説明

蓄電体接続構造

【課題】コンパクト化を図りつつも溶接品質を向上させ、接続抵抗を低減させることができる蓄電体接続構造を提供する。
【解決手段】筒状のケーシング21の一端に突出した正極22が構成され、他端に負極23が構成された複数のキャパシタセル20と、キャパシタセル20同士を電気的に直列に接続する接続体30とを備える接続構造において、負極23が、ケーシング21に対して縮径したアルミニウム合金製の厚板により構成されると共に、接続体30は、正極に外挿されて嵌合する穴状の正極嵌合部32と、外径がケーシング21の外径に等しく負極23に外挿されて嵌合する負極嵌合部31とを備える。正極嵌合部32が一方のキャパシタセル20の正極22に嵌合した状態で正極嵌合部32の底部と正極22とが溶接され、他方のキャパシタセル20の負極23に負極嵌合部31が嵌合した状態で負極嵌合部31と負極23とが溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端を上方に突出させた正極と他端を平面状に形成した負極とを有する筒状の蓄電体と、該蓄電体同士を電気的に直列に接続する筒状の接続体とを備える蓄電体接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蓄電体接続構造としては、特許文献1の図4に見られるように、正極と、負極と、負極と一体に構成された金属製ケーシングとを備えた蓄電体(電池)に対して、金属ケーシングの側面に凹溝部を形成し、該凹溝に嵌め込まれる突起(プロジェクション)を有する有底筒状の接続体で、該電池を直列に接続したものが知られている。
【0003】
かかる従来の蓄電体接続構造では、接続体の底面部を一方の蓄電体の正極に接続された封口板に溶接すると共に、内側面に突起した4つのプロジェクションを他方の蓄電体の負極側の凹溝に嵌め込み、プロジェクションを上から溶接することにより、4箇所で電池と接続体とを接続している。
【0004】
ここで、蓄電体およびこれを接続体により複数接続してなる蓄電装置等では、金属ケーシングや接続体をアルミニウム合金によって構成し、その軽量化を図っている。アルミニウム合金の溶接では、母材となるアルミニウムの抵抗が低いため、スポット溶接はできない。そのため、かかるアルミニウム合金の金属ケーシングと接続体との溶接は、YAGレーザ溶接やMIG溶接により行われる。
【特許文献1】特開2005−129433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、YAGレーザ溶接やMIG溶接では、溶接部の温度が500℃以上の高温になるため、アルミニウム合金中に含まれるマグネシウム成分が揮発して溶接部や金属ケーシングの表面にボイドやブローホールと呼ばれる微小な空隙を生じやすい。かかる空隙が生じると、空気中の水蒸気が該空隙に吸収されて金属ケーシングの劣化やケーシング内部の電解液の漏液等を誘起し、蓄電体自体の特性を低下させる誘因となる。また、従来の蓄電体接続構造では、溶接部分で蓄電体と接続体とが接続するため、かかる空隙により溶接部分の電気抵抗が大きくなると、結果として蓄電体同士の接続抵抗が増大する。
【0006】
一方で、ボイドやブローホールによる蓄電体の特性劣化を防止するためには、金属ケーシング自体の厚みを厚くする必要がある。そして、金属ケーシングの厚みを厚くすると、蓄電体の外形が大きくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、コンパクト化を図りつつも溶接品質を向上させ、接続抵抗を低減させることができる蓄電体接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1発明の蓄電体接続構造は、筒状のケーシングの一端に正極が構成され、他端に負極が構成された複数の蓄電体と、該蓄電体同士を電気的に直列に接続する接続体とを備える蓄電体接続構造において、前記蓄電体の負極が、外径が前記ケーシングの外径に等しく前記ケーシングに対して縮径したアルミニウム合金製の厚板により構成され、前記接続体は、前記負極に外挿されて嵌合する負極嵌合部を備え、一方の蓄電体の正極に接続されると共に、他方の蓄電体の該負極に該負極嵌合部が嵌合した状態で該負極嵌合部と該負極とが溶接されることを特徴とする。
【0009】
