説明

芝刈機

【課題】シュータから集草容器に刈取草を送る際に、ロスを少なくしてスムーズに送ることができ、集草効率を高めた芝刈機を提供することである。
【解決手段】芝草刈り取り用モーア22と、刈取草の収納用コレクタ18と、モーア22とコレクタ18の間に刈取草通路としてシュータ51とを備えた芝刈機のシュータ51の底面52を隣接配置した前方部底面52aと後方部底面52bから構成し、前方部底面52a及び後方部底面52bの各底面(52a,52b)の後端部を支点として上下方向に回動可能な構成として、前方部底面52aが回動を開始した後に、遅れて後方部底面52bが回動を開始する回動機構を備えた。後方部底面52bよりも前方部底面52aが先行して動作することで、これら底板(52a,52b)の回動動作による刈取草のこぼれや刈取草の戻りが改善され、集草ロスを防いで集草作業効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取草を収納するコレクタ(集草容器)に刈り取った草をスムーズに送るシュータ(ダクト)を備えた芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来芝刈機(モーア)を車体前部又は下部に装着した乗用芝刈機は、モーアで刈り取った芝草を車体下方に配したシュータ(ダクト)を介して車体後部のコレクタ(集草容器)にブロアにより送風搬送して集草する構成となっている。コレクタは下記特許文献1に記載の前後2分割の構成のものや下記特許文献2記載の構成の分割しないボックス型のものなどがあるが、いずれもコレクタに溜まった刈取草はコレクタが上下方向に回動することでコレクタに設けられた開口部(特許文献1によれば後側容器部の分割部、特許文献2によれば集草ボックスのダクトとの連通部)から地面に向けて放出される。
【0003】
そして、コレクタに通じるシュータ後方には、刈取草が溜まったり、詰まったりしやすいため、種々の工夫がされている。
例えば特許文献1には、ダクトの後部底面を形成する幅狭の底板と集草容器の前側容器部の底面を形成する幅広の底板とを一体化した平面形状T型の底板部材を設けて、この底板部材を左右向きの支点周りに上下揺動操作可能にした集草装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ダクト底面を形成する底板はダクトに対して各々後端部回りに起伏回動可能に取り付けられた前後複数枚の回動板で構成され、更に当該回動板を相互に連動して起伏回動するように関連させたリンク機構を備えた芝刈機が開示されている。
【特許文献1】特開2007−74957号公報
【特許文献2】特開2006−238799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の集草装置によれば、ダクトの後部底面の底板部材が左右向きの支点周りに前上がりに揺動する(振り上げる)ことで、ダクトからコレクタ(集草容器)に刈取草が案内されるため、ダクト後方に刈取草が溜まりにくくなる。また、特許文献2記載の芝刈機によれば、複数枚の回動板によりダクト底面を塞いで芝刈作業中に刈取草の漏れ出しを防止し、更に刈取草が溜まった箇所の回動板を跳ね上げることで、当該部分の刈取草のみを落とすことができる。
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2記載の構成等により、ある程度はシュータ(ダクト)内の刈取草の堆積による詰まりを防止できる。しかし、ダクトの後部底面の底板部材(特許文献1)や回動板(特許文献2)が跳ね上がるときに、これらの部材(回動板)の特に先端側に堆積した刈取草は、跳ね上がり時の反動でこぼれたり、前方側(シュータ側)に戻される場合もある。したがってこのような場合は、芝生上に刈取草が散乱して芝刈り作業がきれいにできないことや、集草ロスが生じて、集草効率が低下するなどの問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、シュータ(ダクト)からコレクタなどの集草容器に刈取草を送る際に、なるべくロスが生じないようにスムーズに送ることができ、集草効率を高めた芝刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行装置(1,1、7,7)が設けられた車体(2)と、該車体(2)の前部に設けられ芝草を刈り取るモーア(22)と、モーア(22)の後方に設けられモーア(22)により刈り取られた刈取草を収納するコレクタ(18)と、モーア(22)とコレクタ(18)の間に設けられ刈取草の通路であるシュータ(51)とを備えた芝刈機であって、
シュータ(51)の底面(52)は隣接配置した前方部底面(52a)と後方部底面(52b)からなり、前方部底面(52a)及び後方部底面(52b)の各底面(52a,52b)の後端部にそれぞれ一体的に設けられ、前方部底面(52a)及び後方部底面(52b)を個別に上下方向に回動させる各回動軸(53,66)を備え、更に前方部底面(52a)が回動軸(53)を軸心として上方向に回動を開始した後に、遅れて後方部底面(52b)が回動軸(66)を軸心として上方向への回動を開始する回動機構を備えた芝刈機である。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、前方部底面(52a)が上方に回動を開始した後に、遅れて後方部底面(52b)が上方に回動を開始することで、まず前方部底面(52a)上に堆積した刈取草が後方部底面(52b)上に送られる。このとき前方部底面(52a)に堆積した刈取草は前方部底面(52a)の回動動作の勢いによって、後方側(コレクタ側)に送られる。したがって、後方部底面(52b)上の前方側にはあまり刈取草が堆積しないため、後方部底面(52b)が回動しても、その反動で刈取草がモーア(22)側にこぼれたり、戻されることによる集草ロスは改善される。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記回動機構は、シュータ(51)の前方部底面(52a)及び後方部底面(52b)を上下方向に回動操作するための操作レバー部(60,59,61,62)と、前方部底面(52a)の回動軸(53)に一端が連結した連結部材(70,71)と、一端部が前記操作レバー部(60,59,61,62)の先端部に回動可能に連結し、他端部が連結部材(70,71)の回動軸(53)との連結端部の反対側の端部に回動可能に連結し、前記両端部の連結部の間に設けられた回動軸(66)を軸心として回動可能であり、かつ該回動軸(66)に遊嵌され、長穴(65a)を有する反転プレート(65)と、長穴(65a)内を摺動可能な係止ピン(72a)を一端部側に有し、他端部側が反転プレート(65)の回動軸(66)に固着連結し、操作レバー部(60,59,61,62)が動作を開始して反転プレート(65)の回動軸(66)を軸心とする回動に連動して連結部材(70,71)が前方部底面(52a)を回動軸(53)を軸心として上方向に回動させている間に長穴(65a)内を係止ピン(72a)が摺動し、長穴(65a)の端部に係止ピン(72a)が接当すると後方部底面(52b)を回動軸(66)を軸心として回動させる回動軸(66)に固着したメインプレートアーム(72)とを備えた請求項1記載の芝刈機である。
