説明

薄膜トランジスタの製造方法

【課題】 ゲート電極及びソース・ドレイン電極を形成する工程間において、熱の印加による寸法変動を回避し、生産効率を保持したまま、簡易な工程により、安定した特性を有
する薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、ゲート絶縁膜としてのフィルムのいずれかの面にゲート電極、それと異なる面にソース・ドレイン電極を、導電性材料が有機溶媒により溶解された溶液または分散体を印刷することにより形成する薄膜トランジスタの製造方法であって、フィルムの一方の面に、いずれか一方の電極のパターン形状を前記溶液または分散体により印刷する工程と、先に印刷された電極のパターン形状の溶液または分散体を真空乾燥し、有機溶媒を揮発させて電極を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパやRFIDタグ等の薄型化された電子機器が多用されるようになってきている。
これらの電子機器には従来と同様に電子回路が設けられており、この電子回路はトランジスタで形成されている。
現在のシリコン等の無機半導体材料を使用したトランジスタの製造には、高温のプロセスが必要である。
【0003】
一方、電子ペーパやRFIDタグなどを低価格で製造するためには、電子回路を形成するトランジスタを安価に、大量にフレキシブル基材上に形成することが必要である。
この方法として、有機トランジスタ、特に印刷法を用いて形成した有機トランジスタが、安価にフレキシブル基材上に形成する製造方法として知られている(例えば、非特許文献1参照)。
すなわち、印刷法を用いることにより、低温でのトランジスタ形成が可能であるため、フレキシブル基材として樹脂フィルムを使用でき、半導体が有機物であり、これを溶媒に溶解した溶液を印刷インキと同様に印刷することができ、高価な装置を用いる必要がなくなる。
また、無機物の場合でもプラスチックフィルムが耐えられる低温で製膜できる半導体材料が知られている(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】「カギは有機トランジスタ 新材料で1MHz超へ」、日経エレクトロニクス、2004年2月16日号、p93-p113
【非特許文献2】Nature、vol.432 488ページ 、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に示す製造方法にあっては、上述したように印刷法を用いているため、印刷した電極材料の溶液(材料が溶媒に溶解された溶液)の溶媒を揮発させることが必要である。
すなわち、上記製造方法を含め一般的には、印刷により電極を作製する場合、電気材料の溶液の溶媒を揮発させるため、印刷した直後に熱を印加する工程が不可欠となっている。
ここで、熱を印加することにより、フレキシブル基材である樹脂フィルムの寸法を変動させる要因となり、ゲート電極材料を印刷後に、直ちに加熱してゲート電極を形成し、その後にソース及びドレイン電極材料を印刷すると、ゲート電極と、ソース及びドレイン電極との相対的な位置関係を精度良く合わせることができなくなる。
【0005】
この対策として、加熱による寸法変動を見込んだ素子設計、すなわち、印刷板の寸法変化を見込んだ設計を行うことが考えられる。
しかしながら、上述した製造方法は、位置あわせのずれを許容するように設計されるため、各電極自体の寸法が大きくならざるを得ず、トランジスタの高精細化が行えなくなり、かつ、各電極間の容量が増加することで、トランジスタの特性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ゲート電極及びソース・ドレイン電極を形成する工程間において、熱の印加による寸法変動を回避し、生産効率を保持したまま、簡易な工程により、安定した特性を有する薄膜トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、ゲート絶縁膜としてのフィルムのいずれかの面にゲート電極、それと異なる面にソース・ドレイン電極を、導電性材料が有機溶媒により溶解された溶液または分散体を印刷することにより形成する薄膜トランジスタの製造方法であって、前記フィルムの一方の面に、いずれか一方の電極のパターン形状を前記溶液または分散体により印刷する工程と、先に印刷された前記電極のパターン形状の溶液または分散体を真空乾燥し、有機溶媒を揮発させて電極を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記フィルムの他方の面に対し、導電性材料が有機溶媒により溶解された溶液または分散体を、他方の電極のパターン形状に印刷する工程と、前記印刷された他方の電極のパターン形状の溶液を加熱し、有