第1発明の蓄電体接続構造によれば、蓄電体と接続体とは、ケーシングに対して縮径した負極部分に、接続体の負極嵌合部が外挿されて嵌合されることにより接続される。このとき、負極嵌合部の外径がケーシングの外径に等しいため、蓄電体と接続体との接続部分が径方向に突出することを防止することができる。また、溶接部分は、肉厚の板体によって構成されていることから、ボイドやブローホールが生じた場合にも、その影響はケーシングの表面部分に留まり、ケーシングの劣化が進行することやケーシング内部の電解液が漏液等することもない。さらに、蓄電体と接続体とは、負極と負極嵌合部が嵌合して接続されることから、これらの間の接触面積が大きく、溶接部分に依らずに接続抵抗を低減させることができる。このように、第1発明の蓄電体接続構造によれば、コンパクト化を図りつつも溶接品質を向上させ、接続抵抗を低減させることができる。
【0010】
第2発明の蓄電体接続構造は、第1発明の蓄電体接続構造において、前記接続体の負極嵌合部は、有底筒状であって、底部に前記負極の端面に接触する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第2発明の蓄電体接続構造によれば、負極嵌合部の底部に凸部が形成されており、該凸部が蓄電体の負極の端面に接触する。そのため、蓄電体と接続体とは、負極と負極嵌合部が嵌合して接続されることに加えて、凸部を介しても接続されることから、溶接部分に依らずに接続抵抗を低減させることができる。したがって、前記のように、コンパクト化を図りつつも溶接品質を向上させることができると共に、接続抵抗をさらに低減させることができる。
【0012】
第3発明の蓄電体接続構造は、第1または第2発明の蓄電体接続構造において、前記蓄電体の正極が、前記ケーシングの一端側に突出した正極突出部により構成され、前記接続体は、前記正極突出部に外挿されて嵌合する穴状の正極嵌合部を備え、該正極嵌合部が該正極突出部に嵌合した状態で該正極嵌合部の底部と該正極突出部とが溶接されることを特徴とする。
【0013】
第3発明の蓄電体接続構造によれば、蓄電体と接続体とは、ケーシングの一端側に突出した正極突出部に、接続体の正極嵌合部が外挿されて嵌合されることにより接続される。このとき、溶接部分は、正極突出部であることから、ボイドやブローホールが生じた場合にも、その影響は突出部分の表面に留まり、その影響が蓄電体の内部まで及ぶことはない。さらに、蓄電体と接続体とは、正極突出部と正極嵌合部が嵌合して接続されることから、これらの間の接触面積が大きく、溶接部分に依らずに接続抵抗を低減させることができる。したがって、前記のように、負極部分の接続によりコンパクト化を図ることができると共に、正極部分の接続でも溶接品質を向上させ、接続抵抗を低減させることができる。
【0014】
第4発明の蓄電体接続構造は、第1〜第3の蓄電体接続構造において、前記蓄電体は、正極が前記ケーシングの一端を塞ぐ絶縁性の封口栓により該ケーシングから絶縁して設けられると共に、負極が該ケーシングと一体に構成されることを特徴とする。
【0015】
第4発明の蓄電体接続構造によれば、蓄電体の正極と負極との絶縁性を維持しながら負極をケーシングと一体に構成することで、負極部分のコンパクト化を図り、蓄電体の径方向のみならず軸方向の接続スペースを節約することができる。したがって、前記のように、溶接品質を向上させつつ、接続抵抗を低減させることができると共に、コンパクト化をさらに図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の蓄電体接続構造の実施形態について図1〜図6を参照して説明する。
【0017】
本発明の蓄電体接続構造は、主に車両に搭載される燃焼電池電源システムのキャパシタにおける接続構造に関する。
【0018】
図1に示すように、燃料電池電源システムは、燃料電池1、燃料電池1と並列に接続された電気二重層キャパシタ2(以下、単にキャパシタ2という)、入力部が燃料電池1及びキャパシタ2に接続されると共に、出力部がPDU4(Power Drive Unit)を介して電動機5に接続された昇圧手段3(Voltage Boost Unit)、及び入力部が昇圧手段3に接続されると共に出力部が二次電池6(本実施の形態では、リチウムイオンバッテリを使用)に接続された電圧変換手段7を備えている。
