説明

蓄電池及び蓄電池識別装置

【課題】電池特性に関する情報を備えた電池特性識別手段を設けることにより、アイドリング・ストップ仕様かどうか等の蓄電池の識別を容易に行うことができる蓄電池及び蓄電池識別装置を提供するものである。
【解決手段】アイドリング・ストップ仕様等の電池特性に関する情報を保持した無線ICタグ2が鉛蓄電池1に取り付けられた構成とする。また、アイドリング・ストップ仕様等の電池特性に関する情報を備えた凹部1gや温度センサ8等の電池特性識別手段が設けられた鉛蓄電池1と、この鉛蓄電池1の外部に配置されて、この電池特性識別手段の電池特性に関する情報を検出するマイクロスイッチ6や温度検出回路9等の電池特性検出装置とからなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバッテリ等として用いる鉛蓄電池等の蓄電池、及び、この蓄電池を識別するための蓄電池識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のエンジン駆動の自動車には、信号待ち等の停車中にエンジンのアイドリング動作を自動的に停止させて、燃費の向上を図ると共に排気ガスによる環境汚染を抑制するようにしたアイドリング・ストップ機能を備えたものがある。このアイドリング・ストップ機能は、自動車の走行速度やエンジンの回転速度だけでなく、自動変速機のセレクトレバー位置やペダル操作等の運転状況をも検出して制御を行うものであり、例えばブレーキペダルを踏んで徐々に減速しながら停車した場合のように、信号待ちや渋滞等により暫く停車が持続されると予測される時にはエンジンを停止させるが、急停車した場合等のように直ぐに走行を再開することが予測されるときにはエンジンを停止させないのが一般的である。また、エンジンが十分に温まっていなかったり、バッテリの温度が低い場合や残存容量が少なく電池電圧が低い場合等のように、エンジンを再始動させる際の負担が大きいときにも、このアイドリング・ストップ機能を制限してエンジンを停止させないように制御する。しかも、このアイドリング・ストップ機能によるエンジンの停止中には、例えばサイドブレーキが引かれていない状態でブレーキペダルから足が離れた場合等のように、再び走行を開始することが予測されると、レスポンスを向上させるために、事前にエンジンを再始動するように制御を行うこともある。
【0003】
ただし、上記アイドリング・ストップ機能を備えた自動車は、アイドリング・ストップによるエンジンの停止中の電力がバッテリからしか供給されないことと、大きな電力を消費するエンジン始動の回数が多くなるために、放電が深くなり充電量が低い状態で使用されることが多くなる。しかも、特に最近の自動車は、電気機器が多数装備され、アイドリング・ストップによるエンジンの停止中にも多くの電力を消費するようになっている。従って、バッテリに従来の一般自動車向け仕様の鉛蓄電池を用いると、充電回復性がそれほど高くないために、充電量が少なくなった鉛蓄電池を所定の充電状態に戻すまでに長い連続走行が必要になったり、市街地走行時等では、充電不足の状態がいつまでも回復しないために、停車時にもエンジンを停止させないように制御が行われて、アイドリング・ストップ機能を有効に活用することができないようになる可能性がある。また、このような従来仕様の鉛蓄電池は、深い充放電を繰り返すと劣化が急速に進行するので、電池寿命も著しく短くなる。
【0004】
このため、現在では、活物質の密度や量を最適化して深い充放電による劣化を抑制すると共に、この活物質に添加剤を加えて充電回復性を向上させることにより、上記アイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリとして用いるために最適設計されたアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池の開発が進められている。
【0005】
ところが、上記アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池の外観形状や端子構造等を従来仕様の鉛蓄電池と全く同じにすると、ユーザーがアイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリを交換する際に、電池特性の違いを知らずに、誤って従来仕様の鉛蓄電池を使用してしまうおそれがある。しかし、このために鉛蓄電池の外観形状や端子構造等を変えることにより従来仕様の鉛蓄電池が装着できないようにしたのでは、急なバッテリトラブル等により一時的・緊急避難的に、入手が容易な従来仕様の鉛蓄電池を利用したいという場合にも、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池以外は使用できないという不都合が生じる。
【0006】
そこで、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車では、従来仕様の鉛蓄電池とアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池の双方が装着可能でありながら、これらを容易に識別することにより、例えば従来仕様の鉛蓄電池が装着された場合には、アイドリング・ストップ機能を制限したり、運転者にアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池への交換を促す警告を発したりすることができる技術の開発が望まれていた。
【0007】
