説明

苗移植機の畦際植付装置

【課題】
畦際での植付作業を行う際に、苗の植付軌跡を変更し、苗を圃場に植え付けずに回収することのできる苗移植機を提供する。
【解決手段】
苗植装置9の一部の植付装置8による苗植条を形成しない状態に欠条操作する欠条操作具60を設け、この欠条操作具60の操作により、前記苗タンク6が左右横方向へ移動されながらマット苗の繰出作用が行われても、又は、前記植付装置8による植付作用が行われても、土壌面の苗を植付姿勢にしないで欠条状態とする構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多条植形態の苗移植機を用いて条合せをしながら苗植作業を行う畦際植付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多条植形態の苗タンクを左右横方向へ往復移動させながら、各苗タンク毎の繰出マット苗の繰出端縁部を、各植付装置の植付爪で横方向へ掻取り分離しながら保持して、フロートで均平される土壌面に植付ける苗移植機(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−62163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の技術では、畦際作業で条合せを行うときは、畦クラッチを切り操作して、全条中のうちの横端側一部(サイドフロート部による均平土壌面に植付ける)の条数の苗植付装置の苗植作用を停止させるものであるが、しかしながら、苗タンクの左右方向への往復移動は、全タンク幅が一つの苗タンクとして行われており、畦際作業を終えて畦クラッチを入りにしたとき、植付装置が、既に苗が分離されて取り出されている箇所を通過して、苗の植付が行われないことが発生し、この場所に作業者が手作業で苗を植え付けねばならず、作業者の労力が増大する問題がある。
【0005】
また、畦クラッチを切り操作しても整地(代掻)ロータは常時作動しているので、必要以上に泥土を巻き上げたり、大きい泥水流を起こして植付苗を押流すことが多く、欠株発生の原因となり、作業者が手作業で苗を植え直す作業の分、労力が増大する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、苗植伝動ケース(1)を主体とする苗移植機体(2)を支持して土壌面を滑走均平するセンタフロート(3)、及びこの左右両側部のサイドフロート(4)と、後端下り傾斜のタンク面を形成して前記苗移植機体(2)に対して左右横方向へ往復移動しながらこのタンク面に搭載のマット苗を後下端の苗受ガイド(5)へ繰出す苗タンク(6)と、前記苗植伝動ケース(1)の後部にあって各苗タンク(6)から前記苗受ガイド(5)の苗取口(7)へ繰出される苗を分離保持して前記各フロート(3,4)で均平された土壌面に植付ける植付装置(8)等からなる多条植形態の苗植装置(9)を、前輪(10)及び後輪(11)を配置の乗用四輪走行形態の車体(12)の後部に、リフトシリンダ(13)の伸縮によって昇降されるリフトリンク(14)介して連結して、前記センタフロート(3)の上下揺動によって前記リフトシリンダ(13)を伸縮させて苗植装置(9)を昇降させて苗植深さを一定に維持するように昇降制御する苗移植機において、前記苗植装置(9)の一部の植付装置(8)による苗植条を形成しない状態に欠条操作する欠条操作具(60)を設け、この欠条操作具(60)の操作により、前記苗タンク(6)が左右横方向へ移動されながらマット苗の繰出作用が行われる、あるいは前記植付装置(8)による植付作用が行われても、土壌面の苗を植付姿勢にしないで欠条状態とすることを特徴とする苗移植機の畦際植付装置の構成とする。
【0007】
通常の苗植作業位置において、苗受ガイド5の苗取口7に植付装置8を作用させて苗の分離植付を行わせながら、苗タンク6が略一枚の苗タンク6幅相当に亘って左方向へ移動して、折返して右方向へ移動し、これら折返時において繰出ベルト等によってマット苗が一横列分だけ苗受ガイド5上に繰出される。
【0008】
畦際植付作業位置では、欠条操作具60を操作して、苗植付を行わない植付装置8の位置、及び苗植条数等を選択して操作する。この状態で苗移植機を畦際走行して苗植装置9による苗植作用を行うときは、前記各苗タンク6にマット苗が供給された状態で、苗タンク6が苗受ガイド5に沿って左右横方向へ往復移動され、且つ各苗タンク6の苗取口7に対する植付装置9の作動も行われる。
【0009】
