説明

芝刈機

【課題】全体としての消費エネルギを少ないものに抑制するようにしながらも、芝の刈残しが少なく良好な芝刈り作業を行うことが可能となる芝刈機を提供する。
【解決手段】植立している芝を切断する粗刈り用モーア8が備えられ、且つ、粗刈り用モーア8にて刈り残した残り芝を切断する仕上げ刈り用モーア9が、粗刈り用モーア8よりも機体前後方向における後部側に位置する状態で備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体を走行させながら植立している芝を刈り取るように構成されている芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の芝刈機として、略帯板状の刈刃を縦軸芯周りで駆動回転させて植立している芝を切断するようにしたロータリーモーアを備えた芝刈機(例えば、特許文献1参照)、及び、螺旋状に形成された回転刈刃とそれに対向する固定刃とからなり、横軸芯周りで回転刈刃を駆動回転させながら、回転刈刃と固定刃との協働により植立している芝を切断するようにしたリールモーアを備えた芝刈機(例えば、特許文献2参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−296900号公報
【特許文献2】特開平11−46544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリーモーアは、略帯板状の刈刃を縦軸芯周りで駆動回転させながら植立している芝を切断するものであり、このようなロータリーモーアを備えた芝刈機では、植立している芝が倒伏している場合には、所望の刈高さで芝を切断することができないおそれがある。そこで、刈刃に起風用の羽根を形成してその羽根により芝を起立させるための風を生起させるようにしたり、芝を起立させるための風を生起させる起風装置を別途備える構成となっており、芝を切断するための動力以外に風を生起させるための余計な動力が必要となり、このように芝を起立させるためには大きい動力が必要となるものであった。
【0005】
つまり、このようなロータリーモーアを備えた芝刈機では、刈残しが発生しないように芝を起立させるために余分の大きな動力が必要となるため、動力源として芝を切断するための動力に比べて必要以上に大きい出力のエンジンや電動モータ等を用いる必要があり、消費エネルギが必要以上に大きくなるという不利な面がある。尚、小型の動力源を用いると、動力が不足して芝の起立が良好に行えず芝の刈残しが多く発生するものとなる。
【0006】
これに対して、リールモーアは、回転刈刃と固定刃との協働により植立している芝を切断するものであるから、このようなリールモーアを備えた芝刈機では、植立している芝が比較的背低であれば、刈残しが発生するおそれが少ない状態で良好に芝を切断させることができる。しかし、植立している芝が背高であれば、回転刈刃と固定刃との間に挟み込むが良好に行えず切断し難いものになって、芝の刈残しが多く発生するという不利がある。
【0007】
本発明の目的は、全体としての消費エネルギを少ないものに抑制するようにしながらも、芝の刈残しが少なく良好な芝刈り作業を行うことが可能となる芝刈機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る芝刈機の第1特徴構成は、植立している芝を切断する粗刈り用モーアが備えられ、且つ、前記粗刈り用モーアにて刈り残した残り芝を切断する仕上げ刈り用モーアが、前記粗刈り用モーアよりも機体前後方向における後部側に位置する状態で備えられている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、仕上げ刈り用モーアが粗刈り用モーアよりも機体前後方向における後部側に位置する状態で、植立している芝を切断する粗刈り用モーアと、その粗刈り用モーアにて刈り残した残り芝を切断する仕上げ刈り用モーアとが備えられている。
【0010】
粗刈り用モーアとしては、刈刃を縦軸芯周りで駆動回転させながら植立している芝を切断するロータリーモーアがある。但し、ロータリーモーアに限らずフレールモーア等を用いることができる。又、仕上げ刈り用モーアとしては、螺旋状に形成された回転刈刃とそれに対向する固定刃とからなり、横軸芯周りで回転刈刃を駆動回転させながら、回転刈刃と固定刃との協働により植立している芝を切断するようにしたリールモーアがある。しかし、リールモーアに限らずバリカン型の刈刃を備えたモーア等も用いることができる。
【0011】
