説明

蓄圧防止機能付Uパッキンおよびシール機構

【課題】流体圧シリンダのロッド部のパッキンにおいて、ロッドパッキンから油膜的に漏れた流体が、ワイパリング等低圧側のパッキンでシールされ2つのパッキン間に溜まる蓄圧現象によるパッキンの摩耗や損傷の不具合の発生を防止するために、蓄圧した圧力流体をロッドパッキンの圧力側に戻すことができるロッドパッキンを提供する。
【解決手段】ロッドパッキンの外周面に軸方向の凸部及びリップ頂部に径方向の凹溝を設けて蓄圧した流体の排出流路を構成し、蓄圧流体をシリンダ内に戻すことによって畜圧を低く維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダのロッドカバー部の内周面に設けられた環状溝に装着されて流体圧力を密封するロッド部密封用のUパッキンおよびシール機構に関し、特に、高圧の条件下において高頻度で使用される油圧ブレーカのピストンロッド用の蓄圧防止機能を備えるロッドパッキンに好適に用いることができるUパッキンおよびシール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧を用いた流体圧シリンダのロッドパッキンには、ピストンロッドの戻り時には設定圧力の上限に近い圧力が作用するが、ピストンロッドが出るときにはピストンのボトム側に圧力が作用し、ロッドパッキンにはロッド側の配管抵抗により発生する比較的低い圧力が作用する。
【0003】
流体圧シリンダでも、高圧、高速、高頻度の条件で使用されるシリンダのロッドパッキンとして、その優れた物性から耐摩耗性および耐圧性に優れたポリウレタンゴムが主として使用されようになってきた。ポリウレタンゴム製のロッドパッキンは、リップの相手面に対する接触面圧が高いことからシール性に優れるが、発熱による物性(圧縮永久ひずみ等)の低下がNBR等に比べて悪いため、僅かな油の漏れの累積がロッドパッキンとワイパリングのオイルリップとの間で蓄圧現象を進行させ、ロッドパッキンやワイパリングの損傷、さらにはワイパリングの飛び出しや破損に至ることがあった。
【0004】
ワイパリングのオイルリップを設けないシングルリップタイプのワイパリングは、ロッドの油膜を掻き取ることがないので蓄圧は発生しないが、ロッド表面の油膜が付着した塵埃等に異物と共に掻き取られ、ロッドの一部にリング状に溜まることの繰返しによって、オイルリングが大きくなり滴下して油漏れに至る。
【0005】
オイルリップによる蓄圧を避ける方法として、ロッドパッキンとワイパリングの間に溜まった流体をドレンとしてタンク等に導く対策も行われるが、この対策は、設備用の機械には適用できるものの、産業車輌や建設機械へ適用するとドレン配管数の増加といった問題があり、現実的ではない。
【0006】
特許文献1には、ワイパリングのオイルリップに小孔を設け、オイルリップによりロッド表面の油膜を掻き取り一定量の油を溜め、油膜としてシリンダ内部に戻す機能を維持させながら、溜まった油を、小孔を通し逃がすことによって蓄圧によるパッキンやワイパリングの損傷を防止する発明が開示されている。
【0007】
このような、高圧、高速、高頻度条件での使用におけるロッドパッキンのシール性の低下を補うため、ロッドパッキンの圧力側に別途高圧シールを併用する方法が用いられてきた。このようなシールの例として、合成樹脂製の片側側面にスリットを設けた略矩形断面のリング状シールと、外周面に軸方向の凹溝と凸部を交互に設け、片側の側面にスリットを設けたゴム製のバックリングを組み合せたスリッパーシールタイプのバッファリング、あるいは、合成ゴム製のU字断面のリップパッキンの内周リップの頂部に凹溝を設け、内周低圧側角部に樹脂性のバックアップリングを組み合わせたリップタイプのバッファリング等がある。
【0008】
これらのシールは、いずれも高圧の流体圧力を1次シールとしてカットし、2次シールとなるロッドパッキン等には高圧を直接作用させないことによって、ロッドパッキン等のシール性の向上とともに摺動抵抗を下げて摩擦熱によるパッキン材料の熱劣化等を低減し耐久性の向上を図るものである。
【0009】
例えば特許文献2に開示されるように、スリッパーシールタイプ及びリップタイプのバッファリング等の1次シールは、スリッパーシールタイプは1次シールから漏れてロッドパッキン等の2次シールでシールされて蓄圧した流体が、1次シールに作用する圧力より高くなると1次シールを圧力側に押し上げて、装着溝の外周面とバックリングの凹溝による流路を通り、加圧側面に設けられた凹溝を経由する流路を通りシリンダ室側に戻る。
【0010】
