説明

自脱型コンバインの穀稈搬送構造

【課題】 上下揺動可能に支持された刈取り部に刈取った穀稈をフィードチェーンに搬送する供給搬送装置を装備し、この供給搬送装置を後部支点周りに上下揺動して扱き深さ調節を行うよう構成した自脱型コンバインの穀稈搬送構造において、穀稈搬送構造の簡素化を図りながらフィードチェーンへの穀稈供給を良好に行えるようにする。
【解決手段】 供給搬送装置11を、穀稈の穂首付近を挟持して搬送する穂先挟持搬送機構26で構成し、刈取り部の揺動支点Pに横架支承したカウンター軸の前方箇所からカウンター軸の後方箇所に亘って縦回し式の株元搬送チェーン27を配備するとともに、この株元搬送チェーン27の終端をフィードチェーン20の始端部における横側近傍に位置させ、カウンター軸のフィードチェーン側の端部に株元搬送チェーン27を連動連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下揺動可能に支持された刈取り部に、刈取った穀稈を後方に搬送する供給搬送装置を装備し、供給搬送装置で搬送した穀稈を脱穀装置のフィードチェーンに横倒れ姿勢で供給するよう構成し、かつ、供給搬送装置を後部支点周りに上下揺動して扱き深さ調節を行うよう構成した自脱型コンバインの穀稈搬送構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記自脱型コンバインの穀稈搬送構造としては、刈取った穀稈をフィードチェーンに向けて搬送する供給搬送装置を穂先係止搬送機構と株元挟持搬送機構とで構成して、この供給搬送装置を後部支点周りに上下揺動して扱き深さ調節を行うよう構成したものが広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−21226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の穀稈搬送構造では、穂先係止搬送機構と株元挟持搬送機構とからなる供給搬送装置を後部支点周りに上下揺動して扱き深さ調節を行うものであるために、上下動可能な穂先係止搬送機構と株元挟持搬送機構の伝動構造が複雑になるとともに、供給搬送装置全体の重量が相当大きいものとなり、これを上下に揺動操作するアクチュエータに大きい負荷がかかり、アクチュエータの耐久性を低下させる一因となるものであった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、穀稈搬送構造の簡素化を図りながらフィードチェーンへの穀稈供給を良好に行えるようにし、かつ、供給搬送装置を軽快に上下揺動して扱き深さ調節を速やかに行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、上下揺動可能に支持された刈取り部に、刈取った穀稈を後方に搬送する供給搬送装置を装備し、供給搬送装置で搬送した穀稈を脱穀装置のフィードチェーンに横倒れ姿勢で供給するよう構成し、かつ、前記供給搬送装置を後部支点周りに上下揺動して扱き深さ調節を行うよう構成した自脱型コンバインの穀稈搬送構造において、
前記供給搬送装置を、穀稈の穂首付近を挟持して搬送する穂先挟持搬送機構で構成し、刈取り部の揺動支点に横架支承したカウンター軸の前方箇所からカウンター軸の後方箇所に亘って縦回し式の株元搬送チェーンを配備するとともに、この株元搬送チェーンの終端を前記フィードチェーンの始端部における横側近傍に位置させ、前記カウンター軸のフィードチェーン側の端部に前記株元搬送チェーンを連動連結してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、稈長に応じての扱き深さ調節は、穂先挟持搬送機構で構成された供給搬送装置を上下揺動すればよく、穂先係止搬送機構と株元挟持搬送機構とからなる従来の供給搬送装置に比べて伝動構造も簡素で軽量なものとなる。
【0007】
また、供給搬送装置で穂首付近を挟持されて搬送される穀稈は、その株元側を株元搬送チェーンで受け止められて供給搬送装置と同調した速度で後方に送られ、横倒れ姿勢になってフィードチェーンの始端部に受け渡され、所定の扱き深さで脱穀装置に挿入されることになる。
【0008】
