薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法
【課題】突発故障が発生しても、生産性の高い成膜を行うことのできる薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法を提供することである。
【解決手段】成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーの集合である成膜チャンバー群42と、基体を搬送可能な移動チャンバー6と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を3基以上有し、前記移動装置はいずれの成膜チャンバーに対しても基体の受け渡しが可能であり、且つ前記移動装置は前記3基以上の基体仮置き装置に対して基体の受け取りまたは払い出しの少なくともいずれかが可能である薄膜製造装置を提供する。
【解決手段】成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーの集合である成膜チャンバー群42と、基体を搬送可能な移動チャンバー6と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を3基以上有し、前記移動装置はいずれの成膜チャンバーに対しても基体の受け渡しが可能であり、且つ前記移動装置は前記3基以上の基体仮置き装置に対して基体の受け取りまたは払い出しの少なくともいずれかが可能である薄膜製造装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法に関し、より詳細には、複数の成膜チャンバーと移動チャンバーを有する薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石原料の高騰や、発電を行う際の環境への配慮から太陽電池パネルを用いた発電が注目されている。なぜなら、太陽電池は太陽光を基に発電するので、枯渇性燃料が持つ有限性への対策になり、また、発電時に二酸化炭素を排出しないので、地球温暖化の緩和策に成り得る等の理由によるものである。
【0003】
太陽電池は、ガラス基板(基体)の上に半導体層を積層したものであり、具体例としてガラス基板上にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜して積層したものが知られている。
【0004】
なお、これらのシリコン系半導体層の成膜には、プラズマCVD法が活用されることが多く、プラズマCVD等のCVD法によってこのようなシリコン系半導体層の成膜を実施するCVD装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−139524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているプラズマCVD装置は、4個の成膜チャンバーと、1個の移動チャンバーと、1個の基体受取・払出し装置(基体仮置き装置)を有している。成膜チャンバーとは成膜室を有しており、成膜室内で基体に成膜を実施可能なチャンバーである。移動チャンバーとは、移動可能なチャンバーであり、基体を積載、運搬が可能である。基体・受取・払出し装置とは移動チャンバーと基体の受け渡しが可能であり、成膜前の基体を移動チャンバーへ受け渡し、成膜後の基体を移動チャンバーから受け取る装置である。
このようなプラズマCVD装置で使用される成膜チャンバーは、真空ポンプ等の精密機器を備えているため、突発的な故障や動作不良を発生させるおそれがある。そのため、成膜チャンバーに対して修理やメンテナンス作業を行う必要がある。なお、このような修理及びメンテナンス作業は、故障した成膜チャンバー内の基体を空にした状態で実施されることが通例である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているCVD装置では、成膜チャンバーに突発的な修理(メンテナンス)作業が発生してしまうと、基体を取り出すことが困難であり、CVD装置による生産を大幅に停止しなければならず、修理(メンテナンス)作業時に生産性が大きく低下してしまうという問題があった。
【0008】
以下、特許文献1の図1に開示されているような、4個の成膜チャンバーと、1個の基体受取・払い出し装置と、1個の移動チャンバーを備えたCVD装置の場合を例に挙げて詳細に説明する。特許文献1に開示されているようなCVD装置(以下従来のCVD装置と称す)において、まず、図14(a)に示されるように、基体106を積載した基体受取・払い出し装置104の前に、移動チャンバー105を移動する。そして、移動チャンバー105が基体受取・払い出し装置104から基体106を受け取り(図14(b))、空の成膜チャンバー103の前まで移動する(図14(c))。そして、成膜チャンバー103に基体106を受け渡し(図14(d))、成膜チャンバー103での成膜を開始する。
【0009】
このとき、成膜チャンバー100が故障したと仮定する。図14(d)の状態であれば、移動チャンバー105が故障した成膜チャンバー100の前に移動し、成膜チャンバー100から基体107を取り出して、基体受取・払い出し装置104に受け渡すことで、成膜チャンバー100を空にして修理(メンテナンス)を実施することができる。しかし、その間、基体受取・払い出し装置104に基体107が置かれることにより、基体受取・払い出し装置104が塞がってしまうため、成膜チャンバー101や成膜チャンバー102で成膜が完了した基体を次の工程に受け渡すことができなくなる。
また、図14(b),図14(c)の状態では、移動チャンバー105の内部に基体106があるため、故障した成膜チャンバー100から基体107を受け取ることができない。
さらに、図14(a)の状態では、移動チャンバー105が故障した成膜チャンバー100の基体107を受け取ることができるものの、基体受取・払出し装置104に次の成膜のための基体106が配置されているため、基体107を仮置きする場所がない。
したがって、従来のCVD装置では、メンテナンスの際に生産工程を中止しなければならない。なお、これらの問題は特許文献1の段落「0180」に開示されているように、払出し専用、受取専用の基体受取・払い出し装置104を設けても同様に発生する。
【0010】
そこで本発明は、突発故障が発生した場合や定期的なメンテナンス時において、生産性の高い成膜を行うことのできる薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、基体を搬送可能な移動装置と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、前記成膜チャンバーは複数基設けられ、前記基体仮置き装置は3基以上設けられ、前記移動装置はいずれの成膜チャンバーに対しても基体の受け渡しが可能であり、且つ前記移動装置は前記3基以上の基体仮置き装置に対して基体の受け取りまたは払い出しの少なくともいずれかが可能であることを特徴とする薄膜製造装置である。
【0012】
本発明の薄膜製造装置は、3基以上の基体仮置き装置と複数基の成膜チャンバーを有している。そのため、基体の払い出し専用の基体仮置き装置や、基体の受け取り専用の基体仮置き装置、修理(メンテナンス)時に基体を一時的に仮置きする基体仮置き装置のように別途の役割をもつ基体仮置き装置を適宜設けることができる。そのため、例えば、修理(メンテナンス)を行う成膜チャンバーから取り出した基体を基体仮置き装置へ一時的に退避させた状態で、移動チャンバーから成膜後の基体を受け取ると同時に、未成膜の基体を移動チャンバーに払い出すための準備ができる。そのことにより、メンテナンス中であるかどうかに係わらず、移動チャンバーが成膜後の基体を基体仮置き装置に払い出した後すぐに、未成膜の基体を受け取ることができる。つまり、メンテナンス用の基体仮置き装置を設けない場合に比べて、メンテナンス時における、移動チャンバーへの基体の払い出し及び移動チャンバーからの基体の受け取りにかかる時間が短縮されるため、効率の良い成膜が可能である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記基体仮置き装置が移動装置の移動方向に沿って列状に配されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置である。
【0014】
本発明の薄膜製造装置では、基体仮置き装置が移動装置の移動方向に沿って列状に配されている。そのため、基体仮置き装置間の距離が短く、移動装置が稼働する距離が少ないため、成膜工程の時間を短縮することができる。
また、このように基体仮置き装置を配することで、将来の増設に対する拡張性がある。即ち、薄膜製造装置に基体仮置き装置を増設する場合、基体仮置き装置の列に新たな基体仮置き装置を加えて、増設した基体仮置き装置の分だけ移動装置の移動距離を増やすだけで増設が可能となる。さらに、増設した基体仮置き装置を撤去する場合も、端に位置する基体仮置き装置を撤去し、移動装置の移動距離を減らすだけで撤去が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置と成膜後の基体を移動装置から受け取る第2の基体仮置き装置とを備え、メンテナンスする成膜チャンバー内の基体を仮置きする第3の基体仮置き装置が少なくとも一つ含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置である。
【0016】
本発明の薄膜製造装置では、成膜前の基体を移動装置に基体を受け渡す基体仮置き装置と、成膜後の基体を移動装置から受け取る基体仮置き装置の他、メンテナンスする成膜チャンバー内の基体を仮置きする基体仮置き装置を有している。
そのため、メンテナンス時に成膜チャンバー内の基体を退避させても、退避させた基体が、基体仮置き装置と移動装置との基体の受け渡しを阻害しない。
また、成膜前の基体の受け渡しと、成膜後の基体の受け取りをそれぞれ専用の基体仮置き装置で行うので、たとえ突発故障があっても、成膜前の基体を基体仮置き装置に待機させた状態で、移動装置から成膜後の基体の受け渡し等を実行可能である。したがって、基体の受け渡し後すぐに基体を受け取ることができるため成膜工程の時間を短縮することができる。
また、移動装置の数は1つに限定されるものではない。本発明の薄膜製造装置では、移動装置の数を増やした場合、メンテナンス中の成膜チャンバーからの基体の退避、移動装置への成膜前の基体の受け渡し、成膜後の基体の受け取りの内少なくとも2つの動作を同時に実行可能であるという利点もある。
【0017】
請求項4に記載の発明は、成膜チャンバー内での成膜に要する時間をT1とし、移動チャンバーによって成膜チャンバーから成膜後の基体を基体仮置き装置に受け渡し、該成膜チャンバーに対して基体仮置き装置から成膜前の基体を受け渡すまでの時間をT2とした場合、成膜チャンバーの総数XがT1≒T2(X−1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置である。
なお、「≒」は端数を四捨五入してXが整数となるようにすることを意味している。
【0018】
本発明の薄膜製造装置では、成膜チャンバーの総数は、上記のように設けられることが望ましい。なぜなら、成膜チャンバーの数が少なすぎる場合や、多すぎる場合、基体仮置き装置及び、移動装置(移動チャンバー)と効率良く連動しないためである。以下、具体的に説明する。
【0019】
本発明の薄膜製造装置による薄膜の生産では、成膜チャンバー内で成膜が終了した際、移動チャンバーによって、成膜後の基体の払い出し及び新たな成膜前の基体の搬入等の工程を行うものである。この成膜後の工 程にかかる時間(T2)を仮に10分とし、成膜チャンバー内での成膜に係る時間(T1)を50分とすると、6つの成膜チャンバーで10分ずつ時間差を設けて成膜を行うことにより、成膜チャンバー及び移動用チャンバーを休止させることなく動作させることができる。
具体的に説明すると、成膜工程開始(基体の搬入の開始)から60分経過し、最初に基体を搬入した成膜チャンバーで成膜が終了した後、移動チャンバーが当該成膜チャンバーに対して基体の払い出し及び基体の搬入を実施する。すると10分経過する(成膜工程開始から70分経過する)ので、2番目に成膜を開始した成膜チャンバーで成膜が終了する。そして移動チャンバーは、2番目に成膜を開始した成膜チャンバーに対して、基体の払い出しと基体の搬入を行う。するとさらに10分経過する(成膜工程開始から80分経過する)ので、3番目に成膜を開始した成膜チャンバーで成膜が終了する。以下同様に、基体の払出しと基体の搬入を連続で行っていくと、最後に成膜を開始したチャンバーに対して基体の払い出し及び基体の搬入が完了したとき、成膜工程開始から120分が経過している。最初に成膜が完了した成膜チャンバーに対して基体の払い出しを行い、当該成膜チャンバーに新たな基体の搬入が終了したのが成膜工程開始から70分経過したときであり、それから50分経過しているので、当該成膜チャンバーで2回目の成膜が完了する。したがって、移動チャンバーが当該成膜チャンバーに対して基体の払い出し及び基体の搬入を実施可能となる。これを繰り返すことにより、成膜チャンバーは連続して成膜を繰り返し、移動チャンバーは常に稼働する。
【0020】
しかし、成膜チャンバーの数が少なすぎる場合、すべての成膜チャンバーに基体を搬入しても、最初に成膜を開始した成膜チャンバーの成膜が終了しないので、成膜が終了するまでの間、移動チャンバーが休止させなくてはならない。また、成膜チャンバーの数が多すぎる場合、最初に成膜を開始したチャンバーで成膜を完了しても、移動チャンバーはいまだ成膜を開始していない成膜チャンバーに対して基体を搬入するので、成膜を完了した基体を払い出すことができず、成膜チャンバーで連続して成膜ができない。そのため、移動チャンバーや成膜チャンバーを休止することなく稼働できないので、生産効率が悪い。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記薄膜製造装置は太陽電池モジュールの製造に用いられるものであって、前記太陽電池モジュールは、基板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールであり、成膜チャンバーにおいて前記第1太陽電池層と前記第2導電膜層とを成膜可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置である。
なお、本発明において結晶質の用語は、部分的に非晶質を含んでいるものも含むものとする。
【0022】
本発明の薄膜製造装置では、太陽電池モジュールの製造においても好適に用いることができる。即ち、突発故障の発生時や定期的なメンテナンスの実行時において、生産能力があまり低下しない、生産効率の高い太陽電池モジュールの生産が可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5に記載の薄膜製造装置を使用する薄膜製造方法であって、全ての成膜チャンバーは一度に成膜可能な基体数Yが同一であり、成膜チャンバーの総数をXとし、全ての成膜チャンバーに基体を搬入後、薄膜製造装置上に配される基体の数をZとした場合、Zの最小の数が次式の関係を満たすことを特徴とする薄膜製造方法である。
Z=Y(X+1)
【0024】
本発明の薄膜製造方法では、薄膜製造装置上に配置される基体の数は、上記Y(X+1)以上になることが望ましい。なぜなら、薄膜製造装置上に配置される基体の数が少なすぎると薄膜製造装置の生産効率が下がってしまうためである。以下、具体的に説明する。
【0025】
本発明の薄膜製造装置を効率よく稼働するためには、薄膜製造装置を構成する各装置が待機する時間を少なくして稼働することが望ましい。このように稼働させるために、例えば、以下の方法が考えられる。まず、成膜チャンバー毎に成膜完了時間に差を設け、全ての成膜チャンバーに基体を搬入した後、次々と各チャンバーで成膜が完了するように成膜を行う。そして、移動装置が1つ目の成膜チャンバーに対して、成膜後の基体の搬出、及び基体仮置き装置から受け取った新たな未成膜の基体の搬入を行うと、2つ目の成膜チャンバーで成膜が完了し、移動装置が2つ目の成膜チャンバーに対して成膜後の基体の搬出、及び新たな未成膜の基体の搬入を連続して行うという薄膜製造方法である。
【0026】
この方法によると、全ての成膜チャンバーの成膜完了時間が同じである場合と比べて、基体の搬入・搬出のために発生する成膜チャンバーの待機時間を減少することができる。即ち、全ての成膜チャンバーの成膜完了時間が同じである場合、移動装置(移動チャンバー)が複数の成膜チャンバーに対して、同時に基体の搬入・搬出を行えないので、1つずつの成膜チャンバーに対して順に基体の搬入・搬出を行わなければならない。しかしながら、1つずつの成膜チャンバーに対して順に基体の搬入・搬出を行うと、順番の遅い成膜チャンバーは、移動装置が他の成膜チャンバーに対して基体の搬入・搬出を行う時間も待機しなければならない。これに対して上記方法では、成膜チャンバーの待機時間は、1つの成膜チャンバーに対して基体の搬入・搬出を行うために要する時間のみでよい。
【0027】
つまり、上記方法によると、移動装置には待機時間が発生せず、成膜チャンバーの待機時間が減少されるので生産効率がよい。
【0028】
しかしながら、上記方法において薄膜製造装置上に配される基体の数が上記した数(Y(X+1))より少ないと、基体仮置き装置に移動装置に受け渡すための新たな基体を予め配置することができないため、移動装置へ基体を受け渡す際、基体の受け取りを開始するまで間、移動装置に待機時間が発生してしまう。また、そのことにより基体の搬入・搬出により多くの時間が必要になり、成膜チャンバーの待機時間が増大してしまう。したがって、薄膜製造装置上に配置される基体の数が上記Y(X+1)を下回ると、生産効率が下がってしまう。
【0029】