しかしながら、前記欠条操作具60によって切替えれた植付装置8は、前記苗取口7から苗の分離取出は行うが正規の苗植付姿勢に植付け作動は行わないで、前記サイドフロート4等による均平土壌面には植付けられないで、別途用意の苗受板や、このサイドフロートの上面等に取出したり、土壌面に一旦植付けても土壌中に埋込む等によって苗植付姿勢に維持させないように欠条状態とする。
【0010】
従って、欠条操作具60によって操作された植付装置8による苗植条を欠条状態として、畦際植付の条合わせを行うものである。
請求項2に記載の発明は、前記苗受ガイド(5)の苗取口(7)部を下降して苗を分離保持して下方の土壌面に亘って植付作動する植付装置(8)の苗植軌跡線(D)を、前記欠条操作具(60)の操作により、前記苗取口(7)部を下降するも、土壌面とは異なる非植付位置に亘って作動する非苗植軌跡線(E)に沿って作動するよう切替えて伝動することを特徴とする請求項1に記載の苗移植機の畦際植付装置とした。
【0011】
前記欠条操作具60の操作により選定された植付装置8の作動は、苗植軌跡線Dの作動から非苗植軌跡線Eに沿う作動に切替えられる。
この非苗植軌跡線Eを作動される植付装置8は、苗受ガイド5の苗取口7部を下降するときは他の植付装置8と同様に、この苗取口7部に繰出されている苗を分離保持して下方へ取り出すが、この苗取出口7部を通過した植付装置8の非苗植軌跡線Eは、前記苗植軌跡線Dによる土壌面位置とは異なる位置へ下降作動して分離保持している苗を解放し、前記サイドフロート4による均平土壌面での正規の苗植付姿勢及び苗植条とはしない欠条状態するものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記植付装置(8)の下動する非植付位置には、前記植付装置(8)によって分離下降された苗を受ける苗受板(61)を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機の畦際植付装置である。
【0013】
前記の欠条操作具60を操作することによって、この植付装置8は苗植軌跡線D、または非苗植軌跡線Eを描いて下動するが、この下動位置には苗受板61が位置して、植付装置8によって降下された苗を受けて土壌面への植付を行わせない。
【0014】
この苗受板61は、前記植付装置8を非苗植軌跡線Eに作動させる形態では、この非苗植軌跡線Eの下支点位置に対向させて配置する、あるいはこれら苗植軌跡線Dや非苗植軌跡線Eの下支点位置に対向して出没するように構成する。
【0015】
更には、この植付装置8の下側に配置のサイドフロート4の上面に苗を受けることができるように、サイドフロート4自体が苗受板61を兼ねる形態とすることもできるものとする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記植付装置8によって土壌面に植付けられた植付苗を、前記欠条操作具60の操作によって覆土する履土器62を設ける前記植付装置(8)によって土壌面に植付けられた植付苗を、前記欠条操作具(60)の操作によって覆土する履土器(62)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の苗移植機の畦際植付装置とする。
【0017】
前記欠条操作具60を操作して覆土器62を作動させる形態では、前記植付装置8によって各苗取口7から分離されて下降される苗は、前記苗植軌跡線D、乃至非苗植軌跡線Eを経て下支点位置の均平土壌面に植付けられるが、この植付けられた苗は、覆土器62によって覆土されて、土壌面下に埋められるため、苗植条を形成しない欠条状態となる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記欠条操作具(60)の操作により、この欠条位置側のサイドフロート(4)を浅く移動調節することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の苗移植機の畦際植付装置とする。
【0019】
前記苗植装置9の畦際苗植作業時に、欠条操作具60を操作することにより、この畦際操作具60を操作して、畦際寄りの欠条位置側のサイドフロート4が浅く滑走するように調節されるので、畦際土壌面を浅く均平して、植付装置8による苗植作用を行わせることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記欠条操作具(60)の操作により、この欠条位置側の代掻サイドロータ(20)の回転伝動を切ることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の苗移植機の畦際植付装置とする。
【0021】
