説明

自脱型コンバインの排ワラ結束部

【課題】 排ワラ結束装置の株元側箇所に、集束中の排ワラの株端を叩き揃える株揃え装置を排ワラ稈長方向に位置調節可能に配備するとともに、排ワラ搬送装置による搬送終端位置を搬送方向に変更調節可能に構成した自脱型コンバインの排ワラ結束部において、株揃え装置と排ワラ搬送装置を高い精度で位置制御して、株端から結束位置までの長さにばらつきの少ない結束を行えるようにする。
【解決手段】 排ワラ結束装置に供給される排ワラの株端位置の検出に基づいて株揃え装置を排ワラ稈長方向に位置調節する株揃え位置自動変更手段を備えるとともに、株揃え装置の位置検出手段を備え、検出された株揃え装置の位置情報に基づいて排ワラ搬送装置20による搬送終端位置を搬送方向に変更する搬送終端位置自動変更手段を備えて、株端から所定距離の位置において排ワラを結束するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置から横倒れ姿勢で搬送されてきた排ワラを所定量づつ結束する排ワラ結束装置の株元側箇所に、集束中の排ワラの株端を往復作動する叩き板で叩き揃える株揃え装置を配備した自脱型コンバインの排ワラ結束部に関する。
【背景技術】
【0002】
自脱型コンバインの排ワラ結束装置としては、コンバイン本機の刈取り部において自動扱深さ制御を行う穀稈搬送装置の位置情報を稈長情報とし、この稈長情報に基づいて株揃え装置を排ワラ稈長方向に自動位置調節するとともに、排ワラ搬送装置による搬送終端位置を搬送方向に自動変更して、株端から所定距離の位置において排ワラを結束するよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−113368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来の排ワラ結束部においては、コンバイン本機で取得された稈長情報に基づいて機体後部に配備された株揃え装置と排ワラ搬送装置とを制御するものであるために、稈長検出された穀稈が排ワラとなって機体後部の排ワラ結束部に搬送されるまでの時間差を考慮した制御が必要であり、この搬送中に穀稈(排ワラ)の搬送遅れ、あるいは、稈長方向へのずれ動きが発生すると、株揃え装置と排ワラ搬送装置の制御精度が低下して、株端から結束位置までの長さにばらつきが発生して後処理に支障をきたすものとなる。
【0004】
特に、排ワラ搬送装置の後方に、放出されてきたワラ束を、株端を下向きにした裾拡がり姿勢で落下させて圃場に起立させるワラ束立体放出装置を配備して、排ワラを刈り跡で地乾しする仕様においては、株端から結束位置までの長さにばらつきがでると、うまく起立しないワラ束が多く発生して、後で、手作業での起立作業を強いられることになる。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、株揃え装置と排ワラ搬送装置を高い精度で位置制御して、株端から結束位置までの長さにばらつきの少ない結束を行えるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、脱穀装置から搬出されてきた横倒れ姿勢の排ワラを排ワラ搬送装置によって挟持して斜め後方に搬送し、排ワラ搬送装置で搬送されてきた排ワラを所定量づつ結束する排ワラ結束装置の株元側箇所に、集束中の排ワラの株端を往復作動する叩き板で叩き揃える株揃え装置を排ワラ稈長方向に位置調節可能に配備するとともに、前記排ワラ搬送装置による搬送終端位置を搬送方向に変更調節可能に構成した自脱型コンバインの排ワラ結束部であって、
前記排ワラ結束装置に供給される排ワラの株端位置の検出に基づいて株揃え装置を排ワラ稈長方向に位置調節する株揃え位置自動変更手段を備えるとともに、株揃え装置の位置検出手段を備え、検出された株揃え装置の位置情報に基づいて前記排ワラ搬送装置による搬送終端位置を搬送方向に変更する搬送終端位置自動変更手段を備えて、株端から所定距離の位置において排ワラを結束するよう構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、株揃え装置は搬送されてきた排ワラの株端位置の検出に基づいて排ワラ稈長方向に位置調節されるので、排ワラ結束装置へ搬送されるまでに稈長方向へのずれ動きが発生したとしても、株揃え装置を株端位置に対応した好適な位置で株揃え作動させることができる。
【0008】