機体前後方向における前部側に位置する粗刈り用モーアにより植立している芝を切断する。このとき、植立している芝が背高であっても、粗刈り用モーアは芝を良好に切断することができる。しかし、芝が倒伏しているような場合には、刈刃を縦軸芯周りで回転させる粗刈り用モーアでは切断し難いものとなり、刈り残しとなるおそれがあるが、粗刈り用モーアより機体前後方向における後部側に位置する仕上げ刈り用モーアにより刈り残っている芝を良好に切断することができるのである。
【0012】
つまり、粗刈り用モーアにより芝刈り作業中に、倒伏芝を起立させるために起立用の大きいな風力の風を生起する必要がなく、芝を起立させるために余計な動力が不要でありながらも、刈残しの無い状態で芝刈り作業を行うことが可能となる。
【0013】
粗刈り用モーア以外に仕上げ刈り用モーアを設けることから、この仕上げ刈り用モーアを駆動するための動力が別途必要である。しかし、この仕上げ刈り用モーアを駆動するための動力は、粗刈り用モーアにより芝を起立させるための動力に比べると小さく、芝刈機全体として消費エネルギは少ないものに抑制することが可能となる。
【0014】
従って、全体としての消費エネルギを少ないものに抑制するようにしながらも、芝の刈残しが少なく良好な芝刈り作業を行うことが可能となる芝刈機を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記粗刈り用モーアが縦軸芯周りで刈刃を回転させるロータリーモーアであり、前記仕上げ刈り用モーアが横軸芯周りで刈刃を回転させるリールモーアである点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、縦軸芯周りで刈刃を回転させるロータリーモーアは、刈刃を縦軸芯周りで回転させることにより芝を切断するので、植立している芝が背高であっても迅速に且つ有効に芝を切断することができる。そして、ロータリーモーアの機体前後方向の後部側にリールモーアが備えられるので、ロータリーモーアによって切断できなかった例えば倒伏している芝等の刈り残しをリールモーアによって的確に切断することができる。
【0017】
又、リールモーアは、回転刈刃と固定刃との協働により植立している芝を切断するものであるから、例えば、植立している芝の間に石等の硬い異物が存在するときには、回転刈刃と固定刃との間に異物が食い込んでしまい、回転刈刃や固定刃が損傷を受けるおそれがある。しかし、リールモーアがロータリーモーアよりも機体前後方向における後部側に位置する状態で備えられるから、ロータリーモーアにて刈刃を縦軸芯周りで回転することにより、植立している芝の間に存在している石等が刈刃の回転にて生じる風によりリールモーアによる芝刈り領域よりも外方に吹き飛ばすことができ、リールモーアが損傷することを回避することができる。
【0018】
つまり、植立している芝が倒伏していたり、植立している芝の間に石等の硬い異物が存在することがあっても、ロータリーモーアとリールモーアとを備えることにより、互いの欠点を補いながら、損傷するおそれの少ない状態で的確に芝を切断することが可能となる。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、前記粗刈り用モーア及び前記仕上げ刈り用モーアが、夫々各別に設けられた電動モータにより駆動される状態で構成されている点にある。
【0020】
第3特徴構成によれば、粗刈り用モーア及び仕上げ刈り用モーアが、夫々各別に設けられた電動モータにより駆動されるから、電動モータの動力を動力損失の生じることない状態で直接に刈刃に伝えることができる。
【0021】
すなわち、例えば、走行機体に備えられるエンジンの動力を利用して伝動ベルト等を用いて動力を供給するようなものに比べて、芝刈機全体としての動力損失を少なくすることで、全体としての消費エネルギを少なくすることが可能となる。
【0022】
本発明の第4特徴構成は、前記粗刈り用モーア及び前記仕上げ刈り用モーアが、共通のハウジング内に収納する状態で備えられている点にある。
【0023】
第4特徴構成によれば、粗刈り用モーア及び仕上げ刈り用モーアが、共通のハウジング内に収納されるから、ハウジングの上下位置を調整することにより、粗刈り用モーア及び仕上げ刈り用モーア夫々の刈高さ調整を同時に行うことができ、それらを各別に調整する等の煩わしさがなく、使い勝手がよいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】芝刈機の全体側面図である。
【図2】芝刈機の全体平面図である。
【図3】制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作業車の一例としての芝刈機について説明する。