前記苗植装置9の前側に代掻ロータ21を設ける形態にあっては、前記欠条操作具60を操作することにより、この欠条側の植付装置8前方のサイドロータ20の伝動を切ることによって、直ちに苗を植付けない条域の土壌面の代掻作用を防止して、泥土や水の巻上げを少なくし、隣接条の苗植付苗を乱さないようにするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明は、欠条操作具60の切替操作によって、畦際苗植作業の条合わせを簡単に行うことができるが、このとき欠条位置の植付装置8も他の植付条の植付装置8と共に、苗受ガイド5の苗取口7に作動していて、苗の分離、取出作用を行わせるものであるため、後続の全条植付形態に戻したとき、従来のように各苗タンク6相互間に亘る苗取口7における苗分離域の位相合わせを要しないため、簡潔な構成で苗植条合せ作業を簡単且つ容易に行うことができる。
【0023】
また、前記欠条操作によって、苗取口7から分離されて土壌面に正規の植付姿勢の苗として植付けられなかった苗は、補植用の苗として使用することも可能であり、無駄苗が減少する。
【0024】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、条操作具60の操作により欠条すべき植付装置8の非苗植軌跡線Eを、土壌面とは別箇所に作動させるものであるから、苗タンク6の左右横方向の往復移動と、各苗取口7に対する植付装置8の作動との関係は常時一定に維持して、各苗タンク6の苗取口7部での苗分離形態を変えることなくこの分離保持される苗の下降移送位置のみを変えて、欠条状態とするものであるから、これら苗タンク6の移動及び各植付装置8の植付作動を円滑に作動させて、苗取口7における苗位置合せ等の操作を不要として、簡潔な構成として簡単且つ容易な畦際条合せを行うことができる。
【0025】
また、この欠条位置の植付装置8で分離された苗は土壌面へは下降されないため、苗を損傷することを少なくすることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、前記欠条操作具60の操作によって欠条される植付装置8により非植付位置に取出下降される苗は、苗受板61によって受けて貯留保持されるものであるから、苗タンク6の苗取口7から取出された苗であっても損傷を少なくすることができるので、苗植作業後の補植作業等の補助苗として簡単且つ容易に使用することが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、苗タンク6の左右横移動や苗受ガイド5の苗取口7に作動する各植付操作8等の苗植軌跡線D等を切り替える必要がなくなるので、覆土板62のみ付加設定して作動させる形態とすることができる。
【0027】
これにより、土壌中に埋込まれる苗は損傷を受け易く、苗損失となり易いが、苗移植機全体としては構成及び欠条操作を簡単にすることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか1項の発明の効果に加えて、圃場の畦際に沿う土壌面は畦際に接近するほど高く盛り上る傾斜面となることが多く、多条植幅の苗植装置9では、植付装置8の植付条位置によって、苗植付深さが大きく変わり易いものであるが、この畦際植付時には、前記欠条操作具60の操作によって、この畦際の土壌面を均平するサイドフロート4を上昇させて浅く滑走させることによって、前記各植付装置8による苗植付深さを一定に揃えることができる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、欠条操作具60の操作によって、サイドロータ20の駆動回転を止畦際苗植条合せする個所の欠条域の土壌面をサイドロータ20により柔かく掻き崩さないようにして、泥土や水による隣接植付条苗の押倒等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】苗移植機の側面図。
【図2】苗移植機の平面図。
【図3】苗移植機の苗植装置部の要部側面図
【図4】苗植装置部の苗受ガイド部の要部斜視図
【図5】フロート、代掻ロータ、及び後輪部等の配置平面図
【図6】植付装置部の平面断面図
【図7】苗受板を作動させる苗植装置の側面図
【図8】覆土器を作動させる苗植装置の側面図
【図9】サイドフロートを上下動させる形態の斜視図。
【図10】(a)リードカムにクラッチを設けた伝動機構の平面断面図、(b)クラッチの要部拡大図
【図11】苗タンク移動のリードカムをモータで駆動する形態の平断面図
