説明

虚血再灌流障害の予防または治療剤、臓器保存剤およびスクリーニング方法

本発明は、式(I)[式中、各記号は明細書中に記載のとおりである。]で表されるヒドロキサム酸誘導体の新規用途に関し、より詳細には、該誘導体およびその薬理学上許容される塩を用いて虚血再灌流障害を予防または治療する方法ならびに臓器を保存する方法、ならびに虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングする方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は虚血再灌流障害の予防または治療剤、臓器保存剤および虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
臓器移植手術において、移植臓器の虚血後の再灌流により生じる虚血再灌流障害を克服することが重要な課題となっている。肺移植手術では、一般的に、移植後の肺虚血再灌流障害に影響を与える因子として、虚血時間、肺保存液組成、保存温度、保存肺の換気条件等が重要とされている。
ヒトの肺移植における移植臓器の安全な虚血時間、すなわち移植臓器を保存液へ浸漬して保存可能な時間は、4〜5時間位とされている。現実には、虚血時間を1〜2時間以内に短縮した条件下で肺移植が行われているが、10〜30%の患者に生死に瀕する重篤な急性肺傷害が発生する。
移植肺保存液について改良が進められているが、marginal graft(ドナーから摘出したgraft肺のうち、遠隔輸送が必要で、虚血時間が長くなり、移植に耐えうるかどうかぎりぎりの肺)の救済という観点で最適化されたものはない。
移植後の肺虚血再灌流障害は、移植臓器の保存状態(虚血時間)により影響を受ける。移植後の肺虚血再灌流による急性肺傷害が軽減されれば、移植患者が長期生存する確率を高めることが可能となる。
そこで、移植後の虚血再灌流障害を効果的に予防または治療することができる薬剤および方法、ならびに移植後の虚血再灌流障害を予防することができる臓器保存液および方法が求められている。
さらに、虚血再灌流障害の予防または治療剤を探索するためのスクリーニング方法が確立されれば、虚血再灌流障害を予防もしくは治療することができる新規な薬剤または方法の提供に極めて有用である。
これまで肺移植後の虚血再灌流障害の評価方法としては、主に肺の酸素化能(PaO2)や血行動態(肺動脈圧(PA圧)の変化)、肺コンプライアンスの変化、肺湿乾重量比、肺病理組織学的検討が行われている。
従来報告されている実験系では、肺移植後、閉胸せず麻酔を続け、30分あるいは1時間再灌流した後に、移植後の虚血再灌流障害を評価しているが(Mediators of ischemia−reperfusion injury of rat lung,Michael J.Eppinger;Am.J.Pathol.,150:5,1773−1784,1997参照)、虚血再灌流障害における肺損傷を評価するには、この再灌流時間は不十分である。
従って、臓器移植(特に肺移植)後の虚血再灌流障害を評価することのできる評価系の提供は重要な意義がある。
一方、ある種のヒドロキサム酸誘導体がTACE(腫瘍壊死因子α変換酵素:tumor necrosis factor α converting enzyme)/MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ:matrix metalloproteinase)阻害剤として知られている(WO99/40063、WO99/61412、WO02/06214参照)。しかしながら、TACE/MMP阻害剤を虚血再灌流障害の予防もしくは治療、または臓器保存に使用することはこれまで報告されていない。
本発明の目的は、虚血再灌流障害の予防もしくは治療に有用な薬剤または方法を提供することである。また、本発明の目的は、移植後の虚血再灌流障害を効果的に予防することができる臓器保存剤または方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法を提供することである。
【発明の開示】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、後記式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、虚血再灌流障害の予防または治療、および臓器保存に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明者らは、動物臓器移植モデルにおいて、血中または移植臓器中のTNFα量は虚血再灌流障害の傷害度を示す指標と相関性があり、TNFα抑制作用を有する薬剤が虚血再灌流傷害を効果的に予防または治療しうることを見出した。
さらに、動物臓器移植モデルにおいて、TNFα量を指標とすることにより、虚血再灌流障害の評価が可能であり、この評価系が虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニングに有用であることを見出した。特に、動物肺移植モデルにおいて、血中または肺胞洗浄液(BAL)中のTNFα量を指標として肺損傷を評価することにより、肺虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニングが可能である。
本発明は、以下のとおりである。
〔1〕 式(I)

[式中、Xは水素または水酸基の保護基を示し、
Rは水素、水酸基、アミノ、メルカプト、アルコキシ、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニル、アリールまたは−(CH−A〔lは1〜4のいずれかの整数であり、Aは、(a)窒素原子によって結合し、(b)該結合窒素原子に隣接しない位置にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、(c)該結合窒素原子に隣接する一方または両方の炭素原子に関し、オキソによって置換され、および(d)ベンゾ縮合するか、または1以上の他の炭素原子に関し、低級アルキルもしくはオキソによって置換されているか、および/または別の窒素原子に関し、低級アルキルもしくはフェニルによって置換されていてもよい5または6員環含窒素ヘテロ環を表す。〕を示し、
は水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールを示し、
Qは次の式(II)〜(V)から選ばれる基を示す。

〔式(II)において、
YはO、NR(RはRと同義)またはSを示し、
nは1〜6のいずれかの整数を示し、
は水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイル、低級アルキルアミノまたはジ低級アルキルアミノ基を示し、
はOR(Rは水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを表す。)またはNR1011(R10およびR11は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、
またはR10およびR11は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。)で表される基を示す。
式(III)において、
12は天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基であり、ここで存在する官能基は保護されていてもよく、
は水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを示し、
Zは炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはナフタレンを示す。
式(IV)において、
Raは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは

(式中、Ra11は水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルチオアルキルを示し、
Yaは−CORa12、−CONRa12Ra12’または−CORa12を示し
{Ra12およびRa12’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルまたはアリールを示し、またはRa12およびRa12’は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい}、
m1は0または1を示し、
n1は0〜4のいずれかの整数を示す)で表される基を示し、
Raはアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SORa12、−CO−(CHq1−NRa12Ra12’{q1は1または2を示し、Ra12およびRa12’は前記と同義}、−CONH−Za−Ra13{Zaは炭素数2〜4のアルキレンを示し、Ra13は水酸基、アミノまたは−NRa12Ra12’(Ra12およびRa12’は前記と同義)を示す}または

(式中、Ra11、Ya、m1およびn1は前記と同義)で表される基を示し、
またはRaおよびRaは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。
式(V)において、
Rbは水素、アルキルまたは式

で表される基を示し
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2およびq2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示し、
Rb17は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕、
Ybは式

で表される基を示す
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
Rb18は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示し、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕。
但し、(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基以外の基のとき、Ybは式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、
Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基を示す。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリール、ヘテロアリールは置換基を有していてもよい]〕で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有する虚血再灌流障害の予防または治療剤。
〔2〕 式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは〔1〕と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは〔1〕と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、〔1〕に記載の予防または治療剤。
〔3〕 Rがフタルイミドメチルである、〔2〕に記載の予防または治療剤。
〔4〕 Rがイソブチルである、〔2〕または〔3〕に記載の予防または治療剤。
〔5〕 Rが水素である、〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の予防または治療剤。
〔6〕 RがNHCHまたはNHCである、〔2〕〜〔5〕のいずれかに記載の予防または治療剤。
〔7〕 肺虚血再灌流障害の予防または治療剤である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の予防または治療剤。
〔8〕 〔1〕に記載の式(I)(式中の各記号は〔1〕と同義)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を含有する臓器保存剤。
〔9〕 式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項1と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびR4は〔1〕と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、〔8〕に記載の臓器保存剤。
〔10〕 臓器が心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸または眼球である、〔8〕または〔9〕に記載の臓器保存剤。
〔11〕 臓器が肺である〔10〕に記載の臓器、保存剤。
〔12〕 保存液の形態である、〔8〕〜〔11〕のいずれかに記載の臓器保存剤。
〔13〕 被験物質のTNFα遊離阻害活性を測定することを含む、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法。
〔14〕 動物臓器移植モデルにおいて、移植した臓器の再灌流後、
(1)被験物質を投与したレシピエント動物の血中TNFα量を測定する工程と、
(2)被験物質を投与しないレシピエント動物の血中TNFα量を測定する工程と、
(3)工程(1)および(2)で得られたTNFα量を比較する工程と
を含む、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法。
〔15〕 動物肺移植モデルにおいて、移植した臓器の再灌流後、
(1)被験物質を投与したレシピエント動物の血中または肺胞洗浄液中のTNFα量を測定する工程と、
(2)被験物質を投与しないレシピエント動物の血中または肺胞洗浄液中のTNFα量を測定する工程と、
(3)工程(1)および(2)で得られたTNFα量を比較する工程と
を含む、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法。
〔16〕 有効量の式(I)

[式中、Xは水素または水酸基の保護基を示し、
Rは水素、水酸基、アミノ、メルカプト、アルコキシ、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニル、アリールまたは−(CH−A〔lは1〜4のいずれかの整数であり、Aは、(a)窒素原子によって結合し、(b)該結合窒素原子に隣接しない位置にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、(c)該結合窒素原子に隣接する一方または両方の炭素原子に関し、オキソによって置換され、および(d)ベンゾ縮合するか、または1以上の他の炭素原子に関し、低級アルキルもしくはオキソによって置換されているか、および/または別の窒素原子に関し、低級アルキルもしくはフェニルによって置換されていてもよい5または6員環含窒素ヘテロ環を表す。〕を示し、
は水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールを示し、
Qは次の式(II)〜(V)から選ばれる基を示す。

