説明

蛍光ランプの点灯装置

【課題】インバータ駆動周波数を固定した上で熱陰極蛍光ランプの調光を行う場合において、ランプ電流だけでなく、フィラメント電流も適切に制御することによって熱陰極蛍光ランプの寿命短縮を防ぐ。
【解決手段】チョッパ回路機能を有するインバータ回路であるランプ点灯回路200と、同じくチョッパ回路機能を有するインバータ回路であるフィラメント予熱回路300と、それらに含まれるスイッチング素子を駆動する制御手段400を備えた点灯装置において、制御手段が、前記2つのインバータ回路におけるチョッパ回路を互いに反転したオン時間dutyで駆動し、点灯状態では前記ランプ点灯回路200におけるチョッパ昇圧比がフィラメント予熱回路300におけるチョッパ昇圧比より大きくなり、また調光状態では前記フィラメント予熱回路300におけるチョッパ昇圧比がランプ点灯回路200におけるチョッパ昇圧比より大きくなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極蛍光ランプの点灯装置に関わり、特に液晶ディスプレイのバックライト点灯装置等において要求されるインバータ駆動周波数を固定した調光動作を実現する点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイでは、液晶パネルを背面から照らすバックライトが必要である。従来、バックライトとして長寿命の冷陰極蛍光ランプを用いることが一般的であったが、冷陰極蛍光ランプに比べて高効率点灯が可能であるという利点から、特に大型ディスプレイ等において熱陰極蛍光ランプが用いられることもある。
【0003】
熱陰極蛍光ランプの点灯における一般的な手法として、電流共振型インバータによって直流電源から交流電力を出力し、ランプ電流を安定化させる高周波点灯方式が用いられる。
【0004】
熱陰極蛍光ランプの調光に関して、一般照明用途に対しては前記の電流共振型インバータの駆動周波数を変化させることによってランプ電流を制御する方式が一般的である。また、外部からの調光用PWM信号に合わせて点灯状態、及び調光状態を交互に繰り返し、各状態の時間比率(duty)を変えることによって調光レベルを変化させるPWM調光も利用されている。
【0005】
液晶ディスプレイのバックライトでは、インバータ駆動周波数を変化させると、液晶パネルの動作周波数と干渉するため画面のちらつきまたは干渉縞の発生といった問題が発生する。
【0006】
前記問題を避けるために、バックライト用インバータでは、点灯状態、及び調光状態を含めて、常に一定周波数で駆動することを要求される。
【0007】
前記の固定周波数での調光を実現するために、例えば特許文献1に記載されているインバータが用いられる。このインバータは、昇圧、昇降圧、降圧の各種チョッパ回路機能を備えたものであり、これらチョッパ回路とインバータ回路とに単一のスイッチング素子を共用している。このインバータでは、駆動周波数が固定されているが、スイッチング素子のオン時間dutyを変えることによってインバータのDCリンク電圧を制御し、ランプ電流の制御すなわち調光を行うことができる。
【0008】
【特許文献1】特許第3261829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
熱陰極蛍光ランプでは、フィラメントに予熱電流を流すことによって発生する熱電子が発光に寄与する。熱陰極蛍光ランプの調光では、ランプ電流の制御だけでなくフィラメント電流も適切に制御しなければ、フィラメントの損傷によるランプの寿命短縮を招いてしまう。特に、点灯状態と調光状態を頻繁に繰り返すPWM調光では、フィラメント電流の制御が非常に重要となる。具体的には、調光時にランプ電流を小さくする場合、ランプ電流を安定させ、かつ再点灯時にフィラメントにかかる負担を軽減させるために、十分なフィラメント電流を流す必要がある。逆に、ランプ電流が大きい通常点灯時では、ランプ電流がフィラメントをある程度予熱するためフィラメント電流は小さくても良く、過剰なフィラメント電流はかえってフィラメントに塗布されるエミッションの蒸発等によりフィラメント損失を増大させ、発光効率の低下やランプの寿命短縮を招く。すなわち、ランプ電流が大きいときはフィラメント電流を小さく、ランプ電流が小さいときはフィラメント電流を大きくするように制御する必要がある。
【0010】
特許文献1に記載のインバータでは、熱陰極蛍光ランプと並列にコンデンサを接続してフィラメント電流の経路を確保している。このとき、調光時においてスイッチング素子のdutyを変化させインバータのDCリンク電圧を下げると、ランプ電流と同様にフィラメント電流も小さくなってしまう。逆に、再点灯時においてインバータのDCリンク電圧を上げると、ランプ電流とフィラメント電流の両者が大きくなってしまう。すなわち、前記したフィラメント電流の適切な制御と相反するようにフィラメント電流が増減することになり、その結果フィラメントの損傷によるランプの寿命短縮を招く恐れがある。
【0011】
本発明は、熱陰極蛍光ランプを固定周波数で調光する際に、ランプ電流だけでなくフィラメント電流も適切に制御できる点灯装置を提供することを目的とする。具体的には、調光状態においてランプ電流を小さくする際にはフィラメント電流を大きくし、再度点灯状態に移行する際は、ランプ電流を大きくしフィラメント電流を小さくすることができる点灯装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、蛍光ランプの点灯装置において、直流電源と、直流電源電圧を直流/直流変換して出力する第1チョッパ回路と、2個のスイッチング素子の直列体である第1上下アームを有し前記第1チョッパ回路の直流電圧を直流/交流変換して熱陰極蛍光ランプに供給する第1インバータ回路とを有するランプ点灯回路と、前記直流電源電圧を直流/直流変換して出力する第2チョッパ回路と、2個のスイッチング素子の直列体である第2上下アームを有し前記第2チョッパ回路の直流電圧を直流/交流変換して前記熱陰極蛍光ランプのフィラメントに供給する第2インバータ回路とを有するフィラメント予熱回路と、前記第1チョッパ回路および第1インバータ回路と、前記第2チョッパ回路および第2インバータ回路を駆動するとともに、前記第1チョッパ回路及び第2チョッパ回路を互いに反転したオン時間dutyおよび固定周波数で駆動する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、第1インバータ回路の第1上下アームにおける一方のスイッチング素子を、前記第1チョッパ回路の昇圧用スイッチング素子または昇降圧用スイッチング素子として共用し、前記第2インバータ回路の第2上下アームにおける一方のスイッチング素子を、前記第2チョッパ回路の昇圧用スイッチング素子または昇降圧用スイッチング素子として共用することを特徴とする。
【0014】
また、制御手段は、第1インバータ回路の第1上下アームの上側スイッチング素子と前記第2インバータ回路の第2上下アームの下側スイッチング素子を同時にオン・オフするパルス状の制御信号を出力する制御信号出力手段と、第1上下アームの下側スイッチング素子と前記第2上下アームの上側スイッチング素子を同時にオン・オフする前記制御信号を反転させた反転制御信号を出力する反転制御信号出力手段と、上位装置から与えられる調光用PWM信号に基づき、前記制御信号出力手段および反転制御信号出力手段に制御信号を出力する制御回路を有することを特徴とする。
