複数の加圧チャンバを有する補綴ソケット直接注型装置
【課題】
【解決手段】 本発明の補綴ソケット注型装置は、前方側面を備えた基部を有し、この前方側面から、中央の注型領域を囲む膨張可能なブラダーが延びている。ブラダーは、ブラダーの内側でその長さにほぼ沿って延び、中央の注型領域を周方向に囲んでいる膨張可能な複数の内側チャンバを有する。これらチャンバの内壁は、柔軟で流体不浸透性の比較的薄いシート材料で形成されている。この材料は、チャンバの空間が加圧されると伸張可能である。ブラダーはまた、材料で形成された外側カバー、即ち、壁部か、ブラダーの外方への伸張を拘束する構造物かを有している。これらチャンバは、硬化可能な補綴ソケット材料が上に配置された義足が圧力下で注型および硬化されるように配置され得る中央の注型領域を圧迫するように、義足加圧された空気または他の流体を用いて膨張可能である。
【解決手段】 本発明の補綴ソケット注型装置は、前方側面を備えた基部を有し、この前方側面から、中央の注型領域を囲む膨張可能なブラダーが延びている。ブラダーは、ブラダーの内側でその長さにほぼ沿って延び、中央の注型領域を周方向に囲んでいる膨張可能な複数の内側チャンバを有する。これらチャンバの内壁は、柔軟で流体不浸透性の比較的薄いシート材料で形成されている。この材料は、チャンバの空間が加圧されると伸張可能である。ブラダーはまた、材料で形成された外側カバー、即ち、壁部か、ブラダーの外方への伸張を拘束する構造物かを有している。これらチャンバは、硬化可能な補綴ソケット材料が上に配置された義足が圧力下で注型および硬化されるように配置され得る中央の注型領域を圧迫するように、義足加圧された空気または他の流体を用いて膨張可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補綴ソケットを義足(residual limb)に直接に形成、即ち注型する注型装置に関し、更に詳細には、義足に直接に配置可能な注型装置であって、この義足に事前に配置された注型可能および硬化可能な補綴ソケットの材料に加圧してソケットに仕上げの内部空間を与える注型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
義足用補綴具の堅いソケットが、パリスモールドの漆喰(plaster of paris mold)、コンピュータモデリング(computer modeling)、真空成形、および補綴具製造者(prosthetists)に公知の他の様々の技術を含むあらゆる技術によって形成されてきた。従来技術はまた、米国特許No.5、718、925に開示されているような携帯可能な環状の圧力注型システムを用いて補綴ソケットが義足に直接注型されることで公知である。この技術により、義足の先端領域に張力が与えられながら補綴ソケットが義足に直接圧力注型され得るので、注型処置を完了したときに、最少限の仕上げ加工と調節を必要とするだけの最終的なソケットが得られる。
【0003】
他の種類の直接圧力注型システムが、米国特許No.5、885、509に開示されている。このシステムによれば、携帯型環状圧力注型ブラダーが硬化可能なソケット材料を有する義足に巻かれ、この義足が注型処理で張力を与えられて引き伸ばされている間に、圧力下で補綴ソケットが義足にモールド成形及び硬化される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当分野で公知のこのような処理は、モールド成形処理が完了したときに義足によりよく適合する改良された補綴ソケットを得るために、補綴ソケット注型処理中の注型圧力の分布をよりよく制御するように改良できると考えられてきた。
【0005】
本発明は、公知の従来技術のシステム、特に、義足に対して補綴ソケットの材料を押圧する単一のブラダーを用いる直接注型システムを改良するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、米国特許No.5、885、509(参照して本明細書に組み込む)に示されているタイプの補綴ソケット注型装置である。更に詳細には、本発明は、携帯型補綴具の直接注型装置であり、細長く柔軟な環状のモールド成形ブラダーが設けられた基部を有する。モールド成形ブラダーは、中央に配置された注型領域を周方向に囲む複数の膨張可能なチャンバを有する。このモールド成形ブラダーは、ブラダーの注型領域内に、その関連した膨張可能なチャンバが義足を囲むような形で義足が配置され得るように、基部に向けてあるいは基部の前方に丸められ得る。
【0007】
チャンバは、柔軟で不透水性の薄いシート材料で形成されている。このシート材料は、内部圧力によって膨張されると、中央の注型領域に向けて内方に撓み、義足の外側先端領域に予め配置された補綴ソケットの材料を有する注型領域内の義足に圧力をかける。膨張可能なこれらチャンバは、ソケット材料をモールド成形および硬化するときに、義足の外周のあたりとその関連したソケット注型材料に内向きの力を生じるような形で個々にあるいは一斉に加圧され得る。チャンバは、弾性を有する薄いシート材料で形成された径方向内方に面した壁を有していてよい。
【0008】
米国特許No.5、885、509に説明されているように、吸引ソケットは、典型的には、シリコーンなどで形成されており、吸引スリーブの先端部から遠位方向に延びるようにロックピンが吸引スリーブに設けられた状態で、補綴ソケットモールド成形材料が配置される前に義足上に設けられる。ロックピンは、吸引スリーブの先端部が基部に対して動かないようにこの先端部を固定するか、あるいは、膨張可能なチャンバによる圧力下で補綴ソケットの材料をモールド成形する間に義足の先端部領域および吸引スリーブを引き伸ばすようにピンが軸方向に遠位方向へと引っ張られ得るように固定するように、基部と共働する。
【0009】
基部は、ロックピンと係合しこのロックピンを基部に対して固定するか、ブラダーとその関連した膨張可能なチャンバとに対して遠位方向にロックピンで牽引力を生じ得る牽引装置に対して固定するロック装置を有する。
【0010】
基部は、モールド成形(注型)処理中に加圧された空気または他の流体を膨張可能なチャンバ中に送ってこれらチャンバを中央の注型領域に向けて内方に膨張させるのに適した導管とバルブとを有する。
【0011】
複数の膨張可能なチャンバの構成および方向付けとは、義足にモールド成形される補綴ソケットの材料に対して望ましい圧力分布を果たすように選択されており、補綴具製造者によって調節される必要がなく義足にモールド成形および硬化されたソケットの正確な適合を確実にする。
【0012】
