する。
図8に示すように、メインフレーム76の後部上部に、メインクロス部材117が車幅方向に延びており、このメインクロス部材117にクッションステー118、118が付設され、これらのクッションステー118、118に各々孔119、119を開け、これらの孔119、119に緩衝器の上端支持孔11を合わせ締結部材121にて緩衝器10の上端をクッションステー118、118へ取付けた。
【0041】
緩衝器10に備えられているリザーブタンク15は、その軸線29が、車幅方向に延びるようにして配置される。
コネクテイングチューブ98は、後部がエアクリーナ99へ接続される後部111と、この後部111から車幅方向右側に延びている右チューブ113と、後部111から車幅方向左側に延びている左チューブ114とからなる。
【0042】
すなわち、コネクテイングチューブ98は、緩衝器10の車幅方向左右に配置される。右チューブ113の車両前端62Rは閉じており、左チューブ114の車両前端62Lは開口部115を有し、この開口部115にスロットルボデイ(図6、符号102)が介在される。斯して、エアクリーナ99で清浄化されたエアは、開口部115からへエンジン(図6、符号52)へ向かって流れる。
なお、本実施例では、右チューブの前端は閉じているが、右チューブの前端を延ばし左チューブへ接合することは差し支えない。
【0043】
コネクテイングチューブ98は、緩衝器10を取り囲むように配置されるので、コネクテイングチューブ98の容積を大きくすることができる。コネクテイングチューブ98は左右のチューブ114、113を備えるので、コネクテイングチューブ98が緩衝器10の車幅方向左右の一方に配置される場合に較べて、大きな吸気容積を確保することができる。結果、コネクテイングチューブ98の容積拡大により吸気効率が高まり、エンジンの出力特性を向上させることができる。
左右のチューブ114、113の間には緩衝器10のシリンダ部材16が配置され、左右のチューブ114、113の上方にリザーブタンク15が配置される。
【0044】
図1を併せて参照し、リザーブタンク15は、シリンダ部材16と互いの軸方向が略直交し、並んで配置されないので、リザーブタンク15と排気管との干渉を考慮する必要がなく、より外径の大きな排気管97を緩衝器10の側方に配置することができる。排気管97の外径が拡大することで、排気効率が向上する。結果、エンジン52の出力特性を向上させることができる。
【0045】
以上に述べた緩衝器を備えた自動二輪車の作用を次に述べる。
図9に示すように、リザーブタンクの軸線29は、支持孔の軸線27よりも上方に配置される。そのため、車両正面視で、円筒状のリザーブタンク15の大半は、緩衝器10に遮られない。
【0046】
リザーブタンクの外周下端105は、緩衝器の支持孔11の軸線27と略同一高さ又は上方に配置される。リザーブタンク15の少なくとも大部分は、緩衝器10の上方に配置されるので、車両正面視でリザーブタンク15が露出する表面積は大きなものとなる。結果、緩衝器10の冷却性を高めると共に、緩衝器10の温度上昇を抑えることができる。
【0047】
リザーブタンクの軸線29は、シリンダ部材16の支持孔の上端20よりも上方に配置され、シリンダ部材の外面19より外側に配置される。リザーブタンクの軸線29がシリンダ部材の外面19の内側に配置され、若しくは、シリンダ部材16の支持孔の上端20よりも下方に配置される場合に較べて、シリンダ部材16によってリザーブタンク15が遮られ難くなるので、リザーブタンク15に走行風が当たり易くなる。結果、緩衝器10の冷却性を一層高めることができる。
【0048】
リザーブタンクの外周下端105は、エンジンの上端20よりも上方に配置される。
空間103を流れる走行風は、エンジン52に遮られることなく、図矢印w方向に流れリザーブタンクの外周106に当たる。結果、リザーブタンク15を良好に冷却させることができる。加えて、リザーブタンク15は、エンジンの上端20よりも上方に配置されるので、発熱するエンジン52とリザーブタンク15の間の距離を大きくすることで、エンジン52の熱影響を小さくすることができる。
【0049】
図8にて、リザーブタンクの軸線29は、車幅方向に延びているので、リザーブタンクの軸線29が車両前後方向に延びている場合に較べ、車両正面視でリザーブタンク15の表面積は大きくなる。リザーブタンク15の軸線29は、支持孔11の軸線27の車両後方で且つ上方に位置するので、緩衝器10に遮られず、車両前方から見たときの表面積が大きくなる。結果、リザーブタンク15の温度上昇を抑えることができ、リザーブタンク15の温度上昇が抑えられることで、緩衝器10の温度上昇を抑えることができる。
【0050】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、緩衝器を備える自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0052】