【0019】
燃料電池1は、例えば燃料電池スタックを250個直列に接続して構成され、出力電圧が約225V(出力電流0A)〜180V(出力電流210A)の範囲で変動するものである。また、キャパシタ2は、出力電圧が200Vとなるように複数のキャパシタセル20(本発明の蓄電体に相当する。図2参照)から構成され、出力電圧が200Vを中心とした範囲(約下限154V〜上限243Vの範囲)で変動するものである。また、二次電池6の出力電圧は約290V〜350Vの範囲で変動する。
【0020】
昇圧手段3は、例えば、定格100kwで昇圧比1.5〜2.4のDC/DCコンバータであって、少なくとも昇圧機能を有し、降圧機能は必要に応じて付加される。また、電圧変換手段7は、例えば、定格10kwで昇圧比1.36〜1.70のDC/DCコンバータである。
【0021】
さらに、燃料電池電源システムは、二次電池6と電圧変換手段7との間で、二次電池6と電圧変換手段7とに並列に接続された補機8とを備える。補機8は、燃料電池1に水素ガス等の反応ガスを供給するためのポンプ等であって、補機8は、PDU9(Power Drive Unit)を介して、二次電池6及び電圧変換手段7に直結する第2電力供給ラインL2に接続されている。尚、本実施形態の燃料電池電源システムにおいて、説明の都合上、燃料電池1及びキャパシタ2に直結する電力供給ラインを第1電力供給ラインL1とし、二次電池6及び電圧変換手段7に直結する電力供給ラインを第2電力供給ラインL2、第1電力供給ラインL1を昇圧手段3により昇圧した電力供給ラインを第3電力供給ラインL3としている。
【0022】
燃料電池電源システムは、電子制御ユニット10を備え、電子制御ユニット10は、燃料電池1及び二次電池6の各々に設けられた図示しない電圧センサ及び電流センサの検出信号を取得し、燃料電池1及び二次電池6から出力される電圧、電流及び電力を検知する。
【0023】
また、電子制御ユニット10は、キャパシタ2を構成する各キャパシタセル20に接続されて各キャパシタセル20の出力電圧を検知する電圧センサと、キャパシタ2の端部に設けられてキャパシタ2の出力電流を検知する電流センサとに接続されて、各キャパシタセル20の出力電圧と、これらの出力電圧からキャパシタ2全体の出力電圧と、キャパシタ2全体の出力電流と、キャパシタ2全体の出力電力を検知する。さらに、電子制御ユニット10は、各キャパシタセル20の出力電圧を監視する。
【0024】
さらに、電子制御ユニット10は、キャパシタ2の出力電圧と出力電流とからキャパシタ2の開路電圧を推定し、推定した開路電圧と該キャパシタ2の残容量(以下、SOCという)との関係を規定したマップやデータテーブル(以下、マップ等という)を参照して、キャパシタ2のSOCを推定する。また、電子制御ユニット10は、二次電池6の出力電圧と出力電流とから該二次電池6の開路電圧を推定し、推定した二次電池の開路電圧とSOCとの関係を規定したマップ等を参照して、二次電池6のSOCを推定する。
【0025】
また、電子制御ユニット10は、燃料電池1の出力、キャパシタ2及び二次電池6の各SOCに基づいて、燃料電池1の作動制御と、昇圧手段3または電圧変換手段7の作動制御とを実行し、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6から電動機5への電力供給と、燃料電池1からキャパシタ2及び二次電池6の充電とを行う。
【0026】
電子制御ユニット10は、電動機5は当該車両が減速する際には発電機として機能するため、車両の減速時に電動機5で生じる回生電力を回収して、該回生電力によりキャパシタ2及び二次電池6の充電を実行する。なお、このとき、電子制御ユニット10は、PDU4に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)により、電動機5の回生電力を検知して昇圧手段3または電圧変換手段7の作動制御を実行し、電動機5からキャパシタ2及び二次電池6への充電を行う。
【0027】
なお、本実施形態の燃料電池電源システムにおいて、燃料電池1と昇圧手段3及びキャパシタ2との間には、ダイオードDが設けられており、ダイオードDにより燃料電池1への電流の流入が禁止されている。また、ダイオードDに替えてトランジスタ等の他の整流素子を用いることにより、または、キャパシタ2を降圧手段(ダウンコンバータ)を介して燃料電池1に接続することにより、燃料電池1への電流の流入を禁止してもよい。