機溶媒を揮発させてソース及びドレイン電極を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記フィルムの一方の面に形成された電極に対向させ、他方の面に他方の電極を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記フィルムのいずれかの面に形成された前記ゲート電極に対向させ、他方の面に有機半導体材料の溶液を有機半導体層パターンとして塗布する工程と、前記有機半導体材料の溶液を乾燥させ、有機溶媒を揮発させて有機半導体層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法において、前記フィルムのいずれかの面に形成された前記ゲート電極に対向させ、他方の面に酸化物半導体材料により酸化物半導体層を堆積させ、酸化物半導体パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、予め成膜されたゲート絶縁膜の両面に、溶媒に電極材料が溶解した溶液を印刷して、これを乾燥させて電極を形成する薄膜トランジスタの製造において、いずれか一方に形成される電極の印刷パターンを真空乾燥により、溶剤を揮発させることで乾燥させて電極形成を行うため、熱により溶剤を揮発させる場合に比して、形成された電極の寸法変化が少なく、初めに印刷されて真空乾燥して形成された電極と、この電極に対向して形成される他の電極との位置合わせが容易に行え、同様に製造される他のトランジスタと電気特性が一様なトランジスタを、安価に量産することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、ゲート絶縁膜としてのフィルムの両面に各々ゲート電極、ソース・ドレイン電極を、導電性材料が有機溶媒により溶解された溶液または分散体を印刷することで形成する有機トランジスタの製造方法であって、フィルムの一方の面に、いずれかの電極のパターン形状に前記溶液または分散体を印刷する工程と、初めに一方の面に印刷された電極のパターン形状の溶液を真空乾燥し、有機溶媒を揮発させて電極を形成する工程とから構成されている。
この製造方法に用いられる上記電極材料の溶液または分散体は、導電性ペーストとして知られている材料であり、金属粉などの導電性フィラーを樹脂及び溶媒と練り合わせてインキ状にされた材料である。
【0014】
したがって、上記導電性ペーストを電極パターン形状に印刷した後に、溶媒を揮発させて除去させる必要がある。
従来例に記述したように、一般的には上記溶媒を、熱を印加させて乾燥することが行われており、この熱による寸法変動により、ゲート電極と、絶縁性のフィルムを介し、このゲート電極に対向するソース及びドレイン電極との位置合わせの精度が低下し、トランジスタの電気特性を低下させている。
このため、本発明の実施形態においては、導電性ペーストにおける溶媒を除去するため、熱で加熱して揮発させるのではなく、真空乾燥を行うことで溶媒を揮発させている。
したがって、本発明においては、真空乾燥させて導電性ペーストの溶媒を揮発させるため、フィルムの寸法変動が少なく、以降の電極の位置合わせが容易である。
【0015】
また、導電性ペーストとしては、用いられる樹脂により、乾燥させるだけで電極として使用可能な乾燥型ペーストと、熱を印加し、この熱エネルギーにより樹脂を硬化させて電極を形成する熱硬化型ペーストとの2種類がある。
これらの導電性ペーストは、その用途により、特に薄膜トランジスタの形成において、積層される材料の溶媒に対する溶解性に応じて適当なものを選択できる。
そして、本発明の実施形態においては、ゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極とのいずれか一方の電極が印刷されて真空乾燥された後、他方の電極を位置合わせして印刷する。
このため、この後に印刷される他方の電極の導電性ペーストにおける溶媒を乾燥させる際、熱を印加させることができるため、熱硬化型ペーストも用いることができる。
【0016】
また、上記導電性ペーストの使い分けは、トランジスタを製造する層構造によって規定される。
上述したように、あらかじめゲート絶縁膜として形成されたフィルムに対し、印刷法により電極を形成して有機トランジスタを製造する場合、この印刷法により印刷して、電極のパターン形状に加工される材料、すなわち有機溶媒を含む材料を用いる対象としては、ゲート電極、ソース・ドレイン電極、そして半導体の三つの各層である。
【0017】
ここで、ソース・ドレイン電極と有機半導体とを積層する際、ソース・ドレイン電極を先に形成して、その後に有機半導体層を形成する場合、先に形成されたソース・ドレイン電極上に対して、有機半導体溶液を滴下することになる。
