説明

表面欠陥検査装置及び方法

【課題】対象物の表面における光の照射位置に微小な凹凸が形成されている場合でも、この凹凸の影響を排除しつつ、予め規定された高さ以上の異物欠陥が対象物の表面上に存在するか否かを判定する。
【解決手段】表面欠陥検査装置10は、ウェハ26の表面に斜方から光を照射するラインレーザ14と、ウェハ26の表面におけるラインレーザ光28の照射位置P2よりもラインレーザ14側の位置であってウェハ26の表面から予め規定された高さ離間した規定高さ位置P1において反射したラインレーザ光28の反射光を検出するための第一ラインカメラ16と、照射位置P2において反射したラインレーザ光28の反射光を検出するための第二ラインカメラ18と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、表面欠陥検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の表面に光を照射するための投光装置と、対象物の表面で正反射された光の量を検出する第1の受光装置と、対象物の表面で乱反射された光の量を検出する第2の受光装置とを有する表面欠陥検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−33446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査対象表面上を検査装置が移動すると、検査対象表面に形成された所定高さ以上の異物欠陥に検査装置が衝突し、検査装置が破損することがある。検査装置の移動の前に、検査対象表面に所定高さ以上の異物欠陥の有無を検査する必要がある。
しかしながら、この表面欠陥検査装置のように、対象物の表面からの正反射光の光量と乱反射光の光量を測定しても、予め規定された高さ以上の異物欠陥が対象物の表面上に存在するか否かを判定することは不可能である。また、対象物の表面における光の照射位置に光を乱反射させ得る微小な凹凸が形成されている場合でも、判定結果が凹凸の影響を受けないようにすることが望まれる。
【0005】
そこで、本願の開示技術は、次の表面欠陥検査装置及び方法を提供することを目的とする。すなわち、その表面欠陥検査装置及び方法は、対象物の表面における光の照射位置に微小な凹凸が形成されている場合でも、この凹凸の影響を排除しつつ、予め規定された高さ以上の異物欠陥が対象物の表面上に存在するか否かを判定できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の開示する表面欠陥検査装置は、光源と、第一光検出部と、第二光検出部とを備える。光源は、対象物の表面に斜方から光を照射する。第一光検出部は、対象物の表面における光の照射位置よりも光源側の位置であって対象物の表面から予め規定された高さ離間した規定高さ位置において反射した光の反射光を検出するためのものである。また、第二光検出部は、上述の照射位置において反射した光の反射光を検出するためのものである。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する表面欠陥検査装置によれば、規定高さ位置に予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在しないが、照射位置に微小な凹凸が形成されている場合には、この凹凸にて光が乱反射し、この乱反射光が第一光検出部にて検出される虞がある。ところが、規定高さ位置に予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在しない場合には、照射位置にて反射した光の反射光が第二光検出部において検出される。従って、第一光検出部及び第二光検出部にて光が検出された場合には、規定高さ位置に予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在しないと判定すれば良い。これにより、対象物の表面における光の照射位置に微小な凹凸が形成されている場合でも、この凹凸の影響を排除しつつ、予め規定された高さ以上の異物欠陥が対象物の表面上に存在するか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】表面欠陥検査装置の一実施例を示す全体構成図である。
【図2】図1に示される表面欠陥検査装置に備えられた検査部の構成を示す図である。
【図3】図1に示される表面欠陥検査装置に備えられた検査・制御部が実行する処理の流れを示す図である。
【図4】図1に示される表面欠陥検査装置において得られる撮像画像信号、差信号、二値化信号、二値化基準信号の波形を示す図である。
【図5】図4に示される撮像画像信号、差信号、二値化信号の各々の信号レベルと、照射位置におけるパターン(凹凸)の有無と、異物欠陥の有無との関係を示す図である。
【図6】図1に示されるウェハに対するラインレーザ光の移動軌跡を説明する図である。