【0028】
以上が、本実施の形態における車両に搭載される燃料電池電源システムの全体構成である。このように、本実施形態の燃料電池電源システムによれば、二次電池6とキャパシタ2とに加えて燃料電池1を備え、昇圧手段3によって燃料電池1およびキャパシタ2の出力が昇圧されるため、その分だけ燃料電池1およびキャパシタ2の合計出力電圧の低減を図ることができる。加えて、電圧変換手段7を介して二次電池6から電動機5に電力を供給することにより、二次電池6の出力電力によって、燃料電池1およびキャパシタ2から電動機5への電力供給をアシストすることができる。そのため、各電源1,2,6を相互に補助ないし補完させ、これらから電動機5へ安定的に電力を供給することができると共に、燃料電池1において積層されるセルの個数および燃料電池1の体積、ならびにキャパシタ2や二次電池6の体積の低減を図ることができる。
【0029】
次に、図2〜図4を参照して、キャパシタセル20の具体的な接続構造(本発明の蓄電体接続構造に相当する)ついて説明する。
【0030】
図2に示すように、キャパシタ2を構成する複数のキャパシタセル20が、接続体30を介して電気的に直列に接続される。
【0031】
図3は、2つのキャパシタセル20,20とこれらを接続する接続体30との構成を示す分解図であり、図3(a)が上方から見た分解図であり、図3(b)が図3(a)に対応して下方から見た分解図である。図4は、接続体30が2つのキャパシタセル20,20を接続した状態での縦断面図である。
【0032】
図3及び図4に示すように、キャパシタセル20は、筒状のケーシング21と、ケーシング21の一端に突出した正極22(本発明の正極突出部に相当する)と、他端に負極23とを備え、ケーシング21と正極22と負極23とはいずれもアルミニウム合金によって構成される。
【0033】
ケーシング21は、内部に図示しない電解液が充填される有底筒状の形状である。ケーシング21の一端側の開口部21aは絶縁性の封口栓24および正極22により封止される。封口栓24は、例えば合成樹脂により構成される円盤状の部材で、中央に貫通孔24aを備える。封口栓24は、その周辺部とケーシング21の開口部21aの端部とが巻き締め等され、貫通孔24aに正極22が挿通される。一方、ケーシング21の他端側は、その側壁を拡幅させた接続部21b介して負極23がケーシング21と一体に形成されており、負極23がケーシング21の底部となっている。
【0034】
正極22は、円筒形状の電極である。ここでは、キャパシタセル20の内部構造について詳細な説明を省略するが、図示しない正極リードプレート等を介して積層体の正の電荷を貯める複数の電極シートに接続された集電体に電気的に接続されている。
【0035】
負極23は、ケーシング21の他端側を一定幅に亘って縮径させた部分が厚板(バルク)となっている。負極23には、正極22とは異なり、積層体の負の電荷を貯める複数の電極シートに接続された集電体はなく、厚板部分が集電体として機能する。そのため、負極側のリードプレートや集電体が不要となり、キャパシタセル20の軸方向の構成を簡易化して、軸方向におけるキャパシタセル20のコンパクト化を図ることができる。また、部品の点数を減らすことができ、製造コストも低減させることができる。
【0036】
また、負極23の外径部分には、軸方向に延びる凸部23aが一定の間隔を隔てて(例えば、外径を4分割する位置に)配置され、負極23の端面23bには、所定幅を空けて平行に配置された一対の凸部23aにより形成される凹凸部23cが放射状に複数(例えば、4つ)設けられている。
【0037】
次に、接続体30は、筒状の形状であって、一端側にキャパシタセル20の負極23に外挿されて嵌合する有底筒状の負極嵌合部31と、他端側に正極22と嵌合する正極嵌合部32とを備える。
【0038】
負極嵌合部31は、外径がケーシング21の外径に等しく、内径が正極22の外径に等しく形成されている。そのため、負極23の外径部分に外挿されて嵌合した際に、キャパシタセル20と接続体30との外径が等しくなり、接続部分が径方向に突出することを防止することができ、径方向におけるキャパシタセル20のコンパクト化を図ることができる。また、負極23と負極嵌合部31が嵌合して接続されることから、これらの間の接触面積が大きく、後述する溶接部分に依らずに接続抵抗を低減させることができる。