好ましい実施形態では、長手方向に延び互いに周方向に離間された3つの膨張可能なチャンバが、ブラダーの内部に設けられる。他の実施形態では、内部で長手方向に延び互いに周方向に離間された複数の膨張可能なチャンバが、ブラダーの各個またはグループが夫々独立して加圧され得るように、あるいは、全てのブラダーが互いに流体連通された状態で、単一の環状の膨張可能なブラダーによって囲まれてもよい。
【0013】
このブラダーは、膨張可能なチャンバが加圧されたときにブラダーの外壁の外方への膨張を制御する、例えば弾性を有する布などの外側布カバーを有すると好ましい。これにより、膨張可能なチャンバの力が、注型領域から外方へ向かうのではなく、確実に注型領域に向かって内方に向けられる。
【0014】
手動ポンプは、米国特許No.5、885、509に開示されているような形で注型装置と結合可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2を参照すれば、補綴ソケット注型装置10が、この注型装置10が注型位置に配置される前に義足に付着される吸引スリーブ62(図7を参照)の先端部と接続可能なねじ端部30を有するロックピン28と共働するロック装置16が組み込まれた基部12を有している。
【0016】
吸引ソケットが、米国特許No.5、718、925と米国特許No.5、885、509とに開示されており、典型的には、参照符号28で示されたタイプのロックピンのねじ端部30を受けるためのねじソケットを有する端部構造体を備えた高い可撓性を有するシリコーンエラストマーソケットを有する。この吸引ソケットは、硬い補綴ソケットを義足に真空接続によって接続させるために使用されるものであり、典型的には、ピン28などのロックピンによって補綴ソケットに接続される。本発明では、補綴ソケット注型材料で覆われる義足にカバーを設けるために吸引ソケットが使用されており、この吸引ソケットによって、義足と完成した補綴ソケットとの間にスペーサが形成されて、補綴ソケットの正確な内部空間が形成され得る。この正確な内部空間内に、補綴ソケットがその吸引スリーブによって切断患者によって装着されたときの吸引ソケットの空間を可能にする。
【0017】
更に、特許No.5、885、509に開示されているように、義足を覆いかつ補綴ソケット注型材料の内側に位置する吸引ソケットを用いることにより、ロックピン28が、吸引ソケットの先端部に固定され、注型装置の基部12に接続され得る。このようにロックピンを基部12に固定させることにより、特許No.5、885、509に開示され以下に詳しく説明されるように、注型しながら義足の先端部に牽引力が与えられ得る。
【0018】
図1および図2に示されている本発明の実施形態に係われば、基部12に対して近位方向に動かないようにピン28を固定するためにこのピン28と解放可能に係合するコネクタ14に対して軸方向に動かないようにピン28を固定可能である。コネクタ14は、必要であれば、基部12にしっかりと固定されることも可能であり、任意で、注型装置10を使用している間に遠位方向へピン28を引っ張るように補綴具装着者によって操作され得る引き手22と結合可能である。
【0019】
この実施形態に係われば、ピン28をその端部30によって義足を覆っている吸引ソケットと接続させるときに、注型領域32内に収容された義足と吸引ライナーに対して基部12とブラダー34(以下に説明される)とが以下に説明されるように配置された状態に保持されていると想定すると、引き手22によって与えられた張力が、摺動ロッド26に、かくして、ばね座部18に配置されたばね19を介して、ピン28に固定され得るロック装置16によってピン28に接続されたコネクタ14に伝えられる。基部12は、ピン28、コネクタ14、およびバー20が、引き手22に与えられた張力の反力を与える座部18のばね19の拘束下で基部12に対して軸方向に有効に移動され得るように、ピン28に対して軸方向に移動可能である。換言すると、引き手22によって図1および図2で右方向へと与えられた軸方向の力は、引き手22内でばね座部18に設けられた圧縮ばね19に伝えられ、続いて、図2で右方に示されたバーの拡大端部によって摺動バー20に伝えられ、更に、この摺動バー20と基部12との接続部を介して、コネクタ14に伝えられる。次に、コネクタ14に伝えられた軸方向の荷重が、基部12から独立してピン28に力が与えられるように、ロック16からピン28に伝えられる。引き手22が摺動バー20に対して動く程度、即ち、ばね19が圧縮される程度が、この摺動バー20の外径の前方端部(示されているように左方の端部)に刻まれたか記されたスケール26に示され得る。
【0020】
基部12の前方側面には、中央の注型領域32を規定し、基部12からブラダー34の長手方向全体にわたって軸方向前方へと伸張可能である可撓性の膨張可能な環状圧力ブラダー34が接続されている。このブラダー34は、補綴ソケットの材料が外側でモールド成形される吸引ソケットによって覆われる義足の部分の長手方向にほぼ沿って延びるように構成かつ寸法付けされている。このブラダー34は、比較的伸縮しない材料か外壁36の外方への伸張を拘束する材料のウェブもしくはストランドで補強されたシリコーンラバー材料で形成され得るか、外壁36の外方への伸張を拘束する材料で形成された別個の外側カバーを備えシリコーンエラストマーなどのエラストマー材料で形成され得る外壁36を好ましくは有する。
【0021】
ブラダー34の内壁38は、所定の基準に従って材料の伸張性を調整することが可能な部材で補強され得る1つ以上の柔軟で従順なシート材料で形成することができる。好ましい実施形態に係われば、ブラダー34の内壁38と外壁36とは実質的に薄く可撓性のある材料で形成されるので、ブラダー34は、米国特許No.5、885、509に開示されているブラダーと同じ方法で義足の外周に巻かれたりこれから取り外されたりすることができ、義足から容易に着脱可能である。ブラダー34の内壁38の好ましい特徴は、テンションがかけられたときにこれ自体は実質的に伸張しないが、注型領域32内に配置された義足と補綴ソケット注型材料とを包むように外側のチャンバが膨張したときにはこれに充分に従うことができる材料で形成されている点である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、ブラダー34の内壁38は、外壁36とは別個の薄いシート材料から形成され、内壁38と外壁36との間で膨張可能なチャンバを規定する形で外壁に接着されるか取着されている。内壁38は、複数の膨張可能なチャンバ40、42、および44を規定するように、外壁36の内周部に縫い合わせられ、熱融着され、接着あるいは堅く取着され得る。チャンバ40、42、および44は、ブラダー34の長手方向に沿って延び、中央の注型領域32を周方向に囲んでいる。チャンバ40、42、および44は、チャンバの内壁38を中央の注型領域32に向かって内方に伸張させてブラダー34内で注型される補綴ソケットの材料に圧力をかけるように、典型的には空気などの流体で加圧されたときに膨張可能である。