【図7】ウェハ検査装置の一実施例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する表面欠陥検査装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1に示されるように、本実施例に係る表面欠陥検査装置10は、検査部12を備えている。検査部12は、ラインレーザ14と、第一ラインカメラ16と、第二ラインカメラ18と、搭載テーブル20と、第一移動ステージ22と、第二移動ステージ24とを備えている。ラインレーザ14は、光源及びライン光源の一例である。また、第一ラインカメラ16は、第一光検出部の一例であり、第二ラインカメラ18は、第二光検出部の一例である。また、第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24は、相対移動部の一例である。
【0011】
ラインレーザ14は、図2に示されるように、搭載テーブル20に搭載された対象物の一例であるウェハ26の表面と光軸との成す角度θ1が鋭角を成すように配置されている。そして、このラインレーザ14は、ウェハ26の表面に斜方から光及びライン光の一例であるラインレーザ光28を照射する。このラインレーザ光28の幅方向は、図1に示されるように、ウェハ26の表面に沿うX方向とされている。
【0012】
第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18は、上述のX方向を主走査方向として配置されている。この第一ラインカメラ16の主走査範囲と第二ラインカメラ18の主走査範囲とは、X方向にオーバラップしている。第一ラインカメラ16は、図2に示される予め設定された規定高さ位置P1において反射したラインレーザ光28の反射光を検出するためのものであり、規定高さ位置P1においてラインレーザ14と互いの光軸が交差している。
【0013】
規定高さ位置P1は、ウェハ26の表面におけるラインレーザ光28の照射位置P2よりもラインレーザ14側の位置であって、ウェハ26の表面から予め規定された高さ離間した位置である。この規定高さ位置P1の高さHは、検出したい異物欠陥30の高さに応じて任意に設定されるものである。つまり、この規定高さ位置P1の高さHは、ウェハ26の表面と平行で図1のX方向と直交する方向をY方向とした場合に、このY方向における規定高さ位置P1と照射位置P2との間の距離Lや、上述の角度θ1が変更されることにより変更可能である。第一ラインカメラ16の光軸とウェハ26の表面との成す角度θ2は、一例として、直角に設定されている。
【0014】
第二ラインカメラ18は、照射位置P2において反射したラインレーザ光28の反射光を検出するためのものであり、照射位置P2においてラインレーザ14と互いの光軸が交差している。この第二ラインカメラ18は、第一ラインカメラ16を挟んだラインレーザ14と反対側に配置されている。この第二ラインカメラ18の光軸とウェハ26の表面との成す角度θ3は、一例として、鋭角に設定されている。
【0015】
第一移動ステージ22は、搭載テーブル20と一体に設けられており、上述のY方向に移動する。一方、第二移動ステージ24は、図1のX方向に移動する。この第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24には、図示しないアクチュエータが設けられており、このアクチュエータによって第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24は移動される。また、この第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24が移動されることで、ラインレーザ14、第一ラインカメラ16、及び、第二ラインカメラ18を含む測定系がウェハ26に対して相対移動される。
【0016】
また、この表面欠陥検査装置10は、図1に示されるように、演算部32を備えている。演算部32は、演算回路34、二値化回路36、ラインレーザ電源・制御部38、カメラ主走査制御部40、移動ステージ制御・駆動回路42、二値化制御部44、画像メモリ部46、及び、欠陥判定部48を備えている。これらは、例えば、電子回路等によって実現される。
【0017】
また、演算部32は、検査・制御部50、及び、操作コンソール52を備えている。検査・制御部50には、例えば、パーソナルコンピュータが用いられる。これら演算部32の各部の動作及び機能については、後述するウェハの検査方法と併せて説明する。
【0018】
次に、本実施例に係るウェハの検査方法について説明する。
【0019】
このウェハの検査方法では、先ず、上述の表面欠陥検査装置10によってウェハ26の表面上に予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在するか否かの検査が実施される。次いで、図7に示されるウェハ検査装置60によってウェハ26に対する電気的検査が実施される。はじめに、上述の表面欠陥検査装置10による検査について説明する。
【0020】
この表面欠陥検査装置10による検査では、先ず、作業者によって操作コンソール52にウェハ26のサイズ、規定高さ位置P1の高さH、ウェハ26の検査範囲などの情報が入力される。続いて、作業者によってウェハ26が搭載テーブル20にセットされる。そして、作業者によって操作コンソール52に検査開始の指示が入力される。
【0021】
操作コンソール52に検査開始の指示が入力されると、検査・制御部50は、図3で示される処理を実行する。