【0015】
また、制御手段の制御回路は、上位装置から与えられる調光用PWM信号に基づいて前記熱陰極蛍光ランプの点灯状態及び調光状態を切り替えるパルス状の制御信号を出力し、点灯状態におけるパルス状制御信号のオン時間dutyに対して、調光状態でのオン時間dutyを小さく設定することを特徴とする。
【0016】
また、第1インバータ回路の第1上下アームには並列にコンデンサを備え、第1上下アームの出力端子には共振用チョークコイルと共振用コンデンサから構成される共振回路を備え、共振用コンデンサには直列接続されたコンデンサとトランスの1次巻線が並列に接続され、トランスの2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプが接続され、第1上下アームの出力端子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備えることを特徴とする。
【0017】
また、第2インバータ回路の第2上下アームには並列にコンデンサを備え、第2上下アームの出力端子には直列接続されたチョークコイルとトランスの1次巻線が並列に接続され、前記トランスには少なくとも2つの2次巻線を備え、2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプのフィラメントが接続され、第2上下アームの出力端子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備えることを特徴とする。
【0018】
さらに、第1インバータ回路の第1上下アームには直列接続されたコンデンサが並列に接続され、第1上下アームの出力端子と前記コンデンサの接続点との間に共振用チョークコイルとトランスの1次巻線から構成される共振回路を備え、トランスの2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプが接続され、第1上下アームの出力端子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、第1インバータ回路の第1上下アームにはコンデンサとダイオードの直列体が接続され、第1上下アームの下側スイッチング素子と前記ダイオードの両端が出力端子を構成し、出力端子には共振用チョークコイルと共振用コンデンサから構成される共振回路を備え、共振用コンデンサには直列接続されたコンデンサとトランスの1次巻線が並列に接続され、トランスの2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプが接続され、下側スイッチング素子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備え、出力端子には直列接続された前記チョッパ用チョークコイル及びダイオードと直列に、もう1つのダイオードが接続されることを特徴とする。
【0020】
さらに、第2インバータ回路の第2上下アームにはコンデンサとダイオードの直列体が接続され、第2上下アームの下側スイッチング素子と前記ダイオードの両端が出力端子を構成し、出力端子には直列接続されたチョークコイルとトランスの1次巻線が並列に接続され、トランスには少なくとも2つの2次巻線を備え、2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプのフィラメントが接続され、前記下側スイッチング素子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備え、出力端子には直列接続された前記チョッパ用チョークコイル及びダイオードと直列に、もう1つのダイオードが接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱陰極蛍光ランプの固定周波数での調光において、ランプ電流の減少に合わせてフィラメント電流を増大させることにより、ランプの寿命短縮を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の第1の実施例を示す点灯装置の回路図である。図1の点灯装置では、ランプ点灯回路200とフィラメント予熱回路300が、直流電源100に対して並列に接続されている。ランプ点灯回路200の出力端子は熱陰極蛍光ランプ101に、またフィラメント予熱回路300の2つの出力端子は熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント102、及び103にそれぞれ接続されている。また、上位制御系からの調光用PWM信号に基づき、ランプ点灯回路200、及びフィラメント予熱回路300中のスイッチング素子のゲート信号を生成する単一の制御手段400を持つ。なお、図1では、スイッチング素子としてパワーMOSFETを用いているが、トランジスタやIGBTを用いることもできる。
【0024】
ランプ点灯回路200は、昇圧チョッパ機能を備えたSEPP電流共振型インバータ回路(第1インバータ回路)の構成をとっており、直流電源100にはチョークコイル204、ダイオード203、及びパワーMOSFET202が直列に接続されている。パワーMOSFET202のドレイン−ソース間には、パワーMOSFET201と平滑コンデンサ205の直列体が接続されており、これらのパワーMOSFET201、及び202がインバータの上下アームとして動作する。パワーMOSFET202は昇圧チョッパ用スイッチとインバータ下アームスイッチの両者の役割を果たす。また、パワーMOSFET202のドレイン−ソース間には、共振用チョークコイル206と共振用コンデンサ207の直列体も接続されている。共振用コンデンサ207の端子間には、トランス209の1次巻線210、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ208の直列体が接続されている。トランス209の2次巻線211の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ212の直列体が接続されている。
【0025】
次に、フィラメント予熱回路300は、ランプ点灯回路200と同様に、昇圧チョッパ機能を備えたSEPPインバータ回路(第2インバータ回路)の構成をとっており、パワーMOSFET302が昇圧チョッパ用スイッチとインバータ下アームスイッチの両者の役割を果たす。直流電源100には、チョークコイル304、ダイオード303、及びパワーMOSFET302が直列に接続されている。パワーMOSFET302のドレイン−ソース間には、パワーMOSFET301と平滑コンデンサ305の直列体が接続されており、これらのパワーMOSFET301、及び302が、インバータの上下アームとして動作する。また、パワーMOSFET302のドレイン−ソース間には、チョークコイル306とトランス307の1次巻線308の直列体も接続されている。なお、チョークコイル306のインダクタンスとして、トランス307の漏れインダクタンスを利用することも可能であり、その場合チョークコイル306は不要である。トランス307は2つの2次巻線309、及び310を有し、2次巻線309の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント103、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ311が直列に接続されており、また、2次巻線310の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント102、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ312が直列に接続されている。