請求項7に記載の発明は、成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、基体を搬送可能な移動装置と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、前記成膜チャンバーが複数台設けられ、前記基体仮置き装置が3基以上設けられた薄膜製造装置のメンテナンス方法であって、メンテナンスを行う成膜チャンバーから移動装置に基体を取り出す工程と、基体仮置き装置に基体を払い出して基体を仮置きする工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンスと平行して、前記薄膜製造装置が所定の成膜又は基体の運搬の少なくともいずれかを実施することを特徴とする薄膜製造装置のメンテナンス方法である。
【0030】
本発明の薄膜製造装置のメンテナンス方法では、メンテナンスを行う成膜チャンバー内の基体を、移動装置によって基体仮置き装置へ退避させる。そして、メンテナンスの実行と同時に薄膜の生産工程を実施する。そのため、薄膜の生産効率を低下させることなくメンテナンスを実行できるため、薄膜製造装置の生産効率を高めることができる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、前記基体仮置き装置の少なくとも一つが成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置であり、メンテナンスの終了に先立って、前記第1の基体仮置き装置から移動装置へ新たな基体を払い出す工程と、メンテナンスを行っている成膜チャンバー近傍まで移動装置を移動する工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンス終了に伴い、移動装置が該成膜チャンバーに新たな基体を払い出すことを特徴とする請求項7に記載の薄膜製造装置のメンテナンス方法である。
【0032】
本発明の薄膜製造装置のメンテナンス方法では、成膜チャンバーのメンテナンス終了に先だって、成膜前の基体を供給するための基体仮置き装置から移動チャンバーへ新たな基体を受け渡し、メンテナンス中の成膜チャンバーの開口と対向する位置まで移動する。そのため、成膜チャンバーのメンテナンスが終了するとすぐに成膜チャンバー内へ新たな基体を配置することができる。そのことにより、成膜チャンバーにおいて、メンテナンスが終了してから成膜が開始されるまでの時間が短縮できるので、生産効率がよい成膜を実施することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の薄膜製造装置は、突発故障の発生時や定期メンテナンスの実行時においても、生産性の高い成膜を行うことができる。また、本発明の薄膜製造方法及び薄膜製造装置のメンテナンス方法についても同様であり、常に生産性の高い薄膜の製造を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態にかかる薄膜製造装置を示す斜視図である。
【図2】図1の成膜チャンバー、移動チャンバー及び基体仮置き装置が備える基体移動装置の要部の斜視図である。
【図3】図1の成膜チャンバーの内部構造を示す斜視図である。
【図4】図1の成膜チャンバーの内部構造を示す一部破断平面断面図である。
【図5】成膜チャンバーに内蔵される電極の断面斜視図である。
【図6】図1の移動チャンバーを収納室出入口側から見た斜視図である。
【図7】移動チャンバーの内部を示す斜視図である。
【図8】移動チャンバーの内部構造を示す平面断面図である。
【図9】チャンバー移動装置の断面図である。
【図10】本発明の実施形態で使用する基体キャリアの斜視図である。
【図11】図10の基体キャリアの分解斜視図である。
【図12】移動チャンバーから成膜チャンバーに基体キャリアが移動する状態を示す移動チャンバーと成膜チャンバーの一部破断斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる薄膜製造装置のメンテナンス方法を示すフローチャートである。
【図14】従来のCVD装置の成膜チャンバーへの基体の供給を示す説明図であり、(a)〜(d)の順に基体を移動させて供給する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態に係る薄膜製造装置及び薄膜製造装置のメンテナンス方法について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の薄膜製造装置1はガラス製の基体46に半導体膜を形成するものである。本実施形態の薄膜製造装置1は、図1に示される様に、大きく分けて、基体仮置き装置群5、成膜チャンバー群42、移動チャンバー6(移動装置)によって構成される。
【0037】
基体仮置き装置群5は、3基の基体仮置き装置から構成され、具体的には、基体仮置き装置2〜4によって構成される。これらの基体仮置き装置2〜4は同一の構造をしたものである。以下構造について説明するが、基体仮置き装置2についてのみ説明し、基体仮置き装置3,4については同様の説明を省略する。なお基体仮置き装置2は、移動チャンバー6への基体46の受け渡し専用の装置であり、基体仮置き装置3は、移動チャンバー6からの基体46の受け取り専用の装置であり、基体仮置き装置4はメンテナンス(修理)時の仮置き専用の装置である。
なお、この基体仮置き装置4は、成膜チャンバーの修理時に成膜チャンバー内から取り出した基体を仮置きするために用いるものであるが、後述の基体キャリア72に対してメンテナンスや洗浄を行う際に、図示しない装置との間で対象となる基体キャリア72を受け渡し、洗浄及びメンテナンスの終了した基体キャリア72に未成膜の基体46を載置して、移動チャンバー6に受け渡すことが可能である。
【0038】
基体仮置き装置2は、図1に示される様に、ベース部材14に基体移動装置15が5基設けられたものである。
【0039】
それぞれの基体移動装置15は、図2に示すような構成をしている。即ち、基体移動装置15は、高さの高いリブ16が平行に2本延びており、その間にガイド溝17が形成されている。また、ガイド溝17の中にはピニオンギア18が一定間隔をあけて複数設けられている。ピニオンギア18は、図示しない動力によって回転する。
【0040】
成膜チャンバー群42は成膜チャンバー7〜12によって構成され、これらの成膜チャンバー7〜12は同一の構造をしたものである。以下構造について説明するが、成膜チャンバー7についてのみ説明し、成膜チャンバー8〜12に関しては同様の説明を省略する。
【0041】
成膜チャンバー7の外観形状は、図1,3に示す様に天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には開口が長方形の成膜室出入口19が設けられている。成膜室出入口19の開口端にはフランジ20が設けられている。
【0042】
フランジ20は、成膜室出入口19と相似形であって、長方形であるが、その4隅の内の対向する2角に穴13が設けられている。
【0043】
成膜室出入口19には、気密性を備えたシャッター21が設けられている。
【0044】
シャッター21は、スライド型ゲートバルブと称されるものが採用されており、扉状の部材が図3の矢印Xの方向にスライドする。
なお、このシャッター21は、上記したスライドゲートバルブに限定されるものではなく、例えば、スイング型ドアバルブと称されるものを適宜採用してもよい。
【0045】
成膜チャンバー7の内部は図4に示す様に、プラズマCVD法によって基体46に成膜する成膜室22となっている。そしてその内部には、図3,4に示す様に6基の板状の面ヒータ23a,b,c,d,e,fと、5基の電極25a,b,c,d,eが設けられている。即ち、図3,4において、ヒータ23は細い長方形として図示されており、電極25は太い長方形として図示されている。
【0046】
一方、電極25a,b,c,d,eは、図5に示すように枠体26の両面にシャワープレート27が取り付けられたものである。
【0047】
枠体26にはガスパイプ31が接続されており、図示しない原料ガス供給源に接続されている。また枠体26には、マッチング回路(MBX)を介して高周波交流電源に接続されている。
【0048】
また成膜室22の内部には、前記した基体移動装置15と同様の基体移動装置29が設けられている(図3)。基体移動装置29の数は、前記した基体仮置き装置2(あるいは基体仮置き装置3,4)の基体移動装置15の数と同一であり、その間隔も基体仮置き装置2(あるいは基体仮置き装置3,4)が備えている基体移動装置15の間隔と同一である。
【0049】
また図3に示すように、成膜室22には弁33を介して真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34が接続されている。
【0050】
次に移動チャンバー6及びチャンバー移動装置32について説明する。
【0051】
移動チャンバー6は、図6に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の収納室出入口35が設けられている。収納室出入口35の開口端にはフランジ37が設けられている。
【0052】
収納室出入口35及びフランジ37の大きさ及び形状は、前記した成膜チャンバー7の成膜室出入口19およびフランジ20と等しい。
【0053】
ただし、成膜チャンバー7のフランジ20では、その4隅の内の対向する2角に穴13が設けられていたが、移動チャンバー6のフランジ37では、相当する位置にピン40が設けられている。ピン40はテーパー状である。
【0054】
移動チャンバー6の収納室出入口35には、これを遮蔽する部材が無く、収納室出入口35は常に開放されている。
なお、本実施形態では収納室出入り口35を開放する構成を採用したが、この構成に限定されるものではなく、気密性がなく外部からゴミの侵入等を防ぐだけの扉を取り付けてもよい。すなわち、気密性を備えた部材がなければよい。
【0055】
移動チャンバー6の内部は、図7に示す様に基体46を収納する収納室47となっている。
【0056】
収納室47の内部には、前記した基体移動装置15及び基体移動装置29と同様の基体移動装置49(図7,8参照)が設けられている。基体移動装置49の数は、前記した基体仮置き装置2〜4、及び成膜室22のそれと同一であり、その間隔も基体仮置き装置2〜4及び成膜室22のそれと同一である。
【0057】
また移動チャンバー6の収納室47内には、6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの構造は、前記した成膜チャンバー7の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同様である。移動チャンバー6内の6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの位置関係についても成膜チャンバー7の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同一である。
なお、収納室47内のヒータ(ヒータ43a〜43f)の数や位置は上記構成に限定されるものではない。例えば、移動チャンバー6が成膜チャンバーと接続した際に、成膜チャンバーの電極25a,b,c,d,eに対向する位置に5基のヒータ43a,b,c,d,eを設けてもよい。この位置にヒータを設けると、収納室47に基体キャリア72を格納した際に、ヒータが空隙74に位置することになり、ヒータが基板46により近づくため加熱時間が短縮される。
【0058】
チャンバー移動装置32は、横列方向と、前後方向に移動チャンバー6を移動させるものであり、図1,6の様に横列方向の移動はレール50に沿って行われ、前後方向には直線ガイド51に沿って行われる。
【0059】
すなわちチャンバー移動装置32は、横列方向に延びる一対のレール50を有する。レール50は、公知の列車用レールと同様の断面形状をしている。レール50は、床面に設けられたまくら木54に公知のタイプレート等によって接続されている。
【0060】
そしてレール50の間には、図1,6の様に長尺のラック52が歯面を横方向に向けて取り付けられている。
【0061】
またレール50の端部には、図6の様にストッパ53が取り付けられている。ストッパ53は、後記する移動台車55の暴走を阻止するものであり、公知のショックアブゾーバが内蔵されている。
【0062】
そしてレール50には図1、6の様に移動台車55が載置されている。移動台車55は、ベース板60の下面に4個の車輪61が設けられたものである。本実施形態では、車輪61は、自由回転を許すものであり、車輪61は、レール50に載置されている。
【0063】
またベース板60の一部には、張出部62があり、ギャードモータ等の低速回転する電
動機63が設けられている。電動機63は、回転軸(図示せず)がベース板60の下面側
に突出された状態で取り付けられており、回転軸にはピニオンギア65が取り付けられて
いる。そしてピニオンギア65は、レール50の間に設けられたラック52と係合として
いる。
【0064】
したがって電動機63を回転すると、ピニオンギア65が回転し、ラック52から受ける反力によって移動台車55が自走する。なお本実施形態では、移動台車55に真空ポンプ44(図7)が搭載されている。
ここで、移動台車55を自走させる構成は、上記したラックアンドピニオン形式に限定されるものではなく、車輪を直接モータ等によって回転させる形式にしてもよい。
【0065】
移動台車55のベース板60の上面には、前記した直線ガイド51が設けられている。直線ガイド51は平行に二列設けられ、その方向は、床面のレール50に対して直行する。
【0066】
前記した直線ガイド51の上には、移動板67が設けられている。そして前記した移動チャンバー6は、図6,9で示されるように移動板67に固定されている。
【0067】
また移動板67の正面側(移動チャンバー6の収納室出入口35側)の辺であって、その中央には、移動側ブラケット部68(図6、図9参照)が設けられている。移動側ブラケット部68は移動板67の下面側に突出する板体である。
【0068】
一方、ベース板60の上面側には、図9に示すように固定側ブラケット部70が設けられている。そして前記した固定側ブラケット部70と移動側ブラケット部68の間には、油圧又は空気圧シリンダー71が取り付けられている。そのためシリンダー71のロッドを伸縮させると、ベース板60上の移動板67が直線ガイド51に沿ってレール50と直行する方向に直線移動し、移動板67に載置された移動チャンバー6が前後方向(成膜チャンバー群42を構成するいずれかの成膜チャンバーに対して近接・離反方向)に直線移動する。
【0069】
また移動板67には図示しない真空ポンプ44(図7に図示。図1,6には作図の都合上、図示を省略。)が搭載されている。真空ポンプ44は、収納室側減圧装置として機能し、図7の様に移動チャンバー6の収納室47に接続されている。
【0070】
次に、基体46を運搬する基体キャリア72について説明する。
【0071】
図10に示されるように、基体キャリア72は、細長い台車に二枚の枠体77を対向して立設した様な形状をしている。すなわち基体キャリア72は、直方体のキャリアベース73を有し、その両側に合計8個の車輪75が設けられている。またキャリアベース73の底面には、ラック76が取り付けられている。
【0072】
キャリアベース73の上面側の長辺部には、二枚の枠体77が平行に対向して設けられている。枠体77どうしの間は空隙74となっている。すなわちキャリアベース73と二枚の枠体77によって上向きの「コ」の字形状をなしている。
【0073】
枠体77は、図10,11の様に、正方形の開口78が2個設けられたものであり、当該開口78の周囲にクリップ80が多数設けられている。
【0074】
基体キャリア72の枠体77には、図11に示すように、背板82と重ね合わせた状態で基体46たるガラス基板が取り付けられ、この二者をクリップ80が押さえている。
【0075】
したがって、基体46たるガラス基板の露出面は、対向する枠体77の内側を向いている。
【0076】
次に、本実施形態の薄膜製造装置1の全体的なレイアウトについて説明する。
【0077】
本実施形態の薄膜製造装置では、図1の様に成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバーがいずれも成膜室出入口19を同一方向に向けた状態で横列に配置されている。また基体仮置き装置群5は、成膜チャンバー群42と並んだ位置にある。これら、基体仮置き装置群5を構成する基体仮置き装置2〜4は、いずれもガイド溝15の長手方向の延長線がレール50と直交する様な状態で、横列に配置されている。
【0078】
成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバー及び基体仮置き装置群5を構成する3基の基体仮置き装置は、いずれも床面にしっかりと固定されており、動かない。
【0079】
そして図1、6の様にチャンバー移動装置32のレール50が、成膜チャンバー群42及び基体仮置き装置群5の正面側に沿って設置されており、前記した様に移動台車55を介して移動チャンバー6がレール50に載置されている。移動チャンバー6の収納室出入口35は、成膜チャンバー7〜12の成膜室出入口19に対して対向する方向を向いている。
【0080】
本実施形態では、チャンバー移動装置32の電動機63を回転すると、移動台車55が自走し、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42の列方向に移動する。
【0081】
またチャンバー移動装置32のシリンダー71を伸縮させると、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42に対して近接・離反方向に移動する。
【0082】
次に、本実施形態の薄膜製造装置1を利用した、薄膜の製造方法について説明する。