なお、電気自動車等のように多数の蓄電池を用いる場合、各単電池にICメモリを接続すると共に、温度情報、ガス情報及び電池電圧を検出するセンサを設け、これらのセンサで検出した情報をICメモリに記憶させておいて、各単電池のICメモリの内容を読み出すことにより、多数の蓄電池の故障診断を容易に行うことができるようにしたものが従来からあった(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このICメモリは、センサが検出した情報を保持しているにすぎず、電池特性に関する情報を保持するものではないので、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池であるかどうかを識別することはできないという問題があった。また、このようなICメモリを用いたのでは、自動車に装着した鉛蓄電池にさらにコネクタを接続してICメモリとの通信が可能となるようにする必要があり、この接続作業が面倒なためにバッテリの使い勝手が悪くなるという欠点もある。
【特許文献1】特許第3226960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電池特性に関する情報を備えた無線ICタグ等の電池特性識別手段を設けることにより、アイドリング・ストップ仕様かどうか等の蓄電池の識別を容易に行うことができる蓄電池及び蓄電池識別装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の蓄電池は、電池に少なくとも電池特性に関する情報を保持した無線ICタグが取り付けられたことを特徴とする。
【0010】
ここで、無線ICタグとは、1個以上のICチップとアンテナとからなり、このICチップに、少なくとも外部の無線ICタグリーダとの間で無線通信を行うための無線通信回路と、この無線通信により送信する情報を保持する不揮発性メモリと、これらの無線通信装置と不揮発性メモリとを制御する制御回路とを備えたものをいう。しかも、ここでいう無線ICタグは、電源を内蔵したり蓄電池から直接電源の供給は受けず、無線ICタグリーダから電磁誘導によりこの電源が供給されるようになったものを指す。なお、不揮発性メモリは、読み出し専用のものに限らず、書き換え可能や追記可能なものであってもよい。また、アンテナは、通常は外付けされるが、ICチップ上に形成することも可能である。
【0011】
また、電池特性に関する情報とは、電池のメーカや製品の種類に関わらず、電池特性そのものやその特徴を示す情報をいう。例えば、電池のメーカや製品の種類を識別する製品情報を保持した無線ICタグを販売時に蓄電池に取り付けた場合、この製品情報と電池特性とを対応させた対応情報を持っていれば、この製品情報を読み出すことにより電池特性を検出することはできる。そして、過去の蓄電池製品についての対応情報を全て保持するようにすれば、新しい読み出し側の装置が古い蓄電池の電池特性を製品情報から検出することもでき、上位互換性を保つことができる。しかしながら、読み出し側の装置が古い場合には、新しい製品についての対応情報を保持していないため、新しい蓄電池の電池特性を検出することができず、下位互換性を保つことができない。これに対して、電池特性に関する情報は、電池のメーカや製品の種類には関わりなく(特定のメーカや製品の特定のシリーズに固有のものであってもよい)、電池特性自体を示す情報をいい、上位互換性だけでなく、下位互換性も有する情報である。
【0012】
電池特性そのものの情報とは、例えば電池のある特性を示す数式や表、数値の羅列のようなものをいう。この場合、数式や表、数値が意味する内容や単位は予め取り決めておく。また、電池特性の特徴を示す情報とは、例えばアイドリング・ストップ仕様かどうかを示すような情報をいう。この場合、アイドリング・ストップ仕様の蓄電池の電池特性がどのようなものかは、予め取り決めしておけばよい。また、後にアイドリング・ストップ仕様の蓄電池の電池特性をさらに細分化する必要が生じたとしても、この情報が下位互換性を保っていればよい。つまり、古い読み出し側の装置でこの電池特性に関する情報を読み出した場合に、細分化した詳細な電池特性の情報までは分からなくても、少なくともアイドリング・ストップ仕様であることが分かるような情報であれば、下位互換性は保つことができ、このような互換性を持った情報の形式は、予め取り決めしておくことができる。
【0013】
請求項2の蓄電池は、前記無線ICタグが書き換え可能又は追記可能な不揮発性メモリを備えたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項3の蓄電池識別装置は、電池容器の表面に形成された凹部若しくは凸部又はこれら凹部と凸部の組み合わせによって少なくとも電池特性に関する情報を示す電池特性識別手段が設けられた蓄電池と、この蓄電池の外部に配置され、この蓄電池の電池特性識別手段の凹凸に応じて検出部が変位することにより回路が開閉する検出スイッチからなる電池特性検出装置とによって構成されたことを特徴とする。
【0015】
ここで、電池特性検出装置の検出スイッチは、マイクロスイッチ等のように、検出部(アクチュエータ等)が電池特性識別手段である電池容器の表面(上面だけでなく側面や底面も含む)の凹凸に接触したかどうかによる変位の相違により、回路が開いたり閉じたりして検出を行うものを示す。
【0016】
請求項4の蓄電池又は蓄電池識別装置は、前記電池特性に関する情報が、アイドリング・ストップ仕様の電池特性を有することを示す情報であることを特徴とする。
【0017】
ここで、アイドリング・ストップ仕様の電池特性とは、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリとして適した蓄電池の電池特性をいい、具体的には深い充放電による劣化が抑制されると共に充電回復性を向上させた電池特性をいう。
【0018】