【0026】
制御手段400は、制御回路401と、制御信号出力手段Aおよび反転制御信号出力手段Bを有する。制御回路401はコンピュータ等の上位制御装置からの調光用PWM信号に基づき、固定周波数のパルス状制御信号を唯一出力する。制御信号出力手段Aは前記制御回路401からの制御信号を受けて、パワーMOSFET201を駆動するゲート信号を出力するドライバ403と、パワーMOSFET302を駆動するゲート信号を出力するドライバ406を有する。
【0027】
一方、反転制御信号出力手段Bは、分岐された前記制御信号を反転して反転制御信号を生成する反転器402と、反転制御信号を受けてパワーMOSFET202を駆動するゲート信号を出力するドライバ404と、パワーMOSFET301を駆動するゲート信号を出力するドライバ405を有する。
【0028】
図2は、図1の回路の動作波形を、通常の点灯状態(a)、及び調光状態(b)に分けて示した動作波形図である。ここで、図2中の電流の正負として、図1における各素子を上から下、または左から右へ流れる電流を正としている。次に、図2の動作波形を用いながら、ランプ点灯回路200、フィラメント予熱回路300、調光制御の順に動作を説明する。
〔ランプ点灯回路〕
ランプ点灯回路200は、以下の要領で昇圧チョッパとして動作する。上アームのパワーMOSFET201がオフの状態で下アームのパワーMOSFET202がオンすると、初めは、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、コンデンサ207の経路で電流が流れ、チョークコイル204にエネルギーが蓄えられる。このチョークコイル204に流れる電流は、図2に示すようにほぼ直線的に増加する。その後、チョークコイル204に流れる電流がチョークコイル206に流れる環流電流より大きくなった時点から、チョークコイル204に流れる電流は直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、パワーMOSFET202へと経路を変えて流れ、チョークコイル204にさらにエネルギーを蓄え続ける。
【0029】
その後、パワーMOSFET202をオフさせ、上アームのパワーMOSFET201をオンすると、チョークコイル204に蓄えられたエネルギーによって直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、パワーMOSFET201、平滑コンデンサ205の経路で電流が流れ、平滑コンデンサ205を充電する。図2から、チョークコイル204に流れる電流が減少し始め、パワーMOSFET201には負の向きに電流が流れ始めることが確認できる。その後、チョークコイル206に流れる電流の極性が反転すると、チョークコイル204に流れる電流はそれまで流れていた経路に加え、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、コンデンサ207の経路にも分流するようになる。
【0030】
次いで、チョークコイル204に流れる電流が減少し、チョークコイル206に流れる電流と同じ大きさになった時点から平滑コンデンサ205が放電を始め、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、コンデンサ207の経路のみに電流が流れる。以上のスイッチング動作を一定周波数で繰り返すことで、昇圧チョッパとしての動作が行われ平滑コンデンサ205に高電圧が充電される。制御回路401でパワーMOSFET201、及び202のオン時間dutyを制御することによって、平滑コンデンサ205の端子間電圧を制御できる。
【0031】
前記のようにパワーMOSFET201、及び202を交互にオン・オフさせることで、ランプ点灯回路200は、平滑コンデンサ205の端子間電圧をDCリンク電圧とした電流共振型SEPPインバータとして動作する。
【0032】
パワーMOSFET202がオフの状態で、パワーMOSFET201をオンさせると、初めは、チョークコイル206に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル206、パワーMOSFET201、平滑コンデンサ205、コンデンサ207の経路で環流電流が流れる。これは、図2中のチョークコイル206、及びパワーMOSFET201に流れる電流の極性から確認できる。
【0033】
チョークコイル206のエネルギー放出後は、平滑コンデンサ205、パワーMOSFET201、チョークコイル206、コンデンサ207の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル206にエネルギーが蓄えられる。これは、図2中のチョークコイル206、及びパワーMOSFET201に流れる電流の極性が、パワーMOSFET201のオン期間中に変化していることから確認できる。
【0034】
パワーMOSFET201がオフになり、パワーMOSFET202がオンになると、初めはチョークコイル206に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル206、コンデンサ207、パワーMOSFET202の経路で環流電流が流れる。この環流電流がコンデンサ207を充電し、チョークコイル206のエネルギーはコンデンサ207へと移動する。
【0035】
その後、コンデンサ207に蓄えられたエネルギーによって、コンデンサ207、チョークコイル206、パワーMOSFET202の経路で環流電流が流れる。これは、図2中のチョークコイル206、及びパワーMOSFET202に流れる電流の極性が、パワーMOSFET202のオン期間中に変化していることから確認できる。
【0036】
前記要領でランプ点灯回路200が電流共振型インバータとして動作することでコンデンサ207に電圧が発生し、コンデンサ208を介してトランス209の1次巻線210に交流電流が流れる。この電流によってトランス209の2次巻線211に電圧が誘起されることで、2次巻線211、コンデンサ212、蛍光ランプ101から成る閉路に交流のランプ電流が流れ、蛍光ランプ101は安定した点灯状態を保つ。ランプ点灯回路200は固定周波数で動作するため、上記ランプ電流の大きさはパワーMOSFET201、及び202のオン時間dutyすなわちインバータのDCリンク電圧によって制御される。
〔フィラメント予熱回路〕
