説明

蛍光性ポリマー、及びそれを用いた光デバイス

【課題】優れた蛍光特性(蛍光強度の強さ、蛍光強度の長期安定性)と高い耐熱性(ガラス転移点:200℃以上、熱分解開始温度:350℃以上)に加え、優れた機械的特性(高い弾性率、可撓性、高靱性)を有し、500nm以上の蛍光発光を有する新規の蛍光材料を提供することにある。
【解決手段】本発明は、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖と、一般式(I):


(式中、R〜Rは、明細書に定義のとおりである)で表わされる末端基とを有する蛍光性ポリマーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光性ポリマー、及びそれ用いた光デバイスに関する。本発明の蛍光性ポリマーは、優れた蛍光特性を有し、紫外光励起により高効率で青色〜水色〜緑色〜白色蛍光を示すもの、または赤橙色蛍光を示すものであり、発光デバイスや光波長変換デバイス用材料として使用可能なものである。また、この蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて作製された光デバイスは、従来にない優れた特性、すなわち高い耐熱性、優れた機械的強度、優れた電気的特性、製膜と微細加工の容易さ、長期安定性、耐環境性、耐化学薬品性などを有する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子や、発光型の空間光変調素子、波長変換素子、さらに蛍光性表面コーティング材等に使用される有機発光材料として、種々の低分子化合物や高分子化合物が開発されている。発光デバイス等の製造において、低分子化合物を用いる場合、製造プロセスが蒸着方式に制約されるのに対して、高分子化合物は、溶液にして製膜、又はインクジェットプリント方式等により製造できることから製造コストを安くできるという利点を有している。また、高分子化合物は、微細加工なしに微細な塗り分けができる点、そして膜厚を容易に調整し製膜できる等の優れた特徴を有している。そのため、高効率な蛍光発光を示し、かつ発光波長の制御が容易な高分子系の発光材料の開発が望まれている。
【0003】
高分子系発光材料としては、従来ポリパラフェニレンやポリパラフェニレンビニレン等のπ共役型高分子が知られている。しかし、このようなπ共役型高分子は、耐熱性に加え、耐環境性すなわち蛍光強度及び蛍光スペクトル形状の長期安定性などが十分でなく、また、製膜や微細加工が容易ではないという問題があった。また、蛍光性コーティング材としては、アクリレート系ポリマーの側鎖に色素分子を有する蛍光性高分子が報告されている(例えば、特許文献1参照)が、主鎖及び色素の耐熱性・耐環境性が十分でなく、さらに色素を高濃度含むと色素が析出してしまうことから、色素濃度を上げられない。一方、代表的な耐熱性高分子であるポリイミドは、優れた耐熱性や電気特性を有しており、前駆体であるポリアミド酸が製膜等の加工性に優れていることから、表示用デバイス材料としての用途が期待されている。例えば、主鎖や側鎖に蛍光性のフリル基を導入した青色の蛍光発光を示すポリイミドが報告されており(例えば、非特許文献1参照)、また、発光機能あるいは電荷輸送機能を有するポリイミドを用いた有機EL素子が報告されている(例えば、特許文献2及び3参照)。しかし、報告されたこれらのポリイミドの蛍光発光は、ポリイミドの主鎖又は側鎖に導入された蛍光性官能基によるものであり、また、その蛍光強度は、ポリイミド分子間の強い相互作用と、それに伴う濃度消光によって、同一の蛍光性官能基を有する低分子化合物の蛍光強度に比べると、その蛍光強度は非常に低いものである。
【0004】
また、全芳香族ポリイミド自体が紫外線の照射により、可視光の蛍光発光を示すことは、従来から知られていた(例えば、非特許文献2参照)。この蛍光は、ポリイミドの分子構造中のジアミン部分(電子供与性)と酸無水物部分(電子吸引性)との間で形成される電荷移動錯体(CTC)に起因する蛍光(CT蛍光)である(例えば、非特許文献3参照)。しかし、全芳香族ポリイミドの場合には、CT相互作用が強く、無輻射失活過程が増加するため、その蛍光強度は弱くなる。代表的な全芳香族ポリイミドフィルムであるピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから合成されるポリイミド(PMDA/ODA)においては、通常の蛍光分光計では観測が困難なほどの弱い蛍光しか観測されない。また、全芳香族ポリイミドでも、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンから合成されるポリイミド(BPDA/PDA)は相対的に強い蛍光を示すことが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。しかし、既存の蛍光性高分子化合物に比べると、その蛍光強度は非常に弱く、蛍光の量子収率は1%以下と非常に低いと考えられる。
【0005】
また、三次元的な構造を有し、芳香環に直接フッ素が結合した芳香族酸二無水物と脂環式構造を有するジアミンとからなる構造単位を有するポリイミドを用いることで、電荷移動(CT)相互作用が抑制されるため、優れた蛍光発光特性(蛍光強度の強さ、緑色から赤色領域における蛍光波長の制御性、蛍光強度の長期安定性)を有するとともに、耐熱性、化学安定性、製膜性に優れた単色発光性の蛍光性ポリイミドが得られることが報告されている(例えば、特許文献4参照)。また、屈曲性の2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物と脂環式ジアミンの組み合わせから合成されたポリイミドを用いることで、優れた緑色蛍光発光特性を有し、耐熱性、化学安定性、製膜性に優れた単色発光性の蛍光ポリイミドが得られることが報告されている(例えば、非特許文献5参照)。加えて、三次元的な構造を有し、電子受容性の低い酸二無水物と脂環式構造を有するジアミンとからなる構造単位を有するポリイミドを用いることで、優れた青色蛍光発光特性を有し、耐熱性、化学安定性、製膜製に優れた単色発光性の蛍光性ポリイミドが得られることが報告されている(例えば、特許文献5参照)。さらに、これらの蛍光性ポリイミドの薄膜を発光層あるいはホール輸送層として用いて有機電界発光(エレクトロルミネッセンス)による発光デバイスを作製した例が報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
【0006】
上記特許文献4、5及び非特許文献5によれば、優れた蛍光特性を有する蛍光性ポリイミドを得られることが開示されている。上記特許文献4、5及び非特許文献5に開示された蛍光性ポリイミドは、それぞれ、緑色から赤色領域における蛍光波長の制御性、及び青色蛍光特性を示すものである。また、一般にポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物(以下、酸二無水物)とジアミンとを極性溶媒中で反応させことによりポリアミド酸を得、これを加熱処理あるいは化学的処理により脱水閉環(イミド化)することにより得られる。本発明者らの検討により、ポリイミドの蛍光発光波長は、ジアミンに比して酸二無水物の電子構造および立体構造に強く依存することが明らかとなっている。すなわち、電子親和力の弱い非フッ素化酸二無水物から合成されたポリイミド(以下、非フッ素化無水物ポリイミド)は可視領域での高い透明性と紫色・青色の蛍光発光を有する。一方、電子親和力が大きな全フッ素化酸二無水物から合成されたポリイミド(以下、フッ素化無水物ポリイミド)又は屈曲性酸二無水物から合成されたポリイミドは緑色・赤色の蛍光発光を示す。しかし、緑色・赤色蛍光の発光に好適な励起光は可視光であることから、紫外光励起では強い緑色・赤色蛍光が得られない。さらに、紫外光励起が可能な非フッ素化酸二無水物に数モル%の全フッ素化酸二無水物を添加した混合物を原料として用いて合成したポリイミドでは、橙色蛍光の成分を有するものの青色の蛍光が強く残ってしまい、これらの合成色となるため橙色〜赤色蛍光発光は得られない。将来的には紫外光がバックライトなどの光源に用いられることが予測されるため、表示デバイス・ディスプレイ材料として、紫外光励起によって青色〜赤色、及び白色蛍光を発する光波長変換材料の開発もまた求められている。
【特許文献1】特開2006−307129号公報
【特許文献2】特開平03−274693号公報
【特許文献3】特開平04−093389号公報
【特許文献4】特開2004−307857号公報
【特許文献5】特開2005−320393号公報
【非特許文献1】S. M. Pyo et al., Polymer, 40, 125-130 (1999)
【非特許文献2】E. D. Wachsman and C. W. Frank Polymer, 29, 1191-1197 (1988)
【非特許文献3】M. Hasegawa and K. Horie, Progress in Polymer Science, 26, 259-335 (2001)
【非特許文献4】M. Hasegawa et al., Journal of Polymer Science Part C: Polymer Letters, 27, 263-269(1998)
【非特許文献5】脇田潤史、安藤慎治、ポリイミド・芳香族系高分子最近の進歩2007,209-212(2007)
【非特許文献6】Sho-ichi MATSUDA, Yuichi URANO, Jin-Woo PARK, Chang-Sik HA, Shinji ANDO, J. Photopolym. Sci. Technol., 17(2), 241-246 (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、優れた蛍光特性(蛍光強度の強さ、蛍光強度の長期安定性)と高い耐熱性(ガラス転移点:200℃以上、熱分解開始温度:350℃以上)に加え、優れた機械的特性(高い弾性率、優れた可撓性、高い靱性)と低い複屈折性、紫外光励起による380〜800nmの蛍光発光を有し、蛍光色の制御が容易な新規蛍光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため検討を重ねた結果、特定の酸無水物構造を末端基として有するポリマーが上記目的を達成し得るという知見を得、その知見を基に鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖と、下記一般式(I)で表わされる末端基とを有する蛍光性ポリマーを提供するものである。
【0010】
【化14】