請求項5の蓄電池識別装置は、センサが設けられた蓄電池と、この蓄電池の外部に配置され、この蓄電池のセンサに接続されることにより、この蓄電池がアイドリング・ストップ仕様の電池特性を有するものであること検出する電池特性検出装置とによって構成されたことを特徴とする蓄電池識別装置。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、無線ICタグに保持された電池特性に関する情報を、蓄電池を装着した機器等の無線ICタグリーダによって読み出すことができるので、この蓄電池の電池特性に適した制御を行うことができ、この蓄電池を不用意に劣化させたり電池能力を無駄にするようなことがなくなる。しかも、無線ICタグリーダは、装着した蓄電池の近傍に配置するだけで、無線通信により情報を読み出すことができるので、蓄電池装着時に位置合わせやコネクタの接続作業等が不要となり、従来の蓄電池の使い勝手を維持することができる。また、無線ICタグは、大容量の情報を保持できるので、電池特性に関する詳細な情報を保持することにより、各蓄電池の電池特性に応じたきめ細かな制御を行うこともできるようになる。
【0020】
請求項2の発明によれば、蓄電池を装着した機器等の無線ICタグリーダ/ライタによって無線ICタグにこの蓄電池の使用履歴等に関する情報を保持させることができるので、蓄電池を装着した機器等の側でこの使用履歴等に応じた制御を行ったり、蓄電池メーカ等がこの使用履歴等を参照して製品の改良等に利用することもできるようになる。
【0021】
請求項3の発明によれば、蓄電池の電池容器の凹凸形状からなる電池特性識別手段を、蓄電池の装着場所等に配置された検出スイッチからなる電池特性検出装置によって検出することができるので、この蓄電池の電池特性に適した制御を行うことができ、この蓄電池を不用意に劣化させたり電池能力を無駄にするようなことがなくなる。しかも、蓄電池を電池容器の凹凸によって識別することができるので、別途特別な部品を用いる必要がなくなり、この蓄電池のコストアップを防止することができるようになる。
【0022】
請求項4の発明によれば、装着された蓄電池がアイドリング・ストップ仕様であるかどうかを自動車側の制御装置が知ることができるので、一時的・緊急避難的に又は誤って従来仕様の蓄電池が装着された場合に、アイドリング・ストップ機能を無効又は抑制することによりこの蓄電池の負担を軽減したり、運転者に警告を発して早期にアイドリング・ストップ仕様の蓄電池への交換を促す等の制御を行うことができるようになる。
【0023】
請求項5の発明によれば、蓄電池に設けられたセンサに外部の電池特性検出装置が接続されることにより、装着された蓄電池がアイドリング・ストップ仕様であるかどうかを自動車側の制御装置が知ることができるので、一時的・緊急避難的に又は誤って従来仕様の蓄電池が装着された場合に、アイドリング・ストップ機能を無効又は抑制することによりこの蓄電池の負担を軽減したり、運転者に警告を発して早期にアイドリング・ストップ仕様の蓄電池への交換を促す等の制御を行うことができるようになる。しかも、蓄電池の温度や電池電圧を検出するためのセンサを、アイドリング・ストップ仕様であるかどうかの識別のために兼用するので、別途特別な部品を用いる必要がなくなり、この蓄電池のコストアップを防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0025】
〔第1実施形態〕
本実施形態は、請求項1又は請求項2を引用した請求項4に対応する鉛蓄電池1について説明する。従って、この鉛蓄電池1は、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車に用いるアイドリング・ストップ仕様のものである。図1に示すように、この鉛蓄電池1の外観は、従来仕様の鉛蓄電池と全く同じであり、樹脂製の方形容器状の電槽1aと、この電槽1aの上端開口部を塞いで封止する樹脂製の蓋板1bとによって電池容器が構成されている。この電槽1aは、隔壁によって内部が複数のセルに区切られていて、各セルには、それぞれ発電要素が収納されると共に電解液が充填されている。発電要素は、従来仕様の鉛蓄電池と同様に、正負の極板を交互に並べたものであるが、これらの極板に塗布する活物質の密度や量を最適化したり、この活物質に添加剤を加えることにより、深い充放電による劣化を抑制すると共に充電回復性を向上させて、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1としている。
【0026】
上記電槽1aの上端開口部を塞ぐ蓋板1bには、電池容器の内外に貫通する正負の端子1c、1dが埋め込み成形されていて、電槽1aの各セルに収納されて直列接続された発電要素に接続されている。また、この蓋板1bの上面には、鉛蓄電池1のメーカ名や型番等を示すラベル1eが貼り付けられている。ただし、この蓋板1bの上面におけるラベル1eの貼り付け部Aには、従来仕様の鉛蓄電池とは異なり、僅かな窪みである溝部1fが形成されている。そして、この溝部1fに嵌め込むように無線ICタグ2を取り付けてから、その上面を覆い隠すようにラベル1eが貼り付けられている。
【0027】