フィラメント予熱回路300は、ランプ点灯回路200と同様の要領で昇圧チョッパとして動作し、平滑コンデンサ305に高電圧を充電する。パワーMOSFET301、及び302のオン時間duty制御によって、平滑コンデンサ305の端子間電圧を制御できる。
【0037】
フィラメント予熱回路300は、パワーMOSFET301、及び302のオン・オフ動作によって、平滑コンデンサ305の端子間電圧をDCリンク電圧としたSEPPインバータとして動作する。パワーMOSFET301がオンのときは、平滑コンデンサ305、パワーMOSFET301、チョークコイル306、トランス307の1次巻線308から成る閉路に電流が流れ、また、パワーMOSFET302がオンのときは、チョークコイル306、パワーMOSFET302、トランス307の1次巻線308から成る閉路に電流が流れる。
【0038】
トランス307の1次巻線308に流れる電流によって、トランス307の2つの2次巻線309、及び310にそれぞれ電圧が発生し、2次巻線309、コンデンサ311、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント103から成る閉路、及び2次巻線310、コンデンサ312、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント102から成る閉路にそれぞれ交流のフィラメント電流が流れ、フィラメント102、及び103が予熱される。フィラメント予熱回路300の駆動周波数は、常にランプ点灯回路200と同じ周波数に固定されるため、フィラメント電流の大きさはパワーMOSFET301、及び302のオン時間dutyによって、すなわちインバータのDCリンク電圧によって制御される。
〔ランプの調光制御〕
次に、図2の(a)点灯状態と(b)調光状態を比較しながら、固定周波数での熱陰極蛍光ランプの調光について説明する。
【0039】
既に述べている通り、ランプ点灯回路200、フィラメント予熱回路300に含まれる全てのパワーMOSFETは、点灯状態、調光状態によらず常に一定の周波数で駆動される。さらに、図1に示す制御手段400の制御信号出力手段A、反転制御信号出力手段B、及び図2に示すパワーMOSFETのゲート信号から分かるように、パワーMOSFET201、及び302は同時にオンまたはオフし、パワーMOSFET202、及び301もまた同時にオンまたはオフする。つまり、ランプ点灯回路200とフィラメント予熱回路300における上下アームのパワーMOSFETは、互いに反転したduty比で駆動される。
【0040】
図2(a)の点灯状態では、パワーMOSFET202及び301のオン時間dutyを、パワーMOSFET201及び302のオン時間dutyより大きくする。このとき、既に記した2つの回路の昇圧チョッパ動作に関して、ランプ点灯回路200の方が昇圧比が大きくなり、それによってランプ点灯回路200のインバータのDCリンク電圧もフィラメント予熱回路300より高くなる。2つの回路がこのように動作することによって、図2(a)に示すように大きなランプ電流、及び小さなフィラメント電流が流れ、ランプは安定した点灯状態を保つ。
【0041】
図2(b)の調光状態では、点灯状態とは逆に、パワーMOSFET201、及び302のオン時間dutyを、パワーMOSFET202、及び301のオン時間dutyより大きくする。このとき、ランプ点灯回路200では、点灯状態に比べて昇圧比が小さくなり、それによってインバータのDCリンク電圧も低くなる。逆に、フィラメント予熱回路300では、点灯状態に比べて昇圧比が大きくなり、それによってインバータのDCリンク電圧も高くなる。結果として、図2(b)に示すように、ランプ電流は点灯状態に比べて減少し、フィラメント電流は逆に増大する。
【0042】
図3は、ランプ点灯回路200のパワーMOSFET201、及びフィラメント予熱回路300のパワーMOSFET302を同じdutyで変化させた場合の、(a)各回路のインバータDCリンク電圧、(b)ランプ電流とフィラメント電流を、それぞれdutyが0.5の状態を1として正規化した値を示すグラフである。図3(a)より、点灯状態から調光状態へと遷移する場合、すなわち、パワーMOSFET201、302のオン時間dutyを小さい状態から大きい状態へと変化させた場合、ランプ点灯回路200ではDCリンク電圧が下がり、またフィラメント予熱回路300ではDCリンク電圧が上がることを確認できる。その結果、図3(b)に示すように、ランプ電流は減少し、フィラメント電流は逆に増大している。
【0043】
前記の点灯状態、及び調光状態を、図4の波形図に示すように、上位制御装置から制御手段400に与えられる調光用PWM信号によって切り替えることでPWM調光が行われる。すなわち、調光用PWM信号のオン時間dutyによって調光レベルを制御する。
【0044】
調光用PWM信号の周波数は数100Hzであり、2つのインバータ回路の駆動周波数に比べて十分低い。この調光用PWM信号がHレベルのときは点灯状態、またLレベルのときは調光状態として、2つのインバータ回路中のパワーMOSFET201、202、301、302を、前記のオン時間dutyで駆動する。これは、調光状態において、制御手段400中の制御回路401が、制御信号のオン時間dutyを点灯状態に比べて大きくするだけで可能となる。
【0045】
以上の動作により、固定周波数での熱陰極蛍光ランプの調光において、点灯状態すなわちランプ電流が大きい状態では、フィラメント電流を小さく抑えること、また、調光状態すなわちランプ電流が小さい状態では、フィラメント電流を増大させることが可能となる。調光時のフィラメント電流をこのように制御することで、ランプの寿命を延ばすことができる。また、2つのインバータ回路において昇圧チョッパとインバータでパワーMOSFETを共用していること、さらに2つのインバータ回路に対し制御回路は1つだけあればよいことから、部品点数の減少による低コスト化、及び省スペース化を実現できる。
【実施例2】
【0046】
図5は、本発明の第2の実施例を示す点灯装置である。図5の点灯装置において、前記実施例1と異なる点は、ランプ点灯回路200に代わって、図5に示すランプ点灯回路220を接続した点である。フィラメント予熱回路300は図1と同一であるため、詳細は省略する。また、図5には示していないが、図1に示したものと同一の制御手段400を別に備える。
【0047】
ランプ点灯回路220は、トランス209の1次巻線210をチョークコイル206とコンデンサ207の間に接続し、1次巻線210とコンデンサ207の接続点とパワーMOSFET201のドレインとの間に平滑コンデンサ205を接続した回路である。なお、前記のチョークコイル206のインダクタンスとして、前記のトランス209の漏れインダクタンスを利用することも可能であり、その場合チョークコイル206は不要である。
【0048】
図5に示す点灯装置は、前記のランプ点灯回路220を除けば、図1に示す点灯装置と同様に動作する。以下では、該ランプ点灯回路220の動作のみについて説明する。なお、以下に述べる回路動作は、図6に示す動作波形からも確認できる。ここで、図6中の電流の正負として、図1、または図5における各素子を上から下、または左から右へ流れる電流を正としている。
〔ランプ点灯回路〕