この株揃え装置の位置検出によって株端位置と結束位置との長さが割り出され、この長さが所定長さ範囲から外れていると、斜め後方への搬送を行う排ワラ搬送装置による搬送終端位置が自動的に搬送方向に変更される。例えば、株端位置と結束位置との長さが所定長さ範囲より短いと、排ワラ搬送装置による搬送終端位置が搬送上手(前方)に変更されることで、排ワラ結束装置に対して排ワラが株元側にずらして供給される。逆に、株端位置と結束位置との長さが所定長さ範囲より長いと、排ワラ搬送装置による搬送終端位置が搬送下手(後方)に変更されることで、排ワラ結束装置に対して排ワラが穂先側にずらして供給され、株端位置と結束位置との長さが所定長さ範囲内に修正されるのである。
【0009】
従って、第1の発明によると、株揃え装置と排ワラ搬送装置を高い精度で位置制御して、株端から結束位置までの長さにばらつきの少ない結束を行うことが可能となる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記排ワラ搬送装置の後方に、放出されてきたワラ束を、株端を下向きにした姿勢で落下させて圃場に起立させるワラ束立体放出装置を配備してあるものである。
【0011】
上記構成によると、株端から結束位置までの長さが安定するので、株端を下向きにした裾拡がり姿勢で落下させて圃場に起立させる場合、ワラ束の裾拡がり形状が起立に好適な状態に安定し、倒れ率の低いワラ束立体放出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、自脱型コンバインの全体側面が、図2に、機体後部における排ワラ処理部の側面が、図3に、排ワラ処理部の平面がそれぞれ示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に複数条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、アンローダ付きの穀粒回収タンク6、等が搭載されてコンバイン本機Aが構成されている。
【0013】
刈取り部3には、刈取り部フレーム7が前下がり傾斜姿勢で備えられており、この刈取り部フレーム7の後端基部が、走行機体2の前端部に立設された支持台8に横向きの支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されるとともに、油圧シリンダ9で上下に駆動揺動されるようになっている。
【0014】
刈取り部フレーム7には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す複数台の引起し装置10、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置11、刈取り穀稈を刈幅内の中間部位に搬送して合流する合流用搬送装置12、および、合流された穀稈を脱穀装置5の横外側に備えられたフィードチェーン13の始端部にまで搬送する供給搬送装置14、等が備えられている。
【0015】
前記供給搬送装置14は、穂先係止搬送機構15と、株元挟持搬送機構16と、フィードチェーン13の前方に配備された中継搬送機構17とで構成されており、合流用搬送装置12で合流搬送された立姿勢の穀稈は、供給搬送装置14で後方上方に搬送されながら横倒れ姿勢に変更されてフィードチェーン13の始端部に受け渡されるようになっている。
【0016】
前記株元挟持搬送機構16は、前部支点を中心に上下揺動して搬送終端位置を変更することで、フィードチェーン13への穀稈受け渡し位置を稈長方向に変更して脱穀装置5への穀稈挿入長さを変更調節する機能、いわゆる扱き深さ調節機能が備えられており、搬送される穀稈の長さが図示されない稈長検出手段で検出され、その検出情報に基づいて株元挟持搬送機構16が自動的に位置変更され、刈取り穀稈の稈長変化にかかわらず脱穀装置5への穀稈挿入長さを設定された長さに安定維持する自動扱き深さ制御が実行されるようになっている。
【0017】
図2,図3に示すように、脱穀装置5の後部上方には、フィードチェーン13で挟持されて扱室から搬出されてきた横倒れ姿勢の排ワラを受け取って後方かつ穂先側(機体右方)に向けて斜めに搬送する排ワラ搬送装置20が設けられている。この排ワラ搬送装置20は、縦回し巻回された搬送チェーン21の下側径路に対向して挟持レール22を配備したアッパーチェーン型の株元側搬送機構20Aと、その穂先側に平行に配備された穂先側係止搬送機構20Bとで構成されており、後述のように、株元側搬送機構20Aの挟持レール22を前後方向に伸縮することで搬送終端位置を搬送方向に変更調節することができるよう構成されている。
【0018】
脱穀装置5の後端に円盤型の排ワラカッタCが連結されるとともに、この排ワラカッタCの後方に排ワラ結束装置Bが配備され、排ワラ結束装置Bの株元側に、搬入されてくる排ワラの株端を左右に揺動する叩き板61によって叩き揃える株揃え装置Dが配備されている。さらに、排ワラ結束装置Bの後方には、放出されてきたワラ束Rを受け止めて斜め後方に挟持搬送した後、株端を下向きにした姿勢で落下させて圃場に起立させるワラ束立体放出装置Eが配備されている。