上記無線ICタグ2は、無線通信回路と不揮発性メモリとマイクロコンピュータを集積した1個のICチップに小型アンテナを接続してモールドしたものであり、後に説明する無線ICタグリーダ/ライタ3から電磁誘導による電源の供給を受けて無線通信を行うようになっている。従って、鉛蓄電池1との間の電気的な接続は不要であり、長期保管した場合にも、この鉛蓄電池1の電力を浪費するようなことがない。不揮発性メモリは、電源を供給することなく記憶した情報を保持できる半導体メモリであり、マイクロコンピュータに含まれるものでも外付けのものでもよい。例えば読み出し専用の不揮発性メモリとしてはマスクROM等が用いられ、書き換え可能な不揮発性メモリとしてはEEPROM等が用いられる。この不揮発性メモリには、少なくとも予めアイドリング・ストップ仕様であることを示す情報が記憶されている。また、鉛蓄電池1のメーカや製品の型番を示す情報を併せて記憶させておいてもよい。さらに、不揮発性メモリが書き換え可能なものである場合には、鉛蓄電池1の使用履歴の情報を記憶する領域を確保しておくことができ、この領域には予め初期情報を記憶させておくことができる。この使用履歴の情報は、鉛蓄電池1が自動車に装着されている間の累積時間や、使用開始からの累積放電量、異常高温/低温環境での累積経過時間、過放電/過充電状態での累積経過時間等である。
【0028】
上記構成のアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1は、従来仕様の鉛蓄電池と外観形状が同じであり、端子1c、1dの構造も同じであるため、この従来仕様の鉛蓄電池と同様の取り付け方法で自動車のバッテリ搭載部に装着することができる。そして、図2に示すように、アイドリング・ストップ仕様の自動車のバッテリ搭載部の近傍に上記無線ICタグリーダ/ライタ3を配置しておけば、この無線ICタグリーダ/ライタ3が鉛蓄電池1の無線ICタグ2と通信を行うことによりアイドリング・ストップ仕様であることを示す情報を読み出すことができる。この無線ICタグリーダ/ライタ3がアイドリング・ストップ仕様であることを示す情報を読み出した場合には、自動車のアイドリング・ストップ制御装置4がアイドリング・ストップ機能を有効にして制御を行う。しかしながら、この自動車に従来仕様の鉛蓄電池が装着された場合には、無線ICタグリーダ/ライタ3が無線ICタグ2からアイドリング・ストップ仕様ではないことを示す情報を読み出すか、又は、無線ICタグ2が存在しないために通信による情報の読み出しに失敗する。従って、無線ICタグリーダ/ライタ3がこれらのいずれかによってアイドリング・ストップ仕様であることを示す情報を読み出せなかった場合には、アイドリング・ストップ制御装置4がアイドリング・ストップ機能を強制的に無効にしたり、運転席の警告表示装置等により運転者にアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1への交換を促す警告を発する。
【0029】
この結果、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車は、装着した鉛蓄電池1がアイドリング・ストップ仕様のものであるかどうかを無線ICタグリーダ/ライタ3により識別することができるので、それぞれの電池特性に適した制御を行うことができるようになり、従来仕様の鉛蓄電池を不用意に劣化させるのを防止したり、充電不足によるエンジン始動の失敗等のトラブルを回避することができるようになる。しかも、無線ICタグリーダ/ライタ3は、鉛蓄電池1を装着するバッテリ搭載部の近傍に配置するだけでよいので、この鉛蓄電池1の装着時に位置合わせやコネクタの接続作業等が不要となり、従来仕様の鉛蓄電池と同様の使い勝手を維持することができる。
【0030】
また、無線ICタグ2の不揮発性メモリが書き換え可能なものである場合には、上記無線ICタグリーダ/ライタ3は、この不揮発性メモリに記憶された鉛蓄電池1の使用履歴の情報を、その使用状況に応じて随時書き換えたり追加することができる。そして、この使用履歴の情報を読み出せば、自動車の制御装置が鉛蓄電池1の寿命等を予測することができ、これに応じて最適な制御を行うことができるようになる。また、この鉛蓄電池1のメーカ等も、例えば回収した鉛蓄電池1の使用履歴と実際の劣化の状態を比較する等して、製品の改良等に利用することができるようになる。
【0031】
ここで、上記アイドリング・ストップ仕様であることを示す情報の形式は、いずれの自動車の無線ICタグリーダ/ライタ3でも判別できるように、予め定めておく必要がある。このような判別のためには、簡単には、例えば不揮発性メモリの特定のアドレスの特定のビットが「1」である場合にアイドリング・ストップ仕様であることを示し、「0」である場合には従来仕様であることを示すというように定めてもよいし、アイドリング・ストップ仕様についての情報であることを識別するための符号列の後に当該仕様であるかどうかを示す符号(符号列)を続けたようなものであってもよい。そして、一旦アイドリング・ストップ仕様について定めた情報の形式は、以降変更を行わないようにすることにより、新型の自動車が旧型の鉛蓄電池1を認識することを可能にする上位互換性だけでなく、旧型の自動車が新型の鉛蓄電池1を認識することを可能にする下位互換性も確保することができる。また、例えば同じアイドリング・ストップ仕様であっても、後に電池特性の相違によりアイドリング・ストップ制御装置4による制御内容を変えた方が良いというような事情が生じた場合にも、アイドリング・ストップ仕様についての元の情報の形式は変更せずに、旧型の自動車の無線ICタグリーダ/ライタ3では読み出さないような形式又は無視されるような形式で新たにアイドリング・ストップ仕様を細分化し拡張した情報を記憶させるようにする。従って、旧型の自動車では、いずれの鉛蓄電池1も同じアイドリング・ストップ仕様としてしか認識しないが、新型の自動車では、アイドリング・ストップ仕様の拡張情報も読み出すことができるので、より最適な制御が可能になる。このように上位互換性と下位互換性が確保可能な情報の形式としては、新たな拡張情報を元の情報とは別個に新規に追加して記憶させるようにしてもよいし、例えば旧式の自動車では、アイドリング・ストップ仕様についての情報をマスクしてその一部だけしか認識できないようにしておくこともできる。即ち、例えばアイドリング・ストップ仕様についての情報が8ビットのデータで表される場合、本実施形態の無線ICタグリーダ/ライタ3では、このデータのいずれか1ビットだけをマスクして取り出し、この1ビットが「0」であるか「1」であるかによってアイドリング・ストップ仕様であるかどうかを判断するようにしておけば、後にアイドリング・ストップ仕様が拡張されたときに、他のビットでその拡張情報を表すことができるようになる。