また、特許文献3に開示されるように、リップタイプのバッファリングの場合は、蓄圧流体が装着溝底面からバッファリングの基部の外周面に設けた凹溝に入り、外周リップを押し上げて、内周リップ頂部の凹溝を経由する流路を通りシリンダ室側に戻り、蓄圧現象を起こさないように機能して、2次シールであるUパッキンのシール性の向上と共に摺動抵抗を下げ、摩擦熱による材料の熱劣化を低減し耐久性の向上を図るものである。
【0011】
また、特許文献4には、1次シールとして外周基部に凹溝が設けられていないタイプのバッファリングと3次シールとなるワイパリングとの間の蓄圧流体をバッファリング側に戻すための流路として、内周リップ部先端及び外周リップ部先端に、凹溝が設けられているUパッキンで構成されたシールシステムが開示されている。
【0012】
油圧ブレーカは、100〜600回/min以上の高頻度で高速摺動するため、ロッドパッキンでは十分に油膜が掻き取れず、油膜的な漏れが多く発生し蓄圧しやすい使用条件下で使用されている。
【0013】
また、油圧ブレーカの作動は、ピストンのチゼル側に油圧ポンプからの圧力を作用させピストン体を駆動し、ピストン体の運動エネルギーをチゼルに加えてコンクリートや岩石等を破砕するが、ピストン体がロッド側へ運動することにより、ロッド側の圧力室の流体がブレーカに内蔵されたアキュームレータ内に加圧蓄積され、ヘッド側の加圧が切り替わった時にその流体圧力によりピストン体がヘッド側に戻る。このように、ロッド側の圧力室はアキュームレータにより常に加圧された状態にあるため、上記した1次シールは、常に低圧側溝側面に押圧された状態にあり、蓄圧が戻り難い状態が避けられなかった。
【0014】
1次シールがUパッキンタイプ構造であれば、低圧側溝側面に押圧と同時に、内周リップ、外周リップも常に押圧状態であるため、正面圧に対するシール性には寄与するものの、外周及びまたは内周リップと相手面との接触力が高くなり、摩擦、摩耗、発熱等の劣化要因とともに、2次シールとの間の蓄圧流体が戻り難くなり、2次シールに常に蓄圧流体が作用し、摩擦、摩耗、発熱等の劣化要因をもたらし、さらに蓄圧は2次シールと3次シール(オイルリップ付のワイパリング等)の間にも波及して、ロッドパッキンシステム全体の機能低下を惹起する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実開平09−411号公報
【特許文献2】実公昭62−7029号公報
【特許文献3】特開2008−144784号公報
【特許文献4】特開2001−355739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、例えば油圧ブレーカのロッドのような、高圧、高速、高頻度での作動条件で使用される流体圧シリンダのロッドのパッキン部における蓄圧を戻し易くしてロッドパッキンのシール性および耐久性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下の通りである。
(1)流体圧シリンダのピストンロッドの外面に当接する内周リップと、内周リップよりも薄肉の外周リップと、内周リップおよび外周リップを支える基部とを備え、内周リップ、外周リップおよび基部により谷部が形成されるとともに、流体圧シリンダのロッドカバー部の内周面に設けられた環状溝に装着されて、ピストンの側からの流体圧力を密封する、望ましくはポリウレタンゴム製のUパッキンにおいて、基部から外周リップに至る外周面のリップ先端のシール部を除いた領域にピストンの軸方向と略平行な方向へ向けて延設された複数の凸部と、内周リップの頂部及び外周リップの頂部のそれぞれにピストンの径方向へ向けて延設された複数の凹部、例えば凹溝とを有し、環状溝側部及び底部と基部との間に存在する蓄圧流体を、複数の凸部の近傍を介して複数の凹部へ流通させる蓄圧流通手段を備えることを特徴とするUパッキン。
【0018】
(2)複数の凸部の中心と、複数の凹部の中心とは、中心角位置で略同一の位置に存在する上記(1)項に記載されたUパッキン。
【0019】
(3)上記(1)項に記載されたUパッキンと、流体圧シリンダのロッドカバー部の内周面に設けられた環状溝に装着されて、ピストンの外周面に存在する異物の侵入を阻止するオイルリップを有するワイパリングとを備え、蓄圧流通手段は、内側リップ、ワイパリングおよびピストンにより囲まれた空間内に存在する作動流体を、複数の凸部を介して複数の凹部へ流通させることを特徴とするシール機構。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、本来の流体圧に対するシール性を充分に維持しながら、油膜的に2次シールで掻き取られた蓄圧流体をロッド側圧力室に戻す機能とを兼ね備えるUパッキンを提供することができる。
【0021】