ここで、一般に有機半導体材料の溶媒に対する溶解度が低いため、その溶液のほとんどは有機溶媒であり、ソース・ドレイン電極が乾燥型の導電性ペーストにより形成されていると、有機半導体材料の溶液中の有機溶媒により、印刷されたソース・ドレイン電極のパターンが膨潤して、電極としての形状が破壊される。
このため、ソース・ドレイン電極を形成した後に、有機半導体層を形成する製造工程においては、先に形成されたソース・ドレイン電極が、滴下される溶液に含まれる有機溶媒に耐性を有することが必要であり、このソース・ドレイン電極の材料としては熱硬化型の導電ペーストを使用する必要がある。
【0018】
また、ソース・ドレイン電極を形成する以前の工程により半導体層を製膜する際、有機半導体層が形成されているため、有機半導体層に有機溶媒が存在していないため、ソース・ドレイン層のパターン形成に用いる導電ペーストとして、乾燥型及び熱硬化型のいずれの導電性ペーストも用いることができる。
なお、実施形態において用いる有機半導体は芳香族化合物であり、一方、導電性ペーストの溶媒は脂肪族化合物が主であり、その含有量も少ない。
このため、有機半導体は、導電性ペーストの溶媒に対してほとんど溶解せず、有機半導体層の形成の後に、導電性ペーストを印刷して、ソース・ドレイン電極を有機半導体層上に加工形成しても、有機半導体層が溶解してパターンが破壊される問題は起こらない。
また、有機半導体溶液の乾燥も電極と同様に真空乾燥を用いることができる。
【0019】
ゲート電極とソース・ドレイン電極との双方の関係も同様であり、ゲート電極とソース・ドレイン電極とのいずれを先に形成するかという作製の順番は、本発明の実施形態において関係がない。
ゲート電極と、ソース・ドレイン電極各々は、ゲート絶縁膜のフィルムの異なった面に対向して形成されるため、一方の面に対して先に印刷した電極材料(溶液)を真空乾燥して、その後他方の面に、上記一方の面に形成した電極に対向する電極の電極材料を印刷するようにすればよい。
【0020】
ここで、薄膜トランジスタの構造はボトムコンタクト構造とトップコンタクト構造との2種類に大別できる。
そして、ボトムコンタクト構造においては、ソース・ドレイン電極の上に半導体層が形成されるため、上述したように、ソース・ドレイン電極の電極材料として、熱硬化性の導電性ペーストが要求される。
一方、トップコンタクト構造においては、半導体層の上にソース・ドレイン電極が形成されるため、ソース・ドレイン電極材料として、乾燥型の導電性ペーストまたは熱硬化型の導電性のペーストのいずれをも用いることができる。
【0021】
一方、ゲート電極はその上に積層工程がないので、有機溶媒に対する耐性を有する必要が無いため、熱硬化性の導電性ペーストを用いる必要がない。
したがって、上記トップコンタクト構造であれば、全ての層の形成に熱を印加する必要が無く、真空乾燥による溶媒の揮発を行うことで、トランジスタを作製可能である。
また、ボトムコンタクト構造であれば、ゲート絶縁膜となるフィルムの表裏の面に、それぞれ電極を印刷した後、先に作製する面の電極を乾燥型の導電性ペーストにより形成して乾燥させた後、他方の面に乾燥型または熱硬化型の導電性ペーストを用いて、乾燥又は加熱によりトランジスタを作製できる。
【0022】
以上のように、薄膜トランジスタの構造によって、ソース・ドレイン電極に有機溶媒に対する耐性(硬化性)が求められることがある。
しかしながら、ボトムコンタクト構造のように、ゲート電極とソース・ドレイン電極とのパターン形成に対し、連続して行われる一連の工程において、先に形成する電極に対して、乾燥型の導電ペーストを用いた真空乾燥による電極のパターン形成を行うため、先に形成した電極に対して位置合わせを行い、他の電極を形成する次工程まで、熱を印加することがないため、この熱によるフィルム(樹脂フィルム基材)の寸法変動が起こらず、トランジスタの電気特性の低下が問題とならない。
【0023】
また、ゲート絶縁膜に用いるフィルムは、樹脂フィルム基材であり、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネートなどの樹脂フィルムを用いることが可能であり、コスト及び熱安定性を考慮するとポリエステルフィルムが最良である。
また、前記樹脂フィルム基材は、膜厚が0.1μm〜2μmの範囲内であることが望ましく、2μmを超えると、トランジスタのゲート絶縁膜として使用した際、高い電圧を印加しなければ動作し難くなり、トランジスタに対しての使用が困難となる。
【0024】