【0011】
式中、R〜Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、直接若しくは架橋員を介して結合するアリール基、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基を示す。
【0012】
本発明の一般式(I)で表される末端基としては、下記式(1)−(4)で表される基が好ましい。
【0013】
【化15】

【0014】
本発明の蛍光性ポリマーにおける、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖としては、少なくとも1種の酸成分と、少なくとも1種のジアミン成分とを重合させて得られるポリイミド分子鎖が好ましい。
【0015】
該ポリイミド分子鎖における酸成分としては、下記一般式(II)で示される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を、単独で用いるのが好ましい。
【0016】
【化16】

【0017】
式中、Rは、単環式又は縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前期芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の4価の基を示し、ここで前記芳香族又は脂環式化合物は置換されていてもよい。
【0018】
さらに、該ポリイミド分子鎖における酸成分として、前記一般式(II)で示される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と、下記一般式(II′)で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体とを組み合わせて用いるのもまた好ましい。
【0019】
【化17】

【0020】
式中、R4′は、単環式又は縮合多環式の芳香族化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前期芳香族化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族化合物の4価の基を示し、ここで前記芳香族化合物は置換されていてもよいが、但しR4′は、Rと同一ではない。
【0021】
該ポリイミド分子鎖におけるジアミン成分としては、下記一般式(III)で示される芳香族又は脂環式ジアミンが好ましい。
【0022】
【化18】

【0023】
式中、Rは、芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前期芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の2価の基を示し、ここで前記芳香族又は脂環式化合物は置換されていてもよい。
【0024】
したがって、本発明の蛍光性ポリマーにおける、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖としては、下記一般式(IV)で表されるポリイミド分子鎖が好ましい。
【0025】
【化19】

【0026】
式中、R、R及びnは、上記に定義のとおりである。
【0027】
さらに、本発明の蛍光性ポリマーにおける、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖としては、下記一般式(IV′)で表されるポリイミド分子鎖が好ましい。
【0028】
【化20】

【0029】
式中、R、R4′、R及びnは、上記に定義のとおりである。
【0030】
そして典型的には、本発明の、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖と、一般式(I)で表される末端基とを有する蛍光性ポリマーは、下記一般式(V)で表されるポリイミドである。
【0031】
【化21】

【0032】
式中、R〜R、R、R及びnは、上記に定義のとおりである。
【0033】
さらに、本発明の、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖と、一般式(I)で表される末端基とを有する蛍光性ポリマーとしては、下記一般式(V′)で表されるポリイミドが好ましい。
【0034】
【化22】

【0035】
式中、R〜R、R、R4′、R及びn′は、上記に定義のとおりである。
【0036】
なお本発明は、本発明の蛍光性ポリマーの前駆体として、前記一般式(V)で表されるポリイミドの前駆体である、下記一般式(VI)で表されるポリアミド酸も提供することができる。
【0037】
【化23】

【0038】
式中、R〜R及びnは、上記に定義のとおりである。
【0039】
同様に、本発明の蛍光性ポリマーの前駆体として、前記一般式(V′)で表されるポリイミドの前駆体である、下記一般式(VI′)で表されるポリアミド酸も提供することもできる。
【0040】
【化24】