【0039】
また、負極嵌合部31は、その側壁部分に、負極23の外径部分の凸部23aに対応する切欠部31aが複数(例えば4つ)設けられている。さらに、負極嵌合部31は、その内底面に凹凸部23cに対応した凸部31bが放射状に複数(例えば4つ)設けられている。そのため、切欠部31aを凸部23aに合致させることにより、凸部31bが凹凸部23cに当接あるいは挟持される。これにより、負極23と負極嵌合部31が嵌合して接続されることに加えて、凸部31bと凹凸部23cとを介しても接続されることから、さらに接続抵抗を低減させることができる。
【0040】
さらに、負極嵌合部31の底部は、隣り合う凸部31bの間が扇形に刳り貫かれており、これにより、接続体30自体の軽量化が図られている。
【0041】
正極嵌合部32は、負極嵌合部31の底部に他端側から空けられた穴部32aであって、該穴部32aは、その径が円筒形状の正極22の径と等しい。なお、正極嵌合部32は、負極嵌合部31の底部全体の厚みを厚くすることなく所定の深さとするため、穴部32aの周辺を他端側に突出させている。ここで、穴部32aの深さは、正極22と正極嵌合部32とが嵌合した状態で、正極22の端面が正極嵌合部32の内底面に当接すると共に、正極嵌合部32の端面が封口栓24に当接するように設計される。これにより、正極22と正極嵌合部32とが嵌合して接続されるときには、嵌合部のほかにそれぞれの端面が当接して保持され、接続状態を強固なものとすることができると共に、これらの間の接触面積が大きいため、後述する溶接部分に依らずに接続抵抗を低減させることができる。
【0042】
次に、図5および図6を参照して、キャパシタセル20と接続体30との溶接方法について説明する。図5(a)は、接続体30を一方のキャパシタセル20の正極22に溶接する場合の斜視図であり、図5(b)は、図5(a)に対応する部分的断面図である。図6(a)は、接続体30を他方のキャパシタセル20の負極23に溶接する場合の斜視図であり、図6(b)は、図6(a)に対応する部分的断面図である。
【0043】
まず、図5に示すように、接続体30の正極嵌合部32を一方のキャパシタセル20の正極22に嵌合させる。このとき、正極22の端面と正極嵌合部32の内底面とが当接する。
【0044】
かかる状態で、図5(a)に示す仮想線に沿って、YAGレーザのレーザビームLBを負極嵌合部31の内底面に照射する。これにより、図5(b)に示すように、正極22の端面と正極嵌合部32の内底面との当接部分が溶接される。
【0045】
かかる溶接部分は、キャパシタセル20の一端側に突出した正極22の端部であるため、ボイドやブローホールが生じた場合にも、その影響は正極22の端部に留まり、その影響がキャパシタセル20の内部まで及ぶことはない。
【0046】
次いで、接続体30が一方のキャパシタセル20の正極22に溶接されると、図6に示すように、接続体30の負極嵌合部31を他方のキャパシタセル20の負極23に嵌合させる。このとき、負極嵌合部の内底面に形成された凸部31bが負極22の凹凸部23cに当接あるいは挟持される。
【0047】
かかる状態で、図6(a)に示す仮想線に沿って、YAGレーザのレーザビームLBを負極嵌合部31の外側面に照射する。これにより、図6(b)に示すように、負極23の外側面と負極嵌合部31の内側面とが溶接される。
【0048】
かかる溶接部分は、肉厚の板体によって構成された負極23の外側部であるため、ボイドやブローホールが生じた場合にも、その影響はケーシング21の表面部分に留まり、ケーシング21の劣化が進行することやケーシング21内部の電解液が漏液等することもない。また、かかる溶接部分とケーシング21の側壁との間には、側壁を拡幅させた接続部21bが設けられていることから、ケーシング21と負極23との間の接続部分からケーシング21の劣化が進行等することも回避することができる。
【0049】
以上、詳しく説明したように、本実施形態のキャパシタセル20の接続構造によれば、軸方向および径方向のコンパクト化を図ることができると共に、キャパシタセル20の正極22および負極23と接続体30との接触面積を大きくすることで、溶接部分によらず接続抵抗を低減させることができる。さらに、溶接部分にボイドやブローホールが生じた場合にも、その影響がキャパシタセル20の内部に及ぶことを回避でき、溶接品質を向上させることができる。