【0019】
図4に示すように、排ワラカッタCの上部には、後支点aを中心に上下揺動可能に流路切換え板30が配備されており、この流路切換え板30を下げて排ワラカッタCの上部入口を閉塞することで、排ワラ搬送装置20によっ搬送されてきた横倒れ姿勢の排ワラを排ワラ結束装置Bに供給し、流路切換え板30を上げて排ワラカッタCの上部入口を開放することで、搬送されてきた排ワラを細断して下方に放出することができるようになっている。
【0020】
前記排ワラ結束装置Bは、横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラを所定量づつ収集して結束し、形成されたワラ束Rを機体後方に放出するものであり、排ワラ穂先側に配備された縦長の伝動ケース31の上下中間部位に排ワラを収集する集束空間Sが形成されている。
【0021】
前記集束空間Sの下側となる伝動ケース4の下部には、搬送されてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むクランク式の掻き込みパッカー32、結束紐供給用のニードル33、集束空間Sに集められた排ワラの集束圧を機械的に感知する感知ドア34、等が装備されるとともに、集束空間Sの上側となる伝動ケース4の上部には、搬送されてきた排ワラを掻き込みパッカー32の作用域に送り込むクランク式の補助パッカー35、集束空間Sの上壁を構成する紐案内板36、ノッタ・ビル方式に構成された周知の結節機構37、クランク式の放出機構38が装備されている。前記補助パッカー35および掻き込みパッカー32は常時駆動されるとともに、下部のニードル33と上部の結節機構37、および、放出機構38は集束圧感知に基づいて間欠的に同調駆動されるようになっている。
【0022】
上記排ワラ結束装置Bの基本的な結束作動を以下に説明する。搬送されてきた排ワラは、先ず補助パッカー35によって後方に送り込まれ、引き続き掻き込みパッカー32の掻き込み作用を受けて集束空間Sに送り込まれる。感知ドア34に作用する集束圧が設定値未満の間は、ケース内装の1回転クラッチ(図示せず)が切られており、ニードル33は集束空間Sの下方に退避した待機位置で停止している。また、このニードル33に同調連動されている結節機構37および放出機構38も待機状態で停止している。
【0023】
集束空間Sに所定量の排ワラが集束されると、掻き込みパッカー32の掻き込み作動に伴って発生した設定値以上の集束圧を受けて感知ドア34が後退変位し、これによって1回転クラッチが起動可能状態になる。そして、次回の掻き込みパッカー32の掻き込み作動(最終回の掻き込み作動)に同調して所定のタイミングで1回転クラッチが入り作動してニードル33が駆動されるとともに結節機構37への駆動力伝達が開始される。
【0024】
掻き込みパッカー32が最終回の掻き込み作動を行うと、排ワラ搬送通路を横断する掻き込みパッカー32で排ワラを前後に押し分けた空間を通ってニードル33が排ワラ搬入経路を下から上に横断移動し、結節機構37の下方に配備されている紐案内板36を通過し、結節機構37の紐ホルダー37bに先端部が保持されている結束紐を集束空間Sの排ワラに前方から巻き付けながら結節機構37に供給する。そして、このニードル33による紐供給作動に同調して結節機構37が作動し、結節ビル37aによる紐の結節、紐ホルダ37bによる供給紐の切断および切断端の保持、等の結節作動が順次行われる。
【0025】
その後、結節機構37と同調作動する放出機構38の放出アーム39がワラ束Rを後方に押し出し移動させ、これに伴って結束紐が結節ビル37aから抜き出されて結び目が形成され、引き続く放出アーム39の後方移動によってワラ束Rが集束空間Sから後方に放出されてゆく。なお、この時点では感知ドア34は下方に後退して集束空間Sの後部出口を開放している。
【0026】
結節機構37で結節作動が完了して結束紐の新しい切断端が紐ホルダー37bにくわえ込み保持されるとニードル33は後退移動し、ニードル33が集束空間Sの下方の待機位置に戻った時点で1回転クラッチが自動的に切られ、ニードル33の駆動、結節機構37の駆動、および、放出機構38の駆動が停止されるとともに、感知ドア34が集束空間Sの後端を閉じる元の感知位置に上昇復帰し、これで1回の結束作動が完了し、後続の排ワラが引き続き集束されてゆく。
【0027】
前記ニードル33には待機位置に向けて復帰回動させる戻しバネ40が装着されており、待機位置に戻って駆動が解除されたニードル33がその復帰作動の反動で上方に回動することが抑制されている。