図1及び図2に示すように、芝刈機は、キャスタ輪に構成された左右一対の前輪1,1及び回転駆動される走行装置としての左右一対の後輪2,2を備えた走行機体3と、走行機体3の走行に伴って芝を刈り取る芝刈り装置4とを備えて構成されている。芝刈り装置4は、走行機体3における前後輪間の下腹部に四連リンク構造のリンク機構5を介して吊り下げ支持された構造となっており、接地輪6にて接地追従して水平姿勢を維持しながら昇降することができるよう構成されている。
【0026】
前記芝刈り装置4は、上部面7Aとその上部面の周部から下方に延びる状態で形成された縦壁部7Bとを備えた下向き開放状の刈刃ハウジング7が備えられ、その刈刃ハウジング7の内部に、粗刈り用モーアとしてのロータリーモーア8と、仕上げ刈り用モーアとしてのリールモーア9とを収納する状態で構成されている。つまり、図1及び図2に示すように、ロータリーモーア8は、刈刃ハウジング7の内部の機体前後方向における前部側に位置し、リールモーア9はロータリーモーア8よりも機体前後方向における後部側に位置する状態で備えられている。
【0027】
図2に示すように、ロータリーモーア8は、夫々縦軸芯Y1,Y2,Y3周りに回転駆動される3枚の回転刈刃8a,8b,8cが、中央が少し前方に偏位するよう平面視で三角配置されて軸支された構造となっており、各回転刈刃8a,8b,8cの上部側には、刈刃ハウジング7の上部面7aに支持される状態で、夫々の回転刈刃8a,8b,8cを回転駆動する3個の刈刃用電動モータM1,M2,M3が夫々設けられている。つまり、各回転刈刃8a,8b,8cは夫々独立に各刈刃用電動モータM1,M2,M3により回転駆動される構成となっている。
【0028】
各回転刈刃8a,8b,8cは、周知の構成であるから詳述はしないが、略帯板状に形成され、その長手方向の中央部の縦軸芯Y1,Y2,Y3周りで夫々駆動回転される構成となっており、その回転方向上手側の端縁に形成された切断作用部(図示せず)が植立している芝を切断するような構成となっている。
【0029】
そして、このロータリーモーア8は、各回転刈刃8a,8b,8cが平面視(図2参照)において前記各縦軸芯Y1,Y2,Y3周りで右回り方向に回転駆動されるようになっており、刈り取られた芝は、各回転刈刃8a,8b,8cの回転によって生起される搬送風によって刈刃ハウジング7の機体横幅方向の右側に形成された排出口40から機体横側外方に放出させるように構成されている。排出口40の外方側箇所には、刈芝に含まれる塵埃が運転部に向けて飛散するのを防止する上部カバー41が備えられている。
【0030】
図1及び図2に示すように、リールモーア9は、機体横幅方向に並ぶ状態で2つ設けられており、各リールモーア9は、夫々、横向きの軸芯X周りで回転駆動される状態で略螺旋状に形成された回転刈刃10と、位置固定状態で配備される固定刃11とを備えて構成されている。固定刃11は、刈刃ハウジング7における機体後部側に位置する縦壁部7Bの下端部に取り付け固定されている。
左右のリールモーア9は、夫々の回転刈刃10の軸芯Xが同一軸芯上に位置する状態で横幅方向に沿うように設けられている。
【0031】
各リールモーア9,9は、回転刈刃10と固定刃11との協働により芝を切断するように構成され、例えば、倒伏している芝であっても回転刈刃10によって掻き上げながら有効に切断することができる。
【0032】
各リールモーア9,9は夫々、刈刃ハウジング7の上部面7Aに支持されているリールモーア用電動モータM4,M5(以下、リール用電動モータという)により回転駆動されるように構成されている。リール用電動モータM4,M5は、出力軸12を刈刃ハウジング7の内方側に向けて下方側に突出する状態で備えられ、その上下向きの回転軸芯を備える出力軸12と、横向きの軸芯Xを備える回転刈刃10の駆動軸13とが、ウォームギア減速機構14にて連動連結されている。
リールモーア9の回転刈刃10は、固定刃11との協働により芝を切断するものであり、ロータリーモーア8の回転刈刃8a,8b,8cに比べて回転速度が遅くなるから、出力軸12の回転速度をウォームギア減速機構14にて減速させるようにしている。
【0033】
図1及び図2に示すように、走行機体3の前後中央部に運転座席15が設けられ、この運転座席15の下方には、左右一対の後輪2,2を夫々独立で駆動するための左右一対の走行用電動モータ16R,16Lが左右に並ぶ状態で設けられている。又、夫々独立で手動操作自在でかつ左右の後輪2,2に対する変速操作を行う左右一対の変速操作具としての走行変速レバー17R,17Lが、運転座席15の左右両脇に前後揺動可能に配備されている。左右一対の走行用電動モータ16R,16Lが走行変速レバー17R,17Lによって各別に変速操作されることで、左右の後輪2,2が独立的に前後進夫々に変速されるよう構成されている。