ランプ点灯回路220は、前記のランプ点灯回路200と同様の要領で昇圧チョッパとして動作する。パワーMOSFET201がオフの状態でパワーMOSFET202がオンすると、初めは、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、トランス209の1次巻線210、コンデンサ207の経路で電流が流れ、チョークコイル204にエネルギーが蓄えられる。
【0049】
その後、チョークコイル204に流れる電流が、チョークコイル206に流れる環流電流より大きくなった時点から、チョークコイル204に流れる電流は、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、パワーMOSFET202へと経路を変えて流れ、チョークコイル204にエネルギーを蓄え続ける。
【0050】
パワーMOSFET202をオフさせ、パワーMOSFET201をオンすると、チョークコイル204に蓄えられたエネルギーによって、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、パワーMOSFET201、平滑コンデンサ205、コンデンサ207の経路で電流が流れ、平滑コンデンサ205を充電する。
【0051】
その後、チョークコイル206に流れる電流の極性が反転すると、チョークコイル204に流れる電流は、それまで流れていた経路に加え、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、トランス209の1次巻線210、コンデンサ207の経路にも分流するようになる。
【0052】
チョークコイル204に流れる電流が減少し、チョークコイル206に流れる電流と同じ大きさになった時点から、平滑コンデンサ205が放電を始め、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、トランス209の1次巻線210、コンデンサ207の経路のみに電流が流れる。以上のスイッチング動作を一定周波数で繰り返すことで、昇圧チョッパとしての動作が行われ、平滑コンデンサ205に高電圧が充電される。パワーMOSFET201、及び202のオン時間duty制御によって、平滑コンデンサ205の端子間電圧を制御できる。
【0053】
前記のようにパワーMOSFET201、及び202を交互にオン・オフさせることで、ランプ点灯回路220は、平滑コンデンサ205の端子間電圧をDCリンク電圧とした電流共振型SEPPインバータとして動作する。
【0054】
パワーMOSFET202がオフの状態で、パワーMOSFET201がオンのとき、初めは、チョークコイル206に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル206、パワーMOSFET201、平滑コンデンサ205、トランス209の1次巻線210の経路で環流電流が流れる。チョークコイル206のエネルギー放出後は、平滑コンデンサ205、パワーMOSFET201、チョークコイル206、トランス209の1次巻線210の経路で電流が流れ、再びチョークコイル206にエネルギーが蓄えられる。
【0055】
なお、このときの電流経路には共振用のコンデンサ207が含まれない。よって、チョークコイル206に流れる電流は共振電流ではなく、増大し続けるものになる。
【0056】
パワーMOSFET201がオフになり、パワーMOSFET202がオンになると、初めは、チョークコイル206に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル206、トランス209の1次巻線210、コンデンサ207、パワーMOSFET202の経路で環流電流が流れる。この環流電流がコンデンサ207を充電し、チョークコイル206のエネルギーはコンデンサ207へと移動する。その後、コンデンサ207に蓄えられたエネルギーによって、コンデンサ207、トランス209の1次巻線210、チョークコイル206、パワーMOSFET202の経路で共振電流が流れる。
【0057】
前記の要領でランプ点灯回路220が電流共振型インバータとして動作し、前記のトランス209の1次巻線210に交流電流が流れることで、トランス209の2次巻線211に電圧が誘起される。それによって、2次巻線211、コンデンサ212、蛍光ランプ101から成る閉路に交流のランプ電流が流れ、蛍光ランプ101は安定した点灯状態を保つ。ランプ点灯回路220は固定周波数で動作するため、ランプ電流の大きさはパワーMOSFET201、及び202のオン時間dutyによって、すなわちインバータのDCリンク電圧によって制御される。
【0058】
以上のランプ点灯回路220の動作に加え、フィラメント点灯回路300、制御手段400が、第1の実施例と同様に動作することで、図6に示すように固定周波数での熱陰極蛍光ランプの調光が可能となり、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0059】
既に述べた通り、ランプ点灯回路220では、パワーMOSFET201がオンのときにチョークコイル206に流れる電流は共振電流ではなく、図6が定義する正の方向に増大し続ける。すなわち、パワーMOSFET201のオン時間dutyをどれだけ大きくしたとしても、チョークコイル206に流れる電流の極性が負に反転することはなく、すなわち電流共振型インバータが進相モードで動作することはない。これによって、パワーMOSFET201のオン時間dutyが特に大きくなる調光状態において、パワーMOSFET201の寄生ダイオードに大きな逆回復電流が流れてスイッチング損失が増大することを防ぐことができる。
【0060】
前記の反面、点灯状態ではパワーMOSFET202のオン時間dutyが大きくなるため、共振用のチョークコイル206に流れる電流が、再度正へと極性を変える可能性がある。一般的な電流共振型インバータでは、この場合進相モードで動作することになり、パワーMOSFET202の寄生ダイオードに電流が流れる。その結果、パワーMOSFET201がオンする際に大きな逆回復電流が流れスイッチング損失が増大してしまう。
【0061】
しかし、本実施例では、チョークコイル206に流れる電流の極性が再び正になったとしても、チョークコイル204に流れる電流がチョークコイル206、及びパワーMOSFET202に分流するため、パワーMOSFET202の寄生ダイオードに電流が流れることはない。
【実施例3】
【0062】
図7は、本発明の第3の実施例を示す点灯装置である。図7の点灯装置において、前記の実施例1と異なる点は、ランプ点灯回路200、フィラメント予熱回路300に代えて、ランプ点灯回路230、フィラメント予熱回路330をそれぞれ接続した点である。また、ランプ点灯回路230、またはフィラメント予熱回路330の一方のみをランプ点灯回路200、またはフィラメント予熱回路300の代わりに利用した点灯装置も、本発明の実施例として考えられる。なお、図7には示していないが、図1に示したものと同一の制御手段400を有する。
【0063】