【0041】
式中、R〜R及びn′は、上記に定義のとおりである。
【0042】
また、本発明は、上記蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて製造された有機発光デバイスを提供するものである。有機発光デバイスとしては、有機EL素子や有機レーザーなどの発光素子、短波長の励起光(紫外線)を可視光に変換する波長変換素子、及びそれらを組み込んだ空間光変調素子などが挙げられる。
【0043】
また、本発明は、上記蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて製造された有機光波長変換デバイスを提供するものである。
【0044】
さらに、本発明は、上記蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて製造された蛍光性表面コーティング材を提供するものである。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、優れた蛍光発光特性を有し、かつ耐熱性及び機械特性に優れた新規蛍光性ポリマーが提供される。特に、本発明の蛍光性ポリマーは、大きな蛍光強度を有することに加え、その末端基の割合を調整することで、その蛍光強度や蛍光波長の制御が容易にできる点で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖と、下記一般式(I)で表わされる末端基とを有する蛍光性ポリマーを提供するものである。
【0047】
【化25】

【0048】
上記一般式(I)中において、R〜Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、直接若しくは架橋員を介して結合するアリール基であるか、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基である。
【0049】
ここで、本明細書において別に記載のない限り、用語ハロゲン原子又はハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を意味する。
【0050】
また、本明細書において別に記載のない限り、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、用語アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基等が挙げられる。ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基は、前記アルキル基と共に、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基を包含する概念であり、後者としては、例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0051】
また、本明細書において別に記載のない限り、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、用語アルコキシ基は、アルキル−オキシ基を意味する。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。ハロゲンで置換されていてもよいアルコキシ基は、前記アルコキシ基と共に、1個以上のハロゲンで置換されたアルコキシ基を包含する概念であり、後者としては、例えばフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0052】
さらに、本明細書において別に記載のない限り、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、用語アリール基は、フェニル基又はナフチル基を意味し、架橋員は、酸素原子(−O−)、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−C(O)O−又は−OC(O)−)、硫黄原子(−S−)、スルフィニル基(−SO−)、スルホニル基(−SO2−)、ハロゲンで置換されていてもよいアルキレン基(−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−等)又はアリーレン基を意味する。したがって架橋員を介して結合するアリール基としては、フェノキシ基、ベンジル基等が挙げられる。
【0053】
なお、本明細書において別に記載のない限り、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、用語アルキレン基は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状の2価の飽和炭化水素基を意味する。アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。ハロゲンで置換されていてもよいアルキレン基は、前記アルキレン基と共に、1個以上のハロゲンで置換されたアルキレン基を包含する概念であり、後者としては、例えばヘキサフルオロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0054】
さらにまた、本明細書において別に記載のない限り、単独で又は他の用語との組み合わせにおいて、用語アリーレン基は、フェニレン基又はナフタレン基を意味する。ハロゲンで置換されていてもよいアリーレン基は、フェニレン基又はナフタレン基と共に、1個以上のハロゲンで置換されたフェニレン基又はナフタレン基を包含する概念であり、後者としては、例えばフルオロフェニレン、ジフルオロフェニレン基等が挙げられる。
【0055】
上記一般式(I)のR〜Rにおいて、それらの組み合わせによって構成される1価の置換基とは、水酸基、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、又は直接若しくは架橋員を介して結合するアリール基から選択される2種以上の基の組み合わせによって構成される1価の置換基を意味し、例えば水酸基で置換されたアルキル基若しくはアルコキシ基;あるいは水酸基、ハロゲン原子、又はハロゲンで置換されていてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基から選択される1個以上の基で置換されたアリール基等が挙げられる。
【0056】
上記一般式(I)で表される末端基におけるR〜Rとしては、水素原子又は水酸基であるものが好ましく、例えば、下記式(1)〜(4)で表わされるものが挙げられる。
【0057】
【化26】

【0058】
本発明の蛍光性ポリマーにおける、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖としては、ポリベンズオキサゾール、ポリフルオレン、ポリイミダゾール、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリイミド等の分子鎖が挙げられ、本発明の内容を逸脱しない範囲である限り特に限定されないが、好ましくは、少なくとも1種の酸成分と、少なくとも1種のジアミン成分とを重合させて得られるポリイミド分子鎖が挙げられる。
【0059】
ポリイミド分子鎖において、少なくとも1種の酸成分としては下記一般式(II)で示される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が挙げられる。ここで誘導体とは、前記酸二無水物の一部及び/又は全部が開環したもの、並びに、開環した結果のカルボキシル基の一部及び/又は全部がエステル化されたものを包含する概念である。エステル化のアルコールとしては特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭化水素系のアルコールや、フェノール、クレゾール等の芳香族アルコールを挙げることができる。下記一般式(II)で示される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を用いることで、380〜800nm、特に380〜500nmに蛍光発光を示すポリイミド分子鎖を得ることができる。
【0060】
【化27】

【0061】
一般式(II)において、Rは、単環式又は縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の4価の基を示し、ここで、前記芳香族又は脂環式化合物は置換されていてもよい。また、酸成分としてこれらの酸二無水物を単独で又は複数を組み合わせて用いてもよい。下記一般式(II′)で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0062】
一般式(II)におけるRは、好ましくは、総炭素数6〜36の単環式又は縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の4価の基である。そのような単環式又は縮合多環式の芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。また単環式又は縮合多環式の脂環式化合物としては、シクロブタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、スピロ[4.5]デカン等が挙げられる。
【0063】
これらはその環上で、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基、直接又は架橋員を介して結合するアリール基、あるいはそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0064】
一般式(II)におけるRとしては、例えば下記式(5)〜(8)で表わされるものが挙げられる。
【0065】
【化28】

【0066】
式(5)におけるR及びR、また式(6)におけるR〜R14は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基、又は直接若しくは架橋員を介して結合するアリール基のいずれかであるか、あるいはそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基である。
【0067】
【化29】