〔式(II)において、
YはO、NR(RはRと同義)またはSを示し、
nは1〜6のいずれかの整数を示し、
は水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイル、低級アルキルアミノまたはジ低級アルキルアミノ基を示し、
はOR(Rは水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを表す。)またはNR1011(R10およびR11は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、
またはR10およびR11は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。)で表される基を示す。
式(III)において、
12は天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基であり、ここで存在する官能基は保護されていてもよく、
は水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを示し、
Zは炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはナフタレンを示す。
式(IV)において、
Raは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは

(式中、Ra11は水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルチオアルキルを示し、
Yaは−CORa12、−CONRa12Ra12’または−CORa12を示し
{Ra12およびRa12’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルまたはアリールを示し、またはRa12およびRa12’は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい}、
m1は0または1を示し、
n1は0〜4のいずれかの整数を示す)で表される基を示し、
Raはアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SORa12、−CO−(CHq1−NRa12Ra12’{q1は1または2を示し、Ra12およびRa12’は前記と同義}、−CONH−Za−Ra13{Zaは炭素数2〜4のアルキレンを示し、Ra13は水酸基、アミノまたは−NRa12Ra12’(Ra12およびRa12’は前記と同義)を示す}または

(式中、Ra11、Ya、m1およびn1は前記と同義)で表される基を示し、
またはRaおよびRaは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。
式(V)において、
Rbは水素、アルキルまたは式

で表される基を示し
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2およびq2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示し、
Rb17は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕、
Ybは式

で表される基を示す
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
Rb18は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示し、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕。
但し、(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基以外の基のとき、Ybは式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、
Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基を示す。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリール、ヘテロアリールは置換基を有していてもよい〕]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩をドナーまたはレシピエントに投与することを含む、虚血再灌流障害の予防または治療方法。
〔17〕 式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項1と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項1と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項16に記載の方法。
〔18〕 Rがフタルイミドメチルである、請求項17に記載の方法。
〔19〕 Rがイソブチルである、請求項17または18に記載の方法。
〔20〕 Rが水素である、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。
〔21〕 RがNHCHまたはNHCである、請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
〔22〕 虚血再灌流障害が肺虚血再灌流障害である、請求項16〜21のいずれかに記載の方法。
〔23〕 〔16〕に記載の式(I)(式中の各記号は〔16〕と同義)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を、それを必要とする対象に適用することを含む臓器の保存方法。
〔24〕 式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは〔23〕と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは〔23〕と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、〔23〕に記載の方法。
〔25〕 臓器が心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸または眼球である、〔23〕または〔24〕に記載の方法。
〔26〕 臓器が肺である、〔25〕に記載の方法。
〔27〕 適用が式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の投与である、〔23〕〜〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔28〕 適用が式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を含む溶液への臓器の浸漬である、〔23〕〜〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔29〕 虚血再灌流障害の予防または治療用の医薬製造における、式(I)

[式中、Xは水素または水酸基の保護基を示し、
Rは水素、水酸基、アミノ、メルカプト、アルコキシ、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニル、アリールまたは−(CH−A〔lは1〜4のいずれかの整数であり、Aは、(a)窒素原子によって結合し、(b)該結合窒素原子に隣接しない位置にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、(c)該結合窒素原子に隣接する一方または両方の炭素原子に関し、オキソによって置換され、および(d)ベンゾ縮合するか、または1以上の他の炭素原子に関し、低級アルキルもしくはオキソによって置換されているか、および/または別の窒素原子に関し、低級アルキルもしくはフェニルによって置換されていてもよい5または6員環含窒素ヘテロ環を表す。〕を示し、
は水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールを示し、
Qは次の式(II)〜(V)から選ばれる基を示す。

〔式(II)において、
YはO、NR(RはRと同義)またはSを示し、
nは1〜6のいずれかの整数を示し、
は水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイル、低級アルキルアミノまたはジ低級アルキルアミノ基を示し、
はOR(Rは水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを表す。)またはNR1011(R10およびR11は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、
またはR10およびR11は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。)で表される基を示す。
式(III)において、
12は天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基であり、ここで存在する官能基は保護されていてもよく、
は水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを示し、
Zは炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはナフタレンを示す。
式(IV)において、
Raは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは

(式中、Ra11は水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルチオアルキルを示し、
Yaは−CORa12、−CONRa12Ra12’または−CORa12を示し{Ra12およびRa12’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルまたはアリールを示し、またはRa12およびRa12’は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい}、
m1は0または1を示し、
n1は0〜4のいずれかの整数を示す)で表される基を示し、
Raはアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SORa12、−CO−(CHq1−NRa12Ra12’{q1は1または2を示し、Ra12およびRa12’は前記と同義}、−CONH−Za−Ra13{Zaは炭素数2〜4のアルキレンを示し、Ra13は水酸基、アミノまたは−NRa12Ra12’(Ra12およびRa12’は前記と同義)を示す}または

(式中、Ra11、Ya、m1およびn1は前記と同義)で表される基を示し、
またはRaおよびRaは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。
式(V)において、
Rbは水素、アルキルまたは式

で表される基を示し
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2およびq2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示し、
Rb17は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕、
Ybは式

で表される基を示す
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
Rb18は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示し、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕。
但し、(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基以外の基のとき、Ybは式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、
Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基を示す。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリール、ヘテロアリールは置換基を有していてもよい〕]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の使用。
〔30〕 式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは〔29〕と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは〔29〕と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、〔29〕に記載の使用。
〔31〕 Rがフタルイミドメチルである、〔30〕に記載の使用。
〔32〕 Rがイソブチルである、〔30〕または〔31〕に記載の使用。
〔33〕 Rが水素である、〔30〕〜〔32〕のいずれかに記載の使用。
〔34〕 RがNHCHまたはNHCである、〔30〕〜〔33〕のいずれかに記載の使用。
〔35〕 虚血再灌流障害が肺虚血再灌流障害である、〔29〕〜〔34〕のいずれかに記載の使用。
〔36〕 臓器保存用の医薬製造における、〔29〕に記載の式(I)(式中の各記号は〔29〕と同義)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の使用。
〔37〕 式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは〔36〕と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは〔36〕と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、〔36〕に記載の使用。
〔38〕 臓器が心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸または眼球である、〔36〕または〔37〕に記載の使用。
〔39〕 臓器が肺である、〔38〕に記載の使用。
〔40〕 医薬が保存液の形態である、〔36〕〜〔39〕のいずれかに記載の使用。
〔41〕 〔1〕に記載の虚血再灌流障害の予防または治療剤と該剤を虚血再灌流障害の予防または治療に使用し得るかまたは使用すべきであることを記載した書類とを含む商業的パッケージ。
〔42〕 〔8〕に記載の臓器保存剤と該剤を臓器の保存に使用し得るかまたは使用すべきであることを記載した書類とを含む商業的パッケージ。
【図面の簡単な説明】
図1は、実験例1における血中TNFα量の測定結果を示すグラフである。
図2は、実験例1におけるBAL液中TNFα量の測定結果を示すグラフである。
図3は、実験例1における再灌流後の移植肺のBAL液中白血球分画(細胞数)の測定結果を示すグラフである。
図4は、実験例1における肺内水分量(W/D ratio)の結果を示すグラフである。
図5は、実験例1における肺微小血管透過性の指標(Dry T/P ratio)の結果を示すグラフである。
図6は、実験例1における肺胞上皮透過性の指標(B/P ratio)の結果を示すグラフである。
図7は、実験例1における移植肺の病理組織学的検討(H.E.染色)の結果を示す顕微鏡写真である。
発明の詳細な説明
本発明の虚血再灌流障害の予防または治療剤および臓器保存剤の有効成分として用いられる式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩〔以下、ヒドロキサム酸誘導体(I)ともいう〕は、WO99/40063、WO99/61412、WO02/06214に記載された化合物であり、これらの刊行物に記載された方法またはそれに類似する方法によって製造することができる。
本発明で用いられるヒドロキサム酸誘導体(I)の好適な例としては、以下の誘導体が挙げられる。
A.WO02/06214に記載の式(VI)

[式中、X、R、R、Y、n、RおよびRは前記と同義。]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
B.WO02/06214に記載の式(VII)

[式中、X、R、R、R12、RおよびZは前記と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩。
C.WO99/40063に記載の式(VIII)

[式中、X、R、R、Ra、Raは前記と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
D.WO99/61412に記載の式(IX)