【0083】
本実施形態の薄膜の製造方法の準備段階として、成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバー7〜12の成膜室22内を減圧する。具体的には、成膜室出入口19のシャッター21を閉じ、真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34を起動すると共に、弁33を開いて成膜室22内の空気を排気する。また基体46を基体キャリア72に取り付けておく。
【0084】
本実施形態の薄膜の製造方法では、基体仮置き装置2が移動チャンバー6への成膜前の基体46(基体キャリア72)の払い出し専用に使用され、基体仮置き装置3が移動チャンバー6からの成膜後の基体46(基体キャリア72)の受け取り専用に使用される。以下、基体仮置き装置2を払い出し用装置2、基体仮置き装置3を受取用装置3と称す。
まず、払い出し用装置2に基体キャリア72をセットする。具体的には、基体キャリア72を払い出し用装置2に載置し、払い出し用装置2の基体移動装置15のガイド溝17間に基体キャリア72の車輪75を嵌め込む。この時、基体キャリア72の底面に設けられたラック76が払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15のピニオンギア18と係合する。
【0085】
そして以下の一連の作業工程は、図示しない制御装置によって自動的に行われる。
【0086】
すなわち図示しない制御装置によって払い出し用装置2、受取用装置3、移動チャンバー6、成膜チャンバー群42が有機的に動作し、基体46にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜する。
【0087】
具体的に説明すると、基体キャリア72を払い出し用装置2に載置すると、払い出し用装置2の位置に移動チャンバー6が移動する。すなわち、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42の列方向に移動して払い出し用装置2の前で停止する。なお位置決めは、電動機63の回転数をカウントする方策や、公知のリミットスイッチを設けることによって行われる。
【0088】
そして払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15のピニオンギア18、及び移動チャンバー6に設けられた基体移動装置49のピニオンギア18が回転する。そのことにより、基体キャリア72が前進し、移動チャンバー6側に移動する。そして、移動チャンバー6側に移動した基体キャリア72は、移動チャンバー6側に入り込む。
【0089】
そして前記した様に、移動チャンバー6の基体移動装置49のピニオンギア18も回転しているから、基体キャリア72のラック76は、移動チャンバー6側のピニオンギア18と係合し、基体キャリア72は移動チャンバー6の収納室47内に引き込まれる。
【0090】
本実施形態では、払い出し用装置2に5列の基体移動装置15が設けられ、払い出し用装置2には5基の基体キャリア72がセットされているが、払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15の数及び間隔等と、移動チャンバー6側の基体移動装置49の数及び間隔等が同一であるから、払い出し用装置2にセットされた5基の基体キャリア72は、全て移動チャンバー6側に移動し、その収納室47内に納まる。
【0091】
なお、5基の基体キャリア72の移動は、一度に行っても良く、順に行ってもよい。移動チャンバー6から成膜チャンバー7〜12への基体キャリア72の移動、成膜チャンバー7〜12から移動チャンバー6への基体キャリア72の移動、及び移動チャンバー6から受取用装置3への基体キャリア72の移動、加えて、移動チャンバー6から基体仮置き装置4への基体キャリア72の移動についても同様であり、一斉に行っても良く、個別に行ってもよい。
【0092】
払い出し用装置2にセットされた5基の基体キャリア72が、全て移動チャンバー6側に移動し、払い出し用装置2上に基体キャリア72が無くなれば、再度成膜前の基体46を取り付けた基体キャリア72を払い出し用装置2に補充する。この補充作業は、自動的に実施され、基体キャリア72からの成膜後の基体46の取り外しや、成膜前の基体46の基体キャリア72への取り付けは、図示しないロボットによって実施される。
また、この補充作業は、詳しくは後述する、成膜後の基体46の移動用チャンバー6から受取用装置3への戻し、又は修理(メンテナンス)の少なくともいずれかを実施している間にも行うことができる。換言すると、本実施形態の薄膜の製造方法では、修理(メンテナンス)中か否かに係わらず、移動チャンバー6が基体46を受取用装置3に基体46を移動させている間、次に成膜を行うための新しい基体(基体キャリア72)を払い出し用装置2上に配置できる。つまり、未成膜の基体46を移動チャンバー6に対して受け渡す準備が常にできている。そのため、移動チャンバー6にすばやく基体キャリア72を受け渡すことができるため、成膜工程に要する時間を短縮することができる。
【0093】
全ての基体キャリア72が移動チャンバー6側に移動したことが確認されると、移動チャンバー6が再度横列方向に移動し、隣接する位置の成膜チャンバー7の前で停止する。なお、本実施形では成膜チャンバー7に基体キャリア72を移動させる場合について説明し、移動チャンバー6から成膜チャンバー8〜12のいずれかに基体キャリア72を移動させる場合については、同様の説明を省略する。
【0094】
移動チャンバー6のシリンダー71が伸び、移動チャンバー6が成膜チャンバー7に対して近接する方向に移動する。
【0095】
そしてついには、図12に示される様に、移動チャンバー6の先端が成膜チャンバー7の先端と当接する。
【0096】
すなわち移動チャンバー6の収納室出入口35が、成膜チャンバー7の成膜室出入口19と合致し、移動チャンバー6のフランジ37が、成膜チャンバー7のフランジ20と合致して移動チャンバー6のフランジ37が、成膜チャンバー7のフランジ20を押しつける。
【0097】
前記した様に成膜チャンバー7の成膜室出入口19には気密性を備えたシャッター21が設けられているので、移動チャンバー6においては、収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間が形成される。
【0098】
移動チャンバー6のフランジ37と成膜チャンバー7のフランジ20が完全に結合されたことが確認されると、真空ポンプ(収納室側減圧装置)44を起動すると共に弁45を開き、前記した収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気し、減圧して真空にする。
【0099】
そして前記した閉塞空間が所定の真空度に達すると、移動チャンバー6の収納室47内に設けられた6基のヒータ43a,b,c,d,e,fを昇温し、内部の基体46を加熱昇温する。
【0100】
基体46が所定の温度になったことが確認されると、成膜チャンバー7のシャッター21が開かれる。ここで成膜チャンバー7の成膜室22は、先に高真空状態となっているが、前記した様に収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気して当該部分も真空状態であるから、成膜チャンバー7のシャッター21を開いても成膜室22内の真空度は維持される。
【0101】
そしてシャッター21が完全に開いたことが確認されると、移動チャンバー6側の基体移動装置49のピニオンギア18、及び成膜チャンバー7の成膜室22内に設けられた基体移動装置29のピニオンギア18を回転させる。なお今回のピニオンギア18の回転方向は、基体キャリア72を移動チャンバー6側に移動させる場合とは逆である。
【0102】
ピニオンギア18を回転させると基体キャリア72が収納室出入口35側に進む。すなわち基体キャリア72は、移動チャンバー6側から、成膜チャンバー7の成膜室22側に進み、成膜チャンバー7の成膜室22に入り込む。そして前記した様に、成膜チャンバー7側の基体移動装置29のピニオンギア18も回転しているから、基体キャリア72のラック76は、成膜チャンバー7側のピニオンギア18と係合し、基体キャリア72は成膜チャンバー7の成膜室22内に引き込まれる。
【0103】
このとき、図12に示される様に、基体キャリア72の長方形のキャリアベース73は、各電極25a,b,c,d,eの下部に設けられた隙間に入り込み、基体キャリア72の枠体77は、各電極25a,b,c,d,eの両脇に入り込む。そして、図4に示される様に、成膜室22の内部には6基のヒータ23a,b,c,d,e,fがあり、各電極25a,b,c,d,eとヒータ23a,b,c,d,e,fは互い違いに配されているので、各基体46が、いずれもヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0104】
基体キャリア72の全てが成膜チャンバー7の成膜室22内に移動し、それぞれ所定の位置に配置されたことが確認されると成膜チャンバー7のシャッター21を閉じる。そして成膜チャンバー7の成膜室22内において、基体キャリア72の基体46にシリコン半導体が成膜される。
【0105】
すなわち電極25a,b,c,d,eの枠体26内に原料ガスを供給すると共に電極25a,b,c,d,eに高周波交流を印加し、電極25a,b,c,d,eと基体キャリア72の間にグロー放電を発生させて原料ガスを分解し、縦置きされた基体46の表面上に薄膜を形成させる。
【0106】
そして本実施形態では、一つの成膜チャンバー7の成膜室22内で、太陽電池を構成する各薄膜層を形成させる。すなわち太陽電池は、p層、i層及びn層の各半導体層が積層されたものであるが、本実施形態では、一つの成膜チャンバー7の成膜室22内で、p層、i層及びn層の各半導体層を順次積層して行く。
【0107】
また成膜チャンバー7内で成膜工程が実行されている間に、基体キャリア72が排出されて空状態となり、且つ減圧状態の移動チャンバー6に大気又は窒素を導入して、収納室47内の圧力を外気圧と均衡化させる。
【0108】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、チャンバー移動装置32のシリンダー71を縮め、移動チャンバー6が成膜チャンバー7から離れる方向に移動する。すなわち接合状態であった移動チャンバー6を、成膜チャンバー7から分離する。
【0109】
そして移動チャンバー6の電動機63を再度回転させ、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜チャンバー群42の列方向に移動し、払い出し用装置2の前で停止させる。
【0110】
その後は、先の工程と同様に払い出し用装置2にセットされた基体キャリア72を移動チャンバー6の収納室に移動させ、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて二番目の成膜チャンバーである成膜チャンバー8の前で停止し、移動チャンバー6の先端を成膜チャンバー8の先端と当接させる。
【0111】
その後に、収納室47と成膜チャンバー8のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間を減圧し、ヒータ43a,b,c,d,e,fによって内部の基体46を加熱昇温する。
【0112】
そして成膜チャンバー8のシャッター21を開いて移動チャンバー6内の基体キャリア72を成膜チャンバー8の成膜室22に移動させ、シャッター21を閉じて成膜を行う。
【0113】
こうして次々に成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバー(成膜チャンバー7〜12)に基体46を挿入し、各成膜チャンバー内でp層、i層及びn層の各半導体層を積層する。
【0114】
そして積層工程が終了した成膜チャンバー(成膜チャンバー7〜12)から順次基体キャリア72を運び出し、受取用装置3に戻す。
【0115】
本実施形態では、この戻し作業についても、移動チャンバー6を使用する。
【0116】
具体的に説明すると、6基の成膜チャンバー群42の中で全ての成膜作業が終了した成膜チャンバーがある場合、あるいは成膜作業か終盤に差しかかった成膜チャンバーがある場合は、基体キャリア72を内蔵せずに空状態の移動チャンバー6を当該成膜チャンバーに接続する。
つまり、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜作業が終了した成膜チャンバーの前で停止し、移動チャンバー6を前進させて移動チャンバー6の先端を当該成膜チャンバーの先端と当接させ、移動チャンバー6のフランジ37を、当該成膜チャンバーのフランジ20に押しつける。なお、以下では成膜チャンバー7で成膜が終了した場合についてのみ説明し、成膜チャンバー8〜12ついては同様の説明を省略する。
【0117】
その後に真空ポンプ44によって収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間を減圧する。
【0118】
そしてシャッター21を開き、成膜が終了した基体46を成膜チャンバー7側から移動チャンバー6側に移動させる。すなわち成膜チャンバー7及び移動チャンバー6の基体移動装置15のピニオンギア18を先の場合とは逆に回転させ、基体キャリア72を成膜チャンバー7の成膜室出入口19側に移動させ、さらに移動チャンバー6の収納室47側に基体キャリア72を引き込む。
【0119】
すべての基体キャリア72が移動チャンバー6側に移動したことが確認されると、シャッター21を閉じ、移動チャンバー6の収納室47に大気又は窒素が導入される。
【0120】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、移動チャンバー6のシリンダー71を縮め、移動チャンバー6を成膜チャンバー7から離れる方向に移動させ、移動チャンバー6を成膜チャンバー7から分離する。そしてチャンバー移動装置32の電動機63を再度回転させ、移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜チャンバー群42の列方向に移動し、受取用装置3の前で停止させる。
【0121】
そして移動チャンバー6内の基体移動装置15、及び基体仮置き装置3の基体移動装置15のピニオンギア15を回転させ、移動チャンバー6内の基体キャリア72を受取用装置3側に移動させる。
【0122】
以下、この工程を繰り返し、基体46に薄膜を積層する作業を行う。
【0123】
ここで本実施形態では、移動チャンバー6が成膜チャンバー7から基体キャリア72を取り出してから、受取用装置3に基体キャリア72を受け渡すまでの時間と、移動チャンバー6が払い出し用装置2から基体キャリア72を受け取ってから、成膜チャンバー7に基体キャリア72を払い出すまでの時間の合計であるT2を30分とし、各成膜チャンバーで成膜を行うために必要な時間T1を2時間30分とした。そして成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバーの数Xを6とした。即ち、T1≒T2(X−1)を満たすように成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバーを設けた。また、各成膜チャンバーにおける最初の成膜開始時間を30分(T2)ずつずらして開始した。
【0124】
そのため、成膜チャンバー7で成膜が完了した際、移動チャンバー6によって成膜後の基体46(基体キャリア72)を払い出し、新たな未成膜の基体46を成膜チャンバー7に搬入すると、30分(T2)が経過し、成膜チャンバー8の成膜が完了する。このように、成膜チャンバー群42を構成する各成膜チャンバーに対して、順次処理を行っていくと成膜チャンバー5つに対して基体46の搬出、搬入を行うことになるため、2時間30分が経過する。すると再び成膜チャンバー7で成膜が完了する。即ち、本発明の薄膜製造装置1では、上記の工程を繰り返す際に、成膜チャンバー群42を構成する各成膜チャンバーと移動チャンバー6が連続で稼働するため効率が良い。
【0125】
本実施形態では上記したように成膜チャンバーの総数Xを6とし、また、成膜チャンバーで一度に成膜可能な基体数Yを20枚とした。これは、上記したように1基の基体キャリア72が積載可能な基体46の数を4としたことと、各成膜チャンバー、移動チャンバー6、基体仮置き装置2〜4において、5基の基体キャリア72を同時に取り扱い可能な構成としたことによりYを決定した。そして、薄膜製造装置1を薄膜の生産能力が最大の状態で稼働した場合、具体的には、薄膜製造装置1の全成膜チャンバーを使用して成膜を行う場合であって、5(X−1)台の成膜チャンバーに基体46を搬入し、6(X)台目の成膜チャンバーへ基体46を搬入するために、移動チャンバー6で基体46の移送を開始してから、全成膜チャンバーで繰り返し成膜を行う間において、薄膜製造装置1上で取り扱う基体数Zを140枚とした。即ち、Z=Y(X+1)を満たす最小の数とした。つまり、5基の基体キャリア72を1セットとした場合、薄膜製造装置1上において、成膜チャンバーの総数6に1を加えた、7セット以上の基体キャリア72が取り扱われることとした。
【0126】
このことにより、例えば、5台の成膜チャンバーがそれぞれ1セットずつの基体キャリア72を収納して成膜を実行中であり、移動チャンバー6が成膜後の基体46を積載した1セットの基体キャリア72を移送中である状態において、払い出し用装置2上に、新たな基体46を積載した1セットの基体キャリア72を前もって用意することができる。そのことにより、移動チャンバー6が受取用装置3に成膜後の基体46(1セットの基体キャリア72)を払い出した後、すぐに新たな基体46(予め用意された1セットの基体キャリア72)を受け取ることができため、基体の移送にかかる時間を短縮することができる。