【0022】
すなわち、先ず、検査・制御部50は、ステップS1において、画像メモリ部46に初期化指令を出力し、画像メモリ部46に記憶されていた以前の検査結果などの情報を初期化させる。また、検査・制御部50は、このステップS1において、上述の操作コンソール52に入力された情報に基づいて検査パラメータを設定する。この検査パラメータは、例えば、第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24の検査開始位置、移動量、移動方向、移動繰り返し回数、及び、移動速度などである。また、この検査パラメータには、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18の主走査の周期、二値化基準信号の信号レベルなど、以下の検査を行う上での必要な情報が含まれる。
【0023】
続いて、検査・制御部50は、ステップS2において、移動ステージ制御・駆動回路42に検査開始位置移動指令を出力する。これにより、図示しないアクチュエータが作動されることで第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24が移動され、ウェハ26が予め定められた検査開始位置に移動される。
【0024】
また、検査・制御部50は、ステップS3において、ラインレーザ電源・制御部38に駆動指令を出力する。これにより、ラインレーザ14からラインレーザ光28が出射され、ウェハ26の表面に斜方からラインレーザ光28が照射される。なお、このとき、ラインレーザ電源・制御部38では、検査・制御部50から出力された駆動指令に基づいてラインレーザ光28の光量が調整される。
【0025】
続いて、検査・制御部50は、ステップS4において、移動ステージ制御・駆動回路42に検査開始指令を出力する。これにより、図示しないアクチュエータが作動されることで第一移動ステージ22がY方向に移動される。また、第一移動ステージ22がY方向に移動されるときには、移動ステージ制御・駆動回路42から第一移動ステージ22のY方向における移動位置に応じた移動位置情報が画像メモリ部46に出力される。この場合の移動ステージ制御・駆動回路42は、相対移動位置情報出力部の一例であり、この移動ステージ制御・駆動回路42から出力される移動位置情報は、相対移動位置情報の一例である。
【0026】
また、検査・制御部50は、このステップS4において、カメラ主走査制御部40に主走査指令を出力する。これにより、カメラ主走査制御部40によって第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18が同期して主走査される。そして、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18からは撮像画像信号(シリアル信号)がそれぞれ出力信号として演算回路34に順次出力される。この撮像画像信号は、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18によって検出される光の光量が増加するに従って信号レベルが増加する。なお、第一ラインカメラ16からの撮像画像信号は、演算回路34の非反転入力端子に入力され、第二ラインカメラ18からの撮像画像信号は、演算回路34の反転入力端子に入力される。そして、演算回路34では、第一ラインカメラ16の出力信号である撮像画像信号から第二ラインカメラ18の出力信号である撮像画像信号が減算される。
【0027】
また、検査・制御部50は、このステップS4において、二値化制御部44に信号出力指令を出力する。また、このとき、ラインレーザ電源・制御部38から二値化制御部44にラインレーザ光28の光量に応じた光量信号が出力される。そして、二値化制御部44に上述の信号出力指令が入力されると、上述の光量信号に対応する信号レベルを有する二値化基準信号が二値化制御部44から出力される。
【0028】
また、演算回路34から出力された差信号は、二値化回路36の非反転入力端子に入力され、二値化制御部44から出力された二値化基準信号は、二値化回路36の反転入力端子に入力される。そして、この二値化回路36において、演算回路34から出力された差信号は、二値化制御部44から出力された二値化基準信号と比較されることで二値化され、二値化信号として二値化回路36から出力される。
【0029】
ここで、図4には、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号、演算回路34から出力された差信号、二値化回路36から出力された二値化信号、二値化制御部44から出力された二値化基準信号の一例が示されている。
【0030】
この図4において、符合Aは、第一ラインカメラ16から出力された撮像画像信号を示しており、符合Bは、第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号を示している。また、符合Cは、演算回路34から出力された差信号を示しており、符合Dは、二値化回路36から出力された二値化信号を示している。さらに、符合Eは、二値化回路36に入力される二値化基準信号を示している。また、横軸は、撮像位置、つまり、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18に備えられた複数の画素の位置を示している。また、第一の縦軸は、撮像画像信号A,Bの信号レベルを示しており、第二の縦軸は、差信号Cの信号レベルを示している。