なお、上記請求項2記載の芝刈機の構成において係止ピンを反転プレート(65)側に設け、長穴をメインプレートアーム(72)側に設けた構成にしても良い。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、前方部底面(52a)は操作レバー部(60,59,61,62)の動作開始と共に反転プレート(65)と連結部材(70,71)の回動に伴って上方に回動を開始するが、後方部底面(52b)と一体の回動軸(66)に固着したメインプレートアーム(72)は係止ピン(72a)が反転プレート(65)の長穴(65a)内を摺動するだけで動かない。したがって、その間は後方部底面(52b)は上方への回動を開始しないで前方部底面(52a)上の刈取草が後方部底面(52b)上に移動する。そして、メインプレートアーム(72)を続けてさらに動作させると係止ピン(72a)が長穴(65a)の端部に達し、該係止ピン(72a)が長穴(65a)に接当しながらメインプレートアーム(72)が反転プレート(65)を遊嵌する回動軸(66)に周りで回動させる。このためメインプレートアーム(72)と一体の回動軸(66)が回動して後方部底面(52b)を上方に回動させ、後方部底面(52b)上の刈取草がコレクタ(18)に移動する。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記前方部底面(52a)は、弾性体である請求項1又は2に記載の芝刈機である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、前方部底面(52a)が上方に回動を開始した後に、遅れて後方部底面(52b)が上方に回動を開始することで、まず前方部底面(52a)上に堆積した刈取草が後方部底面(52b)上に送られて、更に刈取草が後方のコレクタ(18)へと送られる。したがって、刈取草のコレクタ(18)への集草がスムーズに行われる。そして、これら底面(52a,52b)の上方への回動動作による刈取草のこぼれや刈取草の戻りが改善され、芝刈り作業がきれいにでき、集草ロスを防いで集草作業効率を高めることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の上記効果に加えて、操作レバー部(60,59,61,62)の操作により、前方部底面(52a)と後方部底面(52b)を時間差を設けて連動させることができるため、複雑な操作を要せず操作性に優れ、また簡易な構成で、このような動作が可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の上記効果に加えて、モーア(22)との接続部である前方部底面(52a)を弾性体にすることで、前方部底面(52a)とシュータ(51)との接触による干渉、衝撃を和らげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態の乗用芝刈機の概略側面図を図1に、一部側面図を図2に示す。
なお、本明細書では芝刈機の前進方向に向かって左、右方向をそれぞれ左、右とし、前進方向を前、後退方向を後ろという。
乗用芝刈機の前輪1と後輪7は主フレームである車体2に支持され、該車体2上には操縦席10、ハンドル11、エンジン3、図示しないHST、伝動ケース等が搭載されている。エンジン3の回転動力はHSTと伝動ケース内に収納された変速装置と前後切換装置等に伝達され、前後輪1、7の駆動を行う走行駆動系を構成している。
【0017】
また、前輪1と後輪7の間の機体腹部下方に芝刈り機(ミッドモーア22)を配置し、このミッドモーア22をリンク機構24を介して車体2に搭載している。
【0018】
ミッドモーア22の前方と後方は車体2にそれぞれ略平行状に設けた前後のリンク25、26から成るリンク機構24により支持される。ミッドモーア22のカバー体であるデッキ27の前方と後方には前後の車輪29、30が設けられている。このうち後方の車輪30はその対地高さを調整可能なゲージ輪である。
【0019】
デッキ27は下方が開放しており、該デッキ体27内には芝刈り用の2連刃又は3連刃を備えた一対の回転ブレード(図示せず)が設置されている。エンジン3からの動力は図示しないフロント伝動ケース、自在継手軸を介してベベルギヤケース内の刈刃駆動軸が駆動され、この駆動軸を介して回転ブレードが駆動される。
【0020】
ミッドモーア22は一端が車体2にリンク25を介して揺動自在に支持され、他端にデッキ27に連結しているリンク26により支持され、デッキ27の後側に設けられた支持部(図示せず)にリンク26が回動自在に連結され、また支持部にはデッキ27の前端部のリンク25を接続した部分に両端が連結されたアーム(図示せず)が設けられている。
【0021】
したがって、リンク機構24によりミッドモーア22を略水平方向に平行に持ち上げて、芝刈り高さが調整される構成である。
【0022】
また、操縦席10の後方には布目材の袋状物からなる通気性のコレクタ(集草容器)18が配置されている。ミッドモーア22とコレクタ18の間には刈り取り後の草の通路であるシュータ51が設けられている。そして、シュータ51内には回転ブレードで刈り取られた草が吹き飛ばされて、刈り取られた草は後方のコレクタ18内に搬送される。
【0023】
上記構成からなる乗用芝刈機において、ミッドモーア22の2連刃又は3連刃からなる回転ブレードで芝等の草を刈り取り、刈り取り後の草をミッドモーア22の腹下部のシュータ51を経て機体後部のコレクタ(収納箱)18に搬送する。
【0024】
ミッドモーア22の回転ブレードの回転時の勢いで刈取草はコレクタ18まで飛ばされるが、途中で失速した草がシュータ51などの内部に落ちて、該シュータ51内で堆積し、コレクタ18が刈草で満杯になる前にシュータ51が詰まってしまうおそれがある。
【0025】
しかし、シュータ51の底板52の後端部を支点として底板52が上下に回動可能な構成とすれば、シュータ51内で刈草が失速しても、底板52が上方に回動することでシュータ51内に溜まった刈草はコレクタ18まで運ばれるので、シュータ51内に刈草が堆積するおそれははい。このようにシュータ51の底板52をクリーニングプレートとして用いることができる。
【0026】
図3には、図1の乗用芝刈機の後方のシュータ51付近の詳細図を示し、更に図4には、図3のシュータ51の底板52a,52bと操作レバー60の作動を説明するための側面図を示す。図4の丸枠部分には、メインプレート(後方部底板)52b付近の簡略正面図(一部断面図)を示す。
そして、本実施形態によれば、シュータ51の底板(底面プレート)52は前方部のサブプレート(前方部底板)52aと該サブプレート52aの後方であってサブプレート52aよりも前後方向の長さが長いメインプレート52bに分割可能であり、サブプレート52aとメインプレート52bが共に各プレート52a,52bの後端部52a,66を支点としてそれぞれ矢印A方向、矢印B方向に回動可能な構成である。