【0068】
式(7)において、R15は、単結合であるか、又は酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、又はハロゲンで置換されていてもよいアルキレン基若しくはアリーレン基のいずれかであるか、あるいはそれらの組み合わせによって構成される2価の架橋員である。
【0069】
上記式(7)のR15における、それらの組み合わせによって構成される2価の架橋員とは、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、又はハロゲンで置換されていてもよいアルキレン基若しくはアリーレン基から選択される2種以上の基の組み合わせによって構成される2価の架橋員を意味し、例えば、−O−(アリーレン)−O−、−O−(アリーレン)−O−(アリーレン)−O−、−O−(アリーレン)−(アルキレン)−(アリーレン)−O−、−S−(アリーレン)−S−、−S−(アリーレン)−S−(アリーレン)−S−、−S−(アリーレン)−SO−(アリーレン)−S−〔ここで、アルキレン又はアリーレンは、1個以上のハロゲンで置換されていてもよい〕等が挙げられる。
【0070】
【化30】

【0071】
式(8)において、R16及びR17は、同一であっても異なっていてもよく、単結合であるか、又は酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、ハロゲンで置換されていてもよいアルキレン基若しくはアリーレン基のいずれかであるか、あるいはそれらの組み合わせによって構成される2価の架橋員である。
【0072】
上記一般式(II)におけるRとしては、酸二無水物を形成できる構造を有しているもの、例えば、下記式(9)〜(34)で表わされるものが挙げられる。
【0073】
【化31−1】

【化31−2】

【化31−3】

【0074】
前記一般式(II)で示される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と組み合わせて用いられる酸成分として、下記一般式(II′)で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が好ましい。なお、ここで誘導体とは、一般式(II)におけるのと同義である。下記一般式(II′)で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を組み合わせて用いることで、380〜500nmに加え、500〜800nmに蛍光発光を示すポリイミド分子鎖を得ることができる。
【0075】
【化32】

【0076】
一般式(II′)において、R4′は、単環式又は縮合多環式の芳香族化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族化合物の4価の基を示し、ここで前記芳香族化合物は置換されていてもよいが、但しR4′は、Rと同一ではない。
【0077】
一般式(II′)におけるR4′は、好ましくは、総炭素数6〜36の単環式又は縮合多環式の芳香族化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族化合物の4価の基である。そのような単環式又は縮合多環式の芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ピセン、ペリレン等が挙げられる。
【0078】
これらはその環上で、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基、直接又は架橋員を介して結合するアリール基、あるいはそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。
【0079】
一般式(II′)におけるR4′としては、例えば下記式(10)、(25)、(88)で表わされるものが挙げられる。
【0080】
【化33】

【0081】
本発明の蛍光性ポリマーにおける、波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖がポリイミド分子鎖である場合、そのジアミン成分としては、下記一般式(III)で示される芳香族又は脂環式ジアミンが挙げられる。
【0082】
【化34】

【0083】
式中、Rは、芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の2価の基を示し、ここで前記芳香族又は脂環式化合物は置換されていてもよい。また、ジアミン成分としてこれらのジアミンを単独で又は複数を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
一般式(III)におけるRは、好ましくは、総炭素数4〜36の芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の2価の基である。上記脂環式化合物としては、例えばシクロアルカン、シクロアルケン等が挙げられる。脂環式化合物を構成する炭素数に特に制限はないが、通常は4〜30、好ましくは5〜20、更に好ましくは5〜15である。炭素数が上記範囲内であると、耐熱性に優れた蛍光性ポリマーを得ることができる。また、上記芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレン等の芳香環を1個以上含むものが挙げられる。Rが芳香族化合物の2価の基である場合、Rの2個の結合部位は、得られるポリイミドに剛直性を持たせる観点から芳香環上に直接存在するのが好ましい。
【0085】
上記芳香族又は脂環式化合物はその環上で、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基、直接又は架橋員を介して結合するアリール基、あるいはそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。特に、電荷移動相互作用に起因する無輻射失活を抑制するために、その環上にフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基を有していることが好ましい。
【0086】
一般式(III)におけるRとしては、例えば、下記式(35)〜(38)で表されるものが挙げられる。
【0087】
【化35】

【0088】
式(36)中、R18は、ハロゲン(特にフッ素)で置換されていてもよいアルキレン基である。上記アルキレン基としては、特にメチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。また、特にフッ素で置換されているアルキレン基としては、ジフルオロメチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0089】
【化36】

【0090】
式(37)中、R19は、水素原子、又はハロゲン(特にフッ素)で置換されていてもよいアルキル基又はアルコキシ基である。上記アルキル基又はアルコキシ基としては、特にメチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、イソプロピル基、ヘキシル基等が挙げられる。また、特にフッ素で置換されているアルキル基又はアルコキシ基としては、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエチル基等のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルコキシ基が挙げられる。
【0091】
【化37】

【0092】
式(38)中、R20は、水素原子、ハロゲン、又はハロゲン(特にフッ素)で置換されているアルキル基である。特にフッ素で置換されているアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のペルフルオロアルキル基が挙げられる。
【0093】
本発明の蛍光性ポリマーにおいて特筆すべきことは、一般式(I)で表される末端基の導入によって、高分子鎖由来の蛍光強度や蛍光波長が容易に制御できる点である。例えば、本発明の一般式(V)で表される蛍光ポリマーは、一般式(IV)で示されるポリイミド分子鎖由来の波長400nmを中心とする青色領域と、一般式(I)で表される末端基由来の波長520〜530nmを中心とした緑色領域に強い蛍光発光を示し、かつ可視光領域の光吸収が観測されない。このため、一般式(I)で表される末端基の割合を調整することで、青色〜水色〜白色〜緑色の蛍光色を得ることができる。同様に、本発明の一般式(IV′)で示される2種の構成単位から成るポリイミド分子鎖は、波長400nmを中心とする青色領域に加え、波長600nmを中心とする赤橙色領域に蛍光発光を示す。したがって、本発明の一般式(V′)で表される蛍光ポリマーは、一般式(IV′)で示されるポリイミド分子鎖由来の赤橙色領域に示される蛍光発光の強度を、一般式(I)で表される末端基の導入により増強しうる。
【0094】
本発明のポリマーの末端基が紫外光を吸収し、かつ緑色蛍光を発する理由は以下の通りである。基底状態の一般式(I)で表される末端基は、可視光を吸収しないエノール型(フェノール性水酸基とイミドカルボニル基との間で分子内水素結合が形成されている)であり、仮に光励起状態においてもエノール型が保持されれば青色蛍光を発すると考えられる。しかし、紫外光吸収により生じる光励起状態においては、フェノール性水酸基からカルボニル基への分子内での水素原子移動(プロトン移動)が起こり、エノール型より共役長が長く遷移エネルギーの小さなケト型が形成されるため、緑色蛍光を発すると考えられる。このことから、イミド環に隣接した3位の位置にフェノール性水酸基が存在する末端基を有することが、本発明の蛍光性ポリマーには必須である。これらの知見は、3−ヒドロキシ無水フタル酸を用いて合成した低分子モデル化合物で同様の光吸収/蛍光挙動が観測されることから裏付けられる。
【0095】
【化38】