【0032】
ただし、上記情報の形式は、無線ICタグリーダ/ライタ3と無線ICタグ2との間のインターフェイスとして定められていればよいので、不揮発性メモリに記憶された情報の実際の形式は無線ICタグ2ごとに任意に定めることができる。即ち、例えば無線ICタグリーダ/ライタ3が無線通信により無線ICタグ2にアイドリング・ストップ仕様であるかどうかを問い合わせる所定の形式のコマンドを送信した場合に、無線ICタグ2がこの問い合わせに対する正しい回答を所定の形式で返信できればよいので、不揮発性メモリ上の情報の形式は任意であり、無線ICタグ2の通信プログラム(この通信プログラムの実行コードも不揮発性メモリに記憶されている)における返信処理ルーチン内の条件分岐等のように、アルゴリズムとしてこの情報を保持させることもできる。
【0033】
ところで、上記不揮発性メモリに鉛蓄電池1のメーカや製品の型番を示す情報を記憶させている場合には、この鉛蓄電池1の販売管理用の無線ICタグ2としても利用することができる。しかしながら、メーカや製品の型番を示す情報のように製品情報のみを記憶させた無線ICタグを鉛蓄電池1に取り付けて、この無線ICタグから読み出した情報によりアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1かどうかを判断する場合には、上位互換性は確保できても下位互換性を確保することはできない。なぜなら、新型の自動車の無線ICタグリーダ/ライタ3は、予め対応情報が設定されていれば旧型の鉛蓄電池1のメーカや製品の型番からその電池特性を知ることはできるが、旧型の自動車の無線ICタグリーダ/ライタ3は、後に発売された新型の鉛蓄電池1のメーカや製品の型番からその電池特性を知ることはできないからである。
【0034】
なお、上記第1実施形態では、無線ICタグ2を鉛蓄電池1の蓋板1bの溝部1fに配置する場合を示したが、装着時に近傍に配置した無線ICタグリーダ/ライタ3と通信ができればよいので、この蓋板1bや電槽1aの表面に容易には剥がれることがないように貼り付けたり、これら蓋板1bや電槽1aの内部に樹脂成形時に埋め込んだり、これら蓋板1bや電槽1aからなる電池容器の内側等に取り付けるようにすることもできる。
【0035】
また、上記第1実施形態では、不揮発性メモリとして読み出し専用か書き換え可能なものを用いる場合を示したが、追記可能な不揮発性メモリを用いることもできる。追記可能な不揮発性メモリとは、一旦書き込まれたデータは書き換えられないが、未記録領域には1度だけ追記することが可能となるメモリである。この場合、追記された全データがそれまでの履歴として有効であると扱うこともできるが、最も新しく追記されたデータだけを有効とすることにより実質的な情報の書き換えを行うこともできる。
【0036】
また、上記第1実施形態では、無線ICタグ2に鉛蓄電池1の使用履歴の情報を記憶させる場合を示したが、自動車のバッテリは、通常は一旦新品の鉛蓄電池1を装着すると寿命が尽きるまで交換することはないので、この鉛蓄電池1の使用履歴は自動車の制御装置側で管理することもできる。しかしながら、自動車の制御装置に記録された鉛蓄電池1の履歴は、自動車のメンテナンスや事故によりリセットされて消去されるおそれもあるので、鉛蓄電池1側でも併せて記録しておく意義はある。さらに、例えば電気自動車のバッテリは、充電に長時間を要するので、充電スタンド等でこの充電作業を行う代わりに、自動車に装着した鉛蓄電池1をカートリッジごと充電済みのものに交換して運用するサービス方法も考えられている。そして、このように鉛蓄電池1を交換しながら使用する場合には、使用履歴をこの鉛蓄電池1側で記録することが有意義となる。
【0037】
また、上記第1実施形態で示したアイドリング・ストップ制御装置4の制御内容は例示であり、アイドリング・ストップ仕様であるかどうかを示す情報に基づいて任意の制御を行うことができる。例えば、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1である場合に、その使用履歴を参照して、単に充電量だけでなく、極板の劣化の程度等も考慮してアイドリング・ストップ機能の制御内容を変更することもできる。
【0038】
また、上記第1実施形態では、無線ICタグ2にアイドリング・ストップ仕様であることを示す情報を記憶させる場合を示したが、電池特性に関する情報であれば、他の情報を記憶させることもできる(請求項1又は請求項2)。電池特性に関する情報とは、上記のように鉛蓄電池1のメーカや製品の型番を示す情報とは異なり、電池特性そのものやその特徴を示す情報をいう。例えば、鉛蓄電池1のある電池特性がX−Y平面上の曲線で示される場合、X軸とY軸が示す意味やスケール、サンプリング間隔、単位等を予め取り決めしておけば、この特性曲線を示す数式や、この特性曲線を離散的に示す数値の羅列のような情報を保持することにより、電池特性そのものを示すことができる。そして、このような情報があれば、これまでにない新規の特性曲線を持つ鉛蓄電池1が新たに開発された場合でも、旧型の自動車の無線ICタグリーダ/ライタ3で読み出してこの新しい電池特性を認識することができ、下位互換性を保つことができる。また、電池特性そのものではないが、電池特性の特徴を示す情報としては、上記アイドリング・ストップ仕様かどうかを示す情報のように、予め取り決めしておいた電池特性の有無やレベル等を示す情報である。