【0027】
メインプレート52bのみだけであると、シュータ51の前方部の相当領域の刈取草(刈草ともいう)を後方のコレクタ18へ送りきれない。しかし、シュータ51の前後方向に回動可能な底面プレートを複数設けることで、シュータ51の前方部に溜まった刈取草を後方に送ることが可能となる。
【0028】
そして、本実施形態によれば、サブプレート52aが上方への回動を開始してからしばらく後にメインプレート52bが上方への回動を開始することを特徴としている。サブプレート52aがメインプレート52bよりも先行して回動することで、シュータ51の前方側のサブプレート52a上の刈取草を後方のメインプレート52b上に移動させた後、更に刈取草を後方のコレクタ18へ送る構成である。
【0029】
図3及び図4に示すように、操作レバー60の基部は回動軸59に固着連結しており、更に回動軸59には接続部材61の一端部が固着連結している。すなわち、回動軸59が回動することで、操作レバー60と接続部材61が一体となって回動軸59を支点として回動する構成である。更に接続部材61の他端部はアーム62の上端部と回動可能に連結し、これら操作レバー60、回動軸59、接続部材61、アーム62等から操作レバー部を構成している。
【0030】
そして機体(シュータ51の側壁など)に適宜に装着された回動軸66の軸心まわりに遊転状態で回動可能に側面視L字型の反転プレート65を設けており、前記アーム62の下端部は反転プレート65に回動可能に連結している。
【0031】
ここで、前方底板であるサブプレート52a及び後方底板であるメインプレート52bの支持構成について説明する。
前記回動軸66に一体的となるようにセレーション嵌合あるいは多角軸の嵌合によるボス66a(図4丸枠部分)を設け、該ボス66aにメインプレート52bの後端側を溶接等の手段によって固着している。
一方、サブプレート52aについては、メインプレート52bの前端部はサブプレート52aの回動軸53部分に連結している。この回動軸53にボス(図示せず)を貫通し、該ボスにゴム板などからなるサブプレート52aを貼着その他の手段によって一体的に設けている。そしてサブプレートアーム71を回動軸53の端部に固着して連結する構成である。
【0032】
また、アーム62の下端部は長穴65aを有する前記反転プレート65の一端部に回動可能に連結している。更に反転プレート65のアーム62との連結部とは回動軸66に対して反対側の端部には連結アーム70の一端部が回動可能に連結しており、連結アーム70の他端部は上記サブプレートアーム71の一端部に回動可能に連結している。サブプレートアーム71の他端部の穴にはシュータ51の左右方向幅に設けられた回動軸53が貫通し、サブプレートアーム71は回動軸53に固着連結している。更に、上述のようにサブプレート52aの基部(後端部)が回動軸53に固着連結している。したがって、反転プレート65の動作に連結アーム70、サブプレートアーム71から成る連結部材が連動して、サブプレートアーム71の端部に固着した回動軸53を介してサブプレート52aは回動する構成である。
【0033】
この反転プレート65には回動軸66を中心として円弧状に形成された長穴65aを設け、この長穴65aには、回動軸66に固着して連動しうるメインプレートアーム72のロックピン72aを係合させている。
【0034】
次に、サブプレート52aとメインプレート52bの作動機構について詳しく説明する。 図4(a)に示すように、まず、操作レバー60を矢印C方向に操作するとレバー支点部60aを中心として接続部材61は矢印D方向(下方)に回動することで連結アーム70が下方に移動し、反転プレート65が矢印F方向に支点部(回動軸66)を中心として回動する。反転プレート65に連結した連結アーム70は反転プレート65の動きに伴って前方側に移動しサブプレートアーム71の後端部(連結アーム70とサブプレートアーム71の接続部)を前方側に押す。そして、サブプレートアーム71は回動軸53を支点として矢印G方向に回動することで、サブプレートアーム71に固着連結した回動軸53は回動し、同様に回動軸53に固着連結したサブプレート52aが矢印A方向に反転する。したがって、サブプレート52a上の刈取草は後方のサブプレート52b上に移動する。このように、操作レバー60の操作開始と共にサブプレート52aは連結アーム70、サブプレートアーム71、回動軸53等の回動部材により回動する。
【0035】
このとき、反転プレート65が矢印F方向に回動しても、長穴65a内のロックピン72aは長穴65aの範囲内を摺動可能であるため、メインプレートアーム72は反転プレート65の動きに規制されない。すなわち、ロックピン72aを連結したメインプレートアーム72の位置は変わらないため、メインプレートアーム72に固着している回動軸66は回動しないのでメインプレート52bも反転しない。
【0036】
しかし、更に操作レバー60を矢印C方向に操作すると、ロックピン72aは長穴65aの端部に達して係止され、長穴65a内を移動できなくなり、反転プレート65の回動動作に規制されて、図4(b)に示すように、メインプレートアーム72は矢印F方向に回動し、メインプレートアーム72に固着連結した回動軸66が回動することで回動軸66に固着連結したメインプレート52bが軸66を支点として矢印B方向に回動、反転する。
【0037】
このように、反転プレート65が回動してサブプレート52aがまずメインプレート52bよりも先行して矢印A方向に回動し、その間ロックピン72aが長穴65a内を移動することでサブプレート52aとメインプレート52bの回動動作に時間差を設け、更に反転プレート65が回動してロックピン72aが長穴65aの端部に接当することで遊びがなくなるとメインプレート52bが矢印B方向に反転する構成である。
【0038】
前方のサブプレート52aが矢印A方向に回動を開始した後に、遅れて後方のメインプレート52bが矢印B方向に回動を開始することで、まず前方のサブプレート52a上に堆積した刈取草が後方のメインプレート52b上に送られる。このとき前方のサブプレート52a上に堆積した刈取草はサブプレート52aの回動動作の勢いによって、後方側(コレクタ18側)に送られる。したがって、メインプレート52b上の前方側にはあまり刈取草が堆積しないため、メインプレート52bが回動しても、その反動でこぼれたり、戻される刈取草による集草ロスは改善される。
【0039】
また、メインプレート52bの先端部がサブプレート52aの回動軸53に連結しているため、メインプレート52bと共にサブプレート52aも上方へ移動する。そして、図4(c)に示すように、メインプレート52bはほぼアーム62の位置まで移動する。 図3及び図4に示すように、サブプレート52aは先端部を前方に向け、後方上り傾斜姿勢(図4(a)の実線)から略垂直状態(図4(a)の一点鎖線)となり、更に略水平状態(図4(b))を経て、図4(c)に示すように側面視で先端部を後方に向け、後方下り傾斜姿勢の状態となる。すなわちサブプレート52aは操作レバー60の操作前の状態から180度以上回動することになる。