【図12】後輪を上下動する形態の苗移植機の側面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面に基づいて、苗移植機は、前輪10と後輪11を有した四輪走行形態の車体12の後側に、リフトリンク14を介して昇降自在に苗植装置9を装着したもので、この苗植装置9は、苗移植機体2を支持アーム15を介してセンタフロート3とサイドフロート4で支持し、この苗移植機体2の上部に苗タンク6と苗植付装置8を設けて、タンク面に供給するマット苗を後下部へ繰出しながら各フロート3、4で均平した土壌面へ植付ける多条植形態の構成としている。
【0031】
前記車体12は、車体12の中央上部にエンジン27を搭載し、このエンジンカバー28の上側に運転席29を搭載して乗用運転できる。この運転席29の前側には運転フロア30を介してステアリングポスト31、及びこの上端部のステアリングハンドル32を設けて、このステアリングハンドル32によって前輪10を操向することができる。
【0032】
これら運転席29、及びステアリングポスト31の左右外側部にはサイドフロア33を設け、このサイドフロア33の前部外側に補給用の苗を搭載する補助苗載枠34を設けている。
【0033】
また、車体12の前下部にはミッションケース35、及び油圧無段変速装置36を設けて、エンジン29からベルト伝動の入力をこの油圧無段変速装置36で無段主変速し、ミッションケース35内の副変速ギヤで副変速しながら、前記前輪10や、後輪連動軸17を介して後輪11等を伝動して走行することができると共に、PTO軸37を伝動して、前記苗植装置9の苗植伝動ケース1の入力軸38を連動することができる。
【0034】
前記車体12の後端部にはリヤフレーム39を介して施肥装置40を搭載し、この施肥装置40を前記PTO軸37から伝動して、肥料を苗植装置9の苗植付条位置の土壌面に施用することができる。前記リフトリンク14はこのリヤフレーム39の後方に突出させて上下一対の平行リンク機構形態に設け、車体12との間に設けるリフトシリンダ13の伸縮によって上下回動して、このリフトリンク14後端のリンクヒッチ41に対してローリング軸42周りにローリング自在にして、苗移植機体2の幅方向中央部を連結支持させている。
【0035】
前記苗植装置9は、多条植形態であり、左右後輪11間の後部に対向してセンタフロート3を配置し、後輪11の外側の後部に対向してサイドフロート4を配置して、これら各フロート3、4による均平土壌面に苗を植付ける苗条数を四条植形態としている。
【0036】
これら各フロート3、4を装着する苗植伝動ケース1は、左右横方向に沿う入力ケース43と、この後側に分岐突出する植付ケース44とから構成されて、前記入力軸37、及びローリング42部は、この入力ケース43の中央部の前側に設けられ、分離保持する苗を植付ける植付装置8は、この植付ケース44の後端部の左右両側部に突出させて軸装する植付軸45に取付けられて伝動される。
【0037】
この植付軸45に取付けられて回転する回転ケース46の両端部に先端部に苗植爪47を有した植付軸48を設け、この回転ケース46を植付軸45周りに回転することにより、各植付爪ケース48の苗植爪47が、上下方向に長い側面視略楕円形状の苗植軌跡線Dを描いて昇降回転して苗植作動するようにダブルクランク機構形態の構成としている。
【0038】
前記苗タンク6は、前記四条植分のマット苗を収容して左右方向へ往復移動するように前記入力ケース43内の伝動機構によって駆動される。各苗タンク6は左右両側に仕切リブ49を形成してマット苗の繰出を案内する。
【0039】
また、タンク面の下半部には繰出ベルト50を有し、苗タンク6が左端、又は右端へ移動したとき間歇的に駆動されて、前記植付爪47によって分離された苗幅相当量のマット苗を後下方の苗受ガイド5側へ繰出して、このマット苗の後下端を苗受ガイド5に接当させる。
【0040】
前記苗タンク6のタンク面は後端下りの傾斜面に形成されているが、この後下下端部には左右横方向の苗受ガイド5が側断面略L字状形態にして構成され、苗移植機体2の上側面に固定される。このL字状形態の苗受ガイド5は、前記タンク面に沿う底辺部51と、マット苗の苗床前端面を摺接させる前辺部52とを形成し、前記苗タンク6のタンク面前端縁をこの底辺部51部上にのぞませて、左右方向へ移動させる形態である。
【0041】
また、これら苗受ガイド5の各底辺部51、及び前辺部52の内側面にマット苗の苗床部を横移動案内する。さらに、前記各植付装置8の植付爪47の作用する苗取口7が、各苗植付条間隔毎に前記苗受ガイド5に配置形成されている。植付爪47が苗植軌跡線Dの上支点位置から下降するとき、この苗取口7を下動して、マット苗の繰出前端部を植付本数毎分離して保持するように、苗取口7が前辺部52から底辺部51の下半部に亘って切欠形態に形成されている。