本発明に係るUパッキンは、基本的にシール機能の高いロッドパッキンとしての基本的な性能を維持しながら、ロッド表面の油膜がシリンダ外部側に位置する2次シールである2段目ロッドパッキンやオイルリップ付ワイパリングで掻き取られて蓄積した流体圧力を、シリンダ内に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施の形態1に係るUパッキンを、部分的に切断した状態で示す斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係るUパッキンを含むシール機構の構成例を示す片側断面図である。
【図3】図3は、実施の形態1に係るロッドパッキンの片側断面図である。
【図4】図4は、実施の形態2に係るUパッキンを含むロッドパッキンシステムの構成例を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明例および従来例それぞれの蓄圧抜けの実験データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態1]
本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、実施の形態に係るUパッキン1を、部分的に切断した状態で示す斜視図であり、図2は、実施の形態に係るUパッキン1と、バッファリング9と、ワイパリング10とにより構成されるシール機構0の構成例を示す片側断面図であり、図3は、実施の形態に係るロッドパッキン(Uパッキン)1の片側断面図である。
【0025】
以降の説明では、本発明に係るUパッキン1を、高圧の条件下において高頻度で使用される油圧ブレーカロッド用の蓄圧防止機能を備えるロッドパッキンとして、適用した場合を例にとる。
【0026】
図2に示すように、バッファリング9およびワイパリング10は、流体圧シリンダ11のロッドカバー部12の内周面に設けられた環状溝13、14に装着されて、いずれも公知のものと同じ作用を奏する環状のシール部材である、具体的には、バッファリング9は、
衝撃圧を吸収する作用を有するとともに、ワイパリング10は外部からのダストや水などがシリンダ内に侵入するのを防止する作用を有する。
【0027】
これらは当業者にとっては周知であるので、これ以上の説明は省略する。
図2および図3に示すように、本実施の形態は、本発明に係るUパッキンをロッドパッキン1に適用したものである。
【0028】
図1および図2に示すように、ロッドパッキン1は、流体圧シリンダのピストンロッド11の外周面を包囲する環状の外形を有する、ポリウレタンゴム製である。ポリウレタンゴムとしては例えば、RU910等が例示される。ロッドパッキン1は、ピストン11の側からの流体圧力を封止する。
【0029】
図1および図2に示すように、ロッドパッキン1は、内周リップ2と、外周リップ3と、基部4と、谷部5とを備える。内周リップ2は、流体圧シリンダのピストン11の外面に当接する。外周リップ3は、内周リップ2よりも薄肉である。基部4は、内周リップ2および外周リップ3を支える。さらに、谷部5は、内周リップ2、外周リップ3および基部4により形成される。
【0030】
ロッドパッキン1は、流体圧シリンダのロッドカバー部12の内周面に設けられた環状溝15に、ピストン11の軸方向への移動に伴って、環状溝15内を移動自在となるように、装着される。
【0031】
ロッドパッキン1は、ピストンロッド11の軸方向と略平行な方向へ向けて延設された複数(本実施の形態では4つ)の凸部6と、内周リップ2の頂部2a及び外周リップ3の頂部3aのそれぞれに、ピストンの径方向へ向けて延設された複数(本実施の形態では4つ)の凹部である凹溝7、8とを有する。
【0032】
凸部6の断面形状は、潰れ難い形状であればよく、例えば半円形状であることが蓄圧流体をロッド側圧力室に戻すとともに凸部6を簡便に低コストで製造するために望ましい。また、凸部6の基部4側に矩形断面の基礎部分を有し、この基礎部分の上に半円断面の部分を有するようにすれば、より確実に蓄圧流体をロッド側圧力室に戻すことが可能になる。
【0033】
凸部6の高さ(基部4の外面からの突出高さ)は0.3〜1mmであること、また凸部6の幅は凸部6の高さの2倍であること、すなわち0.6〜2mmであることが、流体圧に対するシール性を維持しながら、油膜的に2次シールで掻き取られた蓄圧流体をロッド側圧力室に戻すためには望ましい。
【0034】
また、凸部6は、基部4の底部4aから外周リップ3へ至る範囲のうちで外周リップ3のシール部3bを除いた領域、すなわち底部4aからシール部3bの近傍までの領域に形成される。凸部6がシール部3bに達して形成されると、流体圧に対する外周リップ3のシール性を維持することができなくなるからである。
【0035】