本発明に用いられるゲート電極、ソース・ドレイン電極に使用する電極材料としては、公知の材料として、例えば、金、銀、カーボン等を導電材料に用いた厚膜ペースト、有機金属化合物をペースト化したもの(有機レジネートまたは単にレジネート)、金や銀、ITO(インジウム−スズ酸化物)などのナノ金属粒子をインキ化したもの、あるいはポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンのような有機導電材料を用いることが可能であるが、コストと導電性とを顧慮すると厚膜ペーストが最適である。
【0025】
ここで、乾燥性ペーストは、導電材料と、樹脂(例えば、ポリエステル)と、溶媒(グリコールエーテル)とを所定の比率にて混ぜたものであり、加熱されることにより、溶媒が揮発されて乾燥して、導電材料が樹脂により硬化される。
また、熱硬化性ペーストは、導電材料と、樹脂(例えば、ポリオール)と、架橋剤(例えば、イソシアネート)と、溶媒(グリコールエーテル)とを所定の比率にて混ぜたものであり、加熱されることにより、溶媒が揮発されて樹脂が架橋剤により硬化し、導電材料を固定する。
さらに、他の熱硬化性ペーストとしては、導電材料と、樹脂(例えば、フェノール樹脂)と、溶媒(グリコールエーテル)とを所定の比率にて混ぜたものであり、加熱されることにより、溶媒が揮発されてフェノールが熱により硬化し、導電材料を固定する。
【0026】
また、本発明の実施形態に用いる有機半導体層の材料としては、例えば、公知の材料として、ポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体及びそれらの誘導体のような高分子有機化合物材料が利用できる。
さらに、半導体層としては、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアリルアミン等の既知の有機半導体や、InGaZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系、ZnO、SnO2等の酸化物半導体が使用可能である。
これらの半導体材料は溶媒に可溶な場合は溶媒に溶解して、インクジェット、スタンプ法等の印刷方法で製膜できる。また、溶媒に溶解しない場合でも、スパッタやレーザアブレーション、有機金属化学気相成長等の低温での製膜が可能な真空プロセスで製膜できる。
また、ゲート電極、ソース・ドレイン電極及び有機半導体層の各パターンを印刷法を用いて形成する際、印刷法として、公知の印刷法である凸版印刷、凹版(グラビア)印刷、平板印刷及びスクリーン印刷のような有版印刷、またはインクジェット印刷、静電印刷のような無版印刷を用いることができる。
ゲート電極やソース・ドレイン電極の形成にはスクリーン印刷が適しており、一方、有機半導体層の形成にはインクジェット印刷が最良である。
【0027】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による薄膜トランジスタの製造方法を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の製造過程の各段階におけるトランジスタ構造の断面を示す概念図である。
この図において、粘着フィルム(型番:TP300、日東電工製)10に、ゲート絶縁膜として、厚さ1.2ミクロンのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム20(型番:Q70、帝人デュポン製)をラミネートして(貼り合わせて)固定した(図1(a))。
【0028】
次に、スクリーン印刷法を用いて、ゲート電極を形成する乾燥型ペーストとして、乾燥性銀ペースト(製品名;LS-411AW、アサヒ化学研究所製)を用いて、ゲート電極30となる幅100μm、厚さ10μmのパターンを印刷した後、真空容器に入れ、油回転ポンプで、容器内を2Paの気圧に排気し、60分間放置して乾燥させ、ゲート電極30を形成した(図1(b))。
【0029】
次に、このPENフィルム20を粘着フィルム10よりいったん取り外し、ゲート電極30が印刷されて形成されていない面を表にし、再度、ゲート電極30が印刷された面が粘着層10aと対向するように、粘着フィルム10を用いて固定した(図1(c))。
なお、この粘着フィルム10は、粘着剤(粘着層10a)の厚さを印刷されたゲート電極30の厚さ10μmに対し、30μmと十分厚くしたため、粘着剤がゲート酸化膜30の凹凸を吸収し、ゲート電極30の凹凸の影響による、PENフィルム20の変形は無視できる。
【0030】
次に、PENフィルム20の表面に、スクリーン印別法により、ソース・ドレイン電極を形成する熱硬化型ペーストとして、熱硬化型銀ペースト(型番:SW-1100-1、アサヒ化学研究所製)を、ゲート電極30に対して対向する位置に、幅100μm、厚さ10μm、ソース・ドレイン電極間のスペース50μmのパターンを印刷し、150℃の温度環境で30分間加熱して、硬化させることにより、ソース・ドレイン電極40を形成した(図1(d))。
【0031】