(式中、X、R、R、Rb、Ybは前記と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
本発明で用いられるヒドロキサム酸誘導体の特に好適な例としては、以下の誘導体が挙げられる:
5−メチル−3(R)−[1(S)−メチルカルバモイル−2−(4−スルホメトキシフェニル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(2−スルホエトキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(3−スルホプロポキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(4−スルホブトキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(5−スルホペントキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[1(S)−メチルカルバモイル−2−(4−スルホメトキシフェニル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(2−スルホエトキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(3−スルホプロポキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(4−スルホブトキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−メチルカルバモイル−2−[4−(5−スルホペントキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−{1(S)−フェニルカルバモイル−2−[4−(3−スルホプロポキシ)フェニル]エチルカルバモイル}−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(スルホメチルカルバモイル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(2−スルホエチルカルバモイル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(3−スルホプロピルカルバモイル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(4−スルホブチルカルバモイル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(5−スルホペンチルカルバモイル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(スルホメチルカルバモイル)エチルカルバモイル]ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(2−スルホエチルカルバモイル)エチルカルバモイル]ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(3−スルホプロピルカルバモイル)エチルカルバモイル]ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(4−スルホブチルカルバモイル)エチルカルバモイル]ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−2(RまたはS)−(2−ナフチルメチル)−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(5−スルホペンチルカルバモイル)エチルカルバモイル]ヘキサノヒドロキサム酸、
5−メチル−3(R)−[2−フェニル−1(S)−(4−スルホフェニルカルバモイル)エチルカルバモイル]−2(RまたはS)−フタルイミドメチルヘキサノヒドロキサム酸、またはそれらの薬理学的に許容される塩。
本明細書中で使用されている記号について以下に説明する。
R、R、R、R、R、Ra、Ra、Ra11、Ra12、Ra12’、Rb、Rb14、Rb15、Rb19およびRb20における「アルキル」とは、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキルであり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−デシル等が挙げられる。
、R、R、R10およびR11における「低級アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキルであり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル等が挙げられる。
R、R、R、R、R、R10、R11、Ra、Ra、Ra12、Ra12’、Rb14、Rb15、Rb16、Rb19、Rb20およびRb21における「アリール」とは、炭素数6〜10個のアリールであり、例えばフェニル、ナフチル、またはオルト融合した二環式の基で8〜10個の環原子を有し少なくとも一つの環が芳香環であるアリール(例えばインデニル等)等が挙げられ、好ましくはフェニルである。
、R、R10、R11、Ra、Ra、Rb16およびRb21における「ヘテロアリール」とは、炭素原子および1〜4個のヘテロ原子(酸素、硫黄または窒素)を有する5〜6員環基、またはそれから誘導される8〜10個の環原子を有するオルト融合した二環式ヘテロアリール、特にベンゼン環と縮合したベンゾ誘導体、もしくはプロペニレン、トリメチレンもしくはテトラメチレン基をそれに融合して導かれるもの、ならびにその安定なN−オキシド等であり、例えば、ピロリル、ピロリニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピリジル、ピラニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4−トリアジニル、1,2,3−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、1,2,5−オキサチアジニル、1,2,6−オキサチアジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアナフテニル、イソチアナフテニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、ベンゾオキサジニル等が挙げられ、好ましくはピリジルである。
、R、Ra、Ra、Ra12およびRa12’における「シクロアルキル」は、炭素数3〜7のシクロアルキルであり、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
、R、RaおよびRaにおける「シクロアルキルアルキル」のシクロアルキル部は上記「シクロアルキル」と同様であり、アルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなシクロアルキルアルキルとしては、例えば、シクロプロピルメチル、2−シクロブチルエチル、シクロペンチルメチル、3−シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチル等が挙げられる。
RおよびRにおける「アルケニル」は、炭素数2〜6のアルケニルであり、例えば、ビニル、アリル、3−ブテニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。
R、R、R、R、R、R、R10、R11、Ra、Ra、Ra11、Ra、Ra12’、Rb14、Rb15、Rb19およびRb20における「アリールアルキル」のアリール部は上記「アリール」と同様であり、アルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなアリールアルキルとしては、例えば、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル、3−(1−ナフチル)プロピル、3−(2−ナフチル)プロピル等が挙げられる。
R、R、R、R、R、R、R10、R11、Ra、Ra、Ra12、Ra2’、Rb14、Rb15、Rb19およびRb20における「ヘテロアリールアルキル」のヘテロアリール部は上記「ヘテロアリール」と同様であり、アルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなヘテロアリールアルキルとしては、例えば、2−ピロリルメチル、2−ピリジルメチル、3−ピリジルメチル、4−ピリジルメチル、2−チエニルメチル、2−(2−ピリジル)エチル、2−(3−ピリジル)エチル、2−(4−ピリジル)エチル、3−(2−ピロリル)プロピル等が挙げられる。
R、RおよびRa11における「アルキルチオアルキル」のアルキルチオ部におけるアルキル部は上記「アルキル」と同様であり、残りのアルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなアルキルチオアルキルとしては、例えば、メチルチオメチル、エチルチオメチル、n−プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、n−ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、sec−ブチルチオメチル、tert−ブチルチオメチル等が挙げられる。
RおよびRにおける「アリールチオアルキル」のアリール部は上記「アリール」と同様であり、アルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなアリールチオアルキルとしては、例えば、フェニルチオメチル、1−ナフチルチオメチル、2−ナフチルチオメチル、3−フェニルチオプロピル、2−(1−ナフチル)チオエチル、2−(2−ナフチル)チオエチル、3−(1−ナフチル)チオプロピル、3−(2−ナフチル)チオプロピル等が挙げられる。
RおよびRにおける「ヘテロアリールチオアルキル」のヘテロアリール部は上記「ヘテロアリール」と同様であり、アルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなヘテロアリールチオアルキルとしては、例えば、2−ピロリルチオメチル、2−ピリジルチオメチル、3−ピリジルチオメチル、4−ピリジルチオメチル、2−チエニルチオメチル、2−(2−ピリジル)チオエチル、2−(3−ピリジル)チオエチル、2−(4−ピリジル)チオエチル、3−(2−ピロリル)チオプロピル等が挙げられる。
RおよびRにおける「アリールアルキルチオアルキル」のアリールアルキル部は上記「アリールアルキル」と同様であり、残りのアルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなアリールアルキルチオアルキルとしては、例えば、ベンジルチオメチル、フェネチルチオメチル等が挙げられる。
RおよびRにおける「ヘテロアリールアルキルチオアルキル」のヘテロアリールアルキル部は上記「ヘテロアリールアルキル」と同様であり、残りのアルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなヘテロアリールアルキルチオアルキルとしては、例えば、2−ピロリルメチルチオメチル、2−ピリジルメチルチオメチル、3−ピリジルメチルチオメチル、4−ピリジルメチルチオメチル、2−チエニルメチルチオメチル等が挙げられる。
RおよびRにおける「フタルイミドアルキル」のアルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなフタルイミドアルキルとしては、例えば、フタルイミドメチル、2−フタルイミドエチル等が挙げられる。
RおよびRにおける−(CH−AにおけるAは、窒素原子で結合している含窒素ヘテロ環であり、例えば、次のような基が挙げられる。