【0096】
なお、本発明の一般式(V)で表される蛍光性ポリマーにおいて、青色蛍光と緑色蛍光の強度比はポリマーにおける末端基の割合に強く依存することから、末端基の割合を変えることで可視光領域での光透過性に優れる種々の蛍光色を有する蛍光性ポリマーを得ることができる。例えば、全イミド環に対する末端基のモル比をφとすると、φ=0では青色蛍光、0<φ<0.02の範囲では水色蛍光、φ=0.03では白色蛍光、φ>0.07では緑色蛍光を示した。このように、末端基の割合を制御することにより、蛍光波長を青色〜水色〜白色〜緑色において制御することが可能である。従来から無水フタル酸等の末端基はポリイミドの分子量を制御するために用いられていることから、主鎖の分子構造を変えることなく、末端基分率を変える(すなはち、分子量を変える)という簡易な手法によって蛍光色の制御が可能な蛍光性ポリマーを得ることができる。
【0097】
また、本発明の一般式(V′)で表されるポリマーが紫外光を吸収し、赤橙色蛍光を発する理由は以下の通りである。末端基未導入の場合は、R4′ユニットの吸収波長とRユニットの蛍光波長が一致しないため両ユニット間でのエネルギー移動効率が低くなる。その結果、強度比は小さい値をとなり青色蛍光が強く観測される。一方、末端基導入の場合は、R4′ユニットの吸収波長(500nm付近)と末端基の蛍光波長(530nm付近)がほぼ一致するため、 末端基を経由してRユニットからR4′ユニットへエネルギーが効率的に伝達され、その結果、蛍光強度比が増大すると考えられる。
【0098】
本発明の蛍光性ポリマーに含まれるポリイミド鎖が、脂環式構造の2価の有機基を有する場合、かかるポリマーより得られる成形品は耐熱性が高く、しかも優れた機械的特性を示す。さらに、ポリイミド分子内および分子間の電荷移動相互作用が抑制されるため、高い蛍光強度を発現できることから蛍光性光学デバイス用材料として好適に用いることができる。また、特に一般式(III)で表されるジアミン成分中のRが、ペルフルオロアルキル基を有する場合には、本発明の蛍光性ポリマーの光透過性および蛍光強度及び蛍光スペクトル形状の長期安定性がさらに向上するとともに、吸水性の低減を達成することができる。
【0099】
本発明の蛍光性ポリマーとしては、例えば、下記一般式(V)で表されるポリイミドが挙げられる。
【0100】
【化39】

【0101】
式中、R〜R、及びnは、上記に定義のとおりである。
【0102】
本発明の一般式(V)で表される蛍光性ポリイミドとしては、具体的には、下記式(40)〜(83)で表わされるポリイミドが挙げられる。
【0103】
【化40−1】

【化40−2】


【化40−3】


【化40−4】

【0104】
さらに本発明の蛍光性ポリマーとしては、例えば、下記一般式(V′)で表されるポリイミドが挙げられる。
【0105】
【化41】

【0106】
式中、R〜R、及びn′は、上記に定義のとおりである。
【0107】
本発明の一般式(V′)で表される蛍光性ポリイミドとしては、具体的には、下記式(89)〜(132)で表わされるポリイミドが挙げられる。
【0108】
【化42−1】


【化42−2】


【化42−3】


【化42−4】

【0109】
なお、本発明の蛍光性ポリマーの分子量(n又はn′の数)は、その蛍光特性が発揮される範囲であれば特に限定されず、重合度が高い高分子ポリマーであっても、重合度が低い(イミド)オリゴマーであってもよい。
【0110】
本発明の蛍光性ポリマーの合成において使用される末端基の原料は、その分子鎖の種類に応じて選択すればよい。具体的には、分子鎖に存在する又は分子鎖に導入することができる反応性基に基づいて、本発明の一般式(I)で表される末端基を導入することができる原料を、例えばフタル酸イミド、無水フタル酸又はそれらの誘導体等から適切に選択すればよい。分子鎖がポリイミド分子鎖である場合、末端基の原料としては、酸無水物を使用するのが好ましい。そのような酸無水物としては、下記一般式(VII)で表されるものが挙げられる。
【0111】
【化43】

【0112】
上記一般式(VII)におけるR〜Rは、前記一般式(I)におけるR〜Rと同義である。
【0113】
その代表例として、下記式(84)で表される3−ヒドロキシ無水フタル酸、式(85)で表されるジヒドロキシ無水フタル酸、式(86)で表されるトリヒドロキシ無水フタル酸、式(87)で表されるテトラヒドロキシ無水フタル酸等が挙げられる。
【0114】
【化44】

【0115】
なお、本発明の蛍光性ポリマーにおいては、一般式(I)で表される末端基は、一種のみを用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。したがって、その合成において使用される末端基の原料としては、一般式(VII)で表される酸無水物を一種のみを用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、本発明の蛍光性ポリマーの蛍光特性を妨げない範囲で、水酸基を有さない既知の酸無水物から誘導される基を末端基として導入してもよい。したがって、例えば無水フタル酸、ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、ジフェニルエーテルジカルボン酸無水物、ジフェニルジカルボン酸無水物、ジフェニルスルホンジカルボン酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、アントラセンジカルボン酸無水物等と、一般式(VII)で表される酸無水物とを組み合わせて用いてもよい。
【0116】
また、分子内三重結合を有する芳香族酸無水物から誘導される基を、その蛍光特性を妨げない範囲で、一般式(I)で表される末端基と共に用いると、本発明の蛍光性ポリマーに高温度領域での熱硬化性を付与することができる。分子内三重結合としては、エチニル基やフェニルエチニル基等が挙げられ、そのような分子内三重結合を有する芳香族酸無水物としては、下記一般式(VIII)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(VIII)の末端封止剤と一般式(VII)で表される酸無水物とを共に用いることで、得られるポリイミド又はイミドオリゴマーは、ある温度以上で鎖延長反応と芳香環形成反応による熱硬化反応が起こり、フィルムの破断伸びなどの機械的特性が向上する。これは特に主鎖(すなわち、分子鎖)の重合度が数量体と低いイミドオリゴマーの機械的強度・製膜性を向上させる場合に特に有効である。
【0117】
【化45】