【0040】
このように、サブプレート52aが単に図4(a)の一点鎖線に示すようなシュータ51底面に対して略垂直状態まで回動するだけではなく、更に回動して図4(c)に示すように後方下り傾斜姿勢の状態になることで、サブプレート52aがシュータ51内の壁(仕切り板)となるだけでなく、メインプレート52b上の刈取草が前方のミッドモーア22側にこぼれたり戻されないようにする壁や蓋の役目をすることで、メインプレート52b上にあった刈取草はミッドモーア22側に戻されることなく確実に後方のコレクタ18側へ送られる。
【0041】
本構成を採用することにより、刈取草のこぼれや刈取草の戻りが改善され、芝刈り作業がきれいにでき、集草ロスを防いで集草作業効率を高めることができる。また、このように、レバー60によるレバー操作だけでサブプレート52aとメインプレート52bを時間差を設けて連動させることができるため、複雑な操作を要せず操作性に優れ、また簡易な構成でこのような動作が可能となる。
【0042】
また、後方のメインプレート52bの前端部が前方のサブプレート52aの後端部の回動軸53に連結していることで、後方のメインプレート52bと前方のサブプレート52a間に隙間ができないため刈取草のこぼれを防ぐことができる。
【0043】
そして前方のサブプレート52aが回動を開始した後に、遅れて後方のメインプレート52bが回動を開始する場合に、メインプレート52bの回動時にメインプレート52bの前端部が前方のサブプレート52aと接触して引っかかることもなく、スムーズにメインプレート52bが回動してコレクタ18に刈取草を送ることができる。
【0044】
また、サブプレート52aはゴムや樹脂などの弾性体で構成すると良い。サブプレート52aを弾性体で構成することにより、サブプレート52aの動作時に、サブプレート52aの前端部がシュータ51の底面プレート52(サブプレート52aとの接続部分)に接触する際の干渉や衝撃を和らげることができる。したがって、サブプレート52aが傷ついたり壊れることを防止でき、長持ちする。
【0045】
図5には、サブプレート52aを設けない場合の芝刈機の後方部側面図(図5(a))と底蓋プレート付近の底面図(図5(b))を示している。
図5に示すシュータ51は、図3及び図4等に示すサブプレート52aは設けずにメインプレート52bのみが反転動作するものである。
操作レバー60、接続部材61、及びアーム62は図3や図4に示すものと同じであるが、反転プレート65は設けておらず、アーム62の下端部とメインプレートアーム72の一端部が回動可能に連結している。
【0046】
そして、メインプレートアーム72の他端部がシュータ51のメインプレート52bの後端部であってシュータ51の左右方向幅に設けられた回動軸66に固着連結している。したがって、操作レバー60を矢印C方向に操作することで、アーム62が下方に移動してメインプレートアーム72が回動軸66を支点として矢印F方向に回動し、メインプレートアーム72に固着した回動軸66が回動することでメインプレート52bが矢印B方向に回動、反転する。
【0047】
そして、シュータ51のメインプレート52bの反転動作に連動して、同様に反転動作する平面視矩形上の底蓋プレート75をメインプレート52bの先端側(前端)下部に設けても良い。メインプレート52bが回動すると、シュータ51底板の一部であってメインプレート52bで塞いでいた底部に穴が開いて、その穴からメインプレート52bの回動による反動でメインプレート52b上やメインプレート52b手前の刈取草がこぼれて(斜線部Eに示す)、集草ロスが生じる。
【0048】
そこで、図5に示すように、メインプレート52bとシュータ51の下方底部52cとの間に空間部を設け、該空間部を塞ぐように、またメインプレート52bの前方先端側の下部に平面視で一部重複するように平面視矩形状の底蓋プレート75を設ける。底蓋プレート75の基部が回動軸75aに固着連結しており、回動軸75aにはアーム77の一端部が固着連結しており、底蓋プレート75と回動軸75aとアーム77は一体となって回動する構成である。
【0049】
アーム77の他端部にはスプリング(弾性体)76が連結しており、スプリング76は矢印I方向(後方側)へ付勢されているので、アーム77は常にスプリング76により回動軸75aを支点として矢印J方向に付勢されている。したがって、アーム77と一体である底蓋プレート75も回動軸75aを支点として矢印J方向(上方側)に付勢されているが、底蓋プレート75はメインプレート52bにより上側から押さえつけられ、その動きが規制されている。
【0050】
しかし、メインプレート52bが図3及び図4に示すように操作レバー60の操作により反転して矢印B方向(上方)に回動すると、メインプレート52bによる押力が解除されるためスプリング76が矢印I方向に伸びて、アーム77が矢印J方向に回動し、底蓋プレート75も矢印J方向(上方)に回動軸75aを支点として回動する。
【0051】
そして、このようにメインプレート52bの反転時に底蓋プレート75が矢印J方向に回転することで、底蓋プレート75はシュータ51の底蓋の役目をするため、堆積した刈草が底蓋プレート75上に溜まって(点線の斜線部H)、芝上にこぼれることを防止できる。特にメインプレート52b上の前方側に堆積した刈草は、メインプレート52bの反転動作によって、その反動でこぼれる場合があるが、本構成により芝上にこぼれることを防止できる。
なお、スプリング76による機構はアーム77の位置を調節してスプリング76の弾性力を調整することで適宜変更可能であり、底蓋プレート75の回動角度も調整可能である。
【0052】
図6には、図1の乗用芝刈機のコレクタ18の構成を示した斜視図を示す。
機体の後端部に適宜固定され、シュータ51とコレクタ18の間を仕切る仕切板80の左右L型補強枠81,81’を一体化して仕切枠82を構成し、この仕切枠82の上端左右にブラケット83,83を固定し、両ブラケット83,83’間に水平姿勢でかつ回動自在に支持軸84を設ける。
【0053】
上記仕切枠82の下部には左右両側に支点ピン85,85’を備えたL型保持板87,87’を着脱自在に固定する。このL型保持板87,87’の左右側面に断面コの字型の受板89の立ち上がり部89a,89’aが沿って配置され、該立ち上がり部89a,89’aに形成した孔部に支点ピン85,85’を貫通して受板89が該支点ピン85,85’部を中心に、その後端部が上下に回動するよう連結している。また、この受板89の支点(ピン85,85’)に近い側にはロッド90,90’の下端を連結し、ロッド90,90’の上端側を前記支持軸84に固着する揺動アーム91,91’、リンク92,92’からなる揺動機構に連結し、支持軸84の矢印K方向の回動によって受板89は後端部が下動し、反矢印Kの回動によって上動する構成である。
【0054】