[式中、−−−−−−はR’およびR’’がそれぞれ水素である場合は単結合であり、
R’およびR’’が一緒になって環を形成する場合は二重結合であり、
R’’’は水素、低級アルキルまたはフェニルを表し、
Q’は−CO−、−CH−、−CH(低級アルキル)−、−C(低級アルキル)−、−NH−、−N(低級アルキル)−または−O−を表し、および
T’は−O−、−NH−または−N(低級アルキル)−を表す。]
当該含窒素ヘテロ環としては、例えば、2−オキソ−1−ピロリジニル、2,5−ジオキソ−1−ピロリジニル、1,2−ジメチル−3,5−ジオキソ−1,2,4−トリアゾリジン−4−イル、3−メチル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジニル、3,4,4−トリメチル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジニル、2−メチル−3,5−ジオキソ−1,2,4−オキサジアゾリジン−4−イル、3−メチル−2,4,5−トリオキソ−1−イミダゾリジニル、2,5−ジオキソ−3−フェニル−1−イミダゾリジニルおよび2,6−ジオキソピペリジノ等が好ましく、式(ii)および(iii)の環、特に1,2−ジメチル−3,5−ジオキソ−1,2,4−トリアゾリジン−4−イル、3−メチル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジニルまたは3,4,4−トリメチル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリジニルが特に好ましい。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル(但し、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキルのアルキル部に置換することはない)、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、オキソ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシル、−COORa〔Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す。〕で表される基、カルバモイル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、アリールアルキルオキシアルキル等から選ばれる1個以上の置換基により置換されていてもよい。ここで、「低級アルキル」、「アリールアルキル」および「アリール」は前記と同様である。
「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
「アルコキシ」とは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルコキシであり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
「アルキルチオ」におけるアルキル部は上記「低級アルキル」と同様であり、このようなアルキルチオとしては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ等が挙げられる。
「アシルオキシ」とは、炭素数2〜6の直鎖状または分岐状のアルカノイルオキシであり、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ等が挙げられる。
「アリールアルキルオキシアルキル」のアリールアルキル部は上記「アリールアルキル」と同様であり、残りのアルキル部は上記「低級アルキル」と同様である。このようなアリールアルキルオキシアルキルとしては、例えば、ベンジルオキシメチル、フェネチルオキシメチル等が挙げられる。
10およびR11が隣接する窒素原子と一緒になって形成する「置換されていてもよいヘテロ環」は、炭素原子および少なくとも1個の窒素原子を有し、環内にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、環を構成する炭素原子に関し、オキソによって置換されていてもよい4〜7員環基であり、さらにはこれらヘテロ環を構成する隣接する2つの炭素原子を利用してベンゼン環等の芳香環が縮環してもよい。このようなヘテロ環には、例えばアゼチジノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、1−ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、オキソチオモルホリノ、ジオキソチオモルホリノ、2−オキソ−1−キナゾリニル等が挙げられる。
なお、当該ヘテロ環が1−ピペラジニルの如く、環内にさらなるヘテロ原子として窒素原子を含有する場合、当該窒素原子上には低級アルキル(前記と同様)、アリールアルキル(前記と同様)、ヘテロアリールアルキル(前記と同様)、アリール(前記と同様)、ヘテロアリール(前記と同様)、−COORa(Raは前記と同様)で表される基またはアシルが置換していてもよい。ここで、アシルとは−CORaで表される基であり、Raは前記と同様である。
12における天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基とは、HN−CH(R30)−COOHで示される天然または天然以外のα−アミノ酸中の基R30である。天然のα−アミノ酸から誘導される特性基の例は以下の通りであり、括弧内に対応するアミノ酸を示す:水素(グリシン)、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、ベンジル(フェニルアラニン)、p−ヒドロキシベンジル(チロシン)、ヒドロキシメチル(セリン)、メルカプトメチル(システイン)、1−ヒドロキシエチル(スレオニン)、2−メチルチオエチル(メチオニン)、カルボキシメチル(アスパラギン酸)、2−カルボキシエチル(グルタミン酸)、2−インドリルメチル(トリプトファン)、4−イミダゾリルメチル(ヒスチジン)、4−アミノブチル(リジン)、3−グアニジノプロピル(アルギニン)。天然以外のα−アミノ酸から誘導される特性基の例は以下の通りであり、括弧内に対応する天然以外のアミノ酸を示す:エチル(α−アミノ−n−酪酸)、n−プロピル(α−アミノ−n−ペンタン酸)、n−ブチル(α−アミノ−n−ヘプタン酸)、n−ヘプチル(α−アミノ−n−ノナン酸)、シクロヘキシルメチル(シクロヘキシルアラニン)、フェニル(α−アミノ−フェニル酢酸)、2−フェニルエチル(ホモフェニルアラニン)、1−ナフチル(α−アミノ−1−ナフチル酢酸)、2−ナフチル(α−アミノ−2−ナフチル酢酸)、フェネチル(α−アミノ−3−フェニルブタン酸)、α−メチルベンジル(β−メチルフェニルアラニン)、α,α−ジメチルベンジル(β,β−ジメチルフェニルアラニン)等が挙げられる。
12に存在する任意の(反応性)官能基は、ペプチド化学において知られている方法で保護することができる。例えば、アミノ基はtert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはイソボルニルオキシカルボニル基、あるいはフタルイミド基の形態で保護することができる。カルボキシル基はメチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル等の形態で保護することができる。ヒドロキシ基はtert−ブチル、ベンジル、またはテトラヒドロピラニルエーテルの形態で、またはアセテートの形態で保護することができる。メルカプト基は、tert−ブチル、ベンジル、または同様な基により保護することができる。
Xにおける「水酸基の保護基」としては、例えば、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、シリル(例えば、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル等)、2−テトラヒドロピラニル等が挙げられる。当該アリールアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル(但し、アリールアルキルのアルキル部に置換することはない)、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、オキソ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシル、−COORa〔Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す。〕で表される基、カルバモイル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、アリールアルキルオキシアルキル等から選ばれる1個以上の置換基を有していてもよい。本発明の化合物における水酸基の保護基としては、シリル、2−テトラヒドロピラニル、ベンジル等が好ましい。
Zにおける「アルキレン」とは、炭素数1〜6のメチレン鎖を示し、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンあるいはペンチレン等が挙げられる。
Zにおける「フェニレン」とは、−C−で表される2価の芳香族炭化水素基を表し、例えば1,2−、1,3−あるいは1,4−フェニレンが挙げられる。
Zにおける「ナフタレン」とは、−C10−で表される2価の芳香族炭化水素基を表し、例えば1,2−、1,4−、1,5−、2,5−、あるいは2,8−ナフタレン等が挙げられる。
前記Zにおけるフェニレンおよびナフタレンは、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシスルホニル、ヒドロキシスルホニルオキシ等から選ばれる1個以上の置換基により置換されていてもよい。ここで「低級アルキル」、「アルコキシ」および「アシルオキシ」は前記と同様である。
Ra、Ra、Ra11、Ra12およびRa12’における「アルキル」、「シクロアルキル」、「シクロアルキルアルキル」は、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル(但し、アルキル、およびシクロアルキルアルキルのアルキル部に置換することはない)、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、オキソ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシル、−COORa〔Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す。〕で表される基、カルバモイル、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、アリールアルキルオキシアルキル等から選ばれる1個以上の置換基により置換されていてもよい。ことで、「低級アルキル」、「アルコキシ」、「アルキルチオ」、「アシルオキシ」、「アリールアルキル」、「アリール」および「アリールアルキルオキシアルキル」は前記と同様である。
またRa12およびRa12’における「アリール」は、

[式中、Ra17は水素、低級アルキル(上記と同様)またはアリールアルキル(上記と同様)を示し、
Ra18およびRa18’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素または低級アルキル(上記と同様)を示し、または
Ra18およびRa18は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
r1は1〜6の整数を示し、
s1は0〜6の整数を示し、
t1は1〜6の整数を示す]からなる群より選ばれる置換基により置換されていてもよい。
RaおよびRa、Ra12およびRa12’、またはR18およびR18’が隣接する窒素原子と一緒になって形成する「置換されていてもよいヘテロ環」とは、前記R10およびR11における「置換されていてもよいヘテロ環」と同様である。
RaおよびRa

で表される基である場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。またRaにおけるRa12とRaにおけるRa12は、同一であっても異なっていてもよく、RaにおけるRa12’とRaにおけるR12’は同一であっても異なっていてもよい。
Zaにおける「炭素数2〜4のアルキレン」は、炭素数2〜4の直鎖状または分岐状のアルキレンであり、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、1,1−ジメチルエチレン等が挙げられる。
QbおよびQbにおける「芳香族炭化水素環」としては、ベンゼン環、ナフタレン環、またはオルト融合した二環式の炭化水素環で8〜10個の環原子を有し少なくとも一つの環が芳香環であるもの(例えばインデン等)等が挙げられる。好ましくはベンゼン環である。
QbおよびQbにおける「芳香族ヘテロ環」としては、炭素原子および1〜4個のヘテロ原子(酸素、硫黄または窒素)を有する5〜6員環、またはそれから誘導される8〜10個の環原子を有するオルト融合した二環式芳香族ヘテロ環、特にベンゼン環と縮合したベンゾ誘導体が挙げられる。芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,5−オキサチアジン、1,2,6−オキサチアジン、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、チアナフテン、イソチアナフテン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、イソインドール、インドール、インダゾール、イソキノリン、キノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ベンゾオキサジン等が挙げられる。好ましくは、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、ピリジンである。
Rb13およびRb18における「ハロゲン」、「低級アルキル」、「アルコキシ」、「アルキルチオ」、「アシルオキシ」、「アリールアルキル」および「アリールアルキルオキシアルキル」は前記と同様である。
Rb14およびRb15、またはRb19およびRb20が隣接する窒素原子と一緒になって形成する「置換されていてもよいヘテロ環」とは、前記R10およびR11における「置換されていてもよいヘテロ環」と同様である。
Rb14およびRb15、またはRb19およびRb20が隣接する窒素原子と一緒になって形成する「置換されていてもよいヘテロ環」の好適な例としては、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリノおよび4位の窒素原子が低級アルキルで置換されていてもよい1−ピペラジニルが挙げられる。
本発明の式(IX)において、より好ましい態様は次の通りである。
(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは式

で表される基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基であり、かつYbがフリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、チアゾリル、フェニル、アルコキシフェニル、または−NRb19Rb20(式中、Rb19およびbR20は同一または異なっていてもよく、それぞれアルキルを示す)で置換されたフェニルであるか、または
(ii)Rbがアルキルまたは

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素を示す)で表される基であり、かつYbが式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基である。
本発明の式(IX)において、特に好ましい態様は次の通りである。
(a)Rb

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は1を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは式

で表される基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素またはアルキルを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよい))で表される基であり、かつYbがフリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、チアゾリル、フェニル、アルコキシフェニル、または−NRb19Rb20(式中、Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれアルキルを示す)で置換されたフェニルである。
(b)Rb

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は1を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは式

で表される基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は1を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素またはアルキルを示す))で表される基であり、かつYがフリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、チアゾリル、フェニル、アルコキシフェニル、または−NRb19Rb20(式中、Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれアルキルを示す)で置換されたフェニルである。
(c)Rbがアルキルまたはベンジルであり、かつYbが式

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素またはアルキルを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はフェニルまたはピリジルを示す)から選ばれる基を示す)で表される基である。
(d)Rbがアルキルまたはベンジルであり、かつYbが式

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素またはアルキルを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリノおよび4位の窒素原子が低級アルキルで置換されていてもよい1−ピペラジニルから選ばれるヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はフェニルまたはピリジルを示す)から選ばれる基を示す)で表される基である。
(e)Rbがアルキルまたはベンジルであり、かつYbが式

(式中、Qbはフラン環を示し、
Rb18はフェニルアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素またはアルキルを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基を示す)から選ばれる基を示す)で表される基である。
(f)Rbがアルキルまたはベンジルであり、かつYbが式

(式中、Qbはフラン環を示し、Rb18はベンジルオキシメチルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0または1のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素またはアルキルを示し、
Rb22は水酸基を示す)から選ばれる基を示す)で表される基である。
本発明における、別の好ましい態様としては、次のものが挙げられる。
Rbにおける式

で表される基の好ましい例としては、Qbがベンゼン環であり、Rb13が水素、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシまたは式

で表される基
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれアルキルを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい)である基が挙げられる。
より好ましい例としては、Qbがベンゼン環であり、Rb13が水素である基が挙げられる。
Ybにおける式

で表される基の好ましい例としては、Qbがベンゼン環、またはピロール、フラン、チオフェン、チアゾールおよびピリジンから選ばれる芳香族ヘテロ環であり、Rb18が水素または式