【0118】
ここで、式中、Rは、総炭素数6〜30の単環式又は縮合多環式芳香族化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式芳香族基の3価の基を示し、ここで前記芳香族化合物は、置換されていてもよい。一般式(VIII)の酸無水物としては、例えば、3−ヒドロキシ−4−フェニルエチニル無水フタル酸、4−フェニルエチニル無水フタル酸、3−ヒドロキシ−6−フェニルエチニル無水フタル酸、3−フェニルエチニル無水フタル酸、フェニルエチニルナフタレンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルジフェニルジカルボン酸無水物、フェニルエチニルジフェニルエーテルジカルボン酸無水物、フェニルエチニルベンゾフェノンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルジフェニルスルホンジカルボン酸無水物、フェニルエチニルアントラセンジカルボン酸無水物等を挙げることができる。これらはその環上で、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基、直接又は架橋員を介して結合するアリール基、あるいはそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基から選択される1個以上の基で置換されていてもよい。また、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0119】
本発明の蛍光性ポリマー、特に本発明の蛍光性ポリイミドの製造方法に特に制限はないが、例えば、上記一般式(VII)や式一般(VIII)で表される酸無水物と上記一般式(II)で表される酸二無水物(場合により、上記一般式(II′)で表される酸二無水物と組み合わせて)と上記式(III)で表されるジアミン化合物とを重縮合して得られるポリアミド酸を200℃以上の温度で加熱閉環することによって製造することができる。加熱閉環する方法に特に制限はなく、従来公知の方法が用いられる。
【0120】
以下に、本発明の蛍光性ポリイミドを用いたフィルムの製造方法の一例を示す。
【0121】
まず、極性有機溶媒中で、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物と3−ヒドロキシフタル酸無水物の任意のモル比の混合物を4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンと重縮合し、ポリアミド酸溶液を得る。この時、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドやN,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドのようなシリルエステル化物を混合すると、原料の会合体や生成物の不溶化(ゲル化)が起こりにくくなる。用いる極性有機溶媒としては、例えば、N−メチル−4−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。重合溶液中の原料化合物の濃度は、好ましくは5〜40重量%であり、更に好ましくは10〜25重量%である。この反応を下記スキーム1及び2に示す。
【0122】
【化46】

【0123】
【化47】

【0124】
上述のようにして得られたポリアミド酸の溶液を、溶融石英板等の基板上に回転塗布し、不活性気体(例えば窒素)雰囲気下で、例えば70℃程度の温度から300℃程度の温度まで段階的あるいは連続的に加熱し、脱水閉環(イミド化)する。この反応を下記式に示す。段階的加熱の例としては、例えば、70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、300℃で2時間のように行ってもよく、また毎分5℃での連続的な昇温によっても良い。イミド化後、空気中あるいは水中で基板から剥離することによりポリイミドフィルムを得る。基板からの剥離が困難な場合は、ポリアミド酸溶液をアルミ板上に回転塗布し、熱イミド化後、基板ごと10%塩酸に浸しアルミ板を溶解することにより、ポリイミドフィルムを得る。また、基板材料としては溶融石英や単結晶シリコン等の無機系のみならず、ポリイミド成型体等の有機高分子を用いても良い。この反応を下記スキーム3及び4に示す。
【0125】
【化48】