【0023】
前記コネクタ14は、図4に示されているように、少なくとも1つの流体通路64と、当分野で公知の方法でロック装置16からピン28を解放するピン解放機構(図示されず)とを有している。この流体通路64は、チャンバ内に加圧流体が供給され得るようにチャンバ40、42、および44の内部と連通されたコネクタ14および基部12の適当なポートおよび導管と連通されている。流体通路64は、必要に応じて、コネクタ14の代わりに基部12と接続されてもよい。チャンバ40、42、および44の外部の位置からこれらの内部への加圧流体の通路を可能にするように、所定の他の適当な構成物が使用されてもよい。実際には、引き手22を伸張装置として使用しピン28に牽引力を作用させてコネクタ14を基部12から分離させることを選択したときは、流体通路64は、ピン28に牽引力がかけられながらチャンバ40、42、および44内への加圧流体の連続的な供給を可能にするような方向付けと配置にされるだろう。
【0024】
チャンバ40、42、および44はまた、側壁の内壁がチャンバ40、42、および44の内側面で径方向内方に伸張可能なように形成されるように、側壁中にモールド成形され得る。このように、チャンバは、膨張可能なチャンバを形成する膨張可能なポケットを備えた一体成形型の側壁によって形成され得る。
【0025】
ブラダー34の第1の実施形態は、図5A〜図5Dに示されており、この実施形態では、内壁38と外壁36とが、ブラダー34の長手方向に沿って延び中央の注型領域32を周方向に囲む伸張可能なチャンバ40、42、および44を規定している。ブラダー34の内壁38は、チャンバ40、42、および44の間に膨張しない領域を有し、この領域で、内壁38と外壁36とが、図5Dの参照符号39に示されているように、縫い合わせ、熱融着、接着などによって互いに堅く取着されている。
【0026】
ブラダー34は、近位端部35と遠位端部37とを有し、近位端部35は遠位端部37よりも小さな直径を有する。しかし、ブラダーはまた、一般的にソケットと義足の形状に応じて円筒形であってもよい。ブラダー34の長さは、義足とこの義足の先端領域に配置された補綴ソケット注型材料とを包むことができるように選択される。あらゆるサイズの義足を収容可能なように、必要に応じて、複数のブラダーが適当な大小の直径を有する様々な長さに形成されてよい。
【0027】
義足に配置された注型材料に充分な径方向の圧力をかけることができる程度まで内壁38が注型領域32に向かって径方向に伸張可能である場合は、内壁38は、参照符号39で示されているような長手方向のシームに沿って外壁36に取着され、伸縮可能な弾性材料または弾性を拘束する材料で形成され得る。内壁38が拘束された弾性を有する場合は、十分な余分の内壁材料が与えられて、内壁によって規定された膨張可能なチャンバが加圧流体によって膨張されたときに内壁が中央の注型領域に向かって内方に撓むようにされ得る。
【0028】
内側のチャンバ40、42、および44の構成が、図5B、図5C、および図5Dに見られる。
【0029】
流体通路66が、図5Bおよび図5Cに示されているように、壁36と壁38との間に一体的にモールド成形および構成されるか、ブラダー34の近位端部構造体35に設けられ得る。これらの通路は、上述したように、コネクタ14または基部12に接続された流体通路64と連通されている。これらチャンバは必要に応じてこれらが同じ内部圧力に晒されるように互いに接続可能であるが、各膨張可能なチャンバ40、42、および44に独立した流体通路66が設けられていると好ましい。あるいは、チャンバ40、42、および44は、コネクタ14または基部12に接続された一連の流体通路によって個別に加圧可能である。これらの通路は、外壁36の内方または外方に配置された別個の夫々独特な導管であってもよい。流体導管は、必要に応じて基部12またはコネクタ14を通さずに直接にブラダー34の壁内または壁を貫通するように組み込み可能であると考えられる。
【0030】
膨張可能なチャンバ40、42、および44は、空気などの内部の加圧流体に晒されると、膨張されるか、図5Dに隠れ線で示された位置まで駆動される。
【0031】
図示されていないが、チャンバ40、42、および44は、互いに接続されているか独立している複数の付加的なチャンバに分割され得る。これらチャンバは、本発明の注型装置を用いて補綴ソケットを注型するときに義足と補綴ソケット注型材料との様々の領域を選択的に加圧するための付加的な複数の膨張可能なチャンバを与えるように、ブラダー34の長手方向に沿って軸方向に分割され得る。
【0032】
また、チャンバの最も内側の壁が注型領域中に膨張され得る場合には、膨張可能なチャンバが、ブラダー34、34’の1つの厚い側壁として注型されてもよい。
【0033】
図6A〜図6Cは、近位端部35’および遠位端部37’を有するブラダー34’の断面形状がほぼ円筒形であり、図6Cに見られるように複数の膨張可能な内側チャンバ54とこの内側チャンバ54の上方に延びた環状外側チャンバ56とを規定する外壁36’と内壁38’とを有する、本発明の他の実施形態を示している。外壁36’から内方に内壁38’から外方に離間された付加的な環状の中間壁39が、この実施形態では、特許No.5、885、509に示された環状の圧力チャンバと類似した外側チャンバ56を規定している。補綴注型材料が注型領域32’内に配置されるように、ブラダー34’が容易に義足とこの義足の先端部に配置された補綴注型材料とに巻かれるかこれから取り外され得るようにするために、側壁38’、39’が比較的柔軟かつ従順にされている。中間壁39の伸張特性は、義足への所望の注型圧力分布を果たし、膨張チャンバ54の背後の圧力荷重を分配できるように選択されている。外壁36’は、カバーが設けられているか、チャンバ54、56内の内部圧力下でその伸張が拘束されるように構成可能である。
【0034】
基部12’は、加圧流体をチャンバ54、56に分配させるのに適したバルブ、チューブ、および導管を有する。これによって、チャンバ54、56の内壁を内方に膨張させて注型領域32、32’内で硬化可能な補綴ソケットの材料を押圧するために、これらチャンバが個々にまたは一斉に選択的に加圧され得る。ハンドル部及びポンプの連結物48、51が、コネクタ46によって基部12’に接続されており、圧力表示器50が、チャンバ54、56内の圧力を表示するために設けられ得る。ポンプ48、51は、このポンプを十分に説明するために参照される米国特許No.5、885、509に示されたポンプと類似している。
【0035】