から選ばれる基
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれアルキルを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリールまたはヘテロアリールを示し、
Rb22は水酸基を示す)である基が挙げられる。
より好ましい例としては、Qbがベンゼン環、またはピロール、フラン、チオフェン、チアゾールおよびピリジンから選ばれる芳香族ヘテロ環であり、Rbが水素または式

で表される基
(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれアルキルを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい)である基が挙げられる。
式(I)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはそれらの薬理学上許容される塩は、不斉炭素を有する場合があるので、光学活性体もしくはラセミ体として存在することができ、当該ラセミ体は自体公知の手法により各光学活性体に分離することができる。また、ヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩がさらに付加的な不斉炭素を有している場合には、その化合物はジアステレオマー混合物として、もしくは単一のジアステレオマーとして存在することができ、これらもまた自体公知の手法により各々分離することができる。
また、ヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩は、多形(polymorphism)を示すことができ、また、一より多くの互変異性体として存在することができ、さらに、溶媒和物として存在することができる。
従って、本発明は、前記のようないかなる立体異性体、光学異性体、多形体、互変異性体、溶媒和物(水和物を含む)、およびそれらの任意の混合物等を包含するものである。光学活性体、ラセミ体およびジアステレオマーも本発明の範囲に包含される。
式(I)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)で表されるヒドロキサム酸誘導体の薬理学上許容される塩としては、例えば、アルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム等との塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等との塩)、アルミニウム塩、アンモニウム塩、有機塩基(トリエチルアミン、モルホリン、ピペリジン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、メグルミン等)との塩、天然α−アミノ酸(アラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、アルギニン等)との塩等が挙げられる。
また、その他の薬理学上許容される塩としては、例えば、無機酸付加塩(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等との塩)、有機酸付加塩(メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、マンデル酸、リンゴ酸等との塩)、アミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸等)との塩等が挙げられる。さらに、結晶化のためにシュウ酸を用いて塩とすることもできる。
式(I)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)で表されるヒドロキサム酸誘導体の好ましい態様としては、遊離酸あるいは薬理学上許容される塩が挙げられ、両形態において結晶化が可能であり、任意の誘導体およびその異性体を高純度かつ大量に製造することができる。
式(I)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の好ましい態様としては、式(I)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)において、RまたはRがフタルイミドメチルであるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩、式(I)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)において、Rがイソブチルであるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩、式(VI)において、Rが水素であるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩、式(VI)において、RがNHCHまたはNHCであるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩、式(VII)において、R12がベンジルであるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩、式(VII)において、Rが水素であるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩等が挙げられる。
本発明のヒドロキサム酸誘導体は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、抽出、クロマトグラフィー、再沈殿、再結晶等の手段を適宜施すことによって、任意の純度のものとして採取できる。
また、当該ヒドロキサム酸誘導体の薬理学上許容される塩、溶媒和物(水和物を含む)も、公知の方法により製造できる。さらに、当該ヒドロキサム酸誘導体の各種異性体等も、公知の方法により製造できる。
本発明のヒドロキサム酸誘導体およびその薬理学上許容される塩は、哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ブタ、サル等)に対して、優れた虚血再灌流障害の予防または治療作用を有し、かつ低毒性である。
したがって、本発明のヒドロキサム酸誘導体およびその薬理学上許容される塩は、虚血再灌流障害の予防または治療剤および臓器保存剤として有用である。
本発明のヒドロキサム酸誘導体およびその薬理学上許容される塩を医薬品として用いる場合、薬理学上許容される担体等を用いて、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、クリーム剤、エアロゾル剤等の形態で医薬組成物とし、経口的または非経口的に投与することができる。とりわけ、当該ヒドロキサム酸誘導体およびその薬理学上許容される塩は水溶性に優れているので、注射剤、点眼剤、点鼻剤、点滴用剤等の水溶性医薬組成物を調製するのに好適である。
本明細書において、非経口とは、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射あるいは点滴などを含むものである。注射用製剤、例えば無菌注射用水性懸濁物あるいは油性懸濁物は、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤を用いて当該分野で公知の方法で調製されうる。その無菌注射用製剤は、また、例えば水溶液などの製剤上許容される非経口投与可能な希釈剤あるいは溶剤中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な希釈剤あるいは溶剤として許容されるものとしては、水、リンゲル液、等張食塩液などが挙げられる。さらに、通常、溶剤または懸濁化溶媒として、無菌の不揮発性油も用いられうる。このためには、本発明の趣旨に反しない限り、いかなる不揮発性油も脂肪酸も使用でき、例えば、天然あるいは合成あるいは半合成の脂肪油または脂肪酸、そして天然あるいは合成あるいは半合成のモノあるいはジあるいはトリグリセリド類が挙げられる。
直腸投与用の座剤は、その薬物と適当な低刺激性の補形剤、例えばココアバターやポリエチレングリコール類といった常温では固体であるが腸管の温度では液体で、直腸内で融解し、薬物を放出するものなどと混合して製造できる。
経口投与用の固形投与剤形としては、上記した粉剤、顆粒剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤などが挙げられる。そのような剤形において、活性成分化合物は、少なくとも一つの添加物、例えばショ糖、乳糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、寒天、アルギネート類、キチン類、キトサン類、ペクチン類、トラガントガム類、アラビアゴム類、ゼラチン類、コラーゲン類、カゼイン、アルブミン、合成または半合成のポリマー類またはグリセリド類と混合することができる。そのような剤形は、また慣用のさらに別の添加物を含んでもよい。別の添加物としては、例えば不活性希釈剤、マグネシウムステアレートなどの滑沢剤、パラベン類、ソルビン酸などの保存剤、アスコルビン酸、α−トコフェロール、システインなどの抗酸化剤、崩壊剤、結合化剤、増粘剤、緩衝化剤、甘味付与剤、フレーバー付与剤、パフューム剤などが挙げられる。錠剤およびピル剤は、さらに腸溶性コーティングすることもできる。
経口投与用の液剤としては、医薬として許容されるシロップ剤、エマルジョン剤、エリキシル剤、懸濁剤、溶液剤などが挙げられる。これらは、当該分野で通常用いられる不活性希釈剤、例えば水を含んでいてもよい。
上記製剤中には当該ヒドロキサム酸誘導体およびその薬理学上許容される塩を有効量配合する。
当該ヒドロキサム酸誘導体およびその薬理学上許容される塩の投与量は、投与ルート、患者の症状、体重あるいは年齢等によっても異なり、投与目的に応じて適宜設定することができる。通常、成人に静脈内投与する場合、0.001〜1,000mg/kg体重/日、好ましくは0.005〜250mg/kg体重/日を、一日1〜数回に分けて投与する。
本発明の虚血再灌流障害の予防または治療剤は、移植手術において、ドナー、レシピエント、またはドナーとレシピエントの両方に投与することができる。例えば、臓器摘出手術前または手術中にドナーに投与することができる。投与方法としては、静脈内または動脈内に注射または持続投与する方法、摘出する臓器に注入する方法などが挙げられる。本発明の虚血再灌流障害の予防または治療剤は、臓器移植手術前、手術中または手術後にレシピエントに投与することができる。移植手術後にレシピエントに投与する場合、移植臓器の再灌流前、再灌流と同時に、または再灌流後に投与することができる。投与方法としては、静脈内または動脈内に注射または持続投与する方法、移植した臓器に注入する方法などが挙げられる。例えば、肺移植手術後のレシピエントに投与する場合、0.0001〜100mg/kg体重/時の速度で、再灌流の開始から0.5〜150時間にわたって静脈内に持続投与する方法が挙げられる。
本発明において、虚血再灌流障害には、臓器移植手術において移植臓器の虚血後の再灌流により生じる臓器の障害が含まれる。さらに臓器移植手術以外の虚血後の再灌流により生じる臓器の障害も含まれる。本発明において、移植臓器は、特に限定されないが、例えば、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、眼球などが挙げられる。本発明は、好ましくは、肺移植後の肺虚血再灌流障害の予防または治療に適用することができる。
本発明の臓器保存剤は、保存液の形態であっても、あるいは粉末、錠剤または顆粒などの固体製剤の形態であって適当な溶液に溶解して使用する態様であってもよいが、好ましくは保存液の形態である。保存液の形態の臓器保存剤は、ヒドロキサム酸誘導体(I)を生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝液などの生理的に許容される緩衝液や等張化液に溶解して調製することができる。
好ましくは、本発明の臓器保存剤は、臓器保存液として臨床的に使用されている保存液にヒドロキサム酸誘導体(I)を溶解することにより調製することができる。臨床的に使用されている臓器保存液としては、Euro−Collins液、UW液(商品名ViaSpan)、Histidine−Tryptophane−Ketoglutarate(HTK)液、Low potasssium dextran(LPD)液、EP−4液、St.Thomas液、Collins液、Sachs液、Celsior液、Belzer液などを使用することができる。
本発明の臓器保存剤中のヒドロキサム酸誘導体(I)の濃度は、保存液の形態の場合、通常、0.001〜100mg/ml、好ましくは0.02〜20mg/ml、より好ましくは0.1〜10mg/mlである。
本発明の臓器保存剤のpHは生理的に許容される範囲に調整すればよく、通常、pH2〜8、好ましくはpH3〜7である。
本発明の臓器保存剤は、さらに、製薬上許容される添加剤、希釈剤、賦形剤、安定化剤、等張化剤、緩衝剤などを含有してもよい。
本発明の臓器保存剤は、他の薬効成分を含有してもよい。他の薬効成分としては、ヘパリン、抗凝固剤、プロテアーゼ阻害剤、免疫抑制剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗生物質などが挙げられる。
本発明の臓器保存剤は、ドナーから摘出した臓器の保存液として使用することができる。保存液として使用する方法としては、摘出した臓器を保存液に浸漬する方法、摘出した臓器に保存液を灌流させる方法が挙げられる。本発明の臓器保存剤は、移植手術時の移植臓器の洗浄液としても使用することができる。移植手術には、ドナーからの臓器の摘出手術、レシピエントへの臓器の移植手術が含まれる。臓器保存剤を保存液または洗浄液として使用する場合、好ましくは0℃〜25℃、より好ましくは0℃〜10℃に冷却した状態で使用する。
本発明の臓器保存剤が使用される臓器は、特に限定されず、例えば、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、血管、皮膚、角膜、眼球などが挙げられる。好ましくは移植肺の保存液または洗浄液として使用される。
本発明のスクリーニング方法によれば、被験物質のTNFα遊離阻害活性(TACE阻害活性)を指標とすることにより、虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングすることができる。
詳細には、TNFα遊離阻害活性の測定系で、被験物質の存在下および非存在下での遊離TNFα量を測定する。被験物質非存在下での遊離TNFα量と被験物質の存在下での遊離TNFα量を比較する。TNFα遊離阻害活性を有する被験物質を選択することにより、虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングすることができる。
TNFα遊離阻害活性の測定方法は、特に限定されず、in vivoまたはin vitroの測定方法を用いることができる。in vitroの測定方法としては、例えば、WO99/40063またはWO99/61412に記載のmonocyte系培養細胞であるTHP−1細胞からのTNFα遊離に対する阻害活性を測定する方法[参考:Nature 370,218−220(1994)]、LPS処理したヒト全血のTNFα遊離に対する阻害活性を測定する方法[参考:Lymphokine Res 8,141−146(1989)]などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法では、動物臓器移植モデルにおいて、血中TNFα量を指標とすることにより、虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングすることができる。
詳細には、動物臓器移植モデルにおいて、移植した臓器の再灌流後のレシピエント動物の血中TNFα量を、被験物質を投与したレシピエント動物および被験物質を投与しないレシピエント動物について測定する。被験物質を投与したレシピエント動物におけるTNFα量が、被験物質を投与しないレシピエント動物におけるTNFα量と比較して抑制されている被験物質を選択することにより、虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングすることができる。
肺虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングする場合は、動物肺移植モデルにおいて、レシピエント動物の血中または肺胞洗浄液(BAL)中のTNFα量を、被験物質を投与したレシピエント動物および被験物質を投与しないレシピエント動物について測定する。被験物質を投与したレシピエント動物におけるTNFα量が、被験物質を投与しないレシピエント動物におけるTNFα量と比較して抑制されている被験物質を選択することにより、肺虚血再灌流障害の予防または治療剤をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法において使用される動物臓器移植モデルは、臓器移植の分野で使用されている動物モデルであれば、特に限定されない。例えば、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、眼球などの各種臓器の移植動物モデルを使用することができる。好ましくは動物肺移植モデルを使用することができる。
動物臓器移植モデルに使用される動物は、特に限定されず、イヌ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ブタ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ハムスター、スナネズミ、フェレット、ネコなどを使用することができる。
レシピエント動物に被験物質を投与する時期は、特に限定されず、移植臓器の再灌流前、再灌流と同時に、または再灌流後等任意の時期に被験物質を投与することができる。好ましくは、再灌流と同時に、または再灌流直後に被験物質をレシピエント動物に投与する。被験物質の投与時間は、特に限定されないが、再灌流の開始から0.5〜24時間にわたる持続投与が好ましい。被験物質の投与方法としては、静脈内または動脈内に注射または持続投与する方法が挙げられる。
血中またはBAL中のTNFα量の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、後記実験例に記載するような抗TNFα抗体を用いるイムノアッセイ法などが挙げられる。
再灌流後0.5〜24時間の時点で、レシピエント動物から血漿、移植臓器などのTNFα測定用サンプルを採取することが、虚血再灌流障害の程度を評価する上で好ましい。
移植肺の肺胞洗浄液(BAL)は常法に従って採取することができる。例えば、後記実験例に記載するような、カニューレを気管に挿入し、生理食塩水で気管、肺胞を洗浄する方法などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法では、TNFα量の他にも、BAL中の白血球数、肺微小血管透過性の指標、肺胞上皮透過性の指標を用いることにより、肺移植後の肺虚血再灌流障害を評価することができる。肺微小血管透過性の指標および肺胞上皮透過性の指標は、レシピエント動物に標識物質で標識したトレーサーを投与し、血漿、肺組織またはBAL中のトレーサー量を測定することによって算出することができる。標識トレーサーとしては、例えば、125I標識ヒト血清アルブミン、51Cr標識自家赤血球などを使用することができる。
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実験例および製剤例で使用した化合物Aは次の化合物である。
化合物A:3−[4−((2S)−2−[(2R)−2−[(1R)−1−ヒドロキシカルバモイル−2−フタルイミドエチル]−4−メチルペンタノイル]アミノ−2−メチルカルバモイルエチル)フェノキシ]プロパンスルホネート ナトリウム塩 1水和物