つまり、本発明の薄膜製造装置1では、基体キャリア72の取り扱いセット数を成膜チャンバーの総数を上回るようにすることにより、基体仮置き装置群5を構成する各基体仮置き装置と移動チャンバー6の間で迅速に基体46(基体キャリア72)の受け渡しが可能なため、稼働効率が良い。
【0127】
なお、上記した「薄膜製造装置1を薄膜の生産能力が最大の状態で稼働した場合」とは、上記した状況に限定されるものではない。これは薄膜製造装置1の稼働方法により異なるものであり、例えば、成膜完了時間をずらさず全成膜チャンバーにて一斉に成膜を行う場合であれば、「薄膜製造装置1の全成膜チャンバーを使用して成膜を行う場合であって、全成膜チャンバーに基体を搬入してから、全成膜チャンバーで繰り返し成膜を行う間」となる。
また、薄膜製造装置1上で取り扱われる基体キャリアは7セット以上となってもよい。
例えば、受取用装置3で成膜後の基体46を基体キャリア72から取り外す等、薄膜製造装置1の外部へ基体キャリア72を受け渡すのに時間がかかる場合や、移動チャンバー6及び基体仮置き装置群5を増設すること等により、薄膜製造装置1上で8セットの基体キャリアを取り扱ってもよい。各成膜チャンバー、移動チャンバー6、各基体仮置き装置の各装置間で基体46の受け渡しを素早く行うことができればよい。
なお、各成膜チャンバー、移動チャンバー6、各基体仮置き装置で同時に取り扱い可能な基体キャリア72の適宜変更可能であり、5基以上としてもよいし、5基以下でもよい。加えて、1つの基体キャリア72が積載可能な基体46の数も適宜変更可能であり、4以上としてもよいし、4以下でもよい。これらの変更に伴って上記Yは可変するものである。
【0128】
次に、本発明の特徴的な構成たる3基以上の基体仮置き装置を利用した薄膜製造装置1の修理(メンテナンス)時の動作について図1,13を参照しながら順を追って説明する。なお、基体仮置き装置4はメンテナンス時の基体46の仮置き専用の装置である。
【0129】
成膜チャンバー群42を構成するいずれかのチャンバーが、図示しない制御装置等によって異常が検出された場合、また、規定時間が経過して定期メンテナンスを実行する場合等、特定の条件を満たすと当該チャンバーに対してメンテナンス作業が開始される(ステップS1)。
【0130】
以下の説明では成膜チャンバー7のメンテナンスを実施する場合について説明し、他の成膜チャンバー8〜12については重複する説明を省略する。
【0131】
メンテナンスが開始されると、図示しない制御装置によって、故障した成膜チャンバー7の内部の基体46(基体キャリア72)の有無が確認される(ステップS2)。
故障した成膜チャンバー7の内部に基体46(基体キャリア72)が存在しない場合、薄膜製造装置1を構成するいずれかの機器に配された基体46(基体キャリア72)を移動チャンバー6の収納室47内へ移動させ、移動チャンバー6によって基体46を運搬した後、基体仮置き装置4へ移動させる(ステップS5)。即ち、メンテナンス開始時において払い出し用装置2、受取用装置3、移動チャンバー6、成膜チャンバー8〜12のいずれかが保持している基体46(基体キャリア72)の内、任意の機器が保持する基体46を基体仮置き装置4へ移動させる。これは、払い出し用装置2、受取用装置3、移動チャンバー6、成膜チャンバー8〜12のすべてが基体46を保持すると、各機器が保持する基体46の受け渡し先の機器がすでに基体46を保持していることとなり、機器間で基体46の受け渡しができなくなるためである。
そして、ステップS5が終了すると故障した成膜チャンバー7に対するメンテナンス作業を開始する(ステップS6に移行する)。
【0132】
故障した成膜チャンバー7の内部に基体46が存在する場合は、故障した成膜チャンバー7の成膜室22内の基体46(基体キャリア72)を移動チャンバー6の収納室47内へ移動させて(ステップS3)、移動チャンバー6によって基体46を運搬した後、該基体46を基体仮置き装置4へ移動させる(ステップS4)。そして、故障した成膜チャンバー7に対するメンテナンス作業を開始する(ステップS6に移行する)。
【0133】
具体的に説明すると、ステップS3及びステップS4ではチャンバー移動装置32によって、空状態の移動チャンバー6を成膜チャンバー群42の列方向に移動させて、故障した成膜チャンバー7の前で停止させる。そして、移動チャンバー6を成膜チャンバー7に接続する。次に、成膜チャンバー7及び移動チャンバー6の基体移動装置15のピニオンギア18を回転させて、移動チャンバー6の収納室47側に基体キャリア72を引き込む。
【0134】
そして、移動チャンバー6を基体仮置き装置群5に近づく方向へ移動させて、基体仮置き装置4の前で停止させ、基体46を移動チャンバー6側から基体移動装置4側に移動させる。つまり、移動チャンバー6及び基体仮置き装置4の基体移動装置15のピニオンギア18を先の場合とは逆に回転させ、基体46(基体キャリア72)を移動させる。
【0135】
ここで、ステップS2において成膜チャンバー7の内部の基体46(基体キャリア72)の存在が確認され(ステップS7)、成膜チャンバー7の内部の基体46を基体仮置き装置4に移動している(ステップS4)場合、成膜チャンバー7に対するメンテナンスの実行(ステップS6)中に、以下の処理を行う。即ち、メンテナンス実行中において、基体仮置き装置4では成膜チャンバー7の内部にあった基体46(基体キャリア72)が図示しない外部の装置へ受け渡される(ステップS8)。そして、基体仮置き装置4には図示しない外部の装置から、新たな未成膜の基体46を積載した基体キャリア72が基体仮置き装置4に受け渡される(ステップS9)。
なお、基体仮置き装置4は、メンテナンス実行時でのみ使用される部材である。したがってメンテナンスの間、メンテナンスを行う前に成膜チャンバー7内に配されていた基体46を、薄膜製造装置1による成膜に係る一連の工程を阻害することなく、仮置きして、外部へ受け渡すことができる。
【0136】
成膜チャンバー7のメンテナンスが終了したことを確認すると(ステップS10)、上記した手段により、移動チャンバー6が基体仮置き装置4上の新たな未成膜の基体46(基体キャリア72)、又はステップS5で仮置きした基体46(基体キャリア72)を受け取って、成膜チャンバー7の内部に搬入する(ステップS11)。そして薄膜製造装置1は、成膜チャンバー7を含めたすべての成膜チャンバーによる生産体制に戻る。
【0137】
ここで、本発明とは異なる2つの基体仮置き装置を有する(基体仮置き装置4を備えていない)薄膜製造装置でメンテナンスを実行した場合、つまり、払い出し用装置2、又は受取用装置3のいずれかに対して、メンテナンス対象の成膜チャンバー内の基体46を仮置きしてメンテナンスを実行した場合について説明する。
【0138】
例えば、払い出し用装置2にメンテナンスする成膜チャンバー内の基体46を仮置きした場合、成膜チャンバーのメンテナンスを実行する間、払い出し用装置2は外部の図示しない装置に仮置きした基体46を受け渡し、メンテナンス後の成膜チャンバーで成膜するための新たな基体46を外部の図示しない装置から受け取らなければならない。そのため、成膜チャンバーのメンテナンスを実行している間、払い出し用装置2はメンテナンスを行っていない(通常動作している)成膜チャンバーで成膜するための新たな基体46を、移動チャンバー6に受け渡すことができない。つまり、成膜チャンバーのメンテナンスを実行している間、払い出し用装置2は通常の成膜のための工程を行うことができない。
【0139】
そこで、受取用装置3で、移動チャンバー6への新たな基体46の受け渡しと、移動チャンバー6からの成膜後の基体46の受け取りを行う必要がある。しかしながら、受取用装置3で前記受け渡しと受け取りの2つの工程を行うと、例えば、移動チャンバー6から成膜後の基体46を受け取って、外部の装置に受け取った成膜後の基体46を渡すまでの間、新たな未成膜の基体46を受取用装置3の上に載置することができない。つまり、成膜後の基体46の受け取りと同時に、新たな未成膜の基体46の受け渡しのための準備を行うことができない。
【0140】
そのため、払い出し用装置2と受取用装置3で前記受け取りと払い出しを分担する場合と異なり、移動チャンバー6が成膜後の基体46を基体仮置き装置に渡してから、基体仮置き装置から移動チャンバー6への新たな基体46の受け渡しが開始されるまでの間、新たな未成膜の基体46を基体仮置き装置上に準備するために要する時間だけ、移動チャンバー6に待機時間が余分に発生していまい、薄膜製造装置の生産効率が下がってしまう。この問題は受取用装置3にメンテナンスする成膜チャンバー内の基体46を仮置きした場合についても同様に発生する。
【0141】
しかしながら、本発明の一実施形態に係る薄膜製造装置1では、メンテナンス実行時でのみ使用される基体仮置き装置4を設けているため、このような問題が発生しない。つまり、通常の成膜工程を阻害しないメンテナンスを行うため、成膜チャンバーのメンテナンス中において生産効率の低下が少ない、生産効率の高い薄膜の製造を実施することができる。
【0142】
なお、上記した例では、基体46を基体仮置き装置4に移動した後に成膜チャンバー7のメンテナンスを開始したが、メンテナンスを開始する際に、必ずしも基体46が基体仮置き装置4上に配されている必要はない。例えば、成膜チャンバー7から移動チャンバー6へ基体46を移動した直後から開始してもよい。要は成膜チャンバー7のメンテナンス実行時に成膜チャンバー7内に基体46(基体キャリア72)が無ければよい。
【0143】
上記した例では、移動チャンバー6は、基体仮置き装置4から新たな未成膜の基体46を積載した基体キャリア72を受け取ったが、移動チャンバー6への新たな基体46の受け渡し方法はこれに限るものではない。例えば、基体仮置き装置4に成膜チャンバー内の基体46仮置きして、払い出し用装置2から新たな基体46を受け取ってもよいし、受取用装置3から新たな基体46を受け取ってもよい。しかしながら、基体仮置き装置4から受け取ると、薄膜製造装置1による成膜に係る一連の工程への影響が少ないため、好ましい。
【0144】
また、基体仮置き装置4は、図1に示される様に、基体仮置き装置2及び基体仮置き装置3の近傍に配置されており、また他の基体仮置き装置と列を成した状態でレール50に沿って配置されている。加えて、基体仮置き装置4は、基体仮置き装置2及び基体仮置き装置3と同様の基体移動装置15を有しており、各基体仮置き装置と同様の機構によって移動チャンバー6と基体46(基体キャリア72)の受け渡しが可能である。
そのため、基体仮置き装置を増設する(新たにメンテナンス用の基体仮置き装置4を追加する)場合や増設した基体仮置き装置を撤去する場合等において、他の部材の設計や配置を変更する必要がない。そのことにより、薄膜製造装置1の構成を容易に変更することができる。
【0145】
上記した実施形態では、メンテナンス(修理)時に使用する基体仮置き装置4を1つのみとしたが、メンテナンス(修理)時に使用する基体仮置き装置4の数はこれに限定されるものではない。例えば、複数台の基体仮置き装置4を設けてもよい。
なお、メンテナンス(修理)時に使用する基体仮置き装置4を複数台設けると、メンテナンス(修理)時の各作業を各基体仮置き装置4に分担することが可能なため、効率のよいメンテナンス(修理)作業を実行することができる。以下、3つの基体仮置き装置を使用して、基体キャリア72のメンテナンスを行う場合を例に詳細に説明する。
【0146】
まず移動チャンバー6が第1の基体仮置き装置4に対して、メンテナンス(洗浄)したい基体キャリア72を受け渡す。そして、第1の基体仮置き装置4は図示しない装置に、基体キャリア72を受け渡し、図示しない装置にて基体キャリア72のメンテナンス(洗浄)を行う。その間、移動チャンバー6は通常の成膜作業を行う。続いて、図示しない装置が、第2の基体仮置き装置4に、メンテナンス(洗浄)が終了し、新たな基体46を積載した基体キャリア72を受け渡す。最後に、移動チャンバー6は第2の基体仮置き装置4から基体キャリア72を受けとり、適宜の成膜チャンバーまで運搬する。
【0147】
ここで上記したメンテナンス方法では、メンテナンスの対象となる基体キャリア72を移動チャンバー6から受け取るための基体仮置き装置を第1の基体仮置き装置4とし、図示しない装置からメンテナンス後の基体キャリア72を受け取って、移動チャンバー6に受け渡すための基体仮置き装置を第2の基体仮置き装置としている。
そのことにより、例えば、移動チャンバー6がメンテナンス(洗浄)対象の基体キャリア72を第1の基体仮置き装置4に受け渡している間、第2の基体仮置き装置4では、移動チャンバー6に受け渡すための別のメンテナンス(洗浄)後の基体キャリア72を前もって準備することができる。そのため、移動チャンバー6は、第1の基体仮置き装置4にメンテナンス(洗浄)対象の基体キャリア72を受け渡した後すぐに、別のメンテナンス(洗浄)後の基体キャリア72を第2の基体仮置き装置4から受け取ることができる。したがって、移動チャンバー6の第2の基体仮置き装置からの基体キャリア72の受け取り時間を短縮することができるため、基体キャリア72のメンテナンスに要する時間を短くすることができる。また、このメンテナンス方法では、通常動作しない第3の基体仮置き装置4を有しているので、基体キャリア72のメンテナンス中にいずれかの成膜チャンバーにて突発故障が発生し、成膜チャンバー内の基体キャリア72を搬出しなければならない事態が発生した場合においても、成膜チャンバー内の基体キャリア72を第3の基体仮置き装置に仮置きすることにより、基体キャリア72のメンテナンスを妨げることなく、成膜チャンバーのメンテナンスを実行することができる。
【0148】
本発明の薄膜製造装置及び薄膜製造方法で製造される薄膜は、特に限定されるものではないが、例えば、所謂薄膜太陽電池の成膜にも好適に使用することが可能である。具体的には、多接合型太陽電池を加工してなる太陽電池モジュールであって、板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールの製造に使用可能であって、第1太陽電池装置層及び第2太陽電池層を成膜することができる。即ち、光ビームによる加工の前工程を行う装置として使用することができる。
さらに、光吸収層がアモルファスシリコンと結晶質シリコンからなる2層の薄膜太陽電池の成膜だけに限るものではなく、光吸収層を3層や4層のように3層以上積み重ねてなる薄膜太陽電池の成膜においても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0149】
1 薄膜製造装置
2,3,4 基体仮置き装置
6 移動チャンバー(移動装置)
7,8,9,10,11,12 成膜チャンバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法に関し、より詳細には、複数の成膜チャンバーと移動チャンバーを有する薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油等の化石原料の高騰や、発電を行う際の環境への配慮から太陽電池パネルを用いた発電が注目されている。なぜなら、太陽電池は太陽光を基に発電するので、枯渇性燃料が持つ有限性への対策になり、また、発電時に二酸化炭素を排出しないので、地球温暖化の緩和策に成り得る等の理由によるものである。
【0003】
太陽電池は、ガラス基板(基体)の上に半導体層を積層したものであり、具体例としてガラス基板上にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜して積層したものが知られている。
【0004】
なお、これらのシリコン系半導体層の成膜には、プラズマCVD法が活用されることが多く、プラズマCVD等のCVD法によってこのようなシリコン系半導体層の成膜を実施するCVD装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−139524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているプラズマCVD装置は、4個の成膜チャンバーと、1個の移動チャンバーと、1個の基体受取・払出し装置(基体仮置き装置)を有している。成膜チャンバーとは成膜室を有しており、成膜室内で基体に成膜を実施可能なチャンバーである。移動チャンバーとは、移動可能なチャンバーであり、基体を積載、運搬が可能である。基体・受取・払出し装置とは移動チャンバーと基体の受け渡しが可能であり、成膜前の基体を移動チャンバーへ受け渡し、成膜後の基体を移動チャンバーから受け取る装置である。
このようなプラズマCVD装置で使用される成膜チャンバーは、真空ポンプ等の精密機器を備えているため、突発的な故障や動作不良を発生させるおそれがある。そのため、成膜チャンバーに対して修理やメンテナンス作業を行う必要がある。なお、このような修理及びメンテナンス作業は、故障した成膜チャンバー内の基体を空にした状態で実施されることが通例である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているCVD装置では、成膜チャンバーに突発的な修理(メンテナンス)作業が発生してしまうと、基体を取り出すことが困難であり、CVD装置による生産を大幅に停止しなければならず、修理(メンテナンス)作業時に生産性が大きく低下してしまうという問題があった。
【0008】
以下、特許文献1の図1に開示されているような、4個の成膜チャンバーと、1個の基体受取・払い出し装置と、1個の移動チャンバーを備えたCVD装置の場合を例に挙げて詳細に説明する。特許文献1に開示されているようなCVD装置(以下従来のCVD装置と称す)において、まず、図14(a)に示されるように、基体106を積載した基体受取・払い出し装置104の前に、移動チャンバー105を移動する。そして、移動チャンバー105が基体受取・払い出し装置104から基体106を受け取り(図14(b))、空の成膜チャンバー103の前まで移動する(図14(c))。そして、成膜チャンバー103に基体106を受け渡し(図14(d))、成膜チャンバー103での成膜を開始する。