図7は、義足66、吸引ソケット62、モールド成形された補綴ソケット5、および吸引ソケット62からソケット5の先端部を通って延びたロックピン28に関連した、図1および図2に示された注型装置の1つの実施形態を示している。図7は、ソケット5の注型が完了してこのソケット5が少なくとも部分的に硬化された後に、注型装置10が補綴ソケット5から取り外される際の、前述の構成部材間の関係を示している。
【0036】
当分野で公知の方法で、ソケット5が最終仕上げのために吸引ソケット62から取り外され、吸引ソケット62が義足66から取り外される。ロックピン28は、言うまでもなく、吸引スリーブ62の先端部のねじからこれを解放することによっていつでも取り外し可能である。
【0037】
作業中、例えば米国特許No.5、718、925に説明されているように、義足に補綴具予備形成注型材料を注型する準備として、最初に吸引ソケット62とロックピン28とが義足の先端部に配置される。また、吸引スリーブの下に所定の他の保護層が配置されてもよい。
【0038】
ブラダー34が、例えば特許No.5、885、509に説明されているように、折り畳まれて縮められた状態から基部上で前方へ注型材料を有する義足62の先端部にわたって広げられる。ロックピン28は、ブラダーが広げられる前に基部12に予め接続され得る。続いて、膨張可能なチャンバが、空気や他の媒体などの適当な流体で加圧される。これらチャンバは、補綴ソケットの材料と義足とが配置されている注型領域32、32’に向かって径方向内方に膨張する。ブラダー34、34’は、膨張可能なチャンバ40、42、および44とチャンバ54、56とが膨張される際に、少なくとも義足によって部分的に支持される。状況が整うと、補綴具製造者が、補綴ソケットの材料が硬化される前にその形状と形とを制御するように、ブラダーとチャンバとを通して義足の選択された場所に付加的な圧力および操作を加える。補綴ソケットの材料は、ブラダー34、34’とその関連した膨張可能なチャンバとによって加圧される間に、硬化された状態に硬化可能かつ硬化可能であるように選択されている。様々の膨張可能なチャンバ40、42、44、54、および56の方向付け、位置、および構成は、補綴ソケットの材料が硬化された状態に硬化される間にその周囲にわたって所望の圧力分布を果たせるように選択されている。例えば、補綴ソケットの材料を義足上で注型するために所望の圧力分布を果たすように、3つの互いに周方向に離間された膨張可能なチャンバを使用することがある。
【0039】
特許No.5、885、509に開示されているように、ロックピン28を基部12に固定すると、注型中に反作用する牽引力が、補綴ソケットの材料が上に配置された義足を収容している吸引ソケット62の先端部に与えられる。このような牽引力は、非常に望ましく、補綴ソケットが義足に対して押圧されている間に、補綴ソケットの内部空間を極めて正確に形成するように、義足の先端領域を引き伸ばす。従来技術の装置で使用される単一の環状の膨張可能なチャンバと比較すると、複数の膨張可能なチャンバは、補綴ソケットの材料に、典型的な義足の身体構造上の外形に比較的密に従う非円筒形パターンで注型圧力を分布させる。
【0040】
本明細書で説明されている本発明の特定の実施形態は、説明を目的とするのみであり、請求項で規定された本発明の精神と範囲とから逸脱することなく、当業者によって様々な変形が考えられ実施されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる補綴ソケット注型装置の1つの実施形態の側面図である。
【図2】図1の線Iに沿って切断された断面図である。
【図3】図1の線II―IIに沿って切断された断面図である。
【図4】空気通路を示している注型装置の基部の端面図である。
【図5A】本発明の第1の実施形態に従って構成されたブラダーの側面図である。
【図5B】図5AのIII−III線に沿って切断された断面図である。
【図5C】図5BのV−V線に沿って切断された断面図である。
【図5D】図5AのIV−IV線に沿って切断された断面図である。
【図6A】本発明に従って構成された注型装置の第2の実施形態の側面図である。
【図6B】図6AのVI−VI線に沿って切断された断面図である。
【図6C】図6AのVII−VII線に沿って切断された断面図である。
【図7】注型処理が完了して補綴ソケットと義足とから分離された後の図1の補綴ソケット注型装置を示す斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、補綴ソケットを義足(residual limb)に直接に形成、即ち注型する注型装置に関し、更に詳細には、義足に直接に配置可能な注型装置であって、この義足に事前に配置された注型可能および硬化可能な補綴ソケットの材料に加圧してソケットに仕上げの内部空間を与える注型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
義足用補綴具の堅いソケットが、パリスモールドの漆喰(plaster of paris mold)、コンピュータモデリング(computer modeling)、真空成形、および補綴具製造者(prosthetists)に公知の他の様々の技術を含むあらゆる技術によって形成されてきた。従来技術はまた、米国特許No.5、718、925に開示されているような携帯可能な環状の圧力注型システムを用いて補綴ソケットが義足に直接注型されることで公知である。この技術により、義足の先端領域に張力が与えられながら補綴ソケットが義足に直接圧力注型され得るので、注型処置を完了したときに、最少限の仕上げ加工と調節を必要とするだけの最終的なソケットが得られる。
【0003】
他の種類の直接圧力注型システムが、米国特許No.5、885、509に開示されている。このシステムによれば、携帯型環状圧力注型ブラダーが硬化可能なソケット材料を有する義足に巻かれ、この義足が注型処理で張力を与えられて引き伸ばされている間に、圧力下で補綴ソケットが義足にモールド成形及び硬化される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当分野で公知のこのような処理は、モールド成形処理が完了したときに義足によりよく適合する改良された補綴ソケットを得るために、補綴ソケット注型処理中の注型圧力の分布をよりよく制御するように改良できると考えられてきた。
【0005】