【0028】
以上のように構成された排ワラ結束装置Bにおける各部の詳細な構成を以下に説明する。
【0029】
図5に示すように、最初に排ワラを掻き込み搬送する補助パッカー35は、ニードル33が位置する結束作用位置に対して排ワラ株元側に適当距離だけ離れた位置に配備されており、横向きに支架されて常時回転駆動されるクランク軸41、このクランク軸41の両端に連結された左右一対のクランクアーム42、装置固定部に支点bを中心にして前後揺動可能に装着された揺動アーム43、および、クランクアーム42の遊端と揺動アーム43の遊端とに亘って枢支連結された板材製のパッカーアーム44とから構成されている。クランクアーム42の回転に伴うクランク作動によってパッカーアーム44の先端が前後に長い回動軌跡をもって循環回動することで、排ワラを掻き込みパッカー32の作用域に向けて搬送するようになっている。なお、図7,図8に示すように、アーム44の内、排ワラ穂先側に位置するパッカーアーム44は左右2連式に構成されている。
【0030】
前記クランク軸41には、クランクアーム径よりも大径に構成された円形ドラム状の回転体45が取り付けられ、クランク構造部にワラ屑などが巻き付くことが阻止されている。回転体45がクランク軸41と一体に回転することで、回転体45の外周面が排ワラを後方に送込む機能を発揮する。
【0031】
左右のパッカーアーム44の間には、リミットスイッチからなる排ワラ存否センサ46が回転体の外径内に隠されて配備されている。この排ワラ存否センサ46は、排ワラ搬入経路に突入して前後に揺動偏位する感知レバー47によって操作されるようになっており、感知レバー47が搬送排ワラに押されて後方に揺動することで排ワラの存在が感知され、排ワラの存在が感知されている間は、後述するように、搬入されてくる排ワラの株端位置検出に基づいて前記株揃え装置Dが自動的に排ワラ稈長に対応した最適な叩き位置となるように電動モータ48によって左右ネジ送り制御され、また、排ワラ搬入が途絶えたことが感知レバー47の前方復帰によって感知されると、株端位置の検出情報に関係なく株揃え装置Dは現在位置に保持されるようになっている。
【0032】
前記収束空間Sの下側に、供給されてきた排ワラを下方から受け止めるように丸棒材からなる排ワラ支持部材50がニードル33の移動軌跡の横側に近接して配備固定されている。この排ワラ支持部材50は集束空間Sの後後部出口から前部入口を越えて前方にまで延出されるとともに、排ワラ支持部材50の収束空間始端部に相当する部位で、かつ、ニードル33の通過軌跡の直後に位置させて落込み段差部50aが屈曲形成されている。
【0033】
この構成によると、排ワラ結束装置Bの入口部に供給されてきた排ワラは下方から排ワラ支持部材50で受け止め支持され、その後、掻き込みパッカー32の掻き込み作用を受けて集束空間Sに押し込み供給されることになるが、集束空間Sは、排ワラ支持部材50の落込み段差部50aよって上下幅が大きくなっているので、掻き込みパッカー32で集束空間Sに押し込み供給された排ワラは落込み段差部50aにおいて落ち込むことになり、それより前方(集束空間の入口方向)への逆流が落込み段差部50aによって阻止される。
【0034】
排ワラ支持部材50より排ワラ株元側には平板からなる搬送デッキ51が配備されるとともに、この搬送デッキ51の排ワラ受け止め高さが、排ワラ支持部材50の落込み段差部50aの底面よりも更に低い位置に設定されており、落込み段差部50aを越えて集束空間Sに送込まれた排ワラの株元側が低い搬送デッキ51で下方から受け止め支持される。このように、穂先側に比べて嵩高い株元側が搬送デッキ51で低く受け止められることで、大量の排ワラを崩れ動くことなく安定して集束することができるようになっている。
【0035】
集束空間Sの上方には、湾曲板バネ材からなる分離バネ52と支持バネ53がそれぞれ後ろ向き片持ち状に配備されている。支持バネ53は搬送デッキ51に対向して配備されて、集束中の排ワラを集束空間Sの後部において受け止めるものであり、集束作動中は排ワラが集束空間Sから後方に逃げるのを阻止するとともに、ワラ束放出時には上方に撓んで逃げることができる。また、分離バネ52は支持バネ53よりも株端側に配備されており、集束空間Sに掻き込み供給される排ワラの通過を上方への弾性変形によって許容するが、ワラ束Rが放出される際に、結束されていない後続の排ワラがワラ束Rに引きずられて出て行くのをバネ先端で掻き取り阻止する。
【0036】