【0031】
また、図4において、範囲(1)は、例えば、図2に示される規定高さ位置P1に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在せず、且つ、照射位置P2に凸状のパターンが形成されていない場合を示している。この場合には、異物欠陥30が存在しないことで、ラインレーザ光28が照射位置P2に到達する。また、照射位置P2においてラインレーザ光28が反射する。そして、この反射光は第二ラインカメラ18にて検出される。これにより、第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号Bは、範囲(1)において、信号レベルが上がっている。また、照射位置P2において反射された反射光は、第一ラインカメラ16では検出されない。これにより、第一ラインカメラ16から出力された撮像画像信号Aは、範囲(1)において、信号レベルがほぼ0レベルとなっている。また、この範囲(1)において、差信号Cは、二値化基準信号Eよりも信号レベルが低くなっており、これにより、二値化信号Dは、ローレベルとなっている。
【0032】
また、図4において、範囲(2)は、例えば、図2に示されるように、規定高さ位置P1に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在しているが、照射位置P2に凸状のパターンが形成されていない場合を示している。この場合には、規定高さ位置P1に存在する異物欠陥30によってラインレーザ光28が反射されることにより、この反射光が第一ラインカメラ16によって検出される。これにより、第一ラインカメラ16から出力された撮像画像信号Aは、範囲(2)において、信号レベルが高レベルとなっている。また、ラインレーザ光28は、異物欠陥30によって遮られるため、照射位置P2に凸状のパターンが形成されているか否かにかかわらず、第二ラインカメラ18では光が検出されない。これにより、第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号Bは、範囲(2)において、信号レベルがほぼ0レベルとなっている。また、この範囲(2)において、差信号Cは、二値化基準信号Eよりも信号レベルが高くなっており(+高レベルとなっており)、これにより、二値化信号Dは、ハイレベルとなっている。
【0033】
一方、図4において、範囲(3)は、例えば、図2に示される規定高さ位置P1に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在しないが、ウェハ26の表面における照射位置P2に凸状のパターンが形成された場合を示している。この場合にも、規定高さ位置P1に異物欠陥30が存在しないことで、ラインレーザ光28が照射位置P2に到達する。しかしながら、この照射位置P2には凸状のパターンによって微小な凹凸が形成されることにより、この凹凸でラインレーザ光28が乱反射し、この反射光が迷光として第一ラインカメラ16によって検出される。これにより、第一ラインカメラ16から出力された撮像画像信号Aは、範囲(3)において、信号レベルが上がっている。また、照射位置P2におけるラインレーザ光28の反射光は、第二ラインカメラ18によっても検出される。これにより、第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号Bは、範囲(3)において、信号レベルが上がっている。ところが、この範囲(3)において、差信号Cは、二値化基準信号Eよりも信号レベルが低くなるので、これにより、二値化信号Dは、上述の範囲(3)の場合と同様に、ローレベルとなっている。
【0034】
図5には、範囲(1)〜(4)と、照射位置P2における凸状のパターンの有無と、規定高さ位置P1における異物欠陥の有無と、撮像画像信号A,Bの信号レベルと、差信号Cの信号レベルと、二値化信号Dの信号レベルとの関係が示されている。
【0035】
範囲(4)は、図4において示されていないが、例えば、図2に示される規定高さ位置P1に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在し、且つ、ウェハ26の表面における照射位置P2に凸状のパターンが形成された場合を示している。
【0036】
なお、撮像画像信号Bの信号レベルは、図2に示される角度θ3の大きさに依存する。すなわち、角度θ3が小さい場合、パターンの有無にかかわらず信号レベルは高レベルとなる。一方、角度θ3が大きい場合、パターンが無いときには、信号レベルが中レベルとなり、パターンが有るときには、信号レベルが高レベルとなる。
【0037】
この図5において、撮像画像信号A,Bは、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18に備えられた複数の画素の各々において光が検出されたか否かの光の検出状況の一例として捉えることが可能である。つまり、この複数の画素の各々において光が検出された場合には、撮像画像信号A,Bの信号レベルは増加する。一方、この複数の画素の各々において光が検出されていない場合には、撮像画像信号A,Bの信号レベルはほぼ0レベルとなる。