次に、有機半導体溶液として、ポリヘキシルチオフェン(アルドリッチ製)のクロロホルム溶液をマイクロピペット(あるいはインクジェット印刷法)により、ソース・ドレイン電極40上及びそのスペース間に対し滴下して、熱を印加または真空乾燥のいずれかにより乾燥させて、半導体層50を形成し薄膜トランジスタ60を形成した(図1(e))。
そして、上記有機トランジスタの電気特性を測定すると、図2に示すトランジスタ(薄膜トランジスタ)の電圧-電流特性が得られ、本実施形態による製造方法により、良好な特性を有するトランジスタが製造されることが判る。
図2には、有機トランジスタの電圧-電流特性を示し、横軸がドレイン電圧Vd[V]、縦軸がドレイン電流Id[A]であり、各曲線がゲート電圧Vg[V]を印可した場合に対応している。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による薄膜トランジスタの製造方法を図面を参照して説明する。図3は同実施形態の製造過程の各段階におけるトランジスタ構造の断面を示す概念図である。
この図において、粘着フィルム(型番:TP300、日東電工製)10に厚さ1.2ミクロンのPENフィルム20(帝人デュポン製)をラミネートして固定した(図3(a))。
【0033】
次に、スクリーン印刷法を用いて、ゲート電極30となる乾燥型ペーストである乾燥型銀ペースト(型番:LS-415-M、アサヒ化学研究所製)を用いて、幅100μm、厚さ10μmのパターンを印刷し、真空容器に入れ、油回転ポンプにより、容器内を2Paの気圧に排気し、60分間放置して乾燥させ、ゲート電極30を形成した(図3(b))。
【0034】
次に、このPENフィルム20を、粘着フィルム10から一旦取り外し、ゲート電極30が形成されていない面を表にし、再度、ゲート電極30が印刷された面が粘着層10aと対向するように、粘着フィルム10を用いて固定した(図3(c))。
なお、この粘着フィルム10は、粘着剤10aの厚さを、印刷されたゲート電極30の厚さ10μmに対し、30μmと厚くしたため、第1の実施形態において述べたように、ゲート電極30による凹凸の影響による、PENフィルム20の変形は無視できる。
【0035】
次に、有機半導体溶液として、ポリヘキシルチオフェン(アルドリッチ製)のクロロホルム溶液をマイクロピペット(あるいはインクジェット印刷法)により、幅60μm、厚さ0.05μmのパターンとして、ゲート電極30に対向する位置に形成し、室温にて乾燥させて、有機半導体層50を形成する(図3(d))。
【0036】
次に、ゲート電極30に対向する位置において、有機半導体層50上部にスクリーン印刷法を用い、ソース・ドレイン電極40を形成する乾燥型ペーストとして乾燥型銀ペースト(型番:LS-415C-M、アサヒ化学研究所製)を用い、幅100μm、厚さ10μm、ソース電極及びドレイン電極40間のスペース50μmのパターンを印刷した後、真空容器に入れ、油回転ポンプにより、容器内を2Paの気圧に排気し、60分間放置して乾燥させ、ソース・ドレイン電極40を形成し、薄膜トランジスタ60を形成した(図3(e))。
そして、上記薄膜トランジスタの電気特性を測定すると、第1の実施形態の製造方法により形成された薄膜トランジスタと同様に、図2に示すトランジスタの電圧-電流特性が得られ、本実施形態による製造方法により、良好な特性を有するトランジスタが製造されることが判る。
【0037】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による薄膜トランジスタの製造方法を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の製造過程の各段階におけるトランジスタ構造の断面を示す概念図である。
この図において、粘着フィルム(型番:TP300、日東電工製)10に、ゲート絶縁膜として、厚さ1.2ミクロンのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム20(型番:Q70、帝人デュポン製)をラミネートして(貼り合わせて)固定した(図1(a))。
【0038】
次に、スクリーン印刷法を用いて、ゲート電極を形成する乾燥型ペーストとして、乾燥性銀ペースト(製品名;LS-411AW、アサヒ化学研究所製)を用いて、ゲート電極30となる幅100μm、厚さ10μmのパターンを印刷した後、真空容器に入れ、油回転ポンプで、容器内を2Paの気圧に排気し、60分間放置して乾燥させ、ゲート電極30を形成した(図1(b))。
【0039】
次に、このPENフィルム20を粘着フィルム10よりいったん取り外し、ゲート電極30が印刷されて形成されていない面を表にし、再度、ゲート電極30が印刷された面が粘着層10aと対向するように、粘着フィルム10を用いて固定した(図1(c))。
