説明

自動補正機能付き周期タイマ

【課題】 衛星搭載コンポーネントのうち、衛星内部に配信される基準タイミングに同期して周期動作を行うようなコンポーネントでは、オシレータが有するクロック精度誤差のため、周期タイミングにずれが生じることがあり、これを回避する自動補正機能付き周期タイマを得る。
【解決手段】 基準タイミングの間隔を内部クロックによりカウントし、カウント値に従ってコンポーネントの周期タイミングを生成する。ユーザは予め周期タイミングの設定を「基準タイミングに対する分割数」として2の冪乗の値で与えて与えておき、基準タイミングの間隔のカウント値を分割数に従いビットシフトすることで周期タイマのカウント値を算出し、周期タイミングを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動補正機能付き周期タイマに関するものである。より詳しくは、衛星搭載のコンポーネントに対し、衛星の基準タイミングに同期した周期タイミングを生成する自動補正機能付き周期タイマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星に搭載されるコンポーネントには、衛星制御装置等から衛星内部に配信される衛星時刻等の基準タイミングに同期して、周期動作を行うものがある。このようなコンポーネントは、衛星の基準タイミングを受信すると、コンポーネント内部に搭載するオシレータ等のクロック源より供給されるクロックにより内部タイマを動作させて周期タイミングを生成し、生成した周期タイミングに基づき周期動作を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−232039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の衛星搭載コンポーネントは、このように衛星の基準タイミングを受信すると内部タイマを動作させ固定のカウント値を与えて周期タイミングを生成していたが、コンポーネント内部に搭載するオシレータ等のクロック精度が低いと、クロック誤差のために周期タイミングがジッタし、周期処理のタイミングがずれるという課題があった。また、基準タイミング毎に周期タイマを初期化する場合には、周期タイミングが2重に発生するという課題があった。
これらの課題を回避するには周期タイミングの精度を上げる必要があるが、このためにはコンポーネント内部に高価な高精度オシレータを搭載する必要があった。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、高価な高精度オシレータを搭載することなく、衛星の基準タイミングに精度良く同期した周期タイミングを供給可能な時刻同期装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る自動補正機能付き周期タイマは、周期的な基準タイミングを示す基準タイミング信号と、周期的な内部クロックのタイミングを示す内部クロック信号を受信し、前記基準タイミング信号の周期間隔を前記内部クロック信号のクロック数でカウントしたカウント値Aを出力するカウンタと、前記基準タイミング信号と、前記内部クロック信号を受信し、前記内部クロック信号のクロック数が、前記カウント値Aを所定の分割数Nで除した値のカウント値Bに達する度に周期的にパルスを生成した周期タイミング信号を出力する周期タイミング生成回路とからなる。ここで、分割数Nは2の冪乗の指数であり、周期タイミングは基準タイミングの間隔を2^Nで分割したものとなる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、衛星の基準タイミングに精度良く同期した周期タイミングを生成することができ、周期タイミングに起因した衛星搭載コンポーネントの誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る自動補正機能付き周期タイマ20のブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る自動補正機能付き周期タイマ20が生成する周期タイミングを説明する図である。
【図3】衛星内部の一般的な構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3は衛星内部の制御装置やコンポーネント等の一般的な構成を示すブロック図である。
図3において、衛星制御装置11は衛星全体の動作を司る装置である。衛星制御装置11は衛星制御装置11と情報の入出力を行うコンポーネント12a、12b、・・、12iに対し、動作の同期をとるための基準タイミング信号101を配信する。