【0126】
【化49】

【0127】
ポリアミド酸の合成方法としては、上記のように極性有機溶媒を用いて合成する方法の他、原料である酸二無水物とジアミン化合物の昇華性を利用して、真空蒸着重合法により基板上で合成する方法が挙げられる。この場合のポリイミドフィルムの合成方法としては、具体的には、酸二無水物モノマー、酸無水物モノマーとジアミンモノマーを、真空槽内でそれぞれの蒸着源を加熱して蒸発させ、基板上でポリアミド酸を合成し、さらにこれを不活性気体中で加熱して、脱水閉環することによりポリイミド薄膜を得ることができる。また、必要に応じてピリジン/無水酢酸などの閉環触媒と脱水剤の組み合わせによる化学処理を行ってイミド化してもよい。
【0128】
また、末端基として、本発明の一般式(I)で表される基と共に、分子内三重結合を有する芳香族酸無水物から誘導される基を導入した熱硬化性ポリイミド及び/又はイミドオリゴマーに関しては、高温度領域に加熱することにより、さらに優れた機械的特性を有する成形品(硬化物)を得ることができる。例えば、酸無水物モノマーとして、上記一般式(VII)で表される酸無水物と共に、上記一般式(VIII)で表される末端封止剤を用いる以外は、上記のようにして得られたフィルム状ポリイミド及び/又はイミドオリゴマーを高温度領域で熱硬化処理することにより得られる。なお、これらのポリイミド及び/又はイミドオリゴマーの一部が、ポリアミド酸及び/又はアミド酸オリゴマーであってもよい。また、熱イミド化を行うときに同時に熱硬化処理を行うこともできる。
【0129】
熱硬化処理温度は、ポリイミド及び/又はイミドオリゴマーあるいはポリアミド酸及び/又はアミド酸オリゴマーの種類によっても異なるが、100℃から500℃であり、より好適には250〜300℃である。熱処理時間は、ポリイミド又はポリアミド酸の種類や熱処理温度によっても異なるが、一般に炭素−炭素三重結合の熱架橋反応が十分に完結する時間から、ポリイミドが熱的に変性しない時間が望ましい。具体的には1分から1時間である。
【0130】
したがって、本発明の蛍光性ポリマーは、前記ポリマー又はその前駆体それ自体、あるいは前記ポリマー又はその前駆体を含むワニスとして使用することができる。特に、分子鎖がポリイミド分子鎖である場合、本発明の蛍光性ポリマーは、ポリイミド、イミドオリゴマー、又はそれらの前駆体であるポリアミド酸、アミド酸オリゴマーそれ自体、あるいはそれらのいずれかを含むワニスとして使用することができる。ワニスの調製に使用される溶媒は、前記ポリマー又はその前駆体に対し不活性であって、かつ溶解しうるものであれば特に制限はない。好ましくは、前記ポリマー又はその前駆体の重合反応の際に使用された溶媒がそのまま使用される。
【0131】
次に、本発明の有機発光デバイス、有機光波長変換デバイスについて説明する。本発明の有機発光デバイス、及び有機光波長変換デバイスは、上述した本発明の蛍光性ポリマーを用いて製造されたものである。
【0132】
本発明の蛍光性ポリマーは、有機EL素子、有機レーザー、波長変換素子、空間光変調素子等の有機発光デバイス、又は有機光波長変換デバイスの材料として用いることができる。例えば、本発明の蛍光性ポリマーのフィルムを発光層/受光層として用いて、透明基板/透明電極/電荷輸送層/発光層/受光層/電極の積層体を形成することにより有機EL素子にすることができる。また、本発明の蛍光性ポリマーのフィルムを紫外光LEDの封止材料として用いることで、面発光デバイスのLED波長変換素子(紫外光を青色〜水色〜白色〜緑色に、または赤橙色に変換)にすることができる。既存のLEDでは蛍光体にイットリウム、ユーロピウム、タンタルなどの希少金属を用いている。しかしながら、原料価格の高騰・資源の枯渇・人体への有害性などの問題がとされており、これらの原子を含まない有機化合物への転換が求められている。その他、通信用の光導波路や光源、光ファイバー増幅器、蛍光増白剤、塗料、インク、蛍光コレクタ、シンチレータ、植物育成用フィルム等に利用することができる。また、表面コーティング材として用いることにより、コーティングの有無を紫外光照射により確認できることから、製品検査の大幅な簡略化が可能となる。
【実施例】
【0133】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0134】
実施例1
〈本発明の蛍光性ポリマー(上記式(40)のポリイミド)の薄膜の製造〉
三角フラスコに、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(s−ODPA)0.4829g(1.557mmol)と4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DCHM)0.3341g(1.588mmol)を加え、溶液中の原材料の濃度が14.85重量%になるようにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)4.685gを加えた。三角フラスコ中の溶液を窒素雰囲気中、室温で24時間攪拌後、3−ヒドロキシフタル酸無水物(3HPA)0.0103g(0.063mmol)を加え、窒素雰囲気中、室温で24時間攪拌してポリアミド酸オリゴマーのDMAc溶液を得た。得られたポリアミド酸のDMAc溶液を直径75mmの石英板上に回転塗布し、窒素雰囲気下、70℃で1時間、220℃で1.5時間、2段階で昇温して加熱イミド化を行った。加熱イミド化によって形成された層を石英板から剥離してポリイミド薄膜を得た。仕込み量から計算されるポリアミド酸の重合度(n)は100であり、全イミド環に対する末端基のモル比(φ)は0.0198である。
【0135】
得られたポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを減衰全反射(ATR)法により測定したところ、1777cm−1及び1719cm−1にイミド基のカルボニルに特有の吸収が観察され、またポリアミド酸において観測される1677cm−1、1637cm−1のアミド結合特有の吸収が消失しており、イミド化が完全に進行したことが確認できた。得られた薄膜の膜厚を蝕針式膜厚計で測定したところ、2.1μmであった。また、熱重量分析装置(TGA)により熱分解開始温度(5%重量減少温度)を測定したところ、452℃であった。得られたポリイミド薄膜の蛍光発光スペクトルを励起波長334nm、蛍光観測波長330〜800nmで測定したところ、波長350〜700nmにおいて強い蛍光が観測された。この結果を図1に示した。図1は、蛍光発光強度を測定した結果を示すグラフである。図1には、後述する実施例2、3、4、及び比較例1のポリイミドにおけるそれぞれの蛍光スペクトルの波長依存性を併せて示す。図1において縦軸は蛍光強度(対数表示)、横軸は波長(nm)を示している。図1に示すように、実施例1で得られた蛍光性ポリマーは、青色蛍光を最も強く発するが、蛍光波長が青色〜緑色領域全体に広がっていることから、蛍光色は水色を示す。このポリイミド薄膜の吸収端を、自記分光光度計により測定したところ、波長365nmの紫外域であった。紫外域にのみ吸収があることは、このポリイミドが可視域の全域で無色透明であることを示す。上記の結果を第1表に示す。
【0136】
実施例2〜4
実施例1と同様に、但し第1表に示すように末端基の割合を変えてポリイミド薄膜を作成した。その結果も合わせて第1表に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
比較例1〜7
実施例1と同様に、但し第2表に示すように末端基の種類、割合を変えてポリイミド薄膜を作成した。その結果も合わせて第2表に示す。
【0139】
【表2】