図7に示すように、集束空間Sの上方に位置する紐案内板36の下面には排ワラ持ち込み防止用のリブ36aが左右一対突設され、この一対のリブ36aの間にニードル通過孔36bが形成されている。そして、この紐案内板36に下方から対向するように前記掻き込みパッカー32が配備されている。
【0037】
図6,図7,図9に示すように、掻き込みパッカー32は、前後幅広に形成された左右一対のパッカーアーム32a,32bと、棒材からなる掻き込みアーム32cを備えており、両パッカーアーム32a,32bが紐案内板36における左右の前記リブ36aの外側において案内板下面に対向配備されるとともに、掻き込みアーム32cは前記搬送デッキ51よりも排ワラ株元側に離れた位置で作用するように株元側のパッカーアーム32bから延出されている。
【0038】
パッカーアーム32a,32bの中間部が、常時回転するパッカー駆動軸54に固着したクランクアーム55の遊端部に枢支連結されるとともに、装置固定部に支点c回りに揺動可能に装着した揺動アーム56の遊端部とパッカーアーム32a,32bの下端部とが枢支連結され、クランクアーム55の連続回転によってパッカーアーム32a,32bの先端が所定の軌跡Pa,Pbをもって循環回動して、前記補助パッカー35で送込まれてきた排ワラを集束空間Sに向けて送り込むよう構成されている。
【0039】
株元側パッカーアーム32bの先端が穂先側パッカーアーム32aの先端よりも低く設定され、穂先側パッカーアーム32aの先端軌跡Paが紐案内板36のリブ36aの下端より上方にまで及ぶのに対して、株元側パッカーアーム32bの先端軌跡Pbは紐案内板36のリブ36aの下端近くを通過するようになっている。これによると、穂先側パッカーアーム32aの先端軌跡Paと紐案内板36の下面との最小間隔t1よりも、株元側パッカーアーム32bの先端軌跡Pbと紐案内板36の下面との最小間隔t2が大きいものとなるので、各パッカーアーム32a,32bの先端部で排ワラが紐案内板近くにまで掻き込まれた際、嵩高い排ワラ株元側が過剰な力で紐案内板36およびリブ36aに押付けられることがなくなり、高流量の排ワラ搬送が行われても、掻き込みパッカー32と紐案内板36との間で排ワラ噛み込みロック現象が未然に回避されるようになっている。
【0040】
前記ニードル33は、ドア軸57を中心にして回動可能に装着されるとともに、ニードル駆動軸58に設けられた駆動アーム59とニードル33とが連動リンク60で連動連結されており、ケース内装の1回転クラッチが入れられることでニードル駆動軸58が起動され、駆動アーム59が1回転する内の前半の回転によってニードル33は待機位置から上方に揺動して集束空間Sを越え紐供給作動を行い、駆動アーム59の後半の回転によってニードル33が下方に揺動して元の待機位置にまで復帰作動するよう構成されている。
【0041】
次に、前記株揃え装置Dについて説明する。
【0042】
図10に示すように、株揃え装置Dは、集束空間Sの株元側に縦向き姿勢で配備した前後および上下に幅広の叩き板61を、その前端の縦向き支点dを中心にして左右揺動させるよう構成したものであり、叩き板61を脱着可能に連結した丸パイプ製の支持アーム62の前端が前記縦向き支点dに枢支連結されるとともに、支持アーム62の前後中間部が、六角駆動軸63によって縦軸心e周りに回転駆動されるクランクアーム64に連動連結されている。六角駆動軸63は、排ワラ結束装置Bにおける株元側のサイドフレーム65に横架支承されて排ワラカッターCから動力を受けており、この六角駆動軸63の右端と補助パッカー35を駆動するクランク軸41とがチェーン66を介して連動されている。
【0043】
前記六角駆動軸63には駆動ケース67が左右スライド可能に外嵌装着されており、六角駆動軸63にベベルギヤ連動されて駆動ケース67の下方に突出された縦向きクランク軸68の下端に前記クランクアーム64が連結されている。前記叩き板61を連結支持した支持アーム62には前後長孔69aを備えた連動部材69が連結され、クランクアーム64の遊端ローラ70が前後長孔69aに係合され、クランクアーム64の回動に伴って支持アーム62が一定の角度で左右に揺動されるようになっている。
【0044】
前記駆動ケース67にはブラケット71が連結されており、このブラケット71から前向き片持ち状に延出された支持フレーム72の前部に、前記支持アーム62の前端が前記縦向き支点d周りに揺動可能に枢支連結されている。
【0045】
前記ブラケット71の上部に装着された一対の遊転ローラ73,74が、排ワラ結束装置Bの前端上部に横架固定された角パイプ製の結束フレーム75の下面および背面に転動可能に接触案内されており、株揃え装置D全体が一定の姿勢を維持した状態で六角駆動軸63に沿って左右に移動可能に支持されている。
【0046】