【0050】
尚、本実施形態においては、蓄電体接続構造としてキャパシタセル20と接続体30との接続構造を例として説明したが、蓄電体はキャパシタに限らず、キャパシタに相当する電池等に適用してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、正極22をケーシング21の一端に突出させ、負極23を厚板状に形成したが、正極22と負極23との形状は逆でもよい。すなわち、正極を厚板状に形成し、負極を突出部としてもよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、燃焼電池電源システムが備えるキャパシタを例に説明したが、蓄電体に相当するキャパシタや電池は、燃料電池電源システムが備えるもの以外の一般的な電源システムが備えるものであってもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、YAGレーザによる溶接を例に説明したが、溶接法はこれに限定されるものではなく、シールドガスを溶接部に流し、その中にワイヤを連続的に供給してするアーク溶接(例えば、MIG溶接)等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態の燃料電池電源システムの全体構成図。
【図2】キャパシタセルと接続体との接続状態を示す斜視図。
【図3】キャパシタセルの接続構造を示す分解図。
【図4】キャパシタセルの接続状態を示す断面図。
【図5】溶接方法を示す説明的斜視図。
【図6】図5に対応した説明的断面図。
【符号の説明】
【0055】
1…燃料電池、2…キャパシタ、3…昇圧手段、5…電動機、6…二次電池、7…電圧変換手段、10…電子制御ユニット、20…キャパシタセル(蓄電体)、22…正極(正極突出部)、23…負極、24…封口栓、30…接続体、31…負極嵌合部、31b…凸部、32…正極嵌合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシングの一端に正極が構成され、他端に負極が構成された複数の蓄電体と、該蓄電体同士を電気的に直列に接続する接続体とを備える蓄電体接続構造において、
前記蓄電体の負極が、前記ケーシングに対して縮径したアルミニウム合金製の厚板により構成され、
前記接続体は、外径が前記ケーシングの外径に等しく前記負極に外挿されて嵌合する負極嵌合部を備え、一方の蓄電体の正極に接続されると共に、他方の蓄電体の該負極に該負極嵌合部が嵌合した状態で該負極嵌合部と該負極とが溶接されることを特徴とする蓄電体接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電体接続構造において、
前記接続体の負極嵌合部は、有底筒状であって、底部に前記負極の端面に接触する凸部が形成されていることを特徴とする蓄電体接続構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の蓄電体接続構造において、
前記蓄電体の正極が、前記ケーシングの一端側に突出した正極突出部により構成され、
前記接続体は、前記正極突出部に外挿されて嵌合する穴状の正極嵌合部を備え、該正極嵌合部が該正極突出部に嵌合した状態で該正極嵌合部の底部と該正極突出部とが溶接されることを特徴とする蓄電体接続構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の蓄電体接続構造において、
前記蓄電体は、正極が前記ケーシングの一端を塞ぐ絶縁性の封口栓により該ケーシングから絶縁して設けられると共に、負極が該ケーシングと一体に構成されることを特徴とする蓄電体接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−188095(P2009−188095A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25045(P2008−25045)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】