【0034】
左右一対の走行用電動モータ16R,16Lにより駆動される左右の後輪2,2の近傍には、左右の後輪2を夫々制動するブレーキBが装備されており、このブレーキBは、運転部ステップに設けられたブレーキ操作具18を操作することにより左右の後輪2を制動するように、ブレーキBとブレーキ操作具18とが機械的に連動連係される構成となっている。
【0035】
左右の後輪2,2を共に同じ速度で前進方向に駆動して直進状態で前進走行を行うことができ、左右の後輪2,2を共に同じ速度で後進方向に駆動して直進状態で後進走行を行うことができる。又、左右の後輪2,2の速度を互いに異ならせることで、走行機体3を任意の方向に旋回移動させることができ、例えば、左右の後輪2,2のいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪2を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらに、左右の後輪2,2を互いに逆方向に駆動することで、走行機体3を左右の後輪2,2のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。
【0036】
左右一対の前輪1,1は、キャスタ輪に構成されて縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるから、左右の後輪2,2の駆動による走行方向に応じて向きが修正されることになる。
【0037】
図1に示すように、走行機体3の後部には、各刈刃用電動モータM1,M2,M3、リール用電動モータM4、M5、及び、走行用電動モータ16R,16Lに駆動用電力を供給するためのバッテリー19が備えられている。図3に示すように、このバッテリー19から左右の各走行用電動モータ16R,16Lに対する電力供給路20,21には、夫々、電圧、電流、あるいは、周波数を変更調整して走行用電動モータ16R,16Lの駆動状態を制御するモータコントローラ22,23が備えられ、各走行用電動モータ16R,16Lとそれに対応するモータコントローラ22,23との間には、夫々、電力供給路20,21を遮断するための電磁開閉器24,25が設けられている。
【0038】
ちなみに、左右の各走行用電動モータ16R,16Lとしては、三相交流式誘導電動モータやブラシレスDCモータ等の種々のものを用いることができ、モータコントローラ22,23は、図示はしないが、インバータ装置等を備えて構成されている。
【0039】
又、バッテリー19から3個の刈刃用電動モータM1,M2,M3及び一対のリール用電動モータM4,M5に対する電力供給路26には、各刈刃用電動モータM1,M2,M3及び一対のリール用電動モータM4,M5の駆動状態を制御するモータコントローラ27が備えられている。そして、刈刃用電動モータM1,M2,M3及び一対のリール用電動モータM4,M5は、三相交流式誘導電動モータやブラシレスDCモータ等の種々のものを用いることができる。
【0040】
図1に示すように、走行機体3の前端部には、バッテリー19に対して電力を補助する補助バッテリー28が搭載されている。この補助バッテリー28は、走行機体3に対して固定された収納ボックス29に収納される状態で設けられ、その収納ボックス29の上部は開閉自在な取り外し可能にネジ固定された蓋体30で覆う構成としている。
このように補助バッテリー28を機体前部に配置することで、例えば、機体後部に集草機等の重量の大きい装置を追加させたような場合であっても、機体の前後重量バランスが後部が重過ぎる状態になることを回避させることができるようにしている。
【0041】
図3に示すように、各走行用電動モータ16R,16Lの夫々に対する目標速度を設定して、各モータコントローラ22,23に制御信号を指令して各走行用電動モータ16R,16Lの作動を制御する制御手段としての制御装置Hが備えられている。この制御装置Hに対する電力は、バッテリー19の電圧(約48V)をDC/DCコンバータ31を介して低電圧(約12V)に変換して供給される。
【0042】
又、戻り付勢されたブレーキ操作具18が踏み込み操作されるとオンし、踏み込み操作されなくなるとオフするブレーキスイッチ32がブレーキ操作具18の近傍に備えられ、又、芝刈り装置4の駆動開始が指令されるとオンし、停止が指令されるとオフするモーア入切スイッチ33が運転座席15の横側に位置する状態で備えられており、それらの検出情報も制御装置Hに入力されている。