前記結束フレーム75の株元側端部(左端)に連結された前記サイドフレーム64に、前記電動モータ48によって正逆駆動されるネジ軸76が横架装備され、このネジ軸76が、前記ブラケット71に連結された雌ネジ部材77に挿通されており、ネジ軸76の正逆回動によって株揃え装置D全体が排ワラ稈長方向(左右方向)にねじ送り移動されるようになっている。
【0047】
株揃え装置Dにおける前記支持フレーム72の前部には株端位置検出センサS1が装着されている。この株端位置検出センサS1は、所定の小間隔をもって前後揺動可能に配備された一対の接触子78の揺動をそれぞれリミットスイッチ79で検知するよう構成されており、横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラの株端が両接触子78の間に位置するように、リミットスイッチ79の作動状態に基づいて前記電動モータ48が駆動制御されるようになっている。
【0048】
つまり、穂先側(右側)の接触子78だけが排ワラに押圧されて後方に揺動され、穂先側のリミットスイッチ79だけがオン操作されている状態では、排ワラの株端が両接触子78の間に位置しており、この状態が株揃え装置Dが株端に対して好適な位置にあるものとされ、電動モータ48は停止している。両方の接触子78が排ワラに押圧されて後方に揺動され、両方のリミットスイッチ79がオン操作されている状態では、排ワラの株端が叩き揃え好適位置よりも株元側に外れており、株揃え装置Dを株元側に移動させる方向に電動モータ48が作動される。両方の接触子78が排ワラに押されることなく前方復帰位置にあり、両方のリミットスイッチ79がオフ状態にある状態では、排ワラの株端が叩き揃え好適位置よりも穂先側に外れており、株揃え装置Dを穂先側に移動させる方向に電動モータ48が作動される。
【0049】
本発明では、排ワラの株端から結束位置までの長さを設定された目標長さに安定維持するために、前記排ワラ搬送装置20による搬送終端位置が以下のようにして自動調節される。
【0050】
図11に示すように、排ワラ搬送装置20における株元搬送機構20Aの挟持レール22は、固定配備された前後の支持ブラケット80に上下スライド可能、かつ、バネ81によって上方付勢された前後一対の支持ロッド82,83の上端部にそれぞれ枢支連結されており、搬送チェーン21と挟持レール22との間に供給された排ワラを弾性挟持して斜め後方に搬送するよう構成されている。
【0051】
挟持レール22は、丸棒材からなる前部レール22aと、板材を屈曲して中空に構成したレール本体22bとからなり、そのレール本体22bに丸棒材からなる可動レール22cが伸縮自在に挿入支持されている。排ワラ搬送装置20は、排ワラを横向き姿勢で挟持して斜め後方に向けて搬送するので、終端位置を搬送上手(前方)に移動させると、排ワラは株元側に寄せられて排ワラ結束装置Bに供給され、逆に、挟持搬送の終端位置を搬送下手(後方)に移動させると、排ワラは穂先側に寄せられて排ワラ結束装置Bに供給されることになり、可動レール22cを伸縮して搬送終端位置を前後に変更することで、排ワラ結束装置Bに対して排ワラを稈長方向に位置調節して供給することができるのである。なお、可動レール22cの前端には、レール本体22bの内部に沿って前後に転動移動可能な案内ローラ22dが装着されており、可動レール22cが円滑にスライド伸縮されるようになっている。
【0052】
図13,図14に示すように、挟持レール22の後部に下向きに突出固定されたブラケット84に鉤形溝85が形成されるとともに、後側の支持ロッド83の上端に固着された断面形状U形の支持ブラケット86に連結軸87が貫通固定されており、この連結軸87を鉤形溝85に係入した後、挟持レール22の前部を前側の支持ロッド82にピン連結することで、挟持レール22を搬送チェーン21に下方から対向する所定位置に配備することができ、逆に、挟持レール22の前部と支持ロッド82とのピン連結を解除し、挟持レール22を前方および上方に動かして連結軸87から鉤形溝85を外すことで、挟持レール22全体を取外すことができるようになっている。
【0053】
支持ブラケット86における底部の前後にはレリーズワイヤからなる2本の操作ワイヤ88,89のアウタ端が連結されるとともに、支持ブラケット86の内部には前記連結軸87を支軸として案内プーリ90が軸支されており、操作ワイヤ88,89の各アウタ端から導出されたインナワイヤ88a,89aが案内プーリ90に互いに逆向きに巻回されてそれぞれが前方および後方に延出され、各インナワイヤ88a,89aの延出端が前記可動レール22cの前端部と後端部にそれぞれ連結されている。
【0054】