前記支持軸84の右側端にはアームブラケット93を連結し、このブラケット93から外方に突出する上下間隔を置いた支持板95,95’(ブラケット93と一体化)にはコレクタレバー20が長手方向にスライド自在に貫通している。また、前記L型補強枠81,81’のうち右側のL型補強枠81には、コレクタレバー20の下端細径部が貫通しうる孔部を形成した下部支持板96を設け、コレクタレバー20が下端支持板96に貫通する支持軸回動ロック状態(コレクタ18の固定状態)と下端支持板96との係合から解除されてコレクタレバー20の操作に基づく支持軸回動可能状態(コレクタ18の回動状態)とが得られる構成としている。
【0055】
前記支持軸84の右側には前記アームブラケット93を後方に延長するコレクタブラケット部93aを設け、支持軸84の左側部のブラケット83’と揺動アーム91’間にはコレクタブラケット97を支持軸84と一体的に設けている。
【0056】
そして、上記コレクタブラケット部93aとコレクタブラケット後端部97aには、コレクタ18側の左右に一対設けた係合ピン100,100’(右側の係合ピン100は図示せず)の受凹部93b、97bを形成し、かつ、係合ピン100,100’を取り付けた受ブラケット101,101’を備え、係合ピン100,100’から前方所定距離隔てた前側位置には前記支持軸84の下方側位置に進入して該支持軸84を保持しうる上方を開放した凹部101a,101’aを設けている。したがって、支持軸84と凹部101a,101’aとの係合及び係合ピン100,100’と受凹部93b、97bとの係合によってコレクタ18の本体は支持軸84に一体的に連結し、これらの係合を外すことにより容易に支持軸84から取り外すことができる。
【0057】
コレクタ18は、左右面、並びに後ろ側の面をメッシュ製の布地で覆うようフレーム部材103により構成され、仕切板80に対向する前側、及び前記受板89で塞がれる箇所は開放部Sとし、上面は適宜に蓋部材(上面カバー)105で覆う構成としている。このように、コレクタ18は、メッシュ製布地で覆われる部分(左右面、並びに後ろ側の面)のほか、前面を仕切板80、底面を受け板89、上面を上面カバー105によって閉空間を形成し、仕切板80に形成した刈草投入口80aから進入する刈草を収納できる構成である。
【0058】
そして、コレクタ18内に所定量の刈草が堆積すると、コレクタレバー20を上方に引き上げて下端支持板96からの係合から解除して矢印L方向に前側回動操作することにより、支持軸84は矢印K方向に回動する。このとき、コレクタ18は支持軸84周りに後方が上方に傾斜すべく回動し、併せて支持軸84の回動に伴って揺動アーム91,91’も矢印K方向に回動し、リンク92,92’が下方に移動することでリンク92,92’に連結するロッド90,90’の位置が下がって受板89を下方に押す。受板89はピン85,85’部でL型保持板87,87’に連結しているが、ロッド90,90’部より後方側はフリーな状態であるため、受板89は支点ピン85,85’部を中心に矢印M方向(下方)に回動でき、この受板89の上面に堆積された刈草を該回動で開放状態となるコレクタ18の下方から落下排出させることができる。
【0059】
なお、この際、刈草の重量が受板89上にかかることで、受板89の下方回動に寄与してコレクタレバー20の回動操作が容易となる。コレクタ18内の刈草の排出が完了すると、コレクタレバー20を矢印L方向とは反対方向に回して元の位置に戻し、下端支持板96の孔に係合させて次回の作業を行う。
【0060】
また、コレクタ18を取り外すときは、上面カバー105の取っ手105aを把持して、まず係合ピン100,100’と受凹部93b、97bとの係合を解除し、次いで、支持軸84と凹部101a,101’aとの係合を解除することで支持軸84から取り外すことができ、コレクタ18内部の清掃や各部の点検が容易である。
【0061】
図7及び図8には、図1に示す乗用芝刈機のコレクタ18を分割可能とした場合のコレクタ18の斜視図を示す。図7は、左側のコレクタ18bを外した場合の全体斜視図であり、図8はフレーム部(骨組み)構造を表した斜視図である。
コレクタ18を分割可能な構成とすると、各々のコレクタ18a,18bをそれぞれ手に持ってコレクタ18a,18b内の刈草を排出することができる。例えば図7に示すように、左右に分割可能な構成とすれば、車体2に接続している仕切板80に装着したまま左右のコレクタ18a,18bから刈取草を同時に排出することも可能となる。
【0062】
ミッドモーア22により刈り取られた草はシュータ51を経て仕切板80に形成された刈草投入口80aからコレクタ18内に入る。刈草投入口80aは仕切板80の中央部に設けてもよいが、刈草投入口80aを図7に示すように左右の一方側に設けると(図7の例では左側)、刈草はまず左側のコレクタ18bに入る。そして、刈取量が増えると、刈草は左側のコレクタ18bから右側のコレクタ18aに移動して、右側のコレクタ18aにも集草される。
【0063】
したがって、刈取量が少ない場合は刈草投入口80aのある左右どちらか一方のコレクタ18a(18b)を仕切板80から取り外して刈取草を排出することができ、排出作業の労力が少なくてすむ。
【0064】
図8にはフレーム部(骨組み)の構造を示す。
前方が開放した右側用コの字型フレーム111、同じく右側コレクタ18aの左側面用コの字型フレーム115、同じく該コの字型フレーム115に隣接する左側コレクタ18aの右側面用コの字型フレーム116、同じく左側用コの字型フレーム112の順に右側から配置され、右側用コの字型フレーム111の上端部と下端部には右側前端部フレーム113が,左側用コの字型フレーム112の上端部と下端部には左側前端部フレーム113’がそれぞれ固着連結している。
【0065】
そして、右側用コの字型フレーム111の上端部と右側コレクタ18aの左側面用フレーム115の上端部には右側コレクタ上部連結フレーム117が固着連結し、左側用コの字型フレーム112の上端部と左側コレクタ18aの右側面用コの字型フレーム116の上端部には左側コレクタ上部連結フレーム119が固着連結している。
【0066】
更に、右側用コの字型フレーム111の下端部と右側コレクタ18aの左側面用フレーム115の下端部には右側コレクタ下部連結フレーム120が固着連結し、左側用コの字型フレーム112の下端部と左側コレクタ18aの右側面用コの字型フレーム116の下端部には左側コレクタ下部連結フレーム121が固着連結している。
【0067】
また、右側コレクタ18aの左側面用フレーム115及び左側コレクタ18aの右側面用フレーム116の上部折れ曲がり部を貫通して右側用コの字型フレーム111と左側用コの字型フレーム112の上部折れ曲がり部に固着連結している後方上部フレーム123、右側コレクタ18aの左側面用フレーム115及び左側コレクタ18aの右側面用フレーム116の下部折れ曲がり部を貫通して右側用コの字型フレーム111と左側用コの字型フレーム112の下部折れ曲がり部に固着連結している後方下部フレーム125などによりフレーム構造を形成している。