【0042】
前記苗タンク6は、苗移植機体2の上側に前上り傾斜の状態に支持されて、苗植伝動ケース1のリードカム53の回転によって左右横方向へ往復移動案内される。この苗タンク6の移動は、苗移植機体2上に配置の前記苗受ガイド5と、一の苗タンク6の前側に沿って配置の支持枠54上端部の支持レール55とによって支持案内される。
【0043】
前記苗移植機体2を支持するセンタフロート3、及びサイドフロート4は、苗移植機体2の下部に横方向に亘って設けられるアーム軸16の周りに上下回動する支持アーム15を介して、この支持アーム15の後端にフロート回動軸18によって回動自在に支持する。この支持アーム15をアーム軸16の周りに回動調節することによって、後端のフロート回動軸18の位置を上下に変更調節して、各フロート3、4の滑走均平位置を高、低に変更することができる。
【0044】
前記センタフロート3のフロート回動軸18周りの上下揺動によって、リフトシリンダ13の油圧回路の昇降制御弁を切替えて、このセンタフロート3の前端部が大きく上動したときは、リフトシリンダ13によって苗植装置9を上昇し、センタフロート3の前端部が大きく下動したときは苗植装置9を下降して、土壌面の深さ変化に拘らず苗植付深さを略一定に維持するように昇降制御する。
【0045】
前記苗植装置9の前側には、各センフロート3、及びサイドフロート4の前方に対向してセンタロータ19、及びサイドロータ20からなる代掻ロータ21を設けて、各フロート3、4による均平位置の土壌面を、この代掻ロータ21によって予め掻き均しておくものである。
【0046】
これら代各ロータ21は、左右一対の伝動ケース22の前端部間に亘ってセンタロータ19のロータ軸23を軸装し、伝動ケース22の後端外側部にサイドロータ20のロータ軸24の内側端部を軸装して、前記車体12側のリヤアクスルハウジング25部から取出される連動軸26を介して伝動回転される。
【0047】
前記代掻ロータ21は、前記サイドロータ20のロータ軸24部を軸受けするロータフレーム63が、前記苗移植機体2の支持枠54に対して、リンク64を介して昇降可能に吊下げられて、このリンク64を支持枠54上部の昇降レバー65で上下回動することによって、昇降調節することができる。
【0048】
また、この代掻ロータ21の伝動ケース22の先端部にはバランススプリング66が連結されて上下自在に吊下げられている。
前記欠条操作具60は、操作レバー形態として、運転席29の横側のサイドスロア33部に設けている。この欠条操作具60を畦際作業出苗植条合せするときは、欠条位置の植付装置8を選択して、正規の苗植付を行わせないようにするものである。この欠条操作具60による欠条操作形態としては、前記苗植付装置8の正規の苗植軌跡線Dを、非苗植軌跡線Eの作動に切替えて作動させる方法(図3、図4、図6)や、苗植軌跡は変らないが、この植付装置8の下支持点位置に苗を受ける苗受板61を作動させて、苗を土壌面に植付けないようにする方法(図7)、及び、苗植付装置8による土壌面に対する苗植付作動を行わせるが、覆土器62を作用させて苗を土壌中へ埋め込方法(図8)等がある。
【0049】
前記苗植軌跡を変更する方法では、図6のように植付軸45周りに回転される回転ケース46内の遊星ギヤ機構70、71を二組配置して、正規の苗植軌跡線Dを遊星ギヤ機構70で作動させ、非苗植軌跡線Eを遊星ギヤ機構71で作動させる形成である。
【0050】
これらの遊星ギヤ機構70、71相互伝動の切替を、前記欠条操作具60によりワイヤー72、シフタアーム73、スプリング75等を介してクラッチ爪74を作動させて行う形態である。この図例では、左右両側のサイドフロート4上に植付装置8が植付ケース44の両側に配置されている。前記欠条操作具60によって左右一対のシフタ73を操作して、クラッチ爪74を同時に切替えて二条毎欠条させる形態としているが、これらクラッチ爪74を各別に切替えて一条毎に欠条させる形態とすることもできる。
【0051】
また、このような欠条操作形態は、左、右両側のサイドフロート4毎に配置の植付装置8による苗植条を欠条単位として欠条操作できる構成として、しかも、苗植進行方向等によって、左、右いずれかの側の植付装置8の欠条操作を選択できる形態としている。
【0052】
このようにして、非苗植軌跡線Eに切替えて作動される植付装置8の下支点部には、サイドフロート4の上面に苗受板61を設けて、この非苗植軌跡線Eの下支点部で苗植爪47から開放される苗を受けて貯留運搬することができる。