本発明は、公知の従来技術のシステム、特に、義足に対して補綴ソケットの材料を押圧する単一のブラダーを用いる直接注型システムを改良するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、米国特許No.5、885、509(参照して本明細書に組み込む)に示されているタイプの補綴ソケット注型装置である。更に詳細には、本発明は、携帯型補綴具の直接注型装置であり、細長く柔軟な環状のモールド成形ブラダーが設けられた基部を有する。モールド成形ブラダーは、中央に配置された注型領域を周方向に囲む複数の膨張可能なチャンバを有する。このモールド成形ブラダーは、ブラダーの注型領域内に、その関連した膨張可能なチャンバが義足を囲むような形で義足が配置され得るように、基部に向けてあるいは基部の前方に丸められ得る。
【0007】
チャンバは、柔軟で不透水性の薄いシート材料で形成されている。このシート材料は、内部圧力によって膨張されると、中央の注型領域に向けて内方に撓み、義足の外側先端領域に予め配置された補綴ソケットの材料を有する注型領域内の義足に圧力をかける。膨張可能なこれらチャンバは、ソケット材料をモールド成形および硬化するときに、義足の外周のあたりとその関連したソケット注型材料に内向きの力を生じるような形で個々にあるいは一斉に加圧され得る。チャンバは、弾性を有する薄いシート材料で形成された径方向内方に面した壁を有していてよい。
【0008】
米国特許No.5、885、509に説明されているように、吸引ソケットは、典型的には、シリコーンなどで形成されており、吸引スリーブの先端部から遠位方向に延びるようにロックピンが吸引スリーブに設けられた状態で、補綴ソケットモールド成形材料が配置される前に義足上に設けられる。ロックピンは、吸引スリーブの先端部が基部に対して動かないようにこの先端部を固定するか、あるいは、膨張可能なチャンバによる圧力下で補綴ソケットの材料をモールド成形する間に義足の先端部領域および吸引スリーブを引き伸ばすようにピンが軸方向に遠位方向へと引っ張られ得るように固定するように、基部と共働する。
【0009】
基部は、ロックピンと係合しこのロックピンを基部に対して固定するか、ブラダーとその関連した膨張可能なチャンバとに対して遠位方向にロックピンで牽引力を生じ得る牽引装置に対して固定するロック装置を有する。
【0010】
基部は、モールド成形(注型)処理中に加圧された空気または他の流体を膨張可能なチャンバ中に送ってこれらチャンバを中央の注型領域に向けて内方に膨張させるのに適した導管とバルブとを有する。
【0011】
複数の膨張可能なチャンバの構成および方向付けとは、義足にモールド成形される補綴ソケットの材料に対して望ましい圧力分布を果たすように選択されており、補綴具製造者によって調節される必要がなく義足にモールド成形および硬化されたソケットの正確な適合を確実にする。
【0012】
好ましい実施形態では、長手方向に延び互いに周方向に離間された3つの膨張可能なチャンバが、ブラダーの内部に設けられる。他の実施形態では、内部で長手方向に延び互いに周方向に離間された複数の膨張可能なチャンバが、ブラダーの各個またはグループが夫々独立して加圧され得るように、あるいは、全てのブラダーが互いに流体連通された状態で、単一の環状の膨張可能なブラダーによって囲まれてもよい。
【0013】
このブラダーは、膨張可能なチャンバが加圧されたときにブラダーの外壁の外方への膨張を制御する、例えば弾性を有する布などの外側布カバーを有すると好ましい。これにより、膨張可能なチャンバの力が、注型領域から外方へ向かうのではなく、確実に注型領域に向かって内方に向けられる。
【0014】
手動ポンプは、米国特許No.5、885、509に開示されているような形で注型装置と結合可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2を参照すれば、補綴ソケット注型装置10が、この注型装置10が注型位置に配置される前に義足に付着される吸引スリーブ62(図7を参照)の先端部と接続可能なねじ端部30を有するロックピン28と共働するロック装置16が組み込まれた基部12を有している。
【0016】
吸引ソケットが、米国特許No.5、718、925と米国特許No.5、885、509とに開示されており、典型的には、参照符号28で示されたタイプのロックピンのねじ端部30を受けるためのねじソケットを有する端部構造体を備えた高い可撓性を有するシリコーンエラストマーソケットを有する。この吸引ソケットは、硬い補綴ソケットを義足に真空接続によって接続させるために使用されるものであり、典型的には、ピン28などのロックピンによって補綴ソケットに接続される。本発明では、補綴ソケット注型材料で覆われる義足にカバーを設けるために吸引ソケットが使用されており、この吸引ソケットによって、義足と完成した補綴ソケットとの間にスペーサが形成されて、補綴ソケットの正確な内部空間が形成され得る。この正確な内部空間内に、補綴ソケットがその吸引スリーブによって切断患者によって装着されたときの吸引ソケットの空間を可能にする。
【0017】
更に、特許No.5、885、509に開示されているように、義足を覆いかつ補綴ソケット注型材料の内側に位置する吸引ソケットを用いることにより、ロックピン28が、吸引ソケットの先端部に固定され、注型装置の基部12に接続され得る。このようにロックピンを基部12に固定させることにより、特許No.5、885、509に開示され以下に詳しく説明されるように、注型しながら義足の先端部に牽引力が与えられ得る。
【0018】
図1および図2に示されている本発明の実施形態に係われば、基部12に対して近位方向に動かないようにピン28を固定するためにこのピン28と解放可能に係合するコネクタ14に対して軸方向に動かないようにピン28を固定可能である。コネクタ14は、必要であれば、基部12にしっかりと固定されることも可能であり、任意で、注型装置10を使用している間に遠位方向へピン28を引っ張るように補綴具装着者によって操作され得る引き手22と結合可能である。
【0019】
この実施形態に係われば、ピン28をその端部30によって義足を覆っている吸引ソケットと接続させるときに、注型領域32内に収容された義足と吸引ライナーに対して基部12とブラダー34(以下に説明される)とが以下に説明されるように配置された状態に保持されていると想定すると、引き手22によって与えられた張力が、摺動ロッド26に、かくして、ばね座部18に配置されたばね19を介して、ピン28に固定され得るロック装置16によってピン28に接続されたコネクタ14に伝えられる。基部12は、ピン28、コネクタ14、およびバー20が、引き手22に与えられた張力の反力を与える座部18のばね19の拘束下で基部12に対して軸方向に有効に移動され得るように、ピン28に対して軸方向に移動可能である。換言すると、引き手22によって図1および図2で右方向へと与えられた軸方向の力は、引き手22内でばね座部18に設けられた圧縮ばね19に伝えられ、続いて、図2で右方に示されたバーの拡大端部によって摺動バー20に伝えられ、更に、この摺動バー20と基部12との接続部を介して、コネクタ14に伝えられる。次に、コネクタ14に伝えられた軸方向の荷重が、基部12から独立してピン28に力が与えられるように、ロック16からピン28に伝えられる。引き手22が摺動バー20に対して動く程度、即ち、ばね19が圧縮される程度が、この摺動バー20の外径の前方端部(示されているように左方の端部)に刻まれたか記されたスケール26に示され得る。