10…緩衝器、11…支持孔(上端支持孔)、13…ステイ部(上ステイ部)、15…リザーブタンク、16…シリンダ部材、18…ピストンロッド、27…支持孔の軸線、28…シリンダ部材の軸線、29…リザーブタンクの軸線、31…ピストン、50…自動二輪車、51…車体フレーム、52…エンジン、54…後輪、61…スイングアーム、64…リンク、71…ヘッドパイプ、76…メインフレーム、82…シートフレーム、84…シート、98…コネクテイングチューブ、99…エアクリーナ、101…燃料タンク、103…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(51)と、前記車体フレーム(51)に支持されるエンジン(52)と、前記車体フレーム(51)又は前記エンジン(52)に前端が揺動可能に支持されると共に後輪(54)を後端で回転可能に支持するスイングアーム(61)と、このスイングアーム(61)に下端が支持されると共に前記車体フレーム(51)に軸線(27)が幅方向に延びる上端支持孔(11)を介して前記車体フレーム(51)に支持される緩衝器(10)と、この緩衝器(10)に接続され前記緩衝器(10)へ流れる作動油を溜める円筒状のリザーブタンク(15)とが備えられている自動二輪車において、
円筒状の前記リザーブタンク(15)の軸線(29)は、車幅方向に指向するように配置され、側面視で、前記リザーブタンク(15)の軸線(29)が、前記緩衝器(10)の前記上端支持孔(11)の軸線(27)よりも上方に位置するようにして配置されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
車両側面視で、前記緩衝器(10)は、前記リザーブタンク(15)の外周下端が、前記支持孔(11)の軸線(27)と略同一高さ又はこの支持孔(11)の軸線(27)よりも上方になるように前記車体フレーム(51)に取付けられることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記車体フレーム(51)は、ヘッドパイプ(71)と、このヘッドパイプ(71)から車両後方下に延びるメインフレーム(76)と、このメインフレーム(76)の後部に取付けられ運転者が座るシート(84)を支持するシートフレーム(82)とを備え、
前記リザーブタンク(15)は、左右一対の前記シートフレーム(82)の間であって、車両側面視で、前記シートフレーム(82)と重なるように配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記エンジン(52)の上方に、走行風が流れる空間(103)を介して燃料タンク(101)が配置され、
前記リザーブタンク(15)の外周下端は、前記エンジン(52)の上端よりも上方になるように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記緩衝器(10)の車両前方に前記エンジン(52)が配置され、前記緩衝器(10)の車両後方にエアクリーナ(99)が配置され、このエアクリーナ(99)と前記エンジン(52)とはコネクテイングチューブ(98)で接続され、前記コネクテイングチューブ(98)は、前記緩衝器(10)の車幅方向左右に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項6】
縦長に置かれるシリンダ部材(16)と、このシリンダ部材(16)に移動可能に収納したピストン(31)と、このピストン(31)から下方へ延びるピストンロッド(18)と、前記シリンダ部材(16)に付設され余剰となった作動油を溜める円筒状のリザーブタンク(15)とからなる緩衝器であって、
シリンダ部材(16)の上面から上方へステイ部(13)が延ばされ、このステイ部(13)に支持孔(11)が設けられ、この支持孔(11)を用いて車体側に設けた支持部材へ前記ステイ部(13)を連結できるようにし、前記支持孔(11)は、その軸線(27)が前記シリンダ部材(16)の軸線(28)に略直交するように設けられ、
前記リザーブタンク(15)は、その軸線(29)が前記支持孔(11)の軸線(27)と平行になるように配置され、
前記支持孔(11)の軸線(27)に沿って目視したときに、前記リザーブタンク(15)は、その軸線(29)が、支持孔(11)の上端よりも上方で、且つ、前記シリンダ部材(16)の外面より外側になるようにして配置されていることを特徴とする緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49332(P2013−49332A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187850(P2011−187850)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】