【0039】
また、上記第1実施形態では、自動車に用いる鉛蓄電池1について説明したが、自動車に限らず、例えば潜水艦や飛行機等に用いるものでもよく、さらに、鉛蓄電池1以外の蓄電池にも同様に実施可能である。
【0040】
〔第2実施形態〕
本実施形態は、請求項3を引用した請求項4に対応する鉛蓄電池1を用いた蓄電池識別装置について説明する。従って、この鉛蓄電池1も、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車に用いるアイドリング・ストップ仕様のものである。この鉛蓄電池1は、図1に示したものとほぼ同様の構成である。ただし、蓋板1bには無線ICタグ2は取り付けられず、図3に示すように、電槽1aの底面に凹部1gが形成されている。凹部1gは、電槽1aの平坦な底面の所定箇所に形成した上向きの窪みであり、樹脂成形の際に同時に形成してもよいし、成形後に追加工により形成してもよい。なお、この図3では、凹部1gの窪みを分かり易くするために、電槽1aの底板の板厚等を実際よりも厚く示している。
【0041】
上記鉛蓄電池1は、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリ搭載部に配置されたバッテリトレイ5上に載置されて装着される。バッテリトレイ5は、鉛蓄電池1の電槽1aの底面よりも多少広い方形の金属板の周縁部を少し上方に持ち上げたトレイ状の支持板であり、この上に載置された鉛蓄電池1を図示しない固定具により固定するようになっている。また、バッテリトレイ5に載置された鉛蓄電池1は、端子1c、1dに配線が施されて装着が完了する。
【0042】
ただし、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリトレイ5には、一般自動車用のものとは異なり、装着する鉛蓄電池1の凹部1gに対応する位置に貫通孔5aが形成されている。また、このバッテリトレイ5の下側にはマイクロスイッチ6が固定されていて、このマイクロスイッチ6のピン押ボタン型のアクチュエータ6aが貫通孔5aを貫通し、バッテリトレイ5の上面の上方に突出するようになっている。このマイクロスイッチ6は、鉛蓄電池1が装着されていない場合には、アクチュエータ6aが押し込まれることなくバッテリトレイ5の上方に突出するので、OFFの状態となるが、このアクチュエータ6aが下方に押し込まれるとONの状態となる。
【0043】
上記構成により、バッテリトレイ5に本実施形態の鉛蓄電池1が装着された場合にも、マイクロスイッチ6は、アクチュエータ6aが凹部1gに入り込んでほとんど押し込まれないので、OFFの状態のままとなる。しかしながら、図4に示すように、このバッテリトレイ5に従来仕様の鉛蓄電池7が装着されると、電槽7aの底面が平坦であり凹部が形成されていないために、マイクロスイッチ6は、アクチュエータ6aがこの平坦な底面に押し込まれてON状態となる。従って、このマイクロスイッチ6のON/OFF状態を制御装置で検出すれば、バッテリトレイ5に装着された鉛蓄電池1又は鉛蓄電池7がアイドリング・ストップ仕様のものか否かを識別することができ、アイドリング・ストップ仕様ではない場合には、アイドリング・ストップ機能を強制的に無効にしたり、運転席の警告表示装置等により運転者にアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1への交換を促す警告を発することができる。
【0044】
なお、バッテリトレイ5に鉛蓄電池1及び鉛蓄電池7が装着されていない場合にもマイクロスイッチ6はOFF状態となるが、この場合には、制御装置にも電源が供給されないので、誤検出となることはない。また、制御装置への電源が別途供給される場合にも、バッテリトレイ5に鉛蓄電池1及び鉛蓄電池7が装着されていなければ、この鉛蓄電池1又は鉛蓄電池7からの電源が供給されていないことを制御装置が検出することは可能であるため、これによって誤検出を防ぐことができる。
【0045】
この結果、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車は、装着した鉛蓄電池1又は鉛蓄電池7がアイドリング・ストップ仕様のものであるかどうかをマイクロスイッチ6のON/OFF状態により識別することができるので、それぞれの電池特性に適した制御を行うことができるようになり、従来仕様の鉛蓄電池7を不用意に劣化させるのを防止したり、充電不足によるエンジン始動の失敗等のトラブルを回避することができるようになる。しかも、鉛蓄電池1の電槽1aの底面に凹部1gを形成するだけで識別することができるので、無線ICタグ2等の特別な部品を別途用いる必要がなくなり、この鉛蓄電池1のコストアップを防止することができるようになる。
【0046】