【0009】
このとき、成膜チャンバー100が故障したと仮定する。図14(d)の状態であれば、移動チャンバー105が故障した成膜チャンバー100の前に移動し、成膜チャンバー100から基体107を取り出して、基体受取・払い出し装置104に受け渡すことで、成膜チャンバー100を空にして修理(メンテナンス)を実施することができる。しかし、その間、基体受取・払い出し装置104に基体107が置かれることにより、基体受取・払い出し装置104が塞がってしまうため、成膜チャンバー101や成膜チャンバー102で成膜が完了した基体を次の工程に受け渡すことができなくなる。
また、図14(b),図14(c)の状態では、移動チャンバー105の内部に基体106があるため、故障した成膜チャンバー100から基体107を受け取ることができない。
さらに、図14(a)の状態では、移動チャンバー105が故障した成膜チャンバー100の基体107を受け取ることができるものの、基体受取・払出し装置104に次の成膜のための基体106が配置されているため、基体107を仮置きする場所がない。
したがって、従来のCVD装置では、メンテナンスの際に生産工程を中止しなければならない。なお、これらの問題は特許文献1の段落「0180」に開示されているように、払出し専用、受取専用の基体受取・払い出し装置104を設けても同様に発生する。
【0010】
そこで本発明は、突発故障が発生した場合や定期的なメンテナンス時において、生産性の高い成膜を行うことのできる薄膜製造装置及び薄膜製造方法、並びに薄膜製造装置のメンテナンス方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、基体を搬送可能な移動装置と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、前記成膜チャンバーは複数基設けられ、前記基体仮置き装置は3基以上設けられ、前記移動装置はいずれの成膜チャンバーに対しても基体の受け渡しが可能であり、且つ前記移動装置は前記3基以上の基体仮置き装置に対して基体の受け取りまたは払い出しの少なくともいずれかが可能であることを特徴とする薄膜製造装置である。
【0012】
本発明の薄膜製造装置は、3基以上の基体仮置き装置と複数基の成膜チャンバーを有している。そのため、基体の払い出し専用の基体仮置き装置や、基体の受け取り専用の基体仮置き装置、修理(メンテナンス)時に基体を一時的に仮置きする基体仮置き装置のように別途の役割をもつ基体仮置き装置を適宜設けることができる。そのため、例えば、修理(メンテナンス)を行う成膜チャンバーから取り出した基体を基体仮置き装置へ一時的に退避させた状態で、移動チャンバーから成膜後の基体を受け取ると同時に、未成膜の基体を移動チャンバーに払い出すための準備ができる。そのことにより、メンテナンス中であるかどうかに係わらず、移動チャンバーが成膜後の基体を基体仮置き装置に払い出した後すぐに、未成膜の基体を受け取ることができる。つまり、メンテナンス用の基体仮置き装置を設けない場合に比べて、メンテナンス時における、移動チャンバーへの基体の払い出し及び移動チャンバーからの基体の受け取りにかかる時間が短縮されるため、効率の良い成膜が可能である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記基体仮置き装置が移動装置の移動方向に沿って列状に配されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置である。
【0014】
本発明の薄膜製造装置では、基体仮置き装置が移動装置の移動方向に沿って列状に配されている。そのため、基体仮置き装置間の距離が短く、移動装置が稼働する距離が少ないため、成膜工程の時間を短縮することができる。
また、このように基体仮置き装置を配することで、将来の増設に対する拡張性がある。即ち、薄膜製造装置に基体仮置き装置を増設する場合、基体仮置き装置の列に新たな基体仮置き装置を加えて、増設した基体仮置き装置の分だけ移動装置の移動距離を増やすだけで増設が可能となる。さらに、増設した基体仮置き装置を撤去する場合も、端に位置する基体仮置き装置を撤去し、移動装置の移動距離を減らすだけで撤去が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置と成膜後の基体を移動装置から受け取る第2の基体仮置き装置とを備え、メンテナンスする成膜チャンバー内の基体を仮置きする第3の基体仮置き装置が少なくとも一つ含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置である。
【0016】
本発明の薄膜製造装置では、成膜前の基体を移動装置に基体を受け渡す基体仮置き装置と、成膜後の基体を移動装置から受け取る基体仮置き装置の他、メンテナンスする成膜チャンバー内の基体を仮置きする基体仮置き装置を有している。
そのため、メンテナンス時に成膜チャンバー内の基体を退避させても、退避させた基体が、基体仮置き装置と移動装置との基体の受け渡しを阻害しない。
また、成膜前の基体の受け渡しと、成膜後の基体の受け取りをそれぞれ専用の基体仮置き装置で行うので、たとえ突発故障があっても、成膜前の基体を基体仮置き装置に待機させた状態で、移動装置から成膜後の基体の受け渡し等を実行可能である。したがって、基体の受け渡し後すぐに基体を受け取ることができるため成膜工程の時間を短縮することができる。
また、移動装置の数は1つに限定されるものではない。本発明の薄膜製造装置では、移動装置の数を増やした場合、メンテナンス中の成膜チャンバーからの基体の退避、移動装置への成膜前の基体の受け渡し、成膜後の基体の受け取りの内少なくとも2つの動作を同時に実行可能であるという利点もある。
【0017】
請求項4に記載の発明は、成膜チャンバー内での成膜に要する時間をT1とし、移動チャンバーによって成膜チャンバーから成膜後の基体を基体仮置き装置に受け渡し、該成膜チャンバーに対して基体仮置き装置から成膜前の基体を受け渡すまでの時間をT2とした場合、成膜チャンバーの総数XがT1≒T2(X−1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置である。
なお、「≒」は端数を四捨五入してXが整数となるようにすることを意味している。
【0018】
本発明の薄膜製造装置では、成膜チャンバーの総数は、上記のように設けられることが望ましい。なぜなら、成膜チャンバーの数が少なすぎる場合や、多すぎる場合、基体仮置き装置及び、移動装置(移動チャンバー)と効率良く連動しないためである。以下、具体的に説明する。
【0019】
本発明の薄膜製造装置による薄膜の生産では、成膜チャンバー内で成膜が終了した際、移動チャンバーによって、成膜後の基体の払い出し及び新たな成膜前の基体の搬入等の工程を行うものである。この成膜後の工 程にかかる時間(T2)を仮に10分とし、成膜チャンバー内での成膜に係る時間(T1)を50分とすると、6つの成膜チャンバーで10分ずつ時間差を設けて成膜を行うことにより、成膜チャンバー及び移動用チャンバーを休止させることなく動作させることができる。
具体的に説明すると、成膜工程開始(基体の搬入の開始)から60分経過し、最初に基体を搬入した成膜チャンバーで成膜が終了した後、移動チャンバーが当該成膜チャンバーに対して基体の払い出し及び基体の搬入を実施する。すると10分経過する(成膜工程開始から70分経過する)ので、2番目に成膜を開始した成膜チャンバーで成膜が終了する。そして移動チャンバーは、2番目に成膜を開始した成膜チャンバーに対して、基体の払い出しと基体の搬入を行う。するとさらに10分経過する(成膜工程開始から80分経過する)ので、3番目に成膜を開始した成膜チャンバーで成膜が終了する。以下同様に、基体の払出しと基体の搬入を連続で行っていくと、最後に成膜を開始したチャンバーに対して基体の払い出し及び基体の搬入が完了したとき、成膜工程開始から120分が経過している。最初に成膜が完了した成膜チャンバーに対して基体の払い出しを行い、当該成膜チャンバーに新たな基体の搬入が終了したのが成膜工程開始から70分経過したときであり、それから50分経過しているので、当該成膜チャンバーで2回目の成膜が完了する。したがって、移動チャンバーが当該成膜チャンバーに対して基体の払い出し及び基体の搬入を実施可能となる。これを繰り返すことにより、成膜チャンバーは連続して成膜を繰り返し、移動チャンバーは常に稼働する。
【0020】
しかし、成膜チャンバーの数が少なすぎる場合、すべての成膜チャンバーに基体を搬入しても、最初に成膜を開始した成膜チャンバーの成膜が終了しないので、成膜が終了するまでの間、移動チャンバーが休止させなくてはならない。また、成膜チャンバーの数が多すぎる場合、最初に成膜を開始したチャンバーで成膜を完了しても、移動チャンバーはいまだ成膜を開始していない成膜チャンバーに対して基体を搬入するので、成膜を完了した基体を払い出すことができず、成膜チャンバーで連続して成膜ができない。そのため、移動チャンバーや成膜チャンバーを休止することなく稼働できないので、生産効率が悪い。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記薄膜製造装置は太陽電池モジュールの製造に用いられるものであって、前記太陽電池モジュールは、基板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールであり、成膜チャンバーにおいて前記第1太陽電池層と前記第2導電膜層とを成膜可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置である。
なお、本発明において結晶質の用語は、部分的に非晶質を含んでいるものも含むものとする。
【0022】
本発明の薄膜製造装置では、太陽電池モジュールの製造においても好適に用いることができる。即ち、突発故障の発生時や定期的なメンテナンスの実行時において、生産能力があまり低下しない、生産効率の高い太陽電池モジュールの生産が可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5に記載の薄膜製造装置を使用する薄膜製造方法であって、全ての成膜チャンバーは一度に成膜可能な基体数Yが同一であり、成膜チャンバーの総数をXとし、全ての成膜チャンバーに基体を搬入後、薄膜製造装置上に配される基体の数をZとした場合、Zの最小の数が次式の関係を満たすことを特徴とする薄膜製造方法である。
Z=Y(X+1)
【0024】
本発明の薄膜製造方法では、薄膜製造装置上に配置される基体の数は、上記Y(X+1)以上になることが望ましい。なぜなら、薄膜製造装置上に配置される基体の数が少なすぎると薄膜製造装置の生産効率が下がってしまうためである。以下、具体的に説明する。
【0025】
本発明の薄膜製造装置を効率よく稼働するためには、薄膜製造装置を構成する各装置が待機する時間を少なくして稼働することが望ましい。このように稼働させるために、例えば、以下の方法が考えられる。まず、成膜チャンバー毎に成膜完了時間に差を設け、全ての成膜チャンバーに基体を搬入した後、次々と各チャンバーで成膜が完了するように成膜を行う。そして、移動装置が1つ目の成膜チャンバーに対して、成膜後の基体の搬出、及び基体仮置き装置から受け取った新たな未成膜の基体の搬入を行うと、2つ目の成膜チャンバーで成膜が完了し、移動装置が2つ目の成膜チャンバーに対して成膜後の基体の搬出、及び新たな未成膜の基体の搬入を連続して行うという薄膜製造方法である。
【0026】
この方法によると、全ての成膜チャンバーの成膜完了時間が同じである場合と比べて、基体の搬入・搬出のために発生する成膜チャンバーの待機時間を減少することができる。即ち、全ての成膜チャンバーの成膜完了時間が同じである場合、移動装置(移動チャンバー)が複数の成膜チャンバーに対して、同時に基体の搬入・搬出を行えないので、1つずつの成膜チャンバーに対して順に基体の搬入・搬出を行わなければならない。しかしながら、1つずつの成膜チャンバーに対して順に基体の搬入・搬出を行うと、順番の遅い成膜チャンバーは、移動装置が他の成膜チャンバーに対して基体の搬入・搬出を行う時間も待機しなければならない。これに対して上記方法では、成膜チャンバーの待機時間は、1つの成膜チャンバーに対して基体の搬入・搬出を行うために要する時間のみでよい。
【0027】
つまり、上記方法によると、移動装置には待機時間が発生せず、成膜チャンバーの待機時間が減少されるので生産効率がよい。
【0028】
しかしながら、上記方法において薄膜製造装置上に配される基体の数が上記した数(Y(X+1))より少ないと、基体仮置き装置に移動装置に受け渡すための新たな基体を予め配置することができないため、移動装置へ基体を受け渡す際、基体の受け取りを開始するまで間、移動装置に待機時間が発生してしまう。また、そのことにより基体の搬入・搬出により多くの時間が必要になり、成膜チャンバーの待機時間が増大してしまう。したがって、薄膜製造装置上に配置される基体の数が上記Y(X+1)を下回ると、生産効率が下がってしまう。
【0029】
請求項7に記載の発明は、成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、基体を搬送可能な移動装置と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、前記成膜チャンバーが複数台設けられ、前記基体仮置き装置が3基以上設けられた薄膜製造装置のメンテナンス方法であって、メンテナンスを行う成膜チャンバーから移動装置に基体を取り出す工程と、基体仮置き装置に基体を払い出して基体を仮置きする工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンスと平行して、前記薄膜製造装置が所定の成膜又は基体の運搬の少なくともいずれかを実施することを特徴とする薄膜製造装置のメンテナンス方法である。
【0030】
本発明の薄膜製造装置のメンテナンス方法では、メンテナンスを行う成膜チャンバー内の基体を、移動装置によって基体仮置き装置へ退避させる。そして、メンテナンスの実行と同時に薄膜の生産工程を実施する。そのため、薄膜の生産効率を低下させることなくメンテナンスを実行できるため、薄膜製造装置の生産効率を高めることができる。
【0031】
請求項8に記載の発明は、前記基体仮置き装置の少なくとも一つが成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置であり、メンテナンスの終了に先立って、前記第1の基体仮置き装置から移動装置へ新たな基体を払い出す工程と、メンテナンスを行っている成膜チャンバー近傍まで移動装置を移動する工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンス終了に伴い、移動装置が該成膜チャンバーに新たな基体を払い出すことを特徴とする請求項7に記載の薄膜製造装置のメンテナンス方法である。
【0032】
本発明の薄膜製造装置のメンテナンス方法では、成膜チャンバーのメンテナンス終了に先だって、成膜前の基体を供給するための基体仮置き装置から移動チャンバーへ新たな基体を受け渡し、メンテナンス中の成膜チャンバーの開口と対向する位置まで移動する。そのため、成膜チャンバーのメンテナンスが終了するとすぐに成膜チャンバー内へ新たな基体を配置することができる。そのことにより、成膜チャンバーにおいて、メンテナンスが終了してから成膜が開始されるまでの時間が短縮できるので、生産効率がよい成膜を実施することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の薄膜製造装置は、突発故障の発生時や定期メンテナンスの実行時においても、生産性の高い成膜を行うことができる。また、本発明の薄膜製造方法及び薄膜製造装置のメンテナンス方法についても同様であり、常に生産性の高い薄膜の製造を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態にかかる薄膜製造装置を示す斜視図である。
【図2】図1の成膜チャンバー、移動チャンバー及び基体仮置き装置が備える基体移動装置の要部の斜視図である。
【図3】図1の成膜チャンバーの内部構造を示す斜視図である。
【図4】図1の成膜チャンバーの内部構造を示す一部破断平面断面図である。
【図5】成膜チャンバーに内蔵される電極の断面斜視図である。
【図6】図1の移動チャンバーを収納室出入口側から見た斜視図である。
【図7】移動チャンバーの内部を示す斜視図である。
【図8】移動チャンバーの内部構造を示す平面断面図である。
【図9】チャンバー移動装置の断面図である。
【図10】本発明の実施形態で使用する基体キャリアの斜視図である。
【図11】図10の基体キャリアの分解斜視図である。
【図12】移動チャンバーから成膜チャンバーに基体キャリアが移動する状態を示す移動チャンバーと成膜チャンバーの一部破断斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる薄膜製造装置のメンテナンス方法を示すフローチャートである。
【図14】従来のCVD装置の成膜チャンバーへの基体の供給を示す説明図であり、(a)〜(d)の順に基体を移動させて供給する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一実施形態に係る薄膜製造装置及び薄膜製造装置のメンテナンス方法について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の薄膜製造装置1はガラス製の基体46に半導体膜を形成するものである。本実施形態の薄膜製造装置1は、図1に示される様に、大きく分けて、基体仮置き装置群5、成膜チャンバー群42、移動チャンバー6(移動装置)によって構成される。