コンポーネント12a、12b、・・、12iは自動補正機能付き周期タイマ20a、20b、・・、20iを備え、自動補正機能付き周期タイマ20a、20b、・・、20iは衛星制御装置11が発する基準タイミング信号101を受信し、基準タイミング信号101に同期して各コンポーネントを動作させるための周期タイミング信号102を生成する。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態1に係る自動補正機能付き周期タイマ20のブロック図を示した図である。
自動補正機能付き周期タイマ20は、衛星の基準タイミング信号101と周期的な内部クロックのタイミングを示す内部クロック信号110を生成するオシレータ1(内部クロックともいう)が出力する内部クロック信号110を入力し、入力した基準タイミング信号101の周期間隔を内部クロック信号110のクロック数でカウントして、カウントしたカウント値(A)103を出力するカウンタ2と、カウント値(A)103を入力し、カウント値(A)103を予め設定された分割数Nに従ってビットシフトさせ、ビットシフト後のカウント値(B)104を出力するビットシフタ3と、衛星の基準タイミング信号101と、内部クロック信号110と、カウント値(B)104を入力して周期タイミング信号102を生成する周期タイミング生成回路4とから構成される。
なお、分割数Nはコンポーネントを使用するユーザなどにより予め定められている値を用いる。
【0011】
次に、この発明に係る自動補正機能付き周期タイマ20の動作を図1、図2を用いて説明する。
図2は、衛星内の基準タイミング信号101と、周期タイミング生成回路4で生成される周期タイミング信号102のタイミングチャートを示す概略図である。
【0012】
まず、ユーザは所望の周期タイミングに合わせて、予め分割数Nの設定を2の冪乗の値で与えておく(ステップS101)。あるいは、ユーザではなく衛星制御装置11が各コンポーネントに対して分割数Nを自動で設定するものであってもよい。
【0013】
カウンタ2は、オシレータ1から内部クロック信号110を入力する。また、衛星制御装置11が発する衛星の基準タイミング信号101を入力する。
カウンタ2は、オシレータ1が出力する衛星の基準タイミング信号101の現サイクルIにおける信号間隔(基準タイミング信号101の時間周期)を内部クロック信号110でカウントし、カウントしたカウント値(A)103をビットシフタ3に出力する(ステップS102)。
なお、カウンタ2は順次、基準タイミング信号101の次のサイクルI+1の信号間隔のカウント値(A)103、その次のサイクルI+2の信号間隔のカウント値(A)103をビットシフタ3に出力する。
【0014】
ビットシフタ3は、カウンタ2が出力するカウント値(A)103と、予め指定された分割数Nと、内部クロック数110を入力する。
ビットシフタ3は得られたカウント値(A)103を入力された分割数Nの値だけビットシフトさせ、ビットシフト後のカウント値(B)104を得る。すなわちビットシフト3はカウント値(A)103を分割数Nで除した値を算出し、カウント値(B)104とする。
ビットシフタ3はカウント値(B)104を周期タイミング生成回路4に出力する(ステップS103)。
【0015】
周期タイミング生成回路4は、内部クロック信号110にて動作するカウンタ41(図示せず)を有する。
衛星制御装置11が出力する基準タイミング信号101の次のサイクルI+1において、カウンタ41の値が入力されたカウント値(B)104に達すると、パルスを生成し周期タイミング信号102を出力する。そしてカウンタ41の値をゼロクリアして再びカウントを開始する(ステップS104)。
【0016】
周期タイミング生成回路4はこのように、基準タイミング信号の1つ前のサイクル(サイクルI)において算出したカウント値(B)を用い、基準タイミング信号の次のサイクル(サイクルI+1)においてカウンタ41のカウント数がカウント値(B)に達するとパルスを生成して周期タイミング信号102を出力していく。
【0017】
このように構成された自動補正機能付き周期タイマ20においては、オシレータ1(内部クロック)の内部クロックを利用して衛星の基準タイミングの間隔をカウントするようにしたことで、得られたカウント値(A)103は内部クロックの誤差成分が含まれるものとなる。よって、ビットシフタ4でビットシフトした後のカウント値(B)104にも内部クロックの誤差成分が含まれることとなる。
【0018】
従って、周期タイミング信号102をオシレータ1(内部クロック)を用いて生成する場合であっても、カウント値(B)104を与えることでオシレータ1(内部クロック)に含まれる誤差成分はキャンセルされ、衛星の基準タイミング信号と分割数Nに従ってほぼ正確に周期タイミングを生成することが可能となる。
【0019】
このように本実施の形態の自動補正機能付き周期タイマによれば、宇宙空間の厳しい衛星搭載環境下において温度変動や経年劣化により内部クロックの誤差が生じる場合であっても、基準タイミングが入力される都度タイミング補正を実施して、正確な周期タイミング信号を生成し続けることができる。