なお、上記第2実施形態では、凹部1gを電槽1aの底面に形成した場合を示したが、この電槽1aの側面や蓋板1bの上面等に形成してもよく、電池容器の表面であれば、いずれの位置に形成してもよい。また、凹部1gに代えて凸部を形成してもよい。電槽1aの底面に凹部1gを形成する場合、この凹部1gの窪みによって電槽1aの底板の板厚が薄くなるが、凸部であれば板厚が薄くなって電池容器の強度が低下するようなおそれがなくなる。しかも、凸部であれば、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1を正しく装着した場合に、マイクロスイッチ6のアクチュエータ6aが押し込まれてONの状態となるので、バッテリトレイ5に何も装着されていない状態と確実に区別することができるようになり、鉛蓄電池1又は鉛蓄電池7のいずれかの装着を制御装置で確認する必要がなくなる。さらに、電槽1aの底面に凸部が形成されていれば、貫通孔5aの形成されていない一般自動車用のバッテリトレイ5に載置した際に、鉛蓄電池1が斜めになるので、誤ってアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1を一般自動車に装着するミスをなくすこともできる。さらに、凹部1gや凸部単独ではなく、これら凸部と凹部を組み合わせたものであってもよい。このように凸部と凹部の組み合わせを用いた場合には、各凸部や凸部ごとにマイクロスイッチ6を設ける必要が生じるが、これら凸部と凹部の組み合わせによって電池特性に関する詳細な情報を保持することにより、各蓄電池の電池特性に応じたきめ細かな制御を行うこともできるようになる。
【0047】
また、上記第2実施形態では、凹部1g等の検出にマイクロスイッチ6を用いる場合を示したが、この凹凸に応じて検出部が変位して回路が開閉する機械式の検出スイッチであれば、他の任意のものを用いることができる。
【0048】
また、上記第2実施形態で示した制御装置の制御内容は、第1実施形態のアイドリング・ストップ制御装置4の場合と同様に例示であり、その他の任意の制御を行うことができる。さらに、上記第2実施形態では、凹部1g等が備える情報をアイドリング・ストップ仕様の情報として検出する場合を示したが、電池特性に関する情報であれば、他の情報を備えさせることもできる(請求項3)。この電池特性に関する情報は、第1実施形態の場合と同じである。
【0049】
また、上記第2実施形態では、自動車に用いる鉛蓄電池1について説明したが、自動車に限らず、例えば潜水艦や飛行機等に用いるものでもよく、さらに、鉛蓄電池1以外の蓄電池にも同様に実施可能である。
【0050】
〔第3実施形態〕
本実施形態は、請求項5に対応する鉛蓄電池1を用いた蓄電池識別装置について説明する。従って、この鉛蓄電池1も、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車に用いるアイドリング・ストップ仕様のものである。この鉛蓄電池1は、図5に示すように、図1に示したものとほぼ同様の構成である。ただし、蓋板1bには無線ICタグ2は取り付けられず、電槽1a内に温度センサ8が配置され、この温度センサ8からのリード線が蓋板1bを封止されて貫通し、鉛蓄電池1の外部の温度検出回路9に接続されている。本実施形態では、温度センサ8としてサーミスタを用いる。また、温度検出回路9は、この温度センサ8に通電を行ったときの抵抗値によって温度を検出する回路であり、検出した温度情報を電圧値やそのディジタルデータとして出力するようになっている。なお、図5では、温度センサ8が1個だけ配置された場合を示すが、この個数や配置位置は任意であり、例えば電槽1a内の各セルごとに1個ずつ極板に近い位置に配置してもよい。
【0051】
上記鉛蓄電池1は、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリ搭載部に装着され、温度検出回路9は、この自動車の制御装置に接続される。ここで、従来仕様の鉛蓄電池は、通常は蓄電池内部に温度センサが設けられることはない。しかしながら、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1は、エンジン始動の回数が多くなるために、この鉛蓄電池1の温度を検出して、例えばこの温度が低い場合には、電池性能を十分に発揮することができないために、残存容量がある程度多い場合にもアイドリング・ストップ機能を制限することが好ましい。このため、自動車のバッテリ搭載部に温度センサを配置して、装着した鉛蓄電池1の温度を検出する方法もあるが、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1には全て、蓄電池内部に温度センサ8を設けるように取り決めすると共に、温度検出回路9や制御装置との接続(コネクタ等のハードウエア及び信号内容)を独自の共通の規格で行うように取り決めしたものとする。
【0052】
上記構成により、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車のバッテリ搭載部に本実施形態の鉛蓄電池1が装着されると、この自動車の制御装置は、温度検出回路9を介して温度センサ8からの鉛蓄電池1内部の温度情報を得ることができる。しかしながら、従来仕様の鉛蓄電池が装着された場合には、制御装置は、鉛蓄電池1内部の温度情報を得ることができない。従って、この制御装置は、このような温度情報の有無に応じて、装着された鉛蓄電池がアイドリング・ストップ仕様のものか否かを識別することができ、アイドリング・ストップ仕様ではない場合には、アイドリング・ストップ機能を強制的に無効にしたり、運転席の警告表示装置等により運転者にアイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1への交換を促す警告を発することができる。
【0053】
なお、従来仕様の鉛蓄電池が蓄電池内部の温度を検出する温度センサを備えていて、この鉛蓄電池を装着する自動車も、この温度センサの出力を受け取るようになっているものがあったとしても、この場合は接続の規格が異なるために、上記温度センサ8からの温度情報とは区別することができる。従って、このような場合の温度センサの出力は、そのまま鉛蓄電池内部の検出温度として制御に利用してもよいが、その鉛蓄電池がアイドリング・ストップ仕様であるかどうかの判断には利用されない。
【0054】