【0038】
また、この図5において、二値化信号Dは、ウェハ26の表面上に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在するか否かの判定結果の一例として捉えることが可能である。つまり、二値化信号Dがハイレベルの場合には、ウェハ26の表面上に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在すると判定されたことになる。一方、二値化信号Dがローレベルの場合には、ウェハ26の表面上に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在しないと判定されたことになる。
【0039】
そして、この表面欠陥検査装置10では、照射位置P2に凸状のパターンが形成されている場合でも、規定高さ位置P1に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在しないときには、二値化信号Dがローレベルとなる(図5の範囲(3)参照)。
【0040】
すなわち、第一ラインカメラ16から出力された撮像画像信号Aのみに基づいて異物欠陥30が存在するか否かの判定をした場合には、図5の範囲(3)の場合に撮像画像信号Aの信号レベルが低〜中レベルとなるため誤判定となる虞がある。ところが、この表面欠陥検査装置10では、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号A,Bに基づいて異物欠陥30が存在するか否かの判定がなされるので、この誤判定が回避される。
【0041】
そして、上述のように、差信号Cと二値化基準信号Eとの比較により得られる二値化信号Dは、画像メモリ部46に入力される。また、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18が主走査されているときには、カメラ主走査制御部40から主走査位置情報が画像メモリ部46に出力される。この主走査位置情報は、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18に備えられた複数の画素の主走査位置に応じて出力される。
【0042】
そして、検査・制御部50は、上述のステップS4において、画像メモリ部46に記憶指令を出力する。これにより、画像メモリ部46では、二値化信号Dと、この二値化信号Dの基となる撮像画像信号A,Bを得たときの移動位置情報及び主走査位置情報とが関連付けられて記憶される。
【0043】
続いて、検査・制御部50は、ステップS5において、上述の移動ステージ制御・駆動回路42から出力された移動位置情報に基づきラインレーザ光28の一幅分の検査が終了したか否かを判断する。すなわち、ここでは、第一移動ステージ22が移動することでラインレーザ光28が図6で示される第一副走査範囲A1を副走査したか否かが判断される。この図6において、符合Wは、上述のラインレーザ光28の幅を示している。
【0044】
そして、検査・制御部50は、ステップS5においてラインレーザ光28の一幅分の検査が終了したと判断するまで、上述のステップS4,S5を繰り返し実行する。
【0045】
一方、検査・制御部50は、ステップS5において、ラインレーザ光28の一幅分の検査が終了したと判断した場合には、ステップS6に移行し、ステップS1にて設定された検査範囲について全ての検査が終了したか否かを判断する。つまり、ここでは、ラインレーザ光28が図6で示される第一副走査範囲A1〜第七副走査範囲A7を副走査したか否かが判断される。
【0046】
ここで、検査・制御部50は、ステップS6において、全ての検査が終了していないと判断した場合には、ステップS7に移行し、移動ステージ制御・駆動回路42に副走査範囲変更指令を出力する。これにより、図示しないアクチュエータが作動されることで第二移動ステージ24がX方向に移動され、検査範囲が次の副走査範囲に設定される。すなわち、例えば、第一副走査範囲A1の検査が終了した場合には、検査範囲が第二副走査範囲A2に設定される。
【0047】
そして、検査・制御部50は、ステップS6において、全ての検査が終了したと判断するまで、上述のステップS4〜ステップS7を繰り返し実行する。
【0048】
そして、ステップS1にて設定された検査範囲について全ての検査が終了すると、検査・制御部50は、ステップS8に移行する。このステップS8において、検査・制御部50は、先ず、欠陥判定部48に、画像メモリ部46に記憶された情報について予め規定された検査範囲の情報であるか否かの判定を行わせる。この判定は、例えば、ウェハ26が円形であるが第一副走査範囲A1〜第七副走査範囲A7が短冊状である場合には、このウェハ26と第一副走査範囲A1〜第七副走査範囲A7とが重なる領域の情報を判別し抽出することである。さらに、欠陥判定部48は、この得られた情報から二次元的な大きさ(XY方向のサイズ)が予め定められた規定値以上の異物欠陥(有効欠陥)があるか否かを判定する。