従って、第1の発明によると、穀稈搬送構造の簡素化を図りながらフィードチェーンへの穀稈供給を良好に行うことができ、かつ、供給搬送装置を軽快に上下揺動して扱き深さ調節を速やかに行うことが容易となる。
【0009】
第2の発明に係るは、上記第1の発明において、
前記株元搬送チェーンの前記カウンター軸より後方に延出された部分を上下に位置変更可能に構成してあるものである。
【0010】
上記構成によると、通常の刈取り走行時には株元搬送チェーンの後半部を上方位置に設定し、供給搬送装置で搬送されてきた穀稈の株元側を株元搬送チェーンで搬送して、フィードチェーンの始端部に所定の横倒れ姿勢で確実に送り込むことができる。また、手刈りした枕地の穀稈を手作業でフィードチェーンに供給する枕脱穀作業時には、株元搬送チェーンの後半部がフィードチェーンの始端部より低くなるように下方位置に切換える。つまり、この枕脱穀作業時においては、機体走行を停止するとともに刈取り部の駆動を断つので、この刈取り部のカウンター軸に連動連結された株元搬送チェーンも停止することになり、停止した株元搬送チェーンが手刈り穀稈をフィードチェーンの始端部に供給する際の邪魔にならないように下げておくことができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、自脱型コンバインの全体側面図が示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に2条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、穀粒回収タンク6、等が搭載された構造となっている。
【0012】
刈取り部3には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す引起し装置7、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置8、刈取り穀稈を後方に軽く掻き込む補助搬送ベルト9、刈取り穀稈の株元を後方に掻き込んで合流搬送する回転パッカ10、合流された穀稈を後方上方に向けて搬送する供給搬送装置11、等を備えて構成されており、刈取り部3全体が後部の揺動支点Pを中心にして油圧シリンダ12で上下揺動されるようになっている。
【0013】
図2に、このコンバインにおける伝動構造の概略が示されている。図示のように、前記運転部4の座席下方に配備されたエンジン15の動力の一部は正逆転切換え可能な静油圧式の無段変速装置からなる主変速装置16にテンション式の主クラッチ17を介してベルト伝達さるとともに、エンジン15の動力の他の一部はテンション式の脱穀クラッチ18を介して脱穀装置5にベルト伝達され、脱穀装置5に装備された扱胴19、フィードチェーン20、等の全ての機構が定速度で駆動されるようになっている。そして、主変速装置16の変速出力がミッションケース21に入力されて走行系と作業系に分岐され、走行系の動力は図示されない副ギヤ変速手段を介して複数段に変速された後、左右のクローラ走行装置1に伝達される。
【0014】
また、ミッションケース21からPTO軸22介して取り出された作業系の動力は、その正転動力のみが一方向クラッチ23を介して刈取り部3に伝達される。つまり、刈取り部3の揺動基端において前記揺動支点Pと同心に横架支承されたカウンター軸24と前記PTO軸22とがテンション式の刈取りクラッチ25を介してベルト連動され、このカウンター軸24に伝達された動力で前記引起し装置7、刈取り装置8、補助搬送ベルト9、回転パッカ10、および、供給搬送装置11が走行速度と同調した速度で駆動されるようになっている。
【0015】
ここで、前記供給搬送装置11は、搬送チェーン26aと挟持レール26bとで穀稈の穂首付近を挟持して後方上方に搬送する穂先挟持搬送機構26で構成されており、この供給搬送装置11を前記揺動支点P周りに上下揺動して、刈取り穀稈の挟持高さ位置を変更することで、フィードチェーン20に対する穀稈受け渡し位置を稈長方向に変更して脱穀装置5への穀稈挿入長さを変更調節する扱き深さ調節機能が備えられている。
【0016】
また、供給搬送装置11とフィードチェーン20との間には、供給搬送装置11で搬送されてきた穀稈の株元を受止めてフィードチェーン20の始端部に導く株元搬送チェーン27が配備されている。この株元搬送チェーン27は、縦回し巻回された突起付きチェーンで構成されており、前記供給搬送装置11と同調した速度で駆動されるようになっている。