前記のランプ点灯回路230は、昇降圧チョッパ機能を備えたSEPP電流共振型インバータの構成をとっており、パワーMOSFET202が昇降圧チョッパ用スイッチとインバータ下アームスイッチの両者の役割を果たす。直流電源100には、チョークコイル204、ダイオード203、及びパワーMOSFET202の直列体、及びダイオード231とダイオード232の直列体がそれぞれ接続されている。このとき、ダイオード231のカソードが直流電源100の+側に、ダイオード232のアノードが直流電源100の−側にそれぞれ接続される。
【0064】
パワーMOSFET202のドレインとダイオード232のカソード間には、パワーMOSFET201と平滑コンデンサ205の直列体、及びダイオード233がそれぞれ接続されている。ダイオード233には、共振用チョークコイル206と共振用コンデンサ207の直列体も接続されている。
【0065】
共振用コンデンサ207の端子間には、トランス209の1次巻線210、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ208の直列体が接続されている。トランス209の2次巻線211の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ212の直列体が接続されている。
【0066】
前記のフィラメント予熱回路330は、ランプ点灯回路230と同様に、昇降圧チョッパ機能を備えたSEPPインバータの構成をとっており、パワーMOSFET302が昇圧チョッパ用スイッチとインバータ下アームスイッチの両者の役割を果たす。
【0067】
直流電源100には、チョークコイル304、ダイオード303、及びパワーMOSFET302の直列体、及びダイオード331とダイオード332の直列体がそれぞれ接続されている。このとき、ダイオード331のカソードが直流電源100の+側に、ダイオード332のアノードが直流電源100の−側にそれぞれ接続される。パワーMOSFET302のドレインとダイオード332のカソード間には、パワーMOSFET301と平滑コンデンサ305の直列体、及びダイオード333がそれぞれ接続されている。ダイオード333には、チョークコイル306とトランス307の1次巻線308の直列体も接続されている。
【0068】
なお、チョークコイル306のインダクタンスとして、前記トランス307の漏れインダクタンスを利用することも可能であり、その場合チョークコイル306は不要である。トランス307は2つの2次巻線309、及び310を有し、2次巻線309の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント103、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ311が直列に接続されており、また、2次巻線310の端子間には、熱陰極蛍光ランプ101のフィラメント102、及びそれに流れる電流から直流成分を除去するためのコンデンサ312が直列に接続されている。
【0069】
前記のランプ点灯回路230、及びフィラメント予熱回路330に含まれるパワーMOSFET201、202、301、302は、第1、第2の実施例と同様に、図示しない制御手段によって固定周波数で駆動される。
【0070】
図8は、図7に示す回路の動作波形を、通常の点灯状態(a)、及び調光状態(b)に分けて示したものである。ここで、図8中の電流の正負として、ダイオードについては順方向を、その他の素子については、図7において上から下、または左から右へ流れる電流を正としている。図8の動作波形を用いながら、ランプ点灯回路230、フィラメント予熱回路330の順に動作を説明する。
〔ランプ点灯回路〕
ランプ点灯回路230は、以下の要領で昇降圧チョッパとして動作する。パワーMOSFET201がオフの状態でパワーMOSFET202がオンすると、直流電源100、チョークコイル204、ダイオード203、パワーMOSFET202の経路で電流が流れ、チョークコイル204にエネルギーが蓄えられる。
【0071】
その後、パワーMOSFET202をオフさせ、パワーMOSFET201をオンすると、チョークコイル204に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル204、ダイオード203、パワーMOSFET201、平滑コンデンサ205、ダイオード231の経路で電流が流れ、平滑コンデンサ205を充電する。図8から、チョークコイル204に流れる電流が減少し始めると同時に、パワーMOSFET201には負の向きに、ダイオード231には順方向に、それぞれ電流が流れ始めることが確認できる。
【0072】
その後、チョークコイル206に流れる電流の極性が反転すると、チョークコイル204に流れる電流は、それまで流れていた経路に加え、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、コンデンサ207、ダイオード231の経路にも分流するようになる。
【0073】
チョークコイル204に流れる電流が減少し、チョークコイル206に流れる電流と同じ大きさになった時点から、平滑コンデンサ205が放電を始め、チョークコイル204、ダイオード203、チョークコイル206、コンデンサ207、ダイオード231の経路のみに電流が流れる。以上のスイッチング動作を一定周波数で繰り返すことで、昇降圧チョッパとしての動作が行われ、パワーMOSFET201、及び202のオン時間dutyによって、平滑コンデンサ205の端子間電圧を制御できる。
【0074】
前記のようにパワーMOSFET201、及び202を交互にオン・オフさせることで、ランプ点灯回路230は、平滑コンデンサ205の端子間電圧をDCリンク電圧とした電流共振型SEPPインバータとして動作する。
【0075】
パワーMOSFET202がオフの状態でパワーMOSFET201がオンのとき、初めは、チョークコイル206に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル206、パワーMOSFET201、平滑コンデンサ205、コンデンサ207の経路で環流電流が流れる。これは、図8中のチョークコイル206、及びパワーMOSFET201に流れる電流の極性から確認できる。
【0076】
チョークコイル206のエネルギー放出後は、平滑コンデンサ205、パワーMOSFET201、チョークコイル206、コンデンサ207の経路で共振電流が流れ、再びチョークコイル206にエネルギーが蓄えられる。これは、図8中のチョークコイル206、及びパワーMOSFET201に流れる電流の極性が、パワーMOSFET201のオン期間中に変化していることから確認できる。
【0077】
パワーMOSFET201がオフになり、パワーMOSFET202がオンになると、初めは、チョークコイル206に蓄えられたエネルギーによって、チョークコイル206、コンデンサ207、ダイオード233の経路で環流電流が流れる。図8から、パワーMOSFET202がオンすると同時に、ダイオード233に電流が流れ始めることを確認できる。この環流電流がコンデンサ207を充電し、チョークコイル206のエネルギーはコンデンサ207へと移動する。
【0078】