【0049】
そして、欠陥判定部48は、予め定められた規定値以上の異物欠陥があると判定した場合には、この異物欠陥に関する情報を検査・制御部50に出力する。この情報は、二値化信号Dと、この二値化信号Dの基となる撮像画像信号A,Bを得たときの移動位置情報及び主走査位置情報とが関連付けられて画像メモリ部46に記憶された情報のうち上述の判定により抽出された情報である。
【0050】
続いて、検査・制御部50は、ステップS9に移行し、ステップS8において欠陥判定部48から出力された情報に基づいて、ウェハ26の表面上における異物欠陥30の座標情報54(欠陥マップ情報)を作成する。この異物欠陥30の座標情報54は、異物欠陥30のXY座標や、異物欠陥30のXY方向のサイズ等を含むものである。この場合の検査・制御部50は、座標情報出力部の一例である。
【0051】
そして、検査・制御部50は、ステップS10において、操作コンソール52に上述の座標情報54を出力する。これにより、操作コンソール52には、この座標情報54が検査結果として表示される。さらに、検査・制御部50は、ステップS11において、後述するウェハ検査装置60に上述の座標情報54を出力する。
【0052】
なお、検査・制御部50は、上述のステップS6において、全ての検査が終了したと判断した場合には、ステップS12に移行し、移動ステージ制御・駆動回路42に検査終了位置移動指令を出力する。これにより、図示しないアクチュエータが作動されることで第一移動ステージ22及び第二移動ステージ24が移動され、ウェハ26が予め定められた検査終了位置に移動される。
【0053】
そして、検査・制御部50は、ステップS13において、ウェハ26の検査終了位置への移動が完了したと判断した場合には、一連の処理を終了する。以上により、表面欠陥検査装置10による検査が終了する。
【0054】
続いて、このようにして表面欠陥検査装置10による検査が終了したウェハ26は、図7に示されるウェハ検査装置60において電気的検査を受ける。
【0055】
ウェハ検査装置60は、接触部62と、接離駆動部64と、スライド駆動部66と、制御部68とを有している。接触部62は、例えば、MEMSタイプのプローブカードである。図6において、接触部62は、理解の容易のために、要部のみが簡易的に示されている。接触部62は、駆動機構によって上下に移動し、前記ウェハと接触するプローブ以外は、規定高さ位置P1より高い位置で移動する。
【0056】
接離駆動部64は、この接触部62をウェハ26に対して接離させ、スライド駆動部66は、ウェハ26が搭載された図示しない搭載テーブルをウェハ26の表面に沿ってスライドさせる。また、制御部68は、接離駆動部64及びスライド駆動部66を制御する。
【0057】
そして、このウェハ検査装置60では、上述の搭載テーブルにウェハ26が搭載された状態で、このウェハ26のICに接触部62が接触されることで電気的検査が行われる。また、このとき、接離駆動部64により接触部62がウェハ26に対して離間された状態で、スライド駆動部66により搭載テーブルがスライドされることでウェハ26に対する接触部62の位置が変更される。この電気的検査では、上述の表面欠陥検査装置10から出力された座標情報54(欠陥マップ情報)に基づいて、接触部62が異物欠陥を避けるように接触部62の位置が制御される。
【0058】
そして、以上の要領でウェハ26に対して電気的検査が行われ、この電気的検査が終了すると、ウェハ26に対する一連の検査が完了する。
【0059】
次に、本実施例の作用及び効果について説明する。
【0060】
以上詳述したように、本実施例の表面欠陥検査装置10によれば、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号A,Bに基づいて異物欠陥30が存在するか否かの判定がなされるので、誤判定を回避することができる。つまり、照射位置P2に凸状のパターンによって微小な凹凸が形成されている場合でも、この凹凸の影響を排除しつつ、予め規定された高さ以上の異物欠陥がウェハ26の表面上に存在するか否かを判定することができる。
【0061】
また、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18から出力された撮像画像信号A,Bが演算回路34にて演算されると共に、この演算回路34から出力された差信号Cが二値化回路36にて二値化される。これにより、ウェハ26の表面上に予め規定された高さ以上の異物欠陥30が存在するか否かの判定結果を自動的に得ることができる。
【0062】
また、二値化信号Dと、この二値化信号Dの基となる撮像画像信号A,Bを得たときの移動位置情報及び主走査位置情報とに基づいてウェハ26の表面上における異物欠陥30の座標情報54が自動的に作成される。そして、本実施例のウェハ検査装置60では、この座標情報54に基づいて接触部62の位置が制御されるので、接触部62と異物欠陥との接触を回避することができる。これにより、一般に高価とされる接触部62の破損を回避することができる。
【0063】
次に、本実施例の変形例について説明する。
【0064】