【0017】
つまり、前記カウンター軸24の左端部が延出され、このカウンター軸24の左方延出端に装着された駆動スプロケット28と、カウンター軸24より前方位置に配備された前部遊転スプロケット29と、カウンター軸24より後方位置に配備された後部遊転スプロケット30に亘って前記株元搬送チェーン27が巻回が張設され、もって、供給搬送装置11と株元搬送チェーン27とがそれぞれ走行速度と同調した速度で駆動されるようになっているのである。
【0018】
また、図3に示すように、株元搬送チェーン27を巻回した後部遊転スプロケット30は上下に位置変更可能に構成されており、作業状況に応じて株元搬送チェーン27のカウンター軸24より後方の後半部の高さを変更することができるようになっている。つまり、通常の刈取り走行時には、図3(イ)に示すように、後部遊転スプロケット30を上方位置に設定し、供給搬送装置11で搬送されてきた穀稈の株元側を株元搬送チェーン27で搬送して、フィードチェーン20の始端部に所定の横倒れ姿勢で確実に送り込む。また、手刈りした枕地の穀稈を手作業でフィードチェーン20に供給する枕脱穀作業時には、図3(ロ)に示すように、株元搬送チェーン27の後半部がフィードチェーン20の始端部より低くなるように後部遊転スプロケット30を下方位置に設定する。つまり、この枕脱穀作業時においては、機体走行を停止するとともに刈取りクラッチ25を切って刈取り部3の駆動を断つことになるので、この刈取り部3の駆動系に連動連結された株元搬送チェーン27も停止することになり、停止した株元搬送チェーン27が手刈り穀稈をフィードチェーン20の始端部に供給する際の邪魔にならないように下げておくのである。なお、停止している株元搬送チェーン27は、手差し穀稈の仮り置き台として利用することができる。
【0019】
〔別の実施例〕
【0020】
(1)上記実施例では、株元搬送チェーン27の駆動スプロケット28をカウンター軸24の延出端に直接取付ける場合を示したが、カウンター軸24と駆動スプロケット28との間に別のチェーン伝動機構やギヤ伝動機構が介在されてもよい。
【0021】
(2)株元搬送チェーン27よりも穂先側箇所に、この株元搬送チェーン27と同調駆動される穂先搬送チェーンを平行に配備して、供給搬送装置11で搬送されてきた横倒れ姿勢の穀稈の株元側と穂先側に強制搬送作用を与えて脱穀装置5に送り込むようにして実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】自脱型コンバインの側面図
【図2】伝動系統図
【図3】要部の側面図
【符号の説明】
【0023】
3 刈取り部
5 脱穀装置
11 供給搬送装置
20 フィードチェーン
24 カウンター軸
26 穂先挟持搬送機構
27 株元搬送チェーン
P 揺動支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下揺動可能に支持された刈取り部に、刈取った穀稈を後方に搬送する供給搬送装置を装備し、供給搬送装置で搬送した穀稈を脱穀装置のフィードチェーンに横倒れ姿勢で供給するよう構成し、かつ、前記供給搬送装置を後部支点周りに上下揺動して扱き深さ調節を行うよう構成した自脱型コンバインの穀稈搬送構造において、
前記供給搬送装置を、穀稈の穂首付近を挟持して搬送する穂先挟持搬送機構で構成し、刈取り部の揺動支点に横架支承したカウンター軸の前方箇所からカウンター軸の後方箇所に亘って縦回し式の株元搬送チェーンを配備するとともに、この株元搬送チェーンの終端を前記フィードチェーンの始端部における横側近傍に位置させ、前記カウンター軸のフィードチェーン側の端部に前記株元搬送チェーンを連動連結してあることを特徴とする自脱型コンバインの穀稈搬送構造。
【請求項2】
前記株元搬送チェーンの前記カウンター軸より後方に延出された部分を上下に位置変更可能に構成してある請求項1記載の自脱型コンバインの穀稈搬送構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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