【0020】
基部12の前方側面には、中央の注型領域32を規定し、基部12からブラダー34の長手方向全体にわたって軸方向前方へと伸張可能である可撓性の膨張可能な環状圧力ブラダー34が接続されている。このブラダー34は、補綴ソケットの材料が外側でモールド成形される吸引ソケットによって覆われる義足の部分の長手方向にほぼ沿って延びるように構成かつ寸法付けされている。このブラダー34は、比較的伸縮しない材料か外壁36の外方への伸張を拘束する材料のウェブもしくはストランドで補強されたシリコーンラバー材料で形成され得るか、外壁36の外方への伸張を拘束する材料で形成された別個の外側カバーを備えシリコーンエラストマーなどのエラストマー材料で形成され得る外壁36を好ましくは有する。
【0021】
ブラダー34の内壁38は、所定の基準に従って材料の伸張性を調整することが可能な部材で補強され得る1つ以上の柔軟で従順なシート材料で形成することができる。好ましい実施形態に係われば、ブラダー34の内壁38と外壁36とは実質的に薄く可撓性のある材料で形成されるので、ブラダー34は、米国特許No.5、885、509に開示されているブラダーと同じ方法で義足の外周に巻かれたりこれから取り外されたりすることができ、義足から容易に着脱可能である。ブラダー34の内壁38の好ましい特徴は、テンションがかけられたときにこれ自体は実質的に伸張しないが、注型領域32内に配置された義足と補綴ソケット注型材料とを包むように外側のチャンバが膨張したときにはこれに充分に従うことができる材料で形成されている点である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、ブラダー34の内壁38は、外壁36とは別個の薄いシート材料から形成され、内壁38と外壁36との間で膨張可能なチャンバを規定する形で外壁に接着されるか取着されている。内壁38は、複数の膨張可能なチャンバ40、42、および44を規定するように、外壁36の内周部に縫い合わせられ、熱融着され、接着あるいは堅く取着され得る。チャンバ40、42、および44は、ブラダー34の長手方向に沿って延び、中央の注型領域32を周方向に囲んでいる。チャンバ40、42、および44は、チャンバの内壁38を中央の注型領域32に向かって内方に伸張させてブラダー34内で注型される補綴ソケットの材料に圧力をかけるように、典型的には空気などの流体で加圧されたときに膨張可能である。
【0023】
前記コネクタ14は、図4に示されているように、少なくとも1つの流体通路64と、当分野で公知の方法でロック装置16からピン28を解放するピン解放機構(図示されず)とを有している。この流体通路64は、チャンバ内に加圧流体が供給され得るようにチャンバ40、42、および44の内部と連通されたコネクタ14および基部12の適当なポートおよび導管と連通されている。流体通路64は、必要に応じて、コネクタ14の代わりに基部12と接続されてもよい。チャンバ40、42、および44の外部の位置からこれらの内部への加圧流体の通路を可能にするように、所定の他の適当な構成物が使用されてもよい。実際には、引き手22を伸張装置として使用しピン28に牽引力を作用させてコネクタ14を基部12から分離させることを選択したときは、流体通路64は、ピン28に牽引力がかけられながらチャンバ40、42、および44内への加圧流体の連続的な供給を可能にするような方向付けと配置にされるだろう。
【0024】
チャンバ40、42、および44はまた、側壁の内壁がチャンバ40、42、および44の内側面で径方向内方に伸張可能なように形成されるように、側壁中にモールド成形され得る。このように、チャンバは、膨張可能なチャンバを形成する膨張可能なポケットを備えた一体成形型の側壁によって形成され得る。
【0025】
ブラダー34の第1の実施形態は、図5A〜図5Dに示されており、この実施形態では、内壁38と外壁36とが、ブラダー34の長手方向に沿って延び中央の注型領域32を周方向に囲む伸張可能なチャンバ40、42、および44を規定している。ブラダー34の内壁38は、チャンバ40、42、および44の間に膨張しない領域を有し、この領域で、内壁38と外壁36とが、図5Dの参照符号39に示されているように、縫い合わせ、熱融着、接着などによって互いに堅く取着されている。
【0026】
ブラダー34は、近位端部35と遠位端部37とを有し、近位端部35は遠位端部37よりも小さな直径を有する。しかし、ブラダーはまた、一般的にソケットと義足の形状に応じて円筒形であってもよい。ブラダー34の長さは、義足とこの義足の先端領域に配置された補綴ソケット注型材料とを包むことができるように選択される。あらゆるサイズの義足を収容可能なように、必要に応じて、複数のブラダーが適当な大小の直径を有する様々な長さに形成されてよい。
【0027】
義足に配置された注型材料に充分な径方向の圧力をかけることができる程度まで内壁38が注型領域32に向かって径方向に伸張可能である場合は、内壁38は、参照符号39で示されているような長手方向のシームに沿って外壁36に取着され、伸縮可能な弾性材料または弾性を拘束する材料で形成され得る。内壁38が拘束された弾性を有する場合は、十分な余分の内壁材料が与えられて、内壁によって規定された膨張可能なチャンバが加圧流体によって膨張されたときに内壁が中央の注型領域に向かって内方に撓むようにされ得る。
【0028】
内側のチャンバ40、42、および44の構成が、図5B、図5C、および図5Dに見られる。
【0029】
流体通路66が、図5Bおよび図5Cに示されているように、壁36と壁38との間に一体的にモールド成形および構成されるか、ブラダー34の近位端部構造体35に設けられ得る。これらの通路は、上述したように、コネクタ14または基部12に接続された流体通路64と連通されている。これらチャンバは必要に応じてこれらが同じ内部圧力に晒されるように互いに接続可能であるが、各膨張可能なチャンバ40、42、および44に独立した流体通路66が設けられていると好ましい。あるいは、チャンバ40、42、および44は、コネクタ14または基部12に接続された一連の流体通路によって個別に加圧可能である。これらの通路は、外壁36の内方または外方に配置された別個の夫々独特な導管であってもよい。流体導管は、必要に応じて基部12またはコネクタ14を通さずに直接にブラダー34の壁内または壁を貫通するように組み込み可能であると考えられる。