【0068】
左右のコの字型フレーム111,112の外側には、それぞれL字型ブラケット130,130’を固定し、両L字型ブラケット130,130’の上方を開放した凹部130a,130’aに支持軸84が係合している。前記右側のL字型ブラケット130の外側にはアームブラケット93を連結し、このブラケット93から外方に突出する上下間隔を置いた支持板95,95’(ブラケット93と一体化)にはコレクタレバー20が長手方向にスライド自在に貫通している。そして、左側のL字型ブラケット130’の外側にはブラケット131を連結し、アームブラケット93とブラケット131間に水平姿勢でかつ回動自在に支持軸84を設ける。このレバー取り付け構造は図6に示すコレクタ18とほぼ同じである。
【0069】
右側のブラケット93の後端部にある凹部93bにはピン132が係合しており、ピン132はL字型ブラケット130から突出する状態に設け、右側用コの字型フレーム111を下方から支持している。同様に、左側のブラケット131の後端部にある凹部131aにはピン132’が係合しており、ピン132’はL字型ブラケット130’ から突出する状態に設け、左側用コの字型フレーム112を下方から支持している。
【0070】
更に、右側コレクタ18aの左側面用フレーム115及び左側コレクタ18aの右側面用フレーム116の上部前方の両フレーム115,116間に空間部を設け、該空間部には支持軸84が貫通した支持アーム126を配置している。支持アーム126の後方端部にはピン129が貫通しており、ピン129の上部を右側コレクタ18aの左側面用フレーム115及び左側コレクタ18aの右側面用フレーム116の下部に接触させる。そして支持軸84には支持アーム126の左右両側のフレーム115,116の上部前方にそれぞれ固着した支持ブラケット127,127’の凹部127a,127’aを係合させることにより、コレクタ18a,18bを支持している。
【0071】
後方上部フレーム123には左右それぞれにコレクタ開閉用の取っ手123a、123bを固着している。例えば、左側コレクタ18aの取っ手123bを持って後方側(上方、矢印P方向)に引くと、支持軸84と支持ブラケット127’の凹部127’a及びL字型ブラケット130’の凹部130’aとの係合が外れると共にピン132’とブラケット131の凹部131aとの係合が外れ、ピン129から右側面用フレーム116が離れることで左側コレクタ18aを容易に支持軸84から取り外すことができる。また、右側コレクタ18aも同様に取り外すことができる。したがって、このようにコレクタ18a,18bを左右単独で支持軸84から取り外すことができる。
【0072】
また、コレクタレバー20を上方に引き上げて矢印L方向に前側回動操作することにより、支持軸84は矢印Q方向に回動する。支持軸84の回動に伴って支持アーム126も支持軸84を支点として回動するが、支持アーム126の後端部に係合したピン129が左側面用フレーム115及び右側面用フレーム116を下方から支持しているため、左右のコレクタ18a,18bも支持軸84周りに後方が上方に傾斜すべく回動する(矢印P方向)。したがって、コレクタレバー20を操作することで、左右のコレクタ18a,18b内の集草を同時に排出することができる。
【0073】
このようにコレクタ18を分割可能な構成とすることで、コレクタ18内が所定の量の堆積状態となっても左右のコレクタ18a,18bを別々に取り外せばコレクタ18全体を一挙に取り外す構成に比べて軽いので、コレクタ18の取扱い性が良好となる、また、一方のコレクタ18a(18b)の少ない容量に集草を多く排出することやコレクタ18a,18b内の草を人の手で高く、好きな位置に捨てる事ができる。
【0074】
そして、コレクタ18の集草状態により、コレクタ18a,18bを左右単独で仕切板80から取り外して別々に集草を排出しても良いし、コレクタレバー20の操作により左右のコレクタ18a,18b内の集草を同時に排出しても良く、さまざまな作業条件、作業状況に応じた使い方ができ、排出作業のバリエーションが広がる。
【0075】
図2において、コレクタ18の底面前方部を開放して、該開放部には、一端部が仕切板80の下部に底板140を設ける。そして、コレクタ18内に、前記底板140の上面に一端部(下端部)が固着連結し、他端部(上端部)がコレクタ18上面内側前方部に固着連結した連動ロッド141を設ける。
【0076】
コレクタレバー20を上方に引き上げて前側回動操作することにより、コレクタ18は支点部143を回動中心として後方が上方に傾斜すべく回動する(矢印P方向)が、連動ロッド141の上端部が連結しているコレクタ18上面内側前方部は、支点部143を回動中心として下方に回動することで、連動ロッド141が下方に移動する。
【0077】
コレクタ18が上方に矢印P方向に回動することで、底板140は、コレクタ18の底面前端部による下方からの支持が解除されて、仕切板80との連結部である軸140aを支点として矢印N方向に下方に回動するが、底板140の上面は連動ロッド141に連結しているため、連動ロッド141の位置に合わせて底板140の下方回動停止位置も規制される。
【0078】
図2によれば、底板140の後端部は地面に接触しても良いが、地面から浮上した位置にあっても良い。
底板140の上面に刈草の草圧がかかり、コレクタ18内の集草した刈草の一部及び、該底板140の上面面積範囲O(図2)の刈草の重量を分担させることでコレクタレバー20の操作に連動して刈草を下方へ落下させるように底板140が回動する。底板140上に受ける刈草の重量(草圧)はコレクタ18を開こうとする方向である矢印N方向に作用するため、コレクタレバー20の操作労力が軽減される。
【0079】
図9には本発明の他の実施形態による乗用芝刈機の一部側面図を示し、図10には図9に示す乗用芝刈機のコレクタ18の斜視図を示す。
また、コレクタ18の上面カバー105が回転自在な構成であると、取り外す必要がなく、作業者は操縦席10に座ったままであるいは乗用芝刈機の機体に乗ったまま後方向きに姿勢を変えることで後方支点の上面カバー105を開くと、作業者に近い前方が大きく開放して清掃作業がスムーズに行える。
【0080】
図10に示すように、コレクタ18の左右側壁を構成する左右のコの字型フレーム111,112の上部に後方へ突出する支持片150を設け、上面カバー105内側に固着した断面コの字型のフレーム151に前記支持片150を挟んでピン152で回動自在に連結させる。上面カバー105はストッパ155によりロックされているが、ストッパ155を外して上面カバー105の把持部(取っ手)105aを上方に持ち上げると、支持片150と断面コの字型のフレーム151の連結部であるピン152を支点として上面カバー105が矢印U方向(図9)に回動して開く構成である。
【0081】
そして、この上面カバー105を内側の目抜き鉄板105bと外側の樹脂カバー105cにより構成して目抜き鉄板105bと樹脂カバー105c間に空気が流れる流路Zの面積(エアフロー面積)を大きくすると共に、目抜き鉄板105bを外側に露出させることで、目抜き鉄板105bを通して上面カバー85の外側からコレクタ18内の草の集草状況が確認できる。