複数の凸部6それぞれの中心位置と、複数の凹部7、8それぞれの中心位置とが、中心角位置で略同一の位置に存在するように、複数の凸部6および複数の凹部7、8が形成されている。ここで、「中心角で略同一の位置」とは、凸部6の中心位置が凹部7、8の形成位置の内部に存在する範囲にあることを意味する。本実施の形態では、複数の凸部6および複数の凹部7、8は、いずれも、中心角で90度ピッチで4個ずつ形成されている。
【0036】
これにより、環状溝15の側部15a及び底部15bと基部4との間に存在する作動流体を、複数の凸部6の近傍を介して複数の凹部7、8へ順次流通させることができる。
【0037】
ロッドパッキン1では、2次シールであるワイパリング10との間に存在する蓄圧流体を、ロッドパッキン1の内面リップ2に負荷される正面圧によって、ロッドパッキン1が低圧側の環状溝15の側面15aに押圧された状態においても、図3に矢印で示すように、
(i)正面圧が低ければ蓄積した流体圧によりロッドパッキン1がリップ2、3側に押し上げられることによって形成される隙間、
(ii)ロッドパッキン1の外周面に設けられた複数の凸部6と環状溝15とにより形成される流路、
(iii)外周リップ3の先端側に作用して外周リップ3を押し上げて形成される隙間、
(iv)外周リップ3の頂部に形成される凹溝8、および
(v)内周リップ2の頂部に形成される凹溝7
を経由する流路を通して、ピストンロッド11側圧力室に蓄圧した作動流体を戻すことにより、蓄圧した圧力が低くなって摺動抵抗を低下することができ、発熱等を抑制してロッドパッキン1の材料の劣化を防止することができる。
【0038】
また、このように畜圧流体をピストンロッド11側の圧力室に戻す流路は、環状溝15の底面15bと外周リップ3の頂部3aの接触部がチェック弁機能を有するため、正面圧をシールする機能は何ら損なわれず、複数の凸部6を外周リップ3のシール部3bの近傍まで設けるほど、外周リップ3を押し広げ易くなり、蓄圧した圧力流体の戻しを容易かつ確実に行うことができる。
【0039】
また、蓄圧の逃がしのために、基部4に例えば凹溝を設けるのではなく凸部6を形成するため、基部4の剛性の低下を生じることがなく、正面圧のシール機能を何ら損なうことがない。
【0040】
すなわち、ロッドパッキン1は、基本的にシール機能の高いロッドパッキンとしての基本的な性能を維持しながら、ピストンロッド1の表面の油膜がシリンダ外部側に位置する2次シールである2段目ロッドパッキン1やオイルリップ付ワイパリング10によって掻き取られて蓄積した流体圧力を、シリンダ内に戻すことができる。
【0041】
このようにして、本実施の形態によれば、本来の流体圧に対するシール性を維持しながら、油膜的に2次シールで掻き取られた蓄圧流体をロッド側圧力室に戻す機能とを兼ね備えるUパッキン1、例えば、高圧の条件下において高頻度で使用される油圧ブレーカのピストンロッド11用の蓄圧防止機能を備えるロッドパッキン1に好適に用いることができるUパッキン1と、このUパッキンを用いるシール機構0とを提供することができる。
【0042】
[実施の形態2]
実施の形態2を説明する。以降の説明では、上述した実施の形態1と相違する部分を説明し、同一の部分の説明は、同一の図中符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0043】
図4は、実施の形態2に係るUパッキン1を含むシール機構0−1の構成例を示す断面図である。
【0044】
シール機構0−1がシール機構0と相違するのは、シール機構0におけるバッファリング9に替えてUパッキン1を用いる点、すなわち本発明に係るUパッキン2つとワイパリング10とを組み合わせて用いる点である。
【0045】
シール機構0では、本発明に係るUパッキン1を1次シールおよび2次シールと重ねて使用するので、シール性の高い1次側シールと2次側シールで充分なシールを行うことができるとともに、Uパッキン1からなる2次シールでシールされた蓄圧流体を、同じくUパッキン1からなる1次シールの蓄圧戻し流路を経てシリンダ内に戻すことができ、シール機構0−1の耐久性を高めることができる。なお、実施の形態1と同様に、Uパッキン1からなる2次シールとオイルリップ付のワイパリング10との間の蓄圧を、Uパッキン1からなる2次シールから1次シールを戻すことができることはいうまでもない。
【実施例1】
【0046】
次に、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
下記諸元を有する図1に示すUパッキン1を、高圧の条件下において高頻度で使用される油圧ブレーカのピストンロッド(内径45 mm)用の蓄圧防止機能を備えるロッドパッキンとして用いて、図2に示すシール機構0を構成し、2次シールとオイルリップ付のワイパリング10との間の蓄圧の抜け始め圧力を測定した。蓄圧の抜け始め圧力は、ロッド