その後、コンデンサ207に蓄えられたエネルギーによって、コンデンサ207、チョークコイル206、パワーMOSFET202、ダイオード232の経路で環流電流が流れる。図8から、パワーMOSFET202のオン期間中において、チョークコイル206に流れる電流の極性が変化すると同時にダイオード232に電流が流れ始め、かつパワーMOSFET202に流れる電流が増大することを確認できる。
【0079】
前記の要領でランプ点灯回路230が電流共振型インバータとして動作することで、前記のランプ点灯回路200と同様の要領で蛍光ランプ101にランプ電流が流れ、蛍光ランプ101は安定した点灯状態を保つ。ランプ点灯回路230は固定周波数で動作するため、ランプ電流の大きさはパワーMOSFET201、及び202のオン時間dutyによって、すなわちインバータのDCリンク電圧によって制御される。
〔フィラメント予熱回路〕
フィラメント予熱回路330は、ランプ点灯回路230と同様の要領で昇降圧チョッパとして動作し、パワーMOSFET301、及び302のオン時間dutyによって、平滑コンデンサ305の端子間電圧を制御できる。
【0080】
フィラメント予熱回路330は、パワーMOSFET301、及び302のオン・オフ動作によって、平滑コンデンサ305の端子間電圧をDCリンク電圧としたSEPPインバータとして動作する。
【0081】
パワーMOSFET301がオンのときは、平滑コンデンサ305、パワーMOSFET301、チョークコイル306、トランス307の1次巻線308の経路で電流が流れ、また、パワーMOSFET302がオンのときは、チョークコイル306、パワーMOSFET302、ダイオード332、トランス307の1次巻線308の経路、あるいは、チョークコイル306、トランス307の1次巻線308、ダイオード333の経路で、それぞれ電流が流れる。
【0082】
前記の要領でフィラメント予熱回路330がインバータとして動作することで、トランス307の2つの2次巻線309、及び310を介して、蛍光ランプ101のフィラメント102、及び103にそれぞれフィラメント電流が流れ、フィラメント102、及び103が予熱される。
【0083】
フィラメント予熱回路330の駆動周波数は、常にランプ点灯回路230と同じ周波数に固定されるため、フィラメント電流の大きさはパワーMOSFET301、及び302のオン時間dutyによって、すなわちインバータのDCリンク電圧によって制御される。
〔蛍光ランプの調光制御〕
次に、図8の(a)点灯状態と(b)調光状態を比較しながら、固定周波数での熱陰極蛍光ランプの調光について説明する。
【0084】
既に述べている通り、ランプ点灯回路230、フィラメント予熱回路330に含まれる全てのパワーMOSFETは、点灯状態、調光状態によらず常に一定の周波数で駆動される。さらに、図1の制御手段400の構成、及び図8のパワーMOSFETのゲート信号から分かるように、パワーMOSFET201、及び302は同時にオンまたはオフし、パワーMOSFET202、及び301もまた同時にオンまたはオフする。つまり、ランプ点灯回路230とフィラメント予熱回路330における上下アームのパワーMOSFETは、互いに反転したduty比で動作する。
【0085】
図8(a)の点灯状態では、パワーMOSFET202、及び301のオン時間dutyを、パワーMOSFET201、及び302のオン時間dutyより大きくする。このとき、既に記した2つの回路の昇降圧チョッパ動作に関して、ランプ点灯回路230は昇圧動作を行い、フィラメント予熱回路330は降圧動作を行う。これによって、インバータのDCリンク電圧は、フィラメント予熱回路330に比べてランプ点灯回路230の方が高くなる。2つの回路が前記の要領で動作することによって、図8(a)に示すようにランプ電流、及びフィラメント電流が流れ、ランプは安定した点灯状態を保つ。
【0086】
図8(b)の調光状態では、点灯状態とは逆に、パワーMOSFET201、及び302のオン時間dutyを、パワーMOSFET202、及び301のオン時間dutyより大きくする。このとき、点灯状態とは逆にランプ点灯回路230は降圧動作を行い、フィラメント予熱回路330は昇圧動作を行う。
【0087】
よって、点灯状態と比較して、ランプ点灯回路230ではインバータのDCリンク電圧が低くなり、フィラメント予熱回路330ではインバータのDCリンク電圧が高くなる。結果として、図8(b)に示すように、ランプ電流は点灯状態に比べて減少し、フィラメント電流は逆に増大する。
【0088】
以上の回路動作に加えて、図示しない制御手段が第1、及び第2の実施例と同じ要領で動作することで、図8に示すように固定周波数での熱陰極蛍光ランプの調光が可能となり、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0089】
図9は、ランプ点灯回路230のパワーMOSFET201、及びフィラメント予熱回路330のパワーMOSFET302を同じdutyで変化させた場合の、(a)各回路のインバータDCリンク電圧、(b)ランプ電流とフィラメント電流を、それぞれdutyが0.5の状態を1として正規化した値を示すグラフである。図9より、パワーMOSFET201、302のdutyを変化させると、各回路のDCリンク電圧、及びランプ電流とフィラメント電流はそれぞれ図3と同様に変化することを確認できる。
【0090】
しかし、図3と図9において、dutyを同じだけ変化させたときのDCリンク電圧、ランプ電流、フィラメント電流の変化率は異なっている。これは、図3すなわち第1の実施例では2つのインバータが昇圧チョッパ機能を備えているのに対し、図9すなわち第3の実施例では2つのインバータ回路が昇降圧チョッパ機能を備えることによる。したがって、ランプ点灯回路200、フィラメント予熱回路300に代えてランプ点灯回路230、フィラメント予熱回路330を用いることで、dutyの変化に対する、ランプ電流、フィラメント電流の増減分を、回路要求に応じ広範囲に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施例における回路図である。
【図2】本発明の第1の実施例における回路の動作波形図である。
【図3】本発明の第1の実施例における回路の動作を表すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施例における回路のPWM調光動作を表す波形図である。
【図5】本発明の第2の実施例における回路図である。
【図6】本発明の第2の実施例における回路の動作波形図である。
【図7】本発明の第3の実施例における回路図である。
【図8】本発明の第3の実施例における回路の動作波形図である。
【図9】本発明の第3の実施例における回路の動作を表すグラフである。
【符号の説明】
【0092】
100:直流電源
101:熱陰極蛍光ランプ
102、103:熱陰極蛍光ランプのフィラメント
200、220、230:ランプ点灯回路
201、202、301、302:スイッチング素子
203、231、232、233、303、331、332、333:ダイオード
204、206、304、306:チョークコイル
205、207、208、212、305、311、312:コンデンサ
209、307:トランス
210、308:トランス1次巻線
211、309、310:トランス2次巻線
300、330:フィラメント予熱回路