【0030】
膨張可能なチャンバ40、42、および44は、空気などの内部の加圧流体に晒されると、膨張されるか、図5Dに隠れ線で示された位置まで駆動される。
【0031】
図示されていないが、チャンバ40、42、および44は、互いに接続されているか独立している複数の付加的なチャンバに分割され得る。これらチャンバは、本発明の注型装置を用いて補綴ソケットを注型するときに義足と補綴ソケット注型材料との様々の領域を選択的に加圧するための付加的な複数の膨張可能なチャンバを与えるように、ブラダー34の長手方向に沿って軸方向に分割され得る。
【0032】
また、チャンバの最も内側の壁が注型領域中に膨張され得る場合には、膨張可能なチャンバが、ブラダー34、34’の1つの厚い側壁として注型されてもよい。
【0033】
図6A〜図6Cは、近位端部35’および遠位端部37’を有するブラダー34’の断面形状がほぼ円筒形であり、図6Cに見られるように複数の膨張可能な内側チャンバ54とこの内側チャンバ54の上方に延びた環状外側チャンバ56とを規定する外壁36’と内壁38’とを有する、本発明の他の実施形態を示している。外壁36’から内方に内壁38’から外方に離間された付加的な環状の中間壁39が、この実施形態では、特許No.5、885、509に示された環状の圧力チャンバと類似した外側チャンバ56を規定している。補綴注型材料が注型領域32’内に配置されるように、ブラダー34’が容易に義足とこの義足の先端部に配置された補綴注型材料とに巻かれるかこれから取り外され得るようにするために、側壁38’、39’が比較的柔軟かつ従順にされている。中間壁39の伸張特性は、義足への所望の注型圧力分布を果たし、膨張チャンバ54の背後の圧力荷重を分配できるように選択されている。外壁36’は、カバーが設けられているか、チャンバ54、56内の内部圧力下でその伸張が拘束されるように構成可能である。
【0034】
基部12’は、加圧流体をチャンバ54、56に分配させるのに適したバルブ、チューブ、および導管を有する。これによって、チャンバ54、56の内壁を内方に膨張させて注型領域32、32’内で硬化可能な補綴ソケットの材料を押圧するために、これらチャンバが個々にまたは一斉に選択的に加圧され得る。ハンドル部及びポンプの連結物48、51が、コネクタ46によって基部12’に接続されており、圧力表示器50が、チャンバ54、56内の圧力を表示するために設けられ得る。ポンプ48、51は、このポンプを十分に説明するために参照される米国特許No.5、885、509に示されたポンプと類似している。
【0035】
図7は、義足66、吸引ソケット62、モールド成形された補綴ソケット5、および吸引ソケット62からソケット5の先端部を通って延びたロックピン28に関連した、図1および図2に示された注型装置の1つの実施形態を示している。図7は、ソケット5の注型が完了してこのソケット5が少なくとも部分的に硬化された後に、注型装置10が補綴ソケット5から取り外される際の、前述の構成部材間の関係を示している。
【0036】
当分野で公知の方法で、ソケット5が最終仕上げのために吸引ソケット62から取り外され、吸引ソケット62が義足66から取り外される。ロックピン28は、言うまでもなく、吸引スリーブ62の先端部のねじからこれを解放することによっていつでも取り外し可能である。
【0037】
作業中、例えば米国特許No.5、718、925に説明されているように、義足に補綴具予備形成注型材料を注型する準備として、最初に吸引ソケット62とロックピン28とが義足の先端部に配置される。また、吸引スリーブの下に所定の他の保護層が配置されてもよい。
【0038】
ブラダー34が、例えば特許No.5、885、509に説明されているように、折り畳まれて縮められた状態から基部上で前方へ注型材料を有する義足62の先端部にわたって広げられる。ロックピン28は、ブラダーが広げられる前に基部12に予め接続され得る。続いて、膨張可能なチャンバが、空気や他の媒体などの適当な流体で加圧される。これらチャンバは、補綴ソケットの材料と義足とが配置されている注型領域32、32’に向かって径方向内方に膨張する。ブラダー34、34’は、膨張可能なチャンバ40、42、および44とチャンバ54、56とが膨張される際に、少なくとも義足によって部分的に支持される。状況が整うと、補綴具製造者が、補綴ソケットの材料が硬化される前にその形状と形とを制御するように、ブラダーとチャンバとを通して義足の選択された場所に付加的な圧力および操作を加える。補綴ソケットの材料は、ブラダー34、34’とその関連した膨張可能なチャンバとによって加圧される間に、硬化された状態に硬化可能かつ硬化可能であるように選択されている。様々の膨張可能なチャンバ40、42、44、54、および56の方向付け、位置、および構成は、補綴ソケットの材料が硬化された状態に硬化される間にその周囲にわたって所望の圧力分布を果たせるように選択されている。例えば、補綴ソケットの材料を義足上で注型するために所望の圧力分布を果たすように、3つの互いに周方向に離間された膨張可能なチャンバを使用することがある。
【0039】
特許No.5、885、509に開示されているように、ロックピン28を基部12に固定すると、注型中に反作用する牽引力が、補綴ソケットの材料が上に配置された義足を収容している吸引ソケット62の先端部に与えられる。このような牽引力は、非常に望ましく、補綴ソケットが義足に対して押圧されている間に、補綴ソケットの内部空間を極めて正確に形成するように、義足の先端領域を引き伸ばす。従来技術の装置で使用される単一の環状の膨張可能なチャンバと比較すると、複数の膨張可能なチャンバは、補綴ソケットの材料に、典型的な義足の身体構造上の外形に比較的密に従う非円筒形パターンで注型圧力を分布させる。
【0040】
本明細書で説明されている本発明の特定の実施形態は、説明を目的とするのみであり、請求項で規定された本発明の精神と範囲とから逸脱することなく、当業者によって様々な変形が考えられ実施されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる補綴ソケット注型装置の1つの実施形態の側面図である。
【図2】図1の線Iに沿って切断された断面図である。
【図3】図1の線II―IIに沿って切断された断面図である。
【図4】空気通路を示している注型装置の基部の端面図である。
【図5A】本発明の第1の実施形態に従って構成されたブラダーの側面図である。
【図5B】図5AのIII−III線に沿って切断された断面図である。
【図5C】図5BのV−V線に沿って切断された断面図である。