【0053】
そして、前記植付装置8の下支点位置に苗受板61を出、退作動させる形態では、図7のように前記左右両側の植付ケース44の下側に苗受板61のアーム76を、支軸77周りに上下回動可能に設けて、この苗受板61を前記欠条操作具60によって上下に切替回動させる。
【0054】
苗受板61を上側に回動させた状態では、植付装置8が苗植軌跡線Dを作動して下支点位置では苗をサイドフロート4で均平した土壌面に植付ける。また、欠条位置に苗受板61を下動させることによって、この苗受板61が苗植軌跡線Dを作動する植付装置8による苗植付位置の土壌中を潜行する形態にあって、この苗植爪47から開放される苗を受けるものである。
【0055】
従って、この状態では植付装置8が正規の苗植軌跡線Dを作動しても、苗は苗受板61に受けられて、土壌面には植付けられない。
また、前記植付装置8による植付苗を覆土器62によって埋める形態は、図8のようにサイドフロート4後部の各植装置8による苗植付位置の後側部において、支軸78周りに上下回動する板材等からんなる覆土器62を設け、この覆土器62を前記欠条操作具60によって上下に切替回動するように連動する。欠条操作時は覆土器62が下動して土壌面を覆土する形態にあり、植付装置8の苗植軌跡線Dの作動で一旦植付けられた苗をこの覆土器62で覆土して土壌中に埋め込んで欠条状態とする。
【0056】
畦際作業において、前記サイドフロート4の均平高さを変更する場合(図9(a)(b)参照)は、畦際側に位置するサイドフロート4の支持アーム15をアーム軸16の周りに上下回動させて、フロート回動軸18によるサイドフロート4の回動軸支点位置を上下に変更することができる。
【0057】
支持アーム15の後端部に上下方向の長穴80を形成し、この長穴80にサイドフロート4のフロート回動軸18の両端部を嵌合させて、このフロート回動軸18両端部をスプリング81を介して長穴80の両端側へ張圧し、このスプリング81力に抗して、前記欠条操作具60でワイヤー72を介してこのフロート回動軸18を引き上げたり、このスプリング81力によって下方へ戻すように構成している。
【0058】
また、このようなサイドフロート4を上下動させる場合には、畦際側と反対側のサイドフロート4の高さ位置を上昇させて、滑走高さを浅くするように切替操作するともできる。サイドフロート4がセンタフロート3に対して高位位置に支持されると畦際上り傾斜の土壌面に沿って走行させながら苗植作業する場合には、各フロート3、4の滑走接地圧を均等化させて安定した苗植姿勢を維持できる。
【0059】
さらに、主として前記図5において、代掻ロータ21を設ける形態においては、欠条操作具60の操作によりサイドロータ20のクラッチ85をワイヤー72連動によって切ることができる。左右のサイドロータ20のロータ軸24の内端部にクラッチ85が設けられて、連動軸26、及びセンタロータ19を連動する伝動ケース22側からの伝動を、クラッチ85によって入り、切りにして、畦際作業で欠条する植付装置8側の代掻作業を停止させるものである。
【0060】
これらクラッチ85が切り操作された側のサイドロータ20の駆動回転は行わないが、このサイドロータ20の接地抵抗によって回転されるが、土壌面を強制的に、不必要に掻き混ぜることはない。
【0061】
次に、主として図10において、前記苗タンク6を左右方向へ移動させるリードカム53の一端にクラッチレバー88によって伝動入り切りされるクラッチ89を設け、このクラッチ89を切りに操作すると、前記植付装置8を駆動しても苗タンク6が左右方向へ移動しない形態である。
【0062】
このように苗タンク6を移動させないで植付装置8を駆動させることができるため、植付装置8に異常が発生したとき、この植付装置8による苗取作動を防止して無駄な苗分離を防止する。前記リードカム53に嵌合案内されて移動するリードメタル90は、苗タンク6の底部に連結して、苗タンク6を一定速度で横方向へ移動する。
【0063】
次に、主として図11において、苗タンク6を左右方向へ移動させるリードカム53を制御モータ91によって正、逆回転するように連動構成し、このモータ91を車体12の左右方向の傾斜角を検出する傾斜センサ92と連動して、傾斜角が例えば17度以上になると、前記リードカム53を回転させて苗タンク6を傾斜側とは反対の方向へ移動させて、苗移植機、または苗植装置としての左右方向の重量バランスを保持するように構成する。
【0064】