400:制御手段
401:制御回路
402:反転器
A:制御信号出力手段
B:反転制御信号出力手段
403、404、405、406:ゲートドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、直流電源電圧を直流/直流変換して出力する第1チョッパ回路と、2個のスイッチング素子の直列体である第1上下アームを有し前記第1チョッパ回路の直流電圧を直流/交流変換して熱陰極蛍光ランプに供給する第1インバータ回路とを有するランプ点灯回路と、
前記直流電源電圧を直流/直流変換して出力する第2チョッパ回路と、2個のスイッチング素子の直列体である第2上下アームを有し前記第2チョッパ回路の直流電圧を直流/交流変換して前記熱陰極蛍光ランプのフィラメントに供給する第2インバータ回路とを有するフィラメント予熱回路と、
前記第1チョッパ回路および第1インバータ回路と、前記第2チョッパ回路および第2インバータ回路を駆動するとともに、前記第1チョッパ回路及び第2チョッパ回路を互いに反転したオン時間dutyおよび固定周波数で駆動する制御手段を備えたことを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光ランプの点灯装置において、 前記第1インバータ回路の第1上下アームにおける一方のスイッチング素子を、前記第1チョッパ回路の昇圧用スイッチング素子または昇降圧用スイッチング素子として共用し、前記第2インバータ回路の第2上下アームにおける一方のスイッチング素子を、前記第2チョッパ回路の昇圧用スイッチング素子または昇降圧用スイッチング素子として共用することを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記制御手段は、前記第1インバータ回路の第1上下アームの上側スイッチング素子と前記第2インバータ回路の第2上下アームの下側スイッチング素子を同時にオン・オフするパルス状の制御信号を出力する制御信号出力手段と、前記第1上下アームの下側スイッチング素子と前記第2上下アームの上側スイッチング素子を同時にオン・オフする前記制御信号を反転させた反転制御信号を出力する反転制御信号出力手段と、上位装置から与えられる調光用PWM信号に基づき、前記制御信号出力手段および反転制御信号出力手段に制御信号を出力する制御回路を有することを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記制御手段の制御回路は、上位装置から与えられる調光用PWM信号に基づいて前記熱陰極蛍光ランプの点灯状態及び調光状態を切り替えるパルス状の制御信号を出力し、点灯状態におけるパルス状制御信号のオン時間dutyに対して、調光状態でのオン時間dutyを小さく設定することを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記第1インバータ回路の第1上下アームには並列にコンデンサを備え、第1上下アームの出力端子には共振用チョークコイルと共振用コンデンサから構成される共振回路を備え、前記共振用コンデンサには直列接続されたコンデンサとトランスの1次巻線が並列に接続され、前記トランスの2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプが接続され、前記第1上下アームの出力端子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備えることを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記第2インバータ回路の第2上下アームには並列にコンデンサを備え、第2上下アームの出力端子には直列接続されたチョークコイルとトランスの1次巻線が並列に接続され、前記トランスには少なくとも2つの2次巻線を備え、該2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプのフィラメントが接続され、前記第2上下アームの出力端子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備えることを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記第1インバータ回路の第1上下アームには直列接続されたコンデンサが並列に接続され、第1上下アームの出力端子と前記コンデンサの接続点との間に共振用チョークコイルとトランスの1次巻線から構成される共振回路を備え、前記トランスの2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプが接続され、前記第1上下アームの出力端子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備えることを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記第1インバータ回路の第1上下アームにはコンデンサとダイオードの直列体が接続され、第1上下アームの下側スイッチング素子と前記ダイオードの両端が出力端子を構成し、出力端子には共振用チョークコイルと共振用コンデンサから構成される共振回路を備え、前記共振用コンデンサには直列接続されたコンデンサとトランスの1次巻線が並列に接続され、前記トランスの2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプが接続され、前記下側スイッチング素子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備え、前記出力端子には直列接続された前記チョッパ用チョークコイル及びダイオードと直列に、もう1つのダイオードが接続されることを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光ランプの点灯装置において、前記第2インバータ回路の第2上下アームにはコンデンサとダイオードの直列体が接続され、第2上下アームの下側スイッチング素子と前記ダイオードの両端が出力端子を構成し、出力端子には直列接続されたチョークコイルとトランスの1次巻線が並列に接続され、前記トランスには少なくとも2つの2次巻線を備え、2次巻線にはコンデンサを介して前記熱陰極蛍光ランプのフィラメントが接続され、前記下側スイッチング素子と前記直流電源との間には直列接続されたチョッパ用チョークコイルとダイオードを備え、前記出力端子には直列接続された前記チョッパ用チョークコイル及びダイオードと直列に、もう1つのダイオードが接続されることを特徴とする蛍光ランプの点灯装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の蛍光ランプの点灯装置を備えた蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−40371(P2010−40371A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202954(P2008−202954)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】