両操作ワイヤ88,89は、コンバイン本機Aの適所に固定配備されたワイヤ操作ケース91に向けて延出され、そのアウタ端部がワイヤ操作ケース91に連結支持されている。図15に示すように、ワイヤ操作ケース91には、回転支軸92を介して回動可能に操作プーリ93が装着されており、各操作ワイヤ88,89のアウタ端部からケース内に導出されたインナワイヤ88a,89aが操作プーリ93に互いに逆向きに巻回されて連結されている。ワイヤ操作ケース91の外側には、正逆転作動する減速機付きの電動モータ94が装備され、その出力によって駆動される出力ピニオンギヤ95と、操作プーリ93の回転支軸92に備えられた入力ピニオンギヤ96とが、中間支軸97を介してワイヤ操作ケース91内に配備された扇形ギヤ98にそれぞれ咬合されており、電動モータ94が作動して操作プーリ93が正逆回動されることで、両操作ワイヤ88,89が背反的に押し引き操作され、これによって可動レール22cが伸縮作動するようになっている。
【0055】
図11に示すように、操作プーリ93が図中で反時計方向に回動されると、一方の操作ワイヤ89が引き操作されるのに対して、他方の操作ワイヤ88が同量だけ弛められ、これによって可動レール22cが短縮操作される。図12に示すように、逆に、操作プーリ93が図中で時計方向に回動されると、他方の操作ワイヤ88が引き操作されるのに対して、一方の操作ワイヤ89が同量だけ弛められ、これによって可動レール22cが伸長操作されるのである。
【0056】
可動レール22cを伸縮作動させて排ワラ搬送装置20による搬送終端位置を変更する前記電動モータ94は制御装置99に接続されている。この制御装置99には、前記株揃え装置Dの作動位置を検出する揃え位置検出センサS2、伸縮位置検出センサS3、および、結束位置設定調節器100が接続されており、これら揃え位置検出センサS2、伸縮位置検出センサS3、および、結束位置設定調節器100からの情報に基づいて電動モータ94が作動制御される。
【0057】
図5、および、図10に示すように、前記揃え位置検出センサS2は、前記結束フレーム75にブラケット101を介して装着した回転式のポテンショメータ102で構成されている。このポテンショメータ102の操作アーム103と、前記ブラケット101にポテンショメータ軸心と略同心の前後向き支点f周りに揺動可能に装着された検出アーム104とがピン係合によって連動連結されるとともに、検出アーム104の下方延出端部に形成した上下長孔105に、前記駆動ケース67から突設した操作ピン106が係合されている。従って、駆動ケース67の左右移動位置に応じて操作アーム103が回動されることで、株揃え装置Dの位置に応じた大きさの出力が揃え位置検出センサS2から得られるようになっている。
【0058】
図11、および、図15に示すように、前記伸縮位置検出センサS3は、ワイヤ操作ケース91の外側にブラケット107を介して装着した回転式のポテンショメータ108で構成されている。このポテンショメータ108の操作アーム109と、前記扇形ギヤ98の側面に装着された検出アーム110とがピン係合によって連動連結されている。従って、操作プーリ93の回動位置に応じて操作アーム109が回動されることで、可動レール22cの伸縮位置に応じた大きさの出力が伸縮位置検出センサS3から得られるようになっている。
【0059】
次に、排ワラ搬送装置20における搬送終端位置の変更制御について説明する。
【0060】
先に説明したように、排ワラ結束装置Bに横倒れ姿勢で供給されてきた排ワラの株端位置が株端検出センサS1によって検出され、その検出情報に基づいて電動モータ48が作動され、株揃え装置Dが好適な叩き作動を行う位置に移動される。この株揃え装置Dの位置が揃え位置検出センサS2で検出され、制御装置99において、株揃え装置Dの位置、すなわち、排ワラの株端位置から結束位置(ニードルの左右方向位置)までの検出長さが算出され、算出された検出長さLと結束位置設定調節器100で設定された目標長さ(許容範囲を含む)とが比較される。
【0061】
検出長さが目標長さと等しければ排ワラ搬送は適正とみなされ、電動モータ94は作動されることはない。検出長さが目標長さより長い場合、検出長さと目標長さとの差に相当する偏差だけ排ワラを穂先側に移動させて排ワラ結束装置Bに供給する必要があり、その偏差だけ排ワラを穂先側に移動させるに必要な可動レール22cの目標伸縮位置が演算され、伸縮位置検出センサS3で検出される伸縮位置が目標伸縮位置に近づくように電動モータ94が作動制御される。逆に、検出長さが目標長さより短い場合、検出長さと目標長さとの差に相当する偏差だけ排ワラを株元側に移動させて排ワラ結束装置Bに供給する必要があり、その偏差だけ排ワラを株元側に移動させるに必要な可動レール22cの目標伸縮位置が演算され、伸縮位置検出センサS3で検出される伸縮位置が目標伸縮位置に近づくように電動モータ94が作動制御される。