実験例1
実験方法
近交系Lewisラット(10週齢.体重300〜350g)をドナー、レシピエント双方に使用し、同所性左肺移植を行った。
ドナー肺の摘出のため、ドナー動物は、ネンブタール(40mg/kg)の腹腔内投与により麻酔した。その後、人工換気(oral intubation.respiratory rate 60/minute. tidal volume 10ml/kg. PEEP 2cm H2O. FiO2 0.4)下において、以下のような術式で移植肺を摘出した。すなわち、胸骨正中切開し、ヘパリン(1000U/kg)を心注した。14Gカテーテルを右心室から主肺動脈に挿入し、左房脱血のため、左心耳切開し、0℃の臓器保存液(100ml/kg)を18cm H2Oの圧格差で主肺動脈から注入した。inflateの状態で気管を結紮切離し、心肺をen−blocに摘出した。摘出肺5葉のうち、肺右下葉及び後尾葉は、保存前肺とした。肺右上葉、中葉及び左葉は、triming後、冷却した臓器保存液(50ml)に、吻合までの6時間、4℃で単純浸漬保存した。肺右上葉及び中葉は、保存後肺とし、左葉を移植肺として用いた。尚、臓器保存液(ドナーに注入する臓器保存液を含む)として、肺移植対照群ではEuro−Collins液を用い、化合物A群では、化合物A(1mg/ml)を含有するEuro−Collins液を用いた。
レシピエント側も同様に、ネンブタール(40mg/kg)の腹腔内投与により麻酔した。人工換気下において、以下のような術式で肺移植を実施した。すなわち、左側方切開により、肺左葉を摘出した(レシピエント摘出肺)。cuffing techniqueを用いて、上記の移植肺と肺動脈・肺静脈・左主気管支を吻合した後、血流を再開し閉胸した。麻酔より覚醒した動物は、室内気で解剖時まで飼育した。再灌流後3時間目に透過性トレーサーとして125I標識ヒト血清アルブミン37kBqを、再灌流3時間50分後に肺血液トレーサーとして51Cr標識自家赤血球10kBqを尾静脈より静注した。再灌流4時間後にラットを犠牲死させ、血漿及び肺胞洗浄液(BAL)の回収、肺損傷の評価を行った。化合物A群には、生理食塩水に溶解した化合物Aの溶液を3mg/kg/hrの速度で尾静脈より持続投与した。肺移植対照群および偽手術群には、同容量の生理食塩水を投与した。化合物Aの溶液または生理食塩水の投与は、再灌流の開始直後から4時間にわたって、SYRINGE INFUSION PUMPを用い、尾静脈より0.75ml/hrの速度で持続投与した。
評価項目は、以下のとおりである。
I.血中及びBAL中のTNFα量
II.BAL中の細胞数および白血球像(好中球、単球、リンパ球)
III.肺内水分量の指標:
Wet to Dry ratio(W/D ratio)=肺湿重量/肺乾燥重量
IV.肺微小血管透過性の指標:

V.肺胞上皮透過性の指標:

VI.肺病理組織像
血中およびBAL中のTNFα量の測定
96穴マイクロプレートに、0.02% NaN3(リン酸緩衝食塩水(PBS)中)で100倍希釈した抗TNFαモノクローナル抗体を100μl/well加え、4℃で一晩以上インキュベートを行う。ブロッキング緩衝液(PBS中の5%スキムミルク)400μlで一回洗浄後、ブロッキング緩衝液400μl/wellを加えて4℃で一晩インキュベートを行う。反応液を除き、PBS中の1%スキムミルクで5倍希釈したサンプルもしくは標品(standardrTNFα)を100μl/well加え、37℃で2時間インキュベートを行う。次に洗浄緩衝液(0.01% Tween20 / 0.9% NaCl)で4回洗浄後、PBS中の1%スキムミルクで10000倍希釈した抗TNFαポリクローナル抗体を100μl/well加えて37℃で1時間インキュベートを行う。次に洗浄緩衝液で4回洗浄後、PBS中の1%スキムミルクで10000倍希釈した抗IgG−HRP(horseradish peroxidase) conjugateを100μl/well加え、37℃で1時間インキュベートを行う。次に洗浄緩衝液で4回洗浄後、基質(OPD)溶液を100μl/well加えて遮光下室温にて30分間放置する。最後に反応停止液を100μl/well加え、490nmでの吸光度を、プレートリーダーを用いて測定する。各サンプル中のTNFα濃度は、standard rTNFαを用いて作成した検量線より算定する。
BALの採取および白血球数の測定
動物を放血致死させ、気管にカニューレを挿入する。次に、装着した気管カニューレを介して37℃に加温した0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有生理食塩液5mLを気道内に注入し、その後吸引する操作を4回繰り返して洗浄する。この洗浄を2回行い、全量を10mLにする。10mLに満たなかったサンプルは、さらに不足分を気道内に注入し、吸引操作を1回行ったものを加えて、全量を10mLにし、これをBALとする。
採取したBALは直ちに4℃で150×g、10分間遠心し、沈殿した細胞を1mLの生理食塩液に浮遊させる。この細胞浮遊液10μLに140μLのチュルク液を加えて染色し、血球計算盤を用いて、BAL中の全白血球数を顕微鏡下で測定する。次に、サイトスピン 3TMを用いて室温にて4分間遠心し、塗抹標本を作製する。この標本をDiff−Quick染色し、好中球数およびその他の細胞を顕微鏡下に100〜300個カウントする。得られた成績は、BAL中に存在する総細胞数として表す。

統計学的処理
肺移植対照群と偽手術群との比較および肺移植対照群と化合物群との比較には、Student’s t−testを行い、危険率5%以下のものを有意と判断した。
実験結果
肺移植対照群において、血中および移植肺BAL中のTNFα量は増加した。化合物A群では、TNFα量が偽手術群レベルまで低下した(図1および2)。また、移植肺におけるBAL中の白血球浸潤も化合物A群では著明に抑制された(図3)。
肺移植対照群において、肺内水分量の指標(W/D ratio)は著明に増加した。化合物A群では、W/D ratioの増加は有意に抑制された(図4)。
肺移植対照群において、肺損傷重傷度を最も忠実に反映する肺微小血管透過性の指標(Dry T/P ratio)は著明に増加した。化合物A群では、Dry T/P ratioの増加は有意に抑制された(図5)。
肺移植対照群において、肺損傷重傷度を最も忠実に反映する肺胞上皮透過性の指標(B/P ratio)は著明に増加した。化合物A群では、B/P ratioの増加は有意に抑制された(図6)。
また、病理組織学的にも、化合物A群では、肺胞内への赤血球の流入が抑制されており、肺損傷が軽減されていることが示された(図7)。
以上の結果より、化合物Aは、移植肺の保存液への添加または再灌流後のレシピエントへの投与により、肺移植後の虚血再灌流による急性肺障害を著明に軽減することが示された。
肺移植後の虚血再灌流障害における肺損傷は二相性であり、再灌流30分後に好中球非依存的な小さな肺損傷が起こり、再灌流4時間後に好中球依存性の大きな肺損傷が起こる。
本発明における肺移植後虚血再灌流の急性肺障害の評価方法は、再灌流後4時間における好中球依存的な肺障害ピーク時における評価が可能である。また、アイソトープで標識されたトレーサーを用いることで、肺損傷重症度を最も忠実に反映する指標である肺微小血管透過性および肺胞上皮透過性の鋭敏な評価が可能である。
肺移植後虚血再灌流の急性肺障害におけるTNFαの関与は、これまで一定の見解が得られていなかったが、肺損傷重症度を最も忠実に反映する上記評価方法を用いた結果、TNFα抑制作用を有する薬剤は、急性肺障害の軽減に繋がることが示唆された。すなわち、TNFα抑制作用を有する薬剤は、急性期の再灌流障害を軽減することにより、移植後患者の救命が期待できる。
また、移植保存液に関しては、化合物Aの添加により、6時間の保存下でも急性肺障害が著明に軽減された。すなわち、化合物Aを含有する臓器保存液は、長時間の虚血状態でも再灌流後の障害を軽減できる可能性があり、臨床上、marginal graftの救済という観点において大きな意義がある。
製剤例1
以下の成分を含有する錠剤を常法により製造した。

製剤例2
以下の成分を含有するカプセルを常法により製造した。

製剤例3
以下の成分を含有する軟膏剤を常法により製造した。

製剤例4
以下の成分を含有する注射剤を常法により製造した。

製剤例5
以下の成分を含有する点眼剤を常法により製造した。

製剤例6
Euro−Collins液に化合物Aを1mg/mlの濃度となるように添加して、臓器保存液を調製する。
【産業上の利用可能性】
本発明の虚血再灌流障害の予防または治療剤および予防または治療方法は、ドナー、レシピエント、またはドナーとレシピエントの両方に適用することにより、虚血後の再灌流により生じる臓器障害を効果的に予防または軽減することが可能である。本発明を実施することにより、急性期の虚血再灌流障害が軽減され、移植後患者の救命が期待できる。
また、本発明の臓器保存剤および臓器保存方法は、移植臓器の保存に適用することにより、移植後の虚血再灌流障害を効果的に予防または軽減することが可能である。本発明を実施することにより、marginal graft(ドナーから摘出したgraft肺のうち、遠隔輸送が必要で、虚血時間が延長し、移植に耐えうるかどうかぎりぎりの肺)の救済が可能となる。
さらに、本発明の虚血再灌流障害の予防または治療剤および予防または治療方法と臓器保存剤および臓器保存方法とを併用することにより、それぞれを単独で適用するよりもより向上した効果が得られる。
本発明のスクリーニング方法は、新規な虚血再灌流障害の予防または治療剤の提供に有用である。
本出願は、日本で出願された特願2003−86482を基礎としておりその内容は本明細書にすべて包含される。
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式中、Xは水素または水酸基の保護基を示し、
Rは水素、水酸基、アミノ、メルカプト、アルコキシ、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニル、アリールまたは−(CH−A〔lは1〜4のいずれかの整数であり、Aは、(a)窒素原子によって結合し、(b)該結合窒素原子に隣接しない位置にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、(c)該結合窒素原子に隣接する一方または両方の炭素原子に関し、オキソによって置換され、および(d)ベンゾ縮合するか、または1以上の他の炭素原子に関し、低級アルキルもしくはオキソによって置換されているか、および/または別の窒素原子に関し、低級アルキルもしくはフェニルによって置換されていてもよい5または6員環含窒素ヘテロ環を表す。〕を示し、
は水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールを示し、
Qは次の式(II)〜(V)から選ばれる基を示す。

〔式(II)において、
YはO、NR(RはRと同義)またはSを示し、
nは1〜6のいずれかの整数を示し、
は水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイル、低級アルキルアミノまたはジ低級アルキルアミノ基を示し、
はOR(Rは水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを表す。)またはNR1011(R10およびR11は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、
またはR10およびR11は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。)で表される基を示す。
式(III)において、
12は天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基であり、ここで存在する官能基は保護されていてもよく、
は水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを示し、
Zは炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはナフタレンを示す。
式(IV)において、
Raは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは

(式中、Ra11は水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルチオアルキルを示し、
Yaは−CORa12、−CONRa12Ra12’または−CORa12を示し{Ra12およびRa12’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルまたはアリールを示し、またはRa12およびRa12’は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい}、
m1は0または1を示し、
n1は0〜4のいずれかの整数を示す)で表される基を示し、
Raはアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SORa12、−CO−(CHq1−NRa12Ra12’{q1は1または2を示し、Ra12およびRa12’は前記と同義}、−CONH−Za−Ra13{Zaは炭素数2〜4のアルキレンを示し、Ra13は水酸基、アミノまたは−NRa12Ra12’(Ra12およびRa12’は前記と同義)を示す}または

(式中、Ra11、Ya、m1およびn1は前記と同義)で表される基を示し、
またはRaおよびRaは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。
式(V)において、
Rbは水素、アルキルまたは式

で表される基を示し
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2およびq2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示し、
Rb17は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕、
Ybは式

で表される基を示す
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
Rb18は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示し、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕。
但し、(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基以外の基のとき、Ybは式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、
Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基を示す。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリール、ヘテロアリールは置換基を有していてもよい]〕で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有する虚血再灌流障害の予防または治療剤。
【請求項2】
式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項1と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項1と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項1に記載の予防または治療剤。
【請求項3】
がフタルイミドメチルである、請求項2に記載の予防または治療剤。
【請求項4】
がイソブチルである、請求項2または3に記載の予防または治療剤。
【請求項5】
が水素である、請求項2〜4のいずれかに記載の予防または治療剤。
【請求項6】
がNHCHまたはNHCである、請求項2〜5のいずれかに記載の予防または治療剤。
【請求項7】
肺虚血再灌流障害の予防または治療剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の予防または治療剤。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)(式中の各記号は請求項1と同義)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を含有する臓器保存剤。
【請求項9】
式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項1と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項1と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項8に記載の臓器保存剤。
【請求項10】
臓器が心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸または眼球である、請求項8または9に記載の臓器保存剤。
【請求項11】
臓器が肺である、請求項10に記載の臓器保存剤。
【請求項12】
保存液の形態である、請求項8〜11のいずれかに記載の臓器保存剤。
【請求項13】
被験物質のTNFα遊離阻害活性を測定することを含む、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項14】
動物臓器移植モデルにおいて、移植した臓器の再灌流後、
(1)被験物質を投与したレシピエント動物の血中TNFα量を測定する工程と、
(2)被験物質を投与しないレシピエント動物の血中TNFα量を測定する工程と、
(3)工程(1)および(2)で得られたTNFα量を比較する工程と
を含む、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項15】
動物肺移植モデルにおいて、移植した臓器の再灌流後、
(1)被験物質を投与したレシピエント動物の血中または肺胞洗浄液中のTNFα量を測定する工程と、
(2)被験物質を投与しないレシピエント動物の血中または肺胞洗浄液中のTNFα量を測定する工程と、
(3)工程(1)および(2)で得られたTNFα量を比較する工程と
を含む、虚血再灌流障害の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項16】
有効量の式(I)