このような苗タンク6重量の左右バランス制御を行うときは、リードカム53による苗タンク6の左右移動と、植付装置8による苗植作用を行なわない場合において作動されるものであるから、入力軸38側からこのリートカム53への伝動、及び苗植装置8の伝動を切りにした状態で、モータ91によって駆動制御するものである。
【0065】
苗移植機の畔越え走行時等においては、苗植作動を停止した状態で苗タンク6のみ横移動することができるために、前記傾斜センサ92の検出により、モータ91を駆動制御させて苗タンク6を移動させて機体重心のバランスを維持させることができる。
【0066】
次に、主として図12について、前記後輪11を軸装する左右の各リヤアクスルハウジング25を、車体12側ブラケット93との間に設けるシリンダ94の伸縮によって上下に回動させて、前記傾斜センサ92の検出によって左側、又は右側の車輪11を昇降制御して、車体12を左右水平状に維持して、車体12の横転を防止させる。
【符号の説明】
【0067】
1 苗植伝動ケース
2 苗移植機体
3 センタフロート
4 サイドフロート
5 苗受ガイド
6 苗タンク
7 苗取口
8 植付装置
9 苗植装置
10 前輪
11 後輪
12 車体
13 リフトシリンダ
14 リフトリンク
19 センタロータ
20 サイドロータ
60 欠条操作具
61 苗取板
62 覆土器
D 苗植軌跡線
E 非苗植軌跡線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植伝動ケース(1)を主体とする苗植機体(2)を支持して土壌面を滑走均平するセンタフロート(3)、及びこの左右両側部のサイドフロート(4)と、後端下り傾斜のタンク面を形成して前記苗植機体(2)に対して左右横方向へ往復移動しながらこのタンク面に搭載のマット苗を後下端の苗受ガイド(5)へ繰出す苗タンク(6)と、前記苗植伝動ケース(1)の後部にあって各苗タンク(6)から前記苗受ガイド(5)の苗取口(7)へ繰出される苗を分離保持して前記各フロート(3,4)で均平された土壌面に植付ける植付装置(8)等からなる多条植形態の苗植装置(9)を、前輪(10)及び後輪(11)を配置の乗用四輪走行形態の車体(12)の後部に、リフトシリンダ(13)の伸縮によって昇降されるリフトリンク(14)介して連結して、前記センタフロート(3)の上下揺動によって前記リフトシリンダ(13)を伸縮させて苗植装置(9)を昇降させて苗植深さを一定に維持するように昇降制御する苗植機において、
前記苗植装置(9)の一部の植付装置(8)による苗植条を形成しない状態に欠条操作する欠条操作具(60)を設け、この欠条操作具(60)の操作により、前記苗タンク(6)が左右横方向へ移動されながらマット苗の繰出作用が行われる、あるいは前記植付装置(8)による植付作用が行われても、土壌面の苗を植付姿勢にしないで欠条状態とすることを特徴とする苗植機の畦際植付装置。
【請求項2】
前記苗受ガイド(5)の苗取口(7)部を下降して苗を分離保持して下方の土壌面に亘って植付作動する植付装置(8)の苗植軌跡線(D)を、前記欠条操作具(60)の操作により、前記苗取口(7)部を下降するも、土壌面とは異なる非植付位置に亘って作動する非苗植軌跡線(E)に沿って作動するよう切替えて伝動することを特徴とする請求項1に記載の苗植機の畦際植付装置。
【請求項3】
前記植付装置(8)の下動する非植付位置には、前記植付装置(8)によって分離下降された苗を受ける苗受板(61)を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗植機の畦際植付装置。
【請求項4】
前記植付装置(8)によって土壌面に植付けられた植付苗を、前記欠条操作具(60)の操作によって覆土する履土器(62)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の苗植機の畦際植付装置。
【請求項5】
前記欠条操作具(60)の操作により、この欠条位置側のサイドフロート(4)を浅く移動調節することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の苗植機の畦際植付装置。
【請求項6】
前記欠条操作具(60)の操作により、この欠条位置側の代掻サイドロータ(20)の回転伝動を切ることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の苗植機の畦際植付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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