【0140】
実施例5
酸二無水物とジアミンの合計(固形分)の濃度を35%とし、実施例2と同様の方法でs−ODPA、3HPA、DCHMからポリアミド酸オリゴマーのDMAc溶液を調製した。この溶液を厚さ1mmの石英板上に塗布し、最高温度220℃で熱イミド化したところ、膜厚18μmのフィルムが得られた。ポリアミド酸溶液の塗布、乾燥、熱イミド化の処理をさらに2度繰り返したところ、膜厚約50μmのポリイミドが得られた。ダイシングソーを用いて基板ごと5×5mmの大きさに切り出し、ポリイミドフィルム側に紫外線シャープカットフィルタ(ガラス基板)をアクリル系光学接着剤により貼り付けた。石英基板の裏面から紫外発光ダイオード(発光波長386nm、電流20mA、光出力70mcd)を照射したところ、ポリイミドの表面から波長350〜700nmに広がる白色の明るい蛍光発光が観測された。本発明によるポリイミドが、紫外光→可視光の有機光波長変換デバイスにおける波長変換材料として機能することが明らかとなった。
【0141】
実施例6
〈蛍光性ポリマー(上記式(89)のポリイミド)の薄膜の製造〉
三角フラスコに、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(s−ODPA)0.6246g(2.013mmol),1,4−ジフルオロピロメリット酸二無水物(P2FDA)0.0568g(0.2235mmol),3−ヒドロキシフタル酸無水物(3HPA)0.0300g(0.1828mmol)と4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(DCHM)0.4898g(2.328mmol)を加え、溶液中の原材料の濃度が20重量%になるようにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)4.685gを加えた。三角フラスコ中の溶液を窒素雰囲気中、室温で24時間攪拌後、を加え、窒素雰囲気中、室温で24時間攪拌してポリアミド酸オリゴマーのDMAc溶液を得た。得られたポリアミド酸のDMAc溶液を直径75mmの石英板上に回転塗布し、窒素雰囲気下、70℃で1時間、220℃で1.5時間、2段階で昇温して加熱イミド化を行った。加熱イミド化によって形成された層を石英板から剥離してポリイミド薄膜を得た。仕込み量から計算されるポリアミド酸の重合度(n)は50、s−ODPAとP2FDAのモル比は9:1,全イミド環に対する末端基のモル比(φ)は0.0392である。
【0142】
得られたポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを減衰全反射(ATR)法により測定したところ、1777cm−1及び1719cm−1にイミド基のカルボニルに特有の吸収が観察され、またポリアミド酸において観測される1677cm−1、1637cm−1のアミド結合特有の吸収が消失しており、イミド化が完全に進行したことが確認できた。得られた薄膜の膜厚を蝕針式膜厚計で測定したところ、6.4μmであった。また、熱重量分析装置(TGA)により熱分解開始温度(5%重量減少温度)を測定したところ、400℃であった。得られたポリイミド薄膜の蛍光発光スペクトルを励起波長331nm、蛍光観測波長330〜800nmで測定したところ、波長350〜800nmにおいて強い蛍光が観測された。この結果を図2に示した。図2は、蛍光発光強度を測定した結果を示すグラフである。図2には、後述する実施例7〜9及び比較例8、11のポリイミドにおけるそれぞれの蛍光スペクトルの波長依存性を併せて示す。図2において縦軸は蛍光強度、横軸は波長(nm)を示している。図2に示すように、実施例6で得られた蛍光性ポリマーは、紫外光励起により可視光領域全体にわたり蛍光を発するが、橙色蛍光を最も強く発する。このポリイミド薄膜の光吸収スペクトルを、自記分光光度計により測定したところ、P2FDA由来の吸収ピークが波長500nmに存在することから、得られたポリイミド薄膜は薄い赤色を呈する。上記の結果を第3表に示す。
【0143】
実施例7〜9
実施例6と同様に、但し第3表に示すように末端基の割合及び共重合比を変えてポリイミド薄膜を作成した。その結果も合わせて第3表に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
比較例8〜6
実施例6と同様に、但し第4表に示すように末端基を用いず、共重合比を変えてポリイミド薄膜を作成した。その結果も合わせて第4表に示す。
【0146】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】実施例1〜4及び比較例1で得られたポリイミドの蛍光強度を測定した結果を示すグラフである。
【図2】実施例6〜8、比較例8及び比較例13で得られたポリイミドの蛍光強度を測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖と、一般式(I):
【化1】


(式中、R〜Rは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ハロゲンで置換されていてもよいアルキル基若しくはアルコキシ基、直接若しくは架橋員を介して結合するアリール基、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基を示す)で表わされる末端基とを有する蛍光性ポリマー。
【請求項2】
少なくとも1種の酸成分と、少なくとも1種のジアミン成分とを重合させて得られる、波長380〜800nmに蛍光発光を示すポリイミド分子鎖と、一般式(I):
【化2】


(式中、R〜Rは、請求項1に定義のとおりである)で表わされる末端基とを有する蛍光性ポリマー。
【請求項3】
酸成分が、単独で、一般式(II):
【化3】


(式中、Rは、単環式又は縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の4価の基を示し、ここで前記芳香族又は脂環式化合物は置換されていてもよい)で表される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体である、請求項2に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項4】
酸成分が、一般式(II):
【化4】


(式中、Rは、請求項3に定義のとおりである)で表される芳香族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体と、一般式(II′):
【化5】

(式中、R4′は、単環式又は縮合多環式の芳香族化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族化合物の4価の基を示し、ここで前記芳香族化合物は置換されていてもよいが、但しR4′は、Rと同一ではない)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体との組み合わせである、請求項2に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項5】
ジアミン成分が、一般式(III):
【化6】

(式中、Rは、芳香族又は脂環式化合物、あるいは同一であっても異なっていてもよい前記芳香族又は脂環式化合物が直接又は架橋員を介して相互に連結された非縮合多環式の芳香族又は脂環式化合物の2価の基を示し、ここで前記芳香族又は脂環式化合物は置換されていてもよい)で表される芳香族又は脂環式ジアミンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項6】
波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖が、一般式(IV):
【化7】

(式中、Rは、請求項3に定義のとおりであり、Rは、請求項5に定義のとおりであり、そしてnは、任意の数である)で表されるポリイミド分子鎖である、請求項1〜3及び5のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項7】
波長380〜800nmに蛍光発光を示す分子鎖が、一般式(IV′):
【化8】

(式中、Rは、請求項3に定義のとおりであり、R4′は、請求項4に定義のとおりであり、Rは、請求項5に定義のとおりであり、そしてn′は、任意の数である)で表されるポリイミド分子鎖である、請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項8】
ポリマーが、一般式(V):
【化9】

(式中、R〜Rは、請求項1に定義のとおりであり、Rは、請求項3に定義のとおりであり、Rは、請求項5に定義のとおりであり、そしてnは、任意の数である)で表されるポリイミドである、請求項1〜3、5及び6のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項9】
ポリマーが、一般式(V′):
【化10】

(式中、R〜Rは、請求項1に定義のとおりであり、Rは、請求項3に定義のとおりであり、R4′は、請求項4に定義のとおりであり、Rは、請求項5に定義のとおりであり、そしてn′は、任意の数である)で表されるポリイミドである、請求項1、2、4、5及び7のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項10】
末端基が、下記式(1):
【化11】

で表わされる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー。
【請求項11】
一般式(VI):
【化12】

(式中、R〜R及びnは、請求項8に定義のとおりである)で表される、請求項8記載の蛍光性ポリマーの前駆体。
【請求項12】
一般式(VI′):
【化13】

(式中、R〜R及びnは、請求項9に定義のとおりである)で表される、請求項9記載の蛍光性ポリマーの前駆体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて製造された有機発光デバイス。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて製造された有機光波長変換デバイス。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の蛍光性ポリマー又はその前駆体を用いて製造された蛍光性表面コーティング材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173859(P2009−173859A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227893(P2008−227893)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000113780)マナック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】