本実施例において、第二ラインカメラ18の光軸とウェハ26の表面との成す角度θ3は、直角に設定されていても良い。なお、この場合には、第一ラインカメラ16と第二ラインカメラ18の互いの光軸が干渉するのを回避するために、光路を屈曲させるための光学系が追加されても良い。
【0065】
また、例えば、異物欠陥30からの反射光の光量を確保できるのであれば、第一ラインカメラ16の光軸とウェハ26の表面との成す角度θ2は、鋭角に設定されていても良い。
【0066】
また、ラインレーザ14の代わりに、複数の点光源が用いられると共に、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18の代わりに、この第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18の各画素に相当する複数の光検出器がそれぞれ用いられても良い。
【0067】
また、ラインレーザ14の代わりに、一つの点光源が用いられると共に、第一ラインカメラ16及び第二ラインカメラ18の代わりに光検出器がそれぞれ用いられても良い。
【0068】
なお、光検出器が用いられる場合には、二値化回路36から出力された二値化信号と、ウェハ26に対する光検出器の相対移動位置情報とを含む情報に基づいて座標情報54が出力されても良い。
【0069】
また、ラインレーザ14の代わりに、一つの点光源が用いられると共に、この点光源から出射された光が例えば回転ミラーやガルバノミラー等によって走査されても良い。
【0070】
また、ラインレーザ14の代わりに、ラインレーザ光28以外のライン光を出射するライン光源が用いられても良い。
【0071】
また、ウェハ26が固定された状態で、ラインレーザ14、第一ラインカメラ16、及び、第二ラインカメラ18を含む測定系が相対移動部の一例である図示しない移動機構等によりウェハ26に対して相対移動されても良い。
【0072】
また、表面欠陥検査装置10は、ウェハ26を対象物としていたが、その他のものを対象物としても良い。
【0073】
また、図4に示される撮像画像信号A,Bの信号波形や、図5に示される撮像画像信号A,Bの信号レベルに関する情報が操作コンソール52に表示されても良い。また、この操作コンソール52の表示内容に基づいて異物欠陥が存在するか否かの判定が作業者によって行われても良い。すなわち、例えば、図4,図5において、撮像画像信号Aの信号レベルがほぼ0であるか又は低〜中レベルであって、撮像画像信号Bの信号レベルが中〜高レベルの場合には、作業者によって異物欠陥が存在しないと判定されても良い。また、図4,図5において、撮像画像信号Aの信号レベルが高レベルであって、撮像画像信号Bの信号レベルがほぼ0の場合には、作業者によって異物欠陥が存在すると判定されても良い。
【0074】
さらに、この異物欠陥が存在するか否かの判定結果と、この判定結果の基となる撮像画像信号を得たときの移動位置情報及び主走査位置情報とに基づいて作業者がウェハ26の表面上における異物欠陥の座標情報を得ても良い。また、この場合に、図4に示される二値化信号Dの信号波形や、図5に示される二値化信号Dの信号レベルに関する情報が操作コンソール52に表示されても良い。そして、この操作コンソール52に表示された二値化信号Dに関する表示内容と、上述の移動位置情報及び主走査位置情報とに基づいて作業者がウェハ26の表面上における異物欠陥の座標情報を得ても良い。
【0075】
以上、本願の開示する技術の一実施例について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 表面欠陥検査装置
14 ラインレーザ(光源及びライン光源の一例)
16 第一ラインカメラ(第一光検出部の一例)
18 第二ラインカメラ(第二光検出部の一例)
22 第一移動ステージ(相対移動部の一例)
24 第二移動ステージ(相対移動部の一例)
26 ウェハ(対象物の一例)
28 ラインレーザ光(光及びライン光の一例)
30 異物欠陥
34 演算回路
36 二値化回路
40 カメラ主走査制御部
42 移動ステージ制御・駆動回路(相対移動位置情報出力部の一例)
50 検査・制御部(座標情報出力部の一例)
54 座標情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に斜方から光を照射する光源と、
前記対象物の表面における前記光の照射位置よりも前記光源側の位置であって前記対象物の表面から予め規定された高さ離間した規定高さ位置において反射した前記光の反射光を検出する第一光検出部と、
前記照射位置において反射した前記光の反射光を検出する第二光検出部と、
を備えた表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記第一光検出部及び前記第二光検出部は、検出する光の光量が増加するに従って出力信号の信号レベルが増加し、
前記第一光検出部の出力信号と前記第二光検出部の出力信号との差を演算し差信号を出力する演算回路と、
前記演算回路から出力された差信号を二値化する二値化回路と、
を備えた、
請求項1に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記対象物と、前記光源、前記第一光検出部、及び、前記第二光検出部を含む測定系との少なくとも一方を他方に対して相対移動させる相対移動部と、