【0082】
このように、目抜き鉄板105bと樹脂カバー105cの間に空気が流れる流路Zを設けることで、コレクタ18内の刈草が一杯近くになっても、後方への刈草搬送の抵抗にならない。したがって、モーア22からコレクタ18までの搬送性能が安定化する。
【0083】
そして、コレクタ18の内部清掃時には、図9に示すように目抜き鉄板105bは樹脂カバー105cと共に上述のように上面カバー105後端部のピン152を支点として矢印U方向に回動するので、このように上面カバー105を開放して清掃作業を行う。一方、通常作業時には上面カバー105を閉じることで、シュータ51からの風は矢印T方向に目抜き鉄板105bの全面を抜けるが樹脂カバー105cに当たって矢印V方向(後方)に向きを変えて通気し、流路Zを経て上面カバー105と左右のコの字型フレーム111,112との空間部Wから下方に排気される。
【0084】
また、更に目抜き鉄板105bと外側の樹脂カバー105cが分割可能であり、それぞれフレーム111,112から着脱自在な構成とすれば、目抜き鉄板105b及び外側の樹脂カバー105cの清掃が容易にできるため、メンテナンス性に優れ、長く使用でき経済的でもある。
【0085】
図11には、本発明の他の実施形態による乗用芝刈機の一部側面図を示す。
図11に示すように、仕切り板80の補強構造をなすように、この仕切り板80の前側に所定間隔隔てた左右一対の前端部フレーム113,113’を設け、機体後部のマスト部材157とこの前端部フレーム113、113’との間に、上下2カ所に連結する上リンク160,160’(160’は右側にある)と下リンク161,161’(161’は右側にある)を回動可能に設けて平行リンク機構を構成する。下リンク161,161’は、側面視L字型をしており、一端部がコレクタ18に回動可能に連結し、他端部がセミリフトロッド163の一端部と連結しており、L字型の曲がり部がピン162により機体後部に回動可能に連結している。セミリフトロッド163の他端部は、セミリフトペダル165の一端部(後端部)に回動可能に連結しており、セミリフトペダル165は車体2と支点部165aで回動可能に連結している。
【0086】
操縦席10に着座した作業者がセミリフトペダル165を踏むと、セミリフトペダル165は支点部165aを回動中心として矢印R方向に回動し、セミリフトペダル165の後端部に連結したセミリフトロッド163が前方(矢印S方向)へ移動する。このセミリフトロッド163の動作に伴って下リンク161,161’は機体後部との連結部(ピン162)を支点として矢印X方向に回動し、上記台形リンク機構により上リンク160,160も同様に矢印X方向に回動することで、各リンク160、161は図11のA位置からB位置へ上昇する。
そして、コレクタ18がB位置に上昇した後、コレクタレバー20の操作により、コレクタ18内の刈草を下方に排出する。
【0087】
本構成を採用することにより、コレクタ18を上方に移動させてからコレクタ18内の刈草を排出することで、より小さい排出面積でも多くの草を排出する事ができる。
図12には、図1の乗用芝刈機のセンサ機構部170の拡大図及びセンサ機構部170を設けたコレクタ18の斜視図を示す。図12(a)にはセンサ機構部170の側面図を示し、図12(b)にはスイッチカバー180部分の平面図を示している。更に図12(c)にはセンサ機構部170を設けたコレクタ18の斜視図を示す。
【0088】
コレクタ18内における刈草投入口83aの近傍下部域は、刈草の堆積が最も遅れる区域になっており、従ってこの部分の草重(刈草の重量)を検出することで、コレクタ18内が満杯になったか否かを推定できる。そして、コレクタ18内の草重を受けやすい部分であってモーア22からコレクタ18に向かう排出風が当たらないブラインド部に草重を検知するセンサー170を設けることで、安定した草重の検知を行うことができる。
【0089】
すなわち、例えばモーア22からコレクタ18への排出風が直接当たらないコレクタ18の底部側面にセンサー170を設ける。センサー170は、仕切板80を貫通する断面略L字型の感知板171と、仕切板80の外側で感知板171の端部171aと接触可能なスイッチ173と、同じく感知板171の外側で感知板171を支持する弾性体175(例えばバネなど)と、弾性体175の弛緩と緊張の張り具合を調整するための鍔体176及びボルト・ナット179などからなり、平面視でコの字状のスイッチカバー180により仕切板80の外側部分の突出部全体が覆われている。
【0090】
感知板171の上面に刈草の草圧がかかると、刈草の重みで感知板171の後端部は矢印Y方向(下方)に下がり点線位置に移動して仕切板80の外側に突出している端部171aがスイッチ173に接触し、電気信号が流れてコレクタ18内の集草量をチェックできる。
【0091】
図12に示す例では、仕切板80の外側で一端部が感知板171に接触して支持する支持アーム181を設け、該支持アーム181の周囲に、弾性体の一例としてバネ175を巻いている。支持アーム181の他端部側は側面視Z型の鍔体176の後端平面部を貫通しており、該鍔体176がバネ175に接触して、バネ175を支持する構成である。更にスイッチカバー180の外側正面に断面L字型の取付片182の一端部が固着しており、取付片182の他端部は鍔体176の下部にナット179により連結している。
【0092】
ボルト・ナット179を緩めて鍔体176を支持アーム181の長手方向に進退させて固定することにより、バネ175の作用長さの設定を変更できる。このように支持アーム181を進退する操作により、バネ175の付勢力を調整して感知板171の感度調整が可能となる。すなわち刈取量が多い場合には、バネ175の設定長さを短くして感知板171が下方に移動しないように感度を鈍くしたり、一方刈取量が少ない場合には、バネ175の設定長さを長くして感知板171が下方に移動しやすいように感度を敏感にすると良い。
【0093】
従来のセンサーは、直接モーア22からの排出草が当たる箇所に設けたため、センサーが傷付きやすく、またセンサーが頻繁に作動して肝心の集草量が分かりにくく安定したセンシングが出来ない。しかし、本構成を採用することで、モーア22からの排出風のブラインド部となる(排出風が当たらない)コレクタ18の刈草投入口83a近傍下方にセンサ機構部170を設けることで、直接モーア22からの排出草が当たることがなく、排出風や直接飛散する刈り草が衝突し難いため、安定したセンシングが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のモーアを備えた乗用芝刈機は、家庭用、産業用の乗用芝刈機として有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態による乗用芝刈機の側面図である。
【図2】図1の乗用芝刈機の一部側面図である。