【0037】
基体仮置き装置群5は、3基の基体仮置き装置から構成され、具体的には、基体仮置き装置2〜4によって構成される。これらの基体仮置き装置2〜4は同一の構造をしたものである。以下構造について説明するが、基体仮置き装置2についてのみ説明し、基体仮置き装置3,4については同様の説明を省略する。なお基体仮置き装置2は、移動チャンバー6への基体46の受け渡し専用の装置であり、基体仮置き装置3は、移動チャンバー6からの基体46の受け取り専用の装置であり、基体仮置き装置4はメンテナンス(修理)時の仮置き専用の装置である。
なお、この基体仮置き装置4は、成膜チャンバーの修理時に成膜チャンバー内から取り出した基体を仮置きするために用いるものであるが、後述の基体キャリア72に対してメンテナンスや洗浄を行う際に、図示しない装置との間で対象となる基体キャリア72を受け渡し、洗浄及びメンテナンスの終了した基体キャリア72に未成膜の基体46を載置して、移動チャンバー6に受け渡すことが可能である。
【0038】
基体仮置き装置2は、図1に示される様に、ベース部材14に基体移動装置15が5基設けられたものである。
【0039】
それぞれの基体移動装置15は、図2に示すような構成をしている。即ち、基体移動装置15は、高さの高いリブ16が平行に2本延びており、その間にガイド溝17が形成されている。また、ガイド溝17の中にはピニオンギア18が一定間隔をあけて複数設けられている。ピニオンギア18は、図示しない動力によって回転する。
【0040】
成膜チャンバー群42は成膜チャンバー7〜12によって構成され、これらの成膜チャンバー7〜12は同一の構造をしたものである。以下構造について説明するが、成膜チャンバー7についてのみ説明し、成膜チャンバー8〜12に関しては同様の説明を省略する。
【0041】
成膜チャンバー7の外観形状は、図1,3に示す様に天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には開口が長方形の成膜室出入口19が設けられている。成膜室出入口19の開口端にはフランジ20が設けられている。
【0042】
フランジ20は、成膜室出入口19と相似形であって、長方形であるが、その4隅の内の対向する2角に穴13が設けられている。
【0043】
成膜室出入口19には、気密性を備えたシャッター21が設けられている。
【0044】
シャッター21は、スライド型ゲートバルブと称されるものが採用されており、扉状の部材が図3の矢印Xの方向にスライドする。
なお、このシャッター21は、上記したスライドゲートバルブに限定されるものではなく、例えば、スイング型ドアバルブと称されるものを適宜採用してもよい。
【0045】
成膜チャンバー7の内部は図4に示す様に、プラズマCVD法によって基体46に成膜する成膜室22となっている。そしてその内部には、図3,4に示す様に6基の板状の面ヒータ23a,b,c,d,e,fと、5基の電極25a,b,c,d,eが設けられている。即ち、図3,4において、ヒータ23は細い長方形として図示されており、電極25は太い長方形として図示されている。
【0046】
一方、電極25a,b,c,d,eは、図5に示すように枠体26の両面にシャワープレート27が取り付けられたものである。
【0047】
枠体26にはガスパイプ31が接続されており、図示しない原料ガス供給源に接続されている。また枠体26には、マッチング回路(MBX)を介して高周波交流電源に接続されている。
【0048】
また成膜室22の内部には、前記した基体移動装置15と同様の基体移動装置29が設けられている(図3)。基体移動装置29の数は、前記した基体仮置き装置2(あるいは基体仮置き装置3,4)の基体移動装置15の数と同一であり、その間隔も基体仮置き装置2(あるいは基体仮置き装置3,4)が備えている基体移動装置15の間隔と同一である。
【0049】
また図3に示すように、成膜室22には弁33を介して真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34が接続されている。
【0050】
次に移動チャンバー6及びチャンバー移動装置32について説明する。
【0051】
移動チャンバー6は、図6に示すように天面、底面、左右側面、裏面の6面が囲まれた箱状であり、正面には長方形の収納室出入口35が設けられている。収納室出入口35の開口端にはフランジ37が設けられている。
【0052】
収納室出入口35及びフランジ37の大きさ及び形状は、前記した成膜チャンバー7の成膜室出入口19およびフランジ20と等しい。
【0053】
ただし、成膜チャンバー7のフランジ20では、その4隅の内の対向する2角に穴13が設けられていたが、移動チャンバー6のフランジ37では、相当する位置にピン40が設けられている。ピン40はテーパー状である。
【0054】
移動チャンバー6の収納室出入口35には、これを遮蔽する部材が無く、収納室出入口35は常に開放されている。
なお、本実施形態では収納室出入り口35を開放する構成を採用したが、この構成に限定されるものではなく、気密性がなく外部からゴミの侵入等を防ぐだけの扉を取り付けてもよい。すなわち、気密性を備えた部材がなければよい。
【0055】
移動チャンバー6の内部は、図7に示す様に基体46を収納する収納室47となっている。
【0056】
収納室47の内部には、前記した基体移動装置15及び基体移動装置29と同様の基体移動装置49(図7,8参照)が設けられている。基体移動装置49の数は、前記した基体仮置き装置2〜4、及び成膜室22のそれと同一であり、その間隔も基体仮置き装置2〜4及び成膜室22のそれと同一である。
【0057】
また移動チャンバー6の収納室47内には、6基のヒータ43a,b,c,d,e,fが設けられている。6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの構造は、前記した成膜チャンバー7の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同様である。移動チャンバー6内の6基のヒータ43a,b,c,d,e,fの位置関係についても成膜チャンバー7の成膜室22に配された6基のヒータ23a,b,c,d,e,fと同一である。
なお、収納室47内のヒータ(ヒータ43a〜43f)の数や位置は上記構成に限定されるものではない。例えば、移動チャンバー6が成膜チャンバーと接続した際に、成膜チャンバーの電極25a,b,c,d,eに対向する位置に5基のヒータ43a,b,c,d,eを設けてもよい。この位置にヒータを設けると、収納室47に基体キャリア72を格納した際に、ヒータが空隙74に位置することになり、ヒータが基板46により近づくため加熱時間が短縮される。
【0058】
チャンバー移動装置32は、横列方向と、前後方向に移動チャンバー6を移動させるものであり、図1,6の様に横列方向の移動はレール50に沿って行われ、前後方向には直線ガイド51に沿って行われる。
【0059】
すなわちチャンバー移動装置32は、横列方向に延びる一対のレール50を有する。レール50は、公知の列車用レールと同様の断面形状をしている。レール50は、床面に設けられたまくら木54に公知のタイプレート等によって接続されている。
【0060】
そしてレール50の間には、図1,6の様に長尺のラック52が歯面を横方向に向けて取り付けられている。
【0061】
またレール50の端部には、図6の様にストッパ53が取り付けられている。ストッパ53は、後記する移動台車55の暴走を阻止するものであり、公知のショックアブゾーバが内蔵されている。
【0062】
そしてレール50には図1、6の様に移動台車55が載置されている。移動台車55は、ベース板60の下面に4個の車輪61が設けられたものである。本実施形態では、車輪61は、自由回転を許すものであり、車輪61は、レール50に載置されている。
【0063】
またベース板60の一部には、張出部62があり、ギャードモータ等の低速回転する電
動機63が設けられている。電動機63は、回転軸(図示せず)がベース板60の下面側
に突出された状態で取り付けられており、回転軸にはピニオンギア65が取り付けられて
いる。そしてピニオンギア65は、レール50の間に設けられたラック52と係合として
いる。
【0064】
したがって電動機63を回転すると、ピニオンギア65が回転し、ラック52から受ける反力によって移動台車55が自走する。なお本実施形態では、移動台車55に真空ポンプ44(図7)が搭載されている。
ここで、移動台車55を自走させる構成は、上記したラックアンドピニオン形式に限定されるものではなく、車輪を直接モータ等によって回転させる形式にしてもよい。
【0065】
移動台車55のベース板60の上面には、前記した直線ガイド51が設けられている。直線ガイド51は平行に二列設けられ、その方向は、床面のレール50に対して直行する。
【0066】
前記した直線ガイド51の上には、移動板67が設けられている。そして前記した移動チャンバー6は、図6,9で示されるように移動板67に固定されている。
【0067】
また移動板67の正面側(移動チャンバー6の収納室出入口35側)の辺であって、その中央には、移動側ブラケット部68(図6、図9参照)が設けられている。移動側ブラケット部68は移動板67の下面側に突出する板体である。
【0068】
一方、ベース板60の上面側には、図9に示すように固定側ブラケット部70が設けられている。そして前記した固定側ブラケット部70と移動側ブラケット部68の間には、油圧又は空気圧シリンダー71が取り付けられている。そのためシリンダー71のロッドを伸縮させると、ベース板60上の移動板67が直線ガイド51に沿ってレール50と直行する方向に直線移動し、移動板67に載置された移動チャンバー6が前後方向(成膜チャンバー群42を構成するいずれかの成膜チャンバーに対して近接・離反方向)に直線移動する。
【0069】
また移動板67には図示しない真空ポンプ44(図7に図示。図1,6には作図の都合上、図示を省略。)が搭載されている。真空ポンプ44は、収納室側減圧装置として機能し、図7の様に移動チャンバー6の収納室47に接続されている。
【0070】
次に、基体46を運搬する基体キャリア72について説明する。
【0071】
図10に示されるように、基体キャリア72は、細長い台車に二枚の枠体77を対向して立設した様な形状をしている。すなわち基体キャリア72は、直方体のキャリアベース73を有し、その両側に合計8個の車輪75が設けられている。またキャリアベース73の底面には、ラック76が取り付けられている。
【0072】
キャリアベース73の上面側の長辺部には、二枚の枠体77が平行に対向して設けられている。枠体77どうしの間は空隙74となっている。すなわちキャリアベース73と二枚の枠体77によって上向きの「コ」の字形状をなしている。
【0073】
枠体77は、図10,11の様に、正方形の開口78が2個設けられたものであり、当該開口78の周囲にクリップ80が多数設けられている。
【0074】
基体キャリア72の枠体77には、図11に示すように、背板82と重ね合わせた状態で基体46たるガラス基板が取り付けられ、この二者をクリップ80が押さえている。
【0075】
したがって、基体46たるガラス基板の露出面は、対向する枠体77の内側を向いている。
【0076】
次に、本実施形態の薄膜製造装置1の全体的なレイアウトについて説明する。
【0077】
本実施形態の薄膜製造装置では、図1の様に成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバーがいずれも成膜室出入口19を同一方向に向けた状態で横列に配置されている。また基体仮置き装置群5は、成膜チャンバー群42と並んだ位置にある。これら、基体仮置き装置群5を構成する基体仮置き装置2〜4は、いずれもガイド溝15の長手方向の延長線がレール50と直交する様な状態で、横列に配置されている。
【0078】
成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバー及び基体仮置き装置群5を構成する3基の基体仮置き装置は、いずれも床面にしっかりと固定されており、動かない。
【0079】
そして図1、6の様にチャンバー移動装置32のレール50が、成膜チャンバー群42及び基体仮置き装置群5の正面側に沿って設置されており、前記した様に移動台車55を介して移動チャンバー6がレール50に載置されている。移動チャンバー6の収納室出入口35は、成膜チャンバー7〜12の成膜室出入口19に対して対向する方向を向いている。
【0080】
本実施形態では、チャンバー移動装置32の電動機63を回転すると、移動台車55が自走し、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42の列方向に移動する。
【0081】
またチャンバー移動装置32のシリンダー71を伸縮させると、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42に対して近接・離反方向に移動する。
【0082】
次に、本実施形態の薄膜製造装置1を利用した、薄膜の製造方法について説明する。
【0083】
本実施形態の薄膜の製造方法の準備段階として、成膜チャンバー群42を構成する6個の成膜チャンバー7〜12の成膜室22内を減圧する。具体的には、成膜室出入口19のシャッター21を閉じ、真空ポンプ(成膜室側減圧装置)34を起動すると共に、弁33を開いて成膜室22内の空気を排気する。また基体46を基体キャリア72に取り付けておく。
【0084】
本実施形態の薄膜の製造方法では、基体仮置き装置2が移動チャンバー6への成膜前の基体46(基体キャリア72)の払い出し専用に使用され、基体仮置き装置3が移動チャンバー6からの成膜後の基体46(基体キャリア72)の受け取り専用に使用される。以下、基体仮置き装置2を払い出し用装置2、基体仮置き装置3を受取用装置3と称す。
まず、払い出し用装置2に基体キャリア72をセットする。具体的には、基体キャリア72を払い出し用装置2に載置し、払い出し用装置2の基体移動装置15のガイド溝17間に基体キャリア72の車輪75を嵌め込む。この時、基体キャリア72の底面に設けられたラック76が払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15のピニオンギア18と係合する。
【0085】
そして以下の一連の作業工程は、図示しない制御装置によって自動的に行われる。
【0086】
すなわち図示しない制御装置によって払い出し用装置2、受取用装置3、移動チャンバー6、成膜チャンバー群42が有機的に動作し、基体46にシリコン系のp層、i層及びn層を成膜する。
【0087】
具体的に説明すると、基体キャリア72を払い出し用装置2に載置すると、払い出し用装置2の位置に移動チャンバー6が移動する。すなわち、移動チャンバー6は、成膜チャンバー群42の列方向に移動して払い出し用装置2の前で停止する。なお位置決めは、電動機63の回転数をカウントする方策や、公知のリミットスイッチを設けることによって行われる。
【0088】
そして払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15のピニオンギア18、及び移動チャンバー6に設けられた基体移動装置49のピニオンギア18が回転する。そのことにより、基体キャリア72が前進し、移動チャンバー6側に移動する。そして、移動チャンバー6側に移動した基体キャリア72は、移動チャンバー6側に入り込む。
【0089】
そして前記した様に、移動チャンバー6の基体移動装置49のピニオンギア18も回転しているから、基体キャリア72のラック76は、移動チャンバー6側のピニオンギア18と係合し、基体キャリア72は移動チャンバー6の収納室47内に引き込まれる。
【0090】
本実施形態では、払い出し用装置2に5列の基体移動装置15が設けられ、払い出し用装置2には5基の基体キャリア72がセットされているが、払い出し用装置2に設けられた基体移動装置15の数及び間隔等と、移動チャンバー6側の基体移動装置49の数及び間隔等が同一であるから、払い出し用装置2にセットされた5基の基体キャリア72は、全て移動チャンバー6側に移動し、その収納室47内に納まる。
【0091】
なお、5基の基体キャリア72の移動は、一度に行っても良く、順に行ってもよい。移動チャンバー6から成膜チャンバー7〜12への基体キャリア72の移動、成膜チャンバー7〜12から移動チャンバー6への基体キャリア72の移動、及び移動チャンバー6から受取用装置3への基体キャリア72の移動、加えて、移動チャンバー6から基体仮置き装置4への基体キャリア72の移動についても同様であり、一斉に行っても良く、個別に行ってもよい。
【0092】
払い出し用装置2にセットされた5基の基体キャリア72が、全て移動チャンバー6側に移動し、払い出し用装置2上に基体キャリア72が無くなれば、再度成膜前の基体46を取り付けた基体キャリア72を払い出し用装置2に補充する。この補充作業は、自動的に実施され、基体キャリア72からの成膜後の基体46の取り外しや、成膜前の基体46の基体キャリア72への取り付けは、図示しないロボットによって実施される。
また、この補充作業は、詳しくは後述する、成膜後の基体46の移動用チャンバー6から受取用装置3への戻し、又は修理(メンテナンス)の少なくともいずれかを実施している間にも行うことができる。換言すると、本実施形態の薄膜の製造方法では、修理(メンテナンス)中か否かに係わらず、移動チャンバー6が基体46を受取用装置3に基体46を移動させている間、次に成膜を行うための新しい基体(基体キャリア72)を払い出し用装置2上に配置できる。つまり、未成膜の基体46を移動チャンバー6に対して受け渡す準備が常にできている。そのため、移動チャンバー6にすばやく基体キャリア72を受け渡すことができるため、成膜工程に要する時間を短縮することができる。
【0093】