パッキン1の基部4側から圧力を加えて内周リップ2側から漏れ始める圧力を測定することにより、測定した。
【0047】
<Uパッキン>
材質:ポリウレタンゴム(RU910等)
内周リップ2の内径、厚み:44mm、2.2〜2.5mm
外周リップ3の外径、厚み:57mm、1.7〜1.8mm
凸部6の高さ、長さ、幅:0.35mm、3.5mm、0.7mm
凹部7、8の深さ、長さ:0.4mm、1.4mm、0.9mm
基部4の内径、外径、厚み:46.2mm、55.6mm、4.6〜4.8mm
<バッファリング9>
寸法、材質:ロッド径:135.8、材質:ポリウレタンゴム(RU910等)
<ワイパリング10>
寸法、材質:ロッド径:135.8、材質:ポリウレタンゴム(RU910等)
一方、従来例1として基部に凸部が形成されていないパッキン(既存のパッキン)と、従来例2としてSKYパッキン(基部に凸部が形成されず、かつ内周リップおよび外周リップのいずれにも凹部が形成されていないパッキン)についても、同様にして抜け始め圧力を測定した。
【0048】
結果を図5にグラフにより示す。
図5のグラフに示すように、本発明によれば、蓄圧の抜け始め圧力を大幅に低下できたことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るUパッキンは、流体圧シリンダのロッド部のシールとして、蓄圧流体をシリンダ圧力室側に戻し、例えばロッドパッキンシステムとしてのシール性、耐久性を向上させ、高圧、高速、高頻度の条件で使用される建設機械や油圧ブレーカ等の過酷な使用条件におけるロッドパッキンのシール機構に用いることができる。
【0050】
なお、本発明に係るUパッキンは、例えばロッドパッキン単体及びロッドパッキンシステムとして有効であるが、軸方向突部をロッドパッキンの外周面に設けることによって、複動形流体圧シリンダのピストン部のUパッキンとして逆圧(発生メカニズムはロッドパッキンの蓄圧とは異なるが、いずれもロッドパッキンの底面側から圧力流体が作用する)を排出する流路が構成されることから、ピストンパッキンへの応用も効果的である。
【符号の説明】
【0051】
0、0−1 シール機構
1 本発明に係るUパッキン
2 内周リップ
2a 頂部
3 外周リップ
3a 頂部
3b シール部
4 基部
4a 底部
5 谷部
6 凸部
7、8 凹部(凹溝)
9 バッファリング
10 ワイパリング
11 流体圧シリンダ
12 ロッドカバー部
13、14、15 環状溝
15a 側部
15b 側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧シリンダのピストンの外面に当接する内周リップと、該内周リップよりも薄肉の外周リップと、前記内周リップおよび前記外周リップを支える基部とを備え、前記内周リップ、前記外周リップおよび前記基部により谷部が形成されるとともに、前記流体圧シリンダのロッドカバー部の内周面に設けられた環状溝に装着されて、前記ピストンの側からの流体圧力を密封するUパッキンにおいて、
前記基部から前記外周リップに至る外周面のリップ先端のシール部を除いた領域に前記ピストンの軸方向と略平行な方向へ向けて延設された複数の凸部と、前記内周リップの頂部及び前記外周リップの頂部のそれぞれに前記ピストンの径方向へ向けて延設された複数の凹部とを有し、前記環状溝の側部及び底部と前記基部との間に存在する作動流体を、前期複数の凸部の近傍を介して前期複数の凹部へ流通させる蓄圧流通手段を備えることを特徴とするUパッキン。
【請求項2】
前記複数の凸部の並設方向の中心と、前記複数の凹部の並設方向の中心とは、中心角位置で略同一の位置に存在する請求項1に記載されたUパッキン。
【請求項3】
請求項1に記載されたUパッキンと、前記流体圧シリンダのロッドカバー部の内周面に設けられた環状溝に装着されて、前記ピストンの外周面に存在する異物の侵入を阻止するオイルリップを有するワイパリングとを備え、蓄圧流通手段は、内側リップ、ワイパリングおよびピストンにより囲まれた空間内に存在する作動流体を、複数の凸部を介して複数の溝部へ流通させることを特徴とするシール機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83351(P2013−83351A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193182(P2012−193182)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(000143891)株式会社阪上製作所 (8)
【Fターム(参考)】