【図3】図1の乗用芝刈機の後方部分の詳細図である。
【図4】図3のシュータ底板と操作レバーの作動を説明するための側面図である。
【図5】図1の乗用芝刈機にサブプレートを設けない場合の乗用芝刈機の後方部側面図(図5(a))と底蓋プレート付近の底面図(図5(b))である。
【図6】図1の乗用芝刈機のコレクタの構成を示した斜視図である。
【図7】図1に示す乗用芝刈機のコレクタを分割可能とした場合のコレクタの斜視図である。
【図8】図7のコレクタのフレーム部(骨組み)構造を表した斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態による乗用芝刈機の一部側面図である。
【図10】図9の乗用芝刈機のコレクタの斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態による乗用芝刈機の一部側面図である。
【図12】図12(a)はセンサ機構部の側面図であり、図12(b)はセンサスイッチカバー部分の平面図であり、図12(c)はセンサ機構部を設けたコレクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0096】
1 前輪 2 車体
3 エンジン 5 ボンネット
7 後輪 10 操縦席
11 ハンドル 12 前駆軸
13 ジョイント 15 フロントデフ
18 コレクタ 20 コレクタレバー
22 モーア 24 モーアリンク機構
25、26 リンク 27 デッキ
29 前輪(ゲージ用車輪) 30 後輪
51 シュータ 52 底面プレート(底板)
52a サブプレート 52b メインプレート
52c シュータ下方底部 53 サブプレート回動軸
54 支持部材 59 回動軸
60 操作レバー 61 接続部材
62 アーム 65 反転プレート
65a 長穴 66 反転プレート・メインプレート回動軸
66a ボス 70 連結アーム
71 サブプレートアーム 72 メインプレートアーム
72a ロックピン 75 底蓋プレート
75a 回動軸 76 スプリング
77 アーム 80 仕切板
80a 刈草投入口 81,81’L型補強枠
82 仕切枠 83,83’ブラケット
84 支持軸 85,85’ピン
87,87’L型保持板 89 受板
89a,89’a 立ち上がり部
90,90’ロッド 91,91’ 揺動アーム
92,92’リンク 93 アームブラケット
93a コレクタブラケット部 93b 凹部
95,95’支持板 96 下部支持板
97 コレクタブラケット 97a コレクタブラケット後端部
97b 凹部 100,100’係合ピン
101,101’ 受ブラケット 101a,101’a 凹部
103 フレーム部材 105 上面カバー(蓋部材)
105a 取っ手 105b 目抜き鉄板
105c 樹脂カバー
111,112 左右コの字型フレーム
113、113’左右前端部フレーム
115 左側面用コの字型フレーム
116 右側面用コの字型フレーム
117 右側コレクタ上部連結フレーム
119 左側コレクタ上部連結フレーム
120 右側コレクタ下部連結フレーム
121 左側コレクタ下部連結フレーム
123 後方上部フレーム 123a、123b 取っ手
125 後方下部フレーム 126 支持アーム
127,127’支持ブラケット
127a,127’a 凹部 129 ピン
130,130’L字型ブラケット
130a,130’a 凹部 131 ブラケット
131a 凹部 132 ピン
140 底板 140a 軸
141 連動ロッド 143 支点部
150 支持片 151 フレーム
152 ピン 155 ストッパ
157 マスト部材 160,160’上リンク
161,161’下リンク 162 ピン
163 セミリフトロッド 165 セミリフトペダル
165a 支点部 170 センサ機構部(センサー)
171 感知板 171a 感知板端部
173 スイッチ 175 弾性体(バネ)
176 鍔体 179 ボルト・ナット
180 スイッチカバー 181 支持アーム
182 取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1,1、7,7)が設けられた車体(2)と、該車体(2)の前部に設けられ芝草を刈り取るモーア(22)と、モーア(22)の後方に設けられモーア(22)により刈り取られた刈取草を収納するコレクタ(18)と、モーア(22)とコレクタ(18)の間に設けられ刈取草の通路であるシュータ(51)とを備えた芝刈機であって、
シュータ(51)の底面(52)は隣接配置した前方部底面(52a)と後方部底面(52b)からなり、前方部底面(52a)及び後方部底面(52b)の各底面(52a,52b)の後端部にそれぞれ一体的に設けられ、前方部底面(52a)及び後方部底面(52b)を個別に上下方向に回動させる各回動軸(53,66)を備え、更に前方部底面(52a)が回動軸(53)を軸心として上方向に回動を開始した後に、遅れて後方部底面(52b)が回動軸(66)を軸心として上方向への回動を開始する回動機構を備えたことを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記回動機構は、シュータ(51)の前方部底面(52a)及び後方部底面(52b)を上下方向に回動操作するための操作レバー部(60,59,61,62)と、
前方部底面(52a)の回動軸(53)に一端が連結した連結部材(70,71)と、
一端部が前記操作レバー部(60,59,61,62)の先端部に回動可能に連結し、他端部が連結部材(70,71)の回動軸(53)との連結端部の反対側の端部に回動可能に連結し、前記両端部の連結部の間に設けられた回動軸(66)を軸心として回動可能であり、かつ該回動軸(66)に遊嵌され、長穴(65a)を有する反転プレート(65)と、
長穴(65a)内を摺動可能な係止ピン(72a)を一端部側に有し、他端部側が反転プレート(65)の回動軸(66)に固着連結し、操作レバー部(60,59,61,62)が動作を開始して反転プレート(65)の回動軸(66)を軸心とする回動に連動して連結部材(70,71)が前方部底面(52a)を回動軸(53)を軸心として上方向に回動させている間に長穴(65a)内を係止ピン(72a)が摺動し、長穴(65a)の端部に係止ピン(72a)が接当すると後方部底面(52b)を回動軸(66)を軸心として回動させる回動軸(66)に固着したメインプレートアーム(72)と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の芝刈機。
【請求項3】
前記前方部底面(52a)は、弾性体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−131213(P2009−131213A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310726(P2007−310726)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】