全ての基体キャリア72が移動チャンバー6側に移動したことが確認されると、移動チャンバー6が再度横列方向に移動し、隣接する位置の成膜チャンバー7の前で停止する。なお、本実施形では成膜チャンバー7に基体キャリア72を移動させる場合について説明し、移動チャンバー6から成膜チャンバー8〜12のいずれかに基体キャリア72を移動させる場合については、同様の説明を省略する。
【0094】
移動チャンバー6のシリンダー71が伸び、移動チャンバー6が成膜チャンバー7に対して近接する方向に移動する。
【0095】
そしてついには、図12に示される様に、移動チャンバー6の先端が成膜チャンバー7の先端と当接する。
【0096】
すなわち移動チャンバー6の収納室出入口35が、成膜チャンバー7の成膜室出入口19と合致し、移動チャンバー6のフランジ37が、成膜チャンバー7のフランジ20と合致して移動チャンバー6のフランジ37が、成膜チャンバー7のフランジ20を押しつける。
【0097】
前記した様に成膜チャンバー7の成膜室出入口19には気密性を備えたシャッター21が設けられているので、移動チャンバー6においては、収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間が形成される。
【0098】
移動チャンバー6のフランジ37と成膜チャンバー7のフランジ20が完全に結合されたことが確認されると、真空ポンプ(収納室側減圧装置)44を起動すると共に弁45を開き、前記した収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気し、減圧して真空にする。
【0099】
そして前記した閉塞空間が所定の真空度に達すると、移動チャンバー6の収納室47内に設けられた6基のヒータ43a,b,c,d,e,fを昇温し、内部の基体46を加熱昇温する。
【0100】
基体46が所定の温度になったことが確認されると、成膜チャンバー7のシャッター21が開かれる。ここで成膜チャンバー7の成膜室22は、先に高真空状態となっているが、前記した様に収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間から空気を排気して当該部分も真空状態であるから、成膜チャンバー7のシャッター21を開いても成膜室22内の真空度は維持される。
【0101】
そしてシャッター21が完全に開いたことが確認されると、移動チャンバー6側の基体移動装置49のピニオンギア18、及び成膜チャンバー7の成膜室22内に設けられた基体移動装置29のピニオンギア18を回転させる。なお今回のピニオンギア18の回転方向は、基体キャリア72を移動チャンバー6側に移動させる場合とは逆である。
【0102】
ピニオンギア18を回転させると基体キャリア72が収納室出入口35側に進む。すなわち基体キャリア72は、移動チャンバー6側から、成膜チャンバー7の成膜室22側に進み、成膜チャンバー7の成膜室22に入り込む。そして前記した様に、成膜チャンバー7側の基体移動装置29のピニオンギア18も回転しているから、基体キャリア72のラック76は、成膜チャンバー7側のピニオンギア18と係合し、基体キャリア72は成膜チャンバー7の成膜室22内に引き込まれる。
【0103】
このとき、図12に示される様に、基体キャリア72の長方形のキャリアベース73は、各電極25a,b,c,d,eの下部に設けられた隙間に入り込み、基体キャリア72の枠体77は、各電極25a,b,c,d,eの両脇に入り込む。そして、図4に示される様に、成膜室22の内部には6基のヒータ23a,b,c,d,e,fがあり、各電極25a,b,c,d,eとヒータ23a,b,c,d,e,fは互い違いに配されているので、各基体46が、いずれもヒータ23と電極25の間に挿入される。
【0104】
基体キャリア72の全てが成膜チャンバー7の成膜室22内に移動し、それぞれ所定の位置に配置されたことが確認されると成膜チャンバー7のシャッター21を閉じる。そして成膜チャンバー7の成膜室22内において、基体キャリア72の基体46にシリコン半導体が成膜される。
【0105】
すなわち電極25a,b,c,d,eの枠体26内に原料ガスを供給すると共に電極25a,b,c,d,eに高周波交流を印加し、電極25a,b,c,d,eと基体キャリア72の間にグロー放電を発生させて原料ガスを分解し、縦置きされた基体46の表面上に薄膜を形成させる。
【0106】
そして本実施形態では、一つの成膜チャンバー7の成膜室22内で、太陽電池を構成する各薄膜層を形成させる。すなわち太陽電池は、p層、i層及びn層の各半導体層が積層されたものであるが、本実施形態では、一つの成膜チャンバー7の成膜室22内で、p層、i層及びn層の各半導体層を順次積層して行く。
【0107】
また成膜チャンバー7内で成膜工程が実行されている間に、基体キャリア72が排出されて空状態となり、且つ減圧状態の移動チャンバー6に大気又は窒素を導入して、収納室47内の圧力を外気圧と均衡化させる。
【0108】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、チャンバー移動装置32のシリンダー71を縮め、移動チャンバー6が成膜チャンバー7から離れる方向に移動する。すなわち接合状態であった移動チャンバー6を、成膜チャンバー7から分離する。
【0109】
そして移動チャンバー6の電動機63を再度回転させ、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜チャンバー群42の列方向に移動し、払い出し用装置2の前で停止させる。
【0110】
その後は、先の工程と同様に払い出し用装置2にセットされた基体キャリア72を移動チャンバー6の収納室に移動させ、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて二番目の成膜チャンバーである成膜チャンバー8の前で停止し、移動チャンバー6の先端を成膜チャンバー8の先端と当接させる。
【0111】
その後に、収納室47と成膜チャンバー8のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間を減圧し、ヒータ43a,b,c,d,e,fによって内部の基体46を加熱昇温する。
【0112】
そして成膜チャンバー8のシャッター21を開いて移動チャンバー6内の基体キャリア72を成膜チャンバー8の成膜室22に移動させ、シャッター21を閉じて成膜を行う。
【0113】
こうして次々に成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバー(成膜チャンバー7〜12)に基体46を挿入し、各成膜チャンバー内でp層、i層及びn層の各半導体層を積層する。
【0114】
そして積層工程が終了した成膜チャンバー(成膜チャンバー7〜12)から順次基体キャリア72を運び出し、受取用装置3に戻す。
【0115】
本実施形態では、この戻し作業についても、移動チャンバー6を使用する。
【0116】
具体的に説明すると、6基の成膜チャンバー群42の中で全ての成膜作業が終了した成膜チャンバーがある場合、あるいは成膜作業か終盤に差しかかった成膜チャンバーがある場合は、基体キャリア72を内蔵せずに空状態の移動チャンバー6を当該成膜チャンバーに接続する。
つまり、移動チャンバー6の移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜作業が終了した成膜チャンバーの前で停止し、移動チャンバー6を前進させて移動チャンバー6の先端を当該成膜チャンバーの先端と当接させ、移動チャンバー6のフランジ37を、当該成膜チャンバーのフランジ20に押しつける。なお、以下では成膜チャンバー7で成膜が終了した場合についてのみ説明し、成膜チャンバー8〜12ついては同様の説明を省略する。
【0117】
その後に真空ポンプ44によって収納室47と、成膜チャンバー7のシャッター21とによって囲まれた閉塞空間を減圧する。
【0118】
そしてシャッター21を開き、成膜が終了した基体46を成膜チャンバー7側から移動チャンバー6側に移動させる。すなわち成膜チャンバー7及び移動チャンバー6の基体移動装置15のピニオンギア18を先の場合とは逆に回転させ、基体キャリア72を成膜チャンバー7の成膜室出入口19側に移動させ、さらに移動チャンバー6の収納室47側に基体キャリア72を引き込む。
【0119】
すべての基体キャリア72が移動チャンバー6側に移動したことが確認されると、シャッター21を閉じ、移動チャンバー6の収納室47に大気又は窒素が導入される。
【0120】
そして収納室47内と外気との圧力差が解消すると、移動チャンバー6のシリンダー71を縮め、移動チャンバー6を成膜チャンバー7から離れる方向に移動させ、移動チャンバー6を成膜チャンバー7から分離する。そしてチャンバー移動装置32の電動機63を再度回転させ、移動台車55をレール50に沿って自走させて成膜チャンバー群42の列方向に移動し、受取用装置3の前で停止させる。
【0121】
そして移動チャンバー6内の基体移動装置15、及び基体仮置き装置3の基体移動装置15のピニオンギア15を回転させ、移動チャンバー6内の基体キャリア72を受取用装置3側に移動させる。
【0122】
以下、この工程を繰り返し、基体46に薄膜を積層する作業を行う。
【0123】
ここで本実施形態では、移動チャンバー6が成膜チャンバー7から基体キャリア72を取り出してから、受取用装置3に基体キャリア72を受け渡すまでの時間と、移動チャンバー6が払い出し用装置2から基体キャリア72を受け取ってから、成膜チャンバー7に基体キャリア72を払い出すまでの時間の合計であるT2を30分とし、各成膜チャンバーで成膜を行うために必要な時間T1を2時間30分とした。そして成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバーの数Xを6とした。即ち、T1≒T2(X−1)を満たすように成膜チャンバー群42を構成する成膜チャンバーを設けた。また、各成膜チャンバーにおける最初の成膜開始時間を30分(T2)ずつずらして開始した。
【0124】
そのため、成膜チャンバー7で成膜が完了した際、移動チャンバー6によって成膜後の基体46(基体キャリア72)を払い出し、新たな未成膜の基体46を成膜チャンバー7に搬入すると、30分(T2)が経過し、成膜チャンバー8の成膜が完了する。このように、成膜チャンバー群42を構成する各成膜チャンバーに対して、順次処理を行っていくと成膜チャンバー5つに対して基体46の搬出、搬入を行うことになるため、2時間30分が経過する。すると再び成膜チャンバー7で成膜が完了する。即ち、本発明の薄膜製造装置1では、上記の工程を繰り返す際に、成膜チャンバー群42を構成する各成膜チャンバーと移動チャンバー6が連続で稼働するため効率が良い。
【0125】
本実施形態では上記したように成膜チャンバーの総数Xを6とし、また、成膜チャンバーで一度に成膜可能な基体数Yを20枚とした。これは、上記したように1基の基体キャリア72が積載可能な基体46の数を4としたことと、各成膜チャンバー、移動チャンバー6、基体仮置き装置2〜4において、5基の基体キャリア72を同時に取り扱い可能な構成としたことによりYを決定した。そして、薄膜製造装置1を薄膜の生産能力が最大の状態で稼働した場合、具体的には、薄膜製造装置1の全成膜チャンバーを使用して成膜を行う場合であって、5(X−1)台の成膜チャンバーに基体46を搬入し、6(X)台目の成膜チャンバーへ基体46を搬入するために、移動チャンバー6で基体46の移送を開始してから、全成膜チャンバーで繰り返し成膜を行う間において、薄膜製造装置1上で取り扱う基体数Zを140枚とした。即ち、Z=Y(X+1)を満たす最小の数とした。つまり、5基の基体キャリア72を1セットとした場合、薄膜製造装置1上において、成膜チャンバーの総数6に1を加えた、7セット以上の基体キャリア72が取り扱われることとした。
【0126】
このことにより、例えば、5台の成膜チャンバーがそれぞれ1セットずつの基体キャリア72を収納して成膜を実行中であり、移動チャンバー6が成膜後の基体46を積載した1セットの基体キャリア72を移送中である状態において、払い出し用装置2上に、新たな基体46を積載した1セットの基体キャリア72を前もって用意することができる。そのことにより、移動チャンバー6が受取用装置3に成膜後の基体46(1セットの基体キャリア72)を払い出した後、すぐに新たな基体46(予め用意された1セットの基体キャリア72)を受け取ることができため、基体の移送にかかる時間を短縮することができる。
つまり、本発明の薄膜製造装置1では、基体キャリア72の取り扱いセット数を成膜チャンバーの総数を上回るようにすることにより、基体仮置き装置群5を構成する各基体仮置き装置と移動チャンバー6の間で迅速に基体46(基体キャリア72)の受け渡しが可能なため、稼働効率が良い。
【0127】
なお、上記した「薄膜製造装置1を薄膜の生産能力が最大の状態で稼働した場合」とは、上記した状況に限定されるものではない。これは薄膜製造装置1の稼働方法により異なるものであり、例えば、成膜完了時間をずらさず全成膜チャンバーにて一斉に成膜を行う場合であれば、「薄膜製造装置1の全成膜チャンバーを使用して成膜を行う場合であって、全成膜チャンバーに基体を搬入してから、全成膜チャンバーで繰り返し成膜を行う間」となる。
また、薄膜製造装置1上で取り扱われる基体キャリアは7セット以上となってもよい。
例えば、受取用装置3で成膜後の基体46を基体キャリア72から取り外す等、薄膜製造装置1の外部へ基体キャリア72を受け渡すのに時間がかかる場合や、移動チャンバー6及び基体仮置き装置群5を増設すること等により、薄膜製造装置1上で8セットの基体キャリアを取り扱ってもよい。各成膜チャンバー、移動チャンバー6、各基体仮置き装置の各装置間で基体46の受け渡しを素早く行うことができればよい。
なお、各成膜チャンバー、移動チャンバー6、各基体仮置き装置で同時に取り扱い可能な基体キャリア72の適宜変更可能であり、5基以上としてもよいし、5基以下でもよい。加えて、1つの基体キャリア72が積載可能な基体46の数も適宜変更可能であり、4以上としてもよいし、4以下でもよい。これらの変更に伴って上記Yは可変するものである。
【0128】
次に、本発明の特徴的な構成たる3基以上の基体仮置き装置を利用した薄膜製造装置1の修理(メンテナンス)時の動作について図1,13を参照しながら順を追って説明する。なお、基体仮置き装置4はメンテナンス時の基体46の仮置き専用の装置である。
【0129】
成膜チャンバー群42を構成するいずれかのチャンバーが、図示しない制御装置等によって異常が検出された場合、また、規定時間が経過して定期メンテナンスを実行する場合等、特定の条件を満たすと当該チャンバーに対してメンテナンス作業が開始される(ステップS1)。
【0130】
以下の説明では成膜チャンバー7のメンテナンスを実施する場合について説明し、他の成膜チャンバー8〜12については重複する説明を省略する。
【0131】
メンテナンスが開始されると、図示しない制御装置によって、故障した成膜チャンバー7の内部の基体46(基体キャリア72)の有無が確認される(ステップS2)。
故障した成膜チャンバー7の内部に基体46(基体キャリア72)が存在しない場合、薄膜製造装置1を構成するいずれかの機器に配された基体46(基体キャリア72)を移動チャンバー6の収納室47内へ移動させ、移動チャンバー6によって基体46を運搬した後、基体仮置き装置4へ移動させる(ステップS5)。即ち、メンテナンス開始時において払い出し用装置2、受取用装置3、移動チャンバー6、成膜チャンバー8〜12のいずれかが保持している基体46(基体キャリア72)の内、任意の機器が保持する基体46を基体仮置き装置4へ移動させる。これは、払い出し用装置2、受取用装置3、移動チャンバー6、成膜チャンバー8〜12のすべてが基体46を保持すると、各機器が保持する基体46の受け渡し先の機器がすでに基体46を保持していることとなり、機器間で基体46の受け渡しができなくなるためである。
そして、ステップS5が終了すると故障した成膜チャンバー7に対するメンテナンス作業を開始する(ステップS6に移行する)。
【0132】
故障した成膜チャンバー7の内部に基体46が存在する場合は、故障した成膜チャンバー7の成膜室22内の基体46(基体キャリア72)を移動チャンバー6の収納室47内へ移動させて(ステップS3)、移動チャンバー6によって基体46を運搬した後、該基体46を基体仮置き装置4へ移動させる(ステップS4)。そして、故障した成膜チャンバー7に対するメンテナンス作業を開始する(ステップS6に移行する)。
【0133】
具体的に説明すると、ステップS3及びステップS4ではチャンバー移動装置32によって、空状態の移動チャンバー6を成膜チャンバー群42の列方向に移動させて、故障した成膜チャンバー7の前で停止させる。そして、移動チャンバー6を成膜チャンバー7に接続する。次に、成膜チャンバー7及び移動チャンバー6の基体移動装置15のピニオンギア18を回転させて、移動チャンバー6の収納室47側に基体キャリア72を引き込む。
【0134】
そして、移動チャンバー6を基体仮置き装置群5に近づく方向へ移動させて、基体仮置き装置4の前で停止させ、基体46を移動チャンバー6側から基体移動装置4側に移動させる。つまり、移動チャンバー6及び基体仮置き装置4の基体移動装置15のピニオンギア18を先の場合とは逆に回転させ、基体46(基体キャリア72)を移動させる。
【0135】
ここで、ステップS2において成膜チャンバー7の内部の基体46(基体キャリア72)の存在が確認され(ステップS7)、成膜チャンバー7の内部の基体46を基体仮置き装置4に移動している(ステップS4)場合、成膜チャンバー7に対するメンテナンスの実行(ステップS6)中に、以下の処理を行う。即ち、メンテナンス実行中において、基体仮置き装置4では成膜チャンバー7の内部にあった基体46(基体キャリア72)が図示しない外部の装置へ受け渡される(ステップS8)。そして、基体仮置き装置4には図示しない外部の装置から、新たな未成膜の基体46を積載した基体キャリア72が基体仮置き装置4に受け渡される(ステップS9)。