各コンポーネント機器は自動補正機能付き周期タイマから出力される周期タイミング信号に同期することで、厳しい環境下においても安定して動作することが可能となる。
【0020】
以下に、基準タイミング=1[Hz]、内部クロック=10[MHz]、クロック誤差=+50[ppm]、分割数N=4とした場合の実施例を示す。すなわち、内部クロック=10.0005[MHz]、周期タイミング周波数=16[Hz]である。
従来技術では、固定のカウント値=625,000 にて周期タイミングを生成するため、その間隔は 1/{(1+50*10^-6)*10^7}*(625000)=62.4969[ms]となり、クロック誤差がない場合の16Hz間隔=62.5000[ms]に対し、1周期あたり3.1[μs]の誤差が生じる。
【0021】
一方、本発明では以下のとおりとなる。
基準タイミングの間隔を内部クロックでカウントすると、カウント値(A)103=(1+50*10^-6)*10^7=10,000,500=0x989874 となる。
これを4ビットシフトすると、カウント値(B)=0x98987=625,031 となる。
従い、周期タイマ生成回路にて、カウント値(B)に達するまで内部クロックにてカウンタを動作させた場合の時間は、1/{(1+50*10^-6)*10^7}*(625031+1)=0.0625001[s]=62.5001[ms]となり、クロック誤差がない場合に対し0.1[μs]の誤差となる。
これは従来の技術に比べ30分の1であり、すなわち本発明によれば、各コンポーネントでは、正確な周期タイミングを刻むことができる。
なお、625031+1としているのは、カウンタが0からカウントを開始するためである。
【0022】
なお、本実施の形態の周期タイミング生成回路4は、基準タイミング信号101の1つ前にあたるサイクル(I)においてカウントしたカウント値(A)103から算出したカウント値(B)104に基づいて、今のサイクル(I+1)の基準タイミング信号101に同期した周期タイミング信号102を生成し出力するようにしたが、基準タイミング信号101の全てのサイクルで補正を行う必要がない場合は、他の形態をとってもよい。
例えば、所定の時間内におけるカウント値(A)の平均をとり、その平均カウント値(A)に基づいて、基準タイミング信号101に同期した周期タイミング信号102を出力するようにしてもよい。または、カウント値(A)103が、予め定めた変化範囲を超えた場合には、直近のカウント値(A)に基づいて、基準タイミング信号101に同期した周期タイミング信号102を出力するようにしてもよい。
【0023】
また、本実施の形態では衛星に搭載される機器を例にとって説明したが、本発明は衛星搭載機器に限定されるものではなく、通信機器や計算機などの一般機器にあっても効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0024】
1 オシレータ、2 カウンタ、3 ビットシフタ、4 周期タイミング生成回路、11 衛星制御装置、12a、12b、12i コンポーネント、20a、20b、20i 自動補正機能付き周期タイマ、41 カウンタ、101 基準タイミング信号、102 周期タイミング信号、103 カウント値(A)、104 カウント値(B)、110 内部クロック信号、N 分割数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な基準タイミングを示す基準タイミング信号と、周期的な内部クロックのタイミングを示す内部クロック信号を入力し、前記基準タイミング信号の周期間隔を前記内部クロック信号のクロック数でカウントしたカウント値Aを出力するカウンタと、
前記基準タイミング信号と、前記内部クロック信号を入力し、前記内部クロック信号のクロック数が、前記カウント値Aを所定の分割数Nで除した値のカウント値Bに達する度に周期的にパルスを生成した周期タイミング信号を出力する周期タイミング生成回路と、
からなることを特徴とする自動補正機能付き周期タイマ。
【請求項2】
前記周期タイミング生成回路は、前記基準タイミング信号の現サイクルでカウントした前記内部クロック信号のクロック数が、前記基準タイミング信号の直前のサイクルで算出した前記カウント値Bに達する度に前記周期タイミング信号を出力することを特徴とする請求項1記載の自動補正機能付き周期タイマ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−3870(P2013−3870A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134771(P2011−134771)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】