[式中、Xは水素または水酸基の保護基を示し、
Rは水素、水酸基、アミノ、メルカプト、アルコキシ、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニル、アリールまたは−(CH−A〔lは1〜4のいずれかの整数であり、Aは、(a)窒素原子によって結合し、(b)該結合窒素原子に隣接しない位置にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、(c)該結合窒素原子に隣接する一方または両方の炭素原子に関し、オキソによって置換され、および(d)ベンゾ縮合するか、または1以上の他の炭素原子に関し、低級アルキルもしくはオキソによって置換されているか、および/または別の窒素原子に関し、低級アルキルもしくはフェニルによって置換されていてもよい5または6員環含窒素ヘテロ環を表す。〕を示し、
は水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールを示し、
Qは次の式(II)〜(V)から選ばれる基を示す。

〔式(II)において、
YはO、NR(RはRと同義)またはSを示し、
nは1〜6のいずれかの整数を示し、
は水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイル、低級アルキルアミノまたはジ低級アルキルアミノ基を示し、
はOR(Rは水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを表す。)またはNR1011(R10およびR11は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、
またはR10およびR11は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。)で表される基を示す。
式(III)において、
12は天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基であり、ここで存在する官能基は保護されていてもよく、
は水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを示し、
Zは炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはナフタレンを示す。
式(IV)において、
Raは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは

(式中、Ra11は水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルチオアルキルを示し、
Yaは−CORa12、−CONRa12Ra12’または−CORa12を示し{Ra12およびRa12’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルまたはアリールを示し、またはRa12およびRa12’は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい}、
m1は0または1を示し、
n1は0〜4のいずれかの整数を示す)で表される基を示し、
Raはアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SORa12、−CO−(CHq1−NRa12Ra12’{q1は1または2を示し、Ra12およびRa12’は前記と同義}、−CONH−Za−Ra13{Zaは炭素数2〜4のアルキレンを示し、Ra13は水酸基、アミノまたは−NRa12Ra12’(Ra12およびRa12’は前記と同義)を示す}または

(式中、Ra11、Ya、m1およびn1は前記と同義)で表される基を示し、
またはRaおよびRaは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。
式(V)において、
Rbは水素、アルキルまたは式

で表される基を示し
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2およびq2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示し、
Rb17は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕、
Ybは式

で表される基を示す
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
Rb18は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示し、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕。
但し、(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基以外の基のとき、Ybは式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基を示す。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリール、ヘテロアリールは置換基を有していてもよい〕]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩をドナーまたはレシピエントに投与することを含む、虚血再灌流障害の予防または治療方法。
【請求項17】
式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項1と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項1と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
がフタルイミドメチルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
がイソブチルである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
が水素である、請求項17〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
がNHCHまたはNHCである、請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
虚血再灌流障害が肺虚血再灌流障害である、請求項16〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項16に記載の式(I)(式中の各記号は請求項16と同義)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を、それを必要とする対象に適用することを含む臓器の保存方法。
【請求項24】
式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項23と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項23と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
臓器が心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸または眼球である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
臓器が肺である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
適用が式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の投与である、請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
適用が式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩を含む溶液への臓器の浸漬である、請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
虚血再灌流障害の予防または治療用の医薬製造における、式(I)

[式中、Xは水素または水酸基の保護基を示し、
Rは水素、水酸基、アミノ、メルカプト、アルコキシ、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニル、アリールまたは−(CH−A〔lは1〜4のいずれかの整数であり、Aは、(a)窒素原子によって結合し、(b)該結合窒素原子に隣接しない位置にさらなるヘテロ原子として、窒素、酸素および硫黄から選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよく、(c)該結合窒素原子に隣接する一方または両方の炭素原子に関し、オキソによって置換され、および(d)ベンゾ縮合するか、または1以上の他の炭素原子に関し、低級アルキルもしくはオキソによって置換されているか、および/または別の窒素原子に関し、低級アルキルもしくはフェニルによって置換されていてもよい5または6員環含窒素ヘテロ環を表す。〕を示し、
は水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアリールを示し、
Qは次の式(II)〜(V)から選ばれる基を示す。

〔式(II)において、
YはO、NR(RはRと同義)またはSを示し、
nは1〜6のいずれかの整数を示し、
は水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキル、アルコキシ、アシルオキシ、カルバモイル、低級アルキルアミノまたはジ低級アルキルアミノ基を示し、
はOR(Rは水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを表す。)またはNR1011(R10およびR11は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、低級アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、
またはR10およびR11は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。)で表される基を示す。
式(III)において、
12は天然または天然以外のα−アミノ酸の特性基であり、ここで存在する官能基は保護されていてもよく、
は水素、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを示し、
Zは炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはナフタレンを示す。
式(IV)において、
Raは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは

(式中、Ra11は水素、アルキル、アリールアルキルまたはアルキルチオアルキルを示し、
Yaは−CORa12、−CONRa12Ra12’または−CORa12を示し{Ra12およびRa12’は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルまたはアリールを示し、またはRa12およびRa12’は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい}、
m1は0または1を示し、
n1は0〜4のいずれかの整数を示す)で表される基を示し、
Raはアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、−SORa12、−CO−(CHq1−NRa12Ra12’{q1は1または2を示し、Ra12およびRa12’は前記と同義}、−CONH−Za−Ra13{Zaは炭素数2〜4のアルキレンを示し、Ra13は水酸基、アミノまたは−NRa12Ra12’(Ra12およびRa12’は前記と同義)を示す}または

(式中、Ra11、Ya、m1およびn1は前記と同義)で表される基を示し、
またはRaおよびRaは隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよい。
式(V)において、
Rbは水素、アルキルまたは式

で表される基を示し
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2およびq2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示し、
Rb17は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕、
Ybは式

で表される基を示す
〔式中、Qbは芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を示し、
Rb18は水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、低級アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、アシルオキシ、フェニル、アリールアルキル、カルボキシ、−COORa(Raは低級アルキル、アリールアルキルまたはアリールを示す)、カルバモイル、グアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホ、アリールアルキルオキシアルキルまたは

から選ばれる基を示す
(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されていてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示し、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)〕。
但し、(i)Rbが式(A)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、
m2は0〜3のいずれかの整数を示し、
Rb13はグアニジノ、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたは

から選ばれる基を示す
(式中、n2は1〜5のいずれかの整数を示し、
r2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb14およびRb15は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアリールを示し、または
Rb14およびRb15は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb16はヒドロキシスルホニルオキシまたはスルホを示す))で表される基以外の基のとき、Ybは式(B)

(式中、Qbはベンゼン環を示し、Rb18

(式中、s2は1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は1または2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb21はアリール、ヘテロアリール、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示すか、またはQbはフラン環を示し、
Rb18はアリールアルキルオキシアルキルまたは

(式中、s2およびt2は同一または異なっていてもよく、それぞれ1〜5のいずれかの整数を示し、
u2は0〜2のいずれかの整数を示し、
Rb19およびRb20は同一または異なっていてもよく、それぞれ水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはアリールを示し、または
Rb19およびRb20は隣接する窒素原子と一緒になって置換されてもよいヘテロ環を形成してもよく、
Rb22は水酸基、ヒドロキシスルホニルオキシ、スルホまたはカルボキシを示す)から選ばれる基を示す)で表される基を示す。
前記のアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アリール、ヘテロアリールは置換基を有していてもよい〕]で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の使用。
【請求項30】
式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項29と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項29と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
がフタルイミドメチルである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
がイソブチルである、請求項30または31に記載の使用。
【請求項33】
が水素である、請求項30〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
がNHCHまたはNHCである、請求項30〜33のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
虚血再灌流障害が肺虚血再灌流障害である、請求項29〜34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
臓器保存用の医薬製造における、請求項29に記載の式(I)(式中の各記号は請求項29と同義)で表されるヒドロキサム酸誘導体またはその薬理学上許容される塩の使用。
【請求項37】
式(I)で表されるヒドロキサム酸誘導体が、式(VI)

[式中、Rは水素、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルキルチオアルキル、ヘテロアリールチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルチオアルキル、アリールアルキルチオアルキル、フタルイミドアルキル、アルケニルまたは−(CH−A(lおよびAは請求項36と同義)を示し、
X、R、Y、n、RおよびRは請求項36と同義]で表されるヒドロキサム酸誘導体である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
臓器が心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸または眼球である、請求項36または37に記載の使用。
【請求項39】
臓器が肺である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
医薬が保存液の形態である、請求項36〜39のいずれかに記載の使用。
【請求項41】
請求項1に記載の虚血再灌流障害の予防または治療剤と該剤を虚血再灌流障害の予防または治療に使用し得るかまたは使用すべきであることを記載した書類とを含む商業的パッケージ。
【請求項42】
請求項8に記載の臓器保存剤と該剤を臓器の保存に使用し得るかまたは使用すべきであることを記載した書類とを含む商業的パッケージ。

【国際公開番号】WO2004/085396
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504115(P2005−504115)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004285
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】