なお、基体仮置き装置4は、メンテナンス実行時でのみ使用される部材である。したがってメンテナンスの間、メンテナンスを行う前に成膜チャンバー7内に配されていた基体46を、薄膜製造装置1による成膜に係る一連の工程を阻害することなく、仮置きして、外部へ受け渡すことができる。
【0136】
成膜チャンバー7のメンテナンスが終了したことを確認すると(ステップS10)、上記した手段により、移動チャンバー6が基体仮置き装置4上の新たな未成膜の基体46(基体キャリア72)、又はステップS5で仮置きした基体46(基体キャリア72)を受け取って、成膜チャンバー7の内部に搬入する(ステップS11)。そして薄膜製造装置1は、成膜チャンバー7を含めたすべての成膜チャンバーによる生産体制に戻る。
【0137】
ここで、本発明とは異なる2つの基体仮置き装置を有する(基体仮置き装置4を備えていない)薄膜製造装置でメンテナンスを実行した場合、つまり、払い出し用装置2、又は受取用装置3のいずれかに対して、メンテナンス対象の成膜チャンバー内の基体46を仮置きしてメンテナンスを実行した場合について説明する。
【0138】
例えば、払い出し用装置2にメンテナンスする成膜チャンバー内の基体46を仮置きした場合、成膜チャンバーのメンテナンスを実行する間、払い出し用装置2は外部の図示しない装置に仮置きした基体46を受け渡し、メンテナンス後の成膜チャンバーで成膜するための新たな基体46を外部の図示しない装置から受け取らなければならない。そのため、成膜チャンバーのメンテナンスを実行している間、払い出し用装置2はメンテナンスを行っていない(通常動作している)成膜チャンバーで成膜するための新たな基体46を、移動チャンバー6に受け渡すことができない。つまり、成膜チャンバーのメンテナンスを実行している間、払い出し用装置2は通常の成膜のための工程を行うことができない。
【0139】
そこで、受取用装置3で、移動チャンバー6への新たな基体46の受け渡しと、移動チャンバー6からの成膜後の基体46の受け取りを行う必要がある。しかしながら、受取用装置3で前記受け渡しと受け取りの2つの工程を行うと、例えば、移動チャンバー6から成膜後の基体46を受け取って、外部の装置に受け取った成膜後の基体46を渡すまでの間、新たな未成膜の基体46を受取用装置3の上に載置することができない。つまり、成膜後の基体46の受け取りと同時に、新たな未成膜の基体46の受け渡しのための準備を行うことができない。
【0140】
そのため、払い出し用装置2と受取用装置3で前記受け取りと払い出しを分担する場合と異なり、移動チャンバー6が成膜後の基体46を基体仮置き装置に渡してから、基体仮置き装置から移動チャンバー6への新たな基体46の受け渡しが開始されるまでの間、新たな未成膜の基体46を基体仮置き装置上に準備するために要する時間だけ、移動チャンバー6に待機時間が余分に発生していまい、薄膜製造装置の生産効率が下がってしまう。この問題は受取用装置3にメンテナンスする成膜チャンバー内の基体46を仮置きした場合についても同様に発生する。
【0141】
しかしながら、本発明の一実施形態に係る薄膜製造装置1では、メンテナンス実行時でのみ使用される基体仮置き装置4を設けているため、このような問題が発生しない。つまり、通常の成膜工程を阻害しないメンテナンスを行うため、成膜チャンバーのメンテナンス中において生産効率の低下が少ない、生産効率の高い薄膜の製造を実施することができる。
【0142】
なお、上記した例では、基体46を基体仮置き装置4に移動した後に成膜チャンバー7のメンテナンスを開始したが、メンテナンスを開始する際に、必ずしも基体46が基体仮置き装置4上に配されている必要はない。例えば、成膜チャンバー7から移動チャンバー6へ基体46を移動した直後から開始してもよい。要は成膜チャンバー7のメンテナンス実行時に成膜チャンバー7内に基体46(基体キャリア72)が無ければよい。
【0143】
上記した例では、移動チャンバー6は、基体仮置き装置4から新たな未成膜の基体46を積載した基体キャリア72を受け取ったが、移動チャンバー6への新たな基体46の受け渡し方法はこれに限るものではない。例えば、基体仮置き装置4に成膜チャンバー内の基体46仮置きして、払い出し用装置2から新たな基体46を受け取ってもよいし、受取用装置3から新たな基体46を受け取ってもよい。しかしながら、基体仮置き装置4から受け取ると、薄膜製造装置1による成膜に係る一連の工程への影響が少ないため、好ましい。
【0144】
また、基体仮置き装置4は、図1に示される様に、基体仮置き装置2及び基体仮置き装置3の近傍に配置されており、また他の基体仮置き装置と列を成した状態でレール50に沿って配置されている。加えて、基体仮置き装置4は、基体仮置き装置2及び基体仮置き装置3と同様の基体移動装置15を有しており、各基体仮置き装置と同様の機構によって移動チャンバー6と基体46(基体キャリア72)の受け渡しが可能である。
そのため、基体仮置き装置を増設する(新たにメンテナンス用の基体仮置き装置4を追加する)場合や増設した基体仮置き装置を撤去する場合等において、他の部材の設計や配置を変更する必要がない。そのことにより、薄膜製造装置1の構成を容易に変更することができる。
【0145】
上記した実施形態では、メンテナンス(修理)時に使用する基体仮置き装置4を1つのみとしたが、メンテナンス(修理)時に使用する基体仮置き装置4の数はこれに限定されるものではない。例えば、複数台の基体仮置き装置4を設けてもよい。
なお、メンテナンス(修理)時に使用する基体仮置き装置4を複数台設けると、メンテナンス(修理)時の各作業を各基体仮置き装置4に分担することが可能なため、効率のよいメンテナンス(修理)作業を実行することができる。以下、3つの基体仮置き装置を使用して、基体キャリア72のメンテナンスを行う場合を例に詳細に説明する。
【0146】
まず移動チャンバー6が第1の基体仮置き装置4に対して、メンテナンス(洗浄)したい基体キャリア72を受け渡す。そして、第1の基体仮置き装置4は図示しない装置に、基体キャリア72を受け渡し、図示しない装置にて基体キャリア72のメンテナンス(洗浄)を行う。その間、移動チャンバー6は通常の成膜作業を行う。続いて、図示しない装置が、第2の基体仮置き装置4に、メンテナンス(洗浄)が終了し、新たな基体46を積載した基体キャリア72を受け渡す。最後に、移動チャンバー6は第2の基体仮置き装置4から基体キャリア72を受けとり、適宜の成膜チャンバーまで運搬する。
【0147】
ここで上記したメンテナンス方法では、メンテナンスの対象となる基体キャリア72を移動チャンバー6から受け取るための基体仮置き装置を第1の基体仮置き装置4とし、図示しない装置からメンテナンス後の基体キャリア72を受け取って、移動チャンバー6に受け渡すための基体仮置き装置を第2の基体仮置き装置としている。
そのことにより、例えば、移動チャンバー6がメンテナンス(洗浄)対象の基体キャリア72を第1の基体仮置き装置4に受け渡している間、第2の基体仮置き装置4では、移動チャンバー6に受け渡すための別のメンテナンス(洗浄)後の基体キャリア72を前もって準備することができる。そのため、移動チャンバー6は、第1の基体仮置き装置4にメンテナンス(洗浄)対象の基体キャリア72を受け渡した後すぐに、別のメンテナンス(洗浄)後の基体キャリア72を第2の基体仮置き装置4から受け取ることができる。したがって、移動チャンバー6の第2の基体仮置き装置からの基体キャリア72の受け取り時間を短縮することができるため、基体キャリア72のメンテナンスに要する時間を短くすることができる。また、このメンテナンス方法では、通常動作しない第3の基体仮置き装置4を有しているので、基体キャリア72のメンテナンス中にいずれかの成膜チャンバーにて突発故障が発生し、成膜チャンバー内の基体キャリア72を搬出しなければならない事態が発生した場合においても、成膜チャンバー内の基体キャリア72を第3の基体仮置き装置に仮置きすることにより、基体キャリア72のメンテナンスを妨げることなく、成膜チャンバーのメンテナンスを実行することができる。
【0148】
本発明の薄膜製造装置及び薄膜製造方法で製造される薄膜は、特に限定されるものではないが、例えば、所謂薄膜太陽電池の成膜にも好適に使用することが可能である。具体的には、多接合型太陽電池を加工してなる太陽電池モジュールであって、板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールの製造に使用可能であって、第1太陽電池装置層及び第2太陽電池層を成膜することができる。即ち、光ビームによる加工の前工程を行う装置として使用することができる。
さらに、光吸収層がアモルファスシリコンと結晶質シリコンからなる2層の薄膜太陽電池の成膜だけに限るものではなく、光吸収層を3層や4層のように3層以上積み重ねてなる薄膜太陽電池の成膜においても好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0149】
1 薄膜製造装置
2,3,4 基体仮置き装置
6 移動チャンバー(移動装置)
7,8,9,10,11,12 成膜チャンバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、
基体を搬送可能な移動装置と、
基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、
前記成膜チャンバーは複数基設けられ、
前記基体仮置き装置は3基以上設けられ、
前記移動装置はいずれの成膜チャンバーに対しても基体の受け渡しが可能であり、且つ前記移動装置は前記3基以上の基体仮置き装置に対して基体の受け取りまたは払い出しの少なくともいずれかが可能であることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項2】
前記基体仮置き装置が移動装置の移動方向に沿って列状に配されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項3】
成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置と成膜後の基体を移動装置から受け取る第2の基体仮置き装置とを備え、
メンテナンスする成膜チャンバー内の基体を仮置きする第3の基体仮置き装置が少なくとも一つ含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置。
【請求項4】
成膜チャンバー内での成膜に要する時間をT1とし、移動チャンバーによって成膜チャンバーから成膜後の基体を基体仮置き装置に受け渡し、該成膜チャンバーに対して基体仮置き装置から成膜前の基体を受け渡すまでの時間をT2とした場合、
成膜チャンバーの総数Xが次式の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置。
T1≒T2(X−1)
【請求項5】
前記薄膜製造装置は太陽電池モジュールの製造に用いられるものであって、前記太陽電池モジュールは、基板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールであり、成膜チャンバーにおいて前記第1太陽電池層と前記第2導電膜層とを成膜可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の薄膜製造装置を使用する薄膜製造方法であって、全ての成膜チャンバーは一度に成膜可能な基体数Yが同一であり、成膜チャンバーの総数をXとし、全ての成膜チャンバーに基体を搬入後、薄膜製造装置上に配される基体の数をZとした場合、
Zの最小の数が次式の関係を満たすことを特徴とする薄膜製造方法。
Z=Y(X+1)
【請求項7】
成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、基体を搬送可能な移動装置と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、前記成膜チャンバーが複数台設けられ、前記基体仮置き装置が3基以上設けられた薄膜製造装置のメンテナンス方法であって、
メンテナンスを行う成膜チャンバーから移動装置に基体を取り出す工程と、基体仮置き装置に基体を払い出して基体を仮置きする工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンスと平行して、前記薄膜製造装置が所定の成膜又は基体の運搬の少なくともいずれかを実施することを特徴とする薄膜製造装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
前記基体仮置き装置の少なくとも一つが成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置であり、
メンテナンスの終了に先立って、前記第1の基体仮置き装置から移動装置へ新たな基体を払い出す工程と、メンテナンスを行っている成膜チャンバー近傍まで移動装置を移動する工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンス終了に伴い、移動装置が該成膜チャンバーに新たな基体を払い出すことを特徴とする請求項7に記載の薄膜製造装置のメンテナンス方法。
【請求項1】
成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、
基体を搬送可能な移動装置と、
基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、
前記成膜チャンバーは複数基設けられ、
前記基体仮置き装置は3基以上設けられ、
前記移動装置はいずれの成膜チャンバーに対しても基体の受け渡しが可能であり、且つ前記移動装置は前記3基以上の基体仮置き装置に対して基体の受け取りまたは払い出しの少なくともいずれかが可能であることを特徴とする薄膜製造装置。
【請求項2】
前記基体仮置き装置が移動装置の移動方向に沿って列状に配されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜製造装置。
【請求項3】
成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置と成膜後の基体を移動装置から受け取る第2の基体仮置き装置とを備え、
メンテナンスする成膜チャンバー内の基体を仮置きする第3の基体仮置き装置が少なくとも一つ含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製造装置。
【請求項4】
成膜チャンバー内での成膜に要する時間をT1とし、移動チャンバーによって成膜チャンバーから成膜後の基体を基体仮置き装置に受け渡し、該成膜チャンバーに対して基体仮置き装置から成膜前の基体を受け渡すまでの時間をT2とした場合、
成膜チャンバーの総数Xが次式の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜製造装置。
T1≒T2(X−1)
【請求項5】
前記薄膜製造装置は太陽電池モジュールの製造に用いられるものであって、前記太陽電池モジュールは、基板上に少なくとも第1導電膜層と、アモルファスシリコンを素材としてp層i層n層が積層された第1太陽電池層と、結晶質シリコンを素材としてp層i層n層が積層された第2太陽電池層と、第2導電膜層が積層されており、前記各層の少なくとも一部を光ビームによる加工によって複数のセルに分離し、相互に電気的に集積化してなる薄膜太陽電池モジュールであり、成膜チャンバーにおいて前記第1太陽電池層と前記第2導電膜層とを成膜可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の薄膜製造装置を使用する薄膜製造方法であって、全ての成膜チャンバーは一度に成膜可能な基体数Yが同一であり、成膜チャンバーの総数をXとし、全ての成膜チャンバーに基体を搬入後、薄膜製造装置上に配される基体の数をZとした場合、
Zの最小の数が次式の関係を満たすことを特徴とする薄膜製造方法。
Z=Y(X+1)
【請求項7】
成膜室を有し当該成膜室内で基体に薄膜を成膜する成膜チャンバーと、基体を搬送可能な移動装置と、基体を仮置き可能な基体仮置き装置を有し、前記成膜チャンバーが複数台設けられ、前記基体仮置き装置が3基以上設けられた薄膜製造装置のメンテナンス方法であって、
メンテナンスを行う成膜チャンバーから移動装置に基体を取り出す工程と、基体仮置き装置に基体を払い出して基体を仮置きする工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンスと平行して、前記薄膜製造装置が所定の成膜又は基体の運搬の少なくともいずれかを実施することを特徴とする薄膜製造装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
前記基体仮置き装置の少なくとも一つが成膜前の基体を移動装置に受け渡す第1の基体仮置き装置であり、
メンテナンスの終了に先立って、前記第1の基体仮置き装置から移動装置へ新たな基体を払い出す工程と、メンテナンスを行っている成膜チャンバー近傍まで移動装置を移動する工程とを有しており、成膜チャンバーのメンテナンス終了に伴い、移動装置が該成膜チャンバーに新たな基体を払い出すことを特徴とする請求項7に記載の薄膜製造装置のメンテナンス方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−82951(P2013−82951A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33529(P2010−33529)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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