前記対象物に対する前記第一光検出部及び前記第二光検出部の相対移動位置情報を出力する相対移動位置情報出力部と、
前記対象物の表面上に前記予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在する場合に、前記二値化回路から出力された二値化信号と、前記相対移動位置情報出力部から出力された相対移動位置情報とを含む情報に基づいて、前記対象物の表面上における前記異物欠陥の座標情報を出力する座標情報出力部と、を備えた、
請求項2に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記光源は、前記対象物の表面に沿う方向を幅方向とするライン光を前記光として前記対象物の表面に照射するライン光源であり、
前記第一光検出部及び前記第二光検出部は、前記ライン光の幅方向を主走査方向とする第一ラインカメラ及び第二ラインカメラであり、
前記第一ラインカメラ及び前記第二ラインカメラを主走査させて、前記第一ラインカメラ及び前記第二ラインカメラから撮像画像信号を前記出力信号としてそれぞれ出力させるカメラ主走査制御部と、
前記対象物の表面上に前記予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在する場合に、前記二値化回路から出力された二値化信号と、前記カメラ主走査制御部から出力された主走査位置情報とを含む情報に基づいて、前記対象物の表面上における前記異物欠陥の座標情報を出力する座標情報出力部と、を備えた、
請求項2に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項5】
対象物の表面に前記対象物の表面に斜方から光源の光を照射し、
前記対象物の表面における前記光の照射位置よりも前記光源側の位置であって前記対象物の表面から予め規定された高さ離間した規定高さ位置において反射した前記光の反射光を検出する第一光検出部にて光が検出され、前記照射位置において反射した前記光の反射光を検出する第二光検出部にて光が検出されていない場合には、前記対象物の表面上に前記予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在すると判定し、
前記第一光検出部にて光が検出されずに、前記第二光検出部にて光が検出された場合と、前記第一光検出部及び前記第二光検出部にて光が検出された場合には、前記対象物の表面上に前記異物欠陥が存在しないと判定する、
表面欠陥検査方法。
【請求項6】
前記対象物と、前記光源、前記第一光検出部、及び、前記第二光検出部を含む測定系との少なくとも一方を他方に対して相対移動させて、前記第一光検出部及び前記第二光検出部において光が検出されたか否かの検出状況に基づいて前記異物欠陥が存在するか否かの判定結果を得ると共に、前記判定結果と、前記対象物に対する前記第一光検出部及び前記第二光検出部の相対移動位置情報とを含む情報に基づいて、前記対象物の表面上における前記異物欠陥の座標情報を得る、
請求項5に記載の表面欠陥検査方法。
【請求項7】
前記光源として、前記対象物の表面に沿う方向を幅方向とするライン光を前記光として前記対象物の表面に照射するライン光源を用いると共に、前記第一光検出部及び前記第二光検出部として、前記ライン光の幅方向を主走査方向とする第一ラインカメラ及び第二ラインカメラを用い、前記第一ラインカメラ及び前記第二ラインカメラを主走査させて、前記第一ラインカメラ及び前記第二ラインカメラに備えられた複数の画素の各々において光が検出されたか否かの検出状況に基づいて前記異物欠陥が存在するか否かの判定結果を得ると共に、前記判定結果と、前記複数の画素の主走査位置情報とを含む情報に基づいて、前記対象物の表面上における前記異物欠陥の座標情報を得る、
請求項5に記載の表面欠陥検査方法。
【請求項8】
ウェハの表面に前記ウェハの表面に斜方から光源の光を照射し、
前記ウェハの表面における前記光の照射位置よりも前記光源側の位置であって前記ウェハの表面から予め規定された高さ離間した規定高さ位置において反射した前記光の反射光を検出する第一光検出部にて光が検出され、前記照射位置において反射した前記光の反射光を検出する第二光検出部にて光が検出されていない場合には、前記ウェハの表面上に前記予め規定された高さ以上の異物欠陥が存在すると判定し、
前記第一光検出部にて光が検出されずに、前記第二光検出部にて光が検出された場合と、前記第一光検出部及び前記第二光検出部にて光が検出された場合には、前記ウェハの表面上に前記異物欠陥が存在しないと判定し、
前記ウェハ表面の前記予め規定された高さよりも高い位置で、接触部を前記検出した異物欠陥を避けて移動させ、
前記接触部を用いて、前記ウェハの検査を行うことを特徴とするウェハ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198136(P2012−198136A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63094(P2011−63094)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】