【図5D】図5AのIV−IV線に沿って切断された断面図である。
【図6A】本発明に従って構成された注型装置の第2の実施形態の側面図である。
【図6B】図6AのVI−VI線に沿って切断された断面図である。
【図6C】図6AのVII−VII線に沿って切断された断面図である。
【図7】注型処理が完了して補綴ソケットと義足とから分離された後の図1の補綴ソケット注型装置を示す斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側面を有する基部と、
この基部によって支持された内部注型領域を規定し、前記前方側面から延びた細長い可撓性で環状のブラダーとを具備し、
このブラダーは、前記注型領域の長手方向にほぼ沿って延び互いに周方向に離間された複数の膨張可能なチャンバを収容し、
これらチャンバは、前記注型領域に向かって径方向内方に延長可能な内壁によって少なくとも部分的に規定された閉鎖内部空間を有し、
前記基部は、チャンバの前記閉鎖内部空間と連通した少なくとも1つの加圧流体供給路を有し、
前記ブラダーは、前記基部に連通接続された端部とは反対側に開端部を有し、
この開端部は、前記注型領域へのアクセスを与える、補綴ソケット直接注型装置。
【請求項2】
互いに周方向に離間された3つの膨張可能なチャンバを有する請求項1の補綴ソケット直接注型装置。
【請求項3】
前記ブラダーの少なくとも1つの壁部に接続され、その壁部の径方向外方への膨張を拘束する膨張拘束構造体を有する請求項1の補綴ソケット直接注型装置。
【請求項4】
前記複数の膨張可能なチャンバとブラダーの外壁との間に設けられた付加的な膨張可能なチャンバを有する請求項1の補綴ソケット直接注型装置。
【請求項5】
補綴ソケットの材料を義足に直接圧力注型する方法であって、
硬化されていない硬化可能な補綴ソケット材料を義足の先端領域に配置させる工程と、
前記義足と硬化可能な補綴ソケット材料とを、加圧されると前記ブラダーの径方向内方に膨張する長手方向に延びた複数の膨張可能なチャンバを収容したブラダーによって規定された中央の注型領域内に配置させる工程と、
複数のチャンバを注型領域に向かって径方向内方に膨張させるようにこれらチャンバを加圧して、周方向に区切られた複数の区域に沿って補綴ソケット注型材料の外周に圧力をかける工程とを具備する方法。
【請求項6】
補綴ソケット材料を押圧し、かつこの義足を基部から離すようにチャンバを加圧している間に義足にかかる荷重が、基部と義足の先端領域とに反作用されて、補綴ソケット材料に加圧およびこれを押圧しながら義足の先端領域に対する牽引力を生じさせるように、前記ブラダーの1端部が取着された基部に対して義足の先端領域を拘束することを具備する、請求項5の補綴ソケット材料を直接注型する方法。
【請求項7】
補綴ソケット材料を押圧している間、義足の先端部を拘束するように、補綴ソケット材料と基部に接続された関連したロックピンとの下で義足に付着された吸引ソケットを使用することを有する請求項6の補綴ソケット材料を直接注型する方法。
【請求項1】
前方側面を有する基部と、
この基部によって支持された内部注型領域を規定し、前記前方側面から延びた細長い可撓性で環状のブラダーとを具備し、
このブラダーは、前記注型領域の長手方向にほぼ沿って延び互いに周方向に離間された複数の膨張可能なチャンバを収容し、
これらチャンバは、前記注型領域に向かって径方向内方に延長可能な内壁によって少なくとも部分的に規定された閉鎖内部空間を有し、
前記基部は、チャンバの前記閉鎖内部空間と連通した少なくとも1つの加圧流体供給路を有し、
前記ブラダーは、前記基部に連通接続された端部とは反対側に開端部を有し、
この開端部は、前記注型領域へのアクセスを与える、補綴ソケット直接注型装置。
【請求項2】
互いに周方向に離間された3つの膨張可能なチャンバを有する請求項1の補綴ソケット直接注型装置。
【請求項3】
前記ブラダーの少なくとも1つの壁部に接続され、その壁部の径方向外方への膨張を拘束する膨張拘束構造体を有する請求項1の補綴ソケット直接注型装置。
【請求項4】
前記複数の膨張可能なチャンバとブラダーの外壁との間に設けられた付加的な膨張可能なチャンバを有する請求項1の補綴ソケット直接注型装置。
【請求項5】
補綴ソケットの材料を義足に直接圧力注型する方法であって、
硬化されていない硬化可能な補綴ソケット材料を義足の先端領域に配置させる工程と、
前記義足と硬化可能な補綴ソケット材料とを、加圧されると前記ブラダーの径方向内方に膨張する長手方向に延びた複数の膨張可能なチャンバを収容したブラダーによって規定された中央の注型領域内に配置させる工程と、
複数のチャンバを注型領域に向かって径方向内方に膨張させるようにこれらチャンバを加圧して、周方向に区切られた複数の区域に沿って補綴ソケット注型材料の外周に圧力をかける工程とを具備する方法。
【請求項6】
補綴ソケット材料を押圧し、かつこの義足を基部から離すようにチャンバを加圧している間に義足にかかる荷重が、基部と義足の先端領域とに反作用されて、補綴ソケット材料に加圧およびこれを押圧しながら義足の先端領域に対する牽引力を生じさせるように、前記ブラダーの1端部が取着された基部に対して義足の先端領域を拘束することを具備する、請求項5の補綴ソケット材料を直接注型する方法。
【請求項7】
補綴ソケット材料を押圧している間、義足の先端部を拘束するように、補綴ソケット材料と基部に接続された関連したロックピンとの下で義足に付着された吸引ソケットを使用することを有する請求項6の補綴ソケット材料を直接注型する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【公表番号】特表2006−501940(P2006−501940A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543304(P2004−543304)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/029116
【国際公開番号】WO2004/032790
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(300002872)オスール・エイチエフ (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/029116
【国際公開番号】WO2004/032790
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(300002872)オスール・エイチエフ (8)
【Fターム(参考)】
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