【0043】
制御装置Hは、ブレーキスイッチ32がオンすると、左右の電磁開閉器24,25を遮断状態に切り換えて走行用電動モータ16R,16Lの駆動を停止させ、ブレーキスイッチ32がオフすると、左右の電磁開閉器24,25を導通状態に切り換えて走行用電動モータ16R,16Lの駆動を再開させる。又、モーア入切スイッチ33がオンすると、各刈刃用電動モータM1,M2,M3及び一対のリール用電動モータM4,M5を駆動させて、ロータリーモーア8の3個の回転刈刃8a,8b,8c及び各リールモーア9の夫々の回転刈刃10を回転させて芝刈り装置4による芝刈り作業を行い、モーア入切スイッチ33がオフすると、各刈刃用電動モータM1,M2,M3及び一対のリール用電動モータM,M5の回転を停止させて芝刈り装置4による芝刈り作業を停止するように、各刈刃用電動モータM1,M2,M3及び一対のリール用電動モータM4,M5の作動を制御するように構成されている。
【0044】
図3に示すように、各走行変速レバー17R,17Lの操作位置を検出する一対のポテンショメータからなる変速操作位置検出手段としての操作位置検出器34R,34Lが設けられ、この一対の操作位置検出器34R,34Lの検出情報が制御装置Hに入力される構成となっている。
【0045】
又、左右の各走行用電動モータ16R,16Lにて駆動される左右の後輪2,2の回転速度を検出する一対のロータリーエンコーダからなる回転速度検出手段としての回転センサ35R,35Lが設けられ、この回転センサ35R,35Lの検出情報も制御装置Hに入力される構成となっている。
【0046】
そして、制御装置Hは、操作位置検出器34R,34Lにて検出される走行変速レバー17R,17Lの操作位置の検出情報に基づいて、各走行用電動モータ16R,16Lの夫々に対する目標速度を設定して、回転センサ35R,35Lにて検出される左右の後輪2,2の速度が目標速度になるように、各モータコントローラ22,23に制御信号を指令して各走行用電動モータ16R,16Lの作動を制御するように構成されている。
【0047】
すなわち、左右の走行変速レバー17R,17Lを共に前方に同量だけ揺動操作することで、左右の後輪2,2を共に同じ速度で前進方向に駆動して直進前進を行うことができ、左右の走行変速レバー17R,17Lを共に後方に同量だけ揺動操作することで、左右の後輪2,2を共に同じ速度で後進方向に駆動して直進後進を行うことができる。
【0048】
又、左右の走行変速レバー17R,17Lの操作位置を異ならせて左右の後輪2,2の速度を互いに異ならせることで、走行機体3を任意の方向に旋回移動させることができ、左右の後輪2,2のいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪2を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。
【0049】
左右の走行変速レバー17R,17Lを中立位置から互いに逆方向に操作して、左右の後輪2,2を互いに逆向きの回転方向に駆動することで、走行機体3を左右の後輪2,2のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。左右一対の前輪1,1は、キャスタ輪に構成されて縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるから、左右の後輪2,2の駆動による走行方向の変更に追従しながら向きが変更することになる。
【0050】
そして、制御装置Hは、芝刈り装置4による消費エネルギが極力少なくなるように、刈刃用電動モータM1,M2,M3の回転数を制御するように構成されている。
説明を加えると、ロータリーモーア8の回転刈刃8a,8b,8cを高速で回転すると、切断性能は向上するものの大きな駆動力が必要であり、それだけ全体としての消費エネルギが大となる。そこで、極力、消費エネルギを少なくするために、回転刈刃8a,8b,8cの回転速度を低くする方がよいが、回転速度が低くなりすぎると、刈残しが多く発生してリールモーア9,9に対する駆動負荷が過大となるおそれがある。
【0051】