なお、この粘着フィルム10は、粘着剤(粘着層10a)の厚さを印刷されたゲート電極30の厚さ10μmに対し、30μmと十分厚くしたため、粘着剤がゲート酸化膜30の凹凸を吸収し、ゲート電極30の凹凸の影響による、PENフィルム20の変形は無視できる。
【0040】
次に、PENフィルム20の表面に、スクリーン印別法により、ソース・ドレイン電極を形成する熱硬化型ペーストとして、ITOペースト(住友金属鉱山製X101H)を、ゲート電極30に対して対向する位置に、幅100μm、厚さ10μm、ソース・ドレイン電極間のスペース50μmのパターンを印刷し、150℃の温度環境で30分間加熱して、硬化させることにより、ソース・ドレイン電極40を形成した(図1(d))。
【0041】
そして、半導体層7としてrfマグネトロンスパッタ法によりAr+O2の混合ガスを用いてInGaZnO4を、図示しないシャドウマスクを介して室温成膜し(酸化物半導体層を堆積させて)、所定の酸化物半導体層のパターンとなるようパターニングした(図1(e))
そして、上記薄膜トランジスタの電気特性を測定すると、図2に示すトランジスタ(薄膜トランジスタ)の電圧-電流特性が得られ、本実施形態による製造方法により、良好な特性を有するトランジスタが製造されることが判る。
図2には、薄膜トランジスタの電圧-電流特性を示し、横軸がドレイン電圧Vd[V]、縦軸がドレイン電流Id[A]であり、各曲線がゲート電圧Vg[V]を印可した場合に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態による薄膜トランジスタの製造方法を説明する、各工程における薄膜トランジスタの断面を示す概念図である。
【図2】本発明の製造方法で形成した薄膜トランジスタのドレイン電圧-ドレイン電流特性を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による薄膜トランジスタの製造方法を説明する、各工程における有機トランジスタの断面を示す概念図である。
【符号の説明】
【0043】
10…粘着フィルム
10a…粘着剤
20…PENフィルム
30…ゲート電極
40…ソース・ドレイン電極
50…半導体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜としてのフィルムのいずれかの面にゲート電極、それと異なる面にソース・ドレイン電極を、導電性材料が有機溶媒により溶解された溶液または分散体を印刷することにより形成する薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記フィルムの一方の面に、いずれか一方の電極のパターン形状を前記溶液または分散体により印刷する工程と、
先に印刷された前記電極のパターン形状の溶液または分散体を真空乾燥し、有機溶媒を揮発させて電極を形成する工程と
を有することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記フィルムの他方の面に対し、導電性材料が有機溶媒により溶解された溶液または分散体を、他方の電極のパターン形状に印刷する工程と、
前記印刷された他方の電極のパターン形状の溶液を加熱し、有機溶媒を揮発させてソース及びドレイン電極を形成する工程と
を有することを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムの一方の面に形成された電極に対向させ、他方の面に他方の電極を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムのいずれかの面に形成された前記ゲート電極に対向させ、他方の面に有機半導体材料の溶液を有機半導体層パターンとして塗布する工程と、
前記有機半導体材料の溶液を乾燥させ、有機溶媒を揮発させて有機半導体層を形成する工程と
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記フィルムのいずれかの面に形成された前記ゲート電極に対向させ、他方の面に酸化物半導体材料により酸化物半導体層を堆積させ、酸化物半導体パターンを形成する工程
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の薄膜トランジスタの製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−190922(P2006−190922A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96733(P2005−96733)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】