【0062】
次に、前記ワラ束立体放出装置Eの構造について説明する。
【0063】
図2,図3,図16に示すように、前記ワラ束立体放出装置Eは、排ワラ結束装置Bから取り出された動力で常時駆動される搬送チェーン111、その搬送面に対して接近離反変位可能に対向配備された挟持レール112、および、搬送終端部を囲むように配備された放出ガイド113とから構成されており、排ワラ結束装置Bから後方に排出されたワラ束Rを、その株元を下向きにして斜め後方に吊り下げ挟持搬送するとともに、挟持レール112に備えた複数(この例では4個)の抵抗突起114によって搬送中のワラ束Rに偏った搬送抵抗を与えることでワラ束Rを自転させ、その自転に伴う遠心力によって株元が拡がらせたワラ束Sを放出ガイドで案内しながら地上に放出することで、ワラ束Rを圃場に裾拡がりの起立姿勢で放置しておくことができるよう構成されており、刈り跡に放出したワラ束Rをそのまま地干しすることができる。なお、前記挟持レール112は、一対の支持ロッド115およびバネ116を介して支持され、ワラ束Rのボリュームに対応して弾性変位可能となっている。ワラ束Rを自転させて確実な裾拡がりを実現するために、前記抵抗突起114を搬送径路中間から搬送方向に長い範囲に亘って配備されている。
【0064】
〔他の実施例〕
(1)上記実施例の株端位置検出センサS1は、株端位置を左右の接触子78の間に位置している状態、両接触子78より穂先側に片寄っている状態、および、両接触子78より株元側に片寄っている状態の3状態として検出する構造としているが、株端位置によって揺動位置が変化する接触アームの揺動位置をポテンショメータなどで検知して、株端位置を連続的に検出形態で実施することもできる。
(2)前記結束位置設定調節器100としては、複数のスイッチを選択操作して前記目標長さL0を複数段に設定する形態や、可変抵抗器によって前記目標長さL0を無段階に設定する形態、などを任意に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】排ワラ処理部の側面図
【図3】排ワラ処理部の平面図
【図4】排ワラ処理部における排ワラカッタと排ワラ結束装置を示す側面図
【図5】排ワラ結束装置および株揃え装置を示す背面図
【図6】排ワラ結束装置の側面図
【図7】排ワラ結束装置の要部を示す一部切欠き背面図
【図8】補助パッカーの横断平面図
【図9】排ワラ結束装置の要部を示す側面図
【図10】株揃え装置の側面図
【図11】排ワラ搬送装置の搬送終端位置調節構造を示す側面図
【図12】排ワラ搬送装置の搬送終端位置調節構造を示す側面図
【図13】搬送終端位置調節構造の要部を示す側面図
【図14】搬送終端位置調節構造の要部を示す縦断正面図
【図15】搬送終端位置調節構造の駆動部を示す横断平面図
【図16】ワラ束立体放出装置の展開側面図
【符号の説明】
【0066】
5 脱穀装置
20 排ワラ搬送装置
61 叩き板
B 排ワラ結束装置
D 株揃え装置
E ワラ束立体放出装置
R ワラ束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置から搬出されてきた横倒れ姿勢の排ワラを排ワラ搬送装置によって挟持して斜め後方に搬送し、排ワラ搬送装置で搬送されてきた排ワラを所定量づつ結束する排ワラ結束装置の株元側箇所に、集束中の排ワラの株端を往復作動する叩き板で叩き揃える株揃え装置を排ワラ稈長方向に位置調節可能に配備するとともに、前記排ワラ搬送装置による搬送終端位置を搬送方向に変更調節可能に構成した自脱型コンバインの排ワラ結束部であって、
前記排ワラ結束装置に供給される排ワラの株端位置の検出に基づいて株揃え装置を排ワラ稈長方向に位置調節する株揃え位置自動変更手段を備えるとともに、株揃え装置の位置検出手段を備え、検出された株揃え装置の位置情報に基づいて前記排ワラ搬送装置による搬送終端位置を搬送方向に変更する搬送終端位置自動変更手段を備えて、株端から所定距離の位置において排ワラを結束するよう構成してあることを特徴とする自脱型コンバインの排ワラ結束部。
【請求項2】
前記排ワラ搬送装置の後方に、放出されてきたワラ束を、株端を下向きにした姿勢で落下させて圃場に起立させるワラ束立体放出装置を配備してある請求項1記載の自脱型コンバインの排ワラ結束部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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