そこで、制御装置Hは、モータコントローラ27にてリール用電動モータM4,M5に通流している電流値を検出して、その電流値にてリールモーア9,9における駆動負荷の大きさを判別するようにして、その検出されるリールモーア9,9における駆動負荷が、設定範囲内に収まるように、刈刃用電動モータM1,M2,M3の回転数を制御するようになっている。このようにして全体としての消費エネルギを極力少なくするようにしている。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、リール用電動モータM4,M5の上下向きの出力軸12と、リールモーア9の駆動軸13とを、ウォームギア減速機構14にて連動連結するものを示したが、例えば、減速用のベベルギア機構にて連動連結するものでもよく、又、リール用電動モータM4,M5を出力軸12が横向きとなる状態で、リールモーア9の横側部であって刈刃ハウジング7の横外側部に位置する状態で配置する構成としてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、ロータリーモーア8及びリールモーア9が、夫々各別に設けられた電動モータM1〜M5により駆動される状態で構成され、走行機体3の後輪2を走行用電動モータ16R,16Lにて駆動する構成を示したが、このような構成に代えて、次のように構成するものでもよい。
ロータリーモーア8及びリールモーア9を電動モータM1〜M5にて駆動する構成とし、走行機体3にエンジン(図示せず)を搭載して、走行機体3の後輪2をエンジンの動力により駆動する構成としてもよい。又、走行機体3の後輪2をエンジンの動力により駆動する構成に加えて、ロータリーモーア8及びリールモーア9をエンジンの動力により駆動する構成としてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、ロータリーモーア8及びリールモーア9が、共通の刈刃ハウジング7内に収納する状態で備えられるものを示したが、ロータリーモーア8とリールモーア9とを夫々各別に異なるハウジングに収納する構成としてもよい。
【0055】
又、ロータリーモーア8とリールモーア9とを夫々各別に異なるハウジングに収納する構成するものでは、ロータリーモーア8とリールモーア9とを走行機体3における前後輪間の下腹部に設ける構成に代えて、次の(3−1),(3―2),(3−3)に記載のように構成するものでもよい。
(3−1)ロータリーモーア8を走行機体3における前後輪間の下腹部に設け、リールモーア9を後輪2の後方側に設ける構成。
(3−2)ロータリーモーア8を走行機体3の前輪1よりも機体前方側に位置する状態で設け、リールモーア9を走行機体3における前後輪間の下腹部に設ける構成。
(3−3)ロータリーモーア8がリールモーア9よりも機体前後方向の前部側に位置する状態で、ロータリーモーア8及びリールモーア9を走行機体3の前輪よりも機体前方側に位置する状態で設ける構成。
【0056】
(4)上記実施形態では、粗刈り用モーアとしてロータリーモーア8を用い、仕上げ刈り用モーアとしてリールモーア9を用いる構成としたが、このような構成に代えて、例えば、粗刈り用モーアとしてフレールモーアを用いるようにしてもよく、又、仕上げ刈り用モーアとしてバリカン型のモーアを用いる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、機体を走行させながら植立している芝を刈り取るように構成されている芝刈機に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
7 ハウジング
8 粗刈り用モーア(ロータリーモーア)
8a,8b,8c 刈刃
9 仕上げ刈り用モーア(リールモーア)
10 刈刃
M1〜M5 電動モータ
X 横軸芯
Y1,Y2,Y3 縦軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立している芝を切断する粗刈り用モーアが備えられ、且つ、前記粗刈り用モーアにて刈り残した残り芝を切断する仕上げ刈り用モーアが、前記粗刈り用モーアよりも機体前後方向における後部側に位置する状態で備えられている芝刈機。
【請求項2】
前記粗刈り用モーアが縦軸芯周りで刈刃を回転させるロータリーモーアであり、前記仕上げ刈り用モーアが横軸芯周りで刈刃を回転させるリールモーアである請求項1記載の芝刈機。
【請求項3】
前記粗刈り用モーア及び前記仕上げ刈り用モーアが、夫々各別に設けられた電動モータにより駆動される状態で構成されている請求項1又は2記載の芝刈機。
【請求項4】
前記粗刈り用モーア及び前記仕上げ刈り用モーアが、共通のハウジング内に収納する状態で備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55(P2013−55A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134456(P2011−134456)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】