この結果、アイドリング・ストップ機能を備えた自動車は、装着した鉛蓄電池がアイドリング・ストップ仕様のものであるかどうかを温度情報の有無により識別することができるので、それぞれの電池特性に適した制御を行うことができるようになり、従来仕様の鉛蓄電池を不用意に劣化させるのを防止したり、充電不足によるエンジン始動の失敗等のトラブルを回避することができるようになる。しかも、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1に設けることが要請されている温度センサ8を利用して識別することができるので、無線ICタグ2等の特別な部品を別途用いる必要がなくなり、この鉛蓄電池1のコストアップを防止することができるようになる。
【0055】
なお、上記第3実施形態では、温度センサ8を鉛蓄電池1内部に配置すると共に温度検出回路9を、請求項5の電池特性検出装置として鉛蓄電池1外部に配置した場合を示したが、温度検出回路9を鉛蓄電池1の内部が蓋板1bの上面等に配置することもできる。つまり、請求項5のセンサは、温度センサ8のようなセンサ素子のみであってもよいし、温度検出回路9をも含むものであってもよい。この請求項5のセンサが温度センサ8と温度検出回路9からなる場合、このセンサに接続された電池特性検出装置は、温度検出回路9が出力した温度情報を、具体的な数値データとの比較等のデータ処理のために受け付ける(例えば処理対象と同じ形式のデータに変換したり、このデータを処理のためにレジスタ等に入力する)制御装置を示すこととなる。
【0056】
また、上記第3実施形態では、鉛蓄電池1の内部の温度を温度センサ8で検出する場合を示したが、このセンサの検出対象は、温度には限定されない。例えば、アイドリング・ストップ仕様の鉛蓄電池1は、この鉛蓄電池1の残存容量にも応じてアイドリング・ストップ機能の制御を行うことが要請されるので、この残存容量を測定するために、鉛蓄電池1の電池電圧や電解液の比重等を検出する場合がある。従って、これら電池電圧を検出する電圧センサや電解液の比重を検出する比重センサ等を鉛蓄電池1に設けることもできる。
【0057】
また、上記第3実施形態で示した制御装置の制御内容は、第1実施形態のアイドリング・ストップ制御装置4や第2実施形態の制御装置の場合と同様に例示であり、その他の任意の制御を行うことができる。
【0058】
また、上記第3実施形態では、自動車に用いる鉛蓄電池1について説明したが、自動車に限らず、例えば潜水艦や飛行機等に用いるものでもよく、さらに、鉛蓄電池1以外の蓄電池にも同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態を示すものであって、鉛蓄電池を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示すものであって、鉛蓄電池の無線ICタグと通信を行う自動車の無線ICタグリーダ/ライタとアイドリング・ストップ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示すものであって、鉛蓄電池とマイクロスイッチを示す部分断面正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示すものであって、従来仕様の鉛蓄電池の一部とマイクロスイッチを示す部分断面正面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示すものであって、鉛蓄電池と温度検出回路を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 鉛蓄電池
1a 電槽
1b 蓋板
1e ラベル
1f 凹部
2 無線ICタグ
3 無線ICタグリーダ/ライタ
4 アイドリング・ストップ制御装置
6 マイクロスイッチ
8 温度センサ
9 温度検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池に少なくとも電池特性に関する情報を保持した無線ICタグが取り付けられたことを特徴とする蓄電池。
【請求項2】
前記無線ICタグが書き換え可能又は追記可能な不揮発性メモリを備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。
【請求項3】
電池容器の表面に形成された凹部若しくは凸部又はこれら凹部と凸部の組み合わせによって少なくとも電池特性に関する情報を示す電池特性識別手段が設けられた蓄電池と、この蓄電池の外部に配置され、この蓄電池の電池特性識別手段の凹凸に応じて検出部が変位することにより回路が開閉する検出スイッチからなる電池特性検出装置とによって構成されたことを特徴とする蓄電池識別装置。
【請求項4】
前記電池特性に関する情報が、アイドリング・ストップ仕様の電池特性を有することを示す情報であることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の蓄電池、又は請求項3に記載の蓄電池識別装置。
【請求項5】
センサが設けられた蓄電池と、この蓄電池の外部に配置され、この蓄電池のセンサに接続されることにより、この蓄電池がアイドリング・ストップ仕様の電池特性を有するものであること検出する電池特性検出装置とによって構成されたことを特徴とする蓄電池識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−4911(P2006−4911A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91781(P2005−91781)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000004282)日本電池株式